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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153289
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】スラグ流の発生装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/45 20220101AFI20241022BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20241022BHJP
【FI】
B01F23/45
B01F25/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067088
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】515358023
【氏名又は名称】マックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 功
(72)【発明者】
【氏名】小谷 研太朗
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB37
4G035AC50
4G035AE13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の混合流路を単一の装置として取り扱うことができ、かつ、スラグ流を利用した反応のスケールアップを可能にするスラグ流の発生装置を提供する。
【解決手段】互いに交じり合わない、第1の液体と第2の液体とを混合して、スラグ流を発生させる装置であり、第1の液体を流入させる第1流入口111と、第2の液体を流入させる第2流入口112と、第1流路131、第2流路132、及び第3流路133を含む複数の混合流路134と、前記第1流入口と複数の前記第1流路とを連通する第1分配流路と、前記第2流入口と複数の前記第2流路とを連通する第2分配流路と、前記複数の混合流路の第3流路と連通する排出口141とを備えており、前記複数の混合流路は、第1流路と第2流路と第3流路とが連通し、第1流路を搬送された第1の液体と、第2流路を搬送された第2の液体とが混合されて、第3流路に混合液体が排出される、スラグ流の発生装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交じり合わない、第1の液体と第2の液体とを混合して、スラグ流を発生させる装置であり、
当該装置は、第1の液体を流入させる第1流入口と、
第2の液体を流入させる第2流入口と、
第1流路、第2流路、及び第3流路を含む複数の混合流路と、
前記第1流入口と複数の前記第1流路と連通する第1分配流路と、
前記第2流入口と複数の前記第2流路と連通する第2分配流路と、
前記混合流路の第3流路と連通する排出口とを備えており、
前記複数の混合流路は、第1流路と第2流路と第3流路とが連通し、第1流路を搬送された第1の液体と、第2流路を搬送された第2の液体とを混合し、混合された液体を第3流路へ排出する形状であり、
前記第1分配流路、前記第2分配流路、及び前記複数の混合流路は複数の基材に形成された流路であり、前記複数の基材は固定され一体化された形状であり、
前記第1分配流路により、第1流入口から供給された第1の液体が複数の前記第1流路へ分配され、
前記第2分配流路により、第2流入口から供給された第2の液体が複数の前記第2流路に分配されるスラグ流の発生装置。
【請求項2】
前記排出口は、複数個であり、
複数の排出口には、それぞれスラグ流を通過させる流路が着脱可能な状態で接続される請求項1に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項3】
前記第1分配流路及び前記第2分配流路は、円形状である請求項1又は2に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項4】
前記第1分配流路及び前記第2分配流路は、径が異なる円形状であり、前記第1分配流路及び前記第2分配流路のうちの一方が他方に内包されるように配置される請求項3に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項5】
複数の第1流路の端部は第1分配流路の円周上に配置され、
複数の第2流路の端部は第2分配流路の円周上に配置される請求項3に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項6】
前記第1流入口と前記第1分配流路とを連通させる第4流路と、
前記第2流入口と前記第2分配流路とを連通させる第5流路とをさらに備える請求項1又は2に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項7】
前記第4流路は、第1流入口から流入した液体を分岐させて、第1分配流路の対向する位置で、第1分配流路内に流入させる形状であり、
前記第5流路は、第2流入口から流入した液体を分岐させて、第2分配流路の対向する位置で、第2分配流路内に流入させる形状である、請求項6に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項8】
前記複数の基材の間に、前記混合流路、前記第1分配流路、又は前記第2分配流路が設けられた請求項1又は2に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項9】
前記複数の基材の間に、前記第4流路、前記第5流路が設けられた請求項6に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項10】
前記混合流路、前記第1分配流路、又は前記第2分配流路は、前記複数の基材の間に設けられた凹溝、又はスリット状の貫通孔である請求項1又は2に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項11】
前記第4流路、又は前記第5流路は、前記複数の基材の間に設けられた凹溝、又はスリット状の貫通孔である請求項6に記載のスラグ流の発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグ流の発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに溶けあわない液体を混合して、スラグ流を発生させる技術が知られている。スラグ流では、互いに交じり合わない一方の液体と、他方の液体との間に界面が形成される。特許文献1においては、一方の液体、及び他方の液体の内部に循環流が形成され、前記循環流によって、前記界面における一方の液体と他方の液体とが連続的に更新されるとされている。これにより、一方の液体に含まれる対象成分が、他方の液体へ移行しやすくなるとされている。また、特許文献2には、スラグ流を利用して、固形の合成樹脂を合成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-32346号公報
【特許文献2】特開2021-155483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スラグ流を利用すれば、一方の液体と他方の液体とが接触する効率が上昇するため、所望の化学反応を効率的に生じさせることができる。
【0005】
スラグ流は内径が小さい管内で生じる。このため、化学反応をラージスケール化する目的でスラグ流を発生させる流路の内径を拡大して流量を稼ごうとした場合、かえってスラグ流が形成されにくくなることがある。
【0006】
ラージスケール化を行う場合、例えば、特許文献1に記載されているような、第1液体を搬送する第1流路と、第2液体を搬送する第2流路と、第1流路と第2流路とを接続するT字状の合流部と、当該合流部から排出される混合液を排出する第3流路とを備える装置を、複数用意して、所望の化学反応を実施する方法もあり得る。しかしながら、第1流路、第2流路、合流部、及び第3流路を一つの装置とした場合、当該装置が複数必要となり煩雑である。例えば、化学反応に先立って複数の装置を組み上げる際に、装置の数が多いと煩雑である。また、例えば、使用後には装置を洗浄する。このとき装置の数が多いと煩雑である。
【0007】
本発明は、複数の基材を固定して一体化した装置に複数の混合流路を設けることにより、複数の混合流路を単一の装置として取り扱うことができるスラグ流の発生装置であり、かつ、スラグ流を利用した反応のスケールアップを可能にするスラグ流の発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
互いに交じり合わない、第1の液体と第2の液体とを混合して、スラグ流を発生させる装置であり、当該装置は、第1の液体を流入させる第1流入口と、第2の液体を流入させる第2流入口と、第1流路、第2流路、及び第3流路を含む複数の混合流路と、前記第1流入口と複数の前記第1流路と連通する第1分配流路と、前記第2流入口と複数の前記第2流路と連通する第2分配流路と、前記混合流路の第3流路と連通する排出口とを備えており、前記複数の混合流路は、第1流路と第2流路と第3流路とが連通し、第1流路を搬送された第1の液体と、第2流路を搬送された第2の液体とを混合し、混合された液体を第3流路へ排出する形状であり、前記第1分配流路、前記第2分配流路、及び前記複数の混合流路は複数の基材に形成された流路であり、前記複数の基材は固定され一体化された形状であり、前記第1分配流路により、第1流入口から供給された第1の液体が複数の前記第1流路へ分配され、前記第2分配流路により、第2流入口から供給された第2の液体が複数の前記第2流路に分配されるスラグ流の発生装置により、上記の課題を解決する。前記装置は、複数の基材を固定して一体化した装置に複数の混合流路を設けているため、第1分配流路、第2分配流路、及び複数の混合流路を一つの塊として取り扱うことができる。装置で反応を行うに先立って、装置を準備するのが容易であるし、反応を行った後の始末も容易である。また、複数の混合流路によってスラグ流を発生させることができるので、スラグ流の流量を増大させてラージスケール化を図ることが可能である。
【0009】
前記装置において、前記排出口は、複数個であり、複数の排出口には、それぞれスラグ流を通過させる流路が着脱可能な状態で接続される構成とすることができる。この構成によれば、例えば、長さの短い第4流路から長さの長い第4流路に付け替えることにより、混合液が第4流路中でスラグ流として存在する時間の長さを調節することができる。
【0010】
前記装置において、前記第1分配流路及び前記第2分配流路は円形状にすることができる。第1分配流路、及び第2分配流路を円形にすることにより、角部がなくなり、第1の液体、及び第2の液体を搬送する際に乱流が生じにくくなり、乱流の発生による圧力損失を低減することができる。これにより、流量の制御、流速の制御が容易になる。
【0011】
前記装置において、前記第1分配流路及び前記第2分配流路は、互いに径が異なる円形状であり、一方が他方に内包されるように配置されるようにすることが好ましい。この構成によれば、前記複数の基材に第1分配流路及び第2分配流路を省スペースに配置し、装置を小型化することができる。
【0012】
前記装置において、複数の第1流路の端部は第1分配流路の円周上に配置され、複数の第2流路の端部は第2分配流路の円周上に配置されるようにすることが好ましい。これにより、第1分配流路から第1流路へ効率的に第1の液体を流し、第2分配流路から第2流路へ効率的に第2の液体を流すことができる。
【0013】
前記装置において、前記第1流入口と前記第1分配流路とを連通させる第4流路と、前記第2流入口と前記第2分配流路とを連通させる第5流路とをさらに備えるようにすることが好ましい。第4流路、及び第5流路は、バッファータンクの機能を発揮し、例えば、ポンプによって生じる第1の液体及び第2の液体の脈動が、混合流路における液体の流れに及ぼす影響を軽減する。
【0014】
前記装置において、前記第4流路は、第1流入口から流入した液体を分岐させて、第1分配流路の対向する位置で、第1分配流路内に流入させる形状であり、前記第5流路は、第2流入口から流入した液体を分岐させて、第2分配流路の対向する位置で、第2分配流路内に流入させる形状とすることができる。
【0015】
前記装置において、前記複数の基材の間に、前記混合流路、前記第1分配流路、又は前記第2分配流路を設けることができる。この構成によれば、前記混合流路、前記第1分配流路、又は前記第2分配流路、それぞれの開口部を、複数の基材で塞ぐことができる。同様に、前記装置において、前記複数の基材の間に、前記第4流路、前記第5流路を設けることができる。
【0016】
前記装置において、前記混合流路、前記第1分配流路、又は前記第2分配流路は、前記複数の基材の間に設けられた凹溝、又はスリット状の貫通孔にすることができる。この構成よれば、前記混合流路、前記第1分配流路、又は前記第2分配流路を、例えば、切削などの手法により精度よく形成することができる。同様に、前記装置において、前記第4流路、又は前記第5流路は、前記複数の基材の間に設けられた凹溝、又はスリット状の貫通孔にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の基材を固定して一体化した装置に複数の混合流路を設けることにより、複数の混合流路を単一の装置として取り扱うことができるスラグ流の発生装置であり、かつ、スラグ流を利用した反応のスケールアップを可能にするスラグ流の発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】スラグ流の発生装置の一例の側面図である。
図2図1のスラグ流の発生装置の上方視点における分解斜視図である。
図3図1のスラグ流の発生装置の下方視点における分解斜視図である。
図4図1のスラグ流の発生装置の平面図である。
図5図4のAA´部における断面図である。
図6図1のスラグ流の発生装置において、第4基材を省略し、内部構造を破線で示した平面図である。
図7】第1基材の一方の面を示す平面図である。
図8】第3基材の他方の面を示す底面図である。
図9】第3基材の一方の面を示す平面図である。
図10図1のスラグ流の発生装置の使用例を示す説明図である。
図11】混合流路の他の例を示す説明図である。
図12】混合流路の他の例を示す説明図である。
図13】混合流路の他の例を示す説明図である。
図14】スラグ流の発生装置の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のスラグ流の発生装置の一実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1ないし図9にスラグ流の発生装置(以下単に装置と称することがある。)の一実施形態を示す。
【0021】
本実施形態のスラグ流の発生装置1は、互いに交じり合わない、第1の液体と第2の液体とを混合して、スラグ流を発生させる装置である。図2及び図3等に示したように、装置1は、第1の液体を流入させる第1流入口111と、第2の液体を流入させる第2流入口112と、第1流路131、第2流路132、及び第3流路133を含む複数の混合流路134と、前記第1流入口111と複数の前記第1流路131と連通する第1分配流路51と、前記第2流入口112と複数の前記第2流路132と連通する第2分配流路52と、前記混合流路134の第3流路133と連通する排出口141とを備える。
【0022】
本実施形態の装置1は、複数の基材10を含む。前記複数の基材10は固定され一体化された形状である。図1等に示したように、装置1は、第1基材11、第2基材12、第3基材13、及び第4基材14を含む。第1基材11、第2基材12、第3基材13、及び第4基材14は、それぞれ円形の板状であり、それぞれを積層して螺子留めすることにより固定され、個々の基材に比して、厚みのある円柱状の装置となる。装置1では、装置の下方から上方に向けて、第1基材11、第2基材12、第3基材13、及び第4基材14の順に積層される。
【0023】
前記複数の混合流路134は、第1流路131と第2流路132と第3流路133とが連通し、第1流路131を搬送された液体と、第2流路132を搬送された液体とを混合し、混合された液体を第3流路133へ排出する形状である。図2及び図3に示したように、装置1では、複数の混合流路134は、後述する第1分配流路51及び第2分配流路52の下流側となる、第3基材13の一方の面に設けられる。
【0024】
装置1においては、複数の混合流路134は第3基材13に設けられる凹溝で構成される。個々の混合流路は、凹溝で構成される第1流路131と、凹溝で構成される第2流路132と、第1流路131と第2流路132との接続部分に接続される凹溝で構成される第3流路133とを有する形状である。第1流路131の上流側の端部は仮想円の上に等間隔で配置される。第2流路132の上流側の端部は、前記仮想円とは径の異なる別の仮想円の上に等間隔で配置される。第3流路133の端部は、前記仮想円のいずれとも径の異なるさらに別の仮想円の上に等間隔で配置される。
【0025】
第1流路131の長さは第2流路132の長さよりも大きく、第1流路131の上流部は、第1流路131の下流部に比して、流路の幅が大きく構成されている。第1流路131の下流部と第2流路132とは、加工上の寸法誤差を除けば、長さが同一であり、流路の幅も同一となるようにされている。
【0026】
図9に示したように、第1流路131と第2流路132との接続角度Bは、44°である。第1流路と第2流路のなす角度は、この例に限定されず、例えば、30~270°の範囲にすることができる。
【0027】
装置1では、複数の混合流路134は、第3基材13の一方の面に設けられる凹溝である。第3基材13の一方の面と第4基材14の他方の面とが接面して、混合流路134を構成する凹溝の開口部が閉じられる。
【0028】
装置1では、前記第1分配流路51により、第1流入口111から供給された第1の液体が複数の前記第1流路131へ分配される。前記第2分配流路52により、第2流入口112から供給された第2の液体が複数の前記第2流路132に分配される。図2及び図3に示したように、装置1では、第1分配流路51及び第2分配流路52は、前記混合流路134の上流側となる、第3基材13の他方の面に設けられる。
【0029】
第1分配流路51、及び第2分配流路52は、互いに径が異なる円形状の凹溝で構成される。装置1では、第1分配流路51の方が、第2分配流路52に比して、径が大きい。第2分配流路52は、第1分配流路51に内包される形状である。第1分配流路51は、第1流路131の上流側の端部を接続する仮想円の円周上に配置される。また、第2分配流路52は、第2流路132の上流側の端部を接続する仮想円の円周上に配置される。
【0030】
装置1では、第1分配流路51、及び第2分配流路52は、第3基材13の他方の面に設けられる凹溝である。第3基材13の他方の面と第2基材12の一方の面とが接面して、第1分配流路51を構成する凹溝の開口部と、及び第2分配流路52を構成する凹溝の開口部とが閉じられる。
【0031】
第1分配流路51は、図8及び図9に示したように、混合流路134の第1流路131における上流側の端部に設けられた貫通孔135により、第1流路131と連通する。第2分配流路52は、混合流路134の第2流路132における上流側の端部に設けられた貫通孔136により、第2流路132と連通する。
【0032】
本実施形態の装置1は、前記第1流入口111と前記第1分配流路51とを連通させる第4流路53と、前記第2流入口112と前記第2分配流路52とを連通させる第5流路54とをさらに備える。図2及び図3に示したように、装置1では、第4流路53及び第5流路54は、前記第1分配流路51及び第2分配流路52の上流側となる、第1基材11の一方の面に設けられる。第1基材11の他方の面には、第4流路53と連通する第1流入口111と、第5流路54と連通する第2流入口112とが設けられる。第1流入口111から第1の液体が装置1内に流入する。第1流入口112から第2の液体が装置1内に流入する。
【0033】
第4流路53は、第1流入口111から流入した第1の液体を分岐させて、第1分配流路51の対向する位置で、第1分配流路内に流入させる形状である。第5流路54は、第2流入口112から流入した第2の液体を分岐させて、第2分配流路52の対向する位置で、第2分配流路内に流入させる形状である。
【0034】
第4流路53、及び第5流路54は、第1基材11の一方の面に設けられる凹溝で構成される。第1基材11の一方の面と第2基材12の他方の面とが接面して、第4流路53を構成する凹溝の開口部と第5流路54を構成する凹溝の開口部とが閉じられる。
【0035】
図2及び図6に示したように、第4流路53は、一方の流路531と他方の流路532とが曲部533で接続された形状である。曲部53には、基材(第1基材11)を貫通する第1流入口111が設けられる。一方の流路531の端部と他の流路532の端部とは、第2基材12に設けられた第1連通孔121を介して、第1分配流路51と連通する。
【0036】
図2及び図6に示したように、第5流路54は、一方の流路541と他方の流路542とが曲部543で接続された形状である。曲部543は、基材(第1基材11)を貫通する第2流入口112が設けられる。一方の流路541の端部と他方の流路542の端部とは、第2基材12に設けられた第2連通孔122を介して、第2分配流路52と連通する。
【0037】
図7に示したように、第4流路53における一の流路531の端部と他の流路532の端部とを結ぶ直線距離Cは、第5流路54における一の流路541の端部と他の流路542の端部とを結ぶ直線距離Dに比して、大である。第4流路53の直線距離と第5流路54の直線距離は、第1分配流路51及び第2流路52の径にあわせて、いずれか一方が他方よりも大とする。前記曲部533は、内側及び外側が共に、円弧状にされており、液体が円滑に流れるように構成されている。第4流路53、及び第5流路54は、端部における流路の幅に比して、曲部543における流路の幅が大きく構成されており、液体が円滑に流れるように構成されている。
【0038】
前記第1基材11と、図2及び図3に示したように、前記第3基材13との間には、複数の第1連通孔121と、複数の第2連通孔122とを設けた第2基材12が配される。第1基材11、第2基材12、及び第3基材13を組付けると、第1連通孔121により第4流路53の端部と第1分配流路51とが連通し、第2連通孔122により第5流路54の端部と第2分配流路52とが連通する。第2基材12の一方の面は、第3基材13の他方の面に接し、前記第1分配流路51の開口部と前記第2分配流路52の開口部とを閉じる。第2基材12の他方の面は、第1基材11の一方の面に接し、前記第4流路53の開口部と前記第5流路54の開口部とを閉じる。
【0039】
前記第3基材13の上には、前記第3流路133と連通する排出口141を設けた第4基材14が配される。第3基材13、及び第4基材14を組付けると、排出口141と前記第3流路の端部とが連通する。第4基材14の他方の面は、第3基材13の一方の面に接し、前記第3流路133の開口部を閉じる。第4基材14には、複数の第3流路133の数に対応する数の排出口141が設けられる。排出口141は、第3流路の端部を結ぶ仮想円上に配置される。
【0040】
図1に示したように、複数の排出口141には、それぞれ、スラグ流を通過させる流路142が着脱可能に接続される。装置1では、複数の排出口141の端部の内周面は雌螺子が切られている。流路142の端部には、前記雌螺子に対応する雄螺子が外周面に設けられたフェルールと呼ばれる部材が配される。前記雄螺子を前記雌螺子に螺合させることにより、第3流路133と前記スラグ流を通過させる流路142とが連通する。
【0041】
前記第1流入口111及び前記第2流入口112は、前記排出口141と同様に構成される。すなわち、第1流入口111の内周面に設けられた雌螺子には、第1流入口111に第1の液体を流入させる流路113の端部に設けられたフェルールと呼ばれる部材の外周面に雄螺子を螺合する。第2流入口112の内周面に設けられた雌螺子には、第2流入口112に第2の液体を流入させる流路114の端部に設けられたフェルールと呼ばれる部材の外周面に雄螺子を螺合する。これにより、第1流入口111又は第2流入口112に対して、流路113又は114を着脱可能に接続される。
【0042】
上述の通り、スラグ流を通過させる流路142は、基材10に対して着脱可能である。流路142を長さが大きいものに変更することにより、スラグ流が流路中を搬送される時間を長くし、所望の反応を行う時間も長くすることができる。逆に流路の長さが小さいものに変更することにより、スラグ流が流路中を搬送される時間を短くし、所望の反応を行う時間も短くすることができる。なお、排出口141を複数個設けることにより、混合流路から排出されたスラグ流を混合することなく、流路142の中を流すことができる。これによって、スラグ流の状態を維持することができる。
【0043】
図1ないし図3等に示したように、複数の基材10は、複数の雄螺子71によって固定され、一体化される。図1の装置1では、最下部に配される基材(第1基材11)に設けられた貫通孔の内周面に雌螺子が切られており、上部に配される基材(第1基材11、第2基材12、及び第3基材13)に雄螺子を挿通する貫通孔72が設けられている。当該貫通孔72に雄螺子71を挿通し、前記雌螺子と前記雄螺子71を螺合することで、第1基材11、第2基材12、第3基材、及び第4基材が固定され一体化される。なお、第1基材11、第2基材12、第3基材、及び第4基材14には、位置合わせ用の貫通孔61が設けられている。当該貫通孔61に対して、位置合わせ用の棒62を挿入することで、複数の基材10の位置が適切な位置に調節される。
【0044】
上記の装置1では、第1流入口111から第1の液体を装置内に供給し、第2流入口から第2の液体を装置内に供給する。第1の液体と第2の液体は、互いに混じりあわないものであればよい。第1の液体及び第2の液体としては、例えば、水と油又は水に溶けない有機溶媒など、互いに極性の異なる液体が挙げられる。
【0045】
第1流入口111から供給した第1の液体は、前記第4流路53、前記第1連通孔121、前記第1分配流路51、及び前記第1流路131の順に各流路を搬送される。第2流入口112から供給した第2の液体は、前記第5流路54、前記第2連通孔122、前記第2分配流路52、及び前記第2流路132の順に各流路を搬送される。そして、第1の液体と第2の液体とは、混合流路134において、第1流路131と第2流路132とが接合する部分において混合される。混合液は、スラグ流となる。当該スラグ流は、第3流路133及び排出口141を経て、スラグ流を通過させる流路142を搬送される。第3流路133、排出口141、及び流路142において、スラグ流を利用した所望の反応が進行する。
【0046】
上記装置1は、第4流路53と第5流路54を備える。第4流路53及び第5流路54により、第1の液体及び第2の液体を装置1にポンプで供給する際に、ポンプで生じる液体の脈動を緩和することができる。
【0047】
上記の装置1では、前記第4流路53は、第1流入口111から流入した液体を分岐させて、第1分配流路51の対向する位置で、第1分配流路内に流入させる。前記第5流路54は、第2流入口112から流入した液体を分岐させて、第2分配流路52の対向する位置で、第2分配流路52内に流入させる。対向する複数の位置から液体を流入させることで、複数の混合流路134の間で液体の流量、及び液体の圧力等の条件が同程度になりやすくなる。対向する位置は、一方の第1連通孔121を0°の位置に設けた場合、他方の第1連通孔121を180°の位置に設けるなど、加工誤差を除けば、180°の角度が形成されるようにするのが最善である。前記角度は、160~200°の範囲としてもよい。
【0048】
上記装置1では、上述の通り、前記複数の基材10の内部、より具体的には、前記複数の基材10の間に、前記複数の混合流路134、前記第1分配流路51、又は前記第2分配流路52が設けられる。この構成によれば、前記複数の混合流路134、前記第1分配流路51、又は前記第2分配流路52を基材に形成する際の効率が向上する。同様に、上記装置1では、前記複数の基材の間に、前記第4流路53、前記第5流路54が設けられる。この構成によれば、前記第4流路53、又は前記第5流路54を基材に形成する際の効率が向上する。例えば、基材を射出成型、又は切削加工のいずれで成形するにしても、基材の表面に各流路の凹みや貫通孔等が現れていれば、構造の成形が容易かつ正確になる。また、加工の効率だけではなく、各基材に設けられた流路の清掃の点でも効率がよい。
【0049】
例えば、前記混合流路134、前記第1分配流路51、前記第2分配流路52、前記第4流路53、又は前記第5流路54は、前記複数の基材10の間に設けられた凹溝、又はスリット状の貫通孔として形成される。これらの形状は、上述の通り、射出成型、又は切削加工によって、実現することができる。切削加工、又は射出成型と切削加工の併用によれば、加工精度を向上させることができる。
【0050】
上記装置1においては、複数の混合流路134を利用し、各混合流路134においてスラグ流を発生されることができる。各混合流路の内径は小さくても、複数の混合流路134を用いることで、単位時間内に流れるスラグ流の量、すなわち流量を大きくして、化学反応の規模を大きくすることができる。前記混合流路134は、複数の基材を固定することで、単一の装置にまとめられているため、化学反応を実施する前の装置の準備、化学反応を実施した後の装置の片付けが容易であるし、装置の移動も容易である。化学反応を実施した後には、複数の基材を分解して洗浄することにより、基材を簡単に洗浄することが可能であり、流路の閉塞や、コンタミネーションを防ぐことができる。
【0051】
装置1は、研究室のデスク上に設置可能な大きさであり、上記の特性と相まって研究室内における扱いやすさにおいて優れる。装置のサイズは、特に限定されないが、例えば、高さが50~200mm、幅が60~300mm、奥行きが60~300mm、外径60~300mmである。
【0052】
複数の基材は、装置内に流入させる液体の種類に応じて、適宜変更することができる。基材を構成する素材としては、耐食性に優れる金属又は合成樹脂素材が挙げられる。前記金属としては、例えば、ステンレス鋼、ハステロイが挙げられる。前記合成樹脂素材としては、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などが挙げられる。
【0053】
前記流路113、114、142は、前記金属又は前記合成樹脂素材で構成することができる。流路113、114、142の内径、及び長さは、所望の化学反応により、適宜変更することができる。流路の内径は、例えば、0.3~2.2mm、又は0.3~1.5mmにすることができる。流路の長さは、所望の化学反応時間により決定すればよく、特に限定されないが、例えば、300~20,000mmにすることができる。
【0054】
上記装置1は、例えば、図10に示す反応系に利用することができる。図10の反応系は、第1の液体を貯留する第1容器81と、第2の液体を貯留する第2容器82と、第1の液体を第1ポンプ91の駆動力により装置内に供給する前記流路113と、第2の液体を第2ポンプ92の駆動力により装置内に供給する前記流路114と、前記装置1と、当該装置1に接続されスラグ流を通過させる複数の前記流路142と、当該流路142に接続され、当該流路142の中を搬送されるスラグ流を収束させる集束部32と、当該収束部32から排出され、まとめられた混合液を貯留するセトラー槽31と、セトラー槽31で分離した下層部の液体を第1背圧弁93を介して第3容器83へ排出する流路と、セトラー槽31で分離した上層部の液体を第2背圧弁94を介して第4容器84へ排出する流路とを有する。
【0055】
図10に示した反応系は、前記装置1でスラグ流を発生させて、スラグ流を利用して、第1の液体と第2の液体とを効率的に接触させて、セトラー槽31で再び第1の液体と第2の液体とを分離する。セトラー槽31では、第1の液体と第2の液体を静置することにより、互いに溶解しない液体が分離する。第1の液体と第2の液体のうち比重の高い液体が上層となる。この反応系を利用すれば、例えば、第1の液体に対する溶解度と第2の液体に対する溶解度の異なる任意の物質について、前記溶解度の差を利用して、前記物質の抽出反応を行うことができる。
【0056】
前記装置1は、抽出の他にも、第1の液体と、第2の液体との混合にも使用することができる。例えば、乳化剤を配合しておけば、スラグ流を利用して、効率的に第1の液体と第2の液体とを乳化させることができる。前記装置は、その他、第1の液体と第2の液体とを接触させることにより、合成樹脂を合成する反応にも利用することができる。
【0057】
[変形例]
スラグ流の発生装置の構成は、上記実施形態に係るものに限定されるものではない。
【0058】
例えば、上記装置1においては、基材の数は4である。基材の数は、これに限定されず適宜変更することができる。例えば、前記第4流路53及び第5流路54を設けた第1基材11を省略し、第2基材に第1流入口111及び第2流入口112を設けてもよい。また、例えば、前記第3基材13の一方の面に設けられた前記複数の混合流路を5個目の新たな基材に移設してもよい。その場合、混合流路は前記新たな基材を貫通するスリット孔で構成してもよい。また、前記第3基材13の他方の面から前記第1分配流路51及び前記第2分配流路52を省略し、前記第2基材の一方の面に前記第1分配流路51及び前記第2分配流路52を設けてもよい。
【0059】
例えば、図14に示したように、第4基材14の他方の面に接面するように、第5基材15を設けてもよい。図14に示したスラグ流の発生装置1bでは、第1基材11b、第2基材12b、第3基材13b、及び第4基材14bの形状は、上記の装置1と同様である。ただし、第1流入口111と第2流入口112は、第4基材14bに設けられており、第3基材13bと第2基材12bとには、第1流入口111又は第2流入口112と連通する貫通孔が設けられる点で相違する。第1流入口111から流入した第1の液体は、第3基材13bと第2基材12bとに設けられた貫通孔を経て第1基材11bに設けられた第4流路53に流入する。第2流入口112から流入した第2の液体は、第3基材13bと第2基材12bとに設けられた貫通孔を経て第1基材11bに設けられた第5流路54に流入する。
【0060】
第1基材11b、第2基材12b、第3基材13b、及び第4基材14bは、PEEK及び/又はPFAで構成される。PEEK及び/又はPFAで構成される基材に雌螺子を設けて、雄螺子を螺合させると、基材が損傷することがある。このため、装置1bでは、金属であるステンレス鋼で構成される第5基材15に雌螺子を設けて、第4基材14bと雄螺子71の頭部との間に金属製の座金73を配置している。
【0061】
例えば、第1分配流路、又は第2分配流路は、上流側の基材と下流側の基材との間に設けられる構成にすることができる。また、混合流路は、前記下流側の基材とさらに下流側の基材との間に設けられる構成にすることができる。また、例えば、第4流路、又は第5流路は、前記上流側の基材と、さらに上流側の基材との間に設けられる構成とすることができる。
【0062】
混合流路などの任意の流路をスリット状の貫通孔で構成する場合は、混合流路を設けた基材の両面を別の基材で挟むことにより、スリット状の貫通孔の開口部を閉じることができる。
【0063】
混合流路の形状は、装置1の例に限定されない。例えば、図11に示したように、第2流路132bと第3流路133bとが直線状に配置され、第2流路132b及び第3流路133bに対して、第1流路131bが接続する形状にしてもよい。また、図12に示したように、第2流路132cと第3流路133cとが折れ曲がった角度で接続され、第2流路131cのみに、第1流路131cが接続される形状にしてもよい。また、図13に示したように、第1流路131dと第2流路132dとが為す角度が鈍角になり、第1流路131d及び第2流路が第3流路133dに連通するようにしてもよい。このように、第1流路と第2流路との接続角度は、特に限定されない。例えば、30~270°の範囲で変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 スラグ流の発生装置
111 第1流入口
112 第2流入口
131 第1流路
132 第2流路
133 第3流路
134 混合流路
51 第1分配流路
52 第2分配流路
141 排出口
10 複数の基材


図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
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図14