(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153359
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】水上の上部工の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20241022BHJP
E02B 17/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
E02B3/06
E02B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067198
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】若松 宏知
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋志
(72)【発明者】
【氏名】桑原 拓馬
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118BA03
2D118BA05
2D118CA03
2D118DA05
2D118FA08
2D118FB26
2D118FB39
2D118GA07
2D118HA12
2D118HA34
(57)【要約】
【課題】水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に設置したプレキャストコンクリートブロックの下方での作業を行わずに、効率的に上部工を構築できる水上の上部工の構築方法を提供する。
【解決手段】水底地盤WBに立設されている支持体40が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔3を有するプレキャストコンクリートブロック2を、支持体40の上方から下方移動させて、貫通孔3に支持体40を遊挿した状態で所定位置に配置する。次いで、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする。その後、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に中詰めコンクリート8を充填して固化させることにより、プレキャストコンクリートブロック2と固化された中詰めコンクリート8とを一体化した上部工1を支持体40の上部に固定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、
前記支持体が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔を有するプレキャストコンクリートブロックを、前記支持体の上方から下方移動させて、前記貫通孔に前記支持体を遊挿した状態で所定位置に配置し、前記プレキャストコンクリートブロックの上からの作業で、前記支持体の外周面と前記貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞いだ状態にして、前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に中詰めコンクリートを充填して固化させることにより、前記プレキャストコンクリートブロックと固化された前記中詰めコンクリートとを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする水上の上部工の構築方法。
【請求項2】
前記すき間を塞いだ状態にする作業では、複数の支持部材をそれぞれ、前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に突っ張らせた状態で固定し、その複数の前記支持部材により、前記すき間を塞ぐ底板部材を支持した状態にする請求項1に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項3】
前記貫通孔に前記支持体を遊挿する前に、前記プレキャストコンクリートブロックの前記貫通孔の内周面に、平面視で前記貫通孔の中央に向かって伸長可能な前記支持部材を設けておき、前記貫通孔に前記支持体を遊挿した後に、前記支持部材を前記支持体の外周面に向かって伸長させることで、前記支持部材を前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に突っ張らせた状態にする請求項2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項4】
前記貫通孔に前記支持体を遊挿した後に、形状取得手段により平面視での前記すき間の形状情報を取得し、その取得した前記形状情報に基づいて前記底板部材を作製する請求項2または3に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項5】
前記すき間を塞いだ状態にする作業では、前記すき間に配置した膨張部材に気体または液体を注入して前記膨張部材を膨張させることで、前記すき間を膨張した前記膨張部材で塞いだ状態にする請求項1に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項6】
前記貫通孔に前記支持体を遊挿する前に、平面視で前記支持体の外周面から外側に向かって延在する閉塞部と、前記閉塞部に下端部が接合されていて上方に延在する支持棒とを有する移動式架台を、前記支持体に取付けておき、
前記貫通孔に前記支持体を遊挿する際には、前記閉塞部を前記プレキャストコンクリートブロックの下方に配置して、前記支持棒を前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に挿通させた状態とし、
前記すき間を塞いだ状態にする作業では、前記支持棒を上方に引き上げることで、前記閉塞部を前記プレキャストコンクリートブロックの底面に向けて上方移動させ、前記閉塞部により前記支持体の外周面と前記貫通孔の下端との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持棒を前記支持体または前記プレキャストコンクリートブロックに対して固定する請求項1に記載の水上の上部工の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上の上部工の構築方法に関し、さらに詳しくは、水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に設置したプレキャストコンクリートブロックの下方での作業を行わずに、効率的に上部工を構築できる水上の上部工の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に支持される桟橋等の水上の上部工を構築する方法としては、例えば、水上において鉄筋を配筋した後に型枠を設置して、施工現場で型枠内に生コンクリートを打設して固化させる方法がある。このような上部工の構築方法では、水上に仮設足場や支保工を設置し、鉄筋を組み立てた後に型枠などの設置やコンクリートの打ち込み等を行って構築する必要があり、水上での煩雑な作業も多いため、施工効率を向上させるには限界がある。
【0003】
そこで、水上構造物(上部工)の構築方法として、杭が挿通する杭孔を有するプレキャストコンクリート版を地上で形成しておき、プレキャストコンクリート版の杭孔に杭の頭部を遊挿した状態で杭に対してプレキャストコンクリート版を固定し、プレキャストコンクリート版の外回りに足場を取付ける構築方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構築方法では、プレキャストコンクリート版の杭孔と杭の外周面との間のすき間を、プレキャストコンクリート版の下方に設けた漏れ止め板で塞いだ状態にして、前述したすき間に無収縮モルタルを充填することで、プレキャストコンクリート版を杭の頭部に固定している。しかしながら、特許文献1で提案されている構築方法では、プレキャストコンクリート版の杭孔と杭の外周面との間のすき間を漏れ止め板で塞ぐ作業を、杭に設置したプレキャストコンクリート版の下方から行う必要があり、潜水士などの作業者がプレキャストコンクリート版の下に入って煩雑な作業を行う必要がある。それ故、水上の上部工を構築する施工効率や作業者の安全性を向上させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に設置したプレキャストコンクリートブロックの下方での作業を行わずに、効率的に上部工を構築できる水上の上部工の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の水上の上部工の構築方法は、水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、前記支持体が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔を有するプレキャストコンクリートブロックを、前記支持体の上方から下方移動させて、前記貫通孔に前記支持体を遊挿した状態で所定位置に配置し、前記プレキャストコンクリートブロックの上からの作業で、前記支持体の外周面と前記貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞いだ状態にして、前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に中詰めコンクリートを充填して固化させることにより、前記プレキャストコンクリートブロックと固化された前記中詰めコンクリートとを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プレキャストコンクリートブロックに設けた貫通孔に支持体を遊挿した状態で所定位置に配置し、プレキャストコンクリートブロックの上からの作業で、支持体の外周面と前記貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞いだ状態にすることで、支持体に設置したプレキャストコンクリートブロックの下方での作業を行わずに水上の上部工を簡易に構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の水上の上部工の構築方法で支持体の上部に構築した上部工を側面視で例示する説明図である。
【
図2】上部工を構成するプレキャストコンクリートブロックを支持体に設置する前の状況を平面視で例示する説明図である。
【
図3】上部工を構成するプレキャストコンクリートブロックを支持体に設置する前の状況を断面視で例示する説明図である。
【
図4】
図2および
図3のプレキャストコンクリートブロックを支持体に設置した状況を平面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4の状況からプレキャストコンクリートブロックの貫通孔に設けている支持部材を支持体の外周面に向けて伸長させている状況を断面視で例示する説明図である。
【
図6】
図5の状況からすべての支持部材を支持体の外周面とプレキャストコンクリートブロックの貫通孔の内周面との間に突っ張らせた状態で固定し、支持体の外周面と貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞ぐ底板部材を作製した状況を平面視で例示する説明図である。
【
図7】
図6の状況から支持部材の上に底板部材を設置して、支持体の外周面とプレキャストコンクリートブロックの貫通孔の内周面との間に中詰めコンクリートを充填して固化させた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図8】プレキャストコンクリートブロックの貫通孔に設けている別の支持部材を、支持体の外周面に向けて伸長させている状況を断面視で例示する説明図である。
【
図9】
図8の支持部材を支持体の外周面とプレキャストコンクリートブロックの貫通孔の内周面との間に突っ張らせて固定した状況を断面視で例示する説明図である。
【
図10】プレキャストコンクリートブロックの貫通孔に設けているさらに別の支持部材と底板部材を、支持体の外周面に向けて伸長させる前の状況を断面視で例示する説明図である。
【
図12】
図10および
図11の支持部材と底板部材を、支持体の外周面に向けて伸長させた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図14】支持体の外周面とプレキャストコンクリートブロックの貫通孔の内周面との間に設けた膨張部材を膨張させる前の状況を断面視で例示する説明図である。
【
図15】
図14の膨張部材に気体を注入している状況を断面視で例示する説明図である。
【
図16】
図15の膨張部材を膨張させた状況を平面視で例示する説明図である。
【
図17】
図16の状況から、支持体の外周面とプレキャストコンクリートブロックの貫通孔の内周面との間に中詰めコンクリートを充填して固化させた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図18】支持体に取付けた移動式架台によって、支持体の外周面とプレキャストコンクリートブロックの貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞ぐ前の状況を断面視で例示する説明図である。
【
図19】
図18の状況から移動式架台を上方移動させて、移動式架台の閉塞部によって支持体の外周面とプレキャストコンクリートブロックの貫通孔の下部の内周面との間のすき間を塞いだ状況を断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の水上の上部工の構築方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1に例示するように、本発明は、水底地盤WBに打設された杭や矢板などの支持体40の上部に固定される桟橋等の水上の上部工1を構築する方法である。支持体40としては、例えば、鋼管杭やコンクリート杭などの杭や、鋼管矢板や鋼矢板などの矢板が例示できる。この実施形態では、支持体40が杭である場合を例示する。この実施形態では、1本の支持体40の上部に固定される上部工1を構築する場合を例示するが、本発明では2本以上の支持体40の上部に固定される上部工1を構築することもできる。この実施形態では、支持体40の上部が水上に突出している場合を例示しているが、支持体40の上部が水上から突出していない場合もある。
【0011】
図2および
図3に例示するように、本発明では、陸上や船上などで予め作製したプレキャストコンクリートブロック2を用いて上部工1を構築する。プレキャストコンクリートブロック2は、プレキャストコンクリートで形成されている。プレキャストコンクリートブロック2は、プレキャストコンクリートに鉄筋(または鉄骨)が埋設された鉄筋コンクリート(鉄骨鉄筋コンクリート)構造にしてもよいし、プレキャストコンクリートに鉄筋等が埋設されていない構造にすることもできる。この実施形態では、プレキャストコンクリートブロック2の外形が直方体形状に形成されている場合を例示しているが、プレキャストコンクリートブロック2の外形は直方体形状に限らず他の形状にすることもできる。
【0012】
プレキャストコンクリートブロック2は、支持体40が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔3を有している。この実施形態では、プレキャストコンクリートブロック2の中央の1ヶ所に貫通孔3が形成されている。この実施形態のプレキャストコンクリートブロック2は、プレキャストコンクリートで形成されていて貫通孔3が形成されているブロック体4と、貫通孔3に内嵌めされた上下に延在する鞘管5と、平面視で貫通孔3の内側に張り出した梁部材6と、吊金具7とを有して構成されている。
【0013】
この実施形態では、貫通孔3として、ブロック体4の下部に平面視で円形状の下部孔3bが形成されていて、下部孔3bの上方に下部孔3bよりも広い平面視で四角形状の上部孔3aが形成されている。上部孔3aと下部孔3bは上下に連通している。この実施形態では、下部孔3bに上下に延在する鞘管5が内嵌めされている。
【0014】
プレキャストコンクリートブロック2に鞘管5は任意に設けることができ、鞘管5を有さないプレキャストコンクリートブロック2を用いることもできる。本発明では、プレキャストコンクリートブロック2が鞘管5を有している場合には、鞘管5の内周面を貫通孔3の下部の内周面とし、プレキャストコンクリートブロック2が鞘管5を有していない場合には、貫通孔3の内側のコンクリート面を貫通孔3の下部の内周面とする。
【0015】
貫通孔3の下部の内寸(この実施形態では、鞘管5の内寸)は、支持体40が遊挿可能な寸法に設定されている。貫通孔3の下部の内寸は、平面視で貫通孔3の中心位置と支持体40の中心位置とを一致させた状態で貫通孔3に支持体40を挿入した場合に、貫通孔3の下部の内周面と支持体40の外周面との間に例えば、5cm以上20cm以下、より好ましくは10cm以上15cm以下のすき間(クリアランス)ができる寸法に設定するとよい。
【0016】
上部孔3aの形状は四角形状に限らず、例えば、平面視で円形状や楕円形状に形成することもできる。例えば、下部孔3bと上部孔3aを同じ形状で同じ大きさにすることもできる。
【0017】
この実施形態では、梁部材6としてH形鋼を用いているが、梁部材6として溝形鋼などのその他の型鋼を用いることもできる。梁部材6は水平方向に延在していて、平面視で貫通孔3(鞘管5)の内側に梁部材6が張り出している。梁部材6の少なくとも一部は、平面視で貫通孔3の外側まで延在している。
図2に例示するように、この実施形態では、一対の梁部材6、6が並列に間隔をあけて配置されていて、それぞれの梁部材6が貫通孔3を横断して架け渡されている。
【0018】
図3に例示するように、梁部材6は鞘管5の上部、または、鞘管5の上に配置されている。この実施形態では、鞘管5の上部にそれぞれの梁部材6を嵌込む溝が形成されていて、その溝に梁部材6が嵌め込まれた状態になっている。例えば、梁部材6は鞘管5の上に載置した状態にすることもできる。梁部材6と鞘管5は溶接などで接合することが好ましい。梁部材6の貫通孔3の内側に位置する部分が露出していて、梁部材6の貫通孔3の外側に位置する部分がブロック体4を構成するプレキャストコンクリートに埋設された構造になっている。なお、梁部材6は任意に設けることができ、梁部材6を有さないプレキャストコンクリートブロック2を用いることもできる。
【0019】
ブロック体4の上部には、プレキャストコンクリートブロック2をクレーンなどで吊り上げる際に使用する複数の吊金具7が設けられている。この実施形態では、ブロック体4の上部の四隅にそれぞれ吊金具7が配設されている。吊金具7の下部はブロック体4を構成するプレキャストコンクリートに埋設されていて、吊金具7はブロック体4に一体化されている。この実施形態では設けていないが、上部工1に係船柱などの付帯物を設ける場合には、プレキャストコンクリートブロック2(ブロック体4)に係船柱などの付帯物を一体化しておくこともできる。
【0020】
図7に例示するように、本発明では、プレキャストコンクリートブロック2を、支持体40の上方から下方移動させて、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿した状態で所定位置に配置する。そして、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする。本発明では、このすき間Sを塞ぐ作業を、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で行う。その後、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に中詰めコンクリート8を充填して固化させることにより、プレキャストコンクリートブロック2と固化された中詰めコンクリート8とを一体化した上部工1を支持体40の上部に固定する。
【0021】
図7に例示するように、この実施形態では、前述したすき間Sを塞いだ状態にする作業に、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に突っ張らせた状態で固定する複数の支持部材9と、前述したすき間Sを塞ぐ底板部材11を用いる。この実施形態の支持部材9は、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内周面に固定される固定部9aと、固定部9aに連結されていて貫通孔3の中央に向かって伸長可能な伸長部9bと、伸長部9bの先端側に設けられていて支持体40の外周面に押し当てられる押当部9cと、伸長部9bの長さを変更する伸長機構9dとを有して構成されている。
【0022】
図2および
図3に例示するように、この実施形態では、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿する前に、貫通孔3の内周面の周方向に互いに間隔をあけて複数の支持部材9を配設している。貫通孔3に支持体40を遊挿する前は、貫通孔3の内周面に固定部9aを固定し、伸長部9bは短く縮めた状態にしている。
【0023】
この実施形態のように、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に鞘管5が内嵌めされている場合には、固定部9aは例えば、磁石や接着剤、溶接などによって鞘管5の内周面に固定する。貫通孔3に鞘管5が内嵌めされていない場合には、固定部9aは例えば、接着剤などを用いて貫通孔3の内側のコンクリート面に固定する。例えば、プレキャストコンクリートブロック2を作製する際に、固定部9aをブロック体4のプレキャストコンクリートに埋設することもできる。
【0024】
この実施形態の伸長部9bは、テレスコピック構造の筒状部材で構成されている。伸長部9bは、金属などの剛性の高い部材で形成するとよい。伸長部9bは、伸長させた状態で伸長部9bの全長が剛性の高い状態となる構成にするとよい。伸長部9bは長手方向の長さを伸長できる構成であればよく、テレスコピック構造に限らず、他にも様々な構成にすることができる。押当部9cの支持体40の外周面に押し当てられる先端部には、支持体40の外周面の形状に合わせて変形可能なゴムや樹脂などの弾性部材を設けることが好ましい。
【0025】
この実施形態では、伸長機構9dとして伸長部9bの上部に水平方向に回転可能な嵌合部が設けられている。
図5に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2の上から貫通孔3に棒状の回転治具10を挿し込んで、前述した嵌合部に回転治具10の下端部を嵌合させ、回転治具10を軸回転させて嵌合部を回転させると、伸長部9bが貫通孔3の中央に向かって伸長する構成になっている。
【0026】
以下、本発明の上部工1の構築方法のより具体的な作業手順を説明する。
【0027】
図2および
図3に例示するように、上部工1を構築する支持体40のサイズに合わせて、前述した構成のプレキャストコンクリートブロック2を陸上や船上などで予め作製しておく。そして、プレキャストコンクリートブロック2を支持体40が立設されている施工水域まで搬送する。この実施形態のように、支持部材9を用いる場合には、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内周面に複数の支持部材9を配設しておく。
【0028】
上部工1を構築する施工水域の作業では、支持体40の上端から所定深さの位置に、支持体40の内部を上下に隔離する仕切板30を設けておく。仕切板30の外寸は支持体40の内寸と略同一に設定する。仕切板30を支持体40の内部に設置する方法は特に限定されないが、例えば、支持体40の上端部から吊り下げたワイヤなどの吊材で仕切板30を支持した状態にすることで、仕切板30を支持体40の内部に固定する。
【0029】
次いで、プレキャストコンクリートブロック2に設けられているそれぞれの吊金具7にクレーンから懸下されたワイヤロープの吊具を連結し、クレーンによってプレキャストコンクリートブロック2を支持体40の上方に吊上げた状態にする。そして、
図4および
図5に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2に設けられている貫通孔3と支持体40との位置を合わせた状態で、プレキャストコンクリートブロック2を支持体40の上方から下方移動させ、プレキャストコンクリートブロック2を、貫通孔3(鞘管5)に支持体40を遊挿した状態で所定位置に配置する。
【0030】
この実施形態では、貫通孔3の内側に張り出している梁部材6を支持体40の上端部に載置した状態にすることで、プレキャストコンクリートブロック2が支持体40の上部に支持された状態になる。プレキャストコンクリートブロック2が支持体40の上部に支持された状態にすると、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上にのって作業を行える状態になる。
【0031】
次いで、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、支持体40の外周面とプレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の下部との間のすき間Sを塞いだ状態にする。この実施形態では、
図5に例示するように、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上から貫通孔3に棒状の回転治具10を挿し込んで、支持部材9の伸長機構9dの嵌合部に、回転治具10の下端部を嵌合させた状態にする。その後、回転治具10を軸回転させて伸長機構9dの嵌合部を回転させることで、支持部材9の伸長部9bを貫通孔3の中央に向かって伸長させる。そして、支持部材9の押当部9cを支持体40の外周面に押し当てた状態にして、支持部材9を支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に突っ張らせた状態で固定する。前述した作業をそれぞれの支持部材9に対して行う。
【0032】
次いで、
図6に例示するように、平面視での支持体40の外周面と貫通孔3の下部(鞘管5)の内周面との間のすき間Sと同寸法の底板部材11を作製する。具体的には、例えば、3Dスキャナなどの形状取得手段を用いて、平面視での支持体40の外周面と貫通孔3の下部(鞘管5)の内周面との間のすき間Sの形状情報を取得し、その取得した形状情報に基づいて底板部材11を作製する。
【0033】
この実施形態では、底板部材11を平面視で放射状に分割された複数の扇状の分割部材11aで構成している。複数の分割部材11aを組み合わせることで、平面視でのすき間Sの形状と同寸法の環状の底板部材11が形成される構成にしている。隣り合う分割部材11aどうしには互いに重なり合う領域を設けている。底板部材11(分割部材11a)は、樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルなど)などの弾性部材で形成するとよい。
【0034】
次いで、プレキャストコンクリートブロック2の上から支持体40の外周面と貫通孔3の下部(鞘管5)の内周面との間のすき間Sに、それぞれの分割部材11aを嵌め込んで、底板部材11(複数の分割部材11a)によってすき間Sを塞いだ状態にする。底板部材11(分割部材11a)は、複数の支持部材9によって支持した状態にすることで、支持体40の外周面と貫通孔3の下部(鞘管5)の内周面との間で安定して固定された状態になる。
【0035】
次いで、
図7に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内側に中詰めコンクリート8を打設して、仕切板30よりも上方の支持体40の内側と、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sと、貫通孔3の上部(上部孔3a)に中詰めコンクリート8を充填する。この実施形態では、中詰めコンクリート8を2度に分けて打設している。一度目の打設では、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間から底板部材11の上に5cm~20cm程度の厚さになるように第一の中詰めコンクリート8aを打設して、その第一の中詰めコンクリート8aを固化させることにより、底板部材11の上に薄いコンクリート版を形成している。そして、その後に、貫通孔3が埋まるように残りの中詰めコンクリート8を打設して固化させている。
図7では、中詰めコンクリート8を充填している範囲を斜線で示している。
【0036】
その後、所定の養生期間が経過し、中詰めコンクリート8が固化すると、プレキャストコンクリートブロック2と固化された中詰めコンクリート8とが一体化された上部工1が支持体40の上部に固定された状態になる。支持部材9と底板部材11は、上部工1の一部としてそのまま残しておいてもよいし、中詰めコンクリート8が固化した後に、上部工1から取外してもよい。以上により、上部工1の構築作業が完了する。
【0037】
このように、本発明では、プレキャストコンクリートブロック2に設けた貫通孔3に支持体40を遊挿した状態とし、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にすることで、支持体40に設置したプレキャストコンクリートブロック2の下方での作業を行わずに水上の上部工1を簡易に構築することが可能になる。
【0038】
この実施形態のように、プレキャストコンクリートブロック2を作製する際に、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内側に張り出す梁部材6を設けると、支持体40の上端部に梁部材6を載置した状態にすることで、プレキャストコンクリートブロック2を支持体40の上部に簡易に安定した状態で設置することが可能になる。プレキャストコンクリートブロック2を複数の支持体40の上部に設置した後には、プレキャストコンクリートブロック2をクレーンなどで吊った状態にしなくとも、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上にのって作業を行うことが可能になるので、施工効率を向上させるには有利になる。
【0039】
なお、プレキャストコンクリートブロック2を構成する梁部材6の本数や配置は、上記で例示した実施形態に限定されず、例えば、貫通孔3の内側に張り出している梁部材6を1本や3本以上にすることもできる。また、例えば、梁部材6の端部が平面視で貫通孔3の内側に配置されていて、梁部材6が貫通孔3を横断していない構成にすることもできる。また、例えば、平面視で貫通孔3の内側に2本の梁部材6が交差するように配設された構成にすることもできる。
【0040】
この実施形態のように、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする作業において、複数の支持部材9をそれぞれ、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に突っ張らせた状態で固定し、その複数の支持部材9により底板部材11を支持した状態にすると、プレキャストコンクリートブロック2の上からの簡易な作業で、前述したすき間Sを効率的に塞ぐことができる。
【0041】
さらに、この実施形態のように、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿する前に、貫通孔3の内周面に支持部材9を設けておくと、貫通孔3に支持体40を遊挿した後に、支持部材9を支持体40の外周面に向かって伸長させるだけで、支持部材9を支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に突っ張らせた状態にできる。それ故、施工水域での作業工数を削減するには有利になる。支持部材9と底板部材11を形成する素材は適宜決定できるが、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)等の水上においても腐食し難い素材で形成するとよい。なお、支持部材9は、例えば、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿した後に、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に配設することもできる。
【0042】
この実施形態のように、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿した後に、3Dスキャナなどの形状取得手段により平面視での支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sの形状情報を取得し、その取得した形状情報に基づいて底板部材11を作製すると、前述したすき間Sと同寸法の底板部材11を比較的簡易に精度よく作製できる。
【0043】
中詰めコンクリート8を打設する際には、支持部材9と底板部材11に中詰めコンクリート8の荷重がかかるが、この実施形態のように、中詰めコンクリート8の打設を複数回に分けて行い、一度目の打設で、底板部材11の上に5cm~20cm程度の薄いコンクリート版を形成する構成にすると、その薄いコンクリート版が支持部材9および底板部材11とともに、その後に打設される中詰めコンクリート8の荷重を支持する底板として機能する。それ故、一度の打設で全ての中詰めコンクリート8を打設する場合よりも、支持部材9と底板部材11にかかる負荷を低減できる。それに伴い、支持部材9や底板部材11の軽量化や簡素化を図ることができる。
【0044】
プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする作業は、例えば、
図8および
図9に例示するような方法で行うこともできる。
【0045】
図8に例示するように、この実施形態では、先に例示した実施形態と同様に、支持部材9と底板部材11を用いて、前述したすき間Sを塞いだ状態にする。ただし、この実施形態では、支持部材9を伸長させる方法が先に例示した実施形態の支持部材9と異なっている。その他の構成は、先に例示した実施形態と同じである。
【0046】
この実施形態では、支持部材9の先端に設けられている押当部9cに、押当部9cを支持体40の外周面に向かって移動させる移動治具12が取付けられている。移動治具12は、上下方向に延在して下端部が押当部9cの上部に接合された棒状部12aと、棒状部12aの上端に設けられた掛止部12bとを有して構成されている。
【0047】
図8の矢印で示しているように、この実施形態では、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上から棒状部12aの上部を持ち、棒状部12aを支持体40の外周面に向けて移動させることで、支持部材9の押当部9cを支持体40の外周面に向けて移動させ、伸長部9bを伸長させる。そして、
図9に例示するように、支持体40の外周面に押し当てられる位置まで押当部9cを移動させる。その後、移動治具12の掛止部12bを棒状部12aに対して回動させて、掛止部12bを支持体40の上端部に掛止した状態にすることで、移動治具12と押当部9cを支持体40に対して固定した状態にする。これにより、支持部材9が支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間に突っ張った状態で固定される。その後は、先に例示した実施形態と同様に、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sに底板部材11を嵌め込んで、底板部材11を複数の支持部材9で支持した状態にする。
【0048】
この実施形態のように、移動治具12を用いて支持部材9を支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に突っ張らせた状態にする構成にすると、支持部材9の構造を非常に簡素にできる。また、支持部材9を突っ張らせて固定する作業も短時間で簡易に行えるので、施工効率を向上させるには有利になる。
【0049】
支持部材9を伸長させる方法や支持部材9の構造は、先に例示した実施形態の回転治具10を用いる方法や、この実施形態の移動治具12を用いる方法に限らず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、支持部材9に伸長機構9dとして支持部材9の上部にスイッチを設けておき、作業者が棒状部材などを用いてプレキャストコンクリートブロック2の上からそのスイッチを押すと、支持部材9(伸長部9b)が伸長する構成にすることもできる。また、例えば、支持部材9を遠隔操作機器で伸長させる構成にすることもできる。
【0050】
プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする作業は、例えば、
図10~
図13に例示するような方法で行うこともできる。
【0051】
図10および
図11に例示するように、この実施形態では、複数の閉塞装置13を用いて支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐ構成になっている。閉塞装置13は、支持部材14、底板部材15および解除機構16を有して構成されている。この実施形態の支持部材14は、貫通孔3の内周面に固定される固定部14aと、固定部14aに後端部が固定されて支持体40の外周面に向かって伸長可能な伸長部14bと、伸長部14bの先端に設けられていて支持体40の外周面に押し当てられる押当部14cと、押当部14cと固定部14aとの間に嵌め込まれた圧縮ばね14dとを有して構成されている。
【0052】
固定部14aは、先に例示した実施形態の固定部9aと同様の方法で、貫通孔3の内周面に固定される。伸長部14bは、先に例示した実施形態の伸長部9bと同様に、テレスコピック構造の筒状部材などで構成される。押当部14cの支持体40の外周面に押し当てられる先端部には、支持体40の外周面の形状に合わせて変形可能なゴムや樹脂などの弾性部材を設けることが好ましい。圧縮ばね14dは、伸長部14bに外嵌めされている。
【0053】
底板部材15は、平面視で扇状に形成されていて、貫通孔3の内周面から支持体40の外周面に向かって伸縮するように、蛇腹状に折り目が付けられている。底板部材15の後端部は固定部14aに固定され、底板部材15の先端部は押当部14cに固定されている。固定部14aの上部に解除機構16を構成する係合部16aが回転可能に接続されていて、係合部16aの先端部に上方に延在する棒状部16bの下端が接合されている。
【0054】
この実施形態では、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿する前に、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内周面の周方向に互いに間隔をあけて複数の閉塞装置13を配設している。
図10および
図11に例示するように、閉塞装置13によって、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする前の状態では、支持部材14の伸長部14bと圧縮ばね14dを収縮させ、底板部材15を蛇腹状に折り畳んだ状態にする。支持部材14の押当部14cに解除機構16の係合部16aを係合させた状態にすることで、支持部材14の伸長部14bと圧縮ばね14dが収縮し、底板部材15が蛇腹状に折り畳まれた状態で維持される構成になっている。
【0055】
図12および
図13に例示するように、閉塞装置13によって、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐ際には、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上から棒状部16bの上部を持って棒状部16bを上方に引き上げることで、固定部14aに対して係合部16aが回動し、係合部16aと押当部14cとの係合が解除される。
【0056】
係合部16aと押当部14cとの係合が解除されると、収縮した状態の圧縮ばね14dが支持体40の外周面に向かって伸びることにより、伸長部14bが支持体40の外周面に向かって伸長し、圧縮ばね14dの付勢力によって押当部14cが支持体40の外周面に押し当てられた状態になる。そして、支持部材14が支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間で突っ張った状態で固定される。また、押当部14cの移動に伴って、蛇腹状に折り畳まれて縮んでいた底板部材15が、支持体40の外周面に向かって伸びることで、底板部材15が支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に延在した状態となる。全ての閉塞装置13の底板部材15を支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に延在した状態にすると、隣り合う底板部材15どうしの一部が重なり合った状態となり、複数の底板部材15によって支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sが塞がれた状態になる。
【0057】
この閉塞装置13では、貫通孔3に中詰めコンクリート8を打設すると、底板部材15に中詰めコンクリート8の荷重がかかるが、その荷重は支持部材14によって支持される。この実施形態では、支持部材14と解除機構16は中詰めコンクリート8に埋設された状態になる。なお、この実施形態では、伸長部14bと圧縮ばね14dの下方に底板部材15を配置しているが、例えば、伸長部14bと圧縮ばね14dの上方に底板部材15を配置した構成にすることもできる。解除機構16の係合部16aと支持部材14の押当部14cとを係合させる構造はこの実施形態の構造に限らず、他にも様々な構成にすることができる。また、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上から係合部16aと押当部14cとの係合を解除できる構成であれば、解除機構16の構成はこの実施形態と異なる構成にすることもできる。
【0058】
この実施形態のように、閉塞装置13を用いると、施工水域において非常に少ない作業工数で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐことが可能になる。それ故、上部工1を構築する施工効率を高めるには有利になる。この実施形態においても、中詰めコンクリート8の打設を複数回に分けて行い、一度目の打設で、底板部材15の上に5cm~20cm程度の薄いコンクリート版を形成する構成にすると、その薄いコンクリート版が支持部材14および底板部材15とともに、その後に打設される中詰めコンクリート8の荷重を支持する底板として機能する。それ故、一度の打設で全ての中詰めコンクリート8を打設する場合よりも、支持部材14と底板部材15にかかる負荷を低減することができる。それに伴い、支持部材14や底板部材15の軽量化や簡素化を図ることができる。
【0059】
プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする作業は、例えば、
図14~
図17に例示するような方法で行うこともできる。
【0060】
図14および
図15に例示するように、この実施形態では、複数の膨張装置17を用いる。膨張装置17は、貫通孔3の下部の内周面に固定される固定部17aと、固定部17aに取付けられた膨張部材17bと、膨張部材17bに気体Gまたは液体を注入する注入口17cと、膨張部材17bを支持する支持板部17dとを有して構成されている。
【0061】
固定部17aは、先に例示した実施形態の固定部9aや固定部14aと同様の方法で、貫通孔3の内周面に固定される。膨張部材17bは袋状に形成されていて、内部に気体Gや液体を注入することで膨張する構成になっている。膨張部材17bは例えば、ゴムや樹脂などの伸縮可能な弾性部材で形成するとよい。
【0062】
図15に例示するように、この実施形態では、固定部17aに注入口17cが設けられていて、注入口17cに注入管18が接続できる構造になっている。作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上から注入管18を注入口17cに接続し、注入管18を介して注入口17cに気体Gまたは液体を注入することで、膨張部材17bの内部に気体Gまたは液体を注入できる構成になっている。膨張部材17bの内部に注入する気体Gとしては、空気などが例示できる。膨張部材17の内部に注入する液体としては、例えば、淡水や海水、さらにはゲル化させた水などが例示できる。膨張部材17の内部に注入する液体として、例えば、膨張部材17の内部に注入した後にゲル化するものや固化するものを用いることもできる。この実施形態では、膨張部材17の内部に気体Gを注入する場合を例示している。この実施形態では、注入口17cに逆止弁が設けられていて、注入口17cから注入管18を取り外すと、膨張部材17bに注入された気体Gや液体が、膨張部材17bの外部に漏れ出さない構造になっている。
【0063】
この実施形態では、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿する前に、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3の内周面の周方向に互いに間隔をあけて複数の膨張装置17を配設している。
図14および
図15に例示するように、膨張装置17によって、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする前の状態では、膨張部材17bは収縮した状態になっている。
【0064】
図16および
図17に例示するように、膨張装置17によって、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐ作業では、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上から注入管18を用いて、注入口17cを介して膨張部材17bの内部に気体Gまたは液体を注入することで、膨張部材17bを支持体40の外周面に向けて膨張させ、扇状に膨張させた膨張部材17bを支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に延在させた状態にする。全ての膨張装置17の膨張部材17bを支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に延在した状態にすると、隣り合う膨張部材17bどうしが互いに密着した状態となり、複数の膨張した膨張部材17bによって支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sが塞がれた状態になる。
【0065】
この実施形態のように、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sに配置した膨張部材17bに気体Gまたは液体を注入して膨張部材17bを膨張させることで、前述したすき間Sを膨張した膨張部材17bで塞ぐ構成にすると、施工水域において非常に少ない作業工数で、前述したすき間Sを塞ぐことが可能になる。それ故、施工効率を高めるには有利になる。
【0066】
この実施形態においても、中詰めコンクリート8の打設を複数回に分けて行い、一度目の打設で、膨張させた膨張部材17bの上に5cm~20cm程度の薄いコンクリート版を形成する構成にすると、その薄いコンクリート版が膨張部材17bとともに、その後に打設される中詰めコンクリート8の荷重を支持する底板として機能する。それ故、一度の打設で全ての中詰めコンクリート8を打設する場合よりも、膨張部材17bにかかる負荷を低減することができる。それに伴い、膨張部材17bに要求される強度を低くすることが可能になる。
【0067】
この実施形態のように、膨張部材17bを支持する支持板部17dを設けると、中詰めコンクリート8の荷重が膨張した膨張部材17bにかかった際に、膨張部材17bが支持板部17dに支えられることで、膨張部材17bが下方に屈曲するが抑制される。それ故、支持板部17dを設けると、膨張部材17bによって支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sを安定して塞ぐにはより有利になる。
【0068】
なお、この実施形態では、固定部17aによって膨張部材17bを貫通孔3の内周面に固定した場合を例示したが、例えば、固定部17aや支持板部17dを設けずに、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿した後に、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sに膨張部材17bを配置して、膨張部材17bに気体Gまたは液体を注入して膨張させることで、膨張させた膨張部材17bを支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に固定することもできる。また、例えば、膨張させた膨張部材17bの上に、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sを塞ぐ底板部材を載置して、底板部材を膨張させた膨張部材17bによって支持する構成にすることもできる。
【0069】
プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間を塞いだ状態にする作業は、例えば、
図18および
図19に例示するような方法で行うこともできる。
【0070】
図18に例示するように、この実施形態では、移動式架台19を用いる。移動式架台19は、平面視で支持体40の外周面から外側に向かって延在する閉塞部20と、閉塞部20に下端部が接合されていて上方に延在する支持棒21とを有して構成されている。
【0071】
支持体40の外周面と当接する閉塞部20の内側の当接部20aは、例えば、フッ素樹脂などの支持体40の外周面との摩擦係数が小さい部材で構成するとよい。例えば、閉塞部20の内側の当接部20aに車輪やベアリングなどを設けることもできる。この実施形態の支持棒21の上部には、支持体40に対して支持棒21を固定可能な係合具22が設けられている。係合具22に固定する支持棒21の上下位置を変更することで、支持体40に対して支持棒21を固定する上下位置を変更できる構成になっている。
【0072】
移動式架台19は、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿する前に支持体40に取付けておく。この実施形態では、係合具22によって支持棒21を支持体40に対して仮固定することで、移動式架台19(閉塞部20)を支持体40に対して仮固定した状態にしている。
図18に例示するように、プレキャストコンクリートブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿する際には、閉塞部20をプレキャストコンクリートブロック2の下方に配置して、支持棒21を支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に挿通させた状態にする。
【0073】
図19に例示するように、移動式架台19によって、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする作業では、作業者がプレキャストコンクリートブロック2の上から支持棒21の上部を持ち、支持棒21を上方に引き上げることで、閉塞部20をプレキャストコンクリートブロック2の底面に向けて移動させる。そして、閉塞部20の外側の上面をプレキャストコンクリートブロック2の底面に当接させて、閉塞部20によって支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にする。そして、支持棒21を支持体40またはプレキャストコンクリートブロック2に対して固定することで、移動式架台19(閉塞部20)を支持体40またはプレキャストコンクリートブロック2に対して固定した状態にする。この実施形態では、係合具22によって支持棒21を支持体40に対して固定している。
【0074】
中詰めコンクリート8を打設すると、閉塞部20に中詰めコンクリート8の荷重が掛かるが、その荷重は支持棒21と係合具22によって支持された状態になる。支持棒21と係合具22は中詰めコンクリート8に埋設された状態になる。
【0075】
この実施形態のように、移動式架台19を用いると、施工水域において非常に少ない作業工数で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞ぐことが可能になる。それ故、施工効率を高めるには有利になる。
【0076】
なお、本発明では、プレキャストコンクリートブロック2の上からの作業で、支持体40の外周面と貫通孔3の下部の内周面との間のすき間Sを塞いだ状態にできる方法であれば、上記で例示した実施形態とは異なる方法で、前述したすき間Sを塞ぐこともできる。
【0077】
また、上部工1(プレキャストコンクリートブロック2)の形状や大きさなどは、上記で例示した実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。この実施形態では、1本の支持体40に固定される上部工1を構築する場合を例示したが、例えば、複数の貫通孔3を有するプレキャストコンクリートブロック2を作製して、それぞれの貫通孔3に別々の支持体40を遊挿した状態にすることで、複数本の支持体40に渡って延在する上部工1を構築することも可能である。また、例えば、上面視でL字形や多角形状や円形状などの上部工1を構築することもできる。上記で例示した実施形態では、支持体40が杭である場合を例示したが、支持体40が矢板である場合にも同様の構築方法で同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 上部工
2 プレキャストコンクリートブロック
3 貫通孔
3a 上部孔
3b 下部孔
4 ブロック体
5 鞘管
6 梁部材
7 吊金具
8 中詰めコンクリート
8a 第一の中詰めコンクリート
9 支持部材
9a 固定部
9b 伸長部
9c 押当部
9d 伸長機構
10 回転治具
11 底板部材
11a 分割部材
12 移動治具
12a 棒状部
12b 掛止部
13 閉塞装置
14 支持部材
14a 固定部
14b 伸長部
14c 押当部
14d 圧縮ばね
15 底板部材
16 解除機構
16a 係合部
16b 棒状部
17 膨張装置
17a 固定部
17b 膨張部材
17c 注入口
17d 支持板部
18 注入管
19 移動式架台
20 閉塞部
20a 当接部
21 支持棒
22 係合具
30 仕切板
40 支持体
S (支持体の外周面と貫通孔の下部の内周面との間の)すき間
G 気体
WB 水底地盤