(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153299
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】タップ付き変圧器の管理方法、サーバ、プログラム、電源管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241022BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067100
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 匡史
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB16
5G064DA03
5G066AE09
5G066DA01
(57)【要約】
【課題】タップ付き変圧器を適切に管理しやすいタップ付き変圧器の管理方法、サーバ、プログラム、および電源管理システムを提供する。
【解決手段】タップ付き変圧器の管理方法が、電力系統からタップ付き変圧器に供給される電力に関する複数種のパラメータの中から、タップ付き変圧器のタップ切換回数と相互に関連する対象パラメータを選定すること(S12,S13)と、将来の期間における対象パラメータの予測値を取得すること(S14)と、対象パラメータの予測値を用いて、タップ付き変圧器の使用可能期間の第1確率密度関数を取得すること(S15~S19)とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統からタップ付き変圧器に供給される電力に関する複数種のパラメータの中から、前記タップ付き変圧器のタップ切換回数と相互に関連する対象パラメータを選定することと、
将来の期間における前記対象パラメータの予測値を取得することと、
前記対象パラメータの前記予測値を用いて、前記タップ付き変圧器の使用可能期間の第1確率密度関数を取得することと、
を含む、タップ付き変圧器の管理方法。
【請求項2】
前記対象パラメータを選定することは、
前記複数種のパラメータの各々について、前記タップ切換回数との関係を示すデータのクラスタリングを行うことと、
前記クラスタリングの結果を用いて、前記複数種のパラメータの中から、前記タップ切換回数との相関性が最も高いパラメータを、前記対象パラメータとして選定することと、
を含む、請求項1に記載のタップ付き変圧器の管理方法。
【請求項3】
前記第1確率密度関数を取得することは、
あるタイミングにおける前記対象パラメータの値が入力されると、そのタイミングにおける前記タップ切換回数を出力する推定モデルを用いて、前記将来の期間における前記対象パラメータの前記予測値から、前記将来の期間における前記タップ切換回数の予測値を取得することと、
前記タップ切換回数の前記予測値を用いて、前記タップ付き変圧器の1日あたりの前記タップ切換回数の第2確率密度関数を取得することと、
前記第2確率密度関数を前記第1確率密度関数に変換することと、
を含む、請求項1に記載のタップ付き変圧器の管理方法。
【請求項4】
前記第2確率密度関数を取得することは、
前記タップ切換回数の前記予測値について、ブートストラップ法によりブートストラップ標本を取得することと、
前記ブートストラップ標本を用いて前記第2確率密度関数を取得することと、
を含む、請求項3に記載のタップ付き変圧器の管理方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のタップ付き変圧器の管理方法を実行する、サーバ。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のタップ付き変圧器の管理方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項7】
電力系統に設けられた1つ以上のタップ付き変圧器と、前記1つ以上のタップ付き変圧器を管理するサーバとを備える電源管理システムであって、
前記サーバは、
前記電力系統から前記タップ付き変圧器に供給される電力に関する複数種のパラメータの中から、前記タップ付き変圧器のタップ切換回数と相互に関連する対象パラメータを選定することと、
将来の期間における前記対象パラメータの予測値を取得することと、
前記対象パラメータの前記予測値を用いて、前記タップ付き変圧器の使用可能期間の確率密度関数を取得することと、
を実行するように構成される、電源管理システム。
【請求項8】
前記確率密度関数、または前記確率密度関数に基づいて算出された確率を表示する表示装置をさらに備える、請求項7に記載の電源管理システム。
【請求項9】
前記1つ以上のタップ付き変圧器は、複数の負荷時タップ切換変圧器を含み、
前記電源管理システムは、前記複数の負荷時タップ切換変圧器の各々に対して設けられたカウンタ、センサ、およびコントローラをさらに備え、
前記カウンタは、対応する前記負荷時タップ切換変圧器の前記タップ切換回数を計測するように構成され、
前記センサは、対応する前記負荷時タップ切換変圧器に供給される電力に関する前記複数種のパラメータの値を計測するように構成され、
前記コントローラは、前記センサによる計測結果を用いて、対応する前記負荷時タップ切換変圧器を制御するように構成され、
前記コントローラは、前記カウンタによって取得される前記タップ切換回数の計測値である第1計測値と、前記センサによって取得される前記複数種のパラメータの計測値である第2計測値とを送信するように構成され、
前記サーバは、前記コントローラが送信した前記第1計測値および前記第2計測値を受信可能に構成される、請求項7に記載の電源管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タップ付き変圧器の管理方法、サーバ、プログラム、および電源管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タップ付き変圧器は、電力系統の変電所において電圧調整のために使用される。タップ付き変圧器は、タップ切換によって電圧を調整する。タップ切換回数が多くなるほどタップ付き変圧器の劣化は進行する傾向がある。そこで、タップ付き変圧器の保守のために監視装置が設けられている。監視装置は、タップ付き変圧器のタップ切換回数を演算し、得られたタップ切換回数を表示する。電力系統の運用者(TSO:系統運用者)は、監視装置によって表示されるタップ切換回数を、定期的に(例えば、数か月に1回または半年に1回)目視で確認し、タップ切換回数が所定の耐用切換回数を超える前にタップ付き変圧器の部品を交換する。系統運用者の例としては、電力会社が挙げられる。
【0003】
特開2017-158341号公報(特許文献1)には、タップ付き変圧器の動作可能回数相当量を演算し、得られた動作可能回数相当量を表示する技術が開示されている。動作可能回数相当量は、耐用切換回数までの残りのタップ切換回数に相当する量である。作業者(系統運用者)は、定期的に動作可能回数相当量を確認し、表示された動作可能回数相当量が0(ゼロ)に近くなったところで、タップ付き変圧器の部品(例えば、切換開閉器)を取り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、式「NIm=(Im2/200000In2)×600000」または「NIm=(Im2/100000In2)×700000」を用いて、動作可能回数相当量を演算している。各式において、「NIm」は、電気的劣化による機械的劣化回数に相当する数、「Im」は、切り換えm回目のときの負荷電流、「In」は定格電流を意味する。しかしながら、これらの式が全てのタップ付き変圧器について成立するとは限らない。タップ付き変圧器によっては、装置の個体差に起因して上記の式が成立しない可能性がある。
【0006】
また、1日あたりのタップ切換回数は、日々の電力系統の状況によって変動し得る。このため、タップ付き変圧器を備える電源管理システムに上記特許文献1に記載された技術を適用したとしても、ユーザがタップ付き変圧器をあと何日使用したらタップ付き変圧器が使用できなくなるかを把握することは困難である。
【0007】
上記のような要因によって、特許文献1に記載された技術ではタップ付き変圧器を適切に管理できない可能性がある。
【0008】
それゆえに、本開示の主たる目的は、タップ付き変圧器を適切に管理しやすいタップ付き変圧器の管理方法、サーバ、プログラム、および電源管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のタップ付き変圧器の管理方法は、電力系統からタップ付き変圧器に供給される電力に関する複数種のパラメータの中から、タップ付き変圧器のタップ切換回数と相互に関連する対象パラメータを選定することと、将来の期間における対象パラメータの予測値を取得することと、対象パラメータの予測値を用いて、タップ付き変圧器の使用可能期間の確率密度関数を取得することとを含む。
【0010】
本開示の電源管理システムは、電力系統に設けられた1つ以上のタップ付き変圧器と、1つ以上のタップ付き変圧器を管理するサーバとを備える。サーバは、電力系統からタップ付き変圧器に供給される電力に関する複数種のパラメータの中から、タップ付き変圧器のタップ切換回数と相互に関連する対象パラメータを選定することと、将来の期間における対象パラメータの予測値を取得することと、対象パラメータの予測値を用いてタップ付き変圧器の使用可能期間の確率密度関数を取得することとを実行するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、タップ付き変圧器を適切に管理しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る電源管理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るタップ付き変圧器の管理方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施形態におけるタップ付き変圧器の履歴データを示す図である。
【
図4】本開示の実施形態におけるクラスタリングおよび対象パラメータ選定について説明するための図である。
【
図5】本開示の実施形態において第2確率密度関数を取得するための処理について説明するための図である。
【
図6】本開示の実施形態において第2確率密度関数から第1確率密度関数を取得するための処理について説明するための図である。
【
図7】本開示の実施形態における第1確率密度関数を用いた第1の制御を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態における第1確率密度関数を用いた第2の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
図1は、本実施形態に係る電源管理システムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、電源管理システム1は、サーバ100と、HMI(Human Machine Interface)210と、モバイル端末220と、変圧器10A~10Cと、監視装置20A~20Cと、発電設備30A~30Cとを備える。発電所(発電設備30A~30Cを含む)および送配電網(変圧器10A~10Cを含む)によって、各需要家(住宅、工場など)に電力を供給する電力系統が構築されている。
【0015】
サーバ100は、クラウドCLを介して、監視装置20A~20Cの各々と通信可能に構成される。サーバ100は、監視装置20A、20B、20Cから、クラウドCLを介して、変圧器10A、10B、10Cに関する情報をそれぞれ収集するように構成される。なお、通信システムは、
図1に示す態様に限られない。サーバ100は、クラウドCLを介さず、通信ネットワーク(例えば、インターネット)を介して監視装置20A~20Cの各々と接続されてもよい。接続態様は有線/無線のいずれでもよい。
【0016】
サーバ100は、プロセッサ110とRAM(Random Access Memory)120と記憶装置130とを備える。プロセッサ110の例としては、CPU(Central Processing Unit)が挙げられる。記憶装置130は、格納された情報を保存可能に構成される。本実施の形態では、記憶装置130に記憶されているプログラムをプロセッサ110が実行することで、各種の制御(例えば、後述する
図2に示す制御)が実行される。サーバ100が備えるプロセッサの数は任意であり、1つでも複数でもよい。
【0017】
HMI210は、ユーザとサーバ100との間のインターフェースとして機能する。HMI210は入力装置および表示装置を含む。表示装置はサーバ100によって制御される。HMI210はタッチパネルディスプレイを含んでもよい。HMI210は、音声入力を受け付けるスマートスピーカをさらに含んでもよいし、AR(拡張現実)表示を行う表示装置を含んでもよい。
【0018】
モバイル端末220は、ユーザ(例えば、タップ付き変圧器の管理者)によって持ち運び可能な端末である。モバイル端末220はサーバ100と通信可能に構成される。本実施の形態では、モバイル端末220として、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。スマートフォンは、コンピュータを内蔵し、スピーカ機能を有する。ただしこれに限られず、モバイル端末220としては、任意のモバイル端末を採用可能である。例えば、ラップトップ、タブレット端末、携帯型ゲーム機、ウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラス、またはスマートグローブ)、電子キーなども、モバイル端末220として採用可能である。
【0019】
変圧器10A~10Cは、需要家に所定の電力を供給するための送配電網に設けられている。変圧器10A、10B、10Cは、それぞれ発電設備30A、30B、30Cから送電網を介して電力の供給を受ける。そして、変圧器10A~10Cの各々は、発電設備側からの電力(例えば、電圧66kVの電力)を降圧し、降圧された電力(例えば、電圧6.6kVの電力)を需要家側に出力する。降圧された電力は配電網を通じて需要家に送られる。本実施の形態では、発電設備30Aが再エネ発電所、発電設備30Bが原子力発電所、発電設備30Cが火力発電所である。再エネ発電所は、再生可能エネルギー(RE:Renewable Energy)を利用して発電するように構成される。再エネ発電所の例としては、太陽光発電所、風力発電所、水力発電所、地熱発電所、またはバイオマス発電所が挙げられる。ただしこれに限られず、発電設備30A~30Cは同じ発電方式の発電所であってもよい。
【0020】
変圧器10A~10Cの各々は、負荷時タップ切換変圧器(LTC:on-Load Tap Changer)である。本実施の形態では、変圧器10A,10B,10Cが同じ構造を有するため、以下では、これらを区別しない場合は「変圧器10」と称する。本実施の形態では、変圧器10が真空バルブ式LTCである。LTCは、運転状態の変圧器において電圧調整(巻数比の変更)のために巻線接続(タップ)を切り換える。具体的には、変圧器10は、変圧器を運転したまま通電電流を切り換える切換開閉器11と、変圧器の巻線に接続されるタップ選択器12とを備える。そして、切換開閉器11は、真空容器の中に接触子を密封した真空バルブを備える。タップ選択器12は、変圧器の巻線につながる複数の端子(タップ)から運転するタップを選択し、切換開閉器11は、選ばれたタップに通電状態で回路を切り換える。上記真空バルブにより、通電している接点が開いたときのアークによる局所的な加熱が抑制される。なお、サーバ100によって管理される変圧器10A~10Cが同じ構造を有することは必須ではなく、これらの変圧器は互いに異なる構造を有してもよい。
【0021】
監視装置20A、20B、20Cは、それぞれ変圧器10A、10B、10Cを監視するように構成される。本実施の形態では、監視装置20A,20B,20Cが同じ構造を有するため、以下では、これらを区別しない場合は「監視装置20」と称する。監視装置20は、対応する変圧器10の近傍に設置されている。監視装置20は、電力系統(送電網)から変圧器10に供給される電力に関するパラメータ(電圧、電流、位相、周波数など)を検出する入力センサ21と、変圧器10から需要家(電力負荷)側へ出力される電力に関するパラメータ(電圧、電流、位相、周波数など)を検出する出力センサ22と、変圧器10のタップ切換回数を計測するカウンタ23と、変圧器10を制御するコントローラ25とを備える。コントローラ25は、制御回路であってもよいし、コンピュータであってもよい。コントローラ25はサーバ100と通信可能に構成される。コントローラ25は、例えば、入力センサ21および出力センサ22による検出結果に基づいて、所定の電圧を有する安定した電力が需要家側に供給されるように変圧器10を制御する。以下では、電力系統から変圧器10に供給される電力に関するパラメータを、「系統パラメータ」と称する。また、入力センサ21による検出結果を用いて計測された系統パラメータの値を、「系統計測値」と称する。コントローラ25は、入力センサ21および出力センサ22による検出結果を用いて有効電力を算出してもよい。有効電力は系統パラメータの一例に相当し、算出された有効電力の値は系統計測値の一例に相当する。
【0022】
監視装置20は、対応する変圧器10に関するデータをクラウドCLに逐次アップロード(送信)する。本実施の形態では、監視装置20が、変圧器10のタップ切換回数を計測(カウント)し、得られたタップ切換回数の計測値(第1計測値)を計測日(日付)と紐付けてクラウドCL(記憶装置)に記録する。具体的には、
図1に示すように、監視装置20A、20B、20Cがそれぞれ変圧器10A、10B、10Cに関するタップ切換回数の計測値Na、Nb、NcをクラウドCLに記録する。また、監視装置20は、電圧、電流、位相、周波数、および有効電力を含む複数種の系統パラメータを計測し、これらの系統計測値(第2計測値)を計測時刻と紐付けてクラウドCL(記憶装置)に記録する。具体的には、
図1に示すように、監視装置20A、20B、20Cがそれぞれ変圧器10A、10B、10Cに関する系統パラメータの計測値Ga、Gb、GcをクラウドCLに記録する。サーバ100は、変圧器10A~10Cの各々に関するデータ(計測値Na,Nb,Ncおよび計測値Ga,Gb,Gcを含む)をクラウドCLからダウンロード(受信)することができる。
【0023】
図2は、本実施形態に係るタップ付き変圧器の管理方法の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、サーバ100が管理する変圧器ごとに実行される。以下、処理の対象となる変圧器(例えば、
図1に示した変圧器10A~10Cのいずれか)を、「対象変圧器」と称する。本実施の形態では、サーバ100が、対象変圧器の使用を開始してから所定の使用期間が経過すると、
図2に示す一連の処理を実行し、それ以降は、所定の単位期間が経過するたびに
図2に示す一連の処理を実行する。すなわち、
図2に示す一連の処理は定期的に繰り返し実行される。本実施の形態では、上記使用期間を1年とし、上記単位期間を1か月とする。ただし、これらの期間は任意に設定できる。
【0024】
図2に示すように、サーバ100は、まず、ステップS11において、過去の期間(以下、「評価期間」と称する)における対象変圧器の履歴データを取得する。例えば対象変圧器が変圧器10Aである場合には、対象変圧器の履歴データは、評価期間における計測値NaおよびGa(
図1)を含む。評価期間は任意に設定できる。本実施の形態では、現時点から所定時間(より特定的には、6か月)さかのぼった時点までの期間を、上記評価期間とする。ただし、評価期間の長さは6か月に限られず適宜変更可能である。
【0025】
図3は、ステップS11で取得される対象変圧器の履歴データの一例を示す図である。
図3に示すように、本実施の形態における対象変圧器の履歴データD10は、対象変圧器のタップ切換回数および複数種の系統パラメータについて評価期間(直近6か月間)における毎日の計測値を含む。各計測値は日付に紐付けられている。これらの計測値は、監視装置20によって計測され、クラウドCLにアップロードされる。サーバ100は、クラウドCLから履歴データD10を取得する。履歴データD10における複数種の系統パラメータは、例えば、電圧、電流、位相、周波数、および有効電力を含む。なお、ステップS11で取得される対象変圧器の履歴データは、
図3に示す例には限られない。データ間隔は1日に限られず任意である。例えば、データ間隔を2日にして2日間の平均計測値を2日間の日付に紐付けてもよい。
【0026】
図2に示す一連の処理において、上記ステップS11の処理が実行されると、処理がステップS12に進む。ステップS12では、サーバ100が、履歴データD10における各系統パラメータを順に割り当てて、1つの系統パラメータとタップ切換回数との関係を示すデータのクラスタリングを順に行う。続けて、サーバ100は、ステップS13において、履歴データD10における複数種の系統パラメータの中から、対象変圧器のタップ切換回数と相互に関連する系統パラメータ(以下、「対象パラメータ」と称する)を選定する。
図4は、上記のクラスタリング(ステップS12)および対象パラメータ選定(ステップS13)について説明するための図である。
【0027】
図4に示すように、本実施の形態では、サーバ100が、履歴データD10における系統パラメータ、例えば、第1パラメータ、第2パラメータ、第3パラメータ、・・・を順に割り当てて、1日における系統パラメータの計測値とタップ切換回数の計測値との関係を示すデータを座標平面にプロットする。例えば、電力系統から対象変圧器に供給される電力の電圧、電流、位相、・・・が、それぞれ第1パラメータ、第2パラメータ、第3パラメータ、・・・に相当する。本実施の形態では、6か月分の日数に相当する数のデータがプロットされる。
【0028】
図4に示す例では、第1パラメータの計測値とタップ切換回数の計測値との関係を示すデータを複数含む第1データ群が、クラスタリングにより3つのグループ(クラスタ)に分類される。詳しくは、第1データ群は、第1クラスタに所属するデータP11と、第2クラスタに所属するデータP12と、第3クラスタに所属するデータP13とに分割される。
図4に示す例では、第1データ群が3つのクラスタに明確に分割されている。しかも、第1パラメータおよびタップ切換回数は、タップ切換回数が増えるほど第1パラメータが大きくなる関係を有する。このことは、第1パラメータとタップ切換回数との相関性が高いことを意味する。
【0029】
また、第2パラメータの計測値とタップ切換回数の計測値との関係を示すデータを複数含む第2データ群も、クラスタリングにより、第1、第2、第3クラスタにそれぞれ所属するデータP21、P22、P23に分割される。ただし、第2データ群は3つのクラスタへの分割が不十分であり、第2パラメータとタップ切換回数との関係が不明確である。このことは、第2パラメータとタップ切換回数との相関性が低いことを意味する。
【0030】
サーバ100は、
図2のステップS13において、上記のようなクラスタリングの結果を用いて、履歴データD10における複数種の系統パラメータの中から、タップ切換回数との相関性が最も高い系統パラメータを、対象パラメータとして選定する。例えば、サーバ100は、クラスタ分割が明確であるほど相関性が高いと判断してもよい。また、サーバ100は、タップ切換回数の増加に伴う系統パラメータの変化が一様であるほど両者の相関性が高いと判断してもよい。例えば、タップ切換回数が増えるほど系統パラメータが大きくなる場合、これらの相関性は高い。また、タップ切換回数が増えるほど系統パラメータが小さくなる場合も、これらの相関性は高い。タップ切換回数の変化の傾向とは無関係に系統パラメータが増減する場合、これらの相関性は低い。なお、クラスタリングにおけるクラスタの数は、3つに限られず適宜変更可能である。
【0031】
図2に示す一連の処理において、上記ステップS13の処理が実行されると、処理がステップS14に進む。ステップS14では、サーバ100が、将来の期間(以下、「予測期間」と称する)における対象パラメータの予測値を取得する。サーバ100は、予測期間における毎日の気象条件(例えば、天気、気温、日射強度、および風力)を示す気象予測情報と、過去の対象パラメータの値(例えば、予測期間の前年の値)を示す対象パラメータ履歴情報とに基づいて、予測期間における毎日の対象パラメータの値を予測してもよい。サーバ100は、対象変圧器の出力側で消費される需要電力量を予測し、予測された需要電力量に基づいて対象パラメータの値を予測してもよい。サーバ100は、対象変圧器の入力側で生成される発電電力量を予測し、予測された発電電力量に基づいて対象パラメータの値を予測してもよい。サーバ100は、対象パラメータの予測のために、対象変圧器ごとに最適化された予測プログラムを用いてもよいし、AI(人工知能)の機械学習により生成された学習済みモデルを用いてもよい。モデルの学習には、クラウドCLに蓄積されたビッグデータが使用されてもよい。予測期間は任意に設定できる。本実施の形態では、現時点から所定時間(より特定的には、6か月)経過する時点までの期間を、上記予測期間とする。ただし、予測期間の長さは6か月に限られず適宜変更可能である。
【0032】
続けて、サーバ100は、ステップS15において、あるタイミングにおける対象パラメータの値が入力されると、そのタイミングにおけるタップ切換回数を出力する推定モデルを生成する。サーバ100は、履歴データD10を用いた回帰分析により、対象パラメータとタップ切換回数との関係を規定する推定モデル(回帰モデル)を生成してもよい。対象パラメータとタップ切換回数との相関性が高いことによって、高い精度の推定モデルが得られやすくなる。生成された推定モデルは、例えば記憶装置130に格納される。なお、推定モデルは、回帰モデルに限られず、AI(人工知能)の機械学習により生成された学習済みモデルであってもよい。
【0033】
続くステップS16では、サーバ100が、生成された推定モデルを用いて、予測期間における対象パラメータの予測値から、予測期間におけるタップ切換回数の予測値を取得する。続けて、サーバ100が、ステップS17において、予測期間におけるタップ切換回数の予測値について、ブートストラップ法により所定数のブートストラップ標本を取得する。続けて、サーバ100が、ステップS18において、所定数のブートストラップ標本を用いて、対象変圧器の将来の1日あたりのタップ切換回数の確率密度関数(第2確率密度関数)を取得する。
【0034】
図5は、上記第2確率密度関数を取得するための処理(ステップS14~S18)について説明するための図である。
図5に示すように、本実施の形態では、上記ステップS14において対象パラメータの予測データD21が取得される。対象パラメータの予測データD21は、予測期間(今後6か月間)における対象パラメータの毎日の計測値を含む。サーバ100は、ステップS15で生成された推定モデル150に対象パラメータの予測データD21を入力する。これにより、推定モデル150からタップ切換回数の予測データD22が出力される。タップ切換回数の予測データD22は、予測期間(今後6か月間)におけるタップ切換回数の毎日の計測値を含む。サーバ100は、タップ切換回数の予測データD22から、ブートストラップ法により、5000回重複を許容してランダムに5000個のブートストラップ標本を取得する。サーバ100は、5000個のブートストラップ標本の平均値をヒストグラムにすることにより、対象変圧器の将来の1日あたりのタップ切換回数の確率密度関数L1を取得する。
【0035】
図2に示す一連の処理において、上記ステップS18の処理が実行されると、処理がステップS19に進む。ステップS19では、サーバ100が、上記ステップS18で取得された1日あたりのタップ切換回数の確率密度関数(第2確率密度関数)を用いて、対象変圧器の使用可能日数の確率密度関数(第1確率密度関数)を取得する。
図6は、第1確率密度関数を取得するための処理(ステップS19)について説明するための図である。
図6に示すように、本実施の形態では、サーバ100が、対象変圧器の将来の1日あたりのタップ切換回数の確率密度関数L1を、対象変圧器の使用可能日数の確率密度関数L2に変換する。使用可能日数は、使用可能期間を「日」の単位で表わしたものであり、使用可能期間の一例に相当する。対象変圧器の使用可能期間は、現在の対象変圧器のタップ切換回数から、今後の対象変圧器の使用によってタップ切換回数が耐用切換回数に到達するまでの期間に相当する。例えば、現在のタップ切換回数が10000回、耐用切換回数が200000回、1日あたりのタップ切換回数が10回である場合には、対象変圧器の使用可能日数は、「使用可能日数=(200000-10000)/10=19000日」のように算出される。対象変圧器の1日あたりのタップ切換回数と対象変圧器の使用可能日数とは、このような関係を有するため、確率密度関数L1から確率密度関数L2を求めることができる。確率密度関数L2(第1確率密度関数)を使用可能日数(x)の関数として「f(x)」で表わすと、
図6中の式(1)が成り立つ。このため、使用可能日数がa日以上b日以下である確率Rは、aからbまでのf(x)の定積分によって得られる。
【0036】
対象変圧器の使用可能日数の確率密度関数L2(第1確率密度関数)は、例えば、以下に説明する制御で使用されてもよい。
【0037】
図7は、
図2に示した一連の処理によって取得された確率密度関数L2を用いた第1の制御を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、対象変圧器について新たな確率密度関数L2が取得されるたびに、サーバ100によって実行される。
【0038】
図7に示すように、サーバ100は、まず、ステップS21において、最新の確率密度関数L2を用いて、将来の期間(以下、「交換期間」と称する)以内に対象変圧器が使用できなくなる確率を求め、得られた確率が第1基準値(以下、「Th1」と表記する)以上であるか否かを判断する。対象変圧器のタップ切換回数が耐用切換回数に到達することは、対象変圧器が使用できなくなることを意味する。交換期間は任意に設定できる。本実施の形態では、現時点から所定時間(より特定的には、4週間)経過する時点までの期間を、上記交換期間とする。ただし、交換期間の長さは4週間に限られず適宜変更可能である。また、Th1も任意に設定できる。Th1は50%程度であってもよい。
【0039】
ステップS21で得た確率がTh1未満である場合には(ステップS21にてNO)、
図7に示す一連の処理は終了する。他方、ステップS21で得た確率がTh1以上である場合には(ステップS21にてYES)、処理がステップS22に進む。
【0040】
ステップS22では、サーバ100が、最新の確率密度関数L2を用いて、交換期間を分割した複数の区分の各々について対象変圧器が使用できなくなる確率を求め、得られた各区分の確率を第1表示装置(例えば、
図1に示したHMI210またはモバイル端末220)に表示させる。本実施の形態では、交換期間(4週間)を1週間ごとの4つの区分(第1~第4区分)に分割する。ただし、区分の数および長さは適宜変更可能である。区分の数は、2つまたは3つでもよいし、5つ以上でもよい。
【0041】
第1表示装置は、サーバ100からの指示に従い、例えば画面Sc1を表示する。画面Sc1は、対象変圧器の識別情報(例えば、固有の番号)を表示する表示部M11と、各区分の確率を表示する表示部M12とを含む。ユーザは、画面Sc1を見て、対象変圧器をあと何日使用したら対象変圧器が使用できなくなるかを推測することができる。
図7に示す例では、確率密度関数L2に基づいて算出された確率を第1表示装置が表示する。しかしこれに限られず、サーバ100は、確率密度関数L2自体を例えばグラフの形態で第1表示装置に表示させてもよい。
【0042】
続くステップS23では、ステップS22で得た各区分の確率の少なくとも1つが第2基準値(以下、「Th2」と表記する)以上であるか否かを、サーバ100が判断する。Th2は任意に設定できる。Th2は、例えばTh1よりも低い値である。Th2は25%程度であってもよい。全ての区分の確率がTh2未満である場合には(ステップS23にてNO)、
図7に示す一連の処理は終了する。他方、いずれかの区分の確率がTh2以上である場合には(ステップS23にてYES)、処理がステップS24に進む。
【0043】
ステップS24では、サーバ100が、対象変圧器の交換を管理者に要求する。具体的には、サーバ100は、対象変圧器の交換を要求するメッセージを第2表示装置(例えば、
図1に示したHMI210またはモバイル端末220)に表示させる。第1表示装置と第2表示装置とは、同じであってもよいし、異なってもよい。第2表示装置は、サーバ100からの指示に従い、例えば画面Sc2を表示する。画面Sc2は、対象変圧器の識別情報を表示する表示部M21と、対象変圧器の交換を要求するメッセージを表示する表示部M22とを含む。
図7に示す画面Sc2(表示部M22)は、時期を指定して、対象変圧器の交換を要求している。
図7に示す例では、第4区分(10月22日~10月28日)の確率がTh2を超えている。このため、サーバ100は、第4区分の前に対象変圧器を交換することを管理者に要求している。これにより、対象変圧器が使用できなくなる前に対象変圧器を交換しやすくなる。なお、交換を要求する手法は上記に限られない。例えば、音声で交換を要求してもよい。
【0044】
図8は、
図2に示した一連の処理によって取得された確率密度関数L2を用いた第2の制御を示すフローチャートである。
図8に示す制御は、ステップS24に代えてステップS24Aが採用されていること以外は、
図7に示した制御と同じである。
【0045】
ステップS24Aでは、サーバ100が、対象変圧器の動作を制限することを対象変圧器のコントローラ25に要求する。サーバ100は、時期を指定して、対象変圧器の動作制限を要求してもよい。サーバ100は、最新の確率密度関数L2に基づいて動作制限を開始する時期を決定してもよい。サーバ100は、最新の確率密度関数L2に基づいて動作制限の程度を決定してもよい。サーバ100からの要求を受けたコントローラ25は、制限なしの状態よりも対象変圧器のタップ切換回数が少なくなるように、対象変圧器の制御態様を変更する。コントローラ25は、例えば電圧変化に対する対象変圧器の感度を低下させることにより対象変圧器のタップ切換回数を減らしてもよい。こうした動作制限により、対象変圧器を交換する前に対象変圧器のタップ切換回数が耐用切換回数に達してしまうことを抑制できる。
【0046】
以上説明したように、上記実施の形態では、サーバ100が、タップ付き変圧器の使用可能日数の確率密度関数(確率密度関数L2)を取得する。サーバ100は、タップ付き変圧器ごとに確率密度関数L2を取得するため、タップ付き変圧器の個々の特性に応じた確率密度関数L2を取得することができる。そして、サーバ100は、得られた確率密度関数L2をユーザに報知したり、得られた確率密度関数L2に基づいてタップ付き変圧器の制御態様を変更したりする。このように確率密度関数L2が使用されることで、タップ付き変圧器を適切に管理しやすくなる。
【0047】
本実施の形態に係るタップ付き変圧器の管理方法は、
図2に示した各処理と
図7または
図8に示した各処理とを含む。これら各処理は、サーバ100(コンピュータ)によって実行される。具体的には、1つ以上のプロセッサが1つ以上の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各処理が実行される。ただし、これらの処理は、ソフトウェアではなくハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。
【0048】
図2,
図7,
図8の各々に示した処理フローは適宜変更可能である。例えば、目的に応じて、処理の順序が変更されてもよいし、不要なステップが省かれてもよい。また、いずれかの処理の内容が変更されてもよい。
【0049】
上記実施の形態では、タップ付き変圧器としてLTC(負荷時タップ切換変圧器)を採用している。しかし、タップ付き変圧器は、LTCに限られず、ステップ式自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)であってもよい。サーバ100は、2種以上のタップ付き変圧器(例えば、LTCおよびSVR)を管理してもよい。サーバ100が管理するタップ付き変圧器の数は任意であり、1つであってもよい。
【0050】
上記実施の形態では、1つのサーバ100が、変圧器に関するデータの収集と、確率密度分布を求めるための演算とを行っている。しかしこれに限られず、データ収集を行う装置と、演算を行う装置とが、別々に設けられてもよい。
【0051】
上記実施の形態では、サーバ100としてオンプレミスサーバを例示している(
図1参照)。しかしこれに限られず、クラウドコンピューティングによってクラウド上にサーバ100の機能(例えば、上記のデータ収集および演算に係る機能)が実装されてもよい。推定モデルがクラウド上に実装されてもよい。推定モデルは、クラウド上での学習により、逐次更新されてもよい。
【0052】
本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0053】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0054】
(付記1)
電力系統からタップ付き変圧器に供給される電力に関する複数種のパラメータの中から、前記タップ付き変圧器のタップ切換回数と相互に関連する対象パラメータを選定すること(例えば、
図2のステップS12,S13)と、
将来の期間における前記対象パラメータの予測値を取得すること(例えば、
図2のステップS14)と、
前記対象パラメータの前記予測値を用いて、前記タップ付き変圧器の使用可能期間の第1確率密度関数を取得すること(例えば、
図2のステップS15~S19)と、
を含む、タップ付き変圧器の管理方法。
【0055】
タップ付き変圧器の使用可能期間は、電力系統の状況などによって変動し得る。このため、タップ付き変圧器の使用可能期間を予測する精度が高くなっても、少なからず予測が外れる可能性はある。こうした予測の結果に基づいて何らかの作業または制御が実行された場合、予測が外れることによって不測の事態が生じるかもしれない。そこで、上記付記1の構成では、タップ付き変圧器の使用可能期間の確率密度関数(第1確率密度関数)を求めている。ユーザ(人)またはコンピュータは、上記第1確率密度関数により、予測が外れる確率を事前に把握できるため、不測の事態は生じにくくなる。このため、上記第1確率密度関数を取得することで、タップ付き変圧器を適切に管理しやすくなる。
【0056】
なお、前記複数種のパラメータは、電流、電圧、および有効電力の少なくとも1つを含んでもよい。
【0057】
(付記2)
前記対象パラメータを選定することは、
前記複数種のパラメータの各々について、前記タップ切換回数との関係を示すデータのクラスタリングを行うこと(例えば、
図2のステップS12)と、
前記クラスタリングの結果を用いて、前記複数種のパラメータの中から、前記タップ切換回数との相関性が最も高いパラメータを、前記対象パラメータとして選定すること(例えば、
図2のステップS13)と、
を含む、付記1に記載のタップ付き変圧器の管理方法。
【0058】
上記付記2の構成によれば、タップ付き変圧器ごとに適切な対象パラメータを選定しやすくなる。
【0059】
(付記3)
前記第1確率密度関数を取得することは、
あるタイミングにおける前記対象パラメータの値が入力されると、そのタイミングにおける前記タップ切換回数を出力する推定モデルを用いて、前記将来の期間における前記対象パラメータの前記予測値から、前記将来の期間における前記タップ切換回数の予測値を取得すること(例えば、
図2のステップS16)と、
前記タップ切換回数の前記予測値を用いて、前記タップ付き変圧器の1日あたりのタップ切換回数の第2確率密度関数を取得すること(例えば、
図2のステップS17,S18)と、
前記第2確率密度関数を前記第1確率密度関数に変換すること(例えば、
図2のステップS19)と、
を含む、付記1または2に記載のタップ付き変圧器の管理方法。
【0060】
上記付記3の構成によれば、タップ付き変圧器ごとに適切な第1確率密度関数を取得しやすくなる。
【0061】
(付記4)
前記第2確率密度関数を取得することは、
前記タップ切換回数の前記予測値について、ブートストラップ法によりブートストラップ標本を取得すること(例えば、
図2のステップS17)と、
前記ブートストラップ標本を用いて前記第2確率密度関数を取得すること(例えば、
図2のステップS18)と、
を含む、付記3に記載のタップ付き変圧器の管理方法。
【0062】
上記付記4の構成によれば、容易かつ的確に第2確率密度関数を取得しやすくなる。
【0063】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載のタップ付き変圧器の管理方法を実行する、サーバ。
【0064】
(付記6)
付記1~4のいずれか1つに記載のタップ付き変圧器の管理方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
【0065】
上記サーバおよびプログラムによれば、上述したタップ付き変圧器の管理方法を適切に実行しやすくなる。
【0066】
ある形態においては、上記プログラムを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶されたプログラムを実行するプロセッサとを備えるサーバが提供される。他の形態においては、上記プログラムを配信するサーバが提供される。
【0067】
(付記7)
電力系統に設けられた1つ以上のタップ付き変圧器と、前記1つ以上のタップ付き変圧器を管理するサーバとを備える電源管理システムであって、
前記サーバは、
前記電力系統から前記タップ付き変圧器に供給される電力に関する複数種のパラメータの中から、前記タップ付き変圧器のタップ切換回数と相互に関連する対象パラメータを選定することと、
将来の期間における前記対象パラメータの予測値を取得することと、
前記対象パラメータの前記予測値を用いて、前記タップ付き変圧器の使用可能期間の確率密度関数を取得することと、
を実行するように構成される、電源管理システム。
【0068】
上記電源管理システムによれば、前述したタップ付き変圧器の管理方法と同様、タップ付き変圧器の使用可能期間の確率密度関数を取得することで、タップ付き変圧器を適切に管理しやすくなる。
【0069】
(付記8)
前記確率密度関数、または前記確率密度関数に基づいて算出された確率を表示する表示装置をさらに備える、付記7に記載の電源管理システム。
【0070】
上記付記8の構成では、タップ付き変圧器の使用可能期間の確率密度関数またはこの関数から算出された確率を表示することにより、タップ付き変圧器をあとどれくらい使用したら使用できなくなるかをユーザに的確に報知しやすくなる。
【0071】
(付記9)
前記1つ以上のタップ付き変圧器は、複数の負荷時タップ切換変圧器を含み、
前記電源管理システムは、前記複数の負荷時タップ切換変圧器の各々に対して設けられたカウンタ、センサ、およびコントローラをさらに備え、
前記カウンタは、対応する前記負荷時タップ切換変圧器のタップ切換回数を計測するように構成され、
前記センサは、対応する前記負荷時タップ切換変圧器に供給される電力に関する前記複数種のパラメータの値を計測するように構成され、
前記コントローラは、前記センサによる計測結果を用いて、対応する前記負荷時タップ切換変圧器を制御するように構成され、
前記コントローラは、前記カウンタによって取得される前記タップ切換回数の計測値である第1計測値と、前記センサによって取得される前記複数種のパラメータの計測値である第2計測値とを送信するように構成され、
前記サーバは、前記コントローラが送信した前記第1計測値および前記第2計測値を受信可能に構成される、付記7または8に記載の電源管理システム。
【0072】
上記付記9の構成では、各負荷時タップ切換変圧器に対して設けられたコントローラが、第1計測値および第2計測値を取得し、得られた第1計測値および第2計測値を送信する。サーバは、第1計測値および第2計測値を用いて、各タップ付き変圧器の使用可能期間の確率密度関数を取得することができる。上記付記9の構成によれば、複数の負荷時タップ切換変圧器を個別に管理しやすくなる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。請求の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 電源管理システム、10A,10B,10C 変圧器、11 切換開閉器、12 タップ選択器、20A,20B,20C 監視装置、21 入力センサ、22 出力センサ、23 カウンタ、25 コントローラ、30A,30B,30C 発電設備、100 サーバ、110 プロセッサ、120 RAM、130 記憶装置、150 推定モデル、210 HMI、220 モバイル端末、CL クラウド。