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特開2024-15334(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンおよび(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンの結晶形態および合成方法
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  • 特開-(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンおよび(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンの結晶形態および合成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015334
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンおよび(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンの結晶形態および合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 221/00 20060101AFI20240125BHJP
   C07C 225/20 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C07C221/00
C07C225/20
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208374
(22)【出願日】2023-12-11
(62)【分割の表示】P 2018550320の分割
【原出願日】2017-03-27
(31)【優先権主張番号】62/313,309
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】The United States of America,as represented by the Secretary,Department of Health and Human Services
(71)【出願人】
【識別番号】511298990
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド、ボルチモア
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】モリス パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ザラテ カルロス
(72)【発明者】
【氏名】モアデル ルイン
(72)【発明者】
【氏名】ゴウルド トッド
(72)【発明者】
【氏名】ザノス パノス
(57)【要約】
【課題】本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)および(2S,
6S)-ヒドロキシノルケタミンの遊離塩基形態を合成するための方法を提供する。
【解決手段】ある実施形態において、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK
)の合成は、L-ピログルタミン酸を用いたキラル分割を介して、ラセミノルケタミンか
らキラル分割することによって(R)-ノルケタミンを調製することを含む。本開示はま
た、対応する(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)および(2S,6S)
-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の結晶形態を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものとほぼ等しい単結晶パラメータを特徴とする、(2R,6R)-ヒドロキシ
ノルケタミン塩酸塩の結晶形態。
a=7.35Å アルファ=90°
b=7.49Å ベータ=96.87°
c=11.35Å ガンマ=90°
V=621.02Å
を含む格子寸法、および
空間群=P 1 21 1、結晶系=単斜晶系、1単位格子あたりの分子=1、密度(
計算値)=1.477mg/m
【請求項2】
請求項1に記載の結晶形態であって、x線粉末回折によって判定される検出可能な量の
他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩の結晶形態を含まないこと
を特徴とする結晶形態。
【請求項3】
以下のものとほぼ等しい単結晶パラメータを特徴とする、(2S,6S)-ヒドロキシ
ノルケタミン塩酸塩の結晶形態。
a=7.35Å アルファ=90°
b=7.48Å ベータ=96.87°
c=11.34Å ガンマ=90°
V=619.32Å
を含む格子寸法、および
空間群=P 1 21 1、結晶系=単斜晶系、1単位格子あたりの分子=1、密度(
計算値)=1.481Mg/m
【請求項4】
請求項3に記載の結晶形態であって、x線粉末回折によって判定される検出可能な量の
他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩の結晶形態を含まないこと
を特徴とする結晶形態。
【請求項5】
ノルケタミンをキラル分割するための方法であって、(D)-(R)-ピログルタミン
酸を溶媒中でラセミノルケタミンへ添加し、固体(S)-ノルケタミンD-ピログルタメ
ートを形成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記(S)-ノルケタミンD-ピログルタメートを(
S)-ノルケタミンへ変換することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
ノルケタミンをキラル分割するための方法であって、(L)-(S)-ピログルタミン
酸を溶媒中でラセミノルケタミンへ添加し、固体(R)-ノルケタミンL-ピログルタメ
ートを形成すること、および(R)-ノルケタミンL-ピログルタメートを(R)-ノル
ケタミンへ変換することを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンもしくは(2S,6S)-ヒドロキシノルケ
タミン、またはこれらの塩を製造するための方法であって、
【化1】
式Ia
【化2】
式Ib
式Iaまたは式Ibの化合物を塩基で、次いでトリアルキルシリル塩化物で、次いでペ
ルオキシ化合物で、次いで任意選択で酸またはフッ化物源で処理して、式Iaを処理した
場合は式IIaの化合物または式Ibを処理した場合は式IIbの化合物を得ることであ
って、前記式IIaまたは式IIbの化合物がカルバメート結合を含むことと、
【化3】
式IIa
【化4】
式IIb
および
前記式IIaまたは式IIbの化合物の前記カルバメート結合を開裂して、前記式II
aの化合物の前記カルバメート結合を開裂した場合には(2R,6R)-ヒドロキシノル
ケタミン、または前記式IIbの化合物の前記カルバメート結合を開裂した場合には(2
S,6S)-ヒドロキシノルケタミンを得ることと
【化5】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン
【化6】
(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン;
(式中、RはC~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ベンジル、4-メトキシ
ベンジル、または2-トリメチルシリルエチルである)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、Rが、tert-ブチルであり、前記カルバメート
結合を開裂することが、前記式IIaまたは式IIbの化合物を酸で処理することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記酸が、トリフルオロ酢酸であることを特徴とする
方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンを塩酸で処
理して、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を製造すること、または(2S
,6S)-ヒドロキシノルケタミンを塩酸で処理して、(2S,6S)-ヒドロキシノル
ケタミン塩酸塩を製造することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、前記式Iaまたは式Ibの化合物を処理するために使
用される前記塩基が、強塩基であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記強塩基が、ジイソプロピルアミドリチウム、ヘ
キサメチルジシラザンナトリウム、ヘキサメチルジシラザンカリウム、またはsec-ブ
チルリチウムであり、前記式Iaまたは式Ibの化合物が、0℃未満の温度で、前記強塩
基で処理されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法であって、前記式Iaまたは式Ibの化合物を塩基で処理するこ
とが、前記式Iaまたは式Ibの化合物を、-50℃未満の温度で、ジイソプロピルアミ
ドリチウムで処理することを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項8から14のいずれか1項に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル塩化
物が、トリメチルシリル塩化物、トリエチルシリル塩化物、tert-ブチルジメチルシ
リル塩化物、またはトリイソプロピルシリル塩化物であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル塩化物が、トリメチルシリ
ル塩化物であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項8から16のいずれか1項に記載の方法であって、前記ペルオキシ化合物が、ペ
ルオキシ酸または過酸化物であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記ペルオキシ化合物が、メタ-クロロペルオキシ
安息香酸、ペルオキシ安息香酸、過酢酸、ジメチルジオキシラン、tert-ブチルヒド
ロ過酸化物、または過酸化水素であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項8から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記ペルオキシ化合物で処理
した後に、前記式Iaまたは式Ibの化合物がフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムで
処理されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項8から19のいずれか1項に記載の方法であって、前記ペルオキシ化合物が、メ
タ-クロロペルオキシ安息香酸であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項8から20のいずれか1項に記載の方法であって、(R)-ノルケタミンを(R
C)OもしくはRC-Xと反応させて、式Iaの化合物を生成すること、
または、(S)-ノルケタミンを(RC)OもしくはRC-Xと反応させ
て、式Ibの化合物を生成することによって、前記式Iaまたは式Ibの化合物を生成す
ること(式中、Xはハロゲンである)をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、Rが、tert-ブチルであり、前記式Iaの化
合物を生成することが、(R)-ノルケタミンを(tert-ブチル-OC)Oと反
応させることを含み、前記式Ibの化合物を生成することが、(S)-ノルケタミンを(
tert-ブチル-OC)Oと反応させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項8に記載の方法であって、
【化7】
式Ia
式Iaの化合物を、-50℃未満の温度で、ジイソプロピルアミドリチウムで、次いで
トリメチルシリル塩化物で、次いでメタ-クロロペルオキシ安息香酸で、次いでフッ化テ
トラ-n-ブチルアンモニウムで処理して、式IIaの化合物を得ることと(式中、R
はtert-ブチルである)、
【化8】
式IIa
および
式IIaの前記カルバメート結合を酸で処理することによって開裂して、(2R,6R
)-ヒドロキシノルケタミンを得ることと
【化9】
((2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項8に記載の方法であって、
【化10】
式Ib
前記式Ibの化合物を、-50℃未満の温度で、ジイソプロピルアミドリチウムで、次
いでトリメチルシリル塩化物で、次いでメタ-クロロペルオキシ安息香酸で、次いでフッ
化テトラ-n-ブチルアンモニウムで処理して、式IIbの化合物を得ることと(式中、
はtert-ブチルである)、
【化11】
式IIb
および
式IIbの前記カルバメート結合を酸で処理することによって開裂して、(2S,6S
)-ヒドロキシノルケタミンを得ることと
【化12】
((2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
以下の(2θ)値のうちの少なくとも5個、少なくとも8個、少なくとも10個、また
は少なくとも12個の任意の組合せに特徴的なピークのXRPDスペクトルを示すことを
特徴とする、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの結晶形態。
12.1、13.6、14.1、15.1、15.6、16.9、18.0、19.2
、19.5、20.8、22.1、23.5、24.0、24.3、24.6、24.8
、25.2、26.4、27.0、27.4、27.7、28.1、29.9、30.2
、31.5、31.9、32.4、32.7、33.5、34.7、36.5、37.1
、37.7、38.3、38.7、39.1、および39.6
【請求項26】
実質的に図3に示すようなXRPDスペクトルを示すことを特徴とする、(2R,6R
)-ヒドロキシノルケタミンの結晶形態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンおよび(2S,6S)-ヒドロキ
シノルケタミンの結晶形態および合成方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年3月25日に米国特許商標庁に出願された米国特許仮出願第62
/313,309号の優先権を主張し、すべての利益は米国特許法第119条のもとにこ
の仮出願から獲得され、その仮出願の内容は参照によってその全体を本願に引用して援用
するものとする。
【0003】
(政府支援の記述)
本発明は、国立衛生研究所によって付与された認可番号NH099345号の下に政府
支援を受けたものである。合衆国政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
ヒト用麻酔および獣医用医薬品において現在使用される薬物であるケタミンは、疼痛、
治療抵抗性双極性抑うつ、大抑うつ性障害、および他の抑うつおよび不安関連障害を含む
いくつかの状態の治療に有効であることが臨床研究で示されてきた。
【0005】
しかし、薬物の日常的な使用は、望ましくない中枢神経系(CNS)作用によって妨げ
られる。約30%の患者は、ケタミン治療に応答しない。さらに、ケタミン治療は、薬物
の麻酔特性および乱用の可能性のために、重篤な副作用を伴う。
【0006】
ケタミンの効果発現時間は急速であり、数時間または数分のうちに効果が得られるため
、効果を得るために数週間を要する標準治療の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SS
RI)とは異なり、ケタミン類似体は標準的な抗うつ薬を上回る潜在的な利点を有する。
さらに、ケタミンの抗うつ効果に応答するが、SSRIに応答しない患者が存在する。
【0007】
化合物(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)および(2S,6S)-ヒ
ドロキシノルケタミンは、ケタミンの類似体であり、疼痛、抑うつ、不安症、および関連
障害の治療に有用であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、これらの化合物の実用的で効率的な合成方法、および優れた医薬特性を有
する安定な多形体が必要とされる。本開示はこの必要性を満たし、かつ本明細書において
示す追加の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)および(2S,6S)
-ヒドロキシノルケタミンの遊離塩基形態、ならびに対応する塩酸塩の結晶形態を提供す
る。本開示はまた、(2R,6R)-HNK、(2S,6S)-HNK、(2S,6R)
-HNKおよび(2R、6S)-HNKを生成するための実用的で効率的な方法を提供す
る。本開示は、2R,6R-HNKおよび2S,6S-HNKの結晶形態、対応する塩酸
塩の結晶形態を生成する方法、ならびに2R,6R-HNK塩酸塩を再結晶化する方法を
さらに提供する。
【0010】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンまたはその塩を製造するための方
法、および(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンまたはその塩を製造するための方法
であって、
【化1】
式Ia
【化2】
式Ib
(i)式Iaまたは式Ibの化合物を塩基で、次いでトリアルキルシリル塩化物で、次い
でペルオキシ化合物で、次いで任意選択で酸またはフッ化物源で処理して、式Iaを処理
した場合は式IIaの化合物または式Ibを処理した場合は式IIbの化合物を得ること
であって、式IIaまたは式IIbの化合物が、カルバメート結合を含むことと、
【化3】
式IIa
【化4】
式IIb
および
(ii)式IIaまたは式IIbの化合物のカルバメート結合を開裂して、式IIaの化
合物のカルバメート結合を開裂した場合は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン、ま
たは式IIbの化合物のカルバメート結合を開裂した場合は(2S,6S)-ヒドロキシ
ノルケタミンを得ることと
【化5】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン
【化6】
(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン;
(式中、RはC~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ベンジル、4-メトキシ
ベンジル、または2-トリメチルシリルエチルである)
を含むことを特徴とする方法を含む。Rがt-ブチルのときに、特に好収率が達成さ
れる。キラル出発材料を使用すると鏡像異性体的に純粋な生成物が得られるという利点が
ある。
【0011】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩および(2S,6S)-ヒ
ドロキシノルケタミン塩酸塩の結晶形態を含む。
【0012】
本開示は、以下のものとほぼ等しい単結晶パラメータを特徴とする、(2R,6R)-
ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の結晶形態を含む:
a=7.3549(6)Å アルファ=90°
b=7.4932(5)Å ベータ=96.868(2)°
c=11.3498(8)Å ガンマ=90°
V=621.02(8)Å
を含む格子寸法、および
空間群=P 1 21 1、結晶系=単斜晶系、1単位格子あたりの分子=1、密度(
計算値)=1.477Mg/m。括弧内の番号は、この結晶構造の判定に使用された結
晶に関する下一桁の不確かさを示す。しかし、2R,6R-HNKの結晶化を複数回行っ
たときに、格子寸法における変動性はわずかに高かったが、2R,6R-HNKは依然と
して同じ空間群および系で結晶化された。2R,6R-HNKの結晶形態を単位格子寸法
によって主張するときに、その主張には、同じ空間群および系の、述べられたような単位
格子寸法a、b、およびc+/-0.1Åならびに述べられたような格子体積+/-2Å
を有する2R,6R-HNKのすべての結晶形態が包含される。
【0013】
本開示はまた、以下のものとほぼ等しい単結晶パラメータを特徴とする、(2S,6S
)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の結晶形態を含む:
a=7.3493(8)Å アルファ=90°
b=7.4846(8)Å ベータ=96.866(3)°
c=11.3404(12)Å ガンマ=90°
V=619.32(12)Å
を含む格子寸法、および
空間群=P 1 21 1、結晶系=単斜晶系、1単位格子あたりの分子=1、密度(
計算値)=1.481Mg/m。2S,6S-HNKの結晶形態を単位格子寸法によっ
て主張するときに、その主張には、同じ空間群および系の、述べられたような単位格子寸
法a、b、およびc+/-0.1Åならびに述べられたような格子体積+/-2Åを有
する2S,6S-HNKのすべての結晶形態が包含される。
【0014】
本開示はまた、x線粉末回折によって判定される検出可能な量の他のヒドロキシノルケ
タミンまたはヒドロキシノルケタミン塩の結晶形態を含まない(2R,6R)-ヒドロキ
シノルケタミン塩酸塩の結晶形態およびx線粉末回折によって判定される検出可能な量の
他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩の結晶形態を含まない(2
S,6S)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の結晶形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の単結晶x線構造を示す図である。
図2】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の単結晶x線構造を示す図である。
図3】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩のXPRDスペクトルを示す図である。
図4】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩のDSCおよびTGAを示す図である。DSCプロファイルは、223.0℃で始まりかつ最小となる吸熱を示す。TGA軌跡は、20℃~120℃で約0.02%の重量減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、鏡像異性体的に純粋な2R,6R-HNKおよび鏡像異性体的に純粋な2S
,6S-HNKを生成するための最初に報告される合成方法を提供する。(2R,6R)
-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロキシシクロヘキサノン((2R
,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK))ケタミン代謝産物は構造
【化7】
を有する。
【0017】
(2S,6S)-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロキシシクロヘ
キサノン((2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン(HNK))ケタミン代謝産物は構

【化8】
を有する。
【0018】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン((2R,6R)-HNK)およ
び(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン((2S,6S)-HNK)塩酸塩の純粋な
結晶形態を提供する。化合物(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンおよび(2S,6
S)-ヒドロキシノルケタミンは、ノルケタミンの逆の鏡像異性体から出発すること以外
は、同様の反応順序を使用して合成することができる。純粋なHCl結晶形態を生成する
ための方法の詳細およびこれらの成果を支持する結果は、実施例の項で見出すことができ
る。
【0019】
[専門用語]
本明細書において開示される化合物は、標準的な命名法を使用して述べられる。別途定
義されていない限り、本明細書において使用されるすべての技術および科学用語は、本開
示が属する当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
「a」および「an」という用語は、量の限定を示すものではなく、むしろ言及される
項目の少なくとも1つの存在を示す。「or」という用語は「および/または」を意味す
る。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(inc
luding)」、および「含む(containing)」という用語は、非限定的用
語と解釈される(すなわち、「これらに限定されないが、~がある」を意味する)。値の
範囲の列挙は、本明細書において別途記載のない限り、範囲内に入る各個別の値を個々に
言及する省略方法として役割を果たすことを単に目的とし、各個別の値は、あたかもそれ
が本明細書においてここに列挙されるかのように本明細書に組み込まれるものとする。す
べての範囲の両端は、範囲内に含まれ、独立に組み合わせることができる。すべての本明
細書において述べられる方法は、本明細書において別途記載のない限り、または文脈に明
らかな矛盾がない限り、好適な順序で行うことができる。任意のかつすべての実施例、ま
たは例示的な言語(例えば、「などの」)の使用は、本発明のより詳細な説明を単に意図
し、別途主張されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるど
の言葉も、本明細書において使用される本発明の実施に必須な特許請求されていない要素
を示すものと解釈されるべきではない。別途定義されない限り、本明細書において使用さ
れる技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解され
るものと同じ意味を有する。
【0021】
本明細書において使用される「アルキル」という用語は、1~約24個の炭素原子含む
ことが必須というわけではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-
ブチル、イソブチル、t-ブチル、オクチル、デシルなどの分岐状または非分岐状飽和炭
化水素基ならびにシクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基を典型的には
指す。一般的には、必須というわけではないが、本明細書において、アルキル基は1~約
18個の炭素原子を含んでいてもよく、かつそのような基は、1~約12個の炭素原子を
含んでいてもよい。「低級アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子のアルキル基を
意図する。以下にさらに詳細に述べられるように、「置換アルキル」は、1つ以上の置換
基で置換されたアルキル基を指し、かつ「ヘテロ原子含有アルキル」および「ヘテロアル
キル」という用語は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたアルキル
置換基を指す。「ハロアルキル」は1つ以上のハロゲンで置換されたアルキル基を指す。
別途指示がない限り、「アルキル」および「低級アルキル」という用語には、直鎖状の、
分岐状の、環状の、置換されていない、置換された、かつ/またはヘテロ原子含有のアル
キルまたは低級アルキルがそれぞれ含まれる。
【0022】
「アルコキシ」は、表示された数の炭素原子を有し、酸素橋(-O-)を介して結合さ
れた、上記で定義されたようなアルキル基を示す。アルコキシ基の例としては、メトキシ
、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシなどがある。「ハロアルコキシ」は1つ以
上のハロゲンで置換されたアルコキシ基を指す。
【0023】
「キラル」という用語は、鏡像相手に重ね合わせることができない特性を有する分子を
指す。
【0024】
「カルバメート結合」という用語は、連結基「-O-(CO)-NR-」を指し、カル
バメート結合が「開裂」すると、カルバメート結合の代わりに「RNH-」を有する化合
物が生成する。
【0025】
「立体異性体」は、同一の化学構成を有するが、空間中の原子または基の配置に関して
は異なる化合物である。
【0026】
「ジアステレオマ」は、2つ以上のキラリティ中心を有する立体異性体であり、その分
子は互いの鏡像ではない。ジアステレオマは、異なる物理的特性、例えば、融点、沸点、
スペクトル特性、および反応性を有する。ジアステレオマの混合物は、電気泳動、分割剤
存在下での結晶化、または例えば、キラルHPLCカラムを使用したクロマトグラフィな
どの、高分解能分析手順で分離してもよい。
【0027】
「エナンチオマ」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である化合物の2つの立
体異性体を指す。鏡像異性体の50:50の混合物はラセミ混合物またはラセミ体と称さ
れ、化学反応またはプロセスにおいて立体選択または立体特異性がなかった場合に生じる
ことがある。
【0028】
「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、従来の意味で使用され、クロロ、ブロモ、
フルオロまたはヨード置換基を指す。
【0029】
本明細書において使用される立体化学定義および慣例は一般的に、S.P.パーカー(
Parker),Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Ch
emical Terms(1984)McGraw-Hill Book Compa
ny,New York;およびエリール(Eliel),E.andウィラン(Wil
en),S.,Stereochemistry of Organic Compou
nds(1994)John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkに従
う。多くの有機化合物は、光学的に活性な形態で存在し、すなわち、平面偏光の平面を回
転させる能力を有する。光学活性化合物の記述において、接頭辞DおよびLまたはRおよ
びSを使用し、そのキラル中心の周囲の分子の絶対配置を示す。接頭辞dおよびlまたは
(+)および(-)を用い、化合物による平面偏光の回転の記号を指定し、(-)または
1は化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdが前に付いた化合物は右旋性
である。
【0030】
「ラセミ混合物」または「ラセミ体」は2つの鏡像異性体種の等モル(または50:5
0の)混合物であり、光学活性がない。化学反応またはプロセスにおいて立体選択または
立体特異性がなかった場合に、ラセミ混合物が生じる場合がある。
【0031】
化合物がさまざまな互変異性体で存在する場合、本発明は、特定の互変異性体のいずれ
か1つを限定するものではなく、むしろすべての互変異性体を含む。
【0032】
本開示は、化合物に存在する原子の可能な同位体すべてを有する化合物を含む。同位体
は、同じ原子番号を有するが、質量数が異なる原子を含む。一般的な例として、かつ限定
するものではないが、水素同位体としては、トリチウムおよびジューテリウムがあり、か
つ炭素同位体としては11C、13C、および14Cがある。
【0033】
「患者」は、内科的治療を必要とする任意のヒトまたは非ヒト動物を意味する。内科的
治療としては、疾患または障害などの既存の状態の治療、不安症または抑うつの症状に罹
患する危険性があることが既知の患者の予防的または防止的治療、または診断治療があり
得る。いくつかの実施形態において患者はヒト患者である。
【0034】
本明細書において使用される「ハロゲン化物」は、塩化物、臭化物、またはヨウ化物で
ある。
【0035】
本明細書において使用されるHPLCは、屈折率検出器を利用した高性能液体クロマト
グラフィであり、その方法は実施例の項で述べる。
【0036】
百分率純粋(%純度)は、所望のHPLCピークの面積を、所望のHPLCピークおよ
び各反応不純物のHPLCピークの面積の合計で除し、この被除数に100を乗じて得ら
れる面積百分率を指す。
【0037】
「百分率収率または単離収率(%収率)」は、単離された生成物の重量を単離された生
成物の分子量で除し、反応で使用した出発材料のモル数で除したものである。
【0038】
「反応不純物」は、すべての残留出発材料、残留中間体、および所望の生成物以外のH
PLCで検出される他の生成物を含む、方法に関連する不純物(副生成物)である。FD
Aでは、「方法に関連する不純物」という用語は、製造方法に由来する不純物を述べるた
めに使用される。
【0039】
「立体選択的」は、不所望のエピマ副産物が10%未満となる任意の反応である。
【0040】
「エナンチオ富化」という用語は、化合物が2つ以上の鏡像異性体として存在してもよ
い場合に、鏡像異性体のうちの1つが他のものよりも過剰に存在することを示すために使
用される。例えば、化合物の2つの鏡像異性体が可能である場合、エナンチオ富化試料に
は、50%超の、60%超の、70%超の、75%超の、80%超の、85%超の、90
%超の、95%超の、または99%超の鏡像異性体のうちの1つが含まれていてもよい。
方法が、一方の鏡像異性体の生成がもう一方の鏡像異性体の生成を上回ることを優先する
場合、方法は「エナンチオ富化的」または「エナンチオ選択的」である。同様に、「ジア
ステレオマ富化」という用語は、化合物が2つ以上のジアステレオマとして存在してもよ
い場合に、ジアステレオマのうちの1つが他のものよりも過剰に存在することを示すため
に使用される。例えば、化合物の2つのジアステレオマが可能である場合、ジアステレオ
マ富化試料には、50%超の、60%超の、70%超の、75%超の、80%超の、85
%超の、90%超の、95%超の、または99%超のジアステレオマのうちの1つが含ま
れていてもよい。方法が、一方のジアステレオマの生成がもう一方のジアステレオマの生
成を上回ることを優先する場合、方法は「ジアステレオマ富化的」または「ジアステレオ
選択的」である。
【0041】
特に規定がない限り、原子に対する言及は、その原子の同位体含むことを意味する。例
えば、Hに対する言及は、H、H(すなわち、D)およびH(すなわち、T)を含
むことを意味し、かつCに対する言及は、12Cおよび炭素のすべての同位体(13Cな
どの)を含むことを意味する。
【0042】
「含む(comprising)、」「実質的に~からなる(consisting
essentially of)、」および「からなる(consisting of)
、」という移行句は、現行特許法によるこれらの用語にふさわしい意味を有する。移行句
のうちの1つで主張されるすべての実施形態はまた、他の移行句を使用して主張されても
よい。例えば、移行句として「含む(comprising)」で主張される実施形態に
はまた、「実質的に~からなる(consisting essentially of
)、」または「からなる(consisting of)、」の移行語で主張されてもよ
い実施形態が含まれ、その逆も同じである。
【0043】
[化学的説明]
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン、IUPAC名(2R,6R)-2-アミノ
-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロキシシクロヘキサノンの構造は、
【化9】
である。
【0044】
(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン、IUPAC名(2S,6S)-2-アミノ
-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロキシシクロヘキサノンの構造は、
【化10】
である。
【0045】
本明細書における方法は立体特異的である。これは、(R)-ノルケタミンで合成を開
始した場合、合成が中間体式Iaおよび式IIaを通過し、最終生成物(2R,6R)-
ヒドロキシノルケタミン((2R,6R)-HNK)で完了することを意味する。同様に
、(S)-ノルケタミンで合成を開始した場合、合成が中間体式Ibおよび式IIbを通
過し、最終生成物(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン((2S,6S)-HNK)
で完了する。合成方法の立体特異的性質を以下に示す。
【化11】
【0046】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンもしくは(2S,6S)-ヒドロ
キシノルケタミン、またはこれらの塩を製造するための方法であって、ノルケタミンから
式Iaまたは式Ibの化合物を生成することを含むことを特徴とする方法を提供する
【化12】
式Ia
【化13】
式Ib
(式中、RはC~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ベンジル、4-メトキシ
ベンジル、またはトリメチルシリルエチルである)。特定の実施形態において、Rはt
ert-ブチル基である。(R)-ノルケタミンは、L-ピログルタミン酸(または酒石
酸)を用いたキラル分割を介し、ラセミノルケタミンからキラル分割することによって得
ることができる。
【0047】
(R)-ノルケタミンは、カルバメート形成試薬と反応させて、カルバメート化合物式
Iaを生成することができ、(S)-ノルケタミンは、カルバメート形成試薬と反応させ
て、カルバメート化合物式Ibを生成することができる。その目標は、カルバメートを生
成することであり、そのカルバメートは、その後のいくつかのステップ中にアミンを保護
し、次いで防護がすでに必要とされなくなったときに脱保護することができる。カルバメ
ート試薬は、ジ-tert-ブチルジカルボネートなどのジアルキルジカルボネート、ま
たはメチルクロロホルメート、エチルクロロホルメート、もしくはtert-ブチルクロ
ロホルメートなどのアルキルハロホルメートとすることができる。カルバメート試薬は、
ブロモエチルクロロホルメート、ベンジルクロロホルメート、4-メトキシベンジルクロ
ロホルメート、またはトリメチルシリルエチルクロロホルメートなどの他のクロロホルメ
ートとすることができる。この反応は、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、
もしくは重炭酸ナトリウムなどの炭酸塩塩基、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、もし
くは水酸化カリウムなどの水酸化物塩基、トリメチルアミン、トリメチルアミン、ジイソ
プロピルエチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5-エン(DBN
)、もしくは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)など
のアミン塩基、または前述の組合せを含むさまざまな塩基で、または塩基をまったく用い
ずに行うことができる。トルエン、酢酸エチル、塩化メチレン、水、または上記の組合せ
を含むさまざまな溶媒を使用することができる。
【0048】
ある実施形態において、式Iaまたは式Ibの化合物を生成することは、(R)-ノル
ケタミンを(RC)OもしくはRC-Xと反応させて、式Iaの化合物を
生成すること、または(S)-ノルケタミンを(RC)OもしくはRC-
Xと反応させて、式Ibの化合物を生成すること(式中、Xはハロゲンである)を含む。
【0049】
ある実施形態において、Rはtert-ブチルであり、式Iaの化合物を生成するこ
とが、(R)-ノルケタミンを(tert-ブチル-OC)Oと反応させることを含
み、式Ibの化合物を生成することが、(S)-ノルケタミンを(tert-ブチル-O
C)Oと反応させることを含む。
【0050】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンもしくは(2S,6S)-ヒドロ
キシノルケタミン、またはこれらの塩を製造するための方法であって、式Iaまたは式I
bの化合物を強塩基で、次いでトリアルキルシリル塩化物で、次いでペルオキシ化合物で
、次いで任意選択で酸またはフッ化物源で処理して、式Iaを処理した場合は式IIaの
化合物または式Ibを処理した場合は式IIbの化合物を得ることを含むことを特徴とす
る方法を提供する
【化14】
式IIa
【化15】
式IIb
(式中、RはC~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ベンジル、4-メトキシ
ベンジル、またはトリメチルシリルエチルである)。
【0051】
式IIaまたは式IIbの化合物を塩基で処理して、中間体を生成し、この中間体はシ
リルエノールエーテルであると考えられるが、特徴付けずに次の反応で使用する。いかな
る理論にも拘束されることを望むものではないが、塩基によってアルファプロトンが式I
Iaまたは式IIbの化合物のカルボニルへ移動し、エノレートが生成され、次いでエノ
レートのその酸素原子がトリアルキルシリル塩化物と反応して、シリルエノールエーテル
が生成すると考えられる。
【0052】
本開示は、2R,6R-HNKおよび2S,6S-HNKの結晶形態ならびに対応する
塩酸塩の結晶形態を生成する方法を提供する。
【0053】
本開示はまた、粗製2R,6R-ヒドロキシノルケタミンHClを水に溶解し、次いで
アセトンを一定流速で添加し、それによって精製2R,6R-ヒドロキシノルケタミンH
Clの沈殿が可能になることを用いた、粗製または半粗製2R,6R-ヒドロキシノルケ
タミンHClから再結晶によって2R,6R-ヒドロキシノルケタミンHClを得る方法
を提供する。2R,6R-ヒドロキシノルケタミンは、文献にすでに記載されており、そ
の抗うつ活性で有名である。現在のところ、化合物またはその塩のいずれかの配合剤に関
する再結晶方法は、文献に記載されていない。
【0054】
本開示は、粗製、半粗製、または精製2R,6R-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩から
再結晶した2R,6R-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を提供する。2つの注目すべき問
題が、2R,6R-HNKの形成の後の段階で生じる場合がある。1つ目は微量の副産不
純物の存在であり、これは標準的な方法によって容易に除去することができない。2つ目
は最終的な塩の形成における有機溶媒の「捕捉」である。これらの「捕捉された」溶媒は
、標準的な方法(真空、真空下での加熱等)によって除去することができず、そのため最
終生成物内にわずかな百分率の有機溶媒が生じる。本再結晶方法は、不純物レベルを低下
させ、かつ、最終的な2R,6R-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩生成物内の溶媒レベル
を精密に除去する。したがって本開示は、2R,6R-HNKを精製する方法であって、
2R,6R-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を等質量の水(1g/1g)に溶解すること
を特徴とする方法を提供する。磁気攪拌下で、20体積当量(1グラムあたり20ml)
のアセトンを、1分あたり0.75当量の一定流速で、溶液を攪拌しながら添加する。得
られた懸濁液をさらに1.5時間攪拌し、次いでろ過し、室温で16時間にわたって真空
乾燥し、最終生成物を得る。
【0055】
したがって、本開示の実施形態は、固体、好ましくは結晶質の2R,6R-HNK塩酸
塩を約等質量の水(化合物1g/水1~1.2グラム)に溶解し、溶媒約20倍体積、ま
たは溶媒15~25倍体積、好ましくはアセトンを攪拌しながら一定流速で添加し、懸濁
液を形成し、続いてろ過し、ろ液を形成し、真空乾燥することを含む。特定の実施形態に
おいて、懸濁液は溶媒の添加が完了してから1~4時間、または1~2時間攪拌する。特
定の実施形態において、ろ液は8時間を超えて、12時間を超えて、12~20時間また
は約16時間乾燥させる。
【0056】
本開示は、2,6-HNKのさまざまな鏡像異性体を生成するのに有用な2,6-HN
Kまたは中間体の生成について上記に記載された方法の変形である、追加の合成方法をさ
らに提供する。
【0057】
1つのそのような方法において、2-クロロフェニルシクロペンチルケトンを使用して
、(R)-または(S)-ノルケタミンを生成することができる。本開示は、最初にトシ
ルヒドラジドを形成し、続いて2-クロロベンズアルデヒドと反応させることによって、
2-クロロフェニルシクロペンチルケトン出発材料を生成するためのコスト効率の高い方
法を提供する。この反応をスキーム1に示す。
【化16】
【0058】
本開示はまた、DowTherm Aを使用した公開済みの経路とは対照的に、ジフェ
ニルエーテルを使用して、わずかに低い温度で熱転位を可能にする方法(スキーム2)を
提供する。
【化17】
【0059】
本開示は、ギ酸を使用したRubottom酸化生成物の改良された脱保護を提供する
(スキーム3)。以前の方法は、脱保護を達成するためにフッ化テトラブチルアンモニウ
ムを使用していた。
【化18】
【0060】
本開示はまた、酢酸エチル中の塩酸を使用して、最終的に脱保護する方法を提供する(
スキーム4)。これによって所望のHCl塩が直接形成される。
【化19】
【0061】
本開示はまた、2R,6S-ヒドロキシノルケタミンおよび2S,6R-ヒドロキシノ
ルケタミンの合成を提供する。2R,6S-ヒドロキシノルケタミン化合物は文献におい
て既知であるが、本開示は、時間、収率、および再現性の点で大きく改善された合成経路
を提供する。2R,6S-ヒドロキシノルケタミンは、強制水泳試験において2R,6R
ヒドロキシノルケタミンのもの以上の抗うつ効果を有することが認められているが、2R
,6S-ヒドロキシノルケタミンの安定性に問題がある。経路(スキーム5)は、エナン
チオ純粋な化合物8をトリフレート化し、続いてニトロ安息香酸の陰イオンを用いてアル
コールを反転させることを伴う。次いで、ニトロベンゾエート基を開裂し、BOC基を慎
重に脱保護し、所望の2R,6S-ヒドロキシノルケタミンを得る。この経路はまた、そ
の鏡像異性体にも適用されてきた。
【化20】
【0062】
したがって、本開示は、2R,6S-ヒドロキシノルケタミンを調製する方法であって
、tert-ブチル((1S,3S)-1-(2-クロロフェニル)-3-ヒドロキシ-
2-オキソシクロヘキシル)カルバメート(8)をトリフレート化し、続いてニトロ安息
香酸の陰イオンを用いてアルコールを反転させ、ニトロベンゾエート基を開裂し、BOC
保護基を除去し、2R,6S-HNKを生成することを含むことを特徴とする方法を提供
する。
【0063】
本開示は、2R,6S-HNKを調製する方法であって、(i)エナンチオ純粋なイソ
プロピル((1S,3S)-1-(2-クロロフェニル)-3-ヒドロキシ-2-オキソ
シクロヘキシル)カルバメート8をトリフレート化し、(1S,3S)-3-((ter
t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-クロロフェニル)-2-オキソシクロヘ
キシルトリフルオロメタンスルホネートを形成することを含むことを特徴とする方法を提
供する。いくつかの実施形態においてトリフレート化は、ピリジンの存在下、ジクロロメ
タンなどの非極性溶媒または他の溶媒中で実施される。反応は、例えば、重炭酸ナトリウ
ムを添加することによってクエンチしてもよい。溶媒は、蒸発または他の手段によって除
去し、粗製トリフレート9を形成してもよい。
【0064】
2R,6S-ヒドロキシノルケタミンを調製する方法は、(ii)粗製トリフレートを
DMFまたはNMPなどの他の非プロトン性溶媒に溶解し、続いて4-ニトロ安息香酸、
および炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムなどの弱塩基を添加することをさらに含む。特
定の実施形態において、生成物を水性溶液で抽出し、有機相を蒸発させ、(1S,3R)
-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-クロロフェニル)-2
-オキソシクロヘキシル4-ニトロベンゾエート10を得る。
【0065】
この方法は、(iii)ニトロベンゾエート10をメタノールまたはエタノールなどの
他の好適な溶媒に溶解し、続いて炭酸カリウムまたは他の炭酸塩を添加することによって
ニトロベンゾエート基を開裂し、保護された2R,6S-HNK、11を生成することを
さらに含む。いくつかの実施形態において、保護された2R,6S-HNKを、水溶液お
よび飽和塩化ナトリウムなどの飽和塩水溶液で洗浄する。
【0066】
2R,6S-HNKを調製する方法は、(iv)保護された2R,6S-HNK、11
を、DCMなどの非極性溶媒中で、トリフルオロ酢酸などの酸を添加して徐々に脱保護す
ることをさらに含む。溶媒および酸は、ロータリーエバポレーションなどの蒸発によって
除去してもよい。いくつかの実施形態において、生成物、2R,6S-HNK、12は、
酢酸エチルおよびpH7のリン酸カリウム緩衝液などの中性水溶液に抽出することによっ
て洗浄し、粗製材料とする。精製した材料は、蒸発によって有機相から得てもよい。
【0067】
ステップ(i)~(iv)をまた使用して、((1R,3R)-1-(2-クロロフェ
ニル)-3-ヒドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート8Aの鏡像異性体を
用いて出発することによって、2S,6R-HNKを生成してもよい。
【0068】
さまざまな塩基を使用して、式IIの化合物を提供する反応中に、式Iのカルボニルに
アルファプロトンを移動させることができる。これらの塩基としては、ジイソプロピルア
ミドリチウム、ヘキサメチルジシラザンナトリウム、ヘキサメチルジシラザンカリウム、
またはsec-ブチルリチウムなどのさまざまなアルキルリチウム試薬などの、強塩基が
ある。いくつかの条件下で、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、または重炭
酸ナトリウムなどの炭酸塩塩基、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリ
ウムなど水酸化物塩基、トリメチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルア
ミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5-エン(DBN)、または1,8
-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)などのアミン塩基を含む
弱塩基を使用してもよい。強塩基を使用するときに、プロトンの移動は、25℃未満で、
好ましくは0℃未満で、より好ましくは-50℃未満の温度で行うべきであり、-50℃
~-85℃の範囲とすることができる。弱塩基を使用するときに、温度は-25℃~10
0℃の広範囲としてもよい。式IIaまたは式IIbの化合物は、アルファプロトンをカ
ルボニルへ移動させるのに十分な時間にわたって塩基と攪拌するべきであり、この時間は
、条件および使用する塩基によって5分~24時間とすることができる。このステップに
関する溶媒は、使用する状態下で塩基と明らかに反応しないものとするべきである。強塩
基を使用する場合、好適な溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチ
ル-tert-ブチルエーテルなどがある。弱塩基を使用する場合、テトラヒドロフラン
、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、N
,N-ジメチルホルムアミドなどを含むさまざまな溶媒を使用することができる。
【0069】
ある実施形態において、式Iaまたは式Ibの化合物を強塩基で処理することは、式I
aまたは式Ibの化合物を、-50℃未満の温度でジイソプロピルアミドリチウムで処理
することを含む。
【0070】
アルファプロトンが式Iaまたは式Ibの化合物のカルボニルへ移動した後(または場
合により移動中)に、トリアルキルシリル塩化物が添加され、中間体エノレートと反応し
、シリルエノールエーテルが形成されると考えられる。この反応は、条件によって5分~
24時間の時間で、かつ-78℃~100℃の温度で行ってもよい。いくつかの実施形態
において、トリアルキルシリル塩化物は塩基と同時に添加して、アルファプロトンをカル
ボニルに移動させ、得られたエノレートをトリアルキルシリル塩化物反応と反応させるこ
とを、連続的な方法として行う。トリアルキルシリル塩化物は、トリメチルシリル塩化物
、トリエチルシリル塩化物、tert-ブチルジメチルシリル塩化物、トリイソプロピル
シリル塩化物などとすることができる。
【0071】
ある実施形態において、トリアルキルシリル塩化物はトリメチルシリル塩化物である。
【0072】
一度シリルエノールエーテルを形成し、それをペルオキシ化合物で、次いで任意選択で
酸またはフッ化物源で処理して、式IIaまたは式IIbの化合物を得る。ペルオキシ化
合物は、ペルオキシ安息香酸もしくは過酢酸などのペルオキシ酸、またはジメチルジオキ
シラン、tert-ブチルヒドロ過酸化物、もしくは過酸化水素などの過酸化物とするこ
とができる。ペルオキシ化合物での処理は、さまざまな溶媒中およびさまざまな温度およ
び反応時間で行うことができる。例えば、ペルオキシ化合物での処理は、ジクロロメタン
またはクロロホルム中で、5分間~24時間行うことができ、かつ-30℃~50℃の温
度とすることができる。
【0073】
ある実施形態において、ペルオキシ化合物はメタ-クロロペルオキシ安息香酸である。
【0074】
いくつかの実施形態において、ペルオキシ化合物で処理した後に、酸またはフッ化物源
を添加し、式IIaまたは式IIbの化合物を生成する。いかなる理論にも拘束されるこ
とを望むものではないが、ペルオキシ化合物で処理すると、アルファ-シロキシエポキシ
ドが生じ、酸またはフッ化物源がアルファシロキシエポキシド中のケイ素酸素結合を開裂
し、アルファ-ヒドロキシエポキシドが生成し、次いでそれが開環され、アルファ-ヒド
ロキシケトン生成物式IIaまたは式IIbが得られると考えられる。フッ化物源は、ケ
イ素-酸素結合を切断することができる任意のフッ化物含有試薬とすることができ、フッ
化物源としてはフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化テトラ-n
-ブチルアンモニウム、フッ化水素-ピリジンなどがあり得る。フッ化物源の添加はさま
ざまな溶媒中ならびにさまざまな温度および反応時間で行うことができる。例えば、フッ
化物源での処理は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、またはメチル-tert-
ブチルエーテル中で、5分間~24時間行うことができ、かつ-30℃~50℃の温度と
することができる。いくつかの実施形態において、ケイ素-酸素結合は、酸による処理に
よってなど、フッ化物源を用いずに切断することができ、酸による処理としては、塩酸、
硫酸、酢酸、またはトリフルオロ酢酸などでの処理があり得る。いくつかの実施形態にお
いて、アルファシロキシエポキシドは酸でもフッ化物源でも処理されないが、所望の生成
物は依然として生成される。
【0075】
いくつかの実施形態において、ペルオキシ化合物で処理した後に、式Iaまたは式Ib
の化合物はフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムで処理される。
【0076】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンもしくは(2S,6S)-ヒドロ
キシノルケタミン、またはこれらの塩の製造するための方法であって、式IIaまたは式
IIbのカルバメート結合を開裂して、式IIaのカルバメート結合を開裂した場合は、
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンまたは式IIbのカルバメート結合を開裂した
場合は、(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンを得ることを含むことを特徴とする方
法を提供する
【化21】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン
【化22】
(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン;
(式中、RはC~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ベンジル、4-メトキシ
ベンジル、またはトリメチルシリルエチルである)。
【0077】
カルバメート結合を開裂する方法は、Rの性質による。列挙されたR基のうちの1
つを有する任意のカルバメートは、緩塩基(mild base)によって開裂すること
ができる。Rがtert-ブチルである場合は、次いで酸を使用して、tert-ブチ
ルカルバメート結合を開裂することができる。このステップに関して使用することができ
る酸としては、塩酸、硫酸、およびトリフルオロ酢酸などの酢酸がある。Rが2-ブロ
モエチルまたは2,2,2-トリクロロエチルなどの2-ハロアルキルである場合は、カ
ルバメート結合を亜鉛で処理することによって開裂することができる。Rがベンジルで
ある場合は、カルバメート結合を水素添加することによって開裂することができ、R
4-メトキシベンジルである場合は、次いでカルバメート結合を水素添加または酸化する
ことによって開裂することができ、かつRが2-トリメチルシリルエチルである場合は
、次いでカルバメート結合をフッ化物で処理することによって開裂することができる。こ
れらの処理のいずれかによって生成物の酸塩が生成する場合は、次いで得られた塩を、炭
酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、または重炭酸ナトリウム、水酸化リチウム
、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプ
ロピルエチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5-エン(DBN)
、または1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)などの塩
基を使用して、遊離塩基へ変換することができる。好ましくは、重炭酸ナトリウムなどの
炭酸塩塩基を使用する。次いで、得られた遊離塩基を塩酸で処理して、(2R,6R)-
ヒドロキシノルケタミン塩酸塩または(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を
生成することができる。他の酸を使用して、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンま
たは(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンの他の塩を作製することができる。
【0078】
ある実施形態において、Rはtert-ブチルであり、カルバメート結合を開裂する
ことは、酸で処理することを含む。
【0079】
ある実施形態において、Rはtert-ブチルであり、カルバメート結合を開裂する
ことは、トリフルオロ酢酸で処理することを含む。
【0080】
ある実施形態において、塩酸塩が製造され、その方法は、(2R,6R)-ヒドロキシ
ノルケタミンを塩酸で処理して、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を製造
すること、または(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンを塩酸で処理して、(2S,
6S)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を製造することをさらに含む。
【0081】
ある実施形態において、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン、またはその塩を製
造するための方法は、式Iaの化合物を生成することと、
【化23】
式Ia
式Iaの化合物をジイソプロピルアミドリチウムと-50℃未満で、次いでトリメチル
シリル塩化物で、次いでメタ-クロロペルオキシ安息香酸で、次いでフッ化テトラ-n-
ブチルアンモニウムで処理して、式IIaの化合物を得ることと、
【化24】
式IIa
および
式IIaのカルバメート結合を、酸で処理することによって開裂して、(2R,6R)
-ヒドロキシノルケタミンを得ることと
【化25】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン
(式中、Rはtert-ブチルである)を含む。
【0082】
ある実施形態において、塩酸塩が製造される。
【0083】
ある実施形態において、(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン、またはその塩を製
造するための方法は、式Ibの化合物を生成することと、
【化26】
式Ib
式Ibの化合物をジイソプロピルアミドリチウムと-50℃未満で、次いでトリメチル
シリル塩化物で、次いでメタ-クロロペルオキシ安息香酸で、次いでフッ化テトラ-n-
ブチルアンモニウムで処理して、式IIbの化合物を得ることと、
【化27】
式IIb
および
式IIbのカルバメート結合を、酸で処理することによって開裂して、(2S,6S)
-ヒドロキシノルケタミンを得ることと
【化28】
(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン
(式中、Rはtert-ブチルである)を含む。
【0084】
(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンおよび(2R,6R)-ヒドロキシノルケタ
ミンは、(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンの合成を示す以下のスキーム6の合成
に従って調製する。(2S,6S)-HNKおよび(2R,6R)-HNKの合成の詳細
は、実施例1~8に示す。(2S,6S)-HNK合成経路に示す化合物番号を、実施例
で使用する。
スキーム6
【化29】
【0085】
スキーム7は、6,6-ジジューテロケタミン塩酸塩に関する合成経路を示す。重水素
化の詳細は実施例9に示す。
スキーム7
【化30】
【0086】
ある実施形態において、上記スキーム7で示される(2S,6S)-ヒドロキシノルケ
タミンに関する合成は、ラセミノルケタミン13のキラル分割から始まり、そのキラル分
割によってラセミノルケタミンが、(S)-ノルケタミン14およびその鏡像異性体(R
)-ノルケタミンに分割される。これは、D-酒石酸などのキラル分割剤を使用すること
によって、または、キラルHPLCカラムなどのキラル媒体のクロマトグラフィを含み得
る他の方法によって達成することができる。あるいは、ホモキラルまたはエナンチオ富化
ノルケタミンは、エナンチオ選択的合成方法によって得ることができる。スキーム1の後
続ステップを、(S)-ノルケタミン13に適用し、(2S,6S)-ヒドロキシノルケ
タミン17を最終的に生成することができ、またはそのステップを(R)-ノルケタミン
に適用し、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンを最終的に生成することができる。
【0087】
スキーム6において、(S)-ノルケタミン14を、ジ-tert-ブチル-二炭酸塩
と、炭酸カリウムの存在下、トルエン中、80℃で反応させて、Boc保護化合物15を
生成する。
【0088】
さらにスキーム6において、-78℃のTHF中の化合物15を、ジイソプロピルアミ
ドリチウムおよびトリメチルシリル塩化物で処理して、中間体を生成し、この中間体はエ
ノールエーテル16であると考えられるが、特徴付けずに次の反応で使用する。いかなる
理論にも拘束されることを望むものではないが、ジイソプロピルアミドリチウムによって
アルファプロトンが化合物15のカルボニルへ移動し、エノレートが生成され、次いでエ
ノレートのその酸素原子がトリメチルシリル塩化物と反応して、シリルエノールエーテル
16が生成すると考えられる。
【0089】
アルファプロトンが15のカルボニルへ移動した後に、トリメチルシリル塩化物を添加
し、15から生成したエノレートと反応させる。
【0090】
スキーム6において、一度中間体16を形成し、それをm-ペルオキシ安息香酸(mC
PBA)、次いでフッ化物源で処理して、Boc-保護(2S,6S)-ヒドロキシノル
ケタミンである化合物8を得る。
【0091】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、mCPBAで処理するとアル
ファ-シロキシエポキシドが生じ、フッ化物で処理するとケイ素酸素結合が開裂し、アル
ファ-ヒドロキシエポキシドが生成し、次いでそれを開環し、アルファ-ヒドロキシケト
ン8が得られると考えられる。
【0092】
スキーム6において、化合物8をトリフルオロ酢酸で処理して、Boc基を除去し、そ
うして(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンの2-アミノ基が脱保護される。次いで
、得られた塩を、重炭酸ナトリウムを使用して遊離塩基へ変換する。次いで、得られた遊
離塩基を塩酸で処理して、(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩17を生成す
る。他の酸を使用して、(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンの他の塩を作製するこ
とができる。
【実施例0093】
[一般的な方法]
(化学的方法)
すべての市販されている試薬および溶媒を購入し、さらに精製せずに使用した。すべて
のマイクロ波反応は、磁気攪拌子を備えた密閉マイクロ波用バイアル中で行い、Biot
age Initiator Microwave Synthesizerで加熱した
HNMRおよび13CNMRスペクトルは、Varian 400 MHzまたはV
arian 600 MHz分光器で、CDODまたはCDCl中で、表示されたと
おりに記録した。CDODにおけるスペクトル記録に関しては、化学シフトを、HN
MRスペクトルの参照としてCDOD(3.31MHz)および13CNMRスペクト
ルの参照としてCDOD(49.0MHz)を用いてppmで報告する。あるいはCD
Clにおけるスペクトル記録に関しては、化学シフトを、ジューテロクロロホルムに対
するppmで報告する(HNMRに関しては7.26ppm、13CNMRに関しては
77.23ppm)。カップリング定数(J値)は、ヘルツ(Hz)として報告する。ピ
ーク分裂パターンは、シングレット(s);ダブレット(d);トリプレット(t);カ
ルテット(q);マルチプレット(m)およびセプテット(セプテット)として述べた。
試料は、純度に関しては、Luna C18(3mm×75mm、3μm)逆相カラムを
備えたAgilent 1200系LC/MSで、λ=220nmおよびλ=254nm
におけるUV検出で分析した。移動相は、構成成分Aとして0.05%トリフルオロ酢酸
を含む水、および構成成分Bとして0.025%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル
からなる。直線勾配は、以下のとおりに流速0.8mL/分で流した。0分4%B;7分
100%B;8分100%B。高分解マススペクトル(HRMS)は、Agilent
6210 Time-of-Flight(TOF)LC/MSシステムで記録した。旋
光度は、PerkinElmerモデル341旋光計で10cmセルを使用して、589
nMおよび室温で測定した。
【0094】
キラル分析は、Agilent 1200系HPLCを用いて、分析用キラルパックA
DまたはOJカラム(4.6mm×250mm;5μm)を使用して行った。移動相は、
構成成分Aとして0.1%ジエチルアミンを含むエタノール、および構成成分Bとして0
.1%ジエチルアミンを含むヘキサンからなる。アイソクラチック勾配を0.4mL/分
で60%Aを用いて流した。
【0095】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩および(2S,6S)-ヒドロキシノ
ルケタミンは、米国特許第2014/0296241号にすでに記載されている。本明細
書において開示される合成および結晶形態はまだ記載されていない。
【0096】
<実施例1:(S)-(+)-ノルケタミン(14)のキラル分割>
【化31】
(14)
ラセミノルケタミン(22.7グラム、101mmol)(Cayman Chemi
cals、Ann Arbor、MI、USA、ホン(Hong)、S.C.&ダビソン
(Davisson)、J.N.、J.Pharm.Sci.(1982)71:912
-914に記載されているように調製した)をエタノール1.1Lに溶解した。次いで、
(D)-(R)-(+)-ピログルタミン酸(15.8g、0.5eq.、121mmo
l)を固体のまま添加した。反応物を攪拌し、5分間加熱還流した。加熱すると同時に、
白色懸濁液が形成された。一度懸濁液が還流状態に達したら、それを16時間攪拌しなが
ら室温に冷却した。反応物をろ過し、白色固形物を収集した。次いで、得られた白色固形
物をエタノール0.9Lに再懸濁し、懸濁液を5分間加熱還流した。懸濁液を攪拌しなが
ら2時間にわたって室温に冷却した。固形物をろ過収集し、次いで、エタノール(0.8
L)中に3回目の懸濁をし、5分間加熱還流し、次いで攪拌しながら室温に冷却した。固
形物をろ過し、収集し、真空下で乾燥し、(S)-(+)-ノルケタミンD-ピログルタ
メートを得た。鏡像異性体過剰をキラルHPLCによって測定し、98.3%の鏡像異性
体過剰を得た。(S)-(+)-ノルケタミンD-ピログルタメート塩を、1N水酸化ナ
トリウム水溶液で処理することによって遊離塩基へ変換し、酢酸エチルに抽出し、ロータ
リーエバポレーションによって有機溶媒を除去し、(S)-(+)-ノルケタミンを遊離
塩基(ピログルタメート塩由来)として得た(Chiralpak ADカラム、0.0
1%ジエチルアミンを含むヘキサン中の60%エタノール、1.0mL、室温:5.2分
)[α] 20:(+)-81°(c1.0、HO、D-ピログルタメート塩)。
【0097】
<実施例2:(R)-(-)-ノルケタミン(14A)のキラル分割>
【化32】
(14A)
(R)-(-)-ノルケタミン(14a)を、(D)-(R)-(+)-ピログルタミ
ン酸の代わりに(L)-(S)-(-)-ピログルタミン酸をキラル分割剤として使用し
たことを除いて、(S)-(+)-ノルケタミン(2)と類似の方法で生成した。キラル
HPLC:98%ee.(Chiralpak AD、ヘキサン中の60%エタノール、
1mL/分、室温:6.8分)[α] 20:(-)-75°(c1.0、HO、L-
ピログルタメート塩)。
【0098】
<実施例3:(S)-TERT-ブチル(1-(2-クロロフェニル)-2-オキソシク
ロヘキシル)カルバメート(15)の合成>
【化33】
(15)
トルエン(100mL)中の(S)-(+)-ノルケタミン(14)(1.85g、8
.27mmol)の溶液へ、炭酸カリウム(3.43g、24.8mmol)およびBO
C-無水物(2.71g、12.4mmol)を添加した。反応物を80℃に加熱し、1
6時間攪拌した。次いで、反応物を冷却し、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。有機層
を取り出し、溶媒を真空中で除去し、粗製生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィ(
ヘキサン中の0%~60%酢酸エチル)で精製し、最終生成物(15)を白色固形物とし
て得た。
【0099】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.83 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.42 - 7.28 (m, 2H), 7.28
- 7.13 (m, 1H), 6.59 (s, 1H), 3.83 (d, J = 14.3 Hz, 1H), 2.45 - 2.36 (m, 1H), 2
.36 - 2.25 (m, 1H), 2.04 (ddq, J = 11.5, 5.5, 3.0 Hz, 1H), 1.89 - 1.56 (m, 4H),
1.29 (s, 9H).
【0100】
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 209.0, 153.4, 135.1, 133.7, 131.5, 130.9, 129.2, 1
26.2, 79.0, 67.1, 39.4, 38.4, 30.8, 28.2, 22.3.
【0101】
HRMS (ESI+): 予想値346.1186 [M+Na]+(C17H22ClNO3Na). 実測値346.1180.
[α]D 20: (+)-39.5°(C=1.0, CH2Cl2).
【0102】
<実施例4:(R)-TERT-ブチル(1-(2-クロロフェニル)-2-オキソシク
ロヘキシル)カルバメート(15A)の合成>
【化34】
(15A)
表題化合物を、(S)-(+)-ノルケタミン(14)の代わりに(R)-(-)-ノ
ルケタミン(14A)を利用して、(S)-tert-ブチル(1-(2-クロロフェニ
ル)-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート(15)と類似の方法で調製した。
【0103】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.85 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.34 (dd, J = 8.0, 1.4 Hz
, 2H), 7.30 - 7.21 (m, 1H), 6.61 (s, 1H), 3.84 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 2.47 - 2.37
(m, 1H), 2.38 - 2.29 (m, 1H), 2.09 - 2.02 (m, 1H), 1.86 - 1.62 (m, 4H), 1.31 (s
, 9H).
【0104】
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 209.0, 153.4, 135.0, 133.7, 131.5, 130.8, 129.2, 1
26.2, 79.0, 67.1, 39.4, 38.4, 30.8, 28.2, 22.3.
【0105】
HRMS (ESI+): 予想値346.1186 [M+Na]+(C17H22ClNO3Na). 実測値346.1188.
[α]D 20: (-)-60.7°(c1.0, CH2Cl2).
【0106】
<実施例5:TERT-ブチル((1S,3S)-1-(2-クロロフェニル)-3-ヒ
ドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート(8)の合成>
【化35】
(8)
THF(100mL)中の(S)-tert-ブチル(1-(2-クロロフェニル)-
2-オキソシクロヘキシル)カルバメート15(6.5グラム)の溶液を、窒素雰囲気下
で-78℃に冷却した。リチウムジイソプロピルアミド(THF/ヘプタン/エチルベン
ゼン中2.0M、26mL、2.6eq.)を注射器で添加した。反応物を-78℃で1
時間攪拌し、次いで、室温で5分間加温した。反応物を-78℃に冷却し、クロロトリメ
チルシラン(5.7グラム、2.6eq.)を原液のまま注射器で添加した。反応物を-
78℃で30分間攪拌し、次いで室温で30分にわたって加温した。次いで、反応物を飽
和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ入れることによりクエンチした。酢酸エチルを得られた
混合物へ添加し、有機相を分離し、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去し、
粗製エノールエーテル16を固形物として得、これをさらに精製せずにただちに使用した
。エノールエーテル16(7.8グラム)をジクロロメタン(100mL)に溶解し、窒
素雰囲気下で-15℃(氷-塩化リチウム)に冷却した。次いで、3-クロロペル安息香
酸(5.0グラム、1.1eq.)を固形物のまま添加した。反応物を-15℃で1時間
攪拌し、次いで温度を室温に上げ、さらにジクロロメタン100mLを添加した。反応物
をさらに0.5時間攪拌した。次いで、反応物を、50/50の飽和チオ硫酸ナトリウム
水溶液および飽和重炭酸ナトリウム水溶液の混合物に注ぎ入れることによりクエンチした
。反応物をジクロロメタン中に抽出し、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去
した。次いで、テトラヒドロフラン(100mL)を粗製材料へ添加した。反応物を-5
℃に冷却し、フッ化テトラ-n-ブチルブチルアンモニウム(THF中1.0M、25m
L、1.2eq.)を添加した。反応物を2分間攪拌してから、飽和重炭酸ナトリウム水
溶液へ添加することによりクエンチした。酢酸エチル中に抽出し、続いてロータリーエバ
ポレーションによって溶媒を除去し、粗製最終生成物8を得た。シリカゲルクロマトグラ
フィ(ヘキサン中の0%~70%酢酸エチル)で精製し、精製最終生成物を固形物として
得た。
【0107】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.80 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.34 (ddd, J = 8.8, 7.1,
1.4 Hz, 2H), 7.29 - 7.18 (m, 1H), 6.60 (s, 1H), 4.12 (dd, J = 11.8, 6.7 Hz, 1H),
3.87 (d, J = 14.3 Hz, 1H), 3.38 (s, 1H), 2.36 (ddq, J = 13.1, 6.5, 3.2 Hz, 1H),
1.74 (ddt, J = 7.8, 5.7, 2.8 Hz, 2H), 1.69 - 1.59 (m, 1H), 1.59 - 1.40 (m, 1H),
1.30 (s, 9H).
【0108】
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 209.9, 153.3, 134.1, 133.8, 131.4, 131.0, 129.7, 1
26.3, 79.4, 72.4, 66.7, 40.4, 38.8, 28.2, 19.6.
【0109】
HRMS (ESI+): 予想値362.1135 [M+Na]+(C17H22ClNO4Na). 実測値362.1134.
[α]D 20: (+)-60.7°(c 1.0, CHCl3).
【0110】
<実施例6:TERT-ブチル((1R,3R)-1-(2-クロロフェニル)-3-ヒ
ドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート(8A)の合成>
【化36】
(8A)
表題化合物を、S-鏡像異性体の代わりに(R)-tert-ブチル(1-(2-クロ
ロフェニル)-2-オキソシクロヘキシル)カルバメートを利用して、(tert-ブチ
ル((1S,3S)-1-(2-クロロフェニル)-3-ヒドロキシ-2-オキソシクロ
ヘキシル)カルバメート5と類似の方法で調製した。
【0111】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.80 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.34 (dd, J = 8.5, 6.9 Hz
, 2H), 7.32 - 7.21 (m, 1H), 6.60 (s, 1H), 4.12 (ddd, J = 11.5, 8.9, 6.3 Hz, 1H),
3.92 - 3.83 (m, 1H), 3.37 (d, J = 6.5 Hz, 1H), 2.36 (ddq, J = 13.0, 6.5, 3.2 Hz
, 1H), 1.74 (dq, J = 6.4, 3.2, 2.5 Hz, 2H), 1.63 (dq, J = 16.8, 9.2, 8.2 Hz, 1H)
, 1.59 - 1.40 (m, 1H), 1.30 (s, 9H).
【0112】
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 209.9, 153.3, 134.1, 133.8, 131.4, 131.0, 129.7, 1
26.3, 79.4, 72.4, 66.7, 40.4, 38.8, 28.2, 19.5.
【0113】
HRMS (ESI+): 予想値362.1135 [M+Na]+(C17H22ClNO4Na). 実測値362.1134.
[α]D 20: (-)-63.7°(c1.0, CHCl3).
【0114】
<実施例7:(2S,6S)-(+)-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-
ヒドロキシシクロヘキサノン塩酸塩((2S,6S)-(+)-ヒドロキシノルケタミン
塩酸塩)(17)の合成>
【化37】
(17)
ジクロロメタン(10mL)中のtert-ブチル((1S,3S)-1-(2-クロ
ロフェニル)-3-ヒドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート8(4.85
グラム)の溶液へ、トリフルオロ酢酸(11.0mL、10eq.)を添加した。反応物
を室温で1時間攪拌した。次いで、溶媒およびトリフルオロ酢酸(TFA)をロータリー
エバポレーションによって除去した。得られたTFA塩を水に溶解し、50/50の飽和
重炭酸ナトリウム水溶液および飽和炭酸カリウム水溶液の混合物で洗浄し、酢酸エチル(
2×)で抽出し、遊離塩基を得た。酢酸エチルをロータリーエバポレーションによって除
去した。酢酸エチル(4mL)を添加し、ジオキサン中のHCl(4.0M、6.0mL
)を添加した。白色固形物が析出した。懸濁液を30秒間かき混ぜ、次いで、固形物をろ
過除去し、真空下で乾燥し、所望の最終生成物(17)を得た。
【0115】
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ 7.92 - 7.81 (m, 1H), 7.66 - 7.50 (m, 3H), 4.28 (dd,
J = 11.7, 6.6 Hz, 1H), 3.19 (dd, J = 14.0, 3.0 Hz, 1H), 2.30 (dddd, J = 12.2, 6.
6, 4.1, 2.3 Hz, 1H), 1.80 - 1.70 (m, 2H), 1.68 - 1.52 (m, 2H).
【0116】
13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 206.8, 134.0, 132.1, 131.6, 130.5, 130.0, 128.3, 7
3.0, 67.0, 38.4, 37.1, 18.7.
【0117】
キラルHPLC: 98.3% ee (Chiralpak ADカラム, ヘキサン中60%エタノール, 1.0 mL/分,
rt = 6.0 分.)
【0118】
HRMS (ESI+): 予想値240.0786 [M+H]+(C12H15ClNO2). 実測値240.0782.
[α]D 20: (+)-95°(c 1.0, H2O).
【0119】
<実施例8:(2R,6R)-(-)-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-
ヒドロキシシクロヘキサノン塩酸塩(17A)((2R,6R)-(-)-ヒドロキシノ
ルケタミン塩酸塩)の合成>
【化38】
(17A)
表題化合物を、S,S-鏡像異性体の代わりにtert-ブチル((1R,3R)-1
-(2-クロロフェニル)-3-ヒドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート
(17A)を利用して、(2S,6S)-(+)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩のもの
と類似の方法で調製した。
【0120】
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 7.94 - 7.83 (m, 1H), 7.62 - 7.53 (m, 3H), 4.29 (dd,
J = 11.6, 6.7 Hz, 1H), 3.19 (dd, J = 14.0, 3.0 Hz, 1H), 2.30 (dddd, J = 12.2, 6
.6, 4.1, 2.3 Hz, 1H), 1.99 - 1.82 (m, 2H), 1.82 - 1.56 (m, 2H) ppm.
【0121】
13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 206.8, 134.0, 132.1, 131.6, 130.5, 130.1, 128.3, 7
3.3, 67.0, 38.4, 37.2, 18.7 ppm.
【0122】
キラルHPLC: 98.3% ee (Chiralpak ADカラム, ヘキサン中60%エタノール, 1.0 mL/分,
rt = 7.9 分)
【0123】
HRMS (ESI+): 予想値262.0605 [M+Na]+(C12H14ClNO2Na). 実測値262.0605
[α]D 20: (-)-92°(C=1.0, H2O).
【0124】
<実施例9:6,6-ジジューテロケタミン塩酸塩(19)の合成>
【化39】
(19)
重水酸化ナトリウム(酸化ジューテリウム中30%、3.0mL)を、テトラヒドロフ
ラン(8.0mL)および酸化ジューテリウム(3.0mL)の混合物中のケタミン塩酸
塩のラセミ体(0.80グラム、2.9mmol)の溶液へ添加した。反応物を、密閉さ
れたバイアル中、120℃で2時間マイクロ波照射することによって加熱した。反応物を
冷却し、酢酸エチルで抽出し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を取り出
し、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去し、粗製生成物を得た。逆相液体ク
ロマトグラフィ(0.1%トリフルオロ酢酸を含む、水中の5%~95%アセトニトリル
)で精製して、精製TFA塩を得た。遊離塩基を形成し、TFA塩を飽和重炭酸ナトリウ
ム水溶液で洗浄することによって単離し、酢酸エチルで抽出した。HCl(ジオキサン中
4.0M)を添加することによってHCl塩を形成し、得られた白色固形物をろ過し、表
題化合物を白色固形物として得た。
【0125】
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ7.94-7.88 (m, 1H), 7.66-7.57 (m, 3H), 3.41-3.34 (m,
1H), 2.38 (s, 3H), 2.27-2.20 (m, 1H), 1.93-1.83 (m, 2H), 1.83-1.69 (m, 2H).
【0126】
13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 208.6, 136.1, 134.1, 133.6, 133.5, 129.9, 129.4, 7
3.8, 40.3 (七重線, JC-D = 21 Hz, 1C), 37.6, 31.2, 28.1, 23.0.
【0127】
HRMS (ESI+): 予想値240.1119 [M+H]+, (C13H15D2ClNO). 実測値240.1120
【0128】
<実施例10:(2S,6S)-(+)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩のX線結晶学>
単結晶X線回折研究を、MoKα放射線(λ=0.71073Å)を備えたBruke
r Kappa APEX-IICCD回折計で行った。対象化合物の結晶を、50/5
0ジクロロエタン/メタノール溶液を緩徐蒸発させることによって成長させた。0.22
7×0.215×0.106mmの無色ブロック片を、パラトン油を含むCryoloo
pに取り付けた。窒素ガス流中、100(2)Kで、φおよびωスキャンを使用して、デ
ータを収集した。結晶から検出器の距離は40mmであり、曝露時間は2.0°の走査幅
を使用して1フレーム当たり5秒であった。データ収集は25.00°θに対して100
%完了であった。インデックス、-9≦h≦9、-9≦k≦9、-14≦l≦14を網羅
する合計9466回の反射を収集した。2949回の反射によって、0.0376のR
ntを有し、対称性が独立であることが認められた。インデックス付け(Indexin
g)および単位格子精密化によって、基本的な単斜格子が示された。空間群はP2であ
ることが認められた。データを、Bruker SAINTソフトウェアプログラムを使
用して積分し、SADABSソフトウェアプログラムを使用してスケール補正した(sc
aled)。直接法(SHELXT)による解から、提案された構造と一致する完全な相
モデルを得た。
【0129】
すべての非水素原子を、完全行列最小二乗法(SHELXL-2014)によって異方
性的に精密化した。水素原子に結合しているすべての炭素を、ライディングモデルを使用
して、配置した。これらの位置を、適切なHFIXコマンドを使用して、SHELXL-
2014でこれらの親原子に対して制約した。すべての他の水素原子(H結合)を別のマ
ップに示した。その相対的な位置を、DFIXコマンドを使用して拘束し、これらの熱を
制限せずに精密化した。分子の絶対立体化学を、異常分散によって、パーソンズの方法を
使用し、-0.001のFlackパラメータを用いて確立した。結晶構造の図を図1
示す。結晶学的データは表1~6に要約する。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
<実施例11:(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩のX線結晶学>
単結晶X線回折研究を、MoKα放射線(λ=0.71073Å)を備えたBruke
r Kappa APEX-IICCD回折計で行った。対象化合物の結晶を、イソプロ
パノール溶液を緩徐蒸発させることによって成長させた。0.157×0.131×0.
098mmの無色ブロック片を、パラトン油を含むCryoloopに取り付けた。窒素
ガス流中、100(2)Kで、φおよびωスキャンを使用して、データを収集した。結晶
から検出器の距離は40mmであり、曝露時間は2.0°の走査幅を使用して1フレーム
当たり3秒であった。データ収集は25.00°θに対して100%完了であった。イン
デックス、-9≦h≦9、-9≦k≦9、-14≦l≦14を網羅する合計7618回の
反射を収集した。2927回の反射によって、0.035のRintを有し、対称性が独
立であることが認められた。インデックス付けおよび単位格子精密化によって、基本的な
単斜格子が示された。空間群はP2であることが認められた。データを、Bruker
SAINTソフトウェアプログラムを使用して積分し、SADABSソフトウェアプロ
グラムを使用してスケール補正した。直接法(SHELXT)による解から、提案された
構造と一致する完全な相モデルを得た。
【0138】
すべての非水素原子を、完全行列最小二乗法(SHELXL-2014)によって異方
性的に精密化した。水素原子に結合しているすべての炭素を、ライディングモデルを使用
して、配置した。これらの位置を、適切なHFIXコマンドを使用して、SHELXL-
2014でこれらの親原子に対して制約した。
【0139】
すべての他の水素原子(H結合)を別のマップに示した。その相対的な位置を、DFI
Xコマンドを使用して拘束し、これらの熱を制限せずに精密化した。分子の絶対立体化学
を、異常分散によって、パーソンズの方法を使用し、0.023(32)のFlackパ
ラメータを用いて確立した。結晶構造の図を図2に示す。結晶学的データは、表7~12
に要約する。
【0140】
【表8】
【0141】
【表9】
【0142】
【表10】
【0143】
【表11】
【0144】
【表12】
【0145】
【表13】
【0146】
【表14】
【0147】
<実施例12:(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩のPXRD>
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の粉末x線回折スペクトルを図3に示
す。(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩5~10mgをPXRD試料ホルダ
へ添加した。
【0148】
Rigaku Smart-Lab X線回折システムを、反射Bragg-Bren
tanoジオメトリ(reflection Bragg-Brentano geom
etry)用に設定し、線源にX線ビームを使用した。x線源はCu LongFine
Focus管であり、40kVおよび44maで操作した。その線源は、高角度での狭い
線から低角度での幅広い矩形へ変化する試料での入射ビームプロファイルを提供する。ビ
ーム調整スリットをX線源に使用して、最大ビームサイズが線に沿っても、線に垂直でも
10mm未満になるのが確実になるようにする。Bragg-Brentanoジオメト
リは、受動発散スリットおよび受光スリットによって制御されるパラ集束ジオメトリ(p
ara-focusing geometry)であり、試料自体が光学素子に対する集
束構成要素として作用する。Bragg-Brentanoジオメトリの固有の解像度は
、使用される回折計半径および受光スリット(receiving slits)の幅に
よってある程度制御される。典型的には、Rigaku Smart-Labを操作し、
0.1°2θ未満のピーク幅が得られる。X線ビームの縦方向の発散は、入射ビーム経路
でも回折ビーム経路でも5.0度のソーラスリットによって制御される。粉末試料を、低
バックグラウンドSiホルダ中で軽度の指圧を使用して調製し、試料表面を、平らにかつ
試料ホルダの基準面の高さに維持した。
【0149】
粉末を、試料平面加工工具を用いて徐々に加圧し、試料ホルダを試料自動交換装置に入
れた。各試料を、0.02°2θ有効ステップサイズを用い、1分あたり6°2θの連続
走査を使用して2~40°2θで分析した。
【0150】
実行パラメータ:ソーラ(inc.)5.0度、IHS 10.0mm、SS 1.2
50度、DS 1.250度、ソーラ(rec)5.0度、RS 0.3mm、走査軸シ
ータ/2-シータ、連続モード、開始(度)3.0、停止(度)45.0、ステップ(度
)0.020、速度(度/分)2.5、スピン-yes、電圧(kV)40、電流(mA
)15。スペクトルによって以下の特徴的なピーク(2θ)が実証される。
【0151】
【表15】
【0152】
<実施例13:(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩のTGAおよびDSC>
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩に関する熱重量分析および示差走査熱
量測定プロットを図4に示す。DSCに関しては、(2R,6R)-HNK1~3mgを
TZeroパンに秤量した。TZero蓋をパンの上に置き、徐々に加圧した。次いでパ
ンをDSCに移動して、10℃/分、最大300℃で分析した。HNKを含まないDSC
標準を同じ手順で作製した。TGAに関しては、標準アルミニウムパンを白金TGAパン
に入れ、ブランクの重量を計器から差し引いた。(2R,6R)-HNK1~5mgを、
標準的アルミニウムパンへ添加し、10℃/分、最大300℃で分析した。試料は約12
5℃までに0.02%の重量減少を示した。この重量減少は、残留溶媒におそらく起因し
、材料が無水物であることを示唆する。融解開始は223.017℃で観察された。
【0153】
<実施例14:2-クロロフェニルシクロペンチルケトンの合成>
【化40】
化合物1(4.00kg、21.5mol)をMeOH(40.0L)に溶解する。次
いで化合物1-2(1.90kg、22.6mol、2.00L)を混合物中に滴加した
。添加後、反応混合物を、N雰囲気下、20℃で12時間攪拌した。TLC(PE:E
A=5:1)によって、出発材料が消費されたことが示され、かつ所望の化合物が検出さ
れた。沈殿物量が形成された。反応混合物をろ過し、ろ塊を収集し、次いで乾燥し、化合
物2(5.00kg、19.8mol、収率92.2%)を白色固形物として得た。
【化41】
【0154】
1,4-ジオキサン(40.0L)中の、化合物1-4(1.51kg、10.8mo
l、1.34L)、化合物2(3kg、11.9mol)およびCsCO(5.28
kg、16.2mol)の溶液を、100~110℃で48時間攪拌した。TLC(PE
:EA=5:1)によって、出発材料が消費されたことが示され、かつ所望の化合物が検
出された。反応混合物をろ過し、真空中で濃縮し、残渣を得た。残渣をPE(20L)で
摩砕し、化合物3(2.00kg、粗製物)を赤色油状物として得た。
【0155】
<実施例15:ノルケタミンの調製>
【化42】
化合物4(300g、1.15mmol、HCl)をジフェニル酸化物(3.00L)
に溶解し、混合物を170~185℃で15分間攪拌した。TLC(PE:EA=1:1
、出発材料:R=0.6、生成物:R=0.5)によって、出発材料が消費されたこ
とが示され、かつ1つの新規のスポットが検出された。反応混合物を25~30℃に冷却
し、水(6L)を添加し、次いでろ過した。ろ液をEtOAc(2L×3)で抽出した。
水性層をNaCO飽和溶液でpH=8~9に調整し、次いでEtOAc(2L×2)
で抽出し、合わせた有機層を食塩水(1L)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、
ろ液を減圧下で濃縮し、化合物13(1.10kg、収率61.0%)を黄色固形物とし
て得た。
【0156】
<実施例16:TERT-ブチル((1R,3R)-1-(2-クロロフェニル)-3-
ヒドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメートの調製>
【化43】
化合物6(200g、485mmol)をTHF(4.00L)およびHO(200
mL)に溶解し、次いでギ酸(200mL、98%純度)へ添加し、混合物を15℃で1
時間攪拌した。HPLCによって、出発材料が消費されたことが示され、かつ所望の化合
物が検出された。反応混合物を飽和NaCO(2L)および飽和NaHCO(2L
)を添加することによりクエンチし、次いでEtOAc(2L×3)で抽出した。合わせ
た有機層を食塩水(1L)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮し、
残渣を得た。残渣をカラムクロマトグラフィ(SiO、石油エーテル:酢酸エチル=2
0:1~8:1)で精製し、黄色ゴム状物を得た。次いでゴム状物をPE(500mL)
で摩砕し、化合物7(60g、169mmol、収率34.8%)を白色固形物として得
た。
【0157】
<実施例17:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を得るための、酢酸エチル中
での脱保護>
【化44】
化合物7(150g、441mmol)をEtOAc(2.00L)に溶解した。次い
で、HCl/EtOAc(4M、331mL)を混合物へ、N下、15℃で添加した。
添加後、反応混合物を15℃で12時間攪拌した。沈殿物が形成された。TLC(PE:
EA=2:1)によって出発材料が消費されたことが示され、かつ所望の化合物が検出さ
れた。混合物をろ過し、EtOAc(1L)、次いでPE(1L)で洗浄し、真空下で乾
燥し、白色固形物を得た。白色固形物を他のバッチと合わせ、次いでEtOAc(3.5
L)およびMeOH(100mL)で摩砕し、化合物5、2R,6R-ヒドロキシノルケ
タミン塩酸塩を白色固形物として得た。
【0158】
<実施例18:(1S,3R)-3-((TERT-ブトキシカルボニル)アミノ)-3
-(2-クロロフェニル)-2-オキソシクロヘキシル4-ニトロベンゾエート(10A
)の調製>
【化45】
(10A)
tert-ブチル((1R,3R)-1-(2-クロロフェニル)-3-ヒドロキシ-
2-オキソシクロヘキシル)カルバメート(8A)(2.82グラム、8.30mmol
)を、攪拌子を備えた丸底フラスコに入れた。ジクロロメタン(20ml)、続いてピリ
ジン(1.31グラム、16.6mmol)を添加した。反応物をすべての試薬が溶解す
るまで攪拌し、次いで窒素雰囲気下に入れ、0℃に冷却した。次いで、トリフルオロメタ
ンスルホン無水物(ジクロロメタン中1.0M、9.43mL、9.43mmol)を、
注射器を用いて添加した。反応物を0℃で45分間攪拌し、次いで飽和重炭酸ナトリウム
水溶液に注ぎ入れることによりクエンチした。混合物をジクロロメタンで抽出し、溶媒を
ロータリーエバポレーションによって除去し、粗製トリフレート(9A)を得、これをさ
らに精製せずに使用した。トリフレートは不安定であり、ただちに使用するか-80℃で
保管する必要があった。
【0159】
次いで、粗製トリフレート(3.92グラム、収率100%に対して8.3mmol)
をジメチルホルムアミド(50ml)に溶解した。次いで、4-ニトロ安息香酸(5.5
5グラム、33.2mmol、続いて炭酸カリウム(1.15グラム、8.30mmol
)を添加した。懸濁液を、室温で16時間、激しく攪拌した。次いで、反応物を、ジエチ
ルエーテル(200ml)および水(100ml)を含む分液漏斗に注ぎ入れた。有機相
を水(100ml)で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で1回洗浄した。
有機相を取り出し、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した。シリカゲルク
ロマトグラフィ(ジエチルエーテル中の0%~100%酢酸エチル)で精製し、表題化合
物を得た。
【0160】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.23 - 8.11 (m, 2H), 7.95 - 7.85 (m, 2H),
7.58 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.36 - 7.27 (m, 1H), 7.27 - 7.20 (m, 1H), 7.20 - 7.14
(m, 1H), 5.99 (s, 1H), 5.93 (dd, J = 8.7, 4.9 Hz, 1H), 3.19 --3.09 (m, 1H), 2.43
- 2.31 (m, 2H), 2.27 - 2.00 (m, 3H), 1.32 (s, 9H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ
199.5, 163.3, 153.9, 150.5, 136.2, 134.8, 133.6, 131.3, 130.9, 129.7, 128.6, 12
6.4, 123.3, 80.5, 76.2, 68.5, 37.9, 33.8, 28.0, 18.9. HRMS (ESI+): 予想値511.124
2 [M+Na+] (C24H25ClN2NaO7 +). 実測値511.1248. [α]D 20: + 9.5°(c 1.0, クロロホル
ム).
【0161】
<実施例19:TERT-ブチル((1R,3S)-1-(2-クロロフェニル)-3-
ヒドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート(11A)の調製>
【化46】
(11A)
(1S,3R)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-クロ
ロフェニル)-2-オキソシクロヘキシル4-ニトロベンゾエート(10A)(2.00
グラム、4.09mmol)をメタノール(50ml)に溶解した。反応物を0℃に冷却
し、炭酸カリウム(0.565mg、4.09mmol)を添加した。反応物を0℃で3
0分間攪拌した。次いで、反応物を飽和重炭酸ナトリウム水性溶液に注ぎ入れることによ
りクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を取り出し、溶媒をロータリーエ
バポレーションによって除去した。シリカゲルクロマトグラフィ(ヘキサン中の0%~1
00%酢酸エチル)で精製し、所望の生成物(11A)を収率65%で得た。
【0162】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.45 - 7.40 (m, 1H), 7.40 - 7.33 (m, 1H),
7.33 - 7.23 (m, 2H), 5.28 (s, 1H), 4.65 (dd, J = 12.1, 6.5 Hz, 1H), 3.02 - 2.88
(m, 1H), 2.50 - 2.40 (m, 1H), 2.19 - 2.00 (m, 2H), 1.85 - 1.75 (m, 1H), 1.75 -
1.64 (m, 1H), 1.38 (s, 1H) 13C NMR (101 MHz, cdcl3) δ 203.4, 154.3, 136.6, 133
.4, 131.8, 129.1, 127.7, 126.7, 81.2, 72.7, 67.8, 38.3, 36.7, 28.1, 19.1 HRMS (
ESI+): 予想値362.1130 [M+Na+] (C17H22ClNaNO4 +). 実測値362.1139. [α]D 20: -2.3°(
c 1.0, クロロホルム).
【0163】
<実施例20:(2R,6S)-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロ
キシシクロヘキサン-1-オン(12A)の調製>
【化47】
(12A)
tert-ブチル((1R,3S)-1-(2-クロロフェニル)-3-ヒドロキシ-
2-オキソシクロヘキシル)カルバメート(11A)(860mg、2.5mmol)を
、ジクロロメタン(8.0ml)に溶解し、0℃に冷却した。次いで、トリフルオロ酢酸
(4.0ml、52mmol)を添加した。反応物を0℃で45分間攪拌した。次いで、
溶媒およびトリフルオロ酢酸をロータリーエバポレーションによって除去した。酢酸エチ
ルおよびpH7の飽和リン酸カリウム緩衝液を粗製材料へ添加し、材料を分液漏斗に移し
、そこでpH6から7の間を維持しながら酢酸エチルで2回抽出した。有機相を取り出し
、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去し、粗製白色固形物を得た。この固形
物を逆相高圧液体クロマトグラフィ(MeCN-HO移動相、0.1%TFAを含む)
で精製した。所望の分画をpH7の緩衝液で中和し、酢酸エチルで2回抽出し、有機相を
取り出し、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去し、白色固形物を得た。固形
物をエタノールに溶解し、エタノールをロータリーエバポレーションによって除去し、所
望の生成物を得た。絶対配座は単結晶x線結晶学で実証された。
【0164】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.64 - 7.58 (m, 1H), 7.43 - 7.36 (m, 1H),
7.36 - 7.23 (m, 2H), 4.89 (dd, J = 11.8, 6.5 Hz, 1H), 2.59 - 2.52 (m, 1H), 2.46
- 2.42 (m, 1H), 2.22 - 2.08 (m, 1H), 1.98 (ddt, J = 14.1, 3.9, 2.5 Hz, 1H), 1.93
- 1.80 (m, 2H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 210.3, 141.0, 133.0, 131.1, 129.1,
127.1 (2C), 72.3, 64.9, 39.4, 35.3, 19.4. HRMS (ESI+): 予想値240.0786 [M+H+] (C1
2H15ClNO2 +). 実測値240.0794. [α]D 20: +75.4°(c 1.0, クロロホルム)
【0165】
<実施例21:(1R,3S)-3-((TERT-ブトキシカルボニル)アミノ)-3
-(2-クロロフェニル)-2-オキソシクロヘキシル4-ニトロベンゾエート(10)
の調製>
【化48】
化合物10を、tert-ブチル((1S,3S)-1-(2-クロロフェニル)-3
-ヒドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート、化合物8を出発材料として使
用して合成した。
【0166】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.27 - 8.10 (m, 2H), 7.92 (s, 2H), 7.58 (d
, J = 7.9 Hz, 1H), 7.32 (td, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 7.27 - 7.12 (m, 2H), 6.03 (s,
1H), 5.94 (dd, J = 8.8, 4.9 Hz, 1H), 3.23 - 2.99 (m, 1H), 2.37 (dq, J = 12.5, 6
.2 Hz, 2H), 2.28 - 1.92 (m, 3H), 1.33 (s, 9H). 13C NMR (101 MHz, cdcl3) δ 200.2
, 163.4, 154.0, 150.7, 136.2, 134.8, 133.8, 131.4, 131.0, 129.2, 128.9, 126.5,
123.4, 80.8, 76.5, 68.6, 38.1, 34.2, 28.2, 18.9. [α]D 20: -11°(c 1.0, クロロホ
ルム).
【0167】
<実施例22:TERT-ブチル((1S,3R)-1-(2-クロロフェニル)-3-
ヒドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメート(11)の調製>
【化49】
(11)
化合物を、(1R,3S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-
(2-クロロフェニル)-2-オキソシクロヘキシル4-ニトロベンゾエートを出発材料
として使用して、その鏡像異性体(11A)と類似の方法で合成した。
【0168】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.59 - 7.21 (m, 4H), 5.15 (s, 1H), 4.71 -
4.55 (m, 1H), 3.63 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 3.04 - 2.90 (m, 1H), 2.47 (ddq, J = 12.9
, 6.4, 3.2 Hz, 1H), 2.23 - 2.00 (m, 2H), 1.95 - 1.68 (m, 2H), 1.39 (s, 9H). 13C
NMR (101 MHz, cdcl3) δ 203.5, 154.4, 136.7, 133.6, 132.0, 129.3, 127.9, 126.9,
72.9, 68.0, 38.5, 36.9, 28.3, 19.3, HRMS (ESI+): 予想値362.1130 [M+Na+] (C17H22C
lNaNO4 +). 実測値362.1135. [α]D 20: +1.2°(c 1.0, クロロホルム).
【0169】
<実施例23:(2S,6R)-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロ
キシシクロヘキサン-1-オン(12)の調製>
【化50】
(12)
化合物12を、tert-ブチル((1S,3R)-1-(2-クロロフェニル)-3
-ヒドロキシ-2-オキソシクロヘキシル)カルバメートを出発材料として使用して、そ
の鏡像異性体(12A)と類似の方法で合成した。
【0170】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) : 7.61 (dd, J= 1.9, 7.8 Hz, 1H), 7.38 (dd, J
= 1.5, 7.7 Hz, 1H), 7.30 (dt, J = 1.5, 7.7 Hz, 1H), 7.24 (dt, J = 1.9, 7.7 Hz, 1
H), 4.89 (dd, J = 7.0, 12 Hz, 1H), 3.52 (bs, 1H), 2.51 (dt, J = 4.4 Hz, 13.6 Hz,
1H), 2.48-2.40 (m, 1H), 2.22-2.07 (m, 1H), 1.99-1.82 (m, 1H), 1.91-1.78 (m, 4H)
.13C NMR (101 MHz, cdcl3) δ 210.3, 141.3, 132.9, 130.9, 128.8, 126.9 (2C), 72.0
, 64.6, 39.4, 35.2, 19.4.HRMS (ESI+): 予想値240.0786 [M+H+] (C12H14ClNNaO2 +). 実
測値240.0786. 旋光度: -73.6°(c 1.0, クロロホルム).
【0171】
<実施例24:2R,6R-ヒドロキシノルケタミンの再結晶化>
2R,6R-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩100.25グラムを水100mLに溶解
した。
【0172】
アセトン(2000ml)を、1分あたり0.75当量(75ml)の速度で添加した
。核形成は5分20秒で認められた。反応物を2時間攪拌し、次いでろ過し、一晩真空乾
燥し、最終生成物を好収率で得た。
【0173】
[具体的な実施形態]
実施形態1.以下のものとほぼ等しい単結晶パラメータを特徴とする、(2R,6R)
-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の結晶形態:
a=7.35Å アルファ=90°
b=7.49Å ベータ=96.87°
c=11.35Å ガンマ=90°
V=621.02Å
を含む格子寸法、および
空間群=P 1 21 1、結晶系=単斜晶系、1単位格子あたりの分子=1、密度(
計算値)=1.477mg/m
【0174】
実施形態2.実施形態1に記載の結晶形態であって、x線粉末回折によって判定される
検出可能な量の他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩の結晶形態
を含まないことを特徴とする結晶形態。
【0175】
実施形態3.以下のものとほぼ等しい単結晶パラメータを特徴とする、(2S,6S)
-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩の結晶形態:
a=7.35Å アルファ=90°
b=7.48Å ベータ=96.87°
c=11.34Å ガンマ=90°
V=619.32Å
を含む格子寸法、および
空間群=P 1 21 1、結晶系=単斜晶系、1単位格子あたりの分子=1、密度(
計算値)=1.481Mg/m
【0176】
実施形態4.実施形態3に記載の結晶形態であって、x線粉末回折によって判定される
検出可能な量の他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩の結晶形態
を含まないことを特徴とする結晶形態。
【0177】
実施形態5.ノルケタミンをキラル分割するための方法であって、(D)-(R)-ピ
ログルタミン酸を溶媒中でラセミノルケタミンへ添加し、固体(S)-ノルケタミンD-
ピログルタメートを形成することを含むことを特徴とする方法。
【0178】
実施形態6.実施形態5に記載の方法であって、(S)-ノルケタミンD-ピログルタ
メートを(S)-ノルケタミンへ変換することをさらに含むことを特徴とする方法。
【0179】
実施形態7.ノルケタミンをキラル分割するための方法であって、(L)-(S)-ピ
ログルタミン酸を溶媒中でラセミノルケタミンへ添加し、固体(R)-ノルケタミンL-
ピログルタメートを形成すること、および(R)-ノルケタミンL-ピログルタメートを
(R)-ノルケタミンへ変換することを含むことを特徴とする方法。
【0180】
実施形態8.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンもしくは(2S,6S)-ヒド
ロキシノルケタミン、またはこれらの塩を製造するための方法であって、
【化51】
式Ia
【化52】
式Ib
式Iaまたは式Ibの化合物を塩基で、次いでトリアルキルシリル塩化物で、次いでペ
ルオキシ化合物で、次いで任意選択で酸またはフッ化物源で処理して、式Iaを処理した
場合は式IIaの化合物または式Ibを処理した場合は式IIbの化合物を得ることであ
って、式IIaまたは式IIbの化合物がカルバメート結合を含むことと、
【化53】
式IIa
【化54】
式IIb
および
式IIaまたは式IIbの化合物のカルバメート結合を開裂して、式IIaの化合物の
カルバメート結合を開裂した場合には(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン、または
式IIbの化合物のカルバメート結合を開裂した場合には(2S,6S)-ヒドロキシノ
ルケタミンを得ることと
【化55】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン
【化56】
(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン;
(式中、RはC~Cアルキル、C~Cハロアルキル、ベンジル、4-メトキシ
ベンジル、または2-トリメチルシリルエチルである)
を含むことを特徴とする方法。
【0181】
実施形態9.実施形態8に記載の方法であって、Rがtert-ブチルであり、カル
バメート結合を開裂することが、式IIaまたは式IIbの化合物を酸で処理することを
含むことを特徴とする方法。
【0182】
実施形態10.実施形態9に記載の方法であって、酸がトリフルオロ酢酸であることを
特徴とする方法。
【0183】
実施形態11.実施形態8に記載の方法であって、(2R,6R)-ヒドロキシノルケ
タミンを塩酸で処理して、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を製造するこ
と、または(2S,6S)-ヒドロキシノルケタミンを塩酸で処理して、(2S,6S)
-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩を製造することをさらに含むことを特徴とする方法。
【0184】
実施形態12.実施形態8に記載の方法であって、式Iaまたは式Ibの化合物を処理
するために使用される塩基が強塩基であることを特徴とする方法。
【0185】
実施形態13.実施形態12に記載の方法であって、強塩基がジイソプロピルアミドリ
チウム、ヘキサメチルジシラザンナトリウム、ヘキサメチルジシラザンカリウム、または
sec-ブチルリチウムであり、式Iaまたは式Ibの化合物が、0℃未満の温度で、強
塩基で処理されることを特徴とする方法。
【0186】
実施形態14.実施形態8に記載の方法であって、式Iaまたは式Ibの化合物を塩基
で処理することが、式Iaまたは式Ibの化合物を、-50℃未満の温度でジイソプロピ
ルアミドリチウムで処理することを含むことを特徴とする方法。
【0187】
実施形態15.実施形態8から14のいずれか1つに記載の方法であって、トリアルキ
ルシリル塩化物がトリメチルシリル塩化物、トリエチルシリル塩化物、tert-ブチル
ジメチルシリル塩化物、またはトリイソプロピルシリル塩化物であることを特徴とする方
法。
【0188】
実施形態16.実施形態15に記載の方法であって、トリアルキルシリル塩化物がトリ
メチルシリル塩化物であることを特徴とする方法。
【0189】
実施形態17.実施形態8から16のいずれか1つに記載の方法であって、ペルオキシ
化合物がペルオキシ酸または過酸化物であることを特徴とする方法。
【0190】
実施形態18.実施形態17に記載の方法であって、ペルオキシ化合物がメタ-クロロ
ペルオキシ安息香酸、ペルオキシ安息香酸、過酢酸、ジメチルジオキシラン、tert-
ブチルヒドロ過酸化物、または過酸化水素であることを特徴とする方法。
【0191】
実施形態19.実施形態8から18のいずれか1つに記載の方法であって、ペルオキシ
化合物で処理した後に、式Iaまたは式Ibの化合物がフッ化テトラ-n-ブチルアンモ
ニウムで処理されることを特徴とする方法。
【0192】
実施形態20.実施形態8から19のいずれか1つに記載の方法であって、ペルオキシ
化合物がメタ-クロロペルオキシ安息香酸であることを特徴とする方法。
【0193】
実施形態21.実施形態8から20のいずれか1つに記載の方法であって、(R)-ノ
ルケタミンを(RC)OもしくはRC-Xと反応させて、式Iaの化合物
を生成すること、または(S)-ノルケタミンを(RC)OもしくはR
-Xと反応させて、式Ibの化合物を生成することによって、式Iaまたは式Ibの化合
物を生成すること(式中、Xはハロゲンである)をさらに含むことを特徴とする方法。
【0194】
実施形態22.実施形態21に記載の方法であって、Rがtert-ブチルであり、
式Iaの化合物を生成することが、(R)-ノルケタミンを(tert-ブチル-O
Oと反応させることを含み、式Ibの化合物を生成することが、(S)-ノルケタミ
ンを(tert-ブチル-OC)Oと反応させることを含むことを特徴とする方法。
【0195】
実施形態23.実施形態8に記載の方法であって、
【化57】
式Ia
式Iaの化合物を、-50℃未満の温度でジイソプロピルアミドリチウムで、次いでト
リメチルシリル塩化物で、次いでメタ-クロロペルオキシ安息香酸で、次いでフッ化テト
ラ-n-ブチルアンモニウムで処理して、式IIaの化合物を得ることと(式中、R
tert-ブチルである)、
【化58】
式IIa
および
式IIaのカルバメート結合を酸で処理することによって開裂して、(2R,6R)-
ヒドロキシノルケタミンを得ることと
【化59】
((2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン)
を含むことを特徴とする方法。
【0196】
実施形態24.実施形態に記載の方法であって、
【化60】
式Ib
式Ibの化合物を、-50℃未満の温度でジイソプロピルアミドリチウムで、次いでト
リメチルシリル塩化物で、次いでメタ-クロロペルオキシ安息香酸で、次いでフッ化テト
ラ-n-ブチルアンモニウムで処理して、式IIbの化合物を得ることと(式中、R
tert-ブチルである)、
【化61】
式IIB
および
式IIbのカルバメート結合を酸で処理することによって開裂して、(2S,6S)-
ヒドロキシノルケタミンを得ることと
【化62】
((2S,6S)-ヒドロキシノルケタミン)
を含むことを特徴とする方法。
【0197】
実施形態25.以下の(2θ)値のうちの少なくとも4個、少なくとも5個、少なくと
も8個、少なくとも10個、または少なくとも12個、または少なくとも15個の任意の
組合せに特徴的なピークのXRPDスペクトルを示すことを特徴とする、(2R,6R)
-ヒドロキシノルケタミンの結晶形態:12.1、13.6、14.1、15.1、15
.6、16.9、18.0、19.2、19.5、20.8、22.1、23.5、24
.0、24.3、24.6、24.8、25.2、26.4、27.0、27.4、27
.7、28.1、29.9、30.2、31.5、31.9、32.4、32.7、33
.5、34.7、36.5、37.1、37.7、38.3、38.7、39.1、およ
び39.6。
【0198】
実施形態26.実質的に図3に示すようなXRPDスペクトルを示すことを特徴とする
、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの結晶形態。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルケタミンをキラル分割するための方法であって、(D)-(R)-ピログルタミン酸を溶媒中でラセミノルケタミンへ添加し、固体(S)-ノルケタミンD-ピログルタメートを形成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項に記載の方法であって、前記(S)-ノルケタミンD-ピログルタメートを(S)-ノルケタミンへ変換することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
ノルケタミンをキラル分割するための方法であって、(L)-(S)-ピログルタミン酸を溶媒中でラセミノルケタミンへ添加し、固体(R)-ノルケタミンL-ピログルタメートを形成すること、および(R)-ノルケタミンL-ピログルタメートを(R)-ノルケタミンへ変換することを含むことを特徴とする方法。