(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153280
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】有機性廃棄物の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/45 20220101AFI20241022BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20241022BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20241022BHJP
B01J 3/02 20060101ALI20241022BHJP
B01F 33/71 20220101ALI20241022BHJP
B01F 33/81 20220101ALI20241022BHJP
B01F 33/82 20220101ALI20241022BHJP
B01F 33/83 20220101ALI20241022BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20241022BHJP
B01F 35/92 20220101ALI20241022BHJP
B01F 35/221 20220101ALI20241022BHJP
B01F 27/1145 20220101ALI20241022BHJP
B01F 27/191 20220101ALI20241022BHJP
B01F 27/724 20220101ALI20241022BHJP
B01F 35/75 20220101ALI20241022BHJP
B01F 35/212 20220101ALI20241022BHJP
B01F 35/222 20220101ALI20241022BHJP
B01F 23/53 20220101ALI20241022BHJP
B01F 35/50 20220101ALI20241022BHJP
B01F 101/25 20220101ALN20241022BHJP
【FI】
B09B3/45
B09B3/35 ZAB
B01J3/00 A
B01J3/02 A
B01F33/71
B01F33/81
B01F33/82
B01F33/83
B01F35/71
B01F35/92
B01F35/221
B01F27/1145
B01F27/191
B01F27/724
B01F35/75
B01F35/212
B01F35/222
B01F23/53
B01F35/50
B01F101:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067072
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】512223825
【氏名又は名称】AUTOREM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 猪喜雄
【テーマコード(参考)】
4D004
4G035
4G036
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D004AA04
4D004AA06
4D004AA07
4D004AA12
4D004AA48
4D004CA04
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4D004CA22
4D004CA39
4D004CA46
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4D004CB13
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4D004DA07
4D004DA10
4G035AB46
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4G036AC37
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4G037AA18
4G037CA03
4G037EA03
4G078AA06
4G078AA16
4G078AB11
4G078AB20
4G078BA01
4G078BA09
4G078CA01
4G078DA14
4G078EA01
4G078EA03
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】
広範かつ雑多な種類の廃棄物に対して効率的かつ安価な装置構成で、安定的に処理可能な廃棄物の処理方法及び装置とする。
【解決手段】
有機性廃棄物の原料を高温・高圧下において連続して加水分解反応処理から殺菌処理更には脱水処理まで行う方法であって、複数の耐圧容器を用い、それら耐圧容器からなる原料槽2に投入可能な大きさに破砕機1で破砕したものを該原料槽へ送り込み、該原料槽2で原料の混合と10~50℃に加温し、次の第一亜臨界水クッカー3へ処理条件がほぼ整った均等な原料を貯蔵、供給し、次いで、該原料を亜臨界処理から超臨界処理、仕上げの亜臨界処理まで複数の耐圧容器からなるクッカー4,5で有機廃棄物を処理する有機性廃棄物の処理方法及び装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物の高温高圧水処理を行うことを主体とし、原料を高温・高圧下において連続して加水分解反応処理から殺菌処理更には脱水処理まで行う方法であって、
複数の耐圧容器を用い、それら耐圧容器からなる原料槽に投入可能な大きさに破砕機で破砕したものを原料槽へ送り込み、次の第一亜臨界水クッカーへ処理条件がほぼ整った均等な原料を貯蔵、供給し、次いで、該原料を亜臨界処理から超臨界処理まで複数の耐圧容器からなるクッカーで有機廃棄物を処理する有機性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
原料槽に貯蔵された原料は、第一、第二、第三と三つのクッカーを用いて、第一亜臨界水クッカーから第二超臨界水クッカー次いで第三亜臨界水クッカーへと順次移動し、第一亜臨界水クッカーでは原料の30℃付近から98℃付近まで加熱昇温で一次昇温及び一部亜臨界処理を行う請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
第二超臨界水クッカーでは超臨界水による処理を行い、該クッカー本体の内外二重のリボンスクリューからなる攪拌羽根により、熱媒体油加熱によるジャケット内で原料槽からの原料を3MPa-250℃以上に保持して処理する請求項2記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
第二超臨界水クッカーの排気筒に設けたガス濃度計により原料物の加水分解反応で発生する塩素ガス、硫化水素ガス、ダイオキシンガス等のガス濃度を測定し、既定値上限を設定して、その上限に至ったときに排気電動弁を開としてガス濃度値が設定下限に至る間、排気する請求項3記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
第三亜臨界水クッカーで処理物の仕上げを行うために、該クッカー本体内部の攪拌・移送羽根と、外部の熱媒体加熱ジャケットにより、第二超臨界水クッカーからの原料水分調整脱水はクッカー内部を減圧状態にして品温を上げて脱水調整して排出する請求項2記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
有機性廃棄物の亜臨界水処理を行うことを主体とし、原料を高圧・高温下において連続して加水分解反応処理から殺菌処理から脱水処理まで行う方法を実施する装置であって、
複数の耐圧容器からなり、該耐圧容器でかつ混合羽根を備えた原料槽と、該原料槽に投入可能な大きさに原料を破砕する破砕機と、該原料槽へ送り込み、「該原料槽で原料の混合と10~50℃に加温し」、次の第一亜臨界水クッカーへ処理条件がほぼ整った均等な原料を貯蔵、供給し、該原料を亜臨界処理から超臨界処理まで処理する複数の耐圧容器のクッカーとからなる有機性廃棄物の処理装置。
【請求項7】
複数の耐圧容器のクッカーは原料を順次処理貯蔵する原料槽と、第一、第二、第三と三つのクッカーからなり、第一亜臨界水クッカーから第二超臨界水クッカー、次いで第三亜臨界水クッカーへと順次原料を移動し、第一亜臨界水クッカーでは、原料の30℃から98℃まで加熱昇温で一次昇温及び一部亜臨界処理を行う請求項6記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項8】
第二クッカーは超臨界水クッカーであり、該クッカー本体には内外二重のリボンスクリューからなる攪拌羽根を設け、熱媒体油加熱によるジャケット内で原料槽からの原料を3MPa-250℃以上に保持して処理する請求項7記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項9】
第二超臨界クッカーには、排気筒にガス濃度計が設置され、原料物の加水分解反応において原料物から塩素ガス、硫化水素ガス、ダイオキシンガス等のガス濃度を測定し、既定値上限を設定して、その上限に至ったときに排気電動弁を開としてガス濃度値が設定下限に至る間、排気する装置を備えた請求項7記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項10】
第三クッカーは亜臨界水クッカーであり、処理物の仕上げ用のクッカー本体に攪拌・移送羽根と、外部に熱媒体加熱のジャケットを備え、原料水分調整脱水はクッカー内部を減圧状態にして品温を上げて脱水調整して排出する請求項6記載の有機性廃棄物の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性廃棄物等の混在する有機性廃棄物をはじめとして、各種食品加工場から排出される有機性廃棄物等の亜臨界水又は超臨界水による処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水分を含む有機性廃棄物(以下、単に「廃棄物」という)の脱水方法として、本発明者らが開発したものとして、加熱された油中に廃棄物を投入し、水分を蒸散させる油温脱水処理方法が知られている(特許文献1参照)。この油温脱水処理方法は、加熱された油を貯留する装置本体から構成される油温脱水処理装置(クッカーとも呼ばれる)を用い、加熱された油中に廃棄物を投入し、装置本体に内蔵した送り軸(撹拌羽根や送りスクリュー等)によって廃棄物を撹拌又は移送しながら油炒め状態で水分を蒸散させる。脱水処理を終えた結果物は、水分に代わって油分を含むため、搾油処理を経て減容され、埋め立て処分されたり、肥料や飼料に転用されたりするのである。
【0003】
また、有機廃棄物処理装置として、廃棄物を高温・高圧の容器内領域で攪拌して加水分解させる第1容器と、加水分解した廃棄物を高温・低圧の容器内領域で加熱乾燥させる第2容器と、第1容器内の雰囲気を解放せずに廃棄物を第1容器の容器内領域に導入する廃棄物供給装置と、第1容器内の雰囲気を解放せずに第1容器内の廃棄物を第2容器内に移動させる廃棄物移動装置とを有する、いわゆる亜臨界加水分解方式を利用した装置が提案されている(特許文献2、請求項1参照)。これにより、容器内雰囲気の初期的昇温・昇圧のための熱負荷及び加圧負荷を軽減するとともに、反応容器を大型化することなく廃棄物処理量を増大する、とある。
【0004】
本発明者は先に肥料化又は燃料化できない異物が混在する廃棄物を、高温高圧の水蒸気により生ずる亜臨界水で加水分解した後、前記異物と加水分解した廃棄物とを分離して、加水分解した廃棄物とし、次いで、これに油分を添加し、油炒め処理で脱水することにより、廃棄物を肥料化又は燃料化する廃棄物の処理方法及び、これに適した装置を提案した(特許文献3参照)。
【0005】
この方法及び装置を用いると、廃棄物が高粘性の際は、水蒸気加水分解時にも油分を添加して水蒸気加水分解物の凝固を防ぐことができ、かつ、耐圧性で加熱可能なジャケットを有する処理容器の内部には水蒸気加水分解室と油炒め処理室及び非分解物分離室を備えた処理装置のため、処理容器内全体が水蒸気分解室となるうえ、これと同時に又は連続して油炒め脱水処理の上部と下部に分けてその間に非分解物処理室を配置されて、極めて効率よく廃棄物の処理ができるようになった。
【0006】
また、特許文献4には、亜臨界水又は超臨界水を用いた有機廃棄物の分解処理システムとして、投入された廃棄物細分化するとともに攪拌することにより、有機廃棄物と無機廃棄物を分離し、有機廃棄物にナノバブル水を供給して混合し、そこに亜臨界水又は超臨界水を噴射供給、混合して、有機廃棄物の生分解処理をする高圧減容機を複数段配置すること、が記載されているが、これらのシステムを具体的に実施できるまでの記載にまでは至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08-206692号公報
【特許文献2】特開2008-246300号公報
【特許文献3】特開2020-99891号公報
【特許文献4】特開2021-90915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これら従来技術を参照しても、油温脱水方式にしろ、亜臨界加水分解方式にしろ、それぞれの特徴を生かした分野で活用されて、それなりの効果を挙げてはいるが、油炒め処理や加水分解処理では対応しきれない不溶物や非分解物が混在する廃棄物主体の処理が困難な処理物も多く存在するようになってきている。そこで、これらの方法や装置の個々の特徴や欠点を精査して、更なる検討を加えることにより、亜臨界水処理をベースにして広範かつ雑多な種類の廃棄物に対して効率的な方法で、かつ安価な装置構成で、安定的に処理可能な廃棄物の処理方法及び処理装置を得ること、及び得られる処理物の品質向上を目的に検討を加えたのである。
【0009】
ここで、対象とする処理物は、例えば、処理原料として、従来からの処理物である有機性物質の家畜糞尿、食品加工残渣物、食品残渣類をはじめ、もみ殻、木竹加工廃棄物のほか、医療廃棄物である使用済みおむつ、ガーゼ、衣類等や、これら有機性物質に混入してくる非分解性の廃プラスチック類のほか、注射器、薬品ビン類なども混入してくる種々雑多な廃棄物である。本発明の廃棄物処理では分解しない異物が混在するものでもよいが、可能であれば、あらかじめ粗大ごみに属する大型ごみは選別作業で分離するのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の廃棄物処理方法は、有機性廃棄物の高温高圧水処理を行うことを主体とし、原料を高温・高圧下において連続して加水分解反応処理から殺菌処理更には脱水処理まで行う方法であって、複数の耐圧容器を用い、それら耐圧容器からなる原料槽に投入可能な大きさに破砕機で破砕したものを該原料槽へ送り込み、次の第一亜臨界水クッカーへ処理条件がほぼ整った均等な原料を貯蔵、供給し、次いで、この原料を亜臨界処理から超臨界処理まで複数の耐圧容器からなるクッカーで有機廃棄物を処理する有機性廃棄物の処理方法である。
【0011】
ここで、原料槽に貯蔵された原料は、第一、第二、第三と三つのクッカーを用いて、亜臨界水クッカーから超臨界水クッカーへと順次移動し、第一亜臨界水クッカーでは、原料を30℃付近から98℃付近まで加熱昇温で一次昇温及び一部亜臨界処理を行う有機性廃棄物の処理方法である。
【0012】
次いで、第二超臨界水クッカーでは超臨界水による処理を行い、該クッカー本体の内外二重のリボンスクリューからなる攪拌羽根で攪拌しながら、熱媒体油加熱によるジャケット内で第一亜臨界水クッカーにより予め処理された原料を3MPa-250℃以上に保持して処理する有機性廃棄物の処理方法である。
【0013】
続いて、第三亜臨界水クッカーで処理物の仕上げを行う。第三亜臨界水クッカー本体は内部に攪拌・移送羽根を、外部に熱媒体加熱のジャケットを備え、第二超臨界水クッカーからの原料の処理をするに際し、原料水分調整脱水はクッカー内部を減圧状態にして品温を上げて脱水調整して排出する有機性廃棄物の処理方法である。
【0014】
これらの処理をする装置としては、有機性廃棄物の亜臨界水処理に続いて超臨界水処理を行うことを主体とし、原料を高圧・高温下において連続して加水分解反応処理から殺菌処理、更には脱水処理まで行う方法を実施する装置であって、複数の耐圧容器からなり、該耐圧容器でかつ混合羽根を備えた原料槽と、該原料槽に投入可能な大きさに原料を破砕する破砕機と、該原料槽へ送り込み、「該原料槽で原料の混合と10~50℃に加温し、」次の第一亜臨界水クッカーへ処理条件がほぼ整った均等な原料を貯蔵、供給し、該原料を亜臨界処理から超臨界処理まで処理する複数の耐圧容器のクッカーとからなる有機性廃棄物の処理装置である。
【0015】
ここで、複数の耐圧容器のクッカーは原料槽に貯蔵された原料を順次処理するものであり、第一、第二、第三と三つのクッカーからなり、亜臨界水クッカーから超臨界水クッカーへと順次移動し、第一亜臨界水クッカーでは、原料の30℃付近から98℃付近まで加熱昇温で一次昇温及び一部亜臨界処理を行う有機性廃棄物の処理装置である。
【0016】
第二クッカーは超臨界水クッカーであり、該クッカー本体には内外二重のリボンスクリューからなる攪拌羽根を設け、熱媒体油加熱によるジャケット内で原料槽からの原料を3MPa-250℃以上に保持して処理することのできる有機性廃棄物の処理槽装置である。
【0017】
第三クッカーは、再び、亜臨界水クッカーであり、処理物の仕上げ用のクッカー本体に攪拌・移送羽根と、外部に熱媒体加熱のジャケットを備え、原料水分調整脱水はクッカー内部を減圧状態にして品温を上げて脱水調整して排出する有機性廃棄物の処理装置である。
【0018】
続いて原料槽に貯蔵された原料は、第一亜臨界水クッカー、第二超臨界水クッカー、そして再び第三亜臨界水クッカーと三つのクッカーへと順次移動し、第一亜臨界水クッカーでは、原料の一次昇温及び一部亜臨界処理を行い、攪拌羽根を備えて原料の攪拌と移送作動をし、熱媒体油加熱のジャケット、マイクロ波発信器によるマイクロ波伝送座、水分供給の給水座、及び排気筒にて構成する。これらの制御は電動弁とその開閉作動信号により行う。原料の加熱昇温はクッカー内の圧力が大気圧信号によりバッチ毎の開作動にてマイクロ波で98℃まで可能なKW供給量を照射する。これにより原料は投入時の30℃から98℃まで加熱昇温できる。
【0019】
続く第二超臨界水クッカーは本発明の主力である超臨界水による処理方法及び装置であり、本体には内外二重のリボンスクリューからなる攪拌羽根を設け、熱媒体油加熱によるジャケット、原料の出入り口と電動弁及び排気筒及びその電動弁で構成する。クッカー内部は3MPa-250℃で保持する。原料投入及び排出時には、クッカー内部圧力、内部温度の低下が生じるが2.5MPa-220℃下限となるように、原料投入時間・処理物排出時間を交互に行うことで、減圧、減温を最低限に保持する。クッカー内部攪拌羽根は、外リボンスクリューにて排出方向送りとし、内リボンスクリューは逆の投入部方向送り構造とする。排出口は側面中心部よりの排出とし、排出部内部下部に原料貯留部を設け、超臨界処理の保持時調整延長を図る。原料排出は、電動弁の開閉で、間欠的に内部の圧力温度を見ながら、かつ排出原料の処理状態をみながら行う。
【0020】
この第二超臨界クッカーには、排気筒にガス濃度計が設置されていることである。3.0MPa-250℃以上の超臨界処理中においては、加水分解条件がきついので、原料物の加水分解反応において原料物から塩素ガス、硫化水素ガス、ダイオキシンガス等が発生する。これらのガス成分は、原料周囲の水蒸気に溶け込み相当のガス濃度となる。このガス濃度を測定し、既定値上限を設定して、その上限に至ったときに排気電動弁を開としてガス濃度値が設定下限に至る間、排気する。すなわち、このガス濃度調整により加水分解反応が均一に行われることとなるのである。このような超臨界水処理を行うことで、処理物中のダイオキシン濃度、塩素含有量が軽減される。ガス濃度計によるガス濃度の調節の有無による原料物中のダイオキシン等の含有量の変化は、一例を挙げれば、2.5MPa-220℃の超臨界処理で、何らのガス排気処理を施さない場合の製品中の塩素ガスの存在量と、一方において原料周囲の水蒸気中のガス濃度を測定して、ダイオキシン類の既定値を(1)上限値2000ppm(2)下限値800ppmに至ったときに排気電動弁を開としてガスを排気した場合の得られた製品中の塩素量はそれぞれ(1)1.2ng/g-dry,(2)0.40ng/g-dryと、約1/3までに下がった。
【0021】
次に、第三亜臨界水クッカーで処理物の仕上げを行う。第三亜臨界水クッカー本体は内部に攪拌・移送羽根を、外部に熱媒体加熱のジャケットを備え、第二臨界水クッカーからの原料供給電動弁と、排出電動弁、及び排気筒とその電動弁にて構成する。操作は、排出電動弁を閉、入口電動弁を開として第二超臨界水クッカーから所定量の原料を投入する。投入完了後に入口電動弁を閉として、最後の原料水分調整脱水、例えば、5ないし10%水分値に持ってゆく。原料水分は排気電動弁を開として、余剰水分の脱水を行う。脱水はクッカー内部を減圧状態にして品温95℃付近の状態で行う。脱水調整完了後電動弁を開として排出を行う。脱水調整間の時間を利用して、クッカー内に未分解物を選別分離するネットを設けてそれぞれに分離排出する方法もある。
【0022】
本発明の方法は、有機性廃棄物の亜臨界水処理を行うことを主体とし、原料を高圧・高温下において連続して加水分解反応処理から殺菌処理更には脱水処理まで行う方法である。具体的な処理方法としては、これらの処理に必要な複数の耐圧容器(以下単に「クッカー」と称する)を用い、それらクッカーに投入可能な大きさ、例えばほぼ400mm程度に破砕機で破砕したものを原料槽へ送り込み、該原料槽は原料の混合と10~50℃に加温が可能な熱媒体ジャケットと回転翼を備えており、次の第一亜臨界水クッカーへ処理条件がほぼ整った均等な原料を貯蔵、供給する。
【0023】
続いて原料槽に貯蔵された原料は、第一亜臨界水クッカーから第二超臨界水クッカー、そして仕上げの第三亜臨界水クッカーへと順次移動し、第一亜臨界水クッカーでは、原料の一次昇温及び一部亜臨界処理を行い、攪拌羽根を備えて原料の攪拌と移送作動をし、熱媒体油加熱のジャケット、マイクロ波発信器によるマイクロ波伝送座、水分供給の給水座、及び排気筒にて構成する。これらの制御は電動弁とその開閉作動信号により行う。原料の加熱昇温はクッカー内の圧力が大気圧信号によりバッチ毎の開作動にてマイクロ波で98℃まで可能なKW供給量を照射する。これにより原料は投入時の30℃から98℃まで加熱昇温できる。
【0024】
ここで、第二超臨界水クッカーは本発明の主力である超臨界水による処理方法及び装置であり、本体には内外二重のリボンスクリューからなる攪拌羽根を設け、熱媒体油加熱によるジャケット、原料の出入り口と電動弁及び排気筒及びその電動弁で構成する。クッカー内部は3MPa-250℃で保持する。原料投入及び排出時には、クッカー内部圧力、内部温度の低下が生じるが2.5MPa-220℃下限となるように、原料投入時間・処理物排出時間を交互に行うことで、減圧、減温を最低限に保持する。クッカー内部攪拌羽根は、外リボンスクリューにて排出方向送りとし、内リボンスクリューは逆の投入部方向送り構造とする。排出口は側面中心部よりの排出とし、排出部内部下部に原料貯留部を設け、超臨界処理の保持時調整延長を図る。原料排出は、電動弁の開閉で、間欠的に内部の圧力温度を見ながら、かつ排出原料の処理状態をみながら行う。この処理は、ガス濃度系と排気電動弁の操作で行うことは先に述べた。
【0025】
次に、第三亜臨界水クッカーで処理物の仕上げを行う。第三亜臨界水クッカー本体は内部に攪拌・移送羽根を、外部に熱媒体加熱のジャケットを備え、第二亜臨界水クッカーからの原料供給電動弁と、排出電動弁、及び排気筒とその電動弁にて構成する。操作は、排出電動弁を閉、入口電動弁を開として高圧の第二超臨界水クッカーから十分処理された所定量の原料を投入する。投入完了後に入口電動弁を閉として、最後の原料水分調整脱水、例えば、5ないし10%水分値に持ってゆく。原料水分は排気電動弁を開として、余剰水分の脱水を行う。脱水はクッカー内部を減圧状態にして品温95℃付近の状態で行う。脱水調整完了後電動弁を開として排出を行う。脱水調整間の時間を利用して、クッカー内に未分解物を選別分離するネットを設けてそれぞれ分離排出する方法もある。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有機物処理方法及び装置の利用により、有機廃棄物の形態がいかなる状態であろうとも、原料槽で破砕と混合が一部分解を伴いながら円滑に行えるので、第一亜臨界水クッカーへ導入すると、亜臨界水処理が比較的低温低圧力でも高圧分解のトラブルを起こすことなく安定に処理できる効果がある。そのために、次に控えている第二超臨界水クッカーでの処理が安定して可能であり、これにより、低い燃料コストで効率よく分解処理ができる。
【0027】
この第二超臨界水クッカーは処理条件がきつい2.5MPa-220℃以上の超臨界処理中においては、原料物の加水分解反応において、原料物から塩素ガス、硫化水素ガス、ダイオキシンガス等が発生する。これらのガス成分は、原料周囲の水蒸気に溶け込み相当のガス濃度となる。このガス濃度を測定し、ガス濃度調整により加水分解反応が均一に行われることとなるのである。このような超臨界水処理を行うことで、処理物のダイオキシン濃度、塩素含有量が軽減される効果がある。
【0028】
続く第三亜臨界水クッカーは、廃棄物処理物の最後の仕上げであり、再び亜臨界水処理を行うことで、超亜臨界処理物の品質が平均化されて、しかも、その前段の処理でダイオキシン濃度、塩素含有量の少ないこれまでにない高品質な製品となる。また、このクッカーの構造が第一亜臨界水クッカーとほぼ同一であるから、全体として装置コストを低く抑えることができる利点がある。
【0029】
本発明の更なる一般的効果は次のようである。すなわち、有機性廃棄物を肥料化固形肥料あるいは液体肥料又はバイオマス燃料にするし、未分解固形物は金属類を回収し、残りのガラス、プラスチック類を埋め立て処理に移す。得られた固形肥料あるいは液体肥料などの肥料分は、農場や植物工場へ供給し、バイオマス燃料は主に火力発電所に供給して、発電ボイラーによる発電に利用する。石油系の重油やガス燃料と共用することでボイラーの損傷を防ぐことはよく言われていることであるから、好ましい利用方法である。発電ボイラーで発生する電力や温水は病院や老人福祉施設へ還元利用したり、先の植物工場などへ、肥料分とともに供給したりできる。このような好循環が、本発明の廃棄物の処理方法及び装置により達成できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の有機性廃棄物等の亜臨界水又は超臨界水による処理方法に好適な処理装置の一例を示す全体構成図である。
【
図2】第二超臨界水クッカーのリボンスクリューへの攪拌羽根取付構造例を示す拡大図である。
【
図3】外リボンスクリュー及び内リボンスクリューに設けた攪拌羽根の一例を示す第二超臨界水クッカー縦断面図である。
【
図4】外リボンスクリューに設けたスクレーパの一例を示す第二超臨界水クッカー縦断面図である。
【
図5】
図1中の第二超臨界クッカーの処理物排出面を示す
図1中の同クッカー右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機性廃棄物等の亜臨界水又は超臨界水による処理方法に好適な処理装置の一例を示す全体構成図であり、ここで処理すべき廃棄物は、大型の病院や老人福祉施設などから大量に排出する肥料化又は燃料化できない異物が混在する有機性廃棄物、例えば、食品調理くずからなる動植物性残渣のほか、大量の使用済みオムツ,布くず、紙くずから、注射針その他の医療器具からくるガラス、廃プラスチック類、金属等の異物が混在するもので、あらかじめ粗大ごみに属する大型ごみは選別作業で分離したものである。
【0032】
この廃棄物を本発明の方法及び装置で処理するのであるが、まず、
図1に示すように本発明の方法は、有機性原料を高圧・高温下において連続して加水分解反応処理から殺菌処理更には脱水処理まで行うに際し、具体的な処理方法としては、これらの処理に必要な複数の耐圧容器(以下単に「クッカー」と称する)を用い、それらクッカーに順次投入可能な大きさ、例えばほぼ400mm以下に破砕機1で破砕したものを原料槽2へ送り込む。元々400mm以下の原料は破砕機1を通さずに直接原料槽へ送り込んでよい。原料槽2は原料の混合と10~50℃に加温が可能な熱媒体ジャケット21と回転翼22を備えており、次の第一亜臨界水クッカー3へ処理条件がほぼ整った均等な原料を貯蔵、供給する役目をする。
【0033】
原料槽2に貯蔵された原料は、第一、第二、第三と三つの亜臨界水クッカー、超臨界水クッカー、亜臨界水クッカーへと移動して、それぞれの処理に好適な構造及び処理条件に設計された槽で原料の状態に応じて加熱分解処理される。まず、第一亜臨界水クッカー3では、原料の一次昇温及び一部亜臨界処理を行う。そのために、本体は攪拌羽根31を備えて原料の攪拌と移送作動をし、熱媒体油加熱のジャケット32、マイクロ波発生器33によるマイクロ波伝送座34、水分供給の給水座35、及び排気筒36にて構成する。これらの制御は電動弁6(61,62,63,64,65)とその開閉作動信号により行う。すなわち、原料槽2から第一亜臨界水クッカー3への投入経路には原料投入電動弁61が設けられ、投入された原料はこのクッカー内で処理されて次の第二超臨界水クッカー4へ移動電動弁62で移動量を制御されて投入される。原料の加熱昇温はクッカー内の圧力が大気圧信号によりバッチ毎の開作動にてマイクロ波で98℃まで可能なKW供給量を照射する。これにより原料は投入時の30℃から98℃まで加熱昇温できる。
【0034】
続く第二超臨界水クッカー4は本発明の主力である超臨界水による処理方法及び装置であり、本体には内外二重のリボンスクリュー41,42からなる攪拌羽根を設け、熱媒体油加熱によるジャケット43、原料の入り口44には前記原料移動電動弁62及び出口45と電動弁7(71,72)及び排気筒46とその圧力調整の電動弁71で構成する。クッカー内部は3MPa-250℃で保持する。原料投入及び排出時には、クッカー内部圧力、内部温度の低下が生じるが2.5MPa-220℃下限となるように、電動弁71,72の開閉で原料投入時間・処理物排出時間を交互に行うことで、減圧、減温を最低限に保持する。原料排出は、電動弁72の開閉で、間欠的に内部の圧力温度を見ながら、かつ排出原料の処理状態をみながら行う。クッカー内部攪拌羽根は、外リボンスクリュー42にて排出方向送りとし、内リボンスクリュー41は逆の投入部方向送り構造とする。原料処理物取出しの排出口は、後述するように、原料出口45がクッカー側面中心から左右にずれたところの出口座47,48よりの排出とし、排出口内部に原料貯留部49を設け、亜臨界処理の保持時調整延長を図るのに都合よくしている。
【0035】
この第二超臨界クッカーには、排気筒46にガス濃度計50が設置されていることである。2.5MPa-220℃以上の超臨界処理中においては、加水分解条件がきついので、原料物の加水分解反応において原料物から塩素ガス、硫化水素ガス、ダイオキシンガス等が発生する。これらのガス成分は、原料周囲の水蒸気に溶け込み相当のガス濃度となる。このガス濃度を測定し、既定値上限を設定して、その上限に至ったときに排気電動弁を開としてガス濃度値が設定下限に至る間、排気する。すなわち、このガス濃度調整により加水分解反応が均一に行われることとなるのである。このような超臨界水処理を行うことで、処理物中のダイオキシン濃度、塩素含有量が軽減される。
【0036】
図2、
図3及び
図4は、本発明の処理方法に用いる主要な処理装置である第二超臨界水クッカー4の一例であり、これらの図によりその構造を更に詳細に説明する。処理容器の容量は第一臨界水クッカーより更に大きく、かつ高耐圧性で加熱可能なジャケット43を有する円形の横方向に長い筒型の処理容器であって、クッカー内部攪拌羽根は、外リボンスクリュー42にて排出方向送りとし、内リボンスクリュー41は逆の投入部方向送り構造とする。排気筒46には複数のガス濃度計50が設けられている。
【0037】
図3は、外リボンスクリュー42に取り付けた攪拌羽根421及び内リボンスクリュー41への攪拌羽根411の取付状態を示しており、相互に間隔を置いて6方向に取り付けている。外リボンスクリュー攪拌羽根421はジャケット内筒面431との間にほぼ5mm程度の隙間を設けて、攪拌抵抗を少なくしている。
【0038】
図4は、外リボンスクリュー42の攪拌羽根421間に設けたスクレーパ422の取付状態を示す。スクレーパはジャケット内筒面431に付着した処理物を掻き落す役目をするもので、これにより内筒面431を清浄にして反応を円滑にする。スクレーパ422の取付数や位置は処理物の性状により適宜変更してよいようになっている。
【0039】
前述したところであるが、排出口の原料出口45は、
図5のクッカーの処理物排出面に示すように、クッカー側面中心から左右にずれたところの出口座47,48よりの排出とし、排出口内部に原料貯留部49を設け、超臨界水処理の保持時間の調整や延長を図る。
【0040】
次に、第三亜臨界水クッカー5で処理物の仕上げを行う。第三亜臨界水クッカー5本体は内部に攪拌・移送羽根51を、外部に熱媒体加熱のジャケット52を備え、第二超臨界水クッカー4からの原料供給電動弁72と、排出電動弁73、及び排気筒53とその電動弁74にて構成する。操作は、排出電動弁73を閉、入口の原料供給電動弁72を開として第二超臨界水クッカーから所定量の原料を投入する。投入完了後に入口の原料供給電動弁72を閉として、最後の原料水分調整脱水、例えば、5ないし10%水分値に持ってゆく。原料水分は排気電動弁を開として、余剰水分の脱水を行う。脱水はクッカー内部を減圧状態にして品温95℃付近の状態で行う。脱水調整完了後排出電動弁73を開として排出を行う。
【0041】
排出された処理物は、ほぼ完全に肥料化又は飼料化された製品となっているので、
図1の右下にみられるように、スクリーンタイプの選別機81により非分解物を取り除いて製品とする。ここで、脱水調整の時間を利用して、クッカー内に未分解物を選別分離するネットを設けてそれぞれ分離排出する方法もある。ここではスクリーンタイプの選別機81として、上に未反応のプラスチックその他のゴミを運ぶコンベア811と、下に製品となった処理物を運ぶコンベア812を設け、その間にはスクリーン813を備えて効率よく製品から夾雑物を取り除いている。
【0042】
以上説明した処理装置の圧力や温度の管理が重要で、そのために第一、第二、第三クッカーの熱媒体ジャケットへの熱媒体供給機95とその供給路を備えている。また、各クッカーの排気筒(36.46.53)から発生する、水蒸気、分解ガス、粉塵等はそのまま外気放出できないので、
図1右上に示すように、「バイオマスボイラー燃焼脱臭設備」90で処理する。すなわち、熱い分解ガス等は、冷却コンデンサ91でその前に水蒸気とともに冷却してドレン水で受け、ガス分は水エジェクタ92で水槽93に導き、洗浄したガスを排出する。水槽上部に浮上した微粉物や、水槽の底のたまった沈殿物は原料槽2に戻して、再処理をしての良い。
【0043】
ここで、本発明の処理方法及び処理装置による実施例として、魚残渣物の処理について述べる。港に接した缶詰め等の水産加工場から大量に排出される魚あら(魚残渣物)を図に示す本装置で連続式の亜臨界クッカーと超臨界水クッカーで肥料化した。
図1に示すようにこれらの処理に必要な複数の耐圧容器(以下単に「クッカー」と称する)を用い、それらクッカーに順次投入可能な大きさ、例えばほぼ400mm以下に破砕機1で破砕したものを原料槽2へ送り込む。元々400mm以下の原料は破砕機1を通さずに直接原料槽へ送り込んでよい。原料槽2は原料の混合と10~50℃に加温が可能な熱媒体ジャケット21と回転翼22を備えており、次の第一亜臨界水クッカー3へ処理条件がほぼ整った均等な原料を貯蔵、供給する役目をする。この前処理により続く第二、第三クッカーで極めてスムーズにやっかいな魚残渣物の処理ができた。
【符号の説明】
【0044】
1 原料破砕機
2 原料槽
3 第一亜臨界水クッカー
4 第二超臨界水クッカー
5 第三亜臨界水クッカー
6 電動弁
7 電動弁
21 熱媒体ジャケット
22 回転翼
31 攪拌羽根
32 熱媒体ジャケット
33 マイクロ波発信器
34 マイクロ波伝送座
35 給水座
36 排気筒
41 内リボンスクリュー
411 内攪拌羽根
42 外リボンスクリュー
421 外攪拌羽根
422 スクレーパー
43 熱媒体ジャケット
431 ジャケット内筒面
44 原料入口
45 原料出口
47 左出口座
48 右出口座
49 原料貯留部
50 ガス濃度計
51 攪拌移送羽根
52 熱媒体ジャケット
53 排気筒
61 原料投入電動弁
62 原料移動電動弁
71 電動弁
72 電動弁
73 排出電動弁
74 排気筒