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特開2024-153275接合体、接合体の製造方法、および、接合体の評価方法
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  • 特開-接合体、接合体の製造方法、および、接合体の評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153275
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】接合体、接合体の製造方法、および、接合体の評価方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20241022BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H05K1/18 J
H05K3/34 507C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067063
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】費 舒杰
【テーマコード(参考)】
5E319
5E336
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AB05
5E319BB05
5E319BB20
5E319CC33
5E319CD27
5E319CD29
5E319CD60
5E319GG20
5E336AA04
5E336CC31
5E336CC55
5E336EE03
5E336GG30
(57)【要約】
【課題】有機残渣が十分にかつ確実に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体を提供する。
【解決手段】第一部材11の表面の一部に第二部材12が接合層13を介して接合された接合体であって、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1と、第二部材12の第二部材12の端部から500μmの位置における炭素濃度C2との比C2/C1が0.25以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材の表面の一部に第二部材が接合層を介して接合された接合体であって、
前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1と、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2との比C2/C1が0.25以下であることを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1と、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2との比C2/C1が0.20以下であることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
第一部材の表面の一部に第二部材が接合層を介して接合された接合体の製造方法であって、
第一部材と第二部材とを接合材を介して積層した積層体を得る積層工程と、前記積層体を熱処理し、接合層を介して前記第一部材と前記第二部材とを接合する接合工程と、接合した前記第一部材および前記第二部材に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、
を備えていることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項4】
前記プラズマ処理工程において、酸素雰囲気でプラズマ処理を実施することを特徴とする請求項3に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
第一部材の表面の一部に第二部材が接合層を介して接合された接合体の評価方法であって、
接合材を用いずに前記第一部材の表面の一部に前記第二部材を積層した積層体に対してプラズマ処理を実施し、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置でXPS分析を行って測定された炭素濃度を第1基準炭素濃度C=0とし、
前記第一部材の表面の一部に前記第二部材を、接合材を介して接合し、プラズマ処理を実施せず、目視された残渣の部分でXPS分析を行って測定された炭素濃度を第2基準炭素濃度C100=100とし、
前記第一部材の表面および前記第二部材の炭素濃度を、前記第1基準炭素濃度Cと前記第2基準炭素濃度C100を用いて相対評価することを特徴とする接合体の評価方法。
【請求項6】
前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置、および、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置において、それぞれXPS分析を行って炭素濃度を測定し、測定された炭素濃度を、前記第1基準炭素濃度Cと前記第2基準炭素濃度C100を用いて相対評価し、
前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2を求め、C2/C1を算出することを特徴とする請求項5に記載の接合体の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材の表面の一部に第二部材が接合層を介して接合された接合体、接合体の製造方法、および、接合体の評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、LEDやパワーモジュールといった各種デバイスにおいては、金属部材からなる回路層の上に半導体素子等の電子部品が接合層を介して接合された構造とされている。
ここで、半導体素子等の電子部品を回路層上に接合する際には、例えば特許文献1,2に示すように、はんだペーストや銀ペースト等の接合材を用いた方法が提案されている。
【0003】
ところで、特許文献1,2に記載されたように、はんだペーストや銀ペースト等の接合材を用いて接合層を介して半導体素子等の電子部品と回路層とを接合した場合には、接合層近傍に、接合材に含まれる有機成分の残渣(有機残渣)が残存し、接合強度の低下等の不具合を生じるおそれがあった。また、有機残渣がLEDやパワーモジュールなどの各種デバイスに悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0004】
そこで、特許文献3には、有機残渣を低減することを目的としたはんだペースト用フラックス組成物、および、はんだペーストが提案されている。
また、特許文献4には、接合材として銀ペーストを用いた接合体において、接合体をアルコールと水の混合液に浸漬してイオン残留物を抽出し、このイオン残留物の含有量を規定したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-083809号公報
【特許文献2】国際公開第2007/034833号
【特許文献3】特開2022-022506号公報
【特許文献4】特開2022-167472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3に記載されたはんだペーストにおいては、ギ酸雰囲気でリフロー処理する必要があった。ギ酸は、腐食性および刺激性を有していることから、作業環境が悪化するといった問題があった。
また、特許文献4に記載された接合体においては、接合体をアルコールと水の混合液に浸漬してイオン残留物を抽出することで有機残渣を評価しているが、接合材に起因する有機残渣以外の有機物を区別することができず、接合材に起因する有機残渣を的確に評価することができないおそれがあった。また、接合体全体の有機残渣については評価可能であるが、特定の箇所における有機残渣については的確に評価できなかった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、有機残渣が十分にかつ確実に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、ギ酸を用いることなく有機残渣を十分に低減可能な接合体の製造方法、および、接合材に起因する有機残渣を的確に評価可能な接合体の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の態様1の接合体は、第一部材の表面の一部に第二部材が接合層を介して接合された接合体であって、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1と、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2との比C2/C1が0.25以下であることを特徴としている。
【0009】
本発明の態様1の接合体によれば、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1と、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2との比C2/C1が0.25以下とされているので、接合層近傍における炭素濃度が、接合層から十分に離間した位置の炭素濃度に対して大きく増加しておらず、接合層近傍における有機残渣が十分に低減されている。よって、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能となる。
【0010】
本発明の態様2の接合体は、本発明の態様1の接合体において、前記プラズマ処理工程において、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1と、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2との比C2/C1が0.20以下とされていることを特徴としている。
本発明の態様2の接合体によれば、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1と、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2との比C2/C1が0.20以下とされているので、接合層近傍における有機残渣がさらに低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生をさらに抑制することが可能となる。
【0011】
本発明の態様3の接合体の製造方法は、第一部材の表面の一部に第二部材が接合層を介して接合された接合体の製造方法であって、第一部材と第二部材とを接合材を介して積層した積層体を得る積層工程と、前記積層体を熱処理し、接合層を介して前記第一部材と前記第二部材とを接合する接合工程と、接合した前記第一部材および前記第二部材に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の態様3の接合体の製造方法によれば、接合層を介して前記第一部材と前記第二部材とを接合する接合工程の後に、接合した前記第一部材および前記第二部材に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理工程を有しているので、プラズマ処理によって有機残渣を除去することができ、ギ酸雰囲気でリフローを実施することなく、接合層近傍における有機残渣が十分に低減することができ、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制した接合体を製造することができる。
【0013】
本発明の態様4の接合体の製造方法は、本発明の態様3の接合体の製造方法において、前記プラズマ処理工程において、酸素雰囲気でプラズマ処理を実施することを特徴としている。
本発明の態様4の接合体の製造方法によれば、前記プラズマ処理工程において、酸素雰囲気でプラズマ処理を実施しているので、有機残渣を効果的に除去することができ、接合層近傍における有機残渣をさらに低減した接合体を製造することが可能となる。
【0014】
本発明の態様5の接合体の評価方法は、第一部材の表面の一部に第二部材が接合層を介して接合された接合体の評価方法であって、接合材を用いずに前記第一部材の表面の一部に前記第二部材を積層した積層体に対してプラズマ処理を実施し、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置でXPS分析を行って測定された炭素濃度を第1基準炭素濃度C=0とし、前記第一部材の表面の一部に前記第二部材を、接合材を介して接合し、プラズマ処理を実施せず、目視された残渣の部分でXPS分析を行って測定された炭素濃度を第2基準炭素濃度C100=100とし、前記第一部材の表面および前記第二部材の炭素濃度を、前記第1基準炭素濃度Cと前記第2基準炭素濃度C100を用いて相対評価することを特徴としている。
【0015】
本発明の態様5の接合体の評価方法によれば、接合材を用いずに積層した積層体における第1基準炭素濃度Cと、有機残渣自体の第2基準炭素濃度C100とを基準として、接合体(第一部材および第二部材)の表面の炭素濃度を評価しているので、接合材に起因する有機残渣を的確に評価することができる。また、接合体の特定の箇所の有機残渣を的確に評価することができる。
【0016】
本発明の態様6の接合体の評価方法は、本発明の態様5の接合体の評価方法において、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置、および、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置において、それぞれXPS分析を行って炭素濃度を測定し、測定された炭素濃度を、前記第1基準炭素濃度Cと前記第2基準炭素濃度C100を用いて相対評価し、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2を求め、C2/C1を算出することを特徴としている。
【0017】
本発明の態様6の接合体の評価方法によれば、前記第一部材の前記表面の前記第二部材の端部から1000μm離間した位置における炭素濃度C1、前記第二部材の前記第二部材の端部から500μmの位置における炭素濃度C2を、第1基準炭素濃度Cおよび第2基準炭素濃度C100によって相対評価し、C2/C1を算出しているので、接合層近傍における有機残渣量を的確に評価することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有機残渣が十分にかつ確実に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、ギ酸を用いることなく有機残渣を十分に低減可能な接合体の製造方法、および、接合材に起因する有機残渣を的確に評価可能な接合体の評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る接合体の説明図である。(a)が上面図、(b)がX-X断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法のフロー図である。
図3】実施例におけるリフロー処理の温度プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態である接合体、接合体の製造方法、および、接合体の評価方法について、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る接合体10は、図1に示すように、第一部材11と第二部材12が、接合層13を介して接合されたものである。本実施形態では、接合体10は、絶縁回路基板の回路層(第一部材11)と半導体素子(第二部材12)とが接合層13を介して接合された半導体装置とされている。
【0022】
そして、本実施形態である接合体10においては、図1に示すように、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1と、第二部材12の第二部材12の端部から500μmだけ内側の位置Bにおける炭素濃度C2との比C2/C1が0.25以下とされている。
なお、C2/C1は、0.20以下であることが好ましく、0.02以下であることがさらに好ましい。
【0023】
ここで、本実施形態においては、接合体10(第一部材11および第二部材12)の表面の炭素濃度は、以下のようにして評価している。
まず、接合材を用いずに、第一部材11の表面の一部に第二部材12を積層した積層体に対してプラズマ処理を実施し、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置でXPS分析を行って測定された炭素濃度を第1基準炭素濃度C=0とした。
次に、第一部材11の表面の一部に第二部材12を、接合材を介して接合し、プラズマ処理を実施せず、目視された残渣の部分でXPS分析を行って測定された炭素濃度を第2基準炭素濃度C100=100とした。
【0024】
そして、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置A、および、第二部材12の第二部材12の端部から500μmの位置Bで、それぞれXPS分析を行って炭素濃度を測定し、測定された炭素濃度を、第1基準炭素濃度Cと第2基準炭素濃度C100を用いて相対評価し、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1と、第二部材12の第二部材12の端部から500μmだけ内側の位置Bにおける炭素濃度C2を求め、比C2/C1を算出した。
【0025】
上述のように、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1と、第二部材12の第二部材12の端部から500μmの位置における炭素濃度C2との比C2/C1を評価することにより、接合材に起因する有機残渣を評価することが可能となる。
【0026】
次に、本実施形態である接合体10の製造方法について、図2のフロ―図を参照して説明する。
【0027】
(ペースト塗布工程S01)
図3に示すように、第一部材11の接合面および第二部材12の接合面の一方又は両方に、接合材を塗布する。使用される接合材としては、特に制限はなく、はんだペースト、Agペースト等を用いることができる。
また、塗布方法は特に限定されないが、例えば、メタルマスク法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等を適用することができる。
【0028】
(積層工程S02)
次に、接合材を介して、第一部材11と第二部材12とを積層する。
【0029】
(接合工程S03)
次に、接合材を介して積層された第一部材11および第二部材12をリフロー処理し、接合層13を形成し、第一部材11と第二部材12とを接合する。
なお、接合工程S03における加熱温度および保持時間は、使用する接合材に応じて、適宜設定することが好ましい。
接合工程S03における雰囲気に特に制限はないが、ギ酸を使用することなく、窒素ガス雰囲気等で実施することが好ましい。
【0030】
(プラズマ処理工程S04)
次に、接合層13を介して接合された第一部材11および第二部材12に対して、プラズマ処理を行う。
このプラズマ処理工程S04によって、接合層13の周辺に存在する有機残渣を除去することにより、本実施形態である接合体10を得る。
なお、プラズマ処理工程S04においては、酸素雰囲気で行うことが好ましい。また、プラズマ処理工程S04における出力は1400W以上1600W以下の範囲内とすることが好ましい。
【0031】
以上のような構成とされた本実施形態である接合体10によれば、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1と、第二部材12の第二部材12の端部から500μmの位置Bにおける炭素濃度C2との比C2/C1が0.25以下とされているので、接合層13近傍における炭素濃度が、接合層から十分に離間した位置の炭素濃度に対して大きく増加しておらず、接合層13近傍における有機残渣が十分に低減されている。よって、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能となる。
【0032】
本実施形態である接合体10の製造方法においては、接合層13を介して第一部材11と第二部材12とを接合する接合工程S03の後に、接合層13を介して接合した第一部材11および第二部材12に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理工程S04を有しているので、プラズマ処理によって有機残渣を除去することができ、ギ酸雰囲気でリフローを実施することなく、接合層13近傍における有機残渣が十分に低減することができ、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制した接合体10を製造することができる。
【0033】
また、本実施形態の接合体の製造方法において、プラズマ処理工程S04を酸素雰囲気で実施した場合には、有機残渣を効果的に除去することができ、接合層近傍における有機残渣をさらに低減した接合体を製造することが可能となる。
【0034】
本実施形態においては、接合材を用いずに第一部材11の表面の一部に第二部材12を積層した積層体に対してプラズマ処理を実施し、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置でXPS分析を行って測定された炭素濃度を第1基準炭素濃度C=0とし、第一部材11の表面の一部に第二部材12を、接合材を介して接合し、プラズマ処理を実施せず、目視された残渣の部分でXPS分析を行って測定された炭素濃度を第2基準炭素濃度C100=100とし、第一部材11の表面および第二部材12の表面の炭素濃度を相対評価しているので、接合材に起因する有機残渣を的確に評価することができる。また、接合体10の特定の箇所の有機残渣を的確に評価することができる。
【0035】
そして、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置A、および、第二部材12の第二部材12の端部から500μmの位置Bにおいて、それぞれXPS分析を行って炭素濃度を測定し、測定された炭素濃度を、第1基準炭素濃度Cと第2基準炭素濃度C100を用いて相対評価し、第一部材11の表面の第二部材12の端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1、第二部材12の第二部材12の端部から500μmの位置における炭素濃度C2を求め、C2/C1を算出しているので、接合層13近傍における有機残渣量を的確に評価することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0037】
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
【0038】
基板(Au(0.05μm)/Ni(0.5μm)/コバール板)、ダミーチップ(Si製、Auめっき0.05μm)を準備した。
接合材として、三菱マテリアル株式会社製RMAタイプフラックス使用ペーストを準備した。
さらに、印刷用のマスクとして、SUS製、開口径6.5mm、厚み200μmのものを準備した。
【0039】
まず、ペーストを塗布せず、新たに用意した上述の基板の表面に、にダミーチップを載置した。
リフローシミュレーター(N雰囲気)を用いて、図3に示す温度プロファイルでリフローする。
リフロー後の基板とチップを分離させず、XPSで炭素濃度を測定する。基板のうちチップの端部から1000μm離間した位置Aで炭素濃度を測定し、基準の炭素濃度C=0とした。
【0040】
次に、手動印刷機で、新たに用意した上述の基板の表面に、マスクを用いて、接合材を印刷する。使用した接合材を表1におけるペーストAとしたに示す。
印刷した接合材の上にダミーチップをマウントし、リフローシミュレーター(N雰囲気)を用いて、図3に示す温度プロファイルでリフローした。
リフロー後の接合体において、目視でペースト残渣(金属粉を含んでいない軟膏状有機物)の中央部ところにフォーカスして、XPSで炭素濃度を測定する。測定した値を基準の炭素濃度C100=100とした。
【0041】
(本発明例1)
手動印刷機で、新たに用意した上述の基板の表面に、マスクを用いて、接合材を印刷する。使用した接合材を表1に示す。
印刷した接合材の上にダミーチップをマウントし、リフローシミュレーター(N雰囲気)を用いて、図3に示す温度プロファイルでリフローした。リフロー後の接合体を、以下の条件でプラズマ処理した。
装置:Nordson MRACH、RF出力:1500W、ベース圧力:100mTorr、プロセス圧力:200mTorr、ガス:O2 240sccm、 プラズマ時間:300 s
【0042】
得られた接合体について、XPS分析により、基板表面のチップの端部から1000μm離間した位置Aにおける測定炭素濃度C、および、チップ表面のチップ端部から500μmの位置Bにおける測定炭素濃度Cを求めた。そして、上述の基準の炭素濃度C、C100を用いて、以下の(1)式及び(2)式で、位置Aの炭素濃度C1、位置Bの炭素濃度C2を算出し、比C2/C1を求めた。評価結果を表1に示す。
(1)式:C=(100×(C―C))/C100
(2)式:C=(100×(C―C))/C100
【0043】
(本発明例2)
手動印刷機で、新たに用意した上述の基板の表面に、マスクを用いて、接合材を印刷する。使用した接合材を表1に示す。
印刷した接合材の上にダミーチップをマウントし、リフローシミュレーター(N雰囲気)を用いて、図3に示す温度プロファイルでリフローした。リフロー後の接合体を、以下の条件でプラズマ処理した。
装置:Nordson MRACH、RF出力:1500W、ベース圧力:100mTorr、プロセス圧力:200mTorr、ガス:Ar 240sccm、プラズマ時間:300 s
【0044】
得られた接合体について、本発明例1と同様に、基板表面のチップの端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1、および、チップ表面のチップ端部から500μmの位置Bにおける炭素濃度C2を算出し、比C2/C1を求めた。評価結果を表1に示す。
【0045】
(本発明例3)
手動印刷機で、新たに用意した上述の基板の表面に、マスクを用いて、接合材を印刷する。使用した接合材を表1に示す。
印刷した接合材の上にダミーチップをマウントし、リフローシミュレーター(N雰囲気)を用いて、図3に示す温度プロファイルでリフローした。リフロー後の接合体を、以下の条件でプラズマ処理した。
装置:Nordson MRACH、RF出力:1400W、ベース圧力:100mTorr、プロセス圧力:200mTorr、ガス:Ar 240sccm、プラズマ時間:300 s
【0046】
得られた接合体について、本発明例1と同様に、基板表面のチップの端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1、および、チップ表面のチップ端部から500μmの位置Bにおける炭素濃度C2を算出し、比C2/C1を求めた。評価結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
手動印刷機で、新たに用意した上述の基板の表面に、マスクを用いて、接合材を印刷する。使用した接合材を表1に示す。
印刷した接合材の上にダミーチップをマウントし、リフローシミュレーター(N雰囲気)を用いて、図3に示す温度プロファイルでリフローした。リフロー後の接合体に対して、洗浄液(パインアルファ、荒川化学製)を50℃まで加熱し、超音波洗浄を5分実施した。その後、70℃のお湯で5分洗浄した。洗浄後、乾燥機で5分間乾燥した。
得られた接合体について、本発明例1と同様に、基板表面のチップの端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1、および、チップ表面のチップ端部から500μmの位置Bにおける炭素濃度C2を算出し、比C2/C1を求めた。評価結果を表1に示す。
【0048】
(比較例2)
手動印刷機で、新たに用意した上述の基板の表面に、マスクを用いて、接合材を印刷する。使用した接合材を表1に示す。
印刷した接合材の上にダミーチップをマウントし、リフローシミュレーター(N雰囲気)を用いて、図3に示す温度プロファイルでリフローした。リフロー後の接合体に対して、プラズマ処理、洗浄処理を実施しなかった。
得られた接合体について、本発明例1と同様に、基板表面のチップの端部から1000μm離間した位置Aにおける炭素濃度C1、および、チップ表面のチップ端部から500μmの位置Bにおける炭素濃度C2を算出し、比C2/C1を求めた。評価結果を表1に示す。
【0049】
(ワイヤーボンディング性評価)
上述のようにして得られた接合体について、以下のようにワイヤーボンディング試験を実施した。
超音波熱圧着マルチワイトボード(WEST・BOND社製7KE)を用いて、25μmφの金線をそれぞれ10本ずつ、以下の条件でワイヤーボンディングし、良好に接合された金線の数を評価した。評価結果を表1に示す。
超音波:30ms
荷重:25g
温度:150℃
WB足とチップの距離:500~1000μm
チップ上の距離:足から200μm以内
【0050】
【表1】
【0051】
比較例1においては、N雰囲気でリフローし、リフロー後に洗浄を実施した。C2/C1が0.33となり、有機残渣が十分に低減されておらず、ワイヤーボンディング試験で10本中5本しか接合できなかった。
比較例2においては、N雰囲気でリフローし、リフロー後に洗浄を実施しなかった。C2/C1が0.70となり、有機残渣が多く発生し、ワイヤーボンディング試験でワイヤーを接合できなかった。
【0052】
これに対して、本発明例1においては、N雰囲気でリフローし、リフロー後に酸素雰囲気でプラズマ処理(1500W)を実施した。これにより、C2/C1が0.02となり、有機残渣を十分に除去できており、ワイヤーボンディング試験で10本全てを接合することができた。
【0053】
本発明例2においては、N雰囲気でリフローし、リフロー後にアルゴン雰囲気でプラズマ処理(1500W)を実施した。これにより、C2/C1が0.19となり、有機残渣を十分に除去できており、ワイヤーボンディング試験で10本全てを接合することができた。
【0054】
本発明例3においては、N雰囲気でリフローし、リフロー後にアルゴン雰囲気でプラズマ処理(1400W)を実施した。これにより、C2/C1が0.24となり、有機残渣を十分に除去できており、ワイヤーボンディング試験で10本中8本を接合することができた。
【0055】
なお、プラズマ処理を酸素雰囲気で実施した本発明例1の方が、プラズマ処理をアルゴン雰囲気で実施した本発明例2よりも、C2/C1が低くなっており、有機残渣を効率的に除去できていた。
【0056】
以上の確認実験の結果から、本発明例によれば、有機残渣が十分にかつ確実に低減されており、有機残渣を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、ギ酸を用いることなく有機残渣を十分に低減可能な接合体の製造方法、および、接合材に起因する有機残渣を的確に評価可能な接合体の評価方法を提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0057】
10 接合体
11 第一部材
12 第二部材
13 接合層
図1
図2
図3