(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153355
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241022BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 652H
H01L29/78 652D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067190
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雄
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドレインリークを抑制する炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、第1導電型を有するドリフト領域11と、ドリフト領域上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域12と、ドリフト領域から隔てられるようにボディ領域上に設けられ、第1導電型を有するソース領域13と、ソース領域及びボディ領域を貫通して少なくともドリフト領域に至る側面3及び側面と連なる底面4を備えたゲートトレンチ5と、を有する。ドリフト領域は、側面及びボディ領域に接する第1半導体領域11Aと、第1半導体領域及びボディ領域に接する第2半導体領域11Bと、を有し、第2半導体領域は、第1主面に垂直な方向からの平面視で、ソース領域と重なり、第2半導体領域における第1導電型の不純物の第2実効濃度は、第1半導体領域における第1導電型の不純物の第1実効濃度よりも低い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記炭化珪素基板は、
第1導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、
前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、
を有し、
前記第1主面には、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して少なくとも前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とを備えたゲートトレンチが設けられており、
前記ドリフト領域は、
前記側面および前記ボディ領域に接する第1半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記ボディ領域に接する第2半導体領域と、
を有し、
前記第2半導体領域は、前記第1主面に垂直な平面視で、前記ソース領域と重なり、
前記第2半導体領域における前記第1導電型の不純物の第2実効濃度は、前記第1半導体領域における前記第1導電型の不純物の第1実効濃度よりも低い、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域を有し、
前記平面視で、前記第2半導体領域は、前記電界緩和領域から離れている、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記側面及び前記底面に接するゲート絶縁膜と、
前記炭化珪素基板との間に前記ゲート絶縁膜を挟むように前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に設けられたソース電極と、
を有し、
前記炭化珪素基板は、前記ボディ領域上に設けられ、前記第2導電型を有する複数のコンタクト領域を有し、
前記複数のコンタクト領域は、前記ゲートトレンチの長手方向に沿って断続的に設けられ、
前記層間絶縁膜に、前記ソース領域の少なくとも一部および前記複数のコンタクト領域の各々の少なくとも一部が露出するコンタクトホールが形成され、
前記ソース電極は、前記コンタクトホールを通じて前記ソース領域および前記複数のコンタクト領域に接続され、
前記炭化珪素基板は、前記第2半導体領域を複数有し、
前記平面視で、前記複数の第2半導体領域の各々は、前記長手方向に沿って隣り合う2つの前記コンタクト領域の間で、前記ソース領域と重なる、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記平面視で、前記第2半導体領域は、前記ソース領域の輪郭の内側にある、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記ゲートトレンチの長手方向において、前記第2半導体領域の第1寸法の和は、前記ソース領域の第2寸法の0.5倍以上である、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ゲートトレンチの長手方向において、前記第2半導体領域の第1寸法の和は、前記ソース領域の第2寸法の0.5倍未満である、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記ゲートトレンチの前記側面は、{0-33-8}面を含む、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体装置の一つとして、主面に形成されたゲートトレンチの下方に電界シールド領域が設けられたトレンチ型MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、炭化珪素半導体装置に対してドレインリークの更なる抑制が望まれている。
【0005】
本開示は、ドレインリークを抑制できる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、第1導電型を有するドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、を有し、前記第1主面には、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して少なくとも前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とを備えたゲートトレンチが設けられており、前記ドリフト領域は、前記側面および前記ボディ領域に接する第1半導体領域と、前記第1半導体領域および前記ボディ領域に接する第2半導体領域と、を有し、前記第2半導体領域は、前記第1主面に垂直な平面視で、前記ソース領域と重なり、前記第2半導体領域における前記第1導電型の不純物の第2実効濃度は、前記第1半導体領域における前記第1導電型の不純物の第1実効濃度よりも低い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ドレインリークを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置における層間絶縁膜および第1主面の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その1)である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その2)である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その3)である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その4)である。
【
図6】
図6は、不純物の実効濃度のプロファイルの一例を示す図(その1)である。
【
図7】
図7は、不純物の実効濃度のプロファイルの一例を示す図(その2)である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置における層間絶縁膜および第1主面の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、"-"(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本開示では数字の前に負の符号を付している。また、以下の説明では、XYZ直交座標系を用いるが、当該座標系は、説明のために定めるものであって、炭化珪素半導体装置の姿勢について限定するものではない。また、XY面視を平面視といい、任意の点からみて、+Z方向を上方、上側または上ということがあり、-Z方向を下方、下側または下ということがある。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、第1導電型を有するドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、を有し、前記第1主面には、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して少なくとも前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とを備えたゲートトレンチが設けられており、前記ドリフト領域は、前記側面および前記ボディ領域に接する第1半導体領域と、前記第1半導体領域および前記ボディ領域に接する第2半導体領域と、を有し、前記第2半導体領域は、前記第1主面に垂直な平面視で、前記ソース領域と重なり、前記第2半導体領域における前記第1導電型の不純物の第2実効濃度は、前記第1半導体領域における前記第1導電型の不純物の第1実効濃度よりも低い。
【0012】
ドリフト領域が第1半導体領域および第2半導体領域を有し、第1主面に垂直な平面視で、第2領域がソース領域と重なり、第2実効濃度が第1実効濃度よりも低い。このため、第2実効濃度が第1実効濃度と等しい場合と比較して、ソース領域と第2主面との間において、ドリフト領域とボディ領域とのpn接合界面の近傍での電界集中を緩和できる。従って、電界集中に起因するドレインリークを抑制できる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域を有し、前記平面視で、前記第2半導体領域は、前記電界緩和領域から離れていてもよい。この場合、ゲートトレンチの近傍での電界集中を緩和できる。また、電界緩和領域と第2半導体領域との間にある電流経路のオン抵抗を抑制しやすい。
【0014】
〔3〕 〔1〕または〔2〕において、前記側面及び前記底面に接するゲート絶縁膜と、前記炭化珪素基板との間に前記ゲート絶縁膜を挟むように前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に設けられたソース電極と、を有し、前記炭化珪素基板は、前記ボディ領域上に設けられ、前記第2導電型を有する複数のコンタクト領域を有し、前記複数のコンタクト領域は、前記ゲートトレンチの長手方向に沿って断続的に設けられ、前記層間絶縁膜に、前記ソース領域の少なくとも一部および前記複数のコンタクト領域の各々の少なくとも一部が露出するコンタクトホールが形成され、前記ソース電極は、前記コンタクトホールを通じて前記ソース領域および前記複数のコンタクト領域に接続され、前記炭化珪素基板は、前記第2半導体領域を複数有し、前記平面視で、前記複数の第2半導体領域の各々は、前記長手方向に沿って隣り合う2つの前記コンタクト領域の間で、前記ソース領域と重なってもよい。この場合も、電界集中を緩和し、電界集中に起因するドレインリークを抑制できる。
【0015】
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、前記平面視で、前記第2半導体領域は、前記ソース領域の輪郭の内側にあってもよい。この場合、電界集中を更に緩和しやすく、ドレインリークを更に抑制しやすい。
【0016】
〔5〕 〔4〕において、前記ゲートトレンチの長手方向において、前記第2半導体領域の第1寸法の和は、前記ソース領域の第2寸法の0.5倍以上であってもよい。この場合、電界集中を更に緩和しやすく、ドレインリークを更に抑制しやすい。
【0017】
〔6〕 〔4〕において、前記ゲートトレンチの長手方向において、前記第2半導体領域の第1寸法の和は、前記ソース領域の第2寸法の0.5倍未満であってもよい。この場合、電流経路のオン抵抗を抑制しやすい。
【0018】
〔7〕 〔1〕から〔6〕のいずれかにおいて、前記ゲートトレンチの前記側面は、{0-33-8}面を含んでもよい。側面が{0-33-8}面を含むことで、ゲートトレンチの側面において良好な移動度が得られ、チャネル抵抗を低減できる。
【0019】
[本開示の実施形態]
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は、炭化珪素を用いたいわゆる縦型のMOS型電界効果トランジスタ(field effect transistor:FET)に関し、このMOS型FETは炭化珪素半導体装置の一例である。
図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置における層間絶縁膜および第1主面の構成を示す図である。
図2から
図5は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
図3は、
図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
図4は、
図1中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
図5は、
図1中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0020】
図1から
図5に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、ゲート電極82と、層間絶縁膜83と、ソース電極60と、ドレイン電極70と、バリアメタル膜84とを主に有している。
【0021】
炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1とは反対の第2主面2とを有する。第1主面1および第2主面2はXY平面に平行であり、第1主面1は第2主面2からみて+Z方向にある。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50および炭化珪素エピタキシャル層40は、例えばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板50は、例えば窒素(N)等のn型不純物を含み、n型の導電型(第1導電型)を有する。
【0022】
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000-1)面または(000-1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、例えば<11-20>方向であってもよいし、<1-100>方向であってもよい。オフ角は、例えば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0023】
炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、電界緩和領域16と、接続領域17と、コンタクト領域18とを主に有する。
【0024】
ドリフト領域11は、窒素またはリン(P)等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ドリフト領域11は炭化珪素単結晶基板50の上に設けられている。ドリフト領域11は、第1領域11Aと、第2領域11Bと、第3領域11Cとを主に有している。
【0025】
ボディ領域12は、アルミニウム(Al)等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。ボディ領域12はドリフト領域11の上に設けられている。
【0026】
ソース領域13は、窒素またはリン等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ソース領域13はボディ領域12の上に設けられている。ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられている。ソース領域13は第1主面1を構成する。
【0027】
コンタクト領域18は、アルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18は第1主面1を構成する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18は、第4領域18Aと、第5領域18Bとを主に有している。
【0028】
第1主面1に、側面3と底面4とにより規定される複数のゲートトレンチ5が設けられている。ゲートトレンチ5は、例えばY軸に沿って延びる。Y軸に沿って複数のゲートトレンチ5が一定の間隔で配置されている。また、X軸に沿って複数のゲートトレンチ5が一定の間隔で配置されている。複数のゲートトレンチ5がアレイ状に設けられていてもよい。側面3は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11の一部とを貫通し、ドリフト領域11に至る。底面4は側面3と連なる。底面4はドリフト領域11に位置する。例えば、底面4は第1主面1および第2主面2と平行である。Y軸に垂直な断面視で、底面4を含む仮想平面P1に対する側面3の角度θ1は、例えば45°以上65°以下である。角度θ1は、例えば50°以上であってもよい。角度θ1は、例えば60°以下であってもよい。側面3は、好ましくは{0-33-8}面を有する。{0-33-8}面は、優れた移動度が得られる結晶面である。本開示では、Y軸に平行な第1仮想直線L1を用いて各部位の位置関係を説明することがある。
【0029】
電界緩和領域16は、アルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。電界緩和領域16は、ゲートトレンチ5の底面4と第2主面2との間にある。電界緩和領域16の上端面は、例えばゲートトレンチ5の底面4と第2主面2との間にある。電界緩和領域16の上端面の一部は、ボディ領域12の下端面の一部に対向する。電界緩和領域16は、ゲートトレンチ5と同様に、Y軸に沿って延びる。第1主面1に垂直な平面視で、電界緩和領域16はゲートトレンチ5と重なる。第1主面1に垂直な平面視で、Y軸に沿って電界緩和領域16が複数のゲートトレンチ5と重なっていてもよい。また、X軸に沿って複数の電界緩和領域16が一定の間隔で配置されている。複数の電界緩和領域16がストライプ状に設けられていてもよい。
【0030】
コンタクト領域18の第4領域18Aは、X軸に沿って隣り合うゲートトレンチ5の間にある。X軸に沿って隣り合う2つのゲートトレンチ5の間において、第4領域18Aとソース領域13とがY軸に沿って交互に設けられていてもよい。X軸に沿って隣り合う2つのゲートトレンチ5の間において、第4領域18AがY軸に沿って断続的に設けられていてもよい。例えば、第4領域18Aがゲートトレンチ5の長手方向の端部の近傍にあり、ソース領域13がゲートトレンチ5の長手方向の中央部の近傍にあってもよい。第4領域18AはX軸に沿ってゲートトレンチ5の両側に設けられている。
【0031】
コンタクト領域18の第5領域18Bは、第1主面1に垂直な平面視で、Y軸に沿って隣り合うゲートトレンチ5の間にある。第5領域18Bは、X軸に沿って第4領域18Aにつながる。第4領域18Aと第5領域18BとがX軸に沿って交互に設けられている。例えば、第4領域18AのY軸に沿った寸法A3は、第5領域18BのY軸に沿った寸法A4よりも大きい。
【0032】
接続領域17は、アルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。接続領域17は、コンタクト領域18と電界緩和領域16とを電気的に接続する。接続領域17は、第1主面1に垂直な平面視で、Y軸に沿って隣り合うゲートトレンチ5の間にある。接続領域17は、第1主面1に垂直な平面視で、第4領域18Aの一部と第5領域18Bとに重なる。接続領域17は電界緩和領域16に接する。接続領域17は少なくともボディ領域12または第5領域18Bの一方に接する。接続領域17がボディ領域12および第5領域18Bの各々に接してもよい。接続領域17は、電界緩和領域16とコンタクト領域18との間にある。
【0033】
ドリフト領域11の第1領域11Aは側面3に露出し、かつボディ領域12に接する。ドリフト領域11の第2領域11Bは第1領域11Aおよびボディ領域12に接する。第1主面1に垂直な平面視で、第2領域11Bはソース領域13に重なる。例えば、第2領域11Bは、平面視でソース領域13の輪郭の内側にある。例えば、第2領域11Bは、平面視でソース領域13のうちでゲートトレンチ5の長手方向で隣り合う2つの第4領域18Aの間の部分に重なる。第1実施形態では、X軸に沿って隣り合う2つのゲートトレンチ5の間において、平面視で、ソース領域13のうちでゲートトレンチ5の長手方向で隣り合う2つの第4領域18Aの間の部分に1個の第2領域11Bが重なる。第1領域11Aは、側面3と第2領域11Bとの間にある。第1領域11Aおよび第2領域11Bの厚さは、例えば0.1μm以上0.5μm以下である。平面視で、第2領域11Bが電界緩和領域16から離れていてもよい。
【0034】
ドリフト領域11の第3領域11Cは炭化珪素単結晶基板50に接してもよい。第1領域11Aおよび第2領域11Bは、第3領域11Cとボディ領域12との間にある。第1領域11Aの下端面および第2領域11Bの下端面が、第3領域11Cの上端面に接する。第3領域11Cが側面3に露出してもよい。第3領域11Cが底面4に露出してもよい。第1領域11Aの下端面および第2領域11Bの下端面は、底面4を含む仮想平面P1にあってもよく、仮想平面P1よりも第1主面1に近くてもよい。底面4と第2主面2との間において、第3領域11Cが電界緩和領域16を囲んでいてもよい。底面4と電界緩和領域16の上端面との間に第3領域11Cの一部があってもよい。電界緩和領域16の下端面と第2主面2との間に第3領域11Cの他の一部があってもよい。X軸に沿って隣り合う電界緩和領域16の間に第3領域11Cの更に他の一部があってもよい。第1領域11Aは第1半導体領域の一例であり、第2領域11Bは第2半導体領域の一例である。
【0035】
ゲート絶縁膜81は、例えば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、例えば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜81は、側面3および底面4に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4においてドリフト領域11に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4において第3領域11Cに接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3において第1領域11Aおよび第3領域11Cに接する。ゲート絶縁膜81は、側面3において第1領域11Aに接していれば、第3領域11Cに接していなくてもよい。ゲート絶縁膜81は第2領域11Bから離れている。ゲート絶縁膜81は、第1主面1においてソース領域13に接していてもよい。
【0036】
ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81の上に設けられている。ゲート電極82は、例えば導電性不純物を含むポリシリコン(ポリSi)から構成されている。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置されている。ゲート電極82は、側面3および底面4に対向する。ゲート電極82の一部が第1主面1に対向してもよい。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5と同様に、Y軸に沿って延びる。第1主面1に垂直な平面視で、ゲート電極82が複数のゲートトレンチ5と重なってもよい。
【0037】
層間絶縁膜83はゲート電極82を覆う。層間絶縁膜83はゲート電極82およびゲート絶縁膜81に接する。層間絶縁膜83は、例えば酸化膜である。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜83は、ゲート電極82とソース電極60とを互いに電気的に絶縁している。層間絶縁膜83の一部は、ゲートトレンチ5の内部に設けられていてもよい。層間絶縁膜83の上面は、曲率が連続的に変化する曲面であってもよい。層間絶縁膜83の上面は、ゲートトレンチ5の上方において+Z方向に凸となる曲面であってもよい。
【0038】
層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81には、X軸に沿って一定の間隔でコンタクトホール90が形成されている。コンタクトホール90は、X軸に沿って隣り合うコンタクトホール90の間にゲートトレンチ5が位置するように配置されている。コンタクトホール90はY軸に沿って延びる。コンタクトホール90を通じて、ソース領域13および第4領域18Aが層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81から露出している。第5領域18Bは層間絶縁膜83により覆われていてよい。
【0039】
バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83の上面と、ゲート絶縁膜81の側面とを覆う。バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81の各々と接している。バリアメタル膜84は、例えば窒化チタン(TiN)を含む材料から構成されている。
【0040】
ソース電極60は第1主面1に接する。ソース電極60は、コンタクトホール90内に設けられたコンタクト電極61と、ソース配線62とを有する。コンタクト電極61は、第1主面1において、ソース領域13およびコンタクト領域18に接している。コンタクト電極61は、例えばニッケルシリサイド(NiSi)を含む材料から構成されている。コンタクト電極61が、チタン(Ti)と、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されていてもよい。コンタクト電極61は、ソース領域13およびコンタクト領域18とオーミック接合している。ソース配線62は、バリアメタル膜84の上面および側面と、コンタクト電極61の上面とを覆う。ソース配線62は、バリアメタル膜84およびコンタクト電極61の各々と接している。ソース配線62は、例えばアルミニウムを含む材料から構成されている。
【0041】
ドレイン電極70は第2主面2に接する。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接している。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極70は、例えばニッケルシリサイドを含む材料から構成されている。ドレイン電極70がチタンと、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されていてもよい。ドレイン電極70は、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合している。
【0042】
炭化珪素単結晶基板50とドリフト領域11との間に、窒素等のn型不純物を含み、n型の導電型を有するバッファ層が設けられていてもよい。また、ソース電極60の一部を覆うパッシベーション膜が設けられていてもよい。
【0043】
ドリフト領域11に関し、第2領域11Bにおけるn型不純物の第2実効濃度は、第1領域11Aにおけるn型不純物の第1実効濃度よりも低い。第1実効濃度は第2実効濃度の、好ましくは2倍以上であり、より好ましくは3倍以上であり、更に好ましくは5倍以上である。例えば、第2実効濃度は1×1016cm-3以上1×1017cm-3以下であり、第1実効濃度は1×1017cm-3以上1×1018cm-3以下である。第3領域11Cにおけるn型不純物の実効濃度は、第1実効濃度よりも低くてもよく、第2実効濃度と同程度であってもよい。第1領域11Aは電流拡散領域とよばれることがある。
【0044】
図6および
図7は、不純物の実効濃度のプロファイルの一例を示す図である。
図6は、
図2中の半直線HL1に沿った不純物の実効濃度のプロファイルの一例を示し、
図7は、
図2中の半直線HL2に沿った不純物の実効濃度のプロファイルの一例を示す。
図6および
図7の横軸は第1主面1を基準とした深さであり、縦軸は不純物の実効濃度のプロファイルである。
図6の縦軸は、第1領域11Aにおける不純物の実効濃度のプロファイルを含み、
図7の横軸は、第2領域11Bにおける不純物の実効濃度のプロファイルを含む。
図6および
図7中の実線はn型不純物の実効濃度を示し、破線はp型不純物の実効濃度を示す。概ね、深さが0.00μm以上0.40μm以下の領域がソース領域13に相当し、深さが0.40μm以上0.60μm以下の領域がボディ領域12に相当し、深さが0.60μm以上の領域がドリフト領域11に相当する。
【0045】
ボディ領域12の厚さは一定でなくてもよい。例えば、第2領域11Bと第1主面1との間で、第1領域11Aと第1主面1との間よりも厚くてもよい。
【0046】
コンタクト領域18におけるp型不純物の実効濃度は、ボディ領域12におけるp型不純物の実効濃度よりも高くてもよい。例えば、コンタクト領域18におけるp型不純物の実効濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であり、ボディ領域12におけるp型不純物の実効濃度は5×1017cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0047】
ソース領域13におけるn型不純物の実効濃度は、ボディ領域12におけるp型不純物の実効濃度よりも高くてもよい。ソース領域13におけるn型不純物の実効濃度は、例えば1×1019cm-3程度である。また、電界緩和領域16におけるp型不純物の実効濃度および接続領域17におけるp型不純物の実効濃度は、例えば5×1017cm-3以上5×1018cm-3以下である。
【0048】
本開示において、第1導電型の不純物の実効濃度とは、第1導電型の不純物の濃度から第2導電型の不純物の濃度を減じて得られる濃度であり、第2導電型の不純物の実効濃度とは、第2導電型の不純物の濃度から第1導電型の不純物の濃度を減じて得られる濃度である。実効濃度は、例えば走査型静電容量顕微鏡(scanning capacitance microscope:SCM)を用いて測定できる。
【0049】
第1領域11Aおよび第2領域11Bの形成に際しては、例えば、炭化珪素エピタキシャル層40を形成し、第1領域11Aを形成する部分および第2領域11Bを形成する部分にn型不純物のイオン注入を同時に行い、第2領域11Bを形成する部分にp型不純物のイオン注入を行う。
【0050】
第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100では、ドリフト領域11が第1領域11Aおよび第2領域11Bを有し、第1主面1に垂直な平面視で、第2領域11Bがソース領域13と重なり、第2実効濃度が第1実効濃度よりも低い。このため、第2実効濃度が第1実効濃度と等しい場合と比較して、ソース領域13と第2主面2との間において、ドリフト領域11とボディ領域12とのpn接合界面の近傍での電界集中を緩和できる。従って、電界集中に起因するドレインリークを抑制できる。
【0051】
ゲートトレンチ5の底面4と第2主面2との間に電界緩和領域16が設けられているため、ゲートトレンチ5の近傍での電界集中を緩和できる。また、平面視で、第2領域11Bが電界緩和領域16から離れているため、電界緩和領域16と第2領域11Bとの間にある電流経路のオン抵抗を抑制しやすい。
【0052】
平面視で、第2領域11Bがソース領域13の輪郭の内側にあることで、ソース領域13と第2主面2との間において、電界集中を更に緩和しやすく、ドレインリークを更に抑制しやすい。
【0053】
ゲートトレンチ5の長手方向において、第2領域11Bの第1寸法A1は、当該第2領域11Bと平面視で重なるソース領域13の第2寸法A2の0.5倍以上であってもよい。第1寸法A1が第2寸法A2の0.5倍以上である場合、電界集中を更に緩和しやすく、電界集中に起因するドレインリークを更に抑制しやすい。第1寸法A1が第2寸法A2の0.6倍以上であってもよく、0.7倍以上であってもよい。
【0054】
また、ゲートトレンチ5の長手方向において、第2領域11Bの第1寸法A1は、当該第2領域11Bと平面視で重なるソース領域13の第2寸法A2の0.5倍未満であってもよい。第1寸法A1が第2寸法A2の0.5倍未満である場合、電流経路のオン抵抗を抑制しやすい。第1寸法A1が第2寸法A2の0.4倍以下であってもよく、0.3倍以下であってもよい。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主として、第2領域11Bの配置の点で第2実施形態と相違する。
図8は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置における層間絶縁膜および第1主面の構成を示す図である。
図9は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
図9は、
図8中のIX-IX線に沿った断面図に相当する。
【0056】
図8および
図9に示されるように、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200では、X軸に沿って隣り合う2つのゲートトレンチ5の間において、平面視で、ソース領域13のうちでゲートトレンチ5の長手方向で隣り合う2つの第4領域18Aの間の部分に複数個、例えば2個の第2領域11Bが重なる。すなわち、平面視で、複数の第2領域11Bの各々が、ゲートトレンチ5の長手方向に沿って隣り合う2つの第4領域18Aの間で、ソース領域13と重なる。
【0057】
第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同じである。
【0058】
第2実施形態によっても第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0059】
以上、実施形態について詳述したが、本開示は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 第1主面
2 第2主面
3 側面
4 底面
5 ゲートトレンチ
10 炭化珪素基板
11 ドリフト領域
11A 第1領域
11B 第2領域
11C 第3領域
12 ボディ領域
13 ソース領域
16 電界緩和領域
17 接続領域
18 コンタクト領域
18A 第4領域
18B 第5領域
40 炭化珪素エピタキシャル層
50 炭化珪素単結晶基板
60 ソース電極
61 コンタクト電極
62 ソース配線
70 ドレイン電極
81 ゲート絶縁膜
82 ゲート電極
83 層間絶縁膜
84 バリアメタル膜
90 コンタクトホール
100、200 炭化珪素半導体装置
A1 第1寸法
A2 第2寸法
A3、A4 寸法
HL1、HL2 半直線
L1 第1仮想直線
P1 仮想平面
θ1 角度