(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153297
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】原稿搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 43/04 20060101AFI20241022BHJP
B65H 29/22 20060101ALI20241022BHJP
B65H 31/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B65H43/04
B65H29/22 Z
B65H31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067098
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩次
【テーマコード(参考)】
3F048
3F049
3F054
【Fターム(参考)】
3F048AA08
3F048AB02
3F048BA10
3F048BB02
3F048BB10
3F048BD01
3F048DA03
3F048DC13
3F048EA03
3F048EA05
3F048EB04
3F049AA03
3F049DA12
3F049DB04
3F049EA17
3F049LA11
3F049LB02
3F054AA02
3F054BA01
3F054BJ04
3F054BJ09
3F054CA23
3F054CA36
3F054DA16
(57)【要約】
【課題】排出部が移動することにより小さくなる隙間に異物が挟まれることを抑制する。
【解決手段】原稿搬送装置は、給紙トレイと、給紙部と、搬送部と、給紙トレイの下方に配置される排出トレイと、上下方向に独立して移動可能であり、搬送路の原稿を排出トレイに排出する排出部と、排出部を上下方向に移動させるリフトモーターと、リフトモーターの駆動を制御する制御部と、を備え、給紙トレイと排出部との上下方向間の隙間に異物が存在すると判断したとき、制御部は、隙間の大きさを一定範囲で繰り返し変化させる振動処理を行う。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿がセットされる給紙トレイと、
前記給紙トレイにセットされた前記原稿を搬送路に給紙する給紙部と、
前記搬送路に沿って前記原稿を搬送する搬送部と、
前記給紙トレイの下方に配置される排出トレイと、
前記給紙トレイと前記排出トレイとの間に配置され、上下方向に独立して移動可能であり、前記搬送路の前記原稿を前記排出トレイに排出する排出部と、
前記排出部を上下方向に移動させるリフトモーターと、
前記リフトモーターの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記給紙トレイと前記排出部との上下方向間の隙間に異物が存在すると判断したとき、前記制御部は、前記隙間の大きさを一定範囲で繰り返し変化させる振動処理を行う、原稿搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記振動処理として、前記排出部を所定距離上昇させる処理と前記排出部を前記所定距離下降させる処理とを交互に連続して複数回繰り返す処理を行う、請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記給紙トレイを上下方向に移動させるトレイモーターを備え、
前記制御部は、前記振動処理として、前記給紙トレイを所定距離上昇させる処理と前記給紙トレイを前記所定距離下降させる処理とを交互に連続して複数回繰り返す処理を行う、請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記排出部を上昇させているときの前記リフトモーターの電流値が予め定められた閾値を超えたとき、前記制御部は、前記振動処理を行う、請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項5】
前記隙間における前記異物の有無に応じて出力を変化させる異物センサーを備え、
前記異物センサーの出力に基づき前記隙間に前記異物が存在することを検知したとき、前記制御部は、前記振動処理を行う、請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項6】
前記振動処理後、前記制御部は、前記排出部を下降させる、請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項7】
前記排出部は、前記原稿を排出する排出口を有し、
前記制御部は、前記排出部を上昇させることにより、前記排出トレイに排出されている最上層の前記原稿から前記排出口までの上下方向の距離である排出原稿距離を予め定められた適正距離に調整する調整処理を行い、
前記調整処理での前記排出部の上昇中、前記制御部は、前記隙間に異物が存在するか否かを判断する、請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項8】
前記搬送路に沿って搬送中の前記原稿を読み取って前記原稿の画像データを生成する読取部を備える、請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の原稿搬送装置を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の原稿搬送装置は、給紙トレイにセットされた原稿を搬送路に給紙して搬送し、排出トレイに原稿を排出する。たとえば、給紙トレイおよび排出トレイは、上下方向に対向するよう配置される。給紙トレイが上側に配置され、排出トレイが下側に配置される。このような原稿搬送装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、給紙トレイが上下方向に移動可能である。この構成では、たとえば、排出トレイから原稿が取り出されるとき、給紙トレイを上昇させることができる。これにより、排出トレイからの原稿の取り出しが容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、排出トレイに原稿を排出する排出部(排出ローラー)が上下方向に移動可能である。排出部は、給紙トレイと共に上下方向に移動する。排出部が移動することにより、排出部と他部材との間に生じる隙間が大きくなったり小さくなったりする。この構成では、排出部が移動することにより小さくなる隙間に異物(たとえば、ユーザーの指)が進入すると、その異物が挟まれるという不都合が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、排出トレイに原稿を排出する排出部が上下方向に移動可能な構成において、排出部が移動することにより小さくなる隙間に異物が挟まれることを抑制することが可能な原稿搬送装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の局面による原稿搬送装置は、原稿がセットされる給紙トレイと、給紙トレイにセットされた原稿を搬送路に給紙する給紙部と、搬送路に沿って原稿を搬送する搬送部と、給紙トレイの下方に配置される排出トレイと、給紙トレイと排出トレイとの間に配置され、上下方向に独立して移動可能であり、搬送路の原稿を排出トレイに排出する排出部と、排出部を上下方向に移動させるリフトモーターと、リフトモーターの駆動を制御する制御部と、を備える。給紙トレイと排出部との上下方向間の隙間に異物が存在すると判断したとき、制御部は、隙間の大きさを一定範囲で繰り返し変化させる振動処理を行う。
【0008】
本発明の第2の局面による画像形成装置は、上記原稿搬送装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、排出トレイに原稿を排出する排出部が上下方向に移動可能な構成において、排出部が移動することにより小さくなる隙間に異物が挟まれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による原稿搬送装置の概略図である。
【
図2】
図1に示す原稿搬送装置の排出部が上昇した場合の図である。
【
図3】一実施形態による原稿搬送装置の排出原稿センサーについて説明するための図である。
【
図4】一実施形態による原稿搬送装置のブロック図である。
【
図5】一実施形態による原稿搬送装置の制御部が行う排出原稿距離の調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態による原稿搬送装置の給紙トレイと排出部との上下方向間に生じる隅間について説明するための図である。
【
図7】一実施形態による原稿搬送装置の異物センサーの配置位置を示す図である。
【
図8】一実施形態による原稿搬送装置の制御部が行う排出部の振動処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図8を参照し、本発明の一実施形態による原稿搬送装置100について説明する。以下の説明では、原稿搬送装置100が設置される設置面に垂直な方向を原稿搬送装置100の上下方向と定義する。また、以下の説明では、原稿搬送方向と直交する方向を幅方向と称する。幅方向は、原稿搬送装置100の前後方向に相当する。なお、以下の説明において、右側は、原稿搬送装置100を正面から見た場合における左右方向の一方側であり、左側は、原稿搬送装置100を正面から見た場合における左右方向の他方側である。
【0012】
原稿搬送装置100は、原稿Dを搬送する。原稿搬送装置100は、スキャン機能を有し、搬送中の原稿Dを読み取る。ただし、原稿搬送装置100にスキャン機能が搭載されなくてもよい。この場合、図示しないが、原稿搬送装置100は、画像読取装置に設置される。画像読取装置は、原稿Dの読み取りを所定の読取位置で行う。原稿搬送装置100は、画像読取装置の読取位置に原稿Dを搬送する。
【0013】
また、原稿搬送装置100と印刷装置200とで画像形成装置1000が構成されてもよい(
図4参照)。言い換えると、原稿搬送装置100が画像形成装置1000に設置されてもよい。印刷装置200は、電子写真方式またはインクジェット方式で印刷を行う。印刷装置200は、原稿搬送装置100による原稿Dの読み取りで得られた原稿Dの画像データに基づく画像をシートに印刷する。
【0014】
<原稿搬送装置の全体構成>
図1に示すように、原稿搬送装置100は、原稿Dが搬送される搬送路10を有する本体部MBを備える。本体部MBは、原稿搬送装置100のうち左側の部分である。搬送路10は、略U字状に湾曲する。具体的には、搬送路10は、本体部MBの右側から左側に向かって延び、途中で折り返して右側に延びる。原稿Dは、搬送路10に沿って搬送される。言い換えると、搬送路10は、原稿Dの搬送をガイドする。
【0015】
たとえば、本体部MBは、ストレート搬送路110をさらに有する。ストレート搬送路110は、省略されてもよい。ストレート搬送路110は、右側から左側に向かって略直線的に延びる。また、ストレート搬送路110は、その一部を搬送路10と共用し、原稿搬送方向の最上流側から下流側に向かう途中で搬送路10から分岐する。搬送路10とストレート搬送路110との分岐点に符号BPを付す。
図1では、搬送路10を太線矢印で示し、ストレート搬送路110のうち搬送路10から分岐して以降の部分を細線矢印で示す。
【0016】
原稿搬送装置100は、搬送部1を備える。搬送部1は、搬送路10の複数個所に設置される。また、搬送部1は、ストレート搬送路110にも設置される。搬送部1の設置個所および設置数は特に限定されず、搬送路10の形状などに応じて適宜変更される。
【0017】
搬送部1は、搬送ローラー対を含む。搬送ローラー対は、回転可能に支持され、かつ、互いに圧接する一対の搬送ローラーで構成される。一対の搬送ローラーのうち、一方の搬送ローラーが搬送モーター(図示せず)から駆動力が伝達されて回転し、一方の搬送ローラーに従動して他方の搬送ローラーが回転する。一対の搬送ローラーは、搬送ローラー間に搬送ニップを形成する。搬送部1は、搬送ニップで原稿Dを挟み、その状態で搬送ローラー対を回転させる。これにより、搬送部1は、搬送路10に沿って原稿Dを搬送する。
【0018】
原稿搬送装置100は、給紙トレイ2を備える。給紙トレイ2は、本体部MBに対して右側に配置される。給紙トレイ2は、原稿Dがセットされるセット面(符号省略)を有する。給紙トレイ2のセット面は、装置正面から見て、本体部MBに向かって左斜め下方に傾斜する。これにより、給紙トレイ2上の原稿Dは、装置正面から見て、本体部MBに向かって左斜め下方に進行し易い。
【0019】
給紙トレイ2には、搬送前の原稿Dがユーザーによってセットされる。給紙トレイ2上の原稿Dが搬送路10に給紙され、搬送路10に沿って搬送される。給紙トレイ2のセット面上では、左斜め下方に向かう方向(すなわち、セット面に沿った方向)が原稿搬送方向となる。ここで、給紙トレイ2は、上下方向に移動可能である。詳細は後述する。
【0020】
原稿搬送装置100は、給紙部3を備える。給紙部3は、給紙トレイ2から搬送路10に原稿Dを給紙する。給紙部3は、給紙トレイ2のうち原稿搬送方向下流側の端部の上方に配置される。言い換えると、給紙部3は、給紙トレイ2から搬送路10への原稿Dの給紙口に配置される。さらに言い換えると、給紙部3は、給紙トレイ2上の原稿Dと上下方向に対向する位置に配置される。これにより、給紙トレイ2が上昇すると、給紙トレイ2上の原稿Dが給紙部3と接触する。
【0021】
給紙部3は、回転可能に支持される給紙回転体で構成される。給紙回転体は、給紙トレイ2上の原稿Dに上方から接触し、その状態で回転する。これにより、給紙トレイ2上の原稿Dが搬送路10に給紙される。給紙トレイ2に複数枚の原稿Dがセットされている場合には、最上層の原稿Dから順に搬送路10に給紙される。なお、給紙回転体は、回転可能に支持され、その外周面を原稿Dに接触させる給紙ローラーであってもよい。また、給紙回転体は、ローラーによって回転可能に張架され、その外周面を原稿Dに接触させる給紙ベルトであってもよい。
【0022】
原稿搬送装置100は、排出トレイ4を備える。排出トレイ4は、本体部MBに対して右側に配置される。排出トレイ4は、給紙トレイ2の下方に配置される。給紙トレイ2は上下方向に移動可能であるが、給紙トレイ2と排出トレイ4との上下方向間には常に間隔が設けられる。なお、排出トレイ4の上下方向の位置は固定である。
【0023】
排出トレイ4は、原稿Dが排出され積載される排出面(符号省略)を有する。排出トレイ4の排出面は、装置正面から見て、本体部MBに向かって左斜め下方に傾斜する。これにより、排出トレイ4上の原稿Dは、装置正面から見て、本体部MBに向かって左斜め下方に進行し易い。
【0024】
原稿搬送装置100は、排出部5を備える。排出部5は、搬送路10から排出トレイ4に原稿Dを排出する。言い換えると、排出部5は、排出トレイ4に向けて原稿Dを搬送する。搬送路10から排出トレイ4に原稿Dが排出されることにより、排出トレイ4に原稿Dが積載される。
【0025】
排出部5は、排出口510を有する。排出部5は、搬送路10の原稿Dを排出口510から排出トレイ4に排出する。具体的には、排出部5は、排出ローラー対51を含む。排出ローラー対51は、回転可能に支持され、かつ、互いに圧接する一対の排出ローラーで構成される。一対の排出ローラーのうち、一方の排出ローラーが排出モーター(図示せず)から駆動力が伝達されて回転し、一方の排出ローラーに従動して他方の排出ローラーが回転する。一対の排出ローラーは、排出ローラー間に排出ニップを形成する。この排出ニップが排出口510となる。排出部5は、排出ニップで原稿Dを挟み、その状態で排出ローラー対を回転させる。これにより、排出口510としての排出ニップから排出トレイ4に原稿Dが排出される。
【0026】
ここで、排出部5は、本体部MBに対して右側で、かつ、給紙トレイ2と排出トレイ4との上下方向間に配置される。そして、排出部5は、給紙トレイ2と排出トレイ4との間で独立して上下方向に移動可能である。排出部5が上下方向に移動することにより、排出口510が上下方向に移動する。
【0027】
また、排出部5は、搬送路10のうち原稿搬送方向下流側の一部を構成する搬送ガイド101に連結される。排出部5が上下方向に移動することにより、搬送ガイド101のうち原稿搬送方向下流側の端部の上下方向の位置が変位する。たとえば、排出部5が上昇すると、
図2に示すように、搬送ガイド101のうち原稿搬送方向下流側の端部の位置が上方に変位する。
【0028】
搬送ガイド101の構成は特に限定されない。たとえば、搬送ガイド101の原稿搬送方向上流側の端部は、固定搬送ガイド(符号省略)に連結される。固定搬送ガイドは、その位置を変位させない。排出部5が上下方向に移動するとき、搬送ガイド101は、その原稿搬送方向上流側の端部を固定搬送ガイドに対してスライドさせつつ、その原稿搬送方向下流側の端部の位置を排出部5の移動に合わせて変位させる。
【0029】
排出部5は、排出原稿センサー52を有する。排出原稿センサー52は、排出原稿距離L(
図3参照)に応じて出力を変化させる。言い換えると、排出原稿センサー52は、排出トレイ4に排出されている原稿Dの積載量に応じて出力を変化させる。排出原稿距離Lは、排出トレイ4に排出されている最上層の原稿Dから排出口510までの上下方向の距離である。より具体的には、排出原稿距離Lは、最上層の原稿Dのうち搬送方向下流側の端部から排出口510までの上下方向の距離である。なお、排出原稿センサー52の構成は特に限定されない。以下に、排出原稿センサー52の一例について説明する。
【0030】
排出原稿センサー52は、排出トレイ4に排出されている原稿Dに光を照射し、その反射光を受光する反射型光センサーで構成されてもよい。この構成では、排出原稿距離Lが要調整距離になるまで原稿Dが積載されたときの反射光の受光量が閾値量よりも大きくなるよう閾値量が設定され、反射光の受光量と閾値量とに基づき排出原稿距離Lが要調整距離になったか否かが検知される。
【0031】
排出原稿センサー52は、排出トレイ4上の原稿Dを幅方向に挟んで互いに対向する発光部および受光部を有する透過型光センサーで構成されてもよい。この構成では、排出原稿距離Lが要調整距離になるまで原稿Dが積載されると受光量が減少するため、排出原稿距離Lが要調整距離になったことを検知できる。
【0032】
また、排出原稿センサー52は、透過型光センサーとアクチュエーターとで構成されてもよい。この構成では、アクチュエーターは、光センサーの検知対象となる検知片を有する。アクチュエーターは、回動可能に支持される。アクチュエーターは、排出原稿距離Lに応じて検知片の位置を変位させる。排出トレイ4に原稿Dが排出されたとき、その原稿Dによってアクチュエーターが回動する方向に押されることにより、検知片の位置が変位する。光センサーの発光部と受光部との間の光路(ここでは、検知領域と称する)は、検知片の移動経路上に配置される。光センサーは、検知領域が検知片で遮光されたか否かに応じて出力を変化させる。検知片の移動経路は、排出原稿距離Lが要調整距離になったときに検知領域が遮光状態(または、非遮光状態)に切り替わるよう設定される。
【0033】
たとえば、排出原稿距離Lが予め定められた適正距離であるとき、排出原稿センサー52の状態はオフ状態である(言い換えると、HレベルおよびLレベルのうち一方レベルの信号を出力する)。適正距離は、排出口510からの原稿Dの排出時、原稿Dの排出が排出トレイ4に既に排出されている原稿Dによって阻害されない距離に設定される。
【0034】
また、排出原稿センサー52は、排出原稿距離Lが適正距離よりも小さい要調整距離になるまではオフ状態を維持する。そして、排出原稿センサー52は、排出原稿距離Lが要調整距離になるとオフ状態からオン状態に切り替わる(言い換えると、HレベルおよびLレベルのうち他方レベルの信号を出力する)。要調整距離は、排出原稿距離Lを調整すべき距離である。
【0035】
たとえば、排出原稿距離Lが適正距離になっているとする(
図3上図参照)。そして、この状態から、排出トレイ4から原稿Dが取り出されることなく排出トレイ4への原稿Dの排出が続いたとする。この場合、最終的に、排出原稿距離Lが要調整距離となる(
図3下図参照)。仮に、排出原稿距離Lが要調整距離よりも小さくなると、排出口510からの原稿Dの排出が排出トレイ4に既に排出されている原稿Dによって阻害される可能性が高くなる。したがって、排出原稿距離Lが要調整距離になった場合には、排出原稿距離Lを調整して適正距離に戻すことが好ましい。
【0036】
また、
図4に示すように、原稿搬送装置100は、制御部6を備える。制御部6は、種々の処理を行うCPU61を有する。制御部6は、ROMおよびRAMなどのメモリー62を有する。制御部6は、原稿Dの搬送を制御する。すなわち、制御部6は、搬送部1、給紙部3および排出部5を制御する。
【0037】
制御部6は、電流検出回路63を有する。電流検出回路63は、後述するリフトモーターLMの電流値を検出するための回路であり、リフトモーターLMに接続される。電流検出回路63は、シャント抵抗を含み、シャント抵抗によって生じる電位差を検出する。電流検出回路63の出力はCPU61のアナログポートに接続される。制御部6は、リフトモーターLMの電流値を算出する。
【0038】
原稿搬送装置100は、給紙移動機構20を備える。給紙移動機構20は、給紙トレイ2を上下方向に移動させる。給紙移動機構20は、トレイモーターTMを含む。トレイモーターTMは、DCブラシモーターである。トレイモーターTMは、給紙トレイ2に連結される。トレイモーターTMが駆動することにより、トレイモーターTMの駆動力がギアなどの伝達部材(図示せず)を介して給紙トレイ2に伝達され、給紙トレイ2が上下方向に移動する。制御部6は、給紙移動機構20を制御する。すなわち、制御部6は、トレイモーターTMの駆動を制御し、給紙トレイ2を上下方向に適切に移動させる。
【0039】
原稿搬送装置100は、排出移動機構50を備える。排出移動機構50は、排出部5を上下方向に移動させる。すなわち、排出移動機構50は、排出口510を上下方向に移動させる。排出移動機構50は、リフトモーターLMを含む。リフトモーターLMは、DCブラシモーターである。リフトモーターLMは、排出部5に連結される。リフトモーターLMが駆動することにより、リフトモーターLMの駆動力がギアなどの伝達部材(図示せず)を介して排出部5に伝達され、排出部5が上下方向に移動する。
【0040】
リフトモーターLMは、正転駆動することにより、排出部5を上昇させる。一方で、リフトモーターLMは、逆転駆動することにより、排出部5を下降させる。制御部6は、排出移動機構50を制御する。すなわち、制御部6は、リフトモーターLMの駆動を制御する。制御部6は、リフトモーターLMの駆動を制御し、排出部5を上下方向に適切に移動させる。制御部6は、排出部5の上下方向の移動を制御し、排出原稿距離Lの調整処理を行う。
【0041】
原稿搬送装置100は、読取部7を備える。読取部7は、CIS(Contact Image Sensor)である。読取部7は、搬送路10に沿って搬送中の原稿Dを読み取り、読み取った原稿Dの画像データを生成する。たとえば、読取部7は、分岐点BPよりも原稿搬送方向上流側で原稿Dを読み取る。あるいは、読取部7は、分岐点BPよりも原稿搬送方向下流側で原稿Dを読み取る。この場合、搬送路10で原稿Dを読み取る読取部7とストレート搬送路110で原稿Dと読み取る読取部7とを設置してもよい。
【0042】
原稿搬送装置100は、操作部8を備える。操作部8は、原稿搬送装置100に設置される操作パネルでもよいし、原稿搬送装置100に通信可能に接続されるパーソナルコンピューターでもよい。操作部8は、原稿Dの搬送を伴うジョブ(以下、当該ジョブを単に原稿搬送ジョブと称する)のスタート操作など種々の操作を受け付ける。制御部6は、操作部8がユーザーから受け付けた操作を検知する。操作部8に対するスタート操作を検知したとき、制御部6は、原稿搬送ジョブを開始する。制御部6は、操作部8にメッセージなどの報知情報を表示させることもできる。
【0043】
<給紙トレイの昇降制御>
原稿搬送装置100は、図示しないが、原稿セットセンサーを備える。原稿セットセンサーは、給紙トレイ2のセット面上における原稿Dの有無に応じて出力を変化させる。制御部6は、原稿セットセンサーの出力に基づき、給紙トレイ2に原稿Dがセットされているか否かを検知する。
【0044】
また、原稿搬送装置100は、図示しないが、トレイ上限センサー、トレイ中間センサーおよびトレイ下限センサーを備える。制御部6は、トレイ上限センサー、トレイ中間センサーおよびトレイ下限センサーの各出力に基づき、給紙トレイ2の上下方向の位置を検知する。
【0045】
給紙トレイ2のセット面の上下方向の位置または給紙トレイ2にセットされている最上層の原稿Dの上下方向の位置が予め定められたトレイ上限位置にあるとき、トレイ上限センサーがオン状態になる。給紙トレイ2のセット面または給紙トレイ2にセットされている最上層の原稿Dが給紙部3に接触するまで給紙トレイ2を上昇させることにより、トレイ上限センサーがオン状態になる。トレイ上限センサーがオン状態のときの給紙トレイ2の上下方向の位置が給紙位置である。原稿搬送ジョブでは、給紙トレイ2から搬送路10への原稿Dの給紙が給紙位置で行われる。
【0046】
給紙トレイ2の上下方向の位置が予め定められたトレイ下限位置にあるとき、トレイ下限センサーがオン状態になる。トレイ上限位置とトレイ下限位置との上下方向間の位置であるトレイ中間位置に給紙トレイ2があるとき、トレイ中間センサーがオン状態になる。
【0047】
制御部6は、原稿セットセンサー、トレイ上限センサー、トレイ中間センサーおよびトレイ下限センサーの各出力に基づき、給紙トレイ2の昇降を制御する。
【0048】
給紙トレイ2のホームポジションは、トレイ上限位置から予め定められた設定量だけ下方の位置(当該位置は中間位置よりも上方である)である。給紙トレイ2に原稿Dがセットされたことを検知したとき、制御部6は、トレイ上限センサーがオン状態になるまで、給紙トレイ2を上昇させる。続いて、制御部6は、給紙トレイ2を予め定められた設定量だけ下降させ、その位置(すなわち、ホームポジション)で給紙トレイ2を待機させる。その後、操作部8に対するスタート操作を検知したとき、制御部6は、原稿搬送ジョブを開始するため、給紙トレイ2を給紙位置(すなわち、トレイ上限位置)に上昇させる。
【0049】
原稿搬送ジョブが開始されて以降、給紙トレイ2上の原稿Dが減る。すなわち、給紙トレイ2にセットされている最上層の原稿Dの上下方向の位置が給紙位置よりも下方に変位する。このため、原稿搬送ジョブの実行中、制御部6は、給紙トレイ2を上昇させて給紙位置に保持する処理を行う。
【0050】
たとえば、給紙トレイ2に原稿Dがセットされていないとき、すなわち、給紙トレイ2への原稿Dのセットを受け入れるとき、給紙トレイ2をトレイ下限位置に下降させてもよい。これにより、給紙トレイ2への原稿Dのセット作業が行い易くなる。ただし、給紙トレイ2がトレイ下限位置に保持されていると、排出トレイ4からの原稿Dの取り出し作業がやり難い。このため、排出トレイ4に原稿Dが残っているとき、制御部6は、給紙トレイ2をトレイ中間位置よりも下方には移動させない。
【0051】
<排出部の昇降制御>
原稿搬送装置100は、ギャップセンサー21を備える。ギャップセンサー21は、給紙トレイ2の下面のうち、排出部5と上下方向に対向する位置に配置される。ギャップセンサー21は、排出部5を測定対象物とする。ギャップセンサー21は、排出部5との上下方向間の距離を測定する。給紙トレイ2の下面にギャップセンサー21を設けることにより、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離を測定できる。言い換えると、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が小さくなったことを検知できる。
【0052】
ギャップセンサー21は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が予め定められた閾値距離に達するまで小さくなったか否かに応じて出力を変化させる。すなわち、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が閾値距離よりも大きいとき、ギャップセンサー21は、オン状態およびオフ状態のうち一方状態になる(言い換えると、HレベルおよびLレベルのうち一方レベルの信号を出力する)。給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が閾値距離以下になったとき、ギャップセンサー21は、オン状態およびオフ状態のうち他方状態になる(言い換えると、HレベルおよびLレベルのうち他方レベルの信号を出力する)。
【0053】
たとえば、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が閾値距離よりも大きい場合には、ギャップセンサー21はオフ状態である。一方で、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が閾値距離以下の場合には、ギャップセンサー21はオン状態である。すなわち、ギャップセンサー21がオフ状態からオン状態に切り替わったということは、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が閾値距離に達した(小さくなった)ということである。
【0054】
原稿搬送装置100は、図示しないが、排出有無センサーを備える。排出有無センサーは、排出トレイ4の排出面上における原稿Dの有無に応じて出力を変化させる。排出トレイ4の排出面は、排出トレイ4に排出された原稿Dの積載面である。制御部6は、排出有無センサーの出力に基づき、排出トレイ4に原稿Dが有るか否か(すなわち、排出トレイ4に排出された原稿Dが残っているか否か)を検知する。
【0055】
また、原稿搬送装置100は、図示しないが、排出下限センサーを備える。排出部5の上下方向の位置が予め定められた排出下限位置にあるとき、排出下限センサーがオン状態になる。制御部6は、排出下限センサーの出力に基づき、排出部5が排出下限位置にあるか否かを検知する。制御部6は、排出部5を排出下限位置よりも下方には移動させない。
【0056】
レディ状態(待機状態)から原稿搬送ジョブの実行が可能な状態に移行して原稿搬送ジョブを開始したとき、制御部6は、排出部5を下降させる処理を行う。排出トレイ4に原稿Dが残っていない場合、制御部6は、排出部5を排出下限位置に保持する。一方で、排出トレイ4に原稿Dが残っている場合、排出部5を下降させると、排出原稿センサー52がオン状態になる。排出原稿センサー52がオン状態になると、制御部6は、排出原稿距離Lを適正距離に調整する調整処理を行う。このとき、制御部6は、給紙トレイ2の上下方向の移動を停止した状態で、排出部5を上昇させる。
【0057】
また、原稿搬送ジョブを開始して以降(すなわち、原稿搬送ジョブの実行中)、制御部6は、排出原稿距離Lを適正距離に調整する調整処理を行う。原稿搬送ジョブの実行中、排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わったとき、制御部6は、排出原稿距離Lの調整処理を行う。このとき、制御部6は、給紙トレイ2の上下方向の移動を停止した状態で、排出部5を上昇させる。なお、排出トレイ4から原稿Dが取り出されることなく排出トレイ4への原稿Dの排出が続くと、排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0058】
以下、
図5に示すフローチャートを参照し、排出原稿距離Lの調整処理について具体的に説明する。
【0059】
ステップS1において、制御部6は、排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わったか否かを判断する。すなわち、制御部6は、排出原稿距離Lが要調整距離になったか否かを判断する。排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わっていないと制御部6が判断した場合には、ステップS1の処理が繰り返される。排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わったと制御部6が判断した場合には、ステップS2に移行する。
【0060】
なお、原稿搬送ジョブを開始したとき、その時点で排出トレイ4に原稿Dが残っていれば、排出部5を下降させることにより、排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わる。ただし、排出トレイ4上における原稿Dの残量が少なければ、排出部5が排出下限位置まで下がる。この場合、排出原稿距離Lの調整処理を行う必要はない。また、原稿搬送ジョブを開始して以降(原稿搬送ジョブの実行中)、排出部5を上昇させることなく原稿Dの排出を一定量続けると、排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0061】
ステップS2において、制御部6は、リフトモーターLMを正転駆動させ、排出部5を上昇させる。ステップS3において、制御部6は、ギャップセンサー21がオン状態になったか否かを判断する。すなわち、制御部6は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が閾値距離以下になったか否かを判断する。
【0062】
ステップS3において、ギャップセンサー21がオン状態になっていないと制御部6が判断した場合には、ステップS4に移行する。すなわち、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が閾値距離よりも大きい場合には、ステップS4に移行する。
【0063】
ステップS4において、制御部6は、排出原稿センサー52がオン状態からオフ状態に切り替わったか否かを判断する。すなわち、制御部6は、排出原稿距離Lが適正距離になったか否かを判断する。排出原稿センサー52がオン状態からオフ状態に切り替わっていないと制御部6が判断した場合には、ステップS3に戻る。排出原稿センサー52がオン状態からオフ状態に切り替わったと制御部6が判断した場合には、ステップS5に移行する。
【0064】
ステップS5において、制御部6は、リフトモーターLMの正転駆動を停止する。すなわち、制御部6は、排出原稿センサー52がオン状態からオフ状態に切り替わるまで、リフトモーターLMを正転駆動させる。排出原稿センサー52がオン状態からオフ状態に切り替わったということは、排出原稿距離Lが適正距離になったということである。
【0065】
原稿搬送ジョブの実行中、排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わるごとに、制御部6は、排出原稿距離Lの調整処理を行う。すなわち、原稿搬送ジョブの実行中、排出原稿距離Lの調整処理が繰り返し行われる。これにより、排出原稿距離Lが適正距離に維持される。
【0066】
ステップS3において、ギャップセンサー21がオン状態になったと制御部6が判断した場合には、ステップS6に移行する。すなわち、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の距離が閾値距離以下になった場合には、ステップS6に移行する。
【0067】
ステップS6において、制御部6は、原稿搬送ジョブを停止する。このとき、制御部6は、リフトモーターLMの正転駆動を停止する。すなわち、制御部6は、排出部5の上昇を停止する。これにより、排出部5が給紙トレイ2に衝突することを抑制できる。
【0068】
ステップS6に移行した場合、制御部6は、排出トレイ4上の状態確認を促すメッセージを操作部8に表示させる。排出トレイ4上の原稿Dを取り出すよう促すメッセージが操作部8に表示されてもよい。これにより、排出トレイ4から原稿Dが取り除かれるので、原稿搬送ジョブの実行が可能となる。この後、排出トレイ4上の原稿Dが無くなったことを検知すると、制御部6は、排出部5を排出下限位置まで下降させ、原稿搬送ジョブを再開する。
【0069】
<給紙トレイと排出部との上下方向間の異物検知>
給紙トレイ2と排出部5との上下方向間には、
図6に示すように、隙間Gが生じる。排出部5が上昇することにより、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gが小さくなる。このため、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間に異物が入り込んでいれば、その異物が給紙トレイ2と排出部5とで挟まれる。たとえば、異物としてのユーザーの指が給紙トレイ2と排出部5とで挟まれる場合がある。また、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間に異物が入り込んだ状態で排出部5の上昇が続くと、故障の原因となる。
【0070】
このような不都合を抑制するため、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するか否かの検知を行い、異物が存在する場合には速やかに排出部5の上昇を停止することが好ましい。たとえば、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gのうち、ギャップセンサー21の検知範囲内に異物が存在する場合には、その異物を検知できる。しかし、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gのうち、ギャップセンサー21の検知範囲から外れた位置に異物が存在する場合には、その異物を検知できない。
【0071】
このため、制御部6は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するか否かの判断処理を行う。第1の判断処理として、制御部6は、リフトモーターLMの電流値に基づき隙間Gに異物が存在するか否かを判断する処理を行う。第2の判断処理として、制御部6は、異物を検出するための専用センサーの出力に基づき隙間Gに異物が存在するか否かを判断する。なお、第1の判断処理および第2の判断処理のうち一方のみが行われてもよいし、第1の判断処理および第2の判断処理の両方が行われてもよい。
【0072】
第1の判断処理を行う場合、排出原稿距離Lの調整処理での排出部5の上昇中、制御部6は、リフトモーターLMに起動電流が流れた後のリフトモーターLMの電流値を検出する。以下の説明では、リフトモーターLMに起動電流が流れた後のリフトモーターLMの電流値を対象電流値と称する。たとえば、排出原稿距離Lの調整処理でのリフトモーターLMの正転駆動の開始時点から予め定められた起動期間が経過して以降の電流値が対象電流値となる。起動期間は、リフトモーターLMに起動電流が流れることによってリフトモーターLMの電流値が大きくなる期間から外れた期間であり、原稿搬送装置100のメーカーによって予め定められる。
【0073】
給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在し、そのまま排出部5が上昇すると、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間に異物が挟まれる。この場合、リフトモーターLMの負荷は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間に異物が挟まれていない場合よりも大きくなる。すなわち、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間に異物が挟まれた状態で排出部5を上昇させる場合には、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間に異物が挟まれていない状態で排出部5を上昇させる場合よりも、リフトモーターLMの電流値が大きくなる。
【0074】
そこで、排出原稿距離Lの調整処理での排出部5の上昇中、制御部6は、リフトモーターLMの対象電流値と予め定められた閾値とを比較する。たとえば、原稿搬送装置100のメーカーにおいて、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間に異物が挟まれた状態で排出部5を上昇させたときのリフトモーターLMの電流値が求められ、その電流値に基づき閾値が設定される。
【0075】
排出原稿距離Lの調整処理での排出部5の上昇中、リフトモーターLMの対象電流値が閾値以上になったとき、制御部6は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在すると判断する。そして、制御部6は、排出部5の上昇を直ちに停止する。
【0076】
一方で、排出原稿距離Lの調整処理での排出部5の上昇中、リフトモーターLMの対象電流値が閾値以上にならなかったとき、制御部6は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在しないと判断する。この場合、制御部6は、排出原稿センサー52がオン状態からオフ状態に切り替わってから、排出部5の上昇を停止し、排出原稿距離Lの調整処理を終了する。
【0077】
第2の判断処理を行う場合、異物センサー11(
図4参照)が用いられる。すなわち、原稿搬送装置100は、異物センサー11を備える。異物センサー11は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gにおける異物の有無に応じて出力を変化させる。異物センサー11は、発光部111および受光部112を含む透過型光センサーである。発光部111および受光部112は、
図7に示すように、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gを挟んで幅方向に互いに対向するよう配置される。発光部111は、隙間Gのうち幅方向の一方側の端よりも当該一方側に配置される。受光部112は、隙間Gのうち幅方向の他方側の端よりも当該他方側に配置される。
【0078】
これにより、異物センサー11は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するときと存在しないときとで出力を変化させる。隙間Gに異物が存在しないときには異物センサー11の検知領域(すなわち、発光部111と受光部112との幅方向間の光路)は遮光されず、隙間Gに異物が存在するときには異物センサー11の検知領域が遮光されることにより、隙間Gにおける異物の有無に応じて異物センサー11の出力が変化する。
【0079】
図7では、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに挟まれ得るユーザーの指に符号Fを付する。
図7に示すように、ギャップセンサー21の検知範囲から外れた位置にユーザーの指Fが入り込むと、その指Fをギャップセンサー21では検知できない。しかし、
図7に示す例では、異物センサー11によってユーザーの指Fが検知される。
【0080】
なお、異物センサー11は、原稿搬送装置100のフレームに取り付けられる。図示しないが、本体部MBのフレームから右側に突出するセンサー保持部(図示せず)に異物センサー11が取り付けられてもよい。給紙トレイ2から下方に突出するセンサー保持部に異物センサー11が取り付けられてもよい。排出部5から上方に突出するセンサー保持部に異物センサー11が取り付けられてもよい。
【0081】
排出原稿距離Lの調整処理での排出部5の上昇中、制御部6は、異物センサー11の出力を監視する。制御部6は、異物センサー11の出力に基づき、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するか否かを判断する。異物センサー11を用いる場合には、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間に異物が挟まれる前(すなわち、リフトモーターLMの負荷が大きくなることに起因してリフトモーターLMの電流値が上昇する前)に隙間Gの異物を検出できる。
【0082】
制御部6は、第1の判断処理および第2の判断処理のうち少なくとも一方を行うことにより、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するか否かを判断する。給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するということは、異常状態であるため、原稿搬送ジョブが停止される。一方で、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在しないということは、正常状態であるため、原稿搬送ジョブが続行される。
【0083】
<排出部の振動処理>
給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するとき(すなわち、異常状態のとき)、その旨をユーザーに報知することが好ましい。これにより、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gにユーザーの指が入れられていた場合、ユーザーは異常状態であると認識して自身の指を隙間Gから引き抜くので、ユーザーの指が強い力で挟まれることを抑制できる。
【0084】
給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物(ユーザーの指を含む)が存在するとき、その旨をユーザーに報知するため、制御部6は、隙間Gの大きさ(すなわち、隙間Gの上下方向間の幅)を一定範囲で繰り返し変化させる振動処理を行う。たとえば、制御部6は、振動処理として、排出部5を上下方向に振動させる処理を行う。給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gにユーザーの指が入れられているとき、排出部5が振動すると、その振動がユーザーに伝わり、ユーザーに注意を促すことができる。
【0085】
原稿搬送ジョブを開始して以降、排出原稿センサー52がオフ状態からオン状態に切り替わったことによって排出部5を上昇させているとき、制御部6は、第1の判断処理および第2の判断処理のうち少なくとも一方の処理結果に基づき、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するか否かの判断を行う。たとえば、ユーザーの指が隙間Gに入れられているとき、隙間Gに異物が存在すると制御部6が判断する。
【0086】
給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在すると判断したとき、制御部6は、排出部5の振動処理を行う。すなわち、ユーザーの指が隙間Gに入れられているとき、制御部6は、排出部5の振動処理を行う。制御部6は、排出部5の振動処理として、
図8に示すフローに沿った処理を行う。
【0087】
以下、
図8に示すフローチャートを参照し、排出部5の振動処理について具体的に説明する。
【0088】
なお、
図8に示すフローは、排出原稿距離Lの調整処理での排出部5の上昇中、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在すると制御部6が判断したときにスタートする。言い換えると、
図5に示すステップS2の処理中、制御部6は、隙間Gに異物が存在するか否かを判断するため、第1の判断処理および第2の判断処理の少なくとも一方を行う。そして、
図5に示すステップS2の処理中、隙間Gに異物が存在すると制御部6が判断すると、
図8に示すフローがスタートする。
【0089】
ステップS11において、制御部6は、リフトモーターLMの正転駆動を停止する。すなわち、制御部6は、排出部5の上昇を停止する。その後、制御部6は、排出部5の振動処理として、ステップS12~ステップS14の各処理を行う。
【0090】
なお、隙間Gに異物が存在すると判断したとき、制御部6は、原稿搬送ジョブを停止する(すなわち、原稿Dの搬送を停止する)。すなわち、隙間Gに異物が存在すると判断したとき、制御部6は、搬送部1による原稿Dの搬送動作、給紙部3による原稿Dの給紙動作、および、排出部5による原稿Dの排出動作を停止する。そして、制御部6は、エラーを報知する処理を行う。たとえば、制御部6は、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在する旨のエラーメッセージを操作部8に表示させる。
【0091】
ただし、排出部5を振動させる構成では、排出部5の振動がユーザーに伝わることにより、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在する旨をユーザーに認識させることができる。したがって、エラーを報知する処理は省略されてもよい。たとえば、操作部8にエラーメッセージを表示しても、ユーザーがメッセージの表示に気付かない場合がある。一方で、排出部5を振動させる構成では、確実に、ユーザーに注意を促すことができる。
【0092】
ステップS12において、制御部6は、排出部5を所定距離だけ上昇させる上昇処理を行う。上昇処理では、制御部6は、排出部5を所定距離上昇させるのに必要な時間、リフトモーターLMを正転駆動させる。所定距離は、たとえば、1mmである。
【0093】
ステップS13において、制御部6は、排出部5を所定距離だけ下降させる下降処理を行う。下降処理では、制御部6は、排出部5を所定距離下降させるのに必要な時間、リフトモーターLMを逆転駆動させる。なお、下降処理では、上昇処理での排出部5の上昇距離と同じ距離だけ排出部5を下降させる。すなわち、下降処理での所定距離(すなわち、排出部5の下降距離)は上昇処理での所定距離(すなわち、排出部5の上昇距離)と同じである。このため、排出部5の振動処理中、排出部5の上下方向の位置が維持される。
【0094】
制御部6は、上昇処理を行ってから連続して下降処理を行う。ただし、これに限定されず、上昇処理および下降処理の実行順が逆になってもよい。この場合、制御部6は、下降処理を行ってから連続して上昇処理を行う。
【0095】
制御部6は、1回の上昇処理と1回の下降処理とを1セットとする処理を複数回繰り返す処理を排出部5の振動処理として行う。すなわち、制御部6は、上昇処理と下降処理とを交互に連続して複数回繰り返すことにより、排出部5を振動させる。たとえば、排出部5の振動処理では、1回の上昇処理と1回の下降処理とを1セットとする処理が連続して2回以上の所定回数繰り返される。たとえば、所定回数は20回である。
【0096】
ステップS14において、制御部6は、1回の上昇処理と1回の下降処理とを1セットとする処理の繰り返し回数が所定回数に達したか否かを判断する。所定回数に達していないと制御部6が判断した場合には、ステップS12に戻る。所定回数に達したと制御部6が判断した場合には、ステップS15に移行する。
【0097】
ステップS15において、制御部6は、排出部5の振動処理を終了する。排出部5の振動処理を終了すると、制御部6は、リフトモーターLMを逆転駆動させることにより、排出部5を下降させる。
【0098】
ステップS16において、制御部6は、排出部5の上下方向の位置が排出下限位置に達したか否かを判断する。排出部5の上下方向の位置が排出下限位置に達すると、制御部6は、排出部5の下降を停止する。すなわち、制御部6は、排出部5を排出下限位置まで下降させる。
【0099】
排出部5を振動させることにより、異常が発生したこと(すなわち、隙間Gに異物が存在すること)をユーザーに認識させることができる。ユーザーの指が隙間Gに入れられている場合、排出部5が振動すると、ユーザーは自身の指を隙間Gから引き抜く。
【0100】
少なくとも排出部5が排出下限位置まで下降すると、ユーザーは自身の指を隙間Gから引き抜く動作を行う。その結果、正常状態に戻る。そこで、排出部5を排出下限位置まで下降させた後、制御部6は、原稿搬送ジョブを再開するため、排出原稿距離Lの調整処理を行う。すなわち、排出部5を排出下限位置まで下降させた後、制御部6は、排出部5を上昇させる。排出原稿距離Lの調整処理後、制御部6は、原稿搬送ジョブを再開する。
【0101】
本実施形態では、上記のように構成することにより、排出部5が移動することにより小さくなる隙間Gに異物が挟まれることを抑制できる。具体的には、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間の隙間Gに異物が存在するとき、排出部5が振動する。ユーザーの指が隙間Gに入れられていると、排出部5の振動がユーザーに伝わり、ユーザーの注意が隙間Gに向けられる。これにより、ユーザーは、隙間Gに入れた指が挟まれそうになっていることを認識し、排出部5が振動している間に隙間Gから指を引き抜く。これにより、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間にユーザーの指が挟まれることを抑制できる。
【0102】
ここで、ユーザーの注意を隙間Gに向かせるため、警告音を鳴らしたり、警告光を発したりする方法が考えられる。しかし、これらの方法を採用するには、スピーカーおよび光源など専用のデバイスが必要となる。一方で、排出部5を振動させる方法では、専用のデバイスを準備する必要がないので、構造が複雑化せず、コストアップを抑制できる。すなわち、容易に、隙間Gに指が挟まれそうになっていることをユーザーに報知できる。
【0103】
また、本実施形態では、上記のように、排出原稿距離Lの調整処理が実行されることによって排出部5が上昇し、隙間Gが上下方向に小さくなる。そこで、排出原稿距離Lの調整処理での排出部5の上昇中、制御部6は、隙間Gに異物が存在するか否かを判断する。
【0104】
なお、排出原稿距離Lの調整処理が行われることにより、排出トレイ4に既に排出されている原稿Dに対して上下方向に大きく離れた位置から新たな原稿Dが排出されることを抑制できる。仮に、排出トレイ4に既に排出されている原稿Dに対して上下方向に大きく離れた位置から新たな原稿Dが排出されると、落差が大きいことにより、新たに排出される原稿Dの排出トレイ4上での積載位置がずれるという不都合が生じる。すなわち、排出トレイ4上の複数枚の原稿Dの積載位置が不揃いになるという不都合が生じる。一方で、排出トレイ4に既に排出されている原稿Dに対して上下方向に大きく離れた位置から新たな原稿Dが排出されることを抑制できれば、排出トレイ4上の複数枚の原稿Dの積載位置が不揃いになり難い。
【0105】
また、本実施形態では、上記のように、制御部6は、排出部5の振動処理として、排出部5を所定距離上昇させる処理と排出部5を所定距離下降させる処理とを交互に連続して複数回繰り返す処理を行う。これにより、容易に、排出部5を振動させることができる。なお、振動モーターなどの振動発生部材を排出部5に設け、その振動発生部材で排出部5を振動させる構成をとってもよい。ただし、振動発生部材を別途準備する必要がある。一方で、排出部5を所定距離上昇させる処理と排出部5を所定距離下降させる処理とを交互に連続して複数回繰り返すことで振動を発生させる構成では、振動発生部材を別途準備する必要がない。
【0106】
また、本実施形態では、上記のように、第1の判断処理および第2の判断処理のうち少なくとも一方の処理結果に基づき隙間Gに異物が存在すると判断したとき、制御部6は、排出部5の振動処理を行う。これにより、容易に、隙間Gに異物が存在する場合に排出部5を振動させることができる。言い換えると、隙間Gに異物が存在しないにもかかわらず排出部5が不必要に振動することを抑制できる。
【0107】
また、本実施形態では、上記のように、排出部5の振動処理後、制御部6は、排出部5を下降させる。これにより、仮に、排出部5の振動処理中にユーザーの指が隙間Gから引き抜かれなかったとしても、排出部5が下降することにより、給紙トレイ2と排出部5との上下方向間にユーザーの指が挟まれることを抑制できる。
【0108】
なお、振動処理の変形例として、給紙トレイ2を上下方向に振動させてもよい。この変形例では、制御部6は、振動処理として、給紙トレイ2を所定距離上昇させる処理と給紙トレイを所定距離下降させる処理とを交互に連続して複数回繰り返す処理を行う。給紙トレイ2を振動させる場合には、排出部5を振動させなくてもよい。あるいは、振動処理として、排出部5および給紙トレイ2の両方を振動させる処理が行われてもよい。
【0109】
また、本実施形態では、上記のように、原稿搬送装置100に読取部7が設置される。これにより、原稿搬送装置100を画像読取装置として機能させることができる。
【0110】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 搬送部
2 給紙トレイ
3 給紙部
4 排出トレイ
5 排出部
6 制御部
7 読取部
10 搬送路
11 異物センサー
100 原稿搬送装置
510 排出口
1000 画像形成装置
D 原稿
G 隙間
LM リフトモーター
TM トレイモーター