(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153290
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】スプーン
(51)【国際特許分類】
A47G 21/04 20060101AFI20241022BHJP
A61J 7/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A47G21/04 Z
A61J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067090
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峪 純平
(72)【発明者】
【氏名】米田 裕輝
【テーマコード(参考)】
3B115
4C047
【Fターム(参考)】
3B115AA17
3B115BA02
3B115DA09
3B115DC18
4C047NN07
(57)【要約】
【課題】つぼ上の食べ物を唇で口内にスムーズに移動できない者であってもパウチ内の収容物を摂取しやすいスプーンを提供する。
【解決手段】柄には、柄尻からつぼの第1面に向かう第1方向に延び、柄尻側からスパウトが収容される貫通孔が形成されている。つぼの幅方向は第1方向に垂直な第2方向である。第1面には貫通孔の開口が形成されている。柄は、一部が開口の中心の第1点よりも第1および第2方向に垂直かつ第1面から第2面に向かう第3方向側に位置し、つぼを第2面側から支持する支持部を有する。第2方向から視て、第1点よりも先側にて、先とつぼとは、各々が第1方向に平行な第1仮想直線と第2仮想直線との間に収まっている。第1仮想直線は第1点を通る。第2仮想直線は、第1点から第3方向に離間し、かつ支持部の外側表面上の第2点を通る。第1点と第2点とを通る第3仮想直線は、第1および第2仮想直線に直交する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウト付きパウチの前記スパウトに取付可能なスプーンであって、
先と、
前記先に連続し、かつ、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有するつぼと、
前記つぼに連続し、かつ、柄尻を有する柄とを備え、
前記柄には、前記柄尻から前記第1の面に向かう第1の方向に延び、かつ前記柄尻側から前記スパウトの先端が収容される貫通孔が形成されており、
前記つぼの幅方向は、前記第1の方向に垂直な第2の方向であり、
前記第1の面には、前記貫通孔の開口が形成され、
前記柄は、前記つぼを前記第2の面側から支持する支持部を有し、
前記支持部の一部は、前記開口の中心にあたる第1の点よりも、前記第1の方向と前記第2の方向とに垂直かつ前記第1の面から前記第2の面に向かう第3の方向側に位置し、
前記第2の方向から視て、前記第1の点よりも前記先側において、前記先と前記つぼとは、各々が前記第1の方向に平行な第1の仮想直線と第2の仮想直線との間に収まっており、
前記第1の仮想直線は、前記第1の点を通り、
前記第2の仮想直線は、前記第1の点から前記第3の方向に離間し、かつ、前記支持部の外側表面上に位置する第2の点を通り、
前記第1の点と前記第2の点とを通る第3の仮想直線は、前記第1および第2の仮想直線に直交する、スプーン。
【請求項2】
前記第2の方向から視て、前記開口のうち前記第1の点から前記第3の方向に最も離間した第3の点よりも前記先側において、前記つぼは、前記先に近づくにつれて前記第2の仮想直線から遠ざかるように湾曲している、請求項1に記載のスプーン。
【請求項3】
前記つぼの幅は、前記第3の点よりも前記先側では、前記先に近づくにつれて短くなる、請求項2に記載のスプーン。
【請求項4】
前記柄は、外周面を有し、
前記外周面には、周方向に段差を付ける第1のナール加工と、前記第1の方向に段差を付ける第2のナール加工との少なくとも一方が施されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のスプーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パウチのスパウトに取付可能なスプーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、英国特許出願公開第2382020号明細書(特許文献1)等に開示されているように、スパウト付きパウチのスパウトに取付可能なスプーンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】英国特許出願公開第2382020号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスプーンは、先と柄との間に位置するつぼが当該先側において反り上がり、かつ、つぼの中央部分が下側(使用時において下側)に大きく凹んでいる。それゆえ、つぼ上の食べ物を唇で口内にスムーズに移動させることできない者に、介助者が特許文献1のスプーンを用いてパウチ内の収容物を摂取させる場合、介助者は、スプーンが取り付けられたパウチを斜めに大きく傾ける等の対応が必要となる。このように、特許文献1のスプーンは、パウチ内の収容物を摂取対象者に摂取させやすい構造を有しているとは言えない。
【0005】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、スプーンのつぼ上の食べ物を唇で口内にスムーズに移動させることできない者であってもパウチ内の収容物を摂取しやすいスプーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、スプーンは、スパウト付きパウチのスパウトに取付可能である。スプーンは、先と、先に連続し、かつ、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有するつぼと、つぼに連続し、かつ、柄尻を有する柄とを備える。柄には、柄尻から第1の面に向かう第1の方向に延び、かつ柄尻側からスパウトの先端が収容される貫通孔が形成されている。つぼの幅方向は、第1の方向に垂直な第2の方向である。第1の面には、貫通孔の開口が形成されている。柄は、つぼを第2の面側から支持する支持部を有する。支持部の一部は、開口の中心にあたる第1の点よりも、第1の方向と第2の方向とに垂直かつ第1の面から第2の面に向かう第3の方向側に位置する。第2の方向から視て、第1の点よりも先側において、先とつぼとは、各々が第1の方向に平行な第1の仮想直線と第2の仮想直線との間に収まっている。第1の仮想直線は、第1の点を通る。第2の仮想直線は、第1の点から第3の方向に離間し、かつ、支持部の外側表面上に位置する第2の点を通る。第1の点と第2の点とを通る第3の仮想直線は、第1および第2の仮想直線に直交する。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、スプーンのつぼ上の食べ物を唇で口内にスムーズに移動させることできない者であってもパウチ内の収容物を摂取しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】スプーンを
図1の右側の矢印の方向から見た側面図である。
【
図3】スプーンを
図1の左側の矢印の方向から見た側面図である。
【
図4】スプーンを
図1の下側の矢印の方向から見た側面図である。
【
図7】スプーンを
図6の右側の矢印の方向から見た側面図である。
【
図8】スプーンを
図6の左側の矢印の方向から見た側面図である。
【
図9】スプーンを
図6の下側の矢印の方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
各実施の形態に係るスプーンは、スプーンのつぼ上の食べ物を唇で口内にスムーズに移動させることできない者が、介助者が把持したスプーンからつぼ上の食べ物を口に入れる局面において好適に用いられる。以下では、つぼ上の食べ物を唇で口内にスムーズに移動させることできない者を、便宜上、「食事介助を受ける者」と称する。なお、食事介助を受ける者には、乳幼児も含まれる。なお、当該スプーンの使用者は、食事介助を受ける者に限定されるものではない。
【0011】
各実施の形態では、説明の便宜上、スプーンのつぼの長さ方向をX軸方向とし、つぼの幅方向をY軸方向とし、つぼの深さ方向をZ軸方向とした、三次元座標系を用いて説明する。
【0012】
[実施の形態1]
本実施の形態のスプーンについて、
図1~
図5に基づき説明する。
図1は、スプーン1の正面図(本例では、上面図)である。
図2は、スプーン1を
図1の矢印902の方向から見た側面図である。
図3は、スプーン1を
図1の矢印903の方向から見た側面図である。
図4は、スプーン1を
図1の矢印904の方向から見た側面図である。
図5は、
図1のV-V線矢視断面図である。なお、本例では、矢印902の方向はX軸負方向、矢印903の方向はX軸正方向、矢印904の方向はY軸正方向である。
【0013】
スプーン1は、スパウト付きのパウチ(図示せず)に接続される。詳しくは、スプーン1は、スパウトに接続される。典型的には、スプーン1は、スパウトと螺合する。スプーン1は、食べ物の視認性の観点から、透明または無色半透明であることが好ましい。スプーン1は、ポリエチレン等の樹脂製である。スプーン1は、一体的に形成されている。スプーン1は、
図1~
図5に示すように、先10と、つぼ20と、柄尻34を有する柄30とを備える。
【0014】
つぼ20は、先10に連続している。つぼ20は、上面21(第1の面)と、上面21とは反対側の下面22(第2の面)とを有する。つぼ20は、パウチの収容物を保持する部位である。つぼ20の幅方向(Y軸方向、第2の方向)は、柄尻34から上面21に向かう方向(X軸正方向,第1の方向)に垂直である。
【0015】
上面21は、
図1および
図5に示すように、第1領域211と、第2領域212と、第3領域213とを含む。第1領域211は、X軸正方向側において先10と連続している。第2領域212は、X軸正方向側において第1領域211と連続している。第3領域213は、X軸正方向側において第2領域212と連続している。
【0016】
本例では、第1領域211は、曲面形状である。第1領域211は、平面に近い形状を有する。詳しくは、第1領域211は、
図1に示すスプーン1の正面視において、凹状に湾曲している。さらに詳しくは、
図4および
図5に示す状態において、第1領域211は、
図1に示す第1領域211と第2領域212との境界線C1の中央位置V1(
図5における第1領域211と第2領域212との交点)に近づくに連れてZ座標の値が徐々に小さくように湾曲している。
【0017】
第2領域212は、曲面形状である。詳しくは、第2領域212は、第1領域211と同様、
図1に示すスプーン1の正面視において、凹状に湾曲している。さらに詳しくは、
図4および
図5に示す状態において、第2領域212は、第1領域211と第2領域212との境界線C1の中央位置V1に近づくに連れてZ座標の値が徐々に小さくように湾曲している。
【0018】
第3領域213は、平面形状である。第3領域213は、XY平面に対して傾斜している。第3領域213は、当該領域の法線ベクトルが、Y軸方向の成分を有さず、かつ、X軸方向とZ軸方向との成分が正の値となるように傾斜している。本例では、当該法線ベクトルがX軸に対して正方向に45°程度傾いている。
【0019】
ただし、第1領域211,第2領域212,第3領域213の各形状は、これらに限定されるものではない。
【0020】
柄30は、つぼ20に連続する。柄30は、介助者等が把持する箇所である。柄30は、先10とは反対側に柄尻34を有する。柄尻34は、先10と反対側の端部である。
【0021】
柄30には、柄尻34から上面21に向かう方向(X軸正方向,第1の方向)に延び、かつ柄尻34側からスパウトの先端(図示せず)が収容される貫通孔400が形成されている。貫通孔400の開口401が、つぼ20の上面21に形成されている。詳しくは、開口401は、上面21の第2領域212と第3領域213とにわたって形成されている。
【0022】
柄30は、柄尻34に加え、支持部31と、第1把持部32と、第2把持部33とをさらに有する。第1把持部32は、X軸正方向側において支持部31と連続している。第2把持部33は、X軸正方向側において第1把持部32と連続している。柄尻34は、X軸正方向側において第2把持部33と連続している。貫通孔400は、
図5に示すように、支持部31と、第1把持部32と、第2把持部33と、柄尻34とにわたって形成されている。
図3に示すように、柄尻34は、リング状をしている。
【0023】
第1把持部32は、スプーン1がスパウトに取り付けられた後に、介助者によって把持される部分である。第2把持部33は、スプーン1のスパウトへの着脱時と、スプーン1がスパウトに取り付けられた後とにわたって、介助者によって把持される部分である。
【0024】
点P1(第1の点)は、開口401の中心にあたる点である。本例では、点P1は、開口401の重心である。本例では、開口401は、略楕円状である。開口401は、矢印902(
図1)の方向から見て、円状である。
【0025】
支持部31は、つぼ20を下面22側から支持する。支持部31の一部は、点P1からZ軸負方向(第3の方向)に位置する。すなわち、支持部31は、少なくとも、点P1よりも下方に位置する部位を有する。なお、Z軸負方向は、X軸方向(第1の方向)とY軸方向(第2の方向)とに垂直、かつ、上面21から下面22に向かう方向である。詳しくは、支持部31は、2つの側面311と、底面312とを有する。各側面311は、XZ平面に平行である。本例では、底面312は、XY平面に平行である。
【0026】
第1把持部32は、
図1および
図5に示すように、外周面32aと、貫通孔400の一部を形成する内周面32bとを有する。外周面32aと内周面32bとは、略円錐台の周形状である。外周面32aは、複数の凸部321を有する。各凸部321は、リング状である。複数の凸部321は、X軸方向に間隔を開けて並んでいる。このように、第1把持部32は、X軸方向に段差を付けるナール加工(第2のナール加工)が施されている。なお、内周面32bの形状は、円柱の周形状であってもよい。
【0027】
第2把持部33は、
図1および
図5に示すように、外周面33aと、貫通孔400の一部を形成する内周面33bとを有する。外周面33aは、略円錐台の周形状である。内周面32bの一部には、
図5に示すように、スパウトのネジ部と螺合するネジ部360が設けられている。
【0028】
第2把持部33は、第1把持部32よりも円柱に近い形状である。外周面33aは、複数の凸部331を有する。各凸部331は、直線状である。複数の凸部331は、周方向に間隔を開けて並んでいる。このように、第1把持部32は、第1把持部32の周方向に段差を付けるナール加工(第1のナール加工)が施されている。
【0029】
第2把持部33は、
図3および
図5に示すように、つぼ20の上面21に形成された開口401の反対側に、貫通孔400の開口402をさらに有する。貫通孔400は、開口402と開口401とをつなぐように形成されている。パウチ内の食べ物(液体、ゼリー等の粘性物、粉状物)は、貫通孔400を介して、つぼ20の上面21に供給される。
【0030】
図1に示す軸J1は、貫通孔400の中心軸である。軸J1は、点P1と、開口402の中心にあたる点S1(
図3,
図5)とを結んでいる。スプーン1は、
図1に示すように、スプーン1の正面視(上面視)において、軸J1に関して対称な形状である。
【0031】
図2、
図4および
図5に示すように、点Q1(第2の点)は、点P1からZ軸負方向に離間し、かつ、支持部31の外側表面上に位置する点である。本例では、点Q1は、
図4および
図5に示すように、Z軸方向における支持部31の最下点である。点Q1は、支持部31の底面312上の点である。点Q1は、
図1に示すスプーン1の正面視において、点P1と重なっている。
図5に示すように、点Q1は、点P1の直下に位置する。詳しくは、点Q1は、点P1に対して、X軸方向とY軸方向とに離間せず、Z軸負方向にのみ離間している。
【0032】
支持部31の底面312の形状は、上述した形状に限定されるものではない。点Q1は、支持部31の最下点でなくてもよい。ただし、介助者の口への入れやすさを考慮すると、点P1と点Q1との間の距離は短い方が好ましく、点Q1は支持部31の最下点であることが好ましく、支持部31の底面312は点Q1を含み且つXY平面に平行であることが好ましい。
【0033】
点P1と点Q1との間の距離(すなわち、後述する仮想直線L11と仮想直線L12との間の距離(後述する仮想直線L13に沿った長さ))は、口に入れやすい程度の距離(薄さ)であることが好ましい。当該距離は、たとえば、2mm以上かつ5mm以下、好ましくは、3mm以上かつ4mm以下である。
【0034】
図1に示すように、点R1(第3の点)は、Y軸方向から視て、開口401のうち点P1からZ軸負方向に最も離間した点である。点R1は、Z軸方向における、開口401の最下点である。
【0035】
図4および
図5に示すように、仮想直線L11は、X軸方向に平行であって、かつ、点P1を通る直線である。仮想直線L12は、X軸方向に平行であって、かつ、点Q1を通る直線である。なお、本例では、仮想直線L11は、一部の線分が軸J1上に位置する。
【0036】
図2、
図4および
図5に示すように、仮想直線L13は、点P1と点Q1とを通る直線である。仮想直線L13は、仮想直線L11と仮想直線L12とに直交する。すなわち、上述したように、点Q1は、点P1に対して、X軸方向とY軸方向とに離間せず、Z軸負方向にのみ離間している。
【0037】
先10とつぼ20とは、つぼ20の幅方向(Y軸方向)から視て、点P1よりも先10側において、仮想直線L11と仮想直線L12との間に収まっている。すなわち、先10とつぼ20とは、点P1よりも先10側において、仮想直線L11を含むXY平面に平行な仮想平面(図示せず)と、仮想直線L12を含むXY平面に平行な仮想平面(図示せず)との間に収まっている。
【0038】
このような構成によれば、食事介助を受ける者にとって、貫通孔400の開口401の中心である点P1よりも先10側において先10とつぼ20とが上述した2つの仮想平面(すなわち、つぼ20の幅方向から視て2つの仮想直線L11,L12)の間に収まっていない構成に比べて、つぼ20上の食べ物(パウチから供給された物)を口に入れやすくなる。
【0039】
つぼ20は、つぼ20の幅方向から視て、点R1よりも先10側において、先10に近づくにつれて仮想直線L12から遠ざかるように湾曲している。このような構成によれば、食事介助を受ける者にとって、先10に近づくにつれて仮想直線L12から遠ざかるように湾曲していない構成に比べて、つぼ20上の食べ物を口に入れやすくなる。
【0040】
図1に示すように、つぼ20の幅は、点R1よりも先10側では、先10に近づくにつれて短くなる。このような構成によれば、食事介助を受ける者にとって、つぼ20の幅が点R1よりも先10側において先10に近づくにつれて短くならない構成に比べて、つぼ20上の食べ物を口に入れやすくなる。
【0041】
上述したように、柄30の第2把持部33の外周面には、周方向に段差を付けるナール加工(第1のナール加工)が施されている。このような構成によれば、スプーン1を軸J1を中心に回転させてスプーン1をパウチのスパウトに取り付ける際に、介助者の指が第2把持部33に対して滑りにくくなる。それゆえ、当該ナール加工が施されていない構成に比べて、介助者は、スプーン1をスパウトに取り付け易くなる。同様に、スプーン1の使用後に、介助者は、スプーン1をスパウトから取り外し易くなる。
【0042】
柄30の第1把持部32の外周面には、X軸方向に段差を付けるナール加工(第2のナール加工)が施されている。このような構成によれば、介助者の指が第1把持部32に対してX軸方向に滑りにくくなる。それゆえ、当該ナール加工が施されていない構成に比べて、介助者は、スプーン1の柄30をしっかりと把持できる。
【0043】
スプーン1は、上述したように、食べ物の視認性の観点から、透明または無色半透明であることが好ましい。スプーン1を透明または無色半透明とすることにより、つぼ20の下面22側から上面21に載った食べ物を視認できる。さらに、貫通孔400にパウチから食べ物(パウチの収容物)がつぼ20へと送られてきていることを視認できる。
【0044】
[実施の形態2]
本実施の形態のスプーンについて、
図6~
図10に基づき説明する。
図6は、スプーン1Aの正面図(本例では、上面図)である。
図7は、スプーン1Aを
図6の矢印907の方向から見た側面図である。
図8は、スプーン1Aを
図6の矢印908の方向から見た側面図である。
図9は、スプーン1Aを
図6の矢印909の方向から見た側面図である。
図10は、
図6のX-X線矢視断面図である。なお、本例では、矢印907の方向はX軸負方向、矢印908の方向はX軸正方向、矢印909の方向はY軸正方向である。以下、スプーン1Aについて、実施の形態1のスプーン1と異なる点を主として説明する。
【0045】
スプーン1Aは、スプーン1と同様に、スパウト付きのパウチに接続される。スプーン1Aは、透明または無色半透明であることが好ましい。スプーン1Aは、ポリエチレン等の樹脂製であり、かつ、一体的に形成されている。スプーン1Aは、
図6~
図10に示すように、先10Aと、つぼ20Aと、柄尻34を有する柄30Aとを備える。
【0046】
つぼ20Aは、先10Aに連続している。つぼ20Aは、上面21A(第1の面)と、上面21Aとは反対側の下面22A(第2の面)とを有する。つぼ20Aは、パウチの収容物を保持する部位である。つぼ20Aの幅方向(Y軸方向、第2の方向)は、柄尻34から上面21Aに向かう方向(X軸正方向,第1の方向)に垂直である。
【0047】
上面21Aは、
図6および
図10に示すように、第1領域211Aと、第2領域212Aと、第3領域213Aと、第4領域214とを含む。第1領域211Aは、X軸正方向側において先10Aと連続している。第2領域212Aは、X軸正方向側において第1領域211Aと連続している。第3領域213Aは、X軸正方向側において第2領域212Aと連続している。第4領域214は、X軸正方向側において第3領域213Aと連続している。
【0048】
本例では、第1領域211Aは、曲面形状である。第1領域211Aは、平面に近い形状である。詳しくは、第1領域211Aは、
図6に示すスプーン1Aの正面視において、凹状に湾曲している。さらに詳しくは、
図9および
図10に示す状態において、第1領域211Aは、第1領域211Aと第2領域212Aとの境界線C2の中央位置V2に近づくに連れてZ座標の値が徐々に小さくように湾曲している。なお、本例では、中央位置V2は、後述する点R2の位置と一致する。
【0049】
第2領域212Aは、平面形状である。第2領域212Aは、XY平面に対して傾斜している。第2領域212Aは、当該領域の法線ベクトルが、Y軸方向の成分を有さず、かつ、X軸方向とZ軸方向との成分が正の値となるように傾斜している。本例では、当該法線ベクトルがX軸に対して正方向に45°程度傾いている。
【0050】
第3領域213Aは、曲面形状である。詳しくは、第3領域213は、
図9および
図10の矢印910の方向から視て、第2領域212Aと第4領域214とを滑らかに接続するように手前側に凸状となるように湾曲している。第4領域214は、平面形状である。第4領域214は、XY平面に対して平行である。
【0051】
ただし、第1領域211A,第2領域212A,第3領域213A,第4領域214の各形状は、これらに限定されるものではない。
【0052】
柄30Aは、つぼ20Aに連続する。柄30Aは、介助者等が把持する箇所である。柄30Aは、先10Aとは反対側に柄尻34を有する。柄尻34は、本例では、先10Aと反対側の端部である。
【0053】
柄30Aには、柄尻34から上面21Aに向かう方向(X軸正方向,第1の方向)に延び、かつ柄尻34側からスパウトの先端(図示せず)が収容される貫通孔400Aが形成されている。貫通孔400Aの開口401Aが、つぼ20Aの上面21Aに形成されている。詳しくは、開口401Aは、上面21Aの第2領域212Aに形成されている。
【0054】
柄30Aは、支持部31Aと、第1把持部32と、第2把持部33とを有する。第1把持部32は、X軸正方向側において支持部31Aと連続している。貫通孔400Aは、
図10に示すように、支持部31Aと、第1把持部32と、第2把持部33とにわったって形成されている。
【0055】
点P2(第1の点)は、開口401Aの中心にあたる点である。本例では、点P2は、開口401Aの重心である。本例では、開口401Aは、楕円状である。開口401Aは、矢印907(
図6)の方向から見て、円状である。
【0056】
支持部31Aは、つぼ20Aを下面22A側から支持する。支持部31Aの一部は、点P2からZ軸負方向(第3の方向)に位置する。すなわち、支持部31Aは、少なくとも、点P2よりも下方に位置する部位を有する。本例では、支持部31Aの底部313(
図9)側の外周面は、曲面形状である。詳しくは、当該外周面は、Z軸負方向に向けて凸状となるように湾曲している。当該外周面のYZ平面に平行な断面の形状は、円弧状である。当該円弧の半径は、先10A側から第1把持部32に向かうに連れて少しずつ大きくなっている。なお、Z軸負方向は、X軸方向(第1の方向)とY軸方向(第2の方向)とに垂直、かつ、上面21Aから下面22Aに向かう方向である。
【0057】
本実施の形態では、第2把持部33は、
図8および
図10に示すように、つぼ20Aの上面21Aに形成された開口401Aの反対側に、貫通孔400Aの開口402Aをさらに有する。貫通孔400Aは、開口402Aと開口401Aとをつなぐように形成されている。パウチ内の食べ物は、貫通孔400Aを介して、つぼ20Aの上面21Aに供給される。
【0058】
図6に示す軸J2は、貫通孔400Aの中心軸である。軸J2は、点P2と、開口402Aの中心にあたる点S2(
図8,
図10)とを結んでいる。スプーン1Aは、
図6に示すように、スプーン1Aの正面視(上面視)において、軸J2に関して対称な形状である。
【0059】
図7、
図9および
図10に示すように、点Q2(第2の点)は、点P2からZ軸負方向に離間し、かつ、支持部31Aの外側表面上に位置する点である。本例では、点Q2は、
図9および
図10に示すように、点Q2よりも先10A側において、Z軸方向における支持部31Aの最下点である。点Q2は、
図6に示すスプーン1Aの正面視において、点P2と重なっている。
図10に示すように、点Q2は、点P2の直下に位置する。詳しくは、点Q2は、点P2に対して、X軸方向とY軸方向とに離間せず、Z軸負方向にのみ離間している。より詳しくは、点Q2は、上述した底部313の外周面の断面形状(円弧)の最下点である。
【0060】
支持部31Aの底部313側の形状は、上述した形状に限定されるものではない。点Q2は、点Q2よりも先10A側において支持部31Aの最下点でなくてもよい。ただし、介助者の口への入れやすさを考慮すると、点P2と点Q2との間の距離は短い方が好ましい。また、このような観点から、点Q2は、点Q2よりも先10A側において支持部31Aの最下点であることが好ましい。
【0061】
点P2と点Q2との間の距離(すなわち、後述する仮想直線L21と仮想直線L22との間の距離(後述する仮想直線L23に沿った長さ))は、口に入れやすい程度の距離(薄さ)であることが好ましい。当該距離は、実施の形態1における点P1と点Q1との間の距離と同様、たとえば、2mm以上かつ5mm以下、好ましくは、3mm以上かつ4mm以下である。
【0062】
図6に示すように、点R2(第3の点)は、Y軸方向から視て、開口401Aのうち点P2からZ軸負方向に最も離間した点である。点R2は、Z軸方向における、開口401Aの最下点である。
【0063】
図9および
図10に示すように、仮想直線L21は、X軸方向に平行であって、かつ、点P2を通る直線である。仮想直線L22は、X軸方向に平行であって、かつ、点Q2を通る直線である。なお、本例では、仮想直線L21は、一部の線分が軸J2上に位置する。
【0064】
図7、
図9および
図10に示すように、仮想直線L23は、点P2と点Q2とを通る直線である。仮想直線L23は、仮想直線L21と仮想直線L22とに直交する。すなわち、上述したように、点Q2は、点P2に対して、X軸方向とY軸方向とに離間せず、Z軸負方向にのみ離間している。
【0065】
先10Aとつぼ20Aとは、つぼ20Aの幅方向(Y軸方向)から視て、点P2よりも先10A側において、仮想直線L21と仮想直線L22との間に収まっている。すなわち、先10Aとつぼ20Aとは、点P2よりも先10A側において、仮想直線L21を含むXY平面に平行な仮想平面(図示せず)と、仮想直線L22を含むXY平面に平行な仮想平面(図示せず)との間に収まっている。
【0066】
このような構成によれば、上述した食事介助を受ける者にとって、貫通孔400Aの開口401Aの中心である点P2よりも先10A側において先10Aとつぼ20Aとが上述した2つの仮想平面(すなわち、つぼ20の幅方向から視て2つの仮想直線L21,L22)の間に収まっていない構成に比べて、つぼ20A上の食べ物(パウチから供給された物)を口に入れやすくなる。
【0067】
つぼ20Aは、つぼ20Aの幅方向から視て、点R2よりも先10A側において、先10Aに近づくにつれて仮想直線L22から遠ざかるように湾曲している。このような構成によれば、食事介助を受ける者にとって、先10Aに近づくにつれて仮想直線L22から遠ざかるように湾曲していない構成に比べて、つぼ20A上の食べ物を口に入れやすくなる。
【0068】
図6に示すように、つぼ20Aの幅は、点R2よりも先10A側では、先10Aに近づくにつれて短くなる。このような構成によれば、食事介助を受ける者にとって、つぼ20Aの幅が点R2よりも先10A側において先10Aに近づくにつれて短くならない構成に比べて、つぼ20A上の食べ物を口に入れやすくなる。
【0069】
上述したように、柄30Aの第2把持部33の外周面には、周方向に段差を付けるナール加工(第1のナール加工)が施されている。それゆえ、当該ナール加工が施されていない構成に比べて、介助者は、スプーン1Aをスパウトに取り付け易くなる。同様に、スプーン1Aの使用後に、介助者は、スプーン1Aをスパウトから取り外し易くなる。
【0070】
柄30Aの第1把持部32の外周面には、X軸方向に段差を付けるナール加工(第2のナール加工)が施されている。このような構成によれば、当該ナール加工が施されていない構成に比べて、介助者は、スプーン1Aの柄30をしっかりと把持できる。
【0071】
スプーン1Aは、上述したように、食べ物の視認性の観点から、透明または無色半透明であることが好ましい。スプーン1Aを透明または無色半透明とすることにより、つぼ20Aの下面22A側から上面21Aに載った食べ物を視認できる。さらに、貫通孔400Aにパウチから食べ物(パウチの収容物)がつぼ20Aへと送られてきていることを視認できる。
【0072】
<付記>
〔項目1〕
スパウト付きパウチの前記スパウトに取付可能なスプーンであって、
先と、
前記先に連続し、かつ、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有するつぼと、
前記つぼに連続し、かつ、柄尻を有する柄とを備え、
前記柄には、前記柄尻から前記第1の面に向かう第1の方向に延び、かつ前記柄尻側から前記スパウトの先端が収容される貫通孔が形成されており、
前記つぼの幅方向は、前記第1の方向に垂直な第2の方向であり、
前記第1の面には、前記貫通孔の開口が形成され、
前記柄は、前記つぼを前記第2の面側から支持する支持部を有し、
前記支持部の一部は、前記開口の中心にあたる第1の点よりも、前記第1の方向と前記第2の方向とに垂直かつ前記第1の面から前記第2の面に向かう第3の方向側に位置し、
前記第2の方向から視て、前記開口の中心にあたる第1の点よりも前記先側において、前記先と前記つぼとは、各々が前記第1の方向に平行な第1の仮想直線と第2の仮想直線との間に収まっており、
前記第1の仮想直線は、前記第1の点を通り、
前記第2の仮想直線は、前記第1の点から前記第3の方向に離間し、かつ、前記支持部の外側表面上に位置する第2の点を通り、
前記第1の点と前記第2の点とを通る第3の仮想直線は、前記第1および第2の仮想直線に直交する、スプーン。
【0073】
〔項目2〕
前記第2の方向から視て、前記開口のうち前記第1の点から前記第3の方向に最も離間した第3の点よりも前記先側において、前記つぼは、前記先に近づくにつれて前記第2の仮想直線から遠ざかるように湾曲している、項目1に記載のスプーン。
【0074】
〔項目3〕
前記つぼの幅は、前記第3の点よりも前記先側では、前記先に近づくにつれて短くなる、項目2に記載のスプーン。
【0075】
〔項目4〕
前記柄は、外周面を有し、
前記外周面には、周方向に段差を付ける第1のナール加工と、前記第1の方向に段差を付ける第2のナール加工との少なくとも一方が施されている、項目1から3のいずれか1項に記載のスプーン。
【0076】
〔項目5〕
前記スプーンは、透明または無色半透明である、項目1から4のいずれか1項に記載のスプーン。
【0077】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1,1A スプーン、10,10A 先、21,21A 上面、22,22A 下面、30,30A 柄、31,31A 支持部、32 第1把持部、32a,33a 外周面、32b,33b 内周面、33 第2把持部、34 柄尻、211,211A 第1領域、212,212A 第2領域、213,213A 第3領域、214 第4領域、311 側面、312 底面、313 底部、321,331 凸部、360 ネジ部、400,400A 貫通孔、401,401A,402,402A 開口、C1,C2 境界線、J1,J2 軸、L11,L12,L13,L21,L22,L23 仮想直線、P1,P2,Q1,Q2,R1,R2 点、V1,V2 中央位置。