(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153315
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】コネクタ及び治具
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20241022BHJP
H01R 43/22 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R43/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067128
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 栄輝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 卓也
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩正
【テーマコード(参考)】
5E063
5E087
【Fターム(参考)】
5E063HA08
5E063HB17
5E063HB19
5E063XA02
5E087EE02
5E087EE11
5E087EE12
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG15
5E087MM05
5E087RR04
(57)【要約】
【課題】コネクタの端子間ピッチを狭小化可能にする。
【解決手段】コネクタ1は、複数の端子金具3と、ハウジング2と、を備えている。ハウジング2は、各端子金具3を収容した複数のキャビティ22と、各端子金具3の抜け止めを行う複数のランス23と、を備えている。端子金具3の上壁34には、ランス23が係止する係止孔39が形成されている。端子金具3の下壁35には、ランス23の係止孔39への係止を解除する棒状の治具9を挿入可能な第1の治具挿入孔38が形成されている。ハウジング2には、治具9を挿入可能な第2の治具挿入孔24が形成されている。上からみて、係止孔39、第1の治具挿入孔38、第2の治具挿入孔24が重なって配置されている。治具9を第1の治具挿入孔38及び第2の治具挿入孔24に挿入してランス23を押圧することで係止孔39への係止を解除することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上壁、下壁、及び一対の側壁を有する四角筒状の嵌合部を備えた端子金具と、前記端子金具を収容したハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、前記端子金具を収容したキャビティと、前記端子金具の抜け止めを行う弾性変形可能なランスと、を備え、
前記端子金具の前記上壁には、前記ランスが係止した係止孔が形成されており、
前記端子金具の前記下壁には、前記ランスの前記係止孔への係止を解除する棒状の治具を挿入可能な第1の治具挿入孔が形成されており、
前記ハウジングには、前記治具を挿入可能な第2の治具挿入孔が形成されており、
上からみて、前記係止孔、前記第1の治具挿入孔、及び前記第2の治具挿入孔が重なって配置されている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記係止孔は、前記第1の治具挿入孔及び前記第2の治具挿入孔よりも小さく形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタに用いられる治具であり、
前記第1の治具挿入孔及び前記第2の治具挿入孔に挿入可能かつ前記係止孔に挿入不能な大きさの棒状部と、棒状部の先端面から突出し、前記係止孔に挿入可能な突出部と、を備え、
前記棒状部を前記第1の治具挿入孔及び前記第2の治具挿入孔に挿入して前記突出部で前記ランスを係止解除方向に押圧した状態で、前記棒状部の先端面が前記上壁の内面に当接する
ことを特徴とする治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及び該コネクタの端子金具をハウジングから引き抜く際に用いる治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13,14は、従来のコネクタ500及び該コネクタ500の端子金具514をハウジング510から引き抜く際に用いる治具530を示す図である(特許文献1を参照)。このコネクタ500は、電線517の端末に接続された雌型の端子金具514と、ハウジング510と、を備えている。
【0003】
ハウジング510は、端子金具514を収容したキャビティ513と、端子金具514の抜け止めを行うランス519と、を備えている。ランス519は、前後に延出した片持ち状の基部520と、基部520の自由端からキャビティ513側に突出し、端子金具514に係止した係止突部521と、基部520の側面から幅方向に突出した解除操作部527と、を備えている。また、ハウジング510における解除操作部527の上方には、治具挿入孔528が形成されている。
【0004】
また、コネクタ500は、端子金具514を3つ備えており、キャビティ513、ランス519、治具挿入孔528は、端子金具514毎に設けられている。
【0005】
治具530は、各治具挿入孔528に挿入可能な棒状の挿入部531を3本備えている。
図15に示すように、各挿入部531を各治具挿入孔528に挿入して各解除操作部527を下方に押圧することにより、各ランス519の基部520が下方に弾性変形して係止突起521の端子金具514への係止が解除される。この状態で電線517を引っ張ることで端子金具514をキャビティ513外へ引き抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のコネクタ500においては、各ランス519が基部520の側面から幅方向に突出した解除操作部527を備えているがゆえに、端子間ピッチが大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、コネクタの端子間ピッチを狭小化可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコネクタは、上壁、下壁、及び一対の側壁を有する四角筒状の嵌合部を備えた端子金具と、前記端子金具を収容したハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記端子金具を収容したキャビティと、前記端子金具の抜け止めを行う弾性変形可能なランスと、を備え、前記端子金具の前記上壁には、前記ランスが係止した係止孔が形成されており、前記端子金具の前記下壁には、前記ランスの前記係止孔への係止を解除する棒状の治具を挿入可能な第1の治具挿入孔が形成されており、前記ハウジングには、前記治具を挿入可能な第2の治具挿入孔が形成されており、上からみて、前記係止孔、前記第1の治具挿入孔、及び前記第2の治具挿入孔が重なって配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の治具は、上記コネクタに用いられるものであり、前記係止孔は、前記第1の治具挿入孔及び前記第2の治具挿入孔よりも小さく形成されており、当該治具は、前記第1の治具挿入孔及び前記第2の治具挿入孔に挿入可能かつ前記係止孔に挿入不能な大きさの棒状部と、棒状部の先端面から突出し、前記係止孔に挿入可能な突出部と、を備え、前記棒状部を前記第1の治具挿入孔及び前記第2の治具挿入孔に挿入して前記突出部で前記ランスを係止解除方向に押圧した状態で、前記棒状部の先端面が前記上壁の内面に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コネクタの端子間ピッチを狭小化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコネクタの斜視図である。
【
図7】
図2の端子金具をハウジングから引き抜く際に用いる治具の斜視図である。
【
図8】
図7の治具を用いて端子金具を引き抜く方法を説明する説明図であり、
図2の端子金具及びハウジングの治具挿入孔に治具を挿入した状態を示す図である。
【
図9】
図8の状態から治具でランスを係止解除方向に押圧した状態を示す図である。
【
図10】
図9の状態から端子金具を治具に当たるところまで引き抜いた状態を示す図である。
【
図11】
図10の治具を端子金具及びハウジングの治具挿入孔から抜いた状態を示す図である。
【
図12】
図11の状態から端子金具をさらに引き抜く様子を示す図である。
【
図13】従来のコネクタ及び該コネクタの端子金具をハウジングから引き抜く際に用いる治具を示す断面図である。
【
図15】
図14の治具を用いて端子金具を引き抜く方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態にかかる「コネクタ」及び「治具」について、
図1~12を参照して説明する。
【0014】
図1,2に示すコネクタ1は、電線4の端末に接続された複数の端子金具3と、合成樹脂で構成されたハウジング2と、を備えている。
【0015】
電線4は、芯線41が被覆42で覆われた被覆電線である。電線4の端末においては、被覆42が剥ぎ取られて芯線41が露出している。
図1においては電線4を1本のみ図示しているが、実際には、電線4は端子金具3と同数設けられている。
【0016】
端子金具3は、金属板にプレス加工等が施されて得られたものであり、
図5,6に示すように、板部30と、板部30に連なった一対の芯線圧着片31及び一対の被覆圧着片32と、嵌合部33と、を備えている。板部30には電線4の端末が重ねられており、一対の芯線圧着片31が露出した芯線41に圧着されており、一対の被覆圧着片32が被覆42で覆われた部分に圧着されている。嵌合部33は、相手コネクタの端子が嵌合する部位であり、板部30に連なった上壁34と、上壁34に対向した下壁35と、一対の側壁36,37と、を有する四角筒状に形成されている。
【0017】
上記「上壁34」及び上記「下壁35」の上下の表現は、説明の便宜上のものであり、実際に使用される際の上下と一致している必要はない。本明細書においては、嵌合部33における板部30に連なった壁を上壁34と定義する。
【0018】
端子金具3の上壁34には、後述するランス23が係止した係止孔39が形成されている。端子金具3の下壁35には、後述するランス23の係止孔39への係止を解除する棒状の治具9を挿入可能な第1の治具挿入孔38が形成されている。上から(上壁34側から)みて、係止孔39と第1の治具挿入孔38は重なって配置されている。即ち、係止孔39の直下に第1の治具挿入孔38が配置されている。係止孔39は、第1の治具挿入孔38よりも小さく形成されている。前記「小さく形成されている」とは、少なくとも、嵌合方向の寸法が小さく形成されていればよく、幅方向の寸法は小さく形成されていなくてもよい。
【0019】
ハウジング2は、
図1,3,4に示すように、複数のキャビティ22が横一列に並んで設けられた本体部20と、本体部20の外表面に連なって設けられたロックアーム21と、を備えている。ロックアーム21は、本コネクタ1と相手コネクタとの嵌合状態を維持するための部位である。
【0020】
本体部20は、横一列に並んだ複数のキャビティ22と、各キャビティ22毎に設けられたランス23と、を備えている。
【0021】
キャビティ22は、端子金具3を収容するための空間であり、本体部20の前端(
図2,4の左端)から後端(
図2,4の右端)にかけて貫通形成されている。端子金具3は、本体部20の後端側からキャビティ22に挿入される。
【0022】
なお、本明細書においては、コネクタ1に関して、相手コネクタとの嵌合方向の相手コネクタ側を「前」と定義し、相手コネクタから離れた側を「後」と定義する。また、端子金具3の上壁34が配置された側を「上」と定義し、下壁35が配置された側を「下」と定義する。さらに、端子金具3の側壁36,37の対向方向を「横方向」又は「幅方向」と定義する。
【0023】
ランス23は、キャビティ22に収容された端子金具3の抜け止めを行うものであり、後方から前方に片持ち状に延びた弾性変形可能なアーム部23aと、アーム部23aの自由端側(前側)から下方に突出したランスビーク23bと、を備えている。ランスビーク23bが端子金具3の係止孔39に係止することで、端子金具3が後方に抜けることが規制される。
【0024】
また、端子金具3がキャビティ22に挿入される際、端子金具3の上壁34がランスビーク23bに当たり、アーム部23aが上方に弾性変形する。そして、端子金具3が正規位置まで挿入されると、係止孔39がランスビーク23bの直下に位置付けられ、アーム部23aの弾性変形が元の状態に復帰してランスビーク23bが係止孔39に係止することとなる。
【0025】
また、ハウジング2の本体部20には、治具9を挿入可能な第2の治具挿入孔24が形成されている。
図3に示すように、第2の治具挿入孔24は、各キャビティ22毎に形成されている。
図2に示すように、端子金具3がキャビティ22に収容された状態で、上からみて、係止孔39、第1の治具挿入孔38、及び第2の治具挿入孔24が重なって配置されている。また、係止孔39は、第1の治具挿入孔38及び第2の治具挿入孔24よりも小さく形成されている。
【0026】
続いて、上述したコネクタ1の端子金具3をハウジング2から引き抜く際に用いる治具9、及び治具9を用いて端子金具3を引き抜く方法について説明する。
【0027】
治具9は、
図7に示すように、把持部91と、把持部91から延びた細長い棒状部92と、棒状部92の先端面92aから突出した突出部93と、を備えている。棒状部92は、第1の治具挿入孔38及び第2の治具挿入孔24に挿入可能かつ係止孔39に挿入不能な大きさに形成されている。突出部93は、係止孔39に挿入可能な大きさに形成されている。また、突出部93の先端面92aからの突出長は、上壁34の厚みよりもわずかに大きく形成されている。
【0028】
治具9を用いて端子金具3を引き抜く際は、まず、
図8に示すように棒状部92を第1の治具挿入孔38及び第2の治具挿入孔24に挿入し、
図9に示すように突出部93で直接ランス23を上方に押圧することでランス23の係止孔39への係止を解除する。この際、棒状部92の先端面92aが上壁34の内面に当接することで、上壁34が棒状部92の挿入深さのストッパーになり、必要以上にランス23を撓ませることを防止できる。
【0029】
そして、ランス23の係止孔39への係止を解除した状態で電線4を引っ張ると、
図10に示すようにランスビーク23bと棒状部92先端面92aとの隙間S(
図9参照)に端子金具3の上壁34が入り込み、端子金具3が治具9に当たる。この状態以降は、治具9を第1の治具挿入孔38及び第2の治具挿入孔24から抜いてもランス23の係止孔39への係止を解除した状態を維持できる。
【0030】
次に、
図11に示すように治具9を第1の治具挿入孔38及び第2の治具挿入孔24から抜き、さらに電線4を引っ張って端子金具3をハウジング2から完全に引き抜く。
【0031】
上述したコネクタ1は、上述した治具9を用いることにより、端子金具3をハウジング2から引き抜く際、治具9にて直接ランスビーク23bを操作することができる。よって、従来のコネクタ500(
図13~15参照)のような解除操作部527をランスに設ける必要がなく、その分、端子間ピッチを狭小化することが可能になる。
【0032】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 コネクタ
2 ハウジング
3 端子金具
9 治具
22 キャビティ
23 ランス
24 第2の治具挿入孔
38 第1の治具挿入孔
39 係止孔