(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153303
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ロボット制御システム、及びロボット制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20241022BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067106
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】591280485
【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 正義
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS27
3C707CS08
3C707DS05
3C707ES06
3C707GS00
3C707KS02
3C707KS03
3C707KS07
3C707KS08
3C707KS09
3C707KS10
3C707KT02
3C707KV11
3C707KV18
3C707KX07
3C707LV02
3C707MS05
3C707WA16
3C707WK05
3C707WK06
(57)【要約】
【課題】複数のロボットが隣接して作業を実行する場合に、あるロボットが実行する作業が隣接する他のロボットの作業の障害になるような事態の発生を防ぐ。
【解決手段】判定部141は、対象物である荷物に対して実行すべき作業の仕事種を判定する。情報取得部140は、隣接する他の人型ロボット1が実行しようとする作業又は実行中の作業の仕事種の情報を取得する。制御部142は、判定部141により判定された仕事種が、情報取得部140により取得された隣接する他の人型ロボット1の作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、判定部141により判定された仕事種の作業を対象物に対して実行しないように制御する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの腕部に着脱可能に装着され、対象物の把持を主目的として取り付けられた把持部と、前記腕部に着脱可能に構成され対象物の把持とは異なる仕事種の作業を実行するための1又は複数のロボットツールと、を備えるロボットを制御するためのロボット制御システムであって、
前記対象物に対して実行すべき作業の仕事種を判定する判定部と、
隣接する他のロボットが実行しようとする作業又は実行中の作業の仕事種の情報を取得する取得部と、
前記判定部により判定された仕事種が、前記取得部により取得された隣接する他のロボットの作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、前記判定部により判定された仕事種の作業を対象物に対して実行しないように制御する制御部と、
を有するロボット制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記判定部により判定された仕事種が、前記取得部により取得された隣接する他のロボットの作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、前記判定部により判定された仕事種以外の仕事種の作業を対象物に対して実行するように制御する、
請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記判定部により判定された仕事種が、前記取得部により取得された隣接する他のロボットの作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、当該ロボットを現在の位置から移動させることにより、隣接する他のロボットの作業の仕事種と当該ロボットが実行しようとする作業の仕事種とが隣接して実行することができない仕事種の組み合わせとはらないようにする、
請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項4】
隣接する2台のロボットが同時に実行することができない仕事種の組み合わせが、それぞれの仕事種の作業範囲の大きさに基づいて設定される、請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項5】
隣接する2台のロボットが同時に実行することができない仕事種の組み合わせが、安全上の理由に基づいて設定される、請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項6】
隣接する2台のロボットが同時に実行することができない仕事種の組み合わせの情報が、複数のロボットのそれぞれにおいて記憶されている請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項7】
隣接する2台のロボットが同時に実行することができない仕事種の組み合わせの情報が、複数のロボットの動作を管理している管理サーバにおいて記憶され、
前記管理サーバが、隣接する2台のロボットどうしが同時に実行することができない仕事種の作業をそれぞれ実行しないように複数のロボットの動作を制御する、
請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項8】
前記ロボットツールが、前記把持部全体に代えて前記腕部に装着される、請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項9】
前記ロボットツールが、前記把持部の一部に代えて前記腕部に装着される、請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項10】
前記把持部が、複数の指部を備え、前記把持部の一部が、指部の先端部である、請求項9記載のロボット制御システム。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から10のいずれか1項に記載の前記判定部、前記取得部、前記制御部として動作させる、ロボット制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システム、及びロボット制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインにおいては作業を自動で行うための人型ロボットが使用されている。特許文献1には、人型ロボットの姿勢制御について記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、弾性体アクチュエータで駆動されて複数の関節を有するロボットアームであって、ロボットアームの手先部に配設され支持面と接触することによりロボットアームを支持する手先支持部材と、手先支持部材と支持面との接触する力を制御すると同時にロボットアームの手先部の位置及び姿勢を制御する制御部により制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-093506号公報
【特許文献2】国際公開第2011/001569号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の人型ロボットによる倉庫内でのピッキング作業において、例えば、荷物が陳列されている棚から当該荷物(シャンプーや、コンディショナー、化粧品、歯磨き粉、カップラーメン、菓子袋等の形状や重さ、硬さ、壊れやすさが違うもの)をピックアップし、所定の包装体(箱等)に収容してパッキングするような場面において、現状では人の手に頼っている。
【0006】
また、ロボットの把持部の構造をフィンガータイプとして対応しようとしても、指や腕の動きが遅いため、生産性が低い。さらに、荷物の把持以外の仕事種の作業を実行する場合、把持部で必要な工具(例えば、ドリル、スクリュードライバ等)を把持して作業することになり、把持状態の管理制御が加わった間接的な作業となるため、制御負担が大きくなる場合がある。
【0007】
そこで、実行しようとする作業の仕事種に応じて、ロボットの把持部を作業内容に応じたツールに付け替えて作業を行うようにすれば、様々な仕事種の作業を効率良く実行することが可能となる。
【0008】
しかし、複数のロボットが隣接して作業を実行する場合に、アームの動きが大きいような作業を実行しているロボットどうしが隣接している場合、一方のロボットのアームが他方のロボットのアームと接触する等によりロボットが実行している作業の障害となってしまう可能性がある。
【0009】
例えば、スプレーガンを用いて対象物に塗料を噴霧する塗装という仕事種の作業を行う2体のロボットが隣接して作業を行った場合、ロボットのアームどうしが接触したりして一方のロボットの作業により他方のロボットの作業が邪魔されるような事態となる可能性がある。また、例えば、塗装という仕事種の作業を行うロボットに隣接して、溶接のような仕事種の作業を行うロボットが存在したのでは溶接の火花により塗料が引火する等の危険性がある場合もある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数のロボットが隣接して作業を実行する場合に、あるロボットが実行する作業が隣接する他のロボットの作業の障害になるような事態の発生を防ぐことが可能なロボット制御システム、及びロボット制御プログラムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るロボット制御システムは、ロボットの腕部に着脱可能に装着され、対象物の把持を主目的として取り付けられた把持部と、前記腕部に着脱可能に構成され対象物の把持とは異なる仕事種の作業を実行するための1又は複数のロボットツールと、を備えるロボットを制御するためのロボット制御システムであって、
前記対象物に対して実行すべき作業の仕事種を判定する判定部と、
隣接する他のロボットが実行しようとする作業又は実行中の作業の仕事種の情報を取得する取得部と、
前記判定部により判定された仕事種が、前記取得部により取得された隣接する他のロボットの作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、前記判定部により判定された仕事種の作業を対象物に対して実行しないように制御する制御部と、を有している。
【0012】
本発明によれば、判定部では、対象物に対して実行すべき作業の仕事種を判定し、制御部では、判定部により判定された仕事種が、対象物の把持である場合には腕部に把持部を装着させ、判定部により判定された仕事種が対象物の把持以外の仕事種の場合には、腕部にロボットツールを装着させるための制御を実行する。
【0013】
そして、本発明では、制御部は、判定部により判定された仕事種が、取得部により取得された隣接する他のロボットの作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合には、判定部により判定された仕事種の作業を対象物に対して実行しないように制御する。
【0014】
そのため、本発明によれば、複数のロボットが隣接して作業を実行する場合に、あるロボットが実行する作業が隣接する他のロボットの作業の障害になるような事態の発生を防ぐことが可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係るロボット制御システムでは、前記制御部は、前記判定部により判定された仕事種が、前記取得部により取得された隣接する他のロボットの作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、前記判定部により判定された仕事種以外の仕事種の作業を対象物に対して実行するように制御する。
【0016】
さらに、本発明に係るロボット制御システムでは、前記制御部は、前記判定部により判定された仕事種が、前記取得部により取得された隣接する他のロボットの作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、当該ロボットを現在の位置から移動させることにより、隣接する他のロボットの作業の仕事種と当該ロボットが実行しようとする作業の仕事種とが隣接して実行することができない仕事種の組み合わせとはらないようにする。
【0017】
本発明によれば、あるロボットに対して実行しようとする作業の仕事種を変更しなくても、あるロボットが実行する作業が隣接する他のロボットの作業の障害になるような事態の発生を防ぐことが可能となる。
【0018】
本発明に係るロボット制御システムでは、隣接する2台のロボットが同時に実行することができない仕事種の組み合わせが、それぞれの仕事種の作業範囲の大きさに基づいて設定される。
【0019】
また、本発明に係るロボット制御システムでは、隣接する2台のロボットが同時に実行することができない仕事種の組み合わせが、安全上の理由に基づいて設定される。
【0020】
また、本発明に係るロボット制御システムでは、隣接する2台のロボットが同時に実行することができない仕事種の組み合わせの情報が、複数のロボットのそれぞれにおいて記憶されている。
【0021】
本発明によれば、管理サーバを必要とすることなくロボット間で直接通信を行って隣接するロボットが実行しようとする作業の仕事種の情報を取得するだけで、あるロボットが実行する作業が隣接する他のロボットの作業の障害になるような事態の発生を防ぐことが可能となる。
【0022】
また、本発明に係るロボット制御システムでは、隣接する2台のロボットが同時に実行することができない仕事種の組み合わせの情報が、複数のロボットの動作を管理している管理サーバにおいて記憶され、
前記管理サーバが、隣接する2台のロボットどうしが同時に実行することができない仕事種の作業をそれぞれ実行しないように複数のロボットの動作を制御するようにしてもよい。
【0023】
本発明によれば、複数のロボットがそれぞれ実行する作業の仕事種を管理サーバにおいて管理することにより、あるロボットが実行する作業が隣接する他のロボットの作業の障害になるような事態の発生を防ぐことが可能となる。
【0024】
さらに、本発明に係るロボット制御システムでは、前記判定部が、前記把持部又は前記ロボットツールに搭載された、前記対象物の画像を撮影して当該対象物の種類を識別するカメラ、及び、前記対象物の位置を特定するモーションプロセシングユニットを備えたセンサ部からの情報に基づいて、前記対象物に対して実行すべき作業の仕事種を判定する。
【0025】
ここで、カメラは、撮影した画像情報に基づき、撮影された対象物(以下、荷物という場合がある。)を識別する。すなわち、対象物の種類(形状、大きさ、硬さ等)を特定するための情報を取得する役目を有する。
【0026】
また、モーションプロセシングユニット(MoPU)は、対象物の存在位置を示す点の、所定の座標軸に沿った動きのベクトル情報を動き情報と共に位置情報として出力する。すなわち、MoPUから出力される動き情報には、対象物の中心点(又は重心点)の座標軸(x軸、y軸、z軸)上の動き(移動方向と移動速度)を示す情報のみが含まれている。すなわち、把持部が対象物に接近するときの軌跡を精度よく案内することができる。
【0027】
また、本発明のロボット制御システムでは、前記ロボットツールが、前記把持部全体に代えて前記腕部に装着されるものであってもよい。
【0028】
さらに、本発明のロボット制御システムでは、前記ロボットツールが、前記把持部の一部に代えて前記腕部に装着されるものであってもよい。
【0029】
この場合、前記把持部が、複数の指部を備え、前記把持部の一部が、指部の先端部であってもよい。
【0030】
本発明に係るロボット制御プログラムは、コンピュータを上記のロボット制御システムの前記判定部、前記制御部として動作させる。
【0031】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明によれば、複数のロボットが隣接して作業を実行する場合に、あるロボットが実行する作業が隣接する他のロボットの作業の障害になるような事態の発生を防ぐことが可能になるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1の実施の形態に係る人型ロボットの正面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る人型ロボットの側面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る把持部の掌側の正面図である。
【
図4】(A)は第1の実施の形態に係るホルダに格納されたロボットツールの正面図、(B)~(D)は第1の実施の形態に係るロボットツールによる作業を実行する際の様子を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る人型ロボットの機能構成の一例を概略的に示す図である。
【
図6】把持部20又はロボットツール21EXによって荷物100に対する作業を実行する際の制御の手順を示すフローチャートである。
【
図7】ロボットツール適用処理サブルーチンの詳細を示す制御フローチャートである。
【
図8】1つのテーブル上に置かれた3つの荷物100に対して、3台の人型ロボット1A~1Cがそれぞれ作業を実行しようとする様子を示す図である。
【
図9】人型ロボット1A~1Cが、それぞれ無線通信回線を介して隣接する他の人型ロボット1とデータの送受信を行う様子を示す図である。
【
図10】各仕事種の作業に対して作業範囲が設定されている作業範囲設定テーブルの一例を示す図である。
【
図11】隣接する2台の人型ロボット1が同時に実行することができない仕事種の組み合せが登録さている隣接作業禁止テーブルの一例を示す図である。
【
図12】複数の人型ロボット1A~1Cの動作が管理サーバ80により管理される構成を示す図である。
【
図13】(A)は第2の実施形態に係る把持部の正面図、(B)は第2の実施形態に係る把持部の仕事種の一覧を示す図表である。
【
図14】情報処理装置として機能するコンピュータハードウェアの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0035】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態のロボット制御システムにおける人型ロボット1の正面図である。
図1に示すように、本実施形態における人型ロボット1は、上半身部2、脚部3、および上半身部2を脚部3に対して回動可能に連結する連結部4を備え、例えば工場の生産ライン等に配置されて、ピッキング対象物である荷物等が陳列されている棚を含むライン上、又は床上の対象物(落下物等)に対して作業を行うものである。なお、作業は、棚から荷物を把持するピッキング以外に、把持した荷物を所定の筐体(ダンボール等)に収容するパッキングや、把持した作業対象物の塗装、作業対象物に対する穿孔、ビス締め等の作業を含む。
【0036】
上半身部2は2本の腕部5、6を有する。腕部5、6は上半身部2の左右に回動自在に取り付けられている。また、腕部5、6の先端には荷物を把持するための把持部20L、20R(詳細後述)がそれぞれ取り付けられている。なお、以下においては、把持部20L、20Rを特定せずに説明する場合には、把持部20L、20Rをまとめて把持部20として示す場合がある。また、腕部は2本に限定されるものではなく、1本あるいは3本以上であってもよい。
【0037】
このように、本実施形態におけるロボット制御システムには、人型ロボット1の腕部5、6に着脱可能に装着され、対象物である荷物の把持を主目的として取り付けられた把持部20だけでなく、腕部5、6に着脱可能に構成され荷物の把持とは異なる仕事種の作業を実行するための1又は複数のロボットツール21EXとが備えられている。
【0038】
なお、
図1では、3種類のロボットツール21EXA~21EXCがベルト28のホルダに保持されている。このロボットツール21EXA~21EXCの詳細については後述する。
【0039】
脚部3は2つの車輪7、8がその下部に取り付けられており、人型ロボット1が配置される床の上を移動可能なように構成されている。
【0040】
連結部4は、上半身部2と脚部3を回動可能に連結する。このため、上半身部2は、脚部3に対して前傾および後傾が可能となっている。このため、第1の実施形態に係る人型ロボット1は、
図2に示すように、脚部3に対して上半身部2を前傾させて、棚に置かれた荷物100や、床に置かれていた荷物100、及び作業中に床に落ちたりした荷物100を拾うことが可能である。
【0041】
なお、脚部3は、上半身部2が脚部3に対して前傾または後傾したり、人型ロボット1が移動したりした際に、人型ロボット1が転倒しないようにするためのバランス機能を有する。
【0042】
また、連結部4は、
図1に示すように上半身部2と脚部3との距離を変更可能な機能を有する。このため、生産ラインにおける作業台の高さに合うように、脚部3に対する上半身部2の上下方向の位置を矢印Aに示すように調整することができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る人型ロボット1は、人型ロボット1内に実装された制御システムによりその駆動が制御される。なお、この制御システムの詳細については後述する。
【0044】
(把持部20の構造)
図3に示されるように、腕部5、6の先端に取り付けられた把持部20R、20Lは、人間の手と同様の構造のインテリジェントハンドシステム(Intelligent Hand System)となっている。把持部20は、それぞれ、腕部5、6に対して、それぞれ回転自在に取り付けられている。把持部20は、腕部5、6と連結する手首よりも先の部分であり、把持部20は、この手首部分で着脱可能とされ、後述するロボットツール21EXと取り替えることが可能となっている。
【0045】
(把持部20)
図3に示されるように、本実施形態に係る把持部20は、所謂人間の掌に相当する基部として掌部を備え、掌部には、各々複数の関節を備えた5本の指部22A、22B、22C、22D、22Eが取り付けられている。なお、
図3では、腕部5に装着された把持部20Rを用いて説明するが、把持部20Lも同様の構成となっている。また、本実施形態では、把持部20の指の数をそれぞれ5本としているが、3本指などの数の異なる指構造であってもよい。
【0046】
把持部20の掌部には、掌センサ26がそれぞれ取り付けられている。本実施形態に係る掌センサ26を構成する高解像度カメラは、撮影した画像情報に基づき、撮影された荷物100が何であるか、例えば、シャンプー、コンディショナー、化粧品、歯磨き粉等のケア商品なのか、又は、カップラーメン、菓子袋等の食品なのかを識別する。
【0047】
言い換えると、高解像度カメラは、荷物100の種類(形状、大きさ、硬さ等)を特定するための情報を取得する役目を有する。
【0048】
一方、高解像度カメラと共に、本実施形態の掌センサ26を構成するMoPUは、1000フレーム/秒以上のフレームレートで撮影された荷物100の画像から、撮影された荷物100の動き(この場合、腕部5、6との間の相対的な動きとなる。)を示す動き情報を、例えば1000フレーム/秒以上のフレームレートで出力する。なお、移動中の荷物100を検知する場合、フレームレートを上げて、固定物(移動しない荷物100)を検知する場合、フレームレートを下げるようにしてもよい。
【0049】
MoPUは、荷物100の存在位置を示す点の、所定の座標軸に沿った動きのベクトル情報を動き情報として出力する。すなわち、MoPUから出力される動き情報には、撮影された荷物100が何であるか(上記ケア商品、食品)を識別するために必要な情報は含まれておらず、当該荷物100の中心点(又は重心点)の座標軸(x軸、y軸、z軸)上の動き(移動方向と移動速度)を示す情報のみが含まれている。
【0050】
すなわち、把持部20が荷物100に接近するときの軌跡を精度よく案内することができる。
【0051】
高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26から出力された情報は、後述する制御システムに供給される。
【0052】
(ロボットツール21EX)
本実施形態では、
図1に示すように、把持部20は、対象物である荷物100の把持を主目的として腕部5、6に対して装着されている。
【0053】
一方、荷物100に対して実行すべき作業の仕事種が把持ではなく、他の仕事種(例えば、塗装、強度アップ把持(特殊把持)、ドリルによる穿孔等)の場合がある。
【0054】
この場合、把持部20で各種作業に対応する工具を把持して、荷物100に対峙することも可能であるが、同一の仕事種の作業を継続的に実行する場合は、把持状態の維持制御(把持部と把持している工具との相対位置制御等)の負担が大きい。
【0055】
そこで、本実施形態では、把持部20に代えて、荷物100に対する仕事種に応じて、
図1に示すように、ロボットツール21EX(本実施形態では、21EXA、21EXB、21EXCの3種類)を腰に装着したベルト28に具備しておき、必要に応じて、把持部20から、ロボットツール21EXに交換して、荷物100の把持とは別の仕事種に応じた作業を実行する構成とした。
【0056】
(ロボットツール21EXの保管例)
図1に示されるように、人型ロボット1は、上半身部2の下部(所謂、腰位置)にベルト28が装着され、ベルト28には、3個のロボットツール21EXA、21EXB、21EXCの各々を着脱可能に保持するホルダ(図示省略)が取り付けられている。なお、ロボットツール21EXA、21EXB、21EXCのそれぞれを特定せずに説明する場合にはロボットツール21EXとして示す。
【0057】
図1では、3種類のロボットツール21EXがベルト28に装着される場合が示されているが、ベルト28に装着されるロボットツール21EXの種類の数は、1種類、2種類、又は4種類以上であってもよく、後述する荷物100の属性に合わせて決めればよい。
【0058】
ベルト28のホルダに格納されたロボットツール21EXA、21EXB、21EXCの詳細を
図4に示す。
図4では、把持部20とは別に、第1の実施形態の人型ロボット1に装備された3種類のロボットツール21EX(21EXA、21EXB、21EXC)の詳細構成と、その用途との関係が示されている。
【0059】
図4(A)は、
図1の人型ロボット1に取り付けられたベルト28の正面図である。
図4(A)に示されるように、ロボットツール21EXが、それぞれ着脱可能な状態でベルト28のホルダに取り付けられている。
【0060】
図4(B)~(D)は、ロボットツール21EXA、21EXB、21EXCを用いて荷物100に対する作業を行う際の様子を示している。
【0061】
図4(B)は、仕事種が塗装である作業を実行するためのロボットツール21EXAの使用状態を示す図である。ロボットツールEXAは、いわゆるスプレーガンにより構成されている。
【0062】
スプレーガンは、吹き付け塗装で使用されるピストル状の塗装機器の一つである。スプレーガンは、コンプレッサー(図示省略)の圧縮空気を利用し塗料を霧状にして、先端から噴出させる構造となっており、被塗装面に対してムラなく塗装することが可能な構造となっている。
【0063】
図4(C)は、仕事種が特殊把持である作業を実行するためのロボットツール21EXBの使用状態を示す図である。ロボットツール21EXBは、把持部20と同様に荷物100を把持するような構造となっているが、把持部20では把持が困難な特殊な荷物100を把持することができる構造となっている。
【0064】
すなわち、ロボットツール231EXBは、例えば、重機のアタッチメントとして適用される二枚爪フォークと同様の構造となっている。本実施形態では、ロボットツール231EXBは、2本指構造となっており、圧力源から配管を介して供給される圧力により、2本の指が開いたり閉じたりすることで、モータ等による把持動作(把持部20)に比べて、汎用性は低いが、荷物100を掴む強度が増強されている。
【0065】
図4(D)は、仕事種が穿孔である作業を実行するためのロボットツール21EXCの使用状態を示す図である。ロボットツールEXCは、いわゆるドリルにより構成されている。
【0066】
ドリルには、所定の径寸法のドリル刃が着脱可能に取り付け可能となっていて、ドリル刃は、荷物100に穿孔するための孔寸法に合わせて事前に装着されている。
【0067】
ここで、荷物100に対して実行すべき作業の仕事種が、把持部20で処理可能な仕事種(把持)とは異なる場合、荷物100に対して実行する作業の仕事種に基づいて、最適なロボットツール21EXを選択し(表1参照)、把持部20から、選択したロボットツール21EXに付け替えて、処理を実行する。
【0068】
【0069】
なお、図示は省略したが、各々のロボットツールEXにも掌センサ26が取り付けられている。
【0070】
図5は、本実施形態に係るロボット制御システム10の一例の概略図である。制御システム10は、人型ロボット1に搭載されるセンサ12と、高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26と、情報処理装置14とを備えている。
【0071】
情報処理装置14は、高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26からの情報により、高精度に荷物100の位置を特定し、把持するときの指部22A、22B、22Cの広がり度合い、掴むときの強度を演算し、腕部5、6及び把持部20の微小な動きを、精度よくコントロールし、様々な荷物100に対する作業に対応することができる。
【0072】
センサ12は、人型ロボット1の周辺にある、人型ロボット1が作業する荷物100と腕部5、6との距離および角度を少なくとも表す情報を逐次取得する。センサ12としては、最高性能のカメラ、ソリッドステートLiDAR、マルチカラーレーザ同軸変位計、又はその他様々なセンサ群が採用され得る。また他には、センサ12としては、振動計、サーモカメラ、硬度計、レーダー、LiDAR、高画素・望遠・超広角・360度・高性能カメラ、ビジョン認識、微細音、超音波、振動、赤外線、紫外線、電磁波、温度、湿度、スポットAI天気予報、高精度マルチチャネルGPS、低高度衛星情報、又はロングテールインシデントAI data等が挙げられる。
【0073】
なお、センサ12は、上記の情報のほかに、画像、距離、振動、熱、匂い、色、音、超音波、紫外線、又は赤外線等を検知する。他にセンサ12が検知する情報としては、人型ロボット1の重心移動、人型ロボット1が設置される床の材質の検知、外気温度の検知、外気湿度の検知、床の上下横斜め傾き角度の検知、水分量の検知等が挙げられる。
【0074】
センサ12は、これらの検知を例えばナノ秒毎に実施する。
【0075】
掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)は、腕部5、6の把持部20に設けられるセンサであり、センサ12とは別に、荷物100を撮影するカメラ機能、及び、荷物100の位置を特定する位置特定機能を有する。
【0076】
なお、1つのMoPUを用いた場合には、荷物100の存在位置を示す点の、三次元直交座標系における2つの座標軸(x軸及びy軸)の各々に沿った動きのベクトル情報を取得することが可能である。ステレオカメラの原理を利用して、2つのMoPUを用いて、荷物100の存在位置を示す点の、三次元直交座標系における3つの座標軸(x軸、y軸、z軸)の各々に沿った動きのベクトル情報を出力してもよい。z軸は、奥行方法に沿った軸である。
【0077】
情報処理装置14は、情報取得部140と、判定部141と、制御部142と、情報蓄積部144とを備えている。
【0078】
情報取得部140は、センサ12及び掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)によって検知された荷物100の情報を取得する。情報取得部140により取得された各種情報は情報蓄積部144に蓄積される。
【0079】
判定部141は、対象物である荷物100に対して実行すべき作業の仕事種を判定する。
【0080】
制御部142は、情報取得部140がセンサ12から取得した情報とAI(Artificial intelligence)とを用いて、連結部4の回動動作、上下方向の移動動作および腕部5、6の動作等を制御する。
【0081】
また、制御部142は、情報取得部140が掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)から取得した情報を用いて、荷物100の種類(形状、大きさ、硬さ等)及び位置を詳細に把握し、当該外形や位置に応じて、把持部20を対峙させ、5本の指部22A~22Fで掴むように制御する(把持制御)。
【0082】
そして、制御部142は、判定部141により判定された仕事種が荷物100の把持である場合には、腕部5、6に把持部20を装着させて、把持部20を制御して荷物100を把持する作業を実行する。
【0083】
例えば、制御部142は、全体の動作として、以下の各処理を実行する。
【0084】
(1)棚及び床にある荷物100を拾い上げることが可能なように連結部4を駆動して、上半身部2を前傾または後傾させる。
【0085】
(2)荷物100をつかむことが可能なように腕部5、6および把持部20を駆動する。
【0086】
(3)生産ラインの作業台の高さに合うように、上半身部2を脚部3に対して上下に駆動する。
【0087】
(4)人型ロボット1の転倒を防ぐために、バランスを取る。
【0088】
(5)人型ロボット1がカート等を押し進めることができるように、車輪7、8の駆動を制御する。
【0089】
情報処理装置14は、例えば、床にある荷物100を拾う場合、センサ12によって検知された荷物100の情報を取得し、取得された荷物100の情報とAIとを用いて、連結部4および腕部5、6を制御することにより、床にある荷物100を拾い上げ、拾った荷物100を所定位置へ移動する。
【0090】
以下、本実施形態のロボット制御システムの動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0091】
(荷物100に対する作業の実行制御)
図6は、把持部20又はロボットツール21EXによって荷物100に対する作業を実行する際の制御の手順を示すフローチャートである。
【0092】
ステップ150では、荷物100に対する作業の実行指示があったか否かを判断し、肯定判定されると、ステップ152へ移行して、人型ロボット1を移動させ(例えば、腕部5、6を動作させ)、対象の荷物100に把持部20を対峙させ、ステップ154へ移行する。
【0093】
ステップ154では、把持部20を対向させて、掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)で荷物100の情報を検出する。
【0094】
次のステップ156では、掌センサ26による検出情報を解析して、荷物100の種類(形状、大きさ、硬さ等)及び位置を詳細に把握し、ステップ158へ移行する。
【0095】
ステップ158では、荷物100に対して実行すべき作業の仕事種を判定して、把持部20又はロボットツール21EXのうち判定した仕事種に応じたロボットツール21EXを選択して、腕部5、6に装着して、ステップ162へ移行する。
【0096】
ステップ162では、把持部20又はロボットツール21EXを用いて、荷物100に対する作業を実行する。
【0097】
次のステップ164では、荷物100に対する作業の実行が成功したか否かを判定し、肯定判定された場合は、作業が実行された後の荷物100を所定の場所へ運び、ステップ150へ移行して、次の荷物100に対する作業の実行指示を待つ。
【0098】
また、ステップ164で否定判定された場合は、ステップ166へ移行して、リトライ、キャンセル等のエラー処理を実行する。例えば、エラー処理として、判定部141により判定された仕事種とは異なる仕事種での作業に切り替えてもよい。
【0099】
把持部20には、高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26が取り付けられているので、上記の構造の把持部20を人型ロボット1の腕部5、6に装着することにより、荷物100を確実にピックすることができ、人型ロボット1の動きが早くても荷物100を把持部20から落とさずに運ぶことができる。
【0100】
また、掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)が掌側に搭載されているので、高精度に荷物100を捉えることができ、微小な動きをする作業にも対応することができる。
【0101】
さらに、本実施形態のロボット制御システムでは、対象物である荷物100を単に運ぶだけでなく、塗装したりドリルにて穿孔したりするような作業を荷物100に対して実行する場合でも、腕部5、6に装着する把持部20をロボットツールEXに取り換えることにより、各種の工具を把持部20で把持して作業を行う場合と比較して、簡単な制御により各種作業を実行することができる。
【0102】
(把持部又はロボットツール選択処理の詳細)
図7は、
図6におけるステップ158において示した、把持部又はロボットツール選択処理の詳細を示す制御フローチャートである。
【0103】
ステップ200では、荷物100に対する仕事種(表1参照)に基づき、ロボットツール21EXを選択する。
【0104】
すなわち、表1に示されるように、荷物100に対する仕事種に応じて、必要なロボットツール21EXの種類が決まる。
【0105】
なお、表1に示す荷物100に対する仕事種に基づくロボットツールの種類の選択は一例であり、所持しているロボットツールの種類や数に基づき定めればよい。
【0106】
本実施形態では、3種類のロボットツール21EXがベルト28に装着されているため、この3種類のロボットツール21EXからの選択になるが、ベルト28への装着数を増加したり、作業現場に応じて、多種のロボットツール21EXの中から選択してベルト28に予め装着しておいたりしてもよい。また、人型ロボット1毎に異なる種類のロボットツール21EXを装着するようにしてもよい。
【0107】
次のステップ202では、交換側の腕部6(又は5)に装着されたロボットツール(通常は把持部20であるが、既に別のロボットツール21EXが装着されている場合もある。)を取り外す。
【0108】
次のステップ204では、交換側の腕部6(又は5)を、ベルト28の位置に移動し、ロボットツール21EXを装着する。
【0109】
次のステップ206では、非交換側の腕部5(又は6)で把持している、交換側の腕部6(又は5)にもともと装着されていたロボットツールを、ベルト28のホルダに格納し、このルーチンは終了する。
【0110】
以上説明したように本実施形態では、把持部20による把持動作制御に加え、例えば、荷物100に対して実行すべき作業の仕事種に応じて、ロボットツール21EXを選択して腕部6(又は5)に装着して作業を実行する。
【0111】
これにより、仕事種に応じて必要な工具を把持部20により把持して作業を行うことで生じる制御負担(把持部20と工具との相対位置制御に係る負担等)を、直接ロボットツール21EXを腕部6又は5に装着することにより解消することができる。
【0112】
[複数の人型ロボット1に対する制御]
上記で説明したように、本実施形態における人型ロボット1は、把持部20及びロボットツール21EXの中から、実行しようとする仕事種に応じたツールを選択して、作業を実行する。しかし、複数の人型ロボット1がある狭い場所で作業するような場合、実行する仕事種によっては隣接する人型ロボット1どうしでアームがぶつかってしまい安全に作業を実行することができないような事態が発生する可能性がある。
【0113】
このような複数の人型ロボット1が狭い場所において作業を実行する際の様子を
図8に示す。
図8では、1つのテーブル上に置かれた3つの荷物100に対して、3台の人型ロボット1A~1Cがそれぞれ作業を実行しようとする様子が示されている。
【0114】
このように3台の人型ロボット1A~1Cが1つのテーブル上におかれた3つの荷物100に対してそれぞれ塗装という作業を実行した場合、人型ロボット1A~1Cのアームである腕部5、6どうしが衝突してしまう可能性がある。
【0115】
そのため、本実施形態のロボット制御システムでは、以下において説明するような方法により、複数のロボットが隣接して作業を実行する場合に、あるロボットが実行する作業が隣接する他のロボットの作業の障害になるような事態の発生を防ぐようにしている。
【0116】
上記のような事態の発生を防ぐために、情報取得部140は、隣接する他の人型ロボット1が実行しようとする作業又は実行中の作業の仕事種の情報を取得する。例えば、情報取得部140は、Wi-Fi(登録商標)等の無線LANや、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信回線を介して、隣接する人型ロボット1が実行しようとする作業、又は現在実行中の作業の仕事種に関する情報を取得する。
【0117】
具体的には、
図9に示すように、人型ロボット1A~1Cが、それぞれ無線通信回線を介して隣接する他の人型ロボット1とデータの送受信を行って他の人型ロボット1が実行中の作業、又は実行しようとする作業の仕事種の情報を取得する。ここで、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信回線の電波が届く範囲を隣接する範囲と設定することにより、人型ロボット1A~1Cは、それぞれの送信電波の電波強度を設定することにより隣接する範囲の広さを調整することが可能となる。
【0118】
そして、制御部142は、判定部141により判定された仕事種が、情報取得部140により取得された隣接する他の人型ロボット1の作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であるか否かを判定する。そして、制御部142は、判定部141により判定された仕事種が、情報取得部140により取得された隣接する他の人型ロボット1の作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、判定部141により判定された仕事種の作業を対象物に対して実行しないように制御する。
【0119】
例えば、隣接する2台の人型ロボット1が同時に実行することができない仕事種の組み合わせが、それぞれの仕事種の作業範囲の大きさに応じた接触可能性に基づいて設定される。
【0120】
具体的には、
図10に示すような作業範囲設定テーブルを、人型ロボット1A~1Cのそれぞれにおいて記憶させておく。
図10に示した作業範囲設定テーブルでは、各仕事種の作業に対して、作業範囲がそれぞれ設定されている。例えば、「通常把持」という仕事種の作業は作業範囲が「小」つまり狭いと設定され、「塗装」という仕事種の作業は作業範囲が「大」つまり広いと設定されている。
【0121】
そして、制御部142は、搭載されている人型ロボット1において実行しようとする作業の仕事種の作業範囲と、隣接する人型ロボット1において実行中、又は実行しようとする作業の仕事種類の仕事範囲がともに「大」の場合には、その2つの作業は隣接する人型ロボット1において実行できない作業であると判定する。
【0122】
または、隣接する2台の人型ロボット1が同時に実行することができない仕事種の組み合わせを、化学反応を伴う安全上の理由に基づいて設定するようにしてもよい。
【0123】
例えば、
図11に示すような、隣接作業禁止テーブルを、人型ロボット1A~1Cのそれぞれにおいて記憶させておく。
図11に示した隣接作業禁止テーブルでは、「塗装」という仕事種の作業と、「溶接」という仕事種の作業とは、隣接する2台の人型ロボット1が同時に実行することができない仕事種の組み合せとして登録されている。
【0124】
このように、本実施形態のロボット制御システムでは、隣接する2台の人型ロボット1が同時に実行することができない仕事種の組み合わせの情報である作業範囲設定テーブルや、隣接作業禁止テーブルが、複数の人型ロボット1A~1Cのそれぞれにおいて記憶されている。
【0125】
そして、制御部142は、判定部141により判定された仕事種が、情報取得部140により取得された隣接する他の人型ロボット1の作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、判定部141により判定された仕事種以外の仕事種の作業を対象物に対して実行するように制御する。
【0126】
または、制御部142は、判定部141により判定された仕事種が、情報取得部140により取得された隣接する他の人型ロボット1の作業の仕事種と隣接して実行することができない仕事種であると判定した場合、搭載されている人型ロボット1を現在の位置から移動させることにより、隣接する他の人型ロボット1の作業の仕事種とその人型ロボット1が実行しようとする作業の仕事種とが隣接して実行することができない仕事種の組み合わせとはらないようにするようにしてもよい。
【0127】
なお、複数の人型ロボット1A~1Cにおいて、上記のような制御を行う場合には、例えば既に作業中の作業を優先して、後から開始しようとする作業の実行を行わないようにしたり、人型ロボット1を移動させたりすることにより実現することが可能である。
【0128】
それとは別の方法として、例えば、
図12に示すように複数の人型ロボット1A~1Cの動作を管理するための管理サーバ80を設置するような方法も考えられる。
【0129】
このような方法を用いる場合には、隣接する2台の人型ロボット1が同時に実行することができない仕事種の組み合わせの情報である上記の作業範囲設定テーブルや隣接作業禁止テーブルを、複数の人型ロボット1の動作を管理している管理サーバ80において記憶しておく。
【0130】
そして、管理サーバ80が、隣接する2台の人型ロボット1どうしが同時に実行することができない仕事種の作業をそれぞれ実行しないように複数の人型ロボット1の動作を制御する。
【0131】
ここで、管理サーバ80と、人型ロボット1A~1Cとの間は、上述したようなWi-Fi(登録商標)等の無線LANや、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信回線を介して接続されている。そして、管理サーバ80は、このような無線通信回線を介して、人型ロボット1A~1Cのそれぞれが実行中の作業の仕事種の情報や、これから実行しようとする作業の仕事種の情報を取得する。また、管理サーバ80は、このような無線通信回線を介して、人型ロボット1A~1Cから現在の位置情報、又は、隣接する人型ロボット1の情報を取得する。そして、管理サーバ80は、上記で説明した作業範囲設定テーブルや隣接作業禁止テーブル等の情報に基づいて、人型ロボット1A~1Cが実行する作業を管理することにより、隣接する人型ロボット1間において同時に実行することが禁じられている作業が実行されないように制御する。
【0132】
[第2の実施形態「指の先端部の交換」]
以下に本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記で説明した第1の実施形態と同一の構成部分には、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。
【0133】
本実施形態の特徴は、把持部20の指の先端部を、第1の実施の形態で説明したロボットツールのように、仕事種に応じたルールに変更可能とした点にある。
【0134】
上記第1の実施形態では、ロボットツール21EXが、把持部20全体に代えて腕部5、6に装着されるような構成であった。これに対して、本実施形態では、ロボットツールが、把持部20の一部に代えて腕部5、6に装着されるような構成となっている。
【0135】
具体的には、本実施形態では、把持部であるハンドツール50が、複数の指部を備え、ハンドツール50の一部である指部の先端部が様々な仕事種に対応したロボットツールと交換可能となっている。
【0136】
図13(A)に示されるように、本実施形態におけるハンドツール50は、基本的には、第1の実施形態の把持部20と同様に、荷物100を把持することを主目的としている。
【0137】
このハンドツール50は、各指の第1関節よりも上側の先端部が着脱可能となっている。
図13(A)の状態は、把持という仕事種に対応したロボットツール50A(
図13(B)に示す「指先(finger tip)」)が装着されている。
【0138】
一方、このハンドツール50の各指部は、
図13(B)に示されるように、仕事種に応じた形状のロボットツール50B~50Fに交換可能である。
【0139】
ロボットツール50Bは「ピンセット(tweezer)」であり、薄肉の部材をはさんで掴むときに装着される。ロボットツール50Cは、「スティック(stick)」であり、棒状の部材で部品を押さえるときに装着される。ロボットツール50Dは、「綿棒(cotton swab)」であり、球体形状の綿体で部品の汚れを拭き取ったり、水分を除去したりするときに装着される。ロボットツール50Eは、「カメラ(camera)」であり、部品を撮影(特に接写)するときに装着される。ロボットツール50Fは、「スクリュードライバ(screwdriver)」であり、螺子を締めつけたり、緩めたりするときに装着される。
【0140】
本実施形態におけるよるハンドツール50は、特に、細かい部品(電子部品や精密部品等)の組み立てや分解といった作業に最適である。
【0141】
[情報処理装置14のハードウェア構成例]
図14は、情報処理装置14として機能するコンピュータ1200のハードウェア構成の一例を概略的に示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200を、第1及び第2の実施形態に係る装置の1又は複数の「部」として機能させ、又はコンピュータ1200に、第1及び第2の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、および/又はコンピュータ1200に、第1の実施の形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつか又は全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0142】
第1及び第2の実施形態におけるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、およびグラフィックコントローラ1216を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、記憶装置1224、DVDドライブ、およびICカードドライブのような入出力ユニットを含み、それらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。DVDドライブは、DVD-ROMドライブおよびDVD-RAMドライブ等であってよい。記憶装置1224は、ハードディスクドライブおよびソリッドステートドライブ等であってよい。コンピュータ1200はまた、ROM1230およびキーボードのような入出力ユニットを含み、それらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続されている。
【0143】
CPU1212は、ROM1230およびRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又はそれ自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示されるようにする。
【0144】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。記憶装置1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVDドライブは、プログラム又はデータをDVD-ROM等から読み取り、記憶装置1224に提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/又はプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0145】
ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、および/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをUSBポート、パラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0146】
プログラムは、DVD-ROM又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもある記憶装置1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0147】
例えば、通信がコンピュータ1200および外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、記憶装置1224、DVD-ROM、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0148】
また、CPU1212は、記憶装置1224、DVDドライブ(DVD-ROM)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0149】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本発明の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0150】
上で説明したプログラム又はソフトウエアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0151】
第1及び第2の実施形態におけるフローチャートおよびブロック図におけるブロックは、オペレーションが実行されるプロセスの段階又はオペレーションを実行する役割を持つ装置の「部」を表してよい。特定の段階および「部」が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/又はアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、およびプログラマブルロジックアレイ(PLA)等のような、論理積、論理和、排他的論理和、否定論理積、否定論理和、および他の論理演算、フリップフロップ、レジスタ、並びにメモリエレメントを含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0152】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0153】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0154】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路が、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を生成するために当該コンピュータ可読命令を実行すべく、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路に提供されてよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0155】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0156】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0157】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0158】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0159】
1(1A~1C) 人型ロボット
2 上半身部
3 脚部
4 連結部
5、6 腕部
7、8 車輪
10 制御システム
12 センサ
14 情報処理装置
20(20L、20R) 把持部
21EX(21EXA~21EXC) ロボットツール
22A~22C 指部
26 掌センサ
28 ベルト
50 ハンドツール
50A~50F ロボットツール
80 管理サーバ
100 荷物(対象物)
140 情報取得部
141 判定部
142 制御部
144 情報蓄積部
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1216 グラフィックコントローラ
1218 ディスプレイデバイス
1220 入出力コントローラ
1222 通信インタフェース
1224 記憶装置
1230 ROM
1240 入出力チップ