(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153287
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6581 20110101AFI20241022BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01R13/6581
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067086
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】中川 昌大
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FC21
5E021FC40
5E021LA10
5E021LA15
5E087EE04
5E087EE07
5E087EE10
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】コネクタを構成する部材を係止するための機構の合理化を図ることにより各部材の形状が複雑になることを抑制し、製造コストの上昇を抑制するのに有利なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、端子2が挿通される筒状の端子部11を有するハウジング3と、環状のパッキン4と、フロントホルダー5と、シールドシェル6とを備える。ハウジング3における端子部11の周囲には、ハウジング3の前面10a側と後面10b側とを貫通するスリット13が形成される。フロントホルダー5には、係止凹部51が形成され、シールドシェル6には、係止突起62が形成される。ハウジング3の後面10b側からスリット13を貫通するシールドシェル6の係止突起62が、フロントホルダー5の係止凹部51に係止される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が挿通される筒状の端子部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前面側から前記端子部に装着される環状のパッキンと、
前記ハウジングの前面側に配置されるフロントホルダーと、
前記ハウジングの後面側から嵌め込まれて前記端子部の少なくとも一部を包囲するシールドシェルと、を備え、
前記ハウジングにおける前記端子部の周囲には、前記ハウジングの前面側と後面側とを貫通するスリットが形成され、
前記フロントホルダーには、係止凹部が形成され、
前記シールドシェルには、係止突起が形成され、
前記ハウジングの後面側から前記スリットを貫通する前記シールドシェルの前記係止突起が、前記フロントホルダーの前記係止凹部に係止される、
コネクタ。
【請求項2】
前記フロントホルダーは、環状のホルダー本体を有し、
前記係止凹部は、前記ホルダー本体の前面に形成され、
前記シールドシェルは、板材を折り曲げて形成されるシェル本体を有し、
前記係止突起は、前記シェル本体の前部に、前記シェル本体を構成する前記板材の一部を切り起こした状態で形成される、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記シールドシェルには、前記ハウジングの後面側に当接する係止片部が設けられ、
前記係止片部は、前記シェル本体の後部に、前記シェル本体を構成する前記板材の一部を折り曲げた状態で形成される、
請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、例えば、ハウジングと、パッキンと、フロントホルダーと、シールドシェルと、を備えて構成される(特許文献1参照)。特許文献1に記載されるコネクタでは、ハウジングとフロントホルダーとの間にパッキンが挟み込まれて保持され、フロントホルダーは係止機構(係止孔、係止突起)を介してハウジングに係止される。その一方、シールドシェル(アルミシェル)は、ハウジング又はハウジングに装着されたリアホルダーに係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコネクタでは、少なくとも、フロントホルダーとハウジングとの間、及びハウジングとシールドシェルとの間にそれぞれ、係止機構を設ける必要があり、各部材の形状が複雑になり、製造コストの上昇を招き得る。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、コネクタを構成する部材を係止するための機構の合理化を図ることにより各部材の形状が複雑になることを抑制し、製造コストの上昇を抑制するのに有利なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るコネクタは、端子が挿通される筒状の端子部を有するハウジングと、ハウジングの前面側から端子部に装着される環状のパッキンと、ハウジングの前面側に配置されるフロントホルダーと、ハウジングの後面側から嵌め込まれて端子部の少なくとも一部を包囲するシールドシェルと、を備え、ハウジングにおける端子部の周囲には、ハウジングの前面側と後面側とを貫通するスリットが形成され、フロントホルダーには、係止凹部が形成され、シールドシェルには、係止突起が形成され、ハウジングの後面側からスリットを貫通するシールドシェルの係止突起が、フロントホルダーの係止凹部に係止される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コネクタを構成する部材を係止するための機構の合理化を図ることにより各部材の形状が複雑になることを抑制し、製造コストの上昇を抑制するのに有利なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るコネクタの一例を示す分解斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るコネクタの一例を示す一部破断の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本実施形態に係るコネクタについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1~
図3に、本実施形態に係るコネクタ1を示す。
図1において、矢印Xは「前後方向」を示し、矢印Yは「左右方向」を示し、矢印Zは「上下方向」を示す。
【0011】
図1~
図3に示すように、コネクタ1は、端子2と、ハウジング3と、パッキン4(シール部材)と、フロントホルダー5と、シールドシェル6と、を備える。このコネクタ1は、例えば、電気自動車及びハイブリッド車等の電動車両に使用される高圧コネクタである。
【0012】
端子2は、例えば、金属等の導電性材料から構成される。この端子2は、例えば、コネクタ1と相手コネクタ(図示せず)との嵌合方向に沿って延在する略板状の端子本体20を有している。端子本体20の前端側には、相手コネクタの相手側端子が電気的に接続される電気接続部21が形成され、端子本体20の後端側には、図示しない高圧電線が接続される電線接続部22が形成されている(
図2参照)。
【0013】
ハウジング3は、例えば、合成樹脂等の絶縁性材料から構成される。このハウジング3は、略板状のハウジング本体10と、ハウジング本体10から突出して形成され、端子2が挿通される筒状の端子部11とを有している。端子部11の内部には、端子2を収容するための端子収容室12が形成されている。端子部11は、ハウジング本体10の幅方向(左右方向)に複数(本実施形態では、2つ)配置されている。また、ハウジング本体10における端子部11の周囲には、ハウジング本体10の前面10a側と後面10b側とを貫通するスリット13が形成されている。
【0014】
端子部11は、パッキン4が装着される大径筒部14と、大径筒部14の径方向内方に配置され、フロントホルダー5が装着される小径筒部15と、小径筒部15の径方向内方に配置され、端子2の前部が保持される左右一対の端子保持部16,16とを有している。本実施形態では、ハウジング本体10における大径筒部14と小径筒部15との径方向の間に位置させて、前述のスリット13が形成されている(
図3参照)。また、左右一対の端子保持部16,16の間に、相手コネクタの相手側端子が挿通されるようになっている。
【0015】
また、本実施形態では、ハウジング3は、端子部11とは別に、ハウジング本体10から突出して形成され、図示しない電線等が挿通される筒状部31を有している。筒状部31の内部には、図示しない電線等を収容するための収容空間部32が形成されている。
【0016】
さらに、本実施形態では、ハウジング3は、ハウジング本体10の前面10a側と後面10b側とを貫通する締結穴部33を有している。
【0017】
パッキン4は、例えば、ゴム等の弾性材料から環状に形成され、ハウジング3の前面10a側から大径筒部14の外周に装着される。このパッキン4には、特に他の部材に対する係止(固定)のための係止機構は設けられてはいない。
【0018】
ハウジング3の前面10a側には、図示しないシェル(フロントシェル)が装着され、このシェルの内部に水等の液体が浸入しないように、シェルと端子部11との間がパッキン4によりシール(封止)される。
【0019】
また、ハウジング本体10の後面10bには、端子部11及び筒状部31を包囲するようにパッキン収容溝部34が形成されており、このパッキン収容溝部34には、後面側パッキン7が収容されている(
図2参照)。
【0020】
さらに、ハウジング3の後面10b側には、図示しないシェル(リアシェル)が装着され、このシェルの内部に水等の液体が浸入しないように、シェルと端子部11及び筒状部31との間が後面側パッキン7によりシール(封止)される。
【0021】
フロントホルダー5は、例えば、合成樹脂等の絶縁材料から構成され、パッキン4の前面10a側に配置される。このフロントホルダー5は、環状のホルダー本体50を有しており、ホルダー本体50の前面には、係止凹部51が形成されている。本実施形態では、係止凹部51は、ホルダー本体50に対して上下一対に形成されている。
【0022】
シールドシェル6は、例えば、金属等の導電性材料から構成される板材61を折り曲げ加工して略筒状に形成されるシェル本体60を有している。このシールドシェル6(シェル本体60)は、ハウジング3の後面10b側から嵌め込まれて、端子部11の少なくとも一部を包囲する。
【0023】
シールドシェル6は、係止突起62を有している。本実施形態では、係止突起62は、シェル本体60の前部に、シェル本体60を構成する板材61の一部を切り起こした状態で形成されている。本実施形態では、係止突起62は、シェル本体60に対して上下一対に形成されている。
【0024】
また、シールドシェル6は、係止片部63を有している。本実施形態では、係止片部63は、シェル本体60の後端に、シェル本体60を構成する板材61の一部を折り曲げた状態で形成されている。係止片部63は、シェル本体60に対して周方向に間隔をおいて複数(本実施形態では、6つ)形成されている。
【0025】
ハウジング3の後面10bには、シールドシェル6の係止片部63が入り込む係止溝部17が形成されていてもよい(
図3参照)。
【0026】
そして、ハウジング3の後面10b側からスリット13を貫通するシールドシェル6の係止突起62が、フロントホルダー5の係止凹部51に係止されている(
図3参照)。
【0027】
以下、ハウジング3に対する、パッキン4、フロントホルダー5及びシールドシェル6の取付の手順の一例を説明する。
【0028】
ハウジング3に、パッキン4、シールドシェル6、フロントホルダー5の順に取り付ける。より詳しくは、パッキン4をハウジング3の前面10a側から大径筒部14の外周に装着し、シールドシェル6は、ハウジング3の後面10b側から嵌め込んでスリット13を貫通させる。この際、シールドシェル6の前部の係止突起62は、スリット13から露出させ、シールドシェル6の後端の係止片部63は、ハウジング3の後面10bに当接させる。
【0029】
そして、フロントホルダー5をハウジング3の前面10a側から端子部11の小径筒部15の外周に装着し、フロントホルダー5の係止凹部51を、ハウジング3の後面10b側からスリット13を貫通するシールドシェル6の係止突起62に対して係止させる。このようにすることにより、シールドシェル6の係止突起62とフロントホルダー5の係止凹部51とが係合し、また、シールドシェル6の係止片部63がハウジング3の後面10bに係合する。このため、シールドシェル6の係止突起62と係止片部63との間に、フロントホルダー5とパッキン4とハウジング3の端子部11とが挟み込まれて、各部材(パッキン4、フロントホルダー5、シールドシェル6)がハウジング3に対して固定される。
【0030】
この取付の手順には限定はされず、ハウジング3に、パッキン4、フロントホルダー5、シールドシェル6の順に取り付けてもよい。
【0031】
次に、コネクタ1の効果について説明する。
【0032】
このように、本実施形態の態様に係るコネクタ1は、端子2が挿通される筒状の端子部11を有するハウジング3と、ハウジング3の前面10a側から端子部11に装着される環状のパッキン4とを備える。コネクタ1は、ハウジング3の前面10a側に配置されるフロントホルダー5と、ハウジング3の後面10b側から嵌め込まれて端子部11の少なくとも一部を包囲するシールドシェル6とを備える。ハウジング3における端子部11の周囲には、ハウジング3の前面10a側と後面10b側とを貫通するスリット13が形成される。フロントホルダー5には、係止凹部51が形成され、シールドシェル6には、係止突起62が形成される。ハウジング3の後面10b側からスリット13を貫通するシールドシェル6の係止突起62が、フロントホルダー5の係止凹部51に係止される。
【0033】
本実施形態では、シールドシェル6に係止突起62を設け、フロントホルダー5に係止凹部51を設けているだけであるので、各部材(パッキン4、フロントホルダー5、シールドシェル6)それぞれの製造コストを低減することが可能になる。また、フロントホルダー5とハウジング3との間、及びハウジング3とシールドシェル6との間にそれぞれ、係止機構を設ける必要がないため、各部材の形状が複雑になることを抑制でき、コネクタ1全体の小型化を図ることが可能になる。さらに、固定のための部品を追加することなく、コネクタ1を構成するフロントホルダー5及びシールドシェル6を利用して、各部材(パッキン4、フロントホルダー5、シールドシェル6)をハウジング3に対して固定することが可能である。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、コネクタ1を構成する部材を係止するための機構の合理化を図ることにより各部材の形状が複雑になることを抑制し、製造コストの上昇を抑制するのに有利なコネクタ1を提供することができる。
【0035】
本実施形態の態様に係るコネクタ1において、フロントホルダー5は、環状のホルダー本体50を有し、係止凹部51は、ホルダー本体50の前面に形成されてもよい。シールドシェル6は、板材61を折り曲げて形成されるシェル本体60を有し、係止突起62は、シェル本体60の前部に、シェル本体60を構成する板材61の一部を切り起こした状態で形成されてもよい。
【0036】
このように係止突起62及び係止凹部51を形成することにより、各部材(パッキン4、フロントホルダー5、シールドシェル6)の形状が複雑になることを抑制でき、コネクタ1全体の小型化を図ることが可能になる。
【0037】
本実施形態の態様に係るコネクタ1において、シールドシェル6には、ハウジング3の後面10b側に当接する係止片部63が設けられ、係止片部63は、シェル本体60の後部に、シェル本体60を構成する板材61の一部を折り曲げた状態で形成されてもよい。
【0038】
このようにシールドシェル6を構成することにより、シールドシェル6の係止突起62とフロントホルダー5の係止凹部51とが係合すると、シールドシェル6の係止片部63がハウジング3の後面10bに引っ掛かって係合する。このため、シールドシェル6の係止突起62と係止片部63との間に、フロントホルダー5とパッキン4とハウジング3の端子部11とが挟み込まれて、各部材(パッキン4、フロントホルダー5、シールドシェル6)がハウジング3に対して固定される。
【0039】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 コネクタ
2 端子
3 ハウジング
4 パッキン
5 フロントホルダー
6 シールドシェル
10 ハウジング本体
10a 前面
10b 後面
11 端子部
13 スリット
50 ホルダー本体
51 係止凹部
60 シェル本体
61 板材
62 係止突起
63 係止片部