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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153286
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ドライ式デンタル加工機
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20241022BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61C 13/38 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
A61C13/00 Z
A61C13/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067083
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】百々 晋平
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼松 和秀
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011DD02
3C011DD03
(57)【要約】
【課題】内部に堆積した切削粉の除去が比較的容易なドライ式デンタル加工機を提供すること。
【解決手段】ドライ式デンタル加工機10は、内部に加工室120が形成され、加工室120の前方に前面開口部121が形成されたケース本体11と、前面開口部121に着脱可能に装着された内カバー126と、内カバー126の前方にてケース本体11に開閉可能に設けられた加工室扉122とを備えている。作業者は、内カバー126を前面開口部121から取り外し、内カバー126に堆積した切削粉を加工室120に押しやることにより、内カバー126に堆積した切削粉を除去することができる。また、内カバー126と加工室扉122との間には間隔があるため、切削粉がドライ式デンタル加工機10の外部にこぼれにくい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被切削物を切削する加工室が形成され、前記加工室の前方に開口が形成されたケース本体と、
前記開口に着脱可能に装着された内カバーと、
前記内カバーの前方に前記内カバーから離間して配置され、前記ケース本体に開閉可能に設けられた外扉と、を備えたドライ式デンタル加工機。
【請求項2】
前記内カバーは、透光性を有している、請求項1に記載のドライ式デンタル加工機。
【請求項3】
前記ケース本体は、後方に凹み、かつ前記開口が形成された凹部を備え、
前記内カバーは、前記凹部に嵌め込まれる、請求項1に記載のドライ式デンタル加工機。
【請求項4】
前記凹部および前記内カバーの一方は磁石を備え、他方は前記磁石と吸着する磁性体を備えている、請求項3に記載のドライ式デンタル加工機。
【請求項5】
前記内カバーは、樹脂材料により形成され、
前記開口は、正面視にて矩形形状であり、
前記凹部は、前記開口の周縁部を備え、
前記磁石または前記磁性体は、前記周縁部の各辺に少なくとも1つ設けられている、請求項4に記載のドライ式デンタル加工機。
【請求項6】
前記凹部は、前記開口の周縁部を備え、
前記内カバーは、前記磁石を備え、
前記周縁部は、板金により形成されている、請求項4に記載のドライ式デンタル加工機
【請求項7】
前記内カバーは、透光性を有し、
前記外扉は、透光性を有する外カバーを有し、
前記外カバーは、正面視にて前記内カバーと少なくとも一部が重なっている、請求項1に記載のドライ式デンタル加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ式デンタル加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
被切削物に加工ツールを当接させる切削加工により、例えば、歯科用成形品などを作製する切削加工機が従来から知られている。このような切削加工機では、切削加工が実施されるときに切削粉が発生する。切削粉が切削加工機の外部にこぼれるのを防ぐため、加工ツールは、フロントカバー(外扉)などにより覆われている。例えば、特許文献1には、加工ツールと、加工ツールを把持して回転させるスピンドルと、加工ツールを移動させる駆動部と、加工部の前方に配置されたフロントカバーと、を備えた切削加工機が開示されている。加工ツールは、切削加工機の壁部とフロントカバーとによって区画された内部空間に収容されている。係る切削加工機では、切削加工が実施されると切削粉が生じるが、フロントカバーにより、切削加工中に外部に切削粉がこぼれることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-142617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントカバーの内部空間側には、徐々に切削粉が堆積する。フロントカバーに比較的多くの切削粉が堆積すると、作業者が被切削物を取り出すためにフロントカバーを開けたときに、切削加工機の外部に切削粉がこぼれる可能性がある。ここで、フロントカバーに付着している切削粉を作業者が定期的に拭き取ることにより、切削粉が堆積することを防ぐことができる。しかしながら、切削粉は舞いやすいため、切削粉が外部にこぼれないように拭き取る作業は、作業者にとって負担である。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カバーに堆積した切削粉の除去が比較的容易なドライ式デンタル加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るドライ式デンタル加工機は、内部に被切削物を切削する加工室が形成され、前記加工室の前方に開口が形成されたケース本体と、前記開口に着脱可能に装着された内カバーと、前記内カバーの前方に前記内カバーから離間して配置され、前記ケース本体に開閉可能に設けられた外扉と、を備えている。
【0007】
係るドライ式デンタル加工機によれば、前記内カバーは、前記ケース本体に形成された前記開口に対して着脱可能である。したがって、作業者は、前記外扉を開け、前記内カバーを前記開口から取り外すことにより、前記内カバーに堆積した切削粉を除去することができる。作業者は、前記内カバーに堆積した前記切削粉を前記加工室内に押しやることができる。また、前記内カバーは、前記外扉の後方に配置されており、前記外扉と前記内カバーとの間には間隔がある。したがって、前記内カバーから前記切削粉の一部がこぼれても、前記ドライ式デンタル加工機の外部には前記切削粉がこぼれにくい。したがって、作業者は、前記切削粉の除去を比較的容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カバーに堆積した切削粉の除去が比較的容易なドライ式デンタル加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るドライ式デンタル加工機の斜視図である。
図2】被切削物およびアダプタの平面図である。
図3】左方から見たドライ式デンタル加工機の縦断面図である。
図4】右方から見たドライ式デンタル加工機の縦断面図である。
図5】ワークホルダの平面図である。
図6】加工室をX軸方向の前方から見た図である。
図7図6におけるA-A断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るドライ式デンタル加工機について説明する。なお、ここで説明される実施の形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0011】
図1は、一実施形態に係るドライ式デンタル加工機10の斜視図である。以下の説明では、ドライ式デンタル加工機10を正面から見たときに、ドライ式デンタル加工機10から遠ざかる方を前方、ドライ式デンタル加工機10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、ドライ式デンタル加工機10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0012】
図2は、被切削物1およびアダプタ5の平面図である。本実施形態に係るドライ式デンタル加工機10は、アダプタ5に保持されたディスク状の被切削物1を切削加工する加工機である。ドライ式デンタル加工機10は、被切削物1を切削して、歯科用成形品、例えば、クラウン、ブリッジ、コーピング、インレー、アンレー、ベニア、カスタムアバットメント等の歯冠補綴物や、人工歯、義歯床等を作製する装置である。デンタル加工機には、クーラントを使用しないドライ式のものと、クーラントを使用するウェット式のものと、が存在する。本明細書では、ドライ式のデンタル加工機について説明する。
【0013】
被切削物1は、例えば、PMMA、PEEK、ガラス繊維強化樹脂、ハイブリッドレジン等のレジンや、ガラスセラミックス、ジルコニア等のセラミックス材料、コバルトクロムシンターメタル等の金属材料、ワックス、石膏等で構成されている。被切削物1の材料としてジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。被切削物1は、平板状に形成されている。ここでは、被切削物1の形状は、ディスク状(円板状)である。ただし、被切削物1は、他の形状、例えばブロック状(例えば立方体状や直方体状)等であってもよい。
【0014】
図2に示すように、アダプタ5は、ディスク状の被切削物1を保持する。アダプタ5は、ここでは、被切削物1に対応する略円形の挿入孔5aが中央部に形成された平板状のアダプタである。被切削物1は、挿入孔5aに挿入されることにより、アダプタ5に保持される。被切削物1は、アダプタ5に保持された状態でドライ式デンタル加工機10に収容され、加工される。
【0015】
図3は、左方から見たドライ式デンタル加工機10の縦断面図である。図4は、右方から見たドライ式デンタル加工機10の縦断面図である。図3および図4に示すように、ドライ式デンタル加工機10は、箱状に構成されたケース本体11を有している。ケース本体11の内部は、アダプタ5(図2参照)を保持するワークホルダ20が収容された加工室120と、ワークホルダ20を移動させるホルダ移動装置30が収容された駆動装置室130と、切削装置50、エアブロー装置55および移動装置60が収容された切削装置室150と、ワークチェンジャ70が収容されたチェンジャ室170と、切削ツール6をツールストッカ80に収納するためのツール交換室180と、を含む複数の空間に区画されている。
【0016】
ワークホルダ20は、被切削物1を保持する装置である。ワークホルダ20は、ここでは、アダプタ5を介して被切削物1を保持する。ただし、ワークホルダ20は、他の部材を介さず、被切削物1を直接保持してもよい。図5は、ワークホルダ20の平面図である。図5に示すように、ワークホルダ20は、左右一対のアーム21を備えている。アダプタ5は、一対のアーム21の間に挿入されることによってワークホルダ20に保持される。
【0017】
図5に示すように、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を支持して移動させるものである。本実施形態では、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を前後方向に移動させる。より詳しくは、図4に示すように、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20(図3参照)を斜め前後方向に移動させる。ワークホルダ20は、ホルダ移動装置30により前方に移動されると上方にも移動する。ワークホルダ20は、ホルダ移動装置30により後方に移動されると下方にも移動する。以下では、ホルダ移動装置30によってワークホルダ20が移動される方向をX軸方向とも呼ぶ。また、以下では、特に断る必要がない場合には、X軸方向の前方を単に前方と、X軸方向の後方を単に後方と言うことがある。
【0018】
図5に示すように、ホルダ移動装置30は、左右方向に延びるとともにワークホルダ20を支持する支持アーム31を備えている。図4に示すように、ホルダ移動装置30は、支持アーム31に接続されたX軸方向移動体32と、一対のX軸ガイドレール33と、X軸方向駆動モータ34と、を備えている。ホルダ移動装置30は、支持アーム31をX軸方向に移動させることにより、ワークホルダ20をX軸方向に移動させる。ホルダ移動装置30は、その少なくとも一部が駆動装置室130に収容されている。ここでは、ホルダ移動装置30のX軸方向移動体32、一対のX軸ガイドレール33、X軸方向駆動モータ34、および支持アーム31の一部が、駆動装置室130に収容されている。
【0019】
図4に示すように、一対のX軸ガイドレール33は、X軸方向に延びている。X軸方向移動体32は、一対のX軸ガイドレール33に摺動可能に係合している。X軸方向移動体32は、X軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動することが可能である。図示は省略するが、例えば、X軸方向移動体は、ボールねじに接続されている。X軸方向駆動モータ34は、ボールねじを回転させる。X軸方向駆動モータ34を駆動すると、X軸方向移動体32は、X軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動する。なお、ホルダ移動装置30は、ボールねじ機構を有するものには限定されず、例えば、タイミングベルトやワイヤを有していてもよい。
【0020】
図5に示すように、支持アーム31は、左右方向に延びる軸線AXb周りに回転する回転シャフト31aと、軸線AXbと直交するように回転シャフト31aに接続され回転シャフト31aとともに前後方向に回転する第1アーム31bと、軸線AXbに平行に(第1アーム31bと直交するように)第1アーム31bに接続された第2アーム31cと、を備えている。図4に示すように、X軸方向移動体32には、回転シャフト31a(図5参照)を軸線AXb周りに回転させるB軸回転モータ41Bが設けられている。B軸回転モータ41Bが駆動して回転シャフト31aが回転すると、ワークホルダ20は前後方向に回転する。
【0021】
図5に示すように、回転装置40は、ワークホルダ20を左右方向に回転させるA軸回転装置40Aを備えている。A軸回転装置40Aは、A軸回転モータ41Aと、回転軸42Aと、を備えている。A軸回転モータ41Aは、第2アーム31cに固定されている。回転軸42Aは、A軸回転モータ41A(より詳細にはA軸回転モータ41Aを含む駆動ユニット)に接続され、軸線AXaに沿って前後方向に延びている。A軸回転モータ41Aを駆動すると、回転軸42Aは軸線AXa周りに回転する。
【0022】
図3に示すように、加工室120の後方には、排気口128が開口している。排気口128には、後述する排気ダクト92等を介して集塵機(図示せず)が接続される。排気口128からは、加工室120内の空気や切削粉が排出される。
【0023】
図3に示すように、本実施形態では、排気口128の下方には、集塵チャンバ90が設けられている。集塵チャンバ90は、上方が開放された箱状の部材である。集塵チャンバ90には、上方を向くように開口した上方開口部90Uが形成されている。上方開口部90Uは排気口128に接続されている。集塵チャンバ90には、内部空間が形成されている。図5に示すように、集塵チャンバ90の内部空間は、平面視において排気口128よりも大きい。
【0024】
図3に示すように、集塵チャンバ90には、ダクト接続孔91が形成されている。ダクト接続孔91は、排気ダクト92が接続される開口部である。ドライ式デンタル加工機10は、ダクト接続孔91に接続される排気ダクト92を備えている。排気ダクト92の前端部は、ダクト接続孔91に接続されている。排気ダクト92は、集塵チャンバ90を介して排気口128および加工室120に連通している。排気ダクト92の後端部は、ドライ式デンタル加工機10の外部まで延びている。排気ダクト92の後端部には、集塵機(図示せず)が接続される。
【0025】
ワークチェンジャ70は、複数の被切削物1を収納可能に構成されており、加工する被切削物1を交換するために使用される。本実施形態では、被切削物1が装着されたアダプタ5(図2参照)がワークチェンジャ70により交換される。図3に示すように、ワークチェンジャ70は、アダプタ収納部71と、アダプタ収納部71を加工室120に搬送する搬送装置72と、を備えている。アダプタ収納部71は、被切削物1が装着されたアダプタ5(図2参照)を収納する。例えば、被切削物1の交換時のような場合を除き、アダプタ収納部71は、チェンジャ室170に収容されている。図1に示すように、アダプタ収納部71には、それぞれ1つのアダプタ5を収納する棚状の収納スペース71aが複数設けられている。複数の収納スペース71aは、上下方向に並んでいる。より詳しくは、複数の収納スペース71aは、X軸方向に直交する斜め上下方向(以下、L軸方向とも呼ぶ、図3参照)に並んで配置されている。
【0026】
図3に示すように、搬送装置72は、L軸方向に延びるスライドアーム72Aと、L軸方向駆動モータ72Bと、を備えている。スライドアーム72Aは、アダプタ収納部71に固定され、L軸方向に摺動可能である。L軸方向駆動モータ72Bが駆動することにより、スライドアーム72AがL軸方向に移動し、加工室120に到達する。これにより、アダプタ収納部71がL軸方向に移動する。アダプタ収納部71がL軸に沿って下方に移動した状態において、ワークホルダ20をX軸方向に前進させ、アダプタ5の収納スペース71a(図1参照)に突入させることにより、アダプタ5がワークホルダ20に保持される。
【0027】
切削装置50は、切削装置室150に収容されている。切削装置50は、ワークホルダ20に保持された被切削物1を切削ツール6によって切削する。切削装置50は、ワークホルダ20およびツールストッカ80よりも上方に設けられている。切削装置50は、切削ツール6を把持して回転させるスピンドル51を備えている。スピンドル51は、回転ユニット52と、回転ユニット52の下端部に設けられた把持部53と、を備えている。回転ユニット52は、X軸方向と直交する(ここでは、L軸方向と平行な)方向に延びている。以下、この方向をZ軸方向とも呼ぶ。回転ユニット52は、把持部53をZ軸方向に平行な軸線周りに回転させる。回転ユニット52は、ここでは、モータ内蔵のユニットである。ただし、回転ユニット52は、例えば、外部のモータとベルト等により接続されていてもよい。把持部53は、開閉可能に構成されている。把持部53は、Z軸方向の下方に突き出すように切削ツール6を把持する。把持部53は、例えば、エア駆動式のコレットチャックである。ただし、把持部53の方式は特に限定されない。スピンドル51には、エアブロー装置55が設けられている。エアブロー装置55は、下端部よりエアを噴出する装置であり、切削により生じた被切削物1の切削粉を飛ばすものである。
【0028】
移動装置60は、切削装置室150に収容されている。移動装置60は、切削装置50およびエアブロー装置55をZ軸方向および左右方向に移動させる装置である。ここで、左右方向とは、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向である。以下では、左右方向のことをY軸方向とも呼ぶ。移動装置60は、ワークホルダ20よりも上方に設けられている。移動装置60が切削装置50をY軸方向およびZ軸方向に移動させ、ホルダ移動装置30がワークホルダ20をX軸方向に移動させることにより、切削ツール6と被切削物1との位置関係が三次元的に変化する。切削装置50およびエアブロー装置55は、Z軸方向の移動により、加工室120内に出現し、または、切削装置室150内に退避する。なお、加工室120と切削装置室150とは、開口部120Aにより連通している。開口部120Aは、切削装置50およびエアブロー装置55が通過できる程度の大きさを有している。移動装置60は、その少なくとも一部が加工室120内かつワークホルダ20よりも上方に配置されるような位置に切削装置50およびエアブロー装置55を移動させることが可能である。移動装置60は、加工室120と切削装置室150との間で切削装置50およびエアブロー装置55を移動させることが可能である。
【0029】
移動装置60は、Z軸方向移動装置60Zと、Y軸方向移動装置60Yと、を備えている。Z軸方向移動装置60Zは、切削装置50およびエアブロー装置55をZ軸方向に移動させる装置である。Y軸方向移動装置60Yは、切削装置50およびエアブロー装置55をY軸方向に移動させる装置である。Z軸方向移動装置60Zは、Z軸方向に延びる一対のZ軸ガイドシャフト61Zと、Z軸ガイドシャフト61Zに摺動可能に係合し、切削装置50およびエアブロー装置55を支持するZ軸方向移動体62Zと、Z軸方向駆動モータ63Zと、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。Z軸方向移動体62Zは、ボールねじに接続されている。Z軸方向駆動モータ63Zが回転すると、ボールねじが回転し、Z軸方向移動体62Zは、Z軸ガイドシャフト61Zに沿って移動する。これにより、切削装置50とエアブロー装置55とがZ軸方向に移動する。Y軸方向移動装置60Yは、Z軸方向移動装置60Zが切削装置50およびエアブロー装置55をZ軸方向に移動させるのと同様の仕組みで、切削装置50およびエアブロー装置55をY軸方向に移動させる。
【0030】
ツールストッカ80は、駆動装置室130に収容されている。図3に示すように、ツールストッカ80は、棒状に形成された切削ツール6を複数収納可能な箱状の部材である。複数の切削ツール6は、例えば、被切削物1の材料や切削の種類に応じて使い分けられる。ツールストッカ80は、X軸方向移動体32(図4参照)に支持されている。詳しくは、ツールストッカ80は、X軸方向移動体32の上面に固定されている。
【0031】
ホルダ移動装置30(図4参照)は、開口部120Aの下方に位置するツール把持位置P1にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。切削装置50に切削ツール6を把持させるには、まず、ツール把持位置P1にツールストッカ80を移動させる。次に、切削装置50をツール把持位置P1の上方の位置に移動させる。この状態で、Z軸方向移動装置60Zを駆動して切削装置50を下降させる。このことにより、切削装置50にツールストッカ80の切削ツール6を把持させることができる。
【0032】
ホルダ移動装置30は、ツール把持位置P1よりも前方に設定されたツール交換位置P2にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。ツール交換位置P2は、ツール交換室180(図4参照)の下方に設定されている。ツール交換室180の底壁183(図4参照)には、ツール交換位置P2の上方に位置しかつZ軸方向に開口した開口部(図示せず)が形成されている。開口部は、ユーザがツールストッカ80に切削ツール6を抜き差しするためのものである。ホルダ移動装置30を駆動してツールストッカ80をツール交換位置P2に移動させると、ユーザは、開口部を通してツールストッカ80にアクセスすることができる。開口部が形成されたツール交換室180を設けることにより、切削ツール6の交換時などにユーザがホルダ移動装置30に触れてしまうことが防止されている。また、かかる構成により、切削ツール6の交換時などに駆動装置室130に外部の異物が侵入することが抑制されている。
【0033】
図1に示すように、加工室120の前面開口部121の前方には、加工室扉122が開閉自在に設けられている。前面開口部121は、本発明における開口の一例である。加工室扉122は、本発明における外扉の一例である。駆動装置室130の前面開口部131(図4参照)の前方には、駆動装置室扉132が設けられている。チェンジャ室170の前面開口部171(図3参照)の前方には、チェンジャ室扉172が開閉自在に設けられている。ツール交換室180の前面開口部181(図4参照)の前方には、ツール交換室扉182が開閉自在に設けられている。加工室扉122、チェンジャ室扉172、およびツール交換室扉182には、それぞれ、窓部122a、172a、および182aが設けられている。窓部122a、172a、および182aは透光性を有する材料により形成されている。窓部122aは、本発明における外カバーの一例である。また、窓部122aは、正面視にて後述する内カバー126と揃った位置に配置されている。なお、窓部122aは、その一部が正面視にて内カバー126と重なっているものであってもよい。駆動装置室扉132の前面には、操作パネル110が設けられている。図3および図4に示すように、ケース本体11の前面(ここでは、加工室120、駆動装置室130、チェンジャ室170、およびツール交換室180の前面開口部121、131、171、181)は、底面に対して斜めに形成されている。ケース本体11の前面は、後方に傾くように形成されている。
【0034】
加工室扉122の後方には、図6に示す枠部123が形成されている。枠部123は、加工室120を区画する上方、下方、左方および右方の壁である天壁120U、底壁120D、左壁120Lおよび右壁120Rに接続されている。枠部123は、後方に凹んだ凹部123aを備えている。凹部123aには、前面開口部121が形成されている。凹部123aには、内カバー126が嵌め込まれている。内カバー126には、磁石100が取り付けられている。
【0035】
前面開口部121は、加工室120(図3参照)の前方に配置されている。図6に示すように、本実施形態では、前面開口部121の形状は、正面視にて矩形形状である。ここで、本明細書において正面視とは、X軸方向において、前方から後方に向かう方向に見るときの見方である。前面開口部121の前面には、内カバー126が配置されている。このことにより、加工室120は、集塵チャンバ90(図3参照)以外の箇所において、ドライ式デンタル加工機10の外部と接続されない構造となっている。
【0036】
凹部123aの形状は、正面視にて矩形形状である。凹部123aは、前面開口部121の周縁に位置する周縁部123aaを備えている。本実施形態では、周縁部123aaは、板金により形成されている。板金は磁性体の一つであり、磁石100に吸着する材料である。周縁部123aaは、辺SD1~SD4により形成されている。すなわち、辺SD1~SD4は、前面開口部121を囲んでいる。なお、周縁部123aaを形成する材料は、板金に限定されない。例えば、板金以外の材料により形成された周縁部123aaが、後方に凹んだ取付部を備え、当該取付部に磁性体が埋め込まれていてもよい。このとき、当該取付部は、磁石100と対向する位置に配置される。
【0037】
内カバー126は、凹部123aに嵌め込まれ、前面開口部121の前方に着脱可能に取り付けられている。図7に示すように、本実施形態では、内カバー126の前面126Fに磁石100が取り付けられている。図7は、図6におけるA-A断面の断面図である。磁石100は、内カバー126を挟んで、周縁部123aaとX軸方向にて対向するように配置されている。より詳しくは、図6に示すように、内カバー126のうち、辺SD1および辺SD3に対向する箇所には、磁石100がそれぞれ2つ取り付けられている。内カバー126のうち、辺SD2およびSD4に対向する箇所には、磁石100が1つずつ取り付けられている。磁石100の取り付け方法は、特に限定されない。例えば、磁石100は、接着剤や両面テープなどにより取り付けられていてもよい。磁石100と周縁部123aaとが吸着することにより、内カバー126が取り付けられる。本実施形態では、内カバー126は、樹脂材料により形成されている。また、内カバー126は、透光性を有する材料により形成されている。図6に示すように、内カバー126の形状は、正面視にて矩形形状であり、凹部123aの大きさと略同一である。内カバー126の前面126F(図7参照)には、取手127が取り付けられている。取手127は、内カバー126の前面に取り付けられている。取手127の構成や形状は特に限定されない。
【0038】
以上、本実施形態にかかるドライ式デンタル加工機10の構成について説明した。次に作業者が内カバー126に堆積した切削粉を除去するときの動作について説明する。
【0039】
図3に示すように、内カバー126が前面開口部121に対して取り付けられた状態において、被切削物1の切削加工が実施されると、内カバー126の後面126Rrには、切削粉が徐々に堆積する。作業者は、まず、被切削物1の切削加工が実行されていないことを確認し、加工室扉122を開ける。次に、作業者は、内カバー126の取手127(図6参照)を掴み、前方に向かって内カバー126を取り外す。その後、作業者は内カバー126の後面126Rrに堆積した切削粉を加工室120の内部に向かって押しやることにより、内カバー126に堆積した切削粉を除去する。なお、このとき、内カバー126の一部または全部を加工室120に配置させた状態において、切削粉を押しやってもよい。切削粉の除去が完了したら、内カバー126に取り付けられた磁石100と、周縁部123aaと、を吸着させ、内カバー126を取り付ける。
【0040】
以上のように、本実施形態のドライ式デンタル加工機10によると、ケース本体11に形成された前面開口部121に対して内カバー126が着脱可能に装着されている。したがって、作業者は、加工室扉122を開け、内カバー126を前面開口部121から取り外し、内カバー126に堆積した切削粉を除去することができる。作業者は、内カバー126の後面126Rrに堆積した切削粉を加工室120に押しやることができる。また、内カバー126は、加工室扉122の後方に配置されており、加工室扉122と内カバー126との間には間隔がある。したがって、切削粉の一部がこぼれても、その一部の切削粉がドライ式デンタル加工機10の外部にはこぼれにくい。したがって、作業者は、切削粉の除去を比較的容易に行うことができる。
【0041】
本実施形態のドライ式デンタル加工機10によると、内カバー126は、透光性を有している。したがって、作業者は、内カバー126が取り付けられた状態でも、内カバー126の前方から加工室120の様子を視認することができる。例えば、作業者は、切削加工中の被切削物1を確認しながら切削加工を実行することができる。
【0042】
本実施形態のドライ式デンタル加工機10によると、ケース本体11は凹部123aを備え、内カバー126は凹部123aに嵌め込まれている。凹部123aは、枠部123から後方に凹んでいる。凹部123aが形成されていることにより、内カバー126を取り外したときに凹部123aに切削粉がとどまり、ドライ式デンタル加工機10の外部に切削粉がこぼれることが抑制されている。
【0043】
本実施形態のドライ式デンタル加工機10によると、凹部123aは、板金により形成された周縁部123aaを備えている。また、内カバー126には、磁石100が取り付けられている。したがって、磁石100と周縁部123aaとの吸着および取り外しにより、内カバー126を前面開口部121に容易に着脱させることができる。
【0044】
本実施形態のドライ式デンタル加工機10によると、凹部123aは周縁部123aaを備えている。内カバー126のうち、辺SD1および辺SD3に対向する箇所には、磁石100がそれぞれ2つ取り付けられている。内カバー126のうち、辺SD2およびSD4に対向する箇所には、磁石100が1つずつ取り付けられている。ここで、内カバー126は樹脂材料により形成されているため、内カバー126の仕上がりの状態によっては、内カバー126に反り返りが発生する可能性がある。例えば、凹部123aに取り付けられた内カバー126の一部が前方に反り返った場合、内カバー126と前面開口部121との間に隙間が生じる可能性がある。この場合、切削加工中に切削粉が前面開口部121を通り、前面開口部121の前方へこぼれる可能性がある。しかしながら、本実施形態のように各辺SD1~SD4に少なくとも一つ磁石100が設けられていることで、内カバー126の前面126Fおよび後面126RrがY軸方向およびZ軸方向に対して平行となるように力が加えられる。したがって、内カバー126を装着したときに内カバー126が反り返ることを抑制することができる。このことにより、前面開口部121から切削粉がこぼれることが抑制されている。
【0045】
本実施形態のドライ式デンタル加工機10によると、凹部123aは、周縁部123aaを備えており、周縁部123aaは、板金により形成されている。また、内カバー126は、磁石100を備えている。周縁部123aaを形成する板金と磁石100とは、着脱が可能である。したがって、周縁部123aaを板金で形成することにより、周縁部123aaに別途磁性体を取り付ける必要がない。このことにより、ドライ式デンタル加工機10の部品点数の増加を抑制することができる。
【0046】
本実施形態のドライ式デンタル加工機10によると、内カバー126および窓部122aは、透光性を有している。さらに、窓部122aは、正面視において内カバー126と重なった位置に配置されている。したがって、作業者は、内カバー126が装着され、かつ加工室扉122が閉じられた状態でも、内カバー126および窓部122aを通じて加工室120を視認することができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は、例示に過ぎず、本発明は種々の形態で実施することができる。
【0048】
その他、特に言及されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。例えば、切削加工機は、歯科用成形品を作製するデンタル用の切削加工機でなくてもよい。被切削物は、アダプタを介して切削加工機に保持されなくてもよく、切削加工機によって直接保持されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 ドライ式デンタル加工機
11 ケース本体
120 切削室
121 前面開口部(開口)
122 加工室扉(外扉)
126 内カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7