(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153288
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】補聴器機能を有する眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 11/06 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G02C11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067087
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】598146300
【氏名又は名称】株式会社タケダ企画
(74)【代理人】
【識別番号】100085246
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 欣治
(72)【発明者】
【氏名】神守 良治
(57)【要約】
【課題】話の相手の音声をクリアに聞き取ることができ、又、製造コストを低減させ得る補聴器機能を有する眼鏡を提供する。
【解決手段】柔軟な樹脂で一体成形された眼鏡枠体2を有する。眼鏡枠体2は、レンズ3,3の上縁部分5,5を保持する上縁枠部6,6相互がブリッジ部7で連結された眼鏡前枠9の左右端部にテンプル11の前端部12が連結されている。左右のテンプルは、眼鏡着用者の側頭部に当接するように弾性的に拡開できる。音声を検出する指向性マイク15が、眼鏡前枠9に、その集音部16を前方に向けて設けられ、左右のテンプル11,11にバッテリー17が収容され、テンプルの夫々の後部に、骨伝導イヤホン19を有する。指向性マイク15から骨伝導イヤホン19に至る導線20の全体が、眼鏡枠体2の樹脂に埋設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が柔軟な樹脂で一体成形された眼鏡枠体を有し、該眼鏡枠体は、左右のレンズの上縁部分を保持する左右の上縁枠部相互がブリッジ部で一連一体に連結されてなる眼鏡前枠の左右の端部に、弾性変形可能の蝶番機能連結部を介して、テンプルの前端部が一連一体に連結されており、左右の該テンプルは、該蝶番機能連結部の弾性屈曲変形を伴って開閉できるように構成されており、
左右の前記テンプルは、眼鏡着用状態においては、前記蝶番機能連結部の弾性変形を伴って眼鏡着用者の左右の側頭部に当接する拡開状態となることができ、
又、音声を検出する指向性マイクが、前記眼鏡前枠に、その集音部を前方に向けて設けられており、左右の前記テンプルの夫々にはバッテリーが収容され、又左右の前記テンプルの夫々に、前記側頭部に当接して前記指向性マイクにて検出された音声を骨伝導振動で出力する骨伝導イヤホンが設けられており、
又、前記指向性マイクと前記骨伝導イヤホンとを電気的に接続する導線が、前記蝶番機能連結部を含めて前記眼鏡枠体の樹脂に埋設された状態で配線されており、該蝶番機能連結部に埋設されている該導線は、前記テンプルの開閉に伴う前記蝶番機能連結部の弾性屈曲変形に追随して屈曲変形できることを特徴とする補聴器機能を有する眼鏡。
【請求項2】
前記指向性マイクは、前記眼鏡前枠の左右端部分において、その集音部を前方に向けて設けられていることを特徴とする請求項1記載の補聴器機能を有する眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補聴器機能を有する眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
補聴器機能を有する眼鏡の一例としては、特許文献1 、2記載の眼鏡型補聴器が提供されている。
【0003】
特許文献1に係る眼鏡型補聴器は、2つのレンズの周りを囲む眼鏡リムを連結する眼鏡ブリッジに設けられた指向性マイクと、前記眼鏡リムの左端と右端との夫々に設けられた無指向性マイクと、前記眼鏡リムに連結される左フレームと右フレームとの夫々に設けられたスピーカーと、前記左フレームと前記右フレームとの一方のフレームに設けられた第1タッチセンサーと、該第1タッチセンサーからの信号により前記指向性マイクをオンさせて音声信号を前記スピーカーに出力させる制御回路と、を備えている。
【0004】
しかしながら特許文献1に記載されている眼鏡型補聴器によるときは次のような問題点があった。
即ち、該眼鏡型補聴器は、無線方式の制御を行うように構成されており、前記左フレームと前記右フレームとの一方のフレームに第1のタッチセンサーが設けられており、該第1のタッチセンサーからのオン信号に基づきマイク制御部に対して前記指向性マイクをオンさせるためのオン信号を出力するように構成されている。又、他方のフレームに第2のタッチセンサーが設けられており、該第2のタッチセンサーからのオン信号に基づきマイク制御部に対して前記無指向性マイクをオンさせるためのオン信号を出力するように構成されている。
【0005】
このように該眼鏡型補聴器は、マイクのオン・オフ操作を無線方式で行うため、例えば特許文献2に記載されている眼鏡型補聴器における、導線を介してオン・オフ信号を送出する場合のような下記問題点はないものの、タッチセンサー及びその制御回路を要するために、該眼鏡型補聴器が高価なものとなる問題があった。
【0006】
又、特許文献2に係る眼鏡型補聴器は、導線を配線して行う有線方式の制御を行うものであり、指向性マイクが、左右の眼鏡フレームの蝶番付近に固定されている。そして、左右の指向性マイクからの音声信号は、その大部分がフレームに埋設されてなる導線を介して、テンプルの後端に設けたイヤホンに伝達されるように構成されている。
【0007】
該導線は、このように、その大部分がフレームに埋設された状態にあるが、眼鏡リムとテンプルとの接続部(蝶番部)においては露出状態にある。そのため、
眼鏡の着脱時や眼鏡の手入れ時において、髪の毛等の物が該露出状態の導線に引っ掛かって該導線が断線等損傷され易く、補聴器としての機能を喪失し兼ねない問題があった。又、露出状態にある前記導線が眼鏡の美観を損なう問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016―39632号
【特許文献2】特開2012―147405号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、着用者が眼鏡を通して見える範囲の音声や音をクリアに聞き取ることができるのは元より、製造コストを低減させ得る補聴器機能を有する眼鏡の提供を課題とするものである。又、導線を配線して行う有線方式の制御であるにも関わらず、眼鏡前枠の左右端部の夫々と前記テンプルの前記前端部との連結部分で該導線が露出状態となることがなく、これによって、前記したような、導線損傷による補聴器機能の喪失や導線の露出による眼鏡の美観損傷の問題を招来することのない補聴器機能を有する眼鏡の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る補聴器機能を有する眼鏡は、全体が柔軟な樹脂で一体成形された眼鏡枠体を有し、該眼鏡枠体は、左右のレンズの上縁部分を保持する左右の上縁枠部相互がブリッジ部で一連一体に連結されてなる眼鏡前枠の左右の端部に、弾性変形可能の蝶番機能連結部を介して、テンプルの前端部が一連一体に連結されており、左右の該テンプルは、該蝶番機能連結部の弾性屈曲変形を伴って開閉できるように構成されており、左右の前記テンプルは、眼鏡着用状態においては、前記蝶番機能連結部の弾性変形を伴って眼鏡着用者の左右の側頭部に当接する拡開状態となることができる。
【0011】
又、音声を検出する指向性マイクが、前記眼鏡前枠に、その集音部を前方に向けて設けられており、左右の前記テンプルの夫々にはバッテリーが収容され、又左右の前記テンプルの夫々に、前記側頭部に当接して前記指向性マイクにて検出された音声を骨伝導振動で出力する骨伝導イヤホンが設けられている。そして、前記指向性マイクと前記骨伝導イヤホンとを電気的に接続する導線が、前記蝶番機能連結部を含めて前記眼鏡枠体の樹脂に埋設された状態で配線されており、該蝶番機能連結部に埋設されている該導線は、前記テンプルの開閉に伴う前記蝶番機能連結部の弾性屈曲変形に追随して屈曲変形できることを特徴とするものである。
【0012】
前記補聴器機能を有する眼鏡において前記指向性マイクは、前記眼鏡前枠の左右端部分で、その集音部を前方に向けて設けるのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る補聴器機能を有する眼鏡は、指向性マイクが、前記眼鏡前枠に、その集音部を前方に向けて設けられているため、該眼鏡の着用者が見える範囲の音声や音をクリアに聞き取ることができる。
【0014】
又前記眼鏡枠体は、全体が柔軟な樹脂で一体成形されており、前記マイクと前記骨伝導イヤホンとを電気的に接続する導線が、前記眼鏡前枠の左右端部と前記テンプルの前端部との間の蝶番機能連結部も含めて前記眼鏡枠体の柔軟な樹脂に埋設された状態で配線されている。かかることから、眼鏡前枠の左右端部にテンプルの前端部が蝶番を介して連結されてなる眼鏡フレームを用いて構成された特許文献2に係る眼鏡型補聴器におけるように、該導線が露出状態となることがない。従って、前記したような、導線損傷によって補聴器機能を喪失させるといった問題を招来させることがない。加えて、導線の露出によって眼鏡の美観が損なわれることがない。
【0015】
又本発明は、特許文献1におけるようなタッチセンサーによる無線方式の制御ではなく電気接続用の導線を用いる有線方式の制御を採用するため、制御の簡素化によって製造コストの低減を期し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る補聴器機能を有する眼鏡の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0017】
図1~4において本発明に係る補聴器機能を有する眼鏡(以下、眼鏡ともいう)1は、全体が柔軟な樹脂で一体成形された眼鏡枠体2を有し、該眼鏡枠体2は、左右のレンズ3,3の上縁部分5,5を保持する左右の上縁枠部6,6相互がブリッジ部7で一連一体に連結されてなる眼鏡前枠9の左右の端部10,10に、弾性変形可能の蝶番機能連結部21を介して、テンプル11,11の前端部12,12が一連一体に連結されており、左右の該テンプル11,11は、該蝶番機能連結部21,21の弾性屈曲変形を伴って開閉できるように構成されている。左右の前記テンプル11,11は、眼鏡着用状態においては、前記蝶番機能連結部21,21の弾性変形を伴って眼鏡着用者の左右の側頭部に当接する拡開状態となることができる。
【0018】
又、音声を検出する指向性マイク15が、前記眼鏡前枠9に、その集音部16を前方に向けて設けられており、左右の前記テンプル11,11の夫々にはバッテリー17,17が収容され、又左右の前記テンプル11,11の夫々に、前記側頭部に当接して前記指向性マイク15にて検出された音声を骨伝導振動で出力する骨伝導イヤホン19が設けられている。又、前記指向性マイク15と前記骨伝導イヤホン19とを電気的に接続する導線20が、前記蝶番機能連結部21,21を含めて前記眼鏡枠体2の樹脂に埋設された状態で配線されており、該蝶番機能連結部21,21に埋設されている該導線20は、前記テンプル11,11の開閉に伴う前記蝶番機能連結部21,21の弾性屈曲変形に追随して屈曲変形できる。以下、これを具体的に説明する。
【0019】
前記眼鏡枠体2は、エラストマー等の柔軟な樹脂で、射出成形によって全体が一体成形されている。該眼鏡枠体2の有する前記眼鏡前枠9は、本実施例においては
図2に示すように、レンズリム部22で前記レンズ3を抱持して構成された左右の眼鏡レンズ部23の、樹脂からなる左右の前記上縁枠部6,6相互が、樹脂からなる前記ブリッジ部7で一連一体に連結されてなり、該眼鏡前枠9の左右の端部10,10に、弾性変形可能の蝶番機能連結部21、21を介して、樹脂からなる前記テンプル11,11の前端部12,12が一連一体に連結されている。
【0020】
前記指向性マイク15,15は、本実施例においては
図1~4に示すように、前記眼鏡枠体2の左右端部分25,25において、その集音部16を前方に向けて設けられている。
【0021】
左右の前記テンプル11,11は自由状態において、
図1に示すように、平面視でクロスする状態に屈曲している。且つ左右の該テンプル11,11は、眼鏡の着用状態においては
図3~4に示すように、前記蝶番機能連結部21,21の弾性変形を伴い、該眼鏡の着用者の左右の側頭部13,13に弾性的に当接する拡開状態を呈し得る。
【0022】
そして
図1、
図3~4に示すように、左右の該テンプル11,11の後部乃至該テンプル11,11の長さ方向の中間部分には、前記骨伝導イヤホン19,19が設けられている。該骨伝導イヤホン19,19は、眼鏡着用状態で左右の前記側頭部13,13に当接して、前記指向性マイク15にて検出された音声を振動として出力する。該骨伝導イヤホン19,19は、眼鏡着用状態で、
図3に示すように、該テンプル11の耳掛け部26の稍前側のこめかみ辺りの側頭部部分13aに当接する。該骨伝導イヤホン19,19は、本実施例においては
図3~4に示すように、両テンプル11,11の夫々において、該耳掛け部26の下方向に突設した下方突出部27に設けられてなる収容部に収容され、該収容部は閉蓋されている。
【0023】
又
図1、
図3~4に示すように、左右の前記テンプル11,11の夫々に前記バッテリー(例えばリチウム電池)17が収容されている。該バッテリー17を左右のテンプル11,11の夫々に収容しているのは、該バッテリー17は、小型ではあってもある程度の重量を有することに鑑み、重量面で、眼鏡の左右のバランスをとって眼鏡1の装着感を良好とするためである。そして一方のテンプル11aには、本実施例においては
図4に示すように、左右の前記指向性マイク15,15及び左右の前記骨伝導イヤホン19,19をオン・オフ制御するためのスイッチボタン29と、左右の前記骨伝導イヤホン19,19の音量を調整するための音量調整ボタン30が設けられ、他方のテンプル11bには、左右の前記バッテリー17,17に充電するための充電部31が設けられている。該バッテリー17、前記スイッチボタン29、前記音量調整ボタン30、前記充電部31は、共に、前記テンプル11,11に設けた収容部に収容されている。そして、前記スイッチボタン29と前記音量調整ボタン30は、
図4に示すように、前記テンプル11aの下面部32で突出されている。又、前記充電部31の給電端子部33は、
図3に示すように、前記テンプル11bの下面部35で露出されている。
【0024】
前記スイッチボタン29と前記音量調整ボタン30と前記充電部31の前記作用は、左右のテンプル11,11の何れか一方側から他方側に向けて配線された導線を介して行われるものである。
【0025】
本実施例において、前記した「指向性マイク15と前記骨伝導イヤホン19とを電気的に接続する導線20」には、前記スイッチボタン29のオン・オフ制御と、前記音量調整ボタン30の音量調整制御と、前記充電部31の前記充電制御を電気的に行わせるための電気的接続を行う導線、も含まれる。
【0026】
前記導線20は、前記眼鏡枠体2の樹脂に埋設された状態で配線され、前記眼鏡前枠9の左右の端部10と前記テンプル11の前端部12との間の配線は、前記導線20を前記蝶番機能連結部21に埋設して行われている。そのため、前記導線20が前記眼鏡枠体2の外部に露出している部分は存在していない。そして、該蝶番機能連結部21に埋設されている該導線20は、前記テンプル11,11の開閉に伴う該蝶番機能連結部21の弾性屈曲変形に追随して無理なく屈曲変形でき、該蝶番機能連結部21の弾性屈曲変形によって該導線20が損傷される恐れがない。
【0027】
本実施例に係る補聴器機能を有する眼鏡1は、以下のような効果を奏する。
(1)該補聴器機能を有する眼鏡1は、眼鏡(老眼鏡等)としての機能と補聴器としての機能を併有しているため、特に高齢者にとって便宜である。
【0028】
(2)前記蝶番機能連結部21,21においても前記導線20が樹脂に埋設された状態にあることから、特許文献2におけるような、前記導線の損傷による補聴器機能の喪失といった問題を招来することがなく、又、前記導線20の露出によって眼鏡の美観が損なわれる恐れもない。
【0029】
(3)前記指向性マイク15は、前記眼鏡枠体2の左右端部分において、その集音部16を前方に向けて設けられているため、前記眼鏡1の着用者は該眼鏡を掛けて見える範囲の音声(話の相手の音声やテレビの音声等)を前記骨伝導イヤホン19を介して骨伝導振動でクリアに聞くことができる。この時、両耳は塞がれていないため、横方向の音も聞くことができる。これによって、クラクションの音や横断歩道、踏切等における音を聞くこともできるため安全確認も可能である。
【0030】
(4)補聴器機能を有する眼鏡1は、特許文献1におけるようなタッチセンサーによる無線方式の制御ではなく電気接続用の前記導線20を用いる有線方式の制御を採用している。そのため、制御の簡素化によって製造コストの低減を期し得る。
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
(1) 本発明に係る眼鏡枠体2を構成する前記眼鏡前枠9は、左右のレンズ3,3の上縁部分を保持する左右の上縁枠部6,6相互がブリッジ部7で一連一体に連結されてなる、全体が柔軟な樹脂で一体成形されたものであればよい。例えば、左右のレンズの夫々の上縁部分にだけ前記上縁枠部6,6が付設された所謂ナイロールと呼ばれている眼鏡における、左右の該上縁枠部6,6が該ブリッジ部7で連結されてなるものであってもよい。
(2) 音声を検出する前記指向性マイク15は、前記眼鏡前枠9に、その集音部16を前方に向けて設けられるものである。該指向性マイク15は、一例として、前記したように前記眼鏡前枠9の左右端部分25,25に設けられることの他、前記ブリッジ部7に設けられてもよく、該眼鏡前枠9の左右端部分25,25と該ブリッジ部7の双方に設けられてもよい。