(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153317
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】温度センサ組立体
(51)【国際特許分類】
G01K 1/143 20210101AFI20241022BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241022BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20241022BHJP
【FI】
G01K1/143
H01M50/204 401D
H01M50/284
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067130
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松島 知宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太
【テーマコード(参考)】
2F056
5H040
【Fターム(参考)】
2F056CA01
5H040AA01
5H040AS04
5H040AS07
5H040DD26
(57)【要約】
【課題】温度センサを小型化する。
【解決手段】温度センサ7は、車載バッテリのセルの温度検出に用いられるものであり、ケース2に組み付けられてバスバモジュール1を構成する。温度センサ7は、FPC3と、FPC3に表面実装されたチップサーミスタ4と、セル上面9に接触する金属製の受熱部品5と、受熱部品5に組み付けられた弾性部材6と、を備えている。ケース2は、セル上面9と対向する対向壁20と、対向壁20から弾性部材6の板部62に向かって延びた立壁22,23を備えている。弾性部材6は、受熱部品5が適切な圧力でバッテリセルの上面9に接触するように受熱部品5を押し付けるためのものであり、ゴム材で構成されている。弾性部材6は、対向壁20の保持孔21に圧入された圧入係止部61と、受熱部品5との間にFPC3を挟んだ板部62と、中間部63と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサと、前記温度センサを保持した状態で被測温部に取り付けられるケースと、を備え、
前記ケースは、前記被測温部と対向する対向壁を備え、該対向壁に前記温度センサの保持孔が形成され、
前記温度センサは、フレキシブルプリント基板と、前記フレキシブルプリント基板に表面実装されたチップサーミスタと、前記被測温部に接触する金属製の受熱部品と、前記受熱部品に組み付けられた弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記保持孔に圧入された圧入係止部と、前記受熱部品との間に前記フレキシブルプリント基板を挟んだ板部と、前記圧入係止部と前記板部との間の中間部と、を備え、
前記ケースは、前記対向壁から前記板部に向かって延びた立壁を備えている
ことを特徴とする温度センサ組立体。
【請求項2】
前記受熱部品は、前記板部との間に前記フレキシブルプリント基板を挟み、前記被測温部に接触する接触部と、該接触部の外縁部から前記板部側に延びた取付部と、を備え、
前記板部に、前記取付部が圧入された係止孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の温度センサ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載バッテリのセルの温度検出等に用いられる温度センサがケースに組み付けられた温度センサ組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載されるバッテリは、高電圧を得るために複数のバッテリセルが直列に接続されて構成されている。このようなバッテリは、過充電、過放電を防止するために、バッテリセルに温度センサが装着されて温度監視が行われている(特許文献1を参照)。
【0003】
上述した温度センサの一例として、
図9に示すものがある。この温度センサ500は、サーミスタ504が実装されたFPC503と、サーミスタ504を囲み、バッテリセル上面に接触する金属製の受熱部品505と、受熱部品505に組み付けられた樹脂部506と、を備えている。樹脂部506は、バッテリ上面に取り付けられるケースに係止する一対の係止バネ部561を備えている。
【0004】
このような温度センサ500は、前記ケースに係止した一対の係止バネ部561のバネ性によって、適切な圧力で受熱部品505がバッテリセル上面に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記温度センサ500がケースに組み付けられた温度センサ組立体においては、ケースにおける温度センサの搭載スペースを小さくすること、即ち温度センサの小型化が求められており、改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、温度センサを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の温度センサ組立体は、温度センサと、前記温度センサを保持した状態で被測温部に取り付けられるケースと、を備え、前記ケースは、前記被測温部と対向する対向壁を備え、該対向壁に前記温度センサの保持孔が形成され、前記温度センサは、フレキシブルプリント基板と、前記フレキシブルプリント基板に表面実装されたチップサーミスタと、前記被測温部に接触する金属製の受熱部品と、前記受熱部品に組み付けられた弾性部材と、を備え、前記弾性部材は、前記保持孔に圧入された圧入係止部と、前記受熱部品との間に前記フレキシブルプリント基板を挟んだ板部と、前記圧入係止部と前記板部との間の中間部と、を備え、前記ケースは、前記対向壁から前記板部に向かって延びた立壁を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度センサを小型化することができ、ケースにおける温度センサの搭載スペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる温度センサ組立体の斜視図である。
【
図5】
図1の温度センサ組立体の組み立て方法を説明するための図であり、ケースに弾性部材を組み付ける様子を示す図である。
【
図6】
図5のケースに組み付けられた弾性部材に受熱部品を組み付ける様子を示す図である。
【
図7】
図6の弾性部材に受熱部品を組み付ける際のケースの立壁の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態にかかる「温度センサ組立体」について、
図1~7を参照して説明する。
【0012】
図1~4に示す温度センサ7は、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載されるバッテリのセルの温度検出に用いられるものであり、
図2に示すようにバッテリセルの上面(被測温部に相当する)9に設置される。前記バッテリは、複数のバッテリセルが直列に接続されて構成されており、当該バッテリの上面に合成樹脂製のケース2が取り付けられている。
【0013】
ケース2には、複数の温度センサ7や、隣接したバッテリセルの電極同士を接続することで複数のバッテリセルを直列に接続した複数のバスバが取り付けられている。このようにケース2に温度センサ7が組み付けられたものが「温度センサ組立体」である。本例では、ケース2に複数の温度センサ7だけでなく複数のバスバ等が取り付けられているので、これを「バスバモジュール」と呼称し、符号1を付す。即ち、バスバモジュール1は、「温度センサ組立体」に相当する。
【0014】
温度センサ7は、フレキシブルプリント基板(以下、FPCと呼称する)3と、FPC3に表面実装されたチップサーミスタ4と、バッテリセルの上面9に接触する金属製の受熱部品5と、受熱部品5に組み付けられた弾性部材6と、を備えている。
【0015】
FPC3は、柔軟な薄いフィルムに回路が形成された周知のものである。FPC3は、帯状に形成されており、その一端部にチップサーミスタ4が表面実装されている。そして、FPC3の一端部が受熱部品5に接合されている。FPC3の他端部は、バッテリの制御ユニットに接続されている。なお、
図1においては、バッテリの制御ユニット側に延びた(
図1の右側に延びた)FPC3の他端側部分の図示を省略している。
【0016】
受熱部品5は、バッテリセルの上面9に接触する接触部51と、弾性部材6に取り付けられた取付部52と、を備えている。
【0017】
接触部51は、四角枠状に形成されており、弾性部材6の後述の板部62との間にFPC3の一端部を挟んでいる。また、FPC3の一端部は、機械的固定のために接触部51に接合されている。
【0018】
取付部52は、
図2,6に示すように、接触部51の外縁部から弾性部材6の後述の板部62側に延びている。取付部52は、板部62に形成された係止孔65に圧入されている。取付部52の先端部には、係止孔65から抜けないようにするための抜け止め突起52aが形成されている。
【0019】
弾性部材6は、受熱部品5が適切な圧力でバッテリセルの上面9に接触するように受熱部品5を押し付けるためのものである。従来のセル用温度センサは、この押し付けを樹脂スプリングやコイルスプリングを用いて行っていたが、本例の温度センサ7においては小型化のために以下に説明する弾性部材6を用いている。
【0020】
弾性部材6は、本例ではゴム材で構成されている。弾性部材6は、
図2~5に示すように、ケース2の後述の保持孔21に圧入された圧入係止部61と、受熱部品5の接触部51との間にFPC3の一端部を挟んだ板部62と、圧入係止部61と板部62との間の中間部63と、を備えている。
【0021】
圧入係止部61は、保持孔21よりも大きく形成された頭部61a及び基部61cと、保持孔21よりも小さく形成されたくびれ部61bと、を備えている。基部61cは中間部63に繋がっており、くびれ部61bは基部61cの中間部63と反対側に繋がっており、頭部61aはくびれ部61bの基部61cと反対側に繋がっている。圧入係止部61は、頭部61aが弾性変形した状態で保持孔21を通過し、通過後に変形から復帰することで
図2に示すように保持孔21に係止する。
【0022】
板部62は、接触部51の外形よりも大きい矩形板状に形成されている。板部62の一端部には、取付部52が圧入された係止孔65が形成されている。板部62の他端部には、FPC3が通された溝66が形成されている。
【0023】
FPC3の一端部は、
図1,2に示すように、チップサーミスタ4の実装面が接触部51に接触し、裏面が板部62に接触する向きで接触部51と板部62の間に挟まれている。そして、チップサーミスタ4が枠状の接触部51に囲まれて、バッテリセルの上面9に対向している。
【0024】
中間部63は、板部62側を底面とする円錐状の外形に形成されている。
【0025】
このような弾性部材6は、従来のセル用温度センサの樹脂スプリングやコイルスプリングと同等の押し付け機能が備わっており、かつ、温度センサ7の小型化・低背化を実現している。このため、ケース2における温度センサ7の搭載スペースは、従来品よりも高さ方向の寸法(対向壁20とバッテリセル上面9との対向方向の寸法)が小さくなっている。
【0026】
また、弾性部材6には、FPC3のチップサーミスタ4が実装された部位と非接触になるように空洞64が設けられている。本例では、板部62から中間部63にかけて空洞64が設けられている。
【0027】
図8の参考例の温度センサ407は、弾性部材406に空洞64が設けられていない。このような温度センサ407は、常時FPC3と弾性部材406が接触し、チップサーミスタ4が力を受け続けるので、クラックが発生する恐れがある。その点、本例の温度センサ7は、空洞64が設けられているためチップサーミスタ4へ力が加わらず、破損を防ぐことができる。
【0028】
ケース2は、バッテリセルの上面9と対向する対向壁20と、対向壁20から板部62に向かって延びた立壁22,23と、を備えている。
【0029】
対向壁20には、温度センサ7の圧入係止部61が係止する保持孔21が形成されている。保持孔21は、対向壁20を貫通した長方形の孔である。
【0030】
立壁22は、保持孔21の外周にC字状に形成されている。この立壁22は、板部62における空洞64の外周部分と対向している。立壁23は、直線状に形成されている。この立壁23は、板部62における係止孔65よりも外側部分と対向している。
【0031】
図2に示すように、ケース2がバッテリセルの上面9に取り付けられた状態で、立壁22と板部62との間には間隔H2が設けられており、立壁23と板部62との間には間隔H3が設けられている。間隔H2と間隔H3は等しい。また、ケース2がバッテリセルの上面9に取り付けられた状態で、弾性部材6の空洞64における高さ寸法(対向壁20から板部62に向かう方向の寸法)H1は、間隔H2,H3よりも大きく形成されている。
【0032】
続いて、上記バスバモジュール1の組み立て方法の一例を説明する。まず、
図5に示すように、弾性部材6の圧入係止部61をケース2の保持孔21に圧入して、弾性部材6をケース2に組み付ける。次に、
図6に示すように、ケース2に組み付けられた弾性部材6の係止孔65に、FPC3が接合されている受熱部品5の取付部52を圧入して、弾性部材6に受熱部品5を組み付ける。このような手順で複数の温度センサ7をケース2に組み付け、複数のバスバをケース2に組み付けて、バスバモジュール1を組み立てる。
【0033】
また、上述したように弾性部材6に受熱部品5を組み付ける際、弾性部材6は受熱部品5に押されることで弾性変形が生じる。即ち、受熱部品5の組み付け時に弾性部材6の逃げが発生する。逃げが発生すると組み付け辛くなるが、本例では、
図7に示すように、立壁22,23が弾性部材6を支え、立壁22,23の先端面が受け面として作用する。このため、弾性部材6の係止孔65近傍の弾性変形を抑制でき、また、弾性部材6が動くことを抑制でき、取付部52を係止孔65に圧入し易くなる。
【0034】
なお、
図7においては、弾性部材6に力が加えられることで一時的に弾性変形して板部62が立壁22,23に当接しているが、受熱部品5の組み付け後は、弾性変形が復元されて板部62は立壁22,23と間隔をあける。
【0035】
また、バスバモジュール1をバッテリに取り付ける際は、バスバモジュール1をバッテリ上面に押し当てる操作を行うため、弾性部材6が上面側に圧縮される。即ち、弾性部材6が上面9側にストロークする。しかし、弾性部材6には空洞64が設けられているため、弾性部材6はFPC3のチップサーミスタ4が実装された部位に接触しない。想定以上のストロークになった場合は、立壁22,23が板部62に当接することで弾性部材6のそれ以上のストロークが規制される。即ち、上述したように空洞64の高さ寸法H1が立壁22,23と板部62との間隔H2,H3よりも大きく形成されているため、弾性部材6がストロークしてもFPC3の前記部位には接触せず、チップサーミスタ4に力が加わることがない。
【0036】
さらに、バスバモジュール1のバッテリ搭載状態においても、立壁22,23があることで温度センサ7の傾きが規制される。即ち、バスバモジュール1の取り付け後に何らかの外力が加わっても、バスバモジュール1の取り付け時と同様に、立壁22,23によって弾性部材6のストロークが規制され、温度センサ7の傾きが規制される。
【0037】
このように、温度センサ7を備えたバスバモジュール1は、ケース2における温度センサ7の搭載スペースが従来品よりも低くなっている。また、チップサーミスタ4の破損を防ぐ構造として、空洞64及び立壁22,23が採用されている。さらに、立壁22,23は、バスバモジュール1の組み立てを容易にするための構造としても機能する上、組み立て後の温度センサ7の傾きを規制する。
【0038】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 バスバモジュール(温度センサ組立体)
2 ケース
3 フレキシブルプリント基板
4 チップサーミスタ
5 受熱部品
6 弾性部材
7 温度センサ
9 バッテリセルの上面(被測温部)
20 対向壁
22,23 立壁
61 圧入係止部
62 板部
63 中間部
64 空洞