(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153356
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】Cuピラー接合体、および、Cuピラー接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01L21/92 602D
H01L21/92 604A
H01L21/92 603A
H01L21/60 311Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067191
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】中川 卓眞
(72)【発明者】
【氏名】古山 大貴
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044LL13
(57)【要約】
【課題】低温・短時間の条件でも、金属間化合物を十分に形成でき、はんだ層が多く残存せずに熱信頼性に優れたCuピラー接合体を提供する。
【解決手段】第1Cuピラー11と第2Cuピラー21とが接合層30を介して接合されたCuピラー接合体1であって、接合層30は、第1Cuピラー11側に形成されたポーラスCu層31と、第2Cuピラー21側に形成されたはんだ層32と、ポーラスCu層と31はんだ層32との間に形成された金属間化合物層33と、を有しており、ポーラスCu層31における空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1Cuピラーと第2Cuピラーとが接合層を介して接合されたCuピラー接合体であって、
前記接合層は、前記第1Cuピラー側に形成されたポーラスCu層と、第2Cuピラー側に形成されたはんだ層と、ポーラスCu層とはんだ層との間に形成された金属間化合物層と、を有しており、
前記ポーラスCu層における空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされていることを特徴とするCuピラー接合体。
【請求項2】
前記第2Cuピラーと前記はんだ層との間に拡散防止層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のCuピラー接合体。
【請求項3】
前記第2Cuピラーと前記はんだ層との間に第2ポーラスCu層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のCuピラー接合体。
【請求項4】
前記はんだ層は、InまたはIn合金で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のCuピラー接合体。
【請求項5】
第1Cuピラーと第2Cuピラーとが接合されたCuピラー接合体の製造方法であって、
前記第1Cuピラーの接合面に、空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされたポーラスCu層を形成するポーラスCu層形成工程と、
前記第2Cuピラーの接合面にはんだ層を形成するはんだ層形成工程と、
前記ポーラスCu層を形成した前記第1Cuピラーと前記はんだ層を形成した前記第2Cuピラーとを積層する積層工程と、
積層した前記第1Cuピラーと前記第2Cuピラーを120℃以上200℃以下の温度で加熱処理して前記ポーラスCu層と前記はんだ層との間に金属間化合物を生成し、前記第1Cuピラーと前記第2Cuピラーとを接合する接合工程と、
を備えていることを特徴とするCuピラー接合体の製造方法。
【請求項6】
前記第2Cuピラーの接合面に拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程を有し、前記はんだ層形成工程では、前記拡散防止層の上に前記はんだ層を形成することを特徴とする請求項5に記載のCuピラー接合体の製造方法。
【請求項7】
前記第2Cuピラーの接合面に第2ポーラスCu層を形成する第2ポーラスCu層形成工程を有し、前記はんだ層形成工程では、前記第2ポーラスCu層の上に前記はんだ層を形成することを特徴とする請求項5に記載のCuピラー接合体の製造方法。
【請求項8】
前記はんだ層形成工程は、InまたはIn合金で構成されたはんだ層を形成することを特徴とする請求項5に記載のCuピラー接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1Cuピラーと第2Cuピラーとを接合するCuピラーの接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの性能は、高性能化が進んでおり、マイクロ接合技術の重要性が増している。
ICチップの実装技術として、フリップチップ実装が広く用いられており、例えば特許文献1に示すように、突起電極上にはんだ層を形成し、はんだによって接合する方法が提供されている。
【0003】
また、さらなる狭ピッチ化に対応するために、固相と液相とを相互に拡散させて接合させるTLP法(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)、SLID法(Solid-Liquid Interdiffusion)といった接合技術が提案されている。
SLID法では、特許文献1,2に示すように、液相を形成する材料としてはんだ材を使用している
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-046148号公報
【特許文献2】特許第6061276号公報
【特許文献3】特許第6369620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、SLID法では上述のようにはんだ材を用いているが、接合後に低融点のはんだ材が多く残存していると、耐熱性に劣り、熱サイクル信頼性、熱信頼性が不十分となるおそれがあった。
はんだ材を拡散させて金属間化合物を形成するためには、長時間の加熱が必要となり、生産効率が低下するといった問題があった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、低温・短時間の条件でも、金属間化合物を十分に形成でき、はんだ層が多く残存せずに熱信頼性に優れたCuピラー接合体、および、Cuピラー接合体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、Cuピラーの接合面に、ポーラスなCu層を形成することにより、Cuピラーの接合面の表面積が大きくなると共に拡散速度が速くなり、金属間化合物の生成を促進することができ、接合後に低融点のはんだ材が多く残存することを抑制可能となるとの知見を得た。
【0008】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の態様1のCuピラー接合体は、第1Cuピラーと第2Cuピラーとが接合層を介して接合されたCuピラー接合体であって、前記接合層は、前記第1Cuピラー側に形成されたポーラスCu層と、第2Cuピラー側に形成されたはんだ層と、ポーラスCu層とはんだ層との間に形成された金属間化合物層と、を有しており、前記ポーラスCu層における空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされていることを特徴としている。
【0009】
本発明の態様1のCuピラー接合体によれば、前記第1Cuピラーおよび前記第2Cuピラーとの間に形成された接合層が、前記第1Cuピラー側に形成されたポーラスCu層と、第2Cuピラー側に形成されたはんだ層と、ポーラスCu層とはんだ層との間に形成された金属間化合物層と、を有しており、前記ポーラスCu層における空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされているので、低温・短時間の条件でも、はんだ層が溶融した液相と固相のポーラスCu層とが十分に相互拡散して金属間化合物の生成が促進されることになり、低融点のはんだ材が多く残存することが抑制されており、熱信頼性に優れている。
【0010】
本発明の態様2のCuピラー接合体は、態様1のCuピラーの接合方法において、前記第2Cuピラーと前記はんだ層との間に拡散防止層が形成されていることを特徴としている。
本発明の態様2のCuピラー接合体によれば、前記第2Cuピラーと前記はんだ層との間に拡散防止層が形成されているので、はんだ層を構成する金属元素が第2Cuピラーへ拡散することを抑制でき、はんだ層が溶融した液相と固相のポーラスCu層とを十分に相互拡散することができ、第1Cuピラーと第2Cuピラーとを確実に接合することができる。
【0011】
本発明の態様3のCuピラー接合体は、態様1又は態様2のCuピラー接合体において、前記第2Cuピラーと前記はんだ層との間に第2ポーラスCu層が形成されていることを特徴としている。
本発明の態様3のCuピラー接合体によれば、前記第2Cuピラーと前記はんだ層との間に第2ポーラスCu層が形成されているので、第2ポーラスCu層側でも金属間化合物の生成を促進することができ、低融点のはんだ材が多く残存することがさらに抑制され、熱信頼性に優れたピラー接合体を作製することができる。
【0012】
本発明の態様4のCuピラー接合体は、態様1から態様3のいずれかひとつのCuピラー接合体において、前記はんだ層は、InまたはIn合金で構成されていることを特徴としている。
本発明の態様4のCuピラー接合体によれば、前記はんだ層がInまたはIn合金で構成されているので、200℃以下の低温条件で接合することができる。
【0013】
本発明の態様5のCuピラー接合体の製造方法は、第1Cuピラーと第2Cuピラーとが接合されたCuピラー接合体の製造方法であって、前記第1Cuピラーの接合面に、空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされたポーラスCu層を形成するポーラスCu層形成工程と、前記第2Cuピラーの接合面にはんだ層を形成するはんだ層形成工程と、前記ポーラスCu層を形成した前記第1Cuピラーと前記はんだ層を形成した前記第2Cuピラーとを積層する積層工程と、積層した前記第1Cuピラーと前記第2Cuピラーを120℃以上200℃以下の温度で加熱処理して前記ポーラスCu層と前記はんだ層との間に金属間化合物を生成し、前記第1Cuピラーと前記第2Cuピラーとを接合する接合工程と、を備えていることを特徴としている。
【0014】
本発明の態様5のCuピラー接合体の製造方法によれば、第1Cuピラーの接合面に空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされたポーラスCu層を形成し、はんだ材を介して第1Cuピラーと第2Cuピラーとを積層し、120℃以上200℃以下の温度で加熱処理しているので、はんだ層が溶融した液相と固相のポーラスCu層とが十分に相互拡散して金属間化合物の生成が促進され、低融点のはんだ材が多く残存することが抑制され、熱信頼性に優れたピラー接合体を作製することができる。
【0015】
本発明の態様6のCuピラー接合体の製造方法は、態様5のCuピラー接合体の製造方法において、前記第2Cuピラーの接合面に拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程を有し、前記はんだ層形成工程では、前記拡散防止層の上に前記はんだ層を形成することを特徴としている。
本発明の態様6のCuピラー接合体の製造方法によれば、前記第2Cuピラーの接合面に拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程を有しているので、はんだ層を構成する金属元素が第2Cuピラーへ拡散することを抑制でき、はんだ層が溶融した液相と固相のポーラスCu層とを十分に相互拡散することができ、第1Cuピラーと第2Cuピラーとを確実に接合することができる。
【0016】
本発明の態様7のCuピラー接合体の製造方法は、態様5または態様6のCuピラー接合体の製造方法において、前記第2Cuピラーの接合面に第2ポーラスCu層を形成する第2ポーラスCu層形成工程を有し、前記はんだ層形成工程では、前記第2ポーラスCu層の上に前記はんだ層を形成することを特徴としている。
本発明の態様7のCuピラー接合体の製造方法によれば、前記第2Cuピラーの接合面に第2ポーラスCu層を形成する第2ポーラスCu層形成工程を有しているので、前記第2Cuピラーの接合面に形成された第2ポーラスCu層側でも金属間化合物の生成を促進することができ、熱信頼性に優れたピラー接合体を作製することができる。
【0017】
本発明の態様8のCuピラー接合体の製造方法は、態様5から態様7のいずれかひとつのCuピラー接合体の製造方法において、前記はんだ層形成工程は、InまたはIn合金で構成されたはんだ層を形成することを特徴としている。
本発明の態様8のCuピラー接合体の製造方法によれば、前記はんだ層形成工程においてInまたはIn合金で構成されたはんだ層を形成しているので、200℃以下の低温条件で接合することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温・短時間の条件でも、金属間化合物を十分に形成でき、はんだ層が多く残存せずに熱信頼性に優れたCuピラー接合体、および、Cuピラー接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るCuピラー接合体の説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るCuピラー接合体の製造方法のフロー図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るCuピラーの接合方法(Cuピラー接合体の製造方法)の説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るCuピラー接合体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態であるCuピラー接合体、および、Cuピラー接合体の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係るCuピラー接合体1は、例えば、半導体デバイスにおいて、半導体チップに形成された突起電極(Cuピラー)同士が接合されたものである。
図1に示すように、本実施形態におけるCuピラー接合体1は、第1ウェハ10に形成された第1Cuピラー11と、第2ウェハ20に形成された第2Cuピラー21とが、接合層30を介して接合された構造とされている。
【0022】
接合層30においては、第1Cuピラー11側に形成されたポーラスCu層31と、第2Cuピラー21側に形成されたはんだ層32と、ポーラスCu層31とはんだ層32との間に形成された金属間化合物層33と、を備えている。
【0023】
そして、第1Cuピラー11側に形成されたポーラスCu層31は、ナノサイズの空孔を有するものとされている。
ここで、ポーラスCu層31においては、その平均空孔度Paveが5%以上80%以下の範囲内とされている。
平均空孔度Paveは、以下のようにして算出される空孔度Pの平均値である。本実施形態では、空孔度Pを3箇所で算出し、空孔度Pの平均値として平均空孔度Paveを算出している。
空孔度Pは、ポーラスCu層31の断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより、ポーラスCu層31の全面積S1と、ポーラスCu層31中の空孔部分の面積S2を求め、以下の式により、空孔度Pを算出する。
空孔度P(%)=(S2/S1)×100
【0024】
一方、本実施形態においては、第2Cuピラー21側に形成されたはんだ層32と第2Cuピラー21との間に拡散防止層22が形成されている。
【0025】
拡散防止層22は、はんだ層23を構成する金属元素が第2Cuピラー21側に拡散することを抑制するものである。本実施形態においては、拡散防止層22はNiで構成されたものとされている。
ここで、拡散防止層22の厚さは、0.5μm以上3μm以下の範囲内とされていることが好ましい。
【0026】
はんだ層32は、溶融温度の低い金属からなるはんだ材で構成されており、その溶融温度が200℃以下であることが好ましい。
本実施形態では、はんだ層32は、InまたはIn合金で構成されており、具体的には、はんだ層32は、In-Sn合金(Sn濃度は0mass%以上75mass%以下)とされている。
また、はんだ層32を構成するはんだ材は、α線の発生量が少ない低α線材料を用いることが好ましい。
【0027】
そして、はんだ層32とポーラスCu層31との間に形成された金属間化合物層33は、はんだ層32が溶融した液相と固相のポーラスCu層31が相互に拡散することによって形成されたものである。
ここで、接合層30の厚さ(ポーラスCu層31とはんだ層32と金属間化合物層33の合計厚さ)は3μm以上20μm以下の範囲内とすることが好ましい。
また、接合層30における金属間化合物層33が占める面積割合は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0028】
次に、本実施形態であるCuピラー接合体1の製造方法は、
図2に示すように、ピラー形成工程S01と、ポーラスCu層形成工程S02と、拡散防止層形成工程S03と、はんだ材配設成工程S04と、積層工程S05と、接合工程S06と、を備えている。
【0029】
<ピラー形成工程S01>
まず、
図3に示すように、第1ウェハ10および第2ウェハ20の一面にレジスト層41,51を形成する。レジスト層41,51を形成した状態でCuめっきを行うことにより、第1Cuピラー11と第2Cuピラー21とを形成する。
なお、第1Cuピラー11および第2Cuピラー21を形成する前に、第1ウェハ10および第2ウェハ20の一面に密着層(例えばTi層)およびシード層(Cu層)を形成しておいてもよい。
【0030】
<ポーラスCu層形成工程S02>
次に、
図3に示すように、第1Cuピラー11の接合面にポーラスCu層31を形成する。本実施形態においては、レジスト層41を形成した状態で、以下のように、めっきを行うことで、ポーラスCu層形成工程S02を形成する。
ここで、ポーラスCu層31の形成方法について説明する。ポーラスCu層31の形成方法のとしては、例えば、脱合金法、直接めっき法が挙げられる。
【0031】
(脱合金法)
脱合金法においては、銅と銅より電気化学的に卑な金属種を電解めっきによって、第1Cuピラー11の接合面の接合面に共析して銅合金めっき皮膜を形成し、その後、銅合金めっき皮膜中の卑な金属種を脱合金することにより、ポーラスCu層12を形成する。
この脱合金法では、銅と銅より卑な金属種の析出割合や析出形態をそれぞれ制御することにより、所望の空孔率と形状を有するポーラスCu層31を形成することができる。
【0032】
銅合金めっきは、例えば銅塩、亜鉛塩、銅と亜鉛の析出を制御する添加剤及び溶媒を含む銅亜鉛合金めっき液を用いて形成する。この銅合金めっきは、無電解めっき法又は電解めっき法により、行うことができる。銅より電気化学的に卑な金属種(例えばFe、Mn等)も合金種として選択することができる。
【0033】
銅亜鉛合金めっきでは、金属塩として硫酸銅、硫酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、リン酸亜鉛等を用いることができる。
銅亜鉛合金めっき液中の銅イオンと亜鉛イオンは、それぞれ0.001~1.0モルとすることが好ましく、銅イオンと亜鉛イオンのモル比がCu:Zn=1:1~1;1000の範囲内とすることが好ましい。亜鉛イオン濃度を銅イオン濃度より高くするのは、標準酸化還元電位の違いから、銅が亜鉛に比べて優先析出するためである。
【0034】
また、支持塩(錯体化剤)として、クエン酸、ピロリン酸を加えてもよい。
光沢剤として、例えばアルカノールアミン等の界面活性剤や、グリシン、セリン、アラニン、チロシンアスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン等、もしくはこれらの塩が挙げられる。
めっき液のpHは、銅と亜鉛の析出バランスを調整する理由で2.5以上であるとよい。また、カソード電流密度を0.3A/dm2以上0.8A/dm2以下の範囲内に設定する。
【0035】
銅亜鉛合金めっき皮膜を形成した後に、レジスト剥離液を用いてレジスト層41を除去し、その後、脱合金処理を行う。
形成された銅亜鉛合金めっき皮膜の脱合金処理としては、薬液によるエッチング反応や電気化学的にアノード反応を進行させる方法等が挙げられる。本実施形態では、酸による脱合金を実施し、銅合金被膜を濃度が0.002mol/L以上0.5mol/L以下の範囲内の塩酸を含む20℃以上35℃以下の範囲内の温度の溶液に、めっき膜の厚さにもよるが30分以上浸漬及び撹拌することにより銅亜鉛合金めっき皮膜から亜鉛を除去する脱合金を行う。これにより、第1Cuピラー11の接合面にポーラスCu層31が形成される。
【0036】
次いで、形成したポーラスCu層31を、エタノール、水、アセトン等の洗浄用溶媒で洗浄し、大気中で乾燥空気を用いて乾燥する。
なお、表面酸化を防ぐために、ベンゾトリアゾール及び界面活性剤を主成分とした防錆剤に所定時間浸漬することが好ましい。
【0037】
(直接めっき法)
直接めっき法においては、銅イオン電析抑制剤であるアゾール系の添加剤を用いたCuめっき液を用いて、第1Cuピラー11の接合面に対して電解めっきすることにより、ポーラスな構造のポーラスCu層31を形成する。ポーラスCu層31を形成した後に、レジスト剥離液を用いてレジスト層41を除去する。
この直接めっき法では、Cuめっき液に含まれる添加剤の種類および含有量、めっき条件を制御することにより、所望の空孔率と形状を有するポーラスCu層31を形成することが可能となる。
【0038】
Cuめっき液としては、可溶性銅塩と、銅イオン電析抑制剤である五員環中に2個以上3個以下の窒素原子を有するアゾール化合物と、酸と、水とを含む酸性電解銅めっき液を用いる。なお、必要に応じて、光沢剤、界面活性剤、酸化防止剤等を添加することも可能である。
なお、Cuめっき液においては、銅濃度が0.1mol/L以上であり、前記アゾール化合物濃度が10mmol/L以上50mmol/L以下であり、塩素塩化物イオン濃度が10ppm以下のものを用いる。
【0039】
可溶性銅塩の具体例としては、硫酸銅、酸化銅、炭酸銅;メタンスルホン酸銅、プロパン酸銅等のアルカンスルホン酸銅;イセチオン酸銅、プロパノールスルホン酸銅等のアルカノールスルホン酸銅;酢酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅などの有機酸銅などが挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0040】
更に、酸としては、有機酸又は無機酸が挙げられる。これらを例示すれば、硫酸;メタンスルホン酸、プロパンスルホン酸等のアルカンスルホン酸類;イセチオン酸、プロパノールスルホン酸等のアルカノールスルホン酸類;クエン酸、酒石酸などの有機酸類等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上混合して使用することができる。水としては、イオン交換水、蒸留水等の純水が挙げられる。
【0041】
また、めっき条件としては、例えば、直流電源を用いて、電流密度を0.1A/dm2~5A/dm2程度、好ましくは0.4A/dm2~1.0A/dm2にし、所望のポーラスCu層12が形成できるめっき時間を選択する。
上記条件でCuめっきを行うと、銅イオンとともに銅イオン電析抑制剤であるアゾール化合物も、第1Cuピラー11の接合面であるカソード面に吸着する。アゾール化合物の存在により銅イオンの電析が強く抑制され、銅の核生成が優先され、カソード面に銅めっき皮膜としてポーラスCu層31が形成される。
【0042】
<拡散防止層形成工程S03>
第2Cuピラー21の接合面に拡散防止層22を形成する。本実施形態では、レジスト層51を形成した状態で、Niめっきを行うことにより、Niからなる拡散防止層22を形成する。
【0043】
<はんだ層形成工程S04>
次に、第2Cuピラー21の接合面に形成した拡散防止層22に積層するように、はんだ材を配設してはんだ層32を形成する。本実施形態では、レジスト層51を形成した状態で、はんだ材をめっきすることにより、はんだ層32を形成する。はんだ層32を形成した後に、レジスト剥離液を用いてレジスト層51を除去する。
ここで、はんだ層32の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲内とすることが好ましい。
また、はんだ材としては、InまたはIn合金で構成されており、具体的には、はんだ層32は、In-Sn合金(Sn濃度は0mass%以上75mass%以下)とされている。
なお、はんだ層32を構成するはんだ材は、α線の発生量が少ない低α線材料を用いることが好ましい。
【0044】
<積層工程S05>
次に、
図3に示すように、接合面にポーラスCu層31を形成した第1Cuピラー11と、接合面に拡散防止層22およびはんだ層32を形成した第2Cuピラー21を積層する。
【0045】
<接合工程S06>
次に、
図3に示すように、積層した第1Cuピラー11と第2Cuピラー21とを積層方向に加圧しながら加熱し、第1Cuピラー11と第2Cuピラー21とを接合する。これにより、第1Cuピラー11と第2Cuピラー21とが接合されたピラー接合体1が製造される。
【0046】
本実施形態では、はんだ層32が溶融した液相と固相のポーラスCu層31とが相互に拡散することによって接合するSLID法によって、第1Cuピラー11と第2Cuピラー21とを接合している。
すなわち、はんだ層32が溶融した液相と固相のポーラスCu層31とが相互に拡散することにより、金属間化合物層33が形成され、第1Cuピラー11と第2Cuピラー21とが接合することになる。
【0047】
本実施形態においては、接合工程S06における加圧荷重が0.1MPa以上20MPa以下の範囲内であることが好ましい。
また、本実施形態においては、接合工程S06における接合温度は120℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましい。
さらに、本実施形態においては、接合工程S06における接合温度での保持時間は10秒以上3分以下の範囲内であることが好ましい。
【0048】
以上のような構成とされた本実施形態であるCuピラー接合体1によれば、第1Cuピラー11および第2Cuピラー21との間に形成された接合層30が、第1Cuピラー11側に形成されたポーラスCu層31と、第2Cuピラー21側に形成されたはんだ層32と、ポーラスCu層31とはんだ層32との間に形成された金属間化合物層33と、を有しており、ポーラスCu層31における空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされているので、低温・短時間の条件でも、はんだ層32が溶融した液相と固相のポーラスCu層31とが十分に相互拡散して金属間化合物の生成が促進されることになり、低融点のはんだ材が多く残存することが抑制され、熱信頼性に優れている。
【0049】
本実施形態であるCuピラー接合体1において、第2Cuピラー21の接合面に拡散防止層22が形成されている場合には、はんだ層13を構成する金属元素が第2Cuピラー21側へ拡散することを抑制でき、はんだ層32が溶融した液相と固相のポーラスCu層31とが十分に相互拡散して金属間化合物の生成が促進されることになり、第1Cuピラー11と第2Cuピラー12とを確実に接合することができる。
【0050】
本実施形態であるCuピラー接合体1において、はんだ層32が、InまたはIn合金で構成されている場合には、200℃以下の低温条件でも液相を生じさせることができ、SLID法によって、第1Cuピラー11と第2Cuピラー12とを確実に接合することができる。
【0051】
本実施形態であるCuピラー接合体1の製造方法によれば、第1Cuピラー11の接合面に空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされたポーラスCu層31を形成し、はんだ層32を介して第1Cuピラー11と第2Cuピラー12とを積層し、120℃以上200℃以下の温度で加熱処理しているので、はんだ層32が溶融した液相と固相のポーラスCu層31とが十分に相互拡散して金属間化合物の生成が促進され、低融点のはんだ材が多く残存することが抑制され、熱信頼性に優れたピラー接合体1を作製することができる。
【0052】
本実施形態であるCuピラー接合体1の製造方法において、第2Cuピラー21の接合面に拡散防止層22を形成する拡散防止層形成工程S03を有している場合には、はんだ層32を構成する金属元素が第2Cuピラー21へ拡散することを抑制でき、第1Cuピラー11と第2Cuピラー21とを確実に接合することができる。
【0053】
また、本実施形態において、はんだ層32を構成するはんだ材として、α線の発生量が少ない低α線材料を用いた場合には、本実施形態であるピラー接合体1を備えた半導体デバイスにおけるソフトエラーの発生を抑制でき、安定して使用可能な半導体デバイスを構成することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、Niからなる拡散防止層22を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、拡散防止層を形成しないものであってもよい。
【0055】
また、本実施形態では、第1Cuピラー側にポーラスCu層を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、
図4に示すピラー接合体101のように、第2Cuピラー21側に第2ポーラスCu層34を形成し、この第2ポーラスCu層34に接するようにはんだ層31を形成してもよい。この場合、はんだ層31とポーラスCu層34との間に第2金属間化合物層35が形成されることになる。
【実施例0056】
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
【0057】
まず、ウェハ表面にシード層が形成されたSiウェハ(厚さ:0.8mm)を用いた。シード層は、ウェハ表面にチタン層(厚さ:100nm)とこのチタン層の上に銅層(厚さ:500nm)をそれぞれスパッタリングにより形成した。
このSiウェハ表面をフォトレジストで75μm径バンプパターン(バンプ総数625)を有するようにパターニングして、シード層上に開口部付きのレジスト層を形成した。
【0058】
本発明例1~12においては、上述のウェハを第1ウェハとし、この第1ウェハの一面に、第1CuピラーおよびポーラスCu層を形成した。なお、比較例1においては、ポーラスCu層を形成しなかった。
【0059】
ここで、本発明例1~6および比較例2においては、脱合金法によってポーラスCu層を形成した。
銅-亜鉛合金電気めっき液を用いて銅-亜鉛合金電気めっきを行った。表1に本発明例1~7の脱合金法のめっき条件を示す。
銅-亜鉛合金めっき層を形成した後に、ドライフィルム用レジスト剥離液によりレジスト層を溶解して除去した。次いで、エッチング液を用いて、銅-亜鉛合金めっき層が形成されていない部分のシード層を除去した。次に、銅-亜鉛合金めっき層を、濃度1.00モル/Lの塩酸を含む27℃の溶液に浸漬し、溶液を70分間攪拌することにより、銅-亜鉛合金めっき層から亜鉛を除去して脱合金した。
【0060】
【0061】
本発明例7~12および比較例3においては、直接めっき法によってポーラスCu層を形成した。
銅めっき浴を用いて銅めっきを行った。表2に本発明例7~12および比較例3の直接めっき法のめっき条件を示す。
直接めっき法では、ポーラス銅めっきを行った後に、ドライフィルム用レジスト剥離液によりレジスト層を溶解して除去し、シード層のエッチングを行った。
【0062】
【0063】
また、上述のウェハを第2ウェハとし、この第2ウェハの一面に、第2Cuピラー、Niからなる拡散防止層、はんだ材層を、めっきによって形成した。それぞれの厚さは、表3に示すものとした。
【0064】
そして、表3に示す第1Cuピラー第2Cuピラーを積層し、Treky製の高精度フリップチップボンダーT-300-PROを用いて、位置合わせを実施した後、窒素雰囲気中で0.1MPaの圧力で加圧し、表3に示す接合温度で1分保持の条件で加熱処理することにより、第1Cuピラーと第2Cuピラーとを接合し、ピラー接合体を得た。
【0065】
ここで、形成したポーラスCu層における平均空孔度Paveを、以下のようにして算出した。
ポーラスCu層の断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより、ポーラスCu層の全面積S1と、ポーラスCu層中の空孔部分の面積S2を求め、以下の式により、空孔度Pを算出した。
空孔度P(%)=(S2/S1)×100
そして、空孔度Pを3箇所で算出し、空孔度Pの平均値として平均空孔度Paveを算出した。評価結果を表3に示す。
【0066】
また、ピラー接合体の接合部分を断面観察し、接合部分における金属化合物の生成状況(IMC化)を評価した。
ピラー接合体の接合層の断面をCP加工し、SEM像と、Cuおよびはんだ材の金属(In,Sn)のEDSマップを得た。はんだ材の金属(In,Sn)とCuのEDSマップの重複した部分を金属間化合物とした。そして、以下の式によって、接合部分における金属化合物の面積率(IMC化率)を算出した。
IMC化率(%)=(はんだ材(In,Sn)とCuのEDS重複面積)/(はんだ材(In,Sn)のEDS面積)×100
【0067】
上述のIMC化率(%)が90%以上の場合を「良」、IMC化率(%)が50%以上90%未満の場合を「可」、IMC化率(%)が50%未満の場合を「不可」と評価した。評価結果を表3に示す。
【0068】
【0069】
ポーラスCu層を形成しなかった比較例1においては、200℃、1分の条件では、金属間化合物が十分に生成せず、低融点のはんだ層が多く残存した。
ポーラスCu層の空孔率が85%とされた比較例2においては、150℃、1分の条件では、金属間化合物が十分に生成せず、低融点のはんだ層が多く残存した。
ポーラスCu層の空孔率3%とされた比較例3においては、200℃、1分の条件では、金属間化合物が十分に生成せず、低融点のはんだ層が多く残存した。
【0070】
これに対して、空孔率が5%以上80%以下の範囲内とされたポーラスCu層を形成した本発明例1~12においては、金属間化合物が十分に生成し、低融点のはんだ層の残存を抑えることができた。
【0071】
以上の確認実験の結果から、本発明例によれば、低温・短時間の条件でも、金属間化合物を十分に形成でき、はんだ層が多く残存せずに熱信頼性に優れたCuピラー接合体、および、Cuピラー接合体の製造方法を提供可能であることが確認された。