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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153307
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20241022BHJP
【FI】
C09D11/322
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067114
(22)【出願日】2023-04-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100131587
【弁理士】
【氏名又は名称】飯沼 和人
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
(72)【発明者】
【氏名】森安 員揮
(72)【発明者】
【氏名】植田 恵理
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝明
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD05
4J039AD08
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE06
4J039BC09
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA18
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】樹脂エマルションを含有する、インクジェット印刷用の水性インク組成物であって、その吐出安定性を安定化させること;好ましくは、高速インクジェット印刷やインクジェットによる連続印刷にも適用可能なインクジェット印刷用インク組成物、特に隠ぺい力の高い白色インクジェット印刷用インク組成物を提供すること。
【解決手段】顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有し:水溶性有機溶媒(B)は、分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm31/2以上の25℃(298K)でのSP値を有し;水溶性有機溶媒(B)の含有量は15.0~50.0質量%であり;樹脂エマルション(C)の固形分含有量は0.1~10質量%であり;界面活性剤(D)が、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)とを含み;界面活性剤(D-1)と(D-2)との合計含有量は0.5~2.0質量%であり;かつ界面活性剤(D-1)と(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.1~10.0である、インクジェット印刷用インク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有する、インクジェット印刷用インク組成物であって:
前記水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm31/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99 (cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有し;
前記水溶性有機溶媒(B)の含有量は15.0~50.0質量%であり;
前記樹脂エマルション(C)の固形分含有量は0.1~10.0質量%であり;
前記界面活性剤(D)が、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)とを含み;
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との合計含有量は0.5~2.0質量%であり;かつ
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.1~10.0である、
インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項2】
前記顔料(A)は白色顔料である、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
前記インクジェット印刷用インク組成物に溶解しているアルカリ可溶性樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項4】
前記水溶性有機溶媒(B)は、16.0(cal/cm31/2以下の前記SP値を有する、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項5】
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.5~3.0である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷による印刷層は一般的に薄膜であるため、インクジェット印刷用インク組成物に樹脂微粒子を添加することで、インク塗膜の成膜性を高めたり、乾燥速度を上げて、かつ印刷層の剥がれを抑制したりすることができる。また、インクジェット印刷用インク組成物に樹脂微粒子を添加することで、印刷層の画質の向上なども図られる。
【0003】
しかしながら、樹脂微粒子を含有するインクジェット印刷用インク組成物は、固形分を含有するために、その吐出安定性が低下することがあった。この吐出安定性を改善するための技術がいくつか提案されている(特許文献1及び2)。特許文献1及び2には、樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂のモノマー組成を特定のものとしつつ、有機溶媒を特定のSP値を有する水溶性有機溶媒としたインクジェット印刷用インク組成物が提案されている。
【0004】
また、インクジェット印刷用インク組成物に2種以上の界面活性剤を含有させることで、画像品質を改善することが報告されている(特許文献3~6)。特許文献3には、シリコーン界面活性剤とアセチレングリコール系界面活性剤とを配合した水系インク組成物が開示されており;特許文献4には、シリコーン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを配合したインクが開示されており;特許文献5には、界面活性剤とともに特定の消泡剤を配合したインク組成物が開示されており、それぞれ、高画質な画像を提供するインクジェット印刷用インクであるとしており;特許文献6には、アセチレン系界面活性剤とノニオン性界面活性剤とを配合したインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-180178号公報
【特許文献2】国際公報第2020/218287号
【特許文献3】特開2019-119786号公報
【特許文献4】特開2020-50705号公報
【特許文献5】特開2012-193268号公報
【特許文献6】特許第7210802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、樹脂微粒子等の固形分を含有するインクジェット印刷用インク組成物の吐出安定性を改善する技術が提案されているが、依然として、十分な吐出安定性が得られないことがある。特に、高速のインクジェット印刷をする(インク吐出周波数を高速化する)場合や、インクジェット印刷で連続印刷する場合に吐出安定性が悪化して、ベタ印刷部にスジが発生したり、直線印刷部が蛇行してしまったりすることがあった。
【0007】
また、白色のインクジェット印刷用インク組成物は、印刷下地層を隠ぺいするための印刷塗膜を形成するために用いられることがある。ここで、特に、白色顔料を含む白色のインクジェット印刷用インク組成物を連続印刷したときに、印刷塗膜の隠ぺい率が低下して、下地層が透けてしまうことがあった。
【0008】
そこで本発明は、樹脂エマルションを含有する、インクジェット印刷用の水性インク組成物であって、その吐出安定性を安定化させることを課題とし、また好ましくは、高速のインクジェット印刷やインクジェット印刷による連続印刷にも適用可能なインクジェット印刷用インク組成物、特に隠ぺい力の高い白色のインクジェット印刷用インク組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、以下に示すインクジェット印刷用インク組成物に関する。
[1]顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有する、インクジェット印刷用インク組成物であって:
前記水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm31/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99 (cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有し;
前記水溶性有機溶媒(B)の含有量は15.0~50.0質量%であり;
前記樹脂エマルション(C)の固形分含有量は0.1~10.0質量%であり;
前記界面活性剤(D)が、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)とを含み;
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との合計含有量は0.5~2.0質量%であり;かつ
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.1~10.0である、
インクジェット印刷用インク組成物。
【0010】
また本発明は、好ましい形態として、以下に示すインクジェット印刷用インク組成物に関する。
[2]前記顔料(A)は白色顔料である、前記[1]に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
[3]前記インクジェット印刷用インク組成物に溶解しているアルカリ可溶性樹脂をさらに含む、前記[1]又は[2]に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
[4]前記水溶性有機溶媒(B)は、16.0(cal/cm31/2以下の前記SP値を有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載のインクジェット印刷用インク組成物。
[5]前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.5~3.0である、[1]~[4]のいずれかに記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、必要量の樹脂エマルションなどの固形分を含有しながら、インクジェットによる吐出安定性が安定しており、特に、連続印刷又は高速印刷したときの吐出安定性が安定している。そのため、本発明のインクジェット印刷用インク組成物によれば、高画質の印刷物を作成することができる。好ましくは、本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、白色顔料を含む白色のインクジェット印刷用インク組成物であっても、連続印刷したときに印刷塗膜の隠ぺい率が低下しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.インクジェット印刷用インク組成物の組成]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう)は、顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有し、その他の任意の成分を含んでいてもよい。
【0013】
[1-1.顔料(A)]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物に含まれる顔料(A)は、インク組成物に着色力や隠ぺい力等を付与するために添加される成分であり、白色顔料を含むことが好ましい。白色(ホワイト)顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウム等の白色無機顔料等が挙げられ、二酸化チタンや酸化亜鉛等の遮蔽性の高い白色顔料を用いることが好ましいが、なかでも、高い遮光性が得られる点から二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンとしては、従来からインクジェット用インクに配合されているものを用いることができる。例えば、ルチル型、アナターゼ型等の各種の二酸化チタンを、アルミナ/シリカ(質量比)=100/0~33.3/66.7の表面処理剤で表面被覆処理した、平均粒子径0.21~0.28μm、吸油量が15~33である二酸化チタンでありうる。ここで吸油量は、JIS K 5101に規定されている吸油量である。
【0014】
白色顔料である二酸化チタンなどを含有する白色のインク組成物であると、本発明の効果がより効果的に発揮されることがある。つまり、白色のインク組成物をインクジェット印刷で連続印刷すると、印刷塗膜による下地層の隠ぺい力が低下する(下地層が透けてくる)ことがあるが;本発明の白色のインクジェット印刷用インク組成物は、連続印刷しても隠ぺい力の低下が生じにくい。
【0015】
このように、顔料(A)は白色顔料を含むことが好ましいが、インク組成物は、白色顔料を他の顔料とともに含有してもよい。更には、顔料(A)は白色顔料以外の他の顔料、例えば着色顔料、金属パウダー等であってもよい。このような顔料としては、従来からインク組成物に使用されている、例えば下記の有機及び/又は無機顔料を特に制限なく挙げることができる。
【0016】
他の顔料の例には、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の各種有機顔料、及び各種無機顔料等が挙げられる。
【0017】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられる。
【0018】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
【0019】
シアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等が挙げられる。
【0020】
ブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等が挙げられる。
【0021】
インク組成物における顔料の含有量は、顔料の種類と目的とする着色や遮蔽の程度に応じて異なり、特に限定されないが、インク組成物全体に対して、例えば、1.0~20.0質量%程度であり、好ましくは3.0~15.0質量%程度でありうる。特に、二酸化チタンなどの白色顔料の場合には、3.0~20.0質量%程度であり、好ましくは5.0~15.0質量%程度でありうる。なお、着色されたインク組成物を調製する場合、補色として他の色の顔料や染料を併用したり、他の色のインク組成物を添加したりすることもできる。
【0022】
[1-2.水溶性有機溶媒(B)]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物に含まれる水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有するとともに、所定のSP値を有する。SP値とは、溶解性パラメータ(Solubility Parameter)を意味し、水溶性有機溶媒(B)のSP値は以下の式1で求めることができる。
【0023】
[式1] SP値 (単位:(cal/cm31/2) = {(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2
【0024】
式1において、ΔHは水溶性有機溶媒(B)の蒸発潜熱 (cal/mol) を示し;Rは気体乗数を示し、1.99 (cal/K・mol) であり;Tは温度 (ここでは25℃つまり298Kとする) であり;Mは水溶性有機溶媒(B)の分子量 (g/mol) を示し;Dは水溶性有機溶媒(B)の密度(g/cm3)を示す。式1で示されるSP値の算出は、「Plastics Materials 6th Edition」(J.A. Brydson, Butterworth-Heinemann, 1995)に詳細に説明されている。
【0025】
水溶性有機溶媒(B)は、12.0(cal/cm31/2以上の25℃でのSP値(25℃)を有する。また、水溶性有機溶媒(B)のSP値(25℃)は16.0(cal/cm31/2以下であることが好ましく、14.5(cal/cm31/2以下であることがより好ましい。SP値(25℃)が12.0(cal/cm31/2以上の水溶性有機溶媒を水とともに配合することで、インク組成物中に水溶性有機溶媒が均一に混合しやすくなり;そのため、インク組成物中の固形成分(エマルションを含む)が凝集したりすることを防止し、インク組成物の保存安定性を高める。一方、SP値(25℃)が16.0(cal/cm31/2以下の水溶性有機溶媒は、顔料の分散安定性を維持することができる。
【0026】
水溶性有機溶媒(B)の例には、SP値(25℃)が12.2(cal/cm31/2であるジエチレングリコール;12.6(cal/cm31/2である1,2-プロパンジオール(プロピレングリコールともいう);13.3(cal/cm31/2である1,3-プロパンジオール;14.9(cal/cm31/2であるグリセリン、等が含まれる。
【0027】
インクジェット印刷用インク組成物に含まれる水溶性有機溶媒(B)の含有量は、インク組成物全体に対して15.0質量%以上であり、20.0質量%以上であることが好ましく、25.0質量%以上であることがより好ましく;また、50.0質量%以下であり、45.0質量%以下であることが好ましく、40.0質量%以下であることがより好ましい。また、インクジェット印刷用インク組成物に含まれる水溶性有機溶媒(B)の含有量は、水(E)に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく;また、400質量%以下であることが好ましく、200質量%以下であることがより好ましく、150質量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
インクジェット印刷用インク組成物は、水溶性有機溶媒(B)以外の水溶性有機溶媒を含んでいてもよいが、その含有量は本発明の効果を損なわないように設定されるべきであり、通常は、インクジェット印刷用インク組成物に対して3質量%以下である。
【0029】
[1-3.樹脂エマルション(C)]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物に含まれる樹脂エマルションは、インク組成物において微粒子として分散している樹脂粒子である。前記樹脂エマルションは、水性インクジェット印刷用インク組成物に使用される公知の樹脂エマルションであってよく、アクリル系樹脂エマルション、スチレン-アクリル系樹脂エマルション、ポリエステル系樹脂エマルション、ポリウレタン系樹脂エマルション、ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルション、ポリ塩化ビニル系樹脂エマルション、ポリブタジエン系樹脂エマルション、ポリオレフィン系樹脂エマルション等が挙げられる。インク組成物は、樹脂エマルションを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0030】
樹脂エマルションは、インク組成物の耐擦過性、塗膜乾燥性及び耐ハジキ性を向上させ得る。更に、樹脂エマルションの樹脂は、インク組成物の印刷物の塗膜の乾燥性や基材への密着性を向上させる観点から、20℃以下のガラス転移温度を有することが好ましい。なお、ガラス転移温度は、製造元のカタログ値が参考となるが、これが入手できない場合、示差走査熱量測定(DSC)によって求められ、通常、ガラス転移が起こる温度範囲の中点により算出される。
【0031】
樹脂エマルションの樹脂粒子の体積平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、印刷物の耐擦過性を高め、画質を改善し、インクジェット吐出安定性を高める点から、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく;一方、600nm以下が好ましく、400nm以下であることがより好ましい。
【0032】
樹脂エマルションは市場から入手することも可能であり、例えば、AQUACER531(ビックケミー社、ポリエチレン系樹脂エマルション);ヨドゾールAD173(ヘンケル社、アクリル樹脂エマルション);NeoRez R-966(コベストロ社、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂エマルション);セポルジョンES(住友精化社、ポリエステル系樹脂エマルション);アクリットWEM-031U、WEM-200U、WEM-321、WEM-3000、WEM-202U、WEM-3008、(大成ファインケミカル社、アクリル-ウレタン樹脂エマルション);アクリットUW-550CS、UW-223SX、AKW107、RKW-500(大成ファインケミカル社、アクリル樹脂エマルション);LUBRIJET N240(ルーブリゾール社、アクリル樹脂エマルション);スーパーフレックス150、210、420NS、470、500M、620、650、740、E2000、E4800、R5002(第一工業製薬社、ウレタン樹脂エマルション);ビニブラン1245L(日信化学工業社、酢酸ビニル-アクリル樹脂エマルション);ビニブラン278、701FE35、701FE50、701FE65、700、701、711、737、747(日信化学工業社、塩化ビニル-アクリル樹脂エマルション);ビニブラン2706、2685(日信化学工業社、アクリル樹脂エマルション);ビニブランGV6181(日信化学工業社、酢酸ビニル樹脂エマルション);モビニール743N、6520、6600、6820、7470、7720、(ジャパンコーティングレジン社、アクリル樹脂エマルション);PRIMAL AC-261P、 AC-818(ダウ・ケミカル社、アクリル樹脂粒子エマルション);NeoCryl A1092、A2091、A2092、A639、A655、A662(DSM Coating Resin社、スチレン-アクリル樹脂粒子エマルション);QE-1042、KE-1062(星光PMC社、スチレン-アクリル樹脂粒子エマルション);JE-1056(星光PMC社、アクリル樹脂粒子エマルション);JONCRYL7199、PDX-7630A(BASF社、スチレン-アクリル樹脂エマルション);シャリーヌR170BX(日信化学工業社、シリコーン-アクリル樹脂エマルション);タケラックW-6010(三井化学社、ウレタン樹脂エマルション);エリーテルKA-5071S(ユニチカ社、ポリエステル樹脂エマルション);ポリゾールAP-1350(昭和電工社、アクリル樹脂エマルション)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
インク組成物における樹脂エマルション(C)の含有量は、固形分含量として0.1質量%以上であり、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく;また、10.0質量%以下であり、7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。樹脂エマルション(C)の含有量が一定以上(0.1質量%以上)であると、インク組成物の印刷物の画質が改善し、また耐擦過性が向上する。また、樹脂エマルション(C)の含有量が一定以下(10.0質量%以下)であると、インク組成物の吐出安定性がよくなり、また保存安定性も改善する。
【0034】
[1-4.界面活性剤(D)]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物に含まれる界面活性剤は、2種の界面活性剤であるアセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)とを含む。
【0035】
[1-4―1.アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)]
アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とは、アセチレンアルコール、又はアセチレン結合とグリコールユニットとを併せ持つ化合物であり、以下の構造式1で示されうる。アセチレン結合部位が疎水性部位となり、アルコール部位又はグリコール部位が親水性部位となり、界面活性機能を発現しうる。
【化1】
【0036】
上記構造式1において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~16のアルキル基を示し;Rは水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を示し;Rは炭素数2~6のアルキレン基を示し;mは0~40を示し;Xは水素原子又は下記構造式2で示される基を示す。
【化2】
【0037】
上記構造式2において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~16のアルキル基を示し;Rは水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を示し;Rは炭素数2~6のアルキレン基を示し;nは0~40を示す。
【0038】
アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)は、好ましくは、分子構造の中央にアセチレン結合を有し、左右対称の分子構造をした界面活性剤であり、下記構造式3及び4のいずれかで示されうる。
【化3】
【0039】
上記構造式3及び4において、R~R及びR並びにm及びnは、それぞれ上記式1及び2と同様であるが;mとnの合計は、1以上又は1超であることが好ましく;また、45以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下、より更に好ましくは15以下である。
【0040】
アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)の具体例には、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール等のアセチレン系ジオール、及びそれらのエチレンオキシド付加物が挙げられる。
【0041】
アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)は、市場から入手することも可能であり、商品名:SURFYNOL 104E、SURFYNOL 104H、SURFYNOL 104A、SURFYNOL 104BC、SURFYNOL 104DPM、SURFYNOL 104PA、SURFYNOL 104PG-50、SURFYNOL 420、SURFYNOL 440、SURFYNOL 465、SURFYNOL 485、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020(日信化学工業社)等として入手可能である。例えば、サーフィノール465は、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキサイド付加物である。
【0042】
[1-4-2.アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)]
アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)とは、ポリオキシエチレン鎖とアルキル基とがエーテル結合で結合した化合物であり、「RA-O-(CHCHO)-H」の分子式で示されることができ、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルと称されることもある。アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)における、アルキル基(RA)の炭素数、及びエチレンオキシ鎖の平均付加モル数(d)に制限はないが:例えば、アルキル基(RA)の炭素数は11~15程度であることが好ましく、炭素数が12~13程度であることがより好ましく;また、エチレンオキシ鎖の平均付加モル数(d)が3~15程度であることが好ましく、エチレンオキシ基の平均付加モル数が5~10程度であることがより好ましい。
【0043】
アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)は、7以上のHLB値を有することが好ましく、9以上のHLB値を有することがより好ましい。HLB値とは、グリフィン法によって算出される界面活性剤の親水性と親油性の程度を表す指標であり、HLB値が小さいほど親油性が高く、HLB値が大きいほど親水性が高いことを示す。HLB値が一定以上(7以上)であると、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)のインク組成物中での相溶性が高まる。
【0044】
アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)の例には、商品名エマルゲン705、エマルゲン104、エマルゲン106、エマルゲン707、エマルゲン1108、エマルゲン1118S-70、エマルゲン 1135S-70、エマルゲン1150S-60(花王社);商品名アデカトール LA-675B、アデカトール LA-775(ADEKA社);商品名TRITON(登録商標) HW1000(Dow社);商品名サンノニック SS70(三洋化成社)等が挙げられる。
【0045】
[1-4―3.他の界面活性剤]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、界面活性剤(D-1)及び(D-2)以外の界面活性剤(他の界面活性剤)を含有してもよい。他の界面活性剤の例には、シリコーン系界面活性剤、アルコールアルコキシレート系界面活性剤、アニオン性界面活性剤等が含まれる。好ましくは、アニオン性界面活性剤が含まれる。
【0046】
[1-4―4.界面活性剤の含有量]
本発明のインク組成物に含まれる界面活性剤(D-1)及び(D-2)のそれぞれの含有量は、いずれも0.1質量%~1.0質量%であることが好ましい。また、インク組成物に含まれる界面活性剤(D-1)及び(D-2)の合計量は、0.5質量%以上であり、0.7質量%以上であることが好ましく;一方、2.0質量%以下であり、1.5質量%以下であることが好ましい。界面活性剤(D)の合計含有量(界面活性剤(D-1)及び(D-2)と他の界面活性剤との合計含有量)は、0.5質量%以上であり、0.8質量%以上であることが好ましく;また、3.0質量%以下であり、2.5質量%以下であることが好ましい。界面活性剤(D)の合計含有量が少ないと、インク組成物の表面張力が高くなるため、印刷基材(特に、濡れ性の低い印刷基材)にインク組成物が濡れ広がりにくくなり印刷物の画質が低下しやすくなり、また、インク組成物の印刷における吐出安定性も低下しやすい。
【0047】
インク組成物における界面活性剤(D-1)及び(D-2)の相対含有比率は、インク組成物の吐出安定性(特に、連続印刷したときの吐出安定性)、及び連続印刷したときの隠ぺい力の低下にとって、大きな影響を与えることがある。
【0048】
アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との含有質量比率[(D-1)/(D-2)]は、0.1以上であり、0.2以上であることが好ましく;また、10.0以下であり、5.0以下であることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)は、インク組成物の吐出安定性を高め、隠ぺい力の低下を抑制する傾向がみられるが、界面活性剤(D-1)と(D-2)の比率をより的確に調整すると、連続印刷時の吐出安定性をより改善でき、隠ぺい力を維持しやすくなる。一方で、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)の含有比率が高すぎても、インク組成物の吐出安定性が低下し、更に、印刷物のブロッキングが発生しやすくなることがあるため;含有質量比率[(D-1)/(D-2)]の調整により、ブロッキングを防止することが好ましい。
【0049】
[1-5.水]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は水を含む。インク組成物に対する水の含有量は、40.0質量%以上であることが好ましく、50.0質量%以上であることがより好ましく;また、70.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
[1-6.他の成分]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、任意の他の成分を含むことができ;他の成分の例には、顔料分散剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤が含まれる。
【0051】
特に、インクジェット印刷用インク組成物は顔料分散剤を含むことが好ましい。顔料分散剤は、高分子型顔料分散剤であり、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂は、インク組成物中で溶解されていることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂を溶解させるため、インク組成物は塩基性化合物を含有することができる。
【0052】
アルカリ可溶性樹脂は、通常のインクや塗料の顔料分散用やバインダーとして利用できるアルカリ可溶性樹脂であって、塩基性化合物の存在下で水性媒体中に溶解できるものである。前記アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(-P(=O)(OH))等のアニオン性基を有することが好ましい。
【0053】
アルカリ可溶性樹脂は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の酸価を有することが好ましい。酸価が100mgKOH/gより小さいと樹脂の溶解性が下がるため、保存安定性、連続吐出安定性が低下する場合がある。また、酸価が250mgKOH/gより大きいと、親水性が高くなり過ぎるため、保存安定性、耐擦過性が低下する場合がある。なお、上記の酸価は、アルカリ可溶性樹脂を合成するために用いる単量体の組成に基づいて、アルカリ可溶性樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
【0054】
アルカリ可溶性樹脂は、さらに、主に顔料との吸着性を向上させるための疎水性部分を分子中に有することが好ましい。分子内に導入する疎水性部分としては、例えば、長鎖アルキル基、脂環族、芳香族の環状炭化水素基等の疎水性基が挙げられる。
【0055】
アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐ブロッキング性を向上させる観点から、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐折り曲げ性を向上させる観点から、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
【0056】
アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、アルカリ可溶性樹脂がアクリル系共重合体樹脂の場合、下記のWoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
式: 1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・+ Wx/Tgx
[式中、Tg1~Tgxはアルカリ可溶性樹脂を構成する単量体1 、2 、3 ・・・x のそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1~Wxは単量体1 、2 、3 ・・・x のそれぞれの重合分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、Woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。]
【0057】
アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、アルカリ可溶性樹脂がアクリル系共重合体樹脂以外の場合、熱分析により求めた実測ガラス転移温度である。熱分析の方法としては、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社製Pyris1DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下でガラス転移温度を測定することができる。
【0058】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、水性媒体への溶解性を高める観点から、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましい。
【0059】
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0060】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。このようなアルカリ可溶性樹脂を合成するための材料については、例えば、特開2000-94825号公報に開示されており、該公報に記載されている材料を使用して得られるアクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が利用可能である。さらには、これら以外のその他の材料を用いて得られた樹脂も利用可能である。アルカリ可溶性樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
インクジェット印刷用インク組成物がアルカリ可溶性樹脂を含む場合には、アルカリ可溶性樹脂を溶解させる塩基性化合物を含むことが好ましい。塩基性化合物の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等の有機塩基性化合物等が挙げられる。塩基性化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
本発明の水性インクジェット印刷用インク組成物中の塩基性化合物の割合は、アルカリ可溶性樹脂を媒体中に溶解させる量であればよいが、通常、アルカリ可溶性樹脂の分散安定性を高める観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく;一方、印刷物の耐水性を高める観点から、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
[2.インクジェット印刷用インク組成物の物性・調製]
インクジェット印刷用インク組成物は、23℃において測定される静的表面張力が27mN/m以上33mN/m以下であることが好ましく、最大泡圧法により23℃において測定される動的表面張力が、寿命時間10m秒において33mN/m以上39mN/m以下であることが好ましい。上記の静的表面張力が27mN/m未満又は33mN/m超の場合、メニスカスが不安定となる、あるいはノズル面でインクが供給不足となるため、吐出安定性及び連続吐出安定性が不良となる可能性がある。また、上記の動的表面張力が33mN/m未満又は39mN/m超の場合も同様に、メニスカスが不安定となる、あるいはノズル面でインクが供給不足となるため、吐出安定性及び連続吐出安定性が不良となる可能性がある。
【0064】
インクジェット印刷用インク組成物の粘度は、2.0mPa・s以上であることが好ましく、3.0mPa・s以上であることがより好ましく;また、15.0mPa・s以下であることが好ましく、12.0mPa・s以下であることがより好ましい。粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「RE100L型粘度計」、東機産業社)により測定できる。
【0065】
インクジェット印刷用インク組成物の調製(製造)方法は特に限定されず、上記の成分を順次に、あるいは同時に添加して、混合すればよい。例えば、(1)前記塩基性化合物の存在下にアルカリ可溶性樹脂を水に溶解した水性樹脂ワニスと顔料との混合物を、各種分散機(例えばボールミル、アトライター、ロールミル、サンドミル、アジテーターミル等)を利用して顔料分散液(インクベース)を調製し、さらに残りの材料(水溶性有機溶媒、樹脂エマルション、界面活性剤を含む)を添加して、水性インクジェット印刷用インク組成物を調製する方法;(2)上記(1)と同様に顔料分散液(インクベース)を調製した後、酸析法や再公表特許WO2005/116147号公報に記載のイオン交換手段等により、顔料表面にアルカリ可溶性樹脂を析出させた樹脂被覆顔料を得て、次いで得られた樹脂被覆顔料を塩基性化合物で中和し、各種分散機(高速攪拌装置等)を用いて水に再分散し、さらに残りの材料(水溶性有機溶媒、樹脂エマルション、界面活性剤を含む)を添加して、水性インクジェット印刷用インク組成物を調製する方法、等が挙げられる。
【0066】
[3.インクジェット印刷用インク組成物による印刷]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、インクジェット法によって被印刷物に印刷をするために用いることができる。具体的には、インクジェット印刷用インク組成物を、被印刷物にインクジェット印刷機を用いて印刷(塗工)することができる。インクジェット印刷用インク組成物によるインクジェット印刷方法は、従来公知の条件が適宜採用できるが、例えば、インクジェット印刷用インク組成物をインクカートリッジに収容し、該インクカートリッジをシングルパス方式等のインクジェット記録装置に装着して、ノズルから被印刷物へ噴射することによりインクジェット印刷をする方法が挙げられる。
【0067】
被印刷物に塗工されたインク組成物は乾燥されることによって、被印刷物に印刷層として定着する。乾燥の手段は特に限定されないが、加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法などが知られている。また、乾燥後の膜厚(印刷層の膜厚)が、例えば、1~10μmとなるように、インクジェット印刷用インク組成物を塗工することが好ましい。
【0068】
特に、本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、高速印刷(インク吐出周波数を高速化する)した場合や、連続印刷した場合に、本発明の効果である吐出安定性の維持が効果的に発揮され、高画質な印刷を得ることができる。高速印刷とは、例えば、1分あたり30枚 (A4縦)以上の被印刷物を印刷する印刷速度であり;連続印刷とは、例えば、50枚(A4縦)以上の被印刷物を連続で印刷することである。
【0069】
インクジェット印刷用インク組成物を印刷する被印刷物としては、例えば、アート紙、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙等のコート紙;ポリプロピレンフィルムやポリ塩化ビニルシートのようなプラスチック系基材等の非吸収性印刷媒体;普通紙、オフセット紙等の未コート紙;綿等の布帛等が挙げられる。とくに、本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、非吸収性印刷媒体に好適である。
【0070】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物が白色インク組成物である場合には、被印刷物を下地印刷(「白引き印刷」ともいう)するために用いてもよい。「白引き印刷」とは、被印刷物のうち、所望の色のインク組成物を印刷する部位に、予め白色インク組成物を印刷しておくことを意味し;それにより、下地となる被印刷物を遮蔽し、被印刷部位の色と所望の色とが混色することを防ぐことができる。特に、被印刷物に「淡色のインク組成物」を印刷する場合に、白引き印刷をすることが多い。
【0071】
白色顔料を含む白色インク組成物を、インクジェット印刷で連続印刷すると、印刷塗膜の隠ぺい率が徐々に低下していくことがある。これに対して、本発明の白色インクジェット印刷用インク組成物は、連続印刷しても、印刷塗膜の隠ぺい率の低下がみられない。そのため、上述の通り、本発明の白色インクジェット印刷用インク組成物を白引き印刷に用いることができる。
【0072】
ここで、「隠ぺい率」は、分光硬度計eXact (xRite社)を用いて測定、算出することができる。つまり、印刷物の三刺激値とリファレンスである白色紙の三刺激値とを測定し、下記式2にて算出されうる。
[式2] 隠蔽率(%)=「遮蔽紙上の白ベタ部の三刺激値/上質紙そのものの三刺激値×100」
式2における、「遮蔽紙上の白ベタ部の三刺激値」は、遮蔽紙に白色インクジェット印刷用インク組成物をインクジェットプリンタを用いて、乾燥後の膜厚が約3μmになるように白ベタ印刷して;5箇所で三刺激値を測定して、平均の三刺激値として求める。
【0073】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物(特に、白色インク組成物)は、その印刷塗膜の隠ぺい率が高い上に、連続印刷した場合でも、その隠ぺい率が低下しにくいという特徴を有しうる。
【実施例0074】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が実施例の内容によって限定して解釈されてはならない。表1及び表2に示される各成分の処方量は、質量部である。
【0075】
<A. 白色顔料インクベース(BASE-W)の調製>
まず、ホワイト顔料のインクベース(顔料分散物)を調製した。アルカリ可溶性樹脂は、アクリル酸とステアリルアクリレートとスチレンとの共重合体であるが、水酸化カリウムによって中和されており、酸価180mgKOH/g、ガラス転移温度50℃、重量平均分子量Mw30000であった。上記アルカリ可溶性樹脂の32質量部に水28質量部を加えて混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、二酸化チタン顔料(商品名CR-90、石原産業社製)の40.0質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性白色顔料インクベース (顔料含有率=40質量%)を得た。
【0076】
<B. インクジェット印刷用インク組成物の調製>
上記A. で調製した白色顔料インクベースと、以下に示す成分を用いて、インクジェット印刷用インク組成物を調製した。
【0077】
<B-a. 水溶性有機溶剤>
・プロピレングリコール:SP値12.6 (cal/cm3)1/2
・グリセリン:SP値14.9 (cal/cm3)1/2
・トリプロピレングリコール:SP値11.3 (cal/cm3)1/2
・ブチルカルビトール:SP値9.5 (cal/cm3)1/2
【0078】
<B-b. 樹脂微粒子(樹脂エマルション)>
・AQUACER531(BYK社):ポリエチレン系樹脂
・ヨドゾールAD173(ヘンケル社):アクリル樹脂
・NeoCryl A-1092(コベストロ社):スチレン-アクリル樹脂
・ビニブラン1245L(日信化学工業社):酢酸ビニル-アクリル樹脂
・ビニブラン278(日信化学工業社):塩化ビニル-アクリル樹脂
・ビニブランGV6181(日信化学工業社):酢酸ビニル樹脂
・スーパーフレックス740(第一工業製薬社):ポリエステル系ポリウレタン樹脂
・NeoRez R-966(コベストロ社):ポリエーテル系ポリウレタン樹脂
・スーパーフレックス420NS(第一工業製薬社):ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂
・セポルジョンES(住友精化社):ポリエステル系樹脂
【0079】
<B-c. 界面活性剤>
・SURFYNOL 465(日信化学社):アセチレングリコール系界面活性剤
・オルフィン1004(日信化学社):アセチレングリコール系界面活性剤
・エマルゲン705(花王社):アルコールエトキシレート系界面活性剤
・エマルゲン104(花王社):アルコールエトキシレート系界面活性剤
・パーソフトEF(ADEKA社):アニオン性界面活性剤
【0080】
<B-d. インク組成物の調製手順>
表1及び2に示す処方組成に沿って、各実施例及び比較例のインク組成物を調製した。具体的には、A. で調製した白色顔料インクベースに、水溶性有機溶剤と、樹脂微粒子と、界面活性剤と、水と、を加えて攪拌混合した。表1及び2に示される樹脂微粒子の含有量は、固形分含量を示す。
【0081】
<C. インクジェット印刷用インク組成物の評価>
各実施例及び比較例で得られたインク組成物を、以下の項目について評価した。
【0082】
<C-a. 保存安定性>
各インク組成物をガラス瓶にとり、25℃の粘度を粘度計(東機産業社製 RE100L型)で測定した。その後、密栓し60℃、1ヵ月保存し、保存後の粘度(25℃)を粘度計により同様に測定した。経時安定性を、粘度変化率[(保存後の粘度-保存前の粘度)/保存前の粘度]で評価した。
評価基準
○:粘度変化率が5%未満のもの
△:粘度変化率が5%以上、10%未満のもの
×:粘度変化率が10%以上、30%未満のもの
【0083】
<C-b. 吐出安定性>
各インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、遮蔽紙に印字を行い、吐出安定性を評価した。
評価基準
○:印字の乱れがなく、安定して吐出できるもの
△:多少印字の乱れがあるものの、吐出できるもの
×:印字の乱れがあり、安定して吐出できないもの
【0084】
<C-c. 連続吐出安定性>
各インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、遮蔽紙に15cm×20cmのベタ画像(乾燥後の塗膜厚み3μm)を50枚連続で印刷し、連続吐出安定性を評価した。
評価基準
○:画質が良好で、安定して吐出できるもの
×:スジ等画質の劣化が見られ、安定して吐出できないもの
【0085】
<C-d. 隠ぺい率の維持>
上記の<C-c. 連続吐出安定性>の評価において、1枚目のベタ画像の隠ぺい率(C-1)と50枚目のベタ画像の隠ぺい率(C-50)とを求めた。隠ぺい率(C-1)と(C-50)はそれぞれ、隠蔽率(%) =「遮蔽紙上の白ベタ部の三刺激値/上質紙そのものの三刺激値×100」によって算出した。「遮蔽紙上の白ベタ部の三刺激値」は、5箇所で三刺激値を測定して、平均の三刺激値として求めた。求めた隠ぺい率(C-1)と(C-50)から、以下の基準で隠ぺい率を維持できるかを評価した。
評価基準
○:[(C-50)/(C-1)]が0.9以上1以下のもの
△:[(C-50)/(C-1)]が0.8以上0.9未満のもの
×:[(C-50)/(C-1)]が0.8未満のもの
【0086】
<C-e. 耐擦過性>
上記<C-c>で得た各印刷物を80℃のオーブンで3分間乾燥させたあと、綿棒で印刷面をこすって耐擦過性を評価した。
評価基準
○:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後でも全くかすれなかった
△:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後、綿棒に色が移り、摩擦部分がわずかにかすれた
×:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後、摩擦部分が全て剥がれた
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
表2の比較例1に示されるように、プロピレングリコール(12.6 (cal/cm3)1/2)の含有量が10.0質量%である白色インク組成物は、吐出安定性が悪く、連続印刷したときの隠ぺい率の低下が大きい。一方、表2の比較例2に示されるように、プロピレングリコール(12.6 (cal/cm3)1/2)の含有量が60.0質量%であるインク組成物も、吐出安定性が悪化し、連続印刷したときの隠ぺい率の低下が大きい。また、プロピレングリコールの含有量が18.0質量%である表2の実施例17のインク組成物、及びプロピレングリコールの含有量が48.0質量%である表2の実施例18のインク組成物は、いずれも実用上可能な性能を有しているものの、実施例17では連続吐出安定性と隠ぺい率の維持が若干劣り、実施例18では、保存安定性が若干劣る結果となった。これに対して、プロピレングリコールの含有量が35質量%である実施例では、吐出安定性がよく、隠ぺい率の低下もなかった。
【0090】
表2の比較例3及び4に示されるように、溶剤をトリプロピレングリコール(比較例3)又はブチルカルビトール(比較例4)としたインク組成物は、保存安定性が悪く;ブチルカルビトール(比較例4)としたインク組成物は、吐出安定性が悪化し、連続印刷したときの隠ぺい率の低下が大きい。
【0091】
表2の比較例5に示されるように、樹脂微粒子の固形分含量が0.01質量%であるインク組成物は、印刷物の耐擦過性が十分でなかった。一方、表2の比較例6に示されるように、樹脂微粒子の固形分含量が15質量%であるインク組成物は、保存安定性が悪い上に、吐出安定性が悪化し、連続印刷したときの隠ぺい率の低下が大きい。また、樹脂微粒子の固形分含有量が0.2質量%である表2の実施例19のインク組成物、及び樹脂微粒子の固形分含有量が9.0質量%である表2の実施例20のインク組成物は、いずれも実用上可能な性能を有しているものの、実施例19では耐擦過性が若干劣り、実施例20では吐出安定性と連続吐出安定性が若干劣る結果となった。これに対して、樹脂微粒子の固形分含量が1.0質量%である実施例では、いずれの評価も良好であった。
【0092】
表2の比較例7に示されるように、界面活性剤(D-1)と(D-2)の合計含有量が4質量%であるインク組成物は、保存安定性が悪い上に、吐出安定性(特に、連続印刷したときの吐出安定性)が低下する傾向がみられ、連続印刷したときの隠ぺい率の低下が大きい。一方、表2の比較例8に示されるように、界面活性剤(D-1)と(D-2)の合計量が0.2質量%であるインク組成物は、吐出安定性(特に、連続印刷したときの吐出安定性)が悪化し、連続印刷したときの隠ぺい率の低下が大きい。このように、界面活性剤(D-1)と(D-2)の合計含有量が、吐出安定性と隠ぺい率の低下の抑制に重要であることがわかる。
【0093】
表2の比較例9及び10に示されるように、界面活性剤(D-1)の含有量が、界面活性剤(D-2)の含有量に対して約0.07倍であるインク組成物(比較例9)、及び15倍であるインク組成物(比較例10)は、いずれも連続印刷したときの吐出安定性が悪化し、連続印刷したときの隠ぺい率の低下が大きい。このように、界面活性剤(D-1)と(D-2)の含有比率が、吐出安定性と隠ぺい率の低下の抑制に重要であることがわかる。
【0094】
表1及び表2に示されるように、各実施例のインク組成物は、いずれの評価項目でも十分な評価であった。ただし、実施例12及び13に示されるように、界面活性剤(D-1)の含有量が、界面活性剤(D-2)の含有量に対して約0.1倍であるインク組成物(実施例12)、及び10倍であるインク組成物(実施例13)は、いずれも連続印刷したときの吐出安定性がやや悪化し、連続印刷したときの隠ぺい率の低下傾向がみられた。このように、界面活性剤(D-1)と(D-2)の含有比率が、吐出安定性と隠ぺい率の低下の抑制に重要であることがわかる。
【0095】
また、実施例1と実施例21との対比からわかるように、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)がSURFYNOL465(実施例1)又はオルフィン1004(実施例21)のいずれであっても、十分に良好な評価となった。同様に、実施例1と実施例22との対比からわかるように、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)がエマルゲン705又はエマルゲン104のいずれであっても、十分に良好な評価となった。このように、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)とアルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)とを組み合わせることで、各評価、特に連続印刷したときの吐出安定性や、連続印刷したときの隠ぺい率の低下抑制が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のインク組成物は、インクジェット印刷によって印刷されることができ、耐擦過性が高い印刷物が得られる。しかも、インクジェット印刷における吐出安定性、特に、連続印刷したときの吐出安定性がよいため、インクジェット印刷用インク組成物として幅広い用途に適用可能である。特に、本発明のインク組成物は、白色インク組成物として適しており、連続印刷しても隠ぺい力が低下しない白色インク組成物として、例えば、下地印刷用の白色インクジェット印刷用インク組成物として用いることができる。

【手続補正書】
【提出日】2023-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料である顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有する、インクジェット印刷用インク組成物であって:
前記水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm31/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99 (cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有し;
前記水溶性有機溶媒(B)の含有量は15.0~50.0質量%であり;
前記樹脂エマルション(C)の固形分含有量は0.1~10.0質量%であり;
前記界面活性剤(D)が、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)とを含み;
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との合計含有量は0.5~2.0質量%であり;かつ
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.1~10.0であ
白引き印刷に用いられるインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項2】
前記インクジェット印刷用インク組成物に溶解しているアルカリ可溶性樹脂をさらに含む、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
前記水溶性有機溶媒(B)は、16.0(cal/cm31/2以下の前記SP値を有する、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項4】
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系
界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.5~3.0である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料である顔料(A)、水溶性有機溶媒(B)、樹脂エマルション(C)、界面活性剤(D)、および水(E)を含有する、インクジェット印刷用インク組成物であって:
前記水溶性有機溶媒(B)は、その分子内に2以上の水酸基を有し、かつ12.0(cal/cm31/2以上の、式:「{(ΔH-RT)÷(M÷D)}1/2」(式において、ΔHは蒸発潜熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.99 (cal/K・mol))、Tは温度(K)、Mは分子量(g/mol)、Dは密度(g/cm3)を示す)で算出される25℃(298K)でのSP値を有し;
前記水溶性有機溶媒(B)の含有量は15.0~50.0質量%であり;
前記樹脂エマルション(C)の固形分含有量は0.1~10.0質量%であり;
前記界面活性剤(D)が、アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と、アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)とを含み;
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との合計含有量は0.5~2.0質量%であり;かつ
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.1~10.0であり、
前記インクジェット印刷用インク組成物に溶解しているアルカリ可溶性樹脂をさらに含む、
白引き印刷に用いられるインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項2】
前記水溶性有機溶媒(B)は、16.0(cal/cm31/2以下の前記SP値を有する、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
前記アセチレングリコール系界面活性剤(D-1)と前記アルコールエトキシレート系
界面活性剤(D-2)との質量含有比率[(D-1)/(D-2)]が、0.5~3.0である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。