IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153369
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】駆動装置、測距装置及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/484 20060101AFI20241022BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20241022BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20241022BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20241022BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20241022BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20241022BHJP
【FI】
G01S7/484
G01S17/89
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
H01L33/00 J
H01S5/062
H01S5/40
H01S5/022
H01L33/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067229
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】井口 大介
(72)【発明者】
【氏名】早川 純一朗
(72)【発明者】
【氏名】竹山 慶
【テーマコード(参考)】
2F112
5F142
5F173
5F241
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA05
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA03
2F112GA01
5F142DB52
5F142DB54
5F142GA40
5F173MA10
5F173MD65
5F173MF40
5F173SA17
5F173SA33
5F173SC10
5F173SE02
5F173SG02
5F241BB07
5F241BB18
5F241BC35
5J084AA04
5J084AA05
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB01
5J084CA03
5J084CA65
(57)【要約】
【課題】ある発光区画における予定回数の発光期間の後に他の発光区画の発光期間を設ける場合と比較して、すべての発光区画で予定回数の発光期間が完了するまでの時間を短くする。
【解決手段】駆動装置は、第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光デバイスを駆動する駆動装置であって、第1の発光区画及び第2の発光区画の各々が、予め定められた複数回の発光期間を有し、発光期間において発光デバイスを500回以上パルス発光させ、第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、第1の発光区画が発光しない非発光期間に、第2の発光区画が発光期間を有するように、発光デバイスを駆動する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光デバイスを駆動する駆動装置であって、
前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた複数回の発光期間を有し、
前記発光期間において前記発光デバイスを500回以上パルス発光させ、
前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光デバイスを駆動する
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記発光デバイスが備える前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とについて、当該一の発光区画群の前記予め定められた複数回の発光期間の後に、当該他の発光区画群が発光期間を有するように、当該発光デバイスを駆動することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記一の発光区画群に属する発光区画同士が隣接するように、前記発光デバイスを駆動することを特徴とする、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記非発光期間は、前記発光期間に相当する時間を単位時間として、当該単位時間の数にて定められ、
前記発光デバイスが備える前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とについて、当該一の発光区画群に属する発光区画の数は、前記非発光期間として定められた単位時間の数と一致する
ことを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記発光デバイスの備える前記第1の発光区画と隣接しない第3の発光区画の発光期間と当該第1の発光区画の発光期間とが重なるように、当該発光デバイスを駆動することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光部と、
前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた複数回の発光期間を有するように、前記発光部を駆動する駆動部と、
前記発光部から出射され対象物で反射した光を受光する受光部と、
前記受光部における受光の結果に基づいて、前記対象物までの距離を算出する算出部と、を備え、
前記駆動部は、前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光部を駆動する
ことを特徴とする測距装置。
【請求項7】
前記発光部は、前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とを備え、
前記算出部は、前記一の発光区画群に属するすべての発光区画が1回ずつ発光期間を終えた後で、当該一の発光区画群において最初の発光区画が発光期間を開始してから最後の発光区画が発光期間を終えるまでの間に前記受光部が受光した結果を取得することを特徴とする、請求項6に記載の測距装置。
【請求項8】
前記受光部は、前記第1の発光区画の発光期間において対象物で反射した光を受光する第1の受光区画と、前記第2の発光区画の発光期間において対象物で反射した光を受光する第2の受光区画とを備え、
前記算出部は、前記受光部が備える受光区画毎に、前記受光の結果を取得する
ことを特徴とする、請求項6記載の測距装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記算出部が前記第1の受光区画における受光の結果を取得する期間において、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光部を駆動することを特徴とする、請求項8記載の測距装置。
【請求項10】
第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光部と、
前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた発光期間を予め定められた複数回有するように、前記発光部を駆動する駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記発光期間において前記発光部を500回以上パルス発光させ、前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、当該発光部を駆動する
ことを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、測距装置及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光の出射から対象物で反射された光を受光するまでの時間を計測する、いわゆるタイムオブフライト(ToF:Time of Flight)法により、対象物までの距離を測定(「測距」と呼ぶ。)する測距装置が存在する。
例えば、特許文献1には、複数の発光部を有する測距装置において、全ての発光部を同時に発光させず、発光部を第1~第4グループの4つのグループに分け、時系列で、発光させるグループを選択(切替)する制御を実行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-153796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の発光区画を含む発光部を備えた測距装置において、1つの発光区画あたり予め定められた複数回(「予定回数」と呼ぶ場合がある。)の発光期間を設けて測距を行う場合がある。このような測距装置において、ある発光区画における予定回数の発光期間の後に他の発光区画の発光期間を設ける場合、例えば発光に伴う発熱の影響を小さくするために発光期間同士の間隔を長くすると、すべての発光区画で予定回数の発光期間が完了するまでの時間が長くなってしまう。
本発明の目的は、ある発光区画において発光期間同士の間隔を長くとりつつ予定回数の発光期間の後に他の発光区画の発光期間を設ける場合と比較して、すべての発光区画で予定回数の発光期間が完了するまでの時間を短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光デバイスを駆動する駆動装置であって、前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた複数回の発光期間を有し、前記発光期間において前記発光デバイスを500回以上パルス発光させ、前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光デバイスを駆動することを特徴とする駆動装置である。
請求項2に記載の発明は、前記発光デバイスが備える前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とについて、当該一の発光区画群の前記予め定められた複数回の発光期間の後に、当該他の発光区画群が発光期間を有するように、当該発光デバイスを駆動することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置である。
請求項3に記載の発明は、前記一の発光区画群に属する発光区画同士が隣接するように、前記発光デバイスを駆動することを特徴とする、請求項2に記載の駆動装置である。
請求項4に記載の発明は、前記非発光期間は、前記発光期間に相当する時間を単位時間として、当該単位時間の数にて定められ、前記発光デバイスが備える前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とについて、当該一の発光区画群に属する発光区画の数は、前記非発光期間として定められた単位時間の数と一致することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置である。
請求項5に記載の発明は、前記発光デバイスの備える前記第1の発光区画と隣接しない第3の発光区画の発光期間と当該第1の発光区画の発光期間とが重なるように、当該発光デバイスを駆動することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置である。
請求項6に記載の発明は、第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光部と、前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた複数回の発光期間を有するように、前記発光部を駆動する駆動部と、前記発光部から出射され対象物で反射した光を受光する受光部と、前記受光部における受光の結果に基づいて、前記対象物までの距離を算出する算出部と、を備え、前記駆動部は、前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光部を駆動することを特徴とする測距装置である。
請求項7に記載の発明は、前記発光部は、前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とを備え、前記算出部は、前記一の発光区画群に属するすべての発光区画が1回ずつ発光期間を終えた後で、当該一の発光区画群において最初の発光区画が発光期間を開始してから最後の発光区画が発光期間を終えるまでの間に前記受光部が受光した結果を取得することを特徴とする、請求項6に記載の測距装置である。
請求項8に記載の発明は、前記受光部は、前記第1の発光区画の発光期間において対象物で反射した光を受光する第1の受光区画と、前記第2の発光区画の発光期間において対象物で反射した光を受光する第2の受光区画とを備え、前記算出部は、前記受光部が備える受光区画毎に、前記受光の結果を取得することを特徴とする、請求項6記載の測距装置である。
請求項9に記載の発明は、前記駆動部は、前記算出部が前記第1の受光区画における受光の結果を取得する期間において、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光部を駆動することを特徴とする、請求項8記載の測距装置である。
請求項10に記載の発明は、第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光部と、前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた発光期間を予め定められた複数回有するように、前記発光部を駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部は、前記発光期間において前記発光部を500回以上パルス発光させ、前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、当該発光部を駆動することを特徴とする発光装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1,6,10に記載の発明によれば、ある発光区画における予め定められた複数回の発光期間の後に他の発光区画の発光期間を設ける場合と比較して、すべての発光区画で予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
請求項2に記載の発明によれば、発光区画群単位の駆動を行わない場合と比較して、一の発光区画群における予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
請求項3に記載の発明によれば、互いに近接する照射区画への予め定められた複数回の光の照射が、短い時間で行われる。
請求項4に記載の発明によれば、一の発光区画群に属する発光区画の数が非発光時間として定められた単位時間の数よりも多い場合と比較して、一の発光区画群における予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
請求項5に記載の発明によれば、第1の発光区画の発光期間と第3の発光区画の発光期間とが重ならない場合と比較して、すべての発光区画で予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
請求項7に記載の発明によれば、異なるタイミングで読み出しを行う場合と比較して、すべての照射区画で測距が完了するまでの時間が短くなる。
請求項8に記載の発明によれば、発光区画の発光期間毎に受光の結果が取得され、測距の精度の向上に寄与する。
請求項9に記載の発明によれば、第1の受光区画における受光の結果を取得する期間に第2の発光区画が発光期間を有しない場合と比較して、測距が完了するまでの時間が短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態が適用される測距装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】本実施の形態に係る発光部の発光面と、発光部から出射された光が照射される照射面との関係を説明する図である。
図3】本実施の形態に係る発光部の一例を示す図である。
図4】本実施の形態に係る受光部の受光面と、上述した照射面との関係を説明する図である。
図5】本実施の形態における距離画像について説明する図であり、(a)は測距装置と対象物との位置関係を示す図、(b)は照射面の様子を示す図、(c)は制御部が作成する距離画像の例を示す図である。
図6】比較例の動作パターンを示す図である。
図7】本実施の形態が適用される測距装置の第1の動作パターンを示す図である。
図8】本実施の形態が適用される測距装置の第2の動作パターンを示す図である。
図9】本実施の形態が適用される測距装置の第3の動作パターンを示す図である。
図10】本実施の形態が適用される測距装置の第4の動作パターンを示す図である。
図11】第2の動作パターンの変形例を示す図である。
図12】第2の動作パターンの変形例を示す図である。
図13】本実施の形態が適用される測距装置の第5の動作パターンを示す図である。
図14】本実施の形態が適用される測距装置の第6の動作パターンを示す図である。
図15】(a)、(b)は、各発光区画の1回の発光期間での発光動作の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本発明の技術的範囲は、以下に実施の形態として記載する範囲に限定されるものではない。複数の実施例を組み合わせたものや、これらの実施例に種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0009】
<測距装置1>
(全体構成)
図1は、本実施の形態が適用される測距装置1の概略構成の一例を示すブロック図である。
測距装置1は、発光部4から光が出射されたタイミングから、対象物で反射した光が受光部5にて受光されるタイミングまでの時間に基づいて、対象物までの距離を測定する。つまり、測距装置1はToF法に基づいて測距を行う装置である。ToF法には、出射された光の位相と受光した光の位相との差から時間を測定する間接ToF(iToF:indirect ToF)法と、光の出射から受光までの時間を直接計測する直接ToF(dToF:direct ToF)法とがあるが、本実施の形態では、測距装置1が間接ToF法に基づいて測距を行うものとして説明する。
【0010】
図1に示すように、測距装置1は、光学装置3と、制御部8とを備えている。
光学装置3は、予め定められた照射範囲に向けて光を出射する発光部4と、発光部4から出射され照射範囲に存在する対象物で反射した光を受光する受光部5と、発光部4を駆動する発光駆動部6と、受光部5を駆動する受光駆動部7とを備えている。
光学装置3の発光部4及び受光部5の構成については、詳細を後述する。また、破線で示す符号2及び一点鎖線で示す符号9については、後段にて説明する。
【0011】
制御部8は、光学装置3の発光部4及び受光部5の動作を制御する。
また、制御部8は、受光部5における受光の結果を取得し、この受光の結果に基づいて、ToF法により、測距装置1から対象物までの距離を算出する。
制御部8は、受光の結果に基づいて対象物までの距離を算出する算出部の一例である。
【0012】
(発光部4)
図2は、本実施の形態に係る発光部4の発光面40と、発光部4から出射された光が照射される照射面60との関係を説明する図である。図2では、紙面の左方向を+x方向、紙面の上方向を+y方向、紙面の裏側方向を+z方向として、各々反対方向を-x,-y,-z方向とする。なお、図2では、発光面40と照射面60とを紙面の上下方向(±y方向)にずらして示しているが、実際には、発光面40と照射面60とは対向するように配置される。図2では、紙面の表側方向(-z方向)に発光部4の発光面40が位置し、紙面の裏側方向(+z方向)に照射面60が位置している。つまり、図2は、照射面60へ光を出射している発光部4を、発光部4が光を出射する側とは反対側から見た様子である。
発光部4は、例えば1枚または複数枚の発光チップにより構成される。発光部4は、発光デバイスの一例である。
【0013】
発光部4は、垂直共振器型面発光レーザVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser、後述する図3において符号43で示す。)が複数配列された発光面40を備える。そして、発光部4は、VCSELの発光により、照射面60に向けて光を出射する。なお、VCSELは、発光素子の一例である。図2では、VCSELの記載を省略している。
【0014】
発光面40は、少なくとも1つのVCSELを含む複数の発光区画41に分割されている。ここでは、発光面40は、一例として、x方向に4個、y方向に3個ずつ並ぶ計12個の発光区画41に分割されている。図示するように、各発光区画41について区別が必要な場合は、図2における左上側(+x方向及び+y方向の端)から順に、発光区画A1~A12として区別する。
なお、本明細書中では、「~」は、番号によってそれぞれが区別された複数の構成要素を示すもので、「~」の前後に記載されたもの及びその間の番号のものを含むことを意味する。例えば、発光区画A1~A12は、発光区画A1から番号順に発光区画A12までの12個の発光区画41を含む。
【0015】
各発光区画41は、発光駆動部6(図1参照)により、独立に駆動されて発光動作を行う。発光区画41の駆動とは、発光区画41に含まれるVCSELに電力が供給されて発光することを指し、発光動作とは、発光区画41に含まれるVCSELが予め定められた発光期間の間発光することを指す。また、「独立に駆動」とは、発光区画41毎に駆動して発光した状態とすることを指す。発光駆動部6は、制御部8(図1参照)からの制御信号に応じて、各発光区画41を駆動する。
したがって、各発光区画41は、必ずしもすべて同時に発光するものではなく、例えば、図2の例において、発光区画A1は発光しているが発光区画A12は発光していない、という状態をとり得る。
【0016】
照射面60は、発光面40の中心40Cから光を出射する方向(+z方向)におけるある距離において光を出射する方向に直交する、発光部4からの光が照射される面である。
図2の例では、発光部4は、+z方向に向けて光を出射するため、照射面60は、+z方向のある距離においてx方向及びy方向に広がっている。ここで、照射面60の中心60Cと発光面40の中心40Cとを通る中心軸Ax(二点鎖線)は、発光面40及び照射面60に対して垂直である。なお、本実施の形態では、発光面40が矩形状であることに対応して、照射面60が矩形状になっている。
【0017】
図示するように、照射面60は、発光面40における発光区画41に対応して、複数の照射区画61に分割される。図2の例では、x方向に4個、y方向に3個ずつ並ぶ12個の照射区画61に分割される。各照射区画61について区別が必要な場合は、図2における左上側(+x方向及び+y方向の端)から順に、照射区画B1~B12と表記する。
なお、ある照射区画Biに対し同じ番号iが付与された発光区画Aiを、「対応する発光区画」と呼ぶ場合がある。例えば、発光区画A1は照射区画B1に対応する発光区画である。反対に、ある発光区画Aiに対し同じ番号iが付与された照射区画Biを、「対応する照射区画」と呼ぶ場合がある。
【0018】
照射区画B1~B12は、発光区画A1~A12とxy平面について面対称な配列を有している。例えば、図2において発光区画A1,A2,A3,A4が-x方向にこの順で配列されるのに対応して、照射区画B1,B2,B3,B4が-x方向にこの順で配列される。
それぞれの発光区画41は、対応する照射区画61に向けて光を出射する。そして、それぞれの照射区画61には、対応する発光区画41から出射された光が照射される。ここで、発光区画41が対応する照射区画61に向けて光を出射するとは、それぞれの発光区画41から出射される光の光軸が対応する照射区画61を向いていることを意味し、発光区画41から出射された光の全てが対応する照射区画61に照射されることに限定されない。言い換えると、ある発光区画41から出射された光の一部が、対応する照射区画61とは異なる照射区画61や照射面60の範囲外に照射される場合がある。
【0019】
図3は、本実施の形態に係る発光部4の一例を示す図である。図3では、図2とは反対に、発光部4が光を出射する側から見た様子を示している。よって、図3における紙面の右方向が+x方向、紙面の上方向が+y方向、紙面の表方向が+z方向である。
図3に示すように、発光部4では、基板42と、複数のVCSEL43が配置された発光面40とを有している。より詳しくは、基板42と発光面40とは、光を出射する方向(+z方向、紙面の表方向)に重ねて設けられている。なお、基板42上には、電力の供給や電気信号のやり取りのための配線の他、発光部4の動作に係る電子部品等が形成又は取り付けられている場合があるが、記載を省略している。
【0020】
上述したように、発光部4は、発光面40にVCSEL43が配列された12個の発光区画41(発光区画A1~A12)を備えている。図3に示すように、発光区画A1~A12は、すべて同じ面積になっている。また、それぞれの発光区画A1~A12には、互いに同じ数(この例では7個)のVCSEL43が配置されている。
なお、各発光区画41の面積や配置されるVCSEL43の個数は限定されるものではなく、一部又は全部の発光区画41について、互いに異なる面積としてもよく、異なる個数のVCSEL43が配置されることとしてもよい。
【0021】
なお、発光部4のそれぞれの発光区画41から出射された光は、不図示の拡散部により、出射方向(中心軸Axの軸方向)に垂直な面に広げられて照射面60に照射される。拡散部としては、光の光路上に設けられ、散乱等により光を拡散する拡散板、入射する光の角度を変更して出射する回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)又は/及びレンズ等の光学部材を用いうる。
【0022】
(受光部5)
図4は、本実施の形態に係る受光部5の受光面50と、上述した照射面60との関係を説明する図である。図4では、図2と同様に、紙面の左方向を+x方向、紙面の上方向を+y方向、紙面の裏側方向をz方向として、各々反対方向を-x,-y,-z方向とする。なお、図4では、受光面50と照射面60とを紙面の上下方向(±y方向)にずらして示しているが、実際には、受光面50と照射面60とは対向するように配置される。図4では、紙面の表側方向(-z方向)に受光部5(受光面50)が位置し、紙面の裏側方向(+z方向)に照射面60が位置している。つまり、図4は、照射面60から反射してきた光を受光している受光部5を、受光部5が光を受光する側とは反対側から見た様子である。
【0023】
受光部5は、x方向及びy方向に広がり、不図示の受光素子が複数配列された受光面50を備える。そして、受光部5は、それぞれの受光素子により、発光部4から出射され照射面60に存在する対象物で反射した光を受光する。
照射面60の中心60Cと受光面50の中心50Cとを通る中心軸Bx(二点鎖線)は、照射面60及び受光面50に対して垂直である。なお、本実施の形態では、発光面40(図2参照)及び照射面60と同様に、受光面50が矩形状になっている。
【0024】
受光面50は、発光面40(図2参照)の発光区画41(図2参照)及び照射面60の照射区画61に対応して、複数の受光区画51に分割される。図4の例では、x方向に4個、y方向に3個ずつ並ぶ12個の受光区画51に分割される。各受光区画51について区別が必要な場合は、図4における左上側(+x方向及び+y方向の端)から順に、受光区画C1~C12として区別する。
なお、ある発光区画Ai又はある照射区画Biに対し同じ番号iが付与された受光区画Ciを、「対応する受光区画」と呼ぶ場合がある。例えば、受光区画C1は、発光区画A1又は照射区画B1に対応する受光区画である。反対に、ある受光区画Ciに対し同じ番号が付与された発光区画Aiを、「対応する発光区画」と呼び、ある受光区画Ciに対し同じ番号が付与された照射区画Biを、「対応する照射区画」と呼ぶ場合がある。
【0025】
受光区画C1~C12は、照射区画B1~B12とxy平面について面対称な配列を有している。例えば、図4では、照射区画B1,B2,B3,B4が-x方向にこの順で配列されるのに対応して、受光区画C1,C2,C3,C4が-x方向にこの順で配列される。
それぞれの受光区画51は、発光部4から出射され、対応する照射区画61に存在する対象物で反射した光を受光する。
【0026】
それぞれの受光区画51は、規則的に配列される複数の受光素子を有する。それぞれの受光素子は、発光部4から出射され照射面60に存在する対象物で反射した光を受光し、受光した光に応じて電気信号を出力可能である。受光素子としては、フォトダイオードやフォトトランジスタを例示することができる。
【0027】
各受光区画51は、受光駆動部7(図1参照)により独立に駆動されて受光動作を行う。ここで、受光区画51の駆動とは、受光区画51を受光素子の受光に応じた電荷の蓄積が可能な状態にすることを指し、受光動作とは、受光区画51の受光素子が受光に応じて電荷の蓄積を行うことを指す。また、「独立に駆動」とは、受光区画51毎に駆動して、受光に応じた電荷の蓄積が可能な状態にすることを指す。受光駆動部7は、制御部8(図1参照)からの制御信号に応じて、各受光区画51を駆動する。
また、受光部5は、制御部8の読み出し動作(詳細は後述する。)に応じて、受光区画51にて蓄積した電荷、すなわち受光区画51における受光の結果に対応する電気信号を制御部8へと出力する。
【0028】
(制御部8)
図1に戻り、制御部8は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83により構成されている。
CPU81は、プロセッサの一例であって、ROM82等に記憶された各種プログラムをRAM83にロードして実行することにより、後述する各機能を実現する。RAM83は、CPU81の作業用メモリ等として用いられるメモリである。ROM82は、CPU81が実行する各種プログラム等を記憶するメモリである。
【0029】
ここで、CPU81によって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供しうる。また、CPU81によって実行されるプログラムは、インターネットなどの通信手段を用いて提供してもよい。
【0030】
また、本実施の形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
また、本実施の形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、本実施の形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、変更してもよい。
【0031】
制御部8は、発光駆動部6を通じて発光部4の発光動作を制御し、受光駆動部7を通じて受光部5の受光動作を制御する。
また、制御部8は、受光駆動部7を通じて受光部5に対する読み出し動作を行う。ここで、「読み出し動作」とは、制御部8が受光駆動部7を通じて受光部5を制御し、受光区画51における受光素子の受光の結果に対応する電気信号を出力させて、受光区画51毎の受光の結果として取得することをいう。なお、本実施の形態に係る制御部8は、受光区画51毎に独立して読み出し動作を行うことができる。例えば、ある受光区画Ciと他の受光区画Cjとが受光動作を行って電荷を蓄積している場合に、受光区画Ciおよび受光区画Cjの両方に対する読み出し動作を行うだけでなく、受光区画Ciに対する読み出し動作のみを行うこともできる。
【0032】
ところで、一般に、間接ToF法では、光の出射に対して複数の位相差で受光を行い、各位相差における受光の結果から、出射された光の位相と受光した光の位相との差を求めて測距を行う。また、一般に、外来光(環境光)による測距の精度の低下を抑制するため、1つの位相差について複数回受光を行う。このため、n個の位相差φ(φ1,φ2,…,φn)でそれぞれk回の受光を行う場合、光の出射と、ある位相差φにおける受光と、受光の結果の読み出しとを、n×k回分繰り返すことになる。
本実施の形態が適用される測距装置1は、光の出射に対して0度、180度の2個の位相差φでそれぞれ2回の受光を行った結果から、間接ToF法に基づく測距を行う。したがって、測距装置1では、例えばある照射区画Biの測距を行う場合、対応する発光区画Aiにおける発光動作と、対応する受光区画Ciにおける受光動作と、制御部8による受光区画Ciに対する読み出し動作と、をそれぞれ4回繰り返す。より詳しくは、測距装置1では、各発光区画41における4回の発光動作、各受光区画51における4回の受光動作、各受光区画51に対する4回の読み出し動作が、予め定められた動作パターンに従って行われる。この予め定められた動作パターンについては、図8を用いて詳細を後述する。
【0033】
制御部8は、各受光区画51における受光の結果に基づいて、各照射区画61の測距を行う。そして、各照射区画61における測距の結果をまとめ、測距装置1と対象物との距離を表した距離画像を作成する。より詳しくは、制御部8は、各受光区画51における4回の受光の結果として受光部5から取得した4つの電気信号に、予め定められた演算処理を施すことで、照射面60の各照射区画61における測距装置1と対象物との距離を算出(測距)し、距離画像を作成する。
【0034】
<距離画像100>
図5は、本実施の形態における距離画像100について説明する図であり、(a)は測距装置1と対象物S1,S2との位置関係を示す図、(b)は照射面60の様子を示す図、(c)は制御部8が作成する距離画像100の例を示す図である。
図5(c)に示す距離画像100は、照射面60におけるすべての照射区画61について測距を行うことで、結果として作成されたものである。なお、図5の例において、対象物S1,S2(区別せずに対象物Sと表記する場合がある。)は、少なくとも、測距装置1において距離画像100の作成に必要な測距が開始してから完了するまでの間は静止しており、測距装置1に対する位置を変化させなかったものとする。
【0035】
図5(c)に示すように、距離画像100は、発光面40の発光区画41、照射面60の照射区画61および受光面50の受光区画51(図2図4参照)に対応する、複数の画像区画101を有する。図5(c)の例では、距離画像100は、照射面60および受光面50の±x方向に対応する図の左右方向に4個、±y方向に対応する図の上下方向に3個並ぶ12個の画像区画101を有している。各画像区画101について区別が必要な場合は、図5(c)における左上側から順に、画像区画D1~D12として区別する。
距離画像100における画像区画Diは、発光面40の発光区画Aiにて出射され、照射面60の照射区画Biにて対象物により反射され、受光面50の受光区画Ciで受光された光に基づいて得られた画像である。なお、発光区画Ai、照射区画Biおよび受光区画Ciに対し同じ番号iが付与された画像区画Diを、「対応する画像区画」と呼ぶ場合がある。反対に、画像区画Diに対し同じ番号iが付与された発光区画Aiを「対応する発光区画」と呼び、画像区画Diに対し同じ番号iが付与された照射区画Biを「対応する照射区画」と呼び、画像区画Diに対し同じ番号が付与された受光区画Ciを「対応する受光区画」と呼ぶ場合がある。
【0036】
距離画像100のそれぞれの画像区画101は、対応する受光区画51が有する複数の受光素子に対応付けられた複数の画素(不図示)を有している。距離画像100では、画像区画101のそれぞれの画素の画素値が、受光区画51のそれぞれの受光素子からの電気信号から算出された、測距装置1から対象物までの距離に対応している。
【0037】
図5(a)に示す例では、測距装置1からある距離だけ離れた位置に、対象物S1,S2が存在している。図5(b)に示すように、この例における対象物S1は、照射面60の照射区画B1,B5,B9に亘る範囲に存在し、対象物S2は、照射区画B2,B6に亘る範囲に存在する。また、測距装置1から対象物S1までの距離(例えば1m程度)は、測距装置1から対象物S2までの距離(例えば3m程度)と比べて小さい。
【0038】
そして、図5(c)に示すように、距離画像100には、各画像区画101に含まれる画素により、対象物S1を表す像S1´および対象物S2を表す像S2´(区別せずに像S′と表記する場合がある。)が描写されている。より詳しくは、距離画像100のうち照射区画B1,B5,B9に対応する画像区画D1,D5,D9に亘って像S1´が描写され、距離画像100のうち照射区画B2,B6に対応する画像区画D2,D6に亘って像S2´が描写されている。
この例では、距離画像100において像S1´および像S2´を構成する画素の画素値(図では網掛けで表現する。)によって、測距装置1から対象物S1までの距離、および測距装置1から対象物S2までの距離に係る情報を得ることができる。
【0039】
なお、距離画像100は、対象物Sの表面上の各地点と、測距装置1との距離の情報を含むので、対象物Sの三次元形状の情報を含むものと捉えることもできる。したがって、本実施の形態が適用される測距装置1は、三次元測定にも利用可能である。
【0040】
<動作パターン>
ところで、測距装置1のように、発光部4の各発光区画41が4回の発光動作を行う場合、4回の発光期間が設けられることになる。なお、4回の発光期間は、本実施の形態における予め定められた複数回(予定回数)の発光期間の一例である。
このような測距装置において、ある発光区画Aiにおける4回の発光期間の後に他の発光区画Ajの発光期間を設ける場合、例えば発光に伴う発熱の影響(詳細は後述する。)を小さくするために発光区画Aiの発光期間同士の間隔を長くすると、すべての発光区画41で4回の発光期間が完了するまでの時間が長くなってしまう。
【0041】
ここで、発光期間内の発光区画41の発光動作について、図15を用いてより詳細に説明する。図15(a)、(b)は、各発光区画41(図2図3参照)の1回の発光期間での発光動作の一例を説明する図である。なお、図15では、複数の発光区画41のうち2つの発光区画A1,A2による発光動作の一例を示している。
本実施の形態に係る各発光区画41は、発光動作として、発光駆動部6(図1参照)により駆動され、発光期間の間にVCSELを多数回パルス発光させて光を出射し、対応する照射区画61を照射する。より具体的には、図15(a)及び図15(b)に示すように、発光区画A1の発光期間(符号911~914で示す)の各々は、多数回のパルス900により構成されている。同様に、発光区画A2の発光期間(符号921~924で示す)の各々は、多数回のパルス900により構成されている。なお、1回の発光期間を構成するパルス900の回数は、発光期間の長さやパルス900の幅によっても異なるが、数十~数百回程度を例示することができる。本実施の形態に係る発光区画41は、1回の発光期間内に1万回のパルス発光を行う。パルス発光の回数は、測距装置1に求められる測距の精度やデバイスの性能等に応じて変更してよいが、少なくとも500回以上であるとよい。
【0042】
各発光区画41は例えば、図15(a)に示すように、一の発光区画41(例えば、発光区画A1)の発光期間(例えば、発光期間911、912)同士の間に、他の発光区画41(例えば、発光区画A2)の発光期間(例えば、発光期間921)が含まれるように、発光動作を行うことができる。また例えば、各発光区画41は、図15(b)に示すように、一の発行区画41(発光区画A1)の発光期間(発光期間911)を構成するパルス900同士の間に、他の発光区画41(発光区画A2)の発光期間(発光期間921)を構成するパルス900が含まれるように、発光動作を行うことができる。
【0043】
以下、本実施の形態が適用されない比較例の動作パターンと本実施の形態が適用される測距装置1の動作パターンとを説明するが、各発光区画41の発光期間が500μs(マイクロ秒)である場合を例にして説明する。すなわち、各発光区画41は、発光動作として、発光駆動部6(図1参照)により駆動されVCSELを500μs発光させて光を出射し、対応する照射区画61を照射する。より詳しくは、図15を用いて上述したように、本実施の形態に係る発光区画41は、1回の発光期間500μsの間に1万回のパルス発光を行い、対応する照射区画61を照射する。なお、発光期間は500μsに限定されるものではなく、測距の精度を確保する上で必要な光量等に応じて予め定められる。
【0044】
図6は、比較例の動作パターン701を示す図である。
図7は、本実施の形態が適用される測距装置1の第1の動作パターン801を示す図である。
なお、図6図7では、動作パターン701,801を2段(前段、後段)に分けて記載している。また、図6では、動作パターン701の途中一部、前段と後段との間にあたる部分を省略している。
【0045】
図6図7において、1行目の「時間」の項目は、測距装置が測距に係る動作を開始してからの時間経過を示し、図の右方向に進む(右の列に進む)につれて時間が経過することを示す。各列に記載された数字は、経過した時間を単位時間の個数uを用いて示したものである。なお、単位時間としては、各発光区画41の発光期間に相当する時間が用いられ、この例では500μsである。
また、図6図7において、2行目~13行目の「B1」~「B12」の項目は、何れの照射区画61の測距に係る動作であるかを、照射区画の符号Bi(i=1~12)(図2図4参照)を用いて示したものである。すなわち、時間uの列と照射区画Biの行とが交差するセルは、測距装置が測距に係る動作を開始してから単位時間×uだけ経過した時点における、照射区画Biの測距に係る動作を示している。
【0046】
図6図7において、網掛けH1(図面右端の凡例参照)が施されたセルは、対応する発光区画Aiが発光動作を行い、対応する受光区画Ciが受光動作を行っていることを示している。すなわち、網掛けH1が施されたセルは、対応する発光区画Aiにおける発光期間に対応する。また、網掛けH2(凡例参照)が施されたセルは、制御部8が対応する受光区画Ciに対する読み出し動作を行っていることを示している。なお、本実施の形態が適用される測距装置1において、制御部8は、受光区画51に対する読み出し動作に単位時間1個分、500μsを要するものとして説明する。
【0047】
ここで、発光区画41について複数回の発光期間が設けられる場合、発光期間と次回の発光期間との間には、発光区画41が発光しない非発光期間が設けられることになる。この非発光期間が短すぎると、VCSELの発光に伴う発熱により発光区画41の温度が高くなり過ぎてしまい、VCSELの光出力の低下や寿命の低下等の影響を及ぼす恐れがある。このため、発光区画41の非発光期間は、発光に伴う発熱の影響を抑制するための予め定められた冷却期間を含むようにして設けられる。ここでは、冷却期間が1500μs(=単位時間500μs×3個分)である場合を例にして説明する。なお、冷却期間の長さは、VCSELの発光期間の長さや発光区画41の放熱効率等に応じて定められるため、限定されるものではない。
図6図7において、網掛けH3(凡例参照)が施されたセルは、対応する発光区画Aiの非発光期間であって、冷却期間として確保される期間であることを示している。なお、制御部8による読み出し動作の期間と冷却期間とを並列で設けることも可能であるため、その場合は、網掛けH2を優先して施している。
【0048】
まず、図6に示す比較例の動作パターン701を詳しく説明する。
比較例の動作パターン701では、ある照射区画Biの測距に係る動作が完了してから、次の照射区画Bj(j=i+1)の測距に係る動作が開始するようになっている。ここで、照射区画Biの測距に係る動作が完了するとは、予定回数の4回の発光動作および受光動作と、各受光動作に対応する読み出し動作とが完了し、照射区画Biの測距に必要なデータが揃うことを指す。
【0049】
より具体的には、比較例の動作パターン701の時間u=1では、照射区画B1に対応する発光区画A1における発光動作と、対応する受光区画C1における1回目の位相差φ=0度での受光動作とが行われる。次に、時間u=2では、制御部8により受光区画C1に対する読み出し動作が行われるとともに、発光区画A1の冷却期間のうち1/3(単位時間1個分)が経過する。さらに、時間u=3,4において、発光区画A1の冷却期間の残り2/3(単位時間2個分)が経過する。時間u=2~4において予め定められた冷却期間(単位時間3個分)が経過するので、時間u=5においては、発光区画A1における発光動作と、受光区画C1における2回目の位相差φ=0度での受光動作とが行われる。時間u=6~8では、時間u=2~4と同様に、制御部8による読み出し動作が行われ、発光区画A1の冷却期間が経過する。同様に、時間u=9~12においては、発光区画A1における発光動作と、受光区画C1における位相差φ=180度での受光動作と、制御部8による読み出し動作とが行われ、発光区画A1の冷却期間が経過する。そして、時間u=13において、発光区画A1における発光動作と、受光区画C1における2回目の位相差φ=180度での受光動作とが行われ、時間u=14において、制御部8による読み出し動作が行われることで、照射区画B1の測距に係る動作が完了する。以降の照射区画B2~B12の測距に係る動作も、照射区画B1の測距に係る動作と同様に行われ、時間u=168において、制御部8が最後の照射区画B12に対応する受光区画C12への4回目の読み出し動作を行うことで、すべての照射区画61(B1~B12)の測距が完了する。
【0050】
このように、比較例の動作パターン701では、照射区画Biの測距に係る動作が完了してから次の照射区画Bj(j=i+1)の測距に係る動作を開始させることを繰り返す。そして、最後の照射区画B12の測距に係る動作が完了することで、すべての照射区画61の測距が完了し、制御部8による距離画像100の作成に必要なデータが揃うことになる。図6に示すように、比較例の動作パターン701において、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間は、単位時間u×168個分(=84.0ms)である。
また、比較例の動作パターン701では、発光区画Aiにおける4回の発光期間の後に、他の発光区画Aj(j=i+1)の発光期間が設けられている。図6に示すように、比較例の動作パターン701において、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間は、単位時間u×167個分(=83.5ms)である。
【0051】
次に、図7に示す本実施の形態が適用される測距装置1の第1の動作パターン801を詳しく説明する。
第1の動作パターン801では、ある照射区画Biの測距に係る動作が完了していない時点において、次の照射区画Bj(j=i+1)の測距に係る動作が開始するようになっている。より詳しくは、ある照射区画Biに対応する発光区画Aiの発光期間と次回の発光期間との間の、発光区画Aiの非発光期間に、次の発光区画Aj(j=i+1)が発光期間を有するようになっている。なお、この例において、発光区画Aiは第1の発光区画の一例であり、発光区画Ajは第2の発光区画の一例である。
【0052】
図7を参照して具体的に説明すると、第1の動作パターン801の時間u=1では、照射区画B1に対応する発光区画A1における発光動作と、対応する受光区画C1における位相差φ=0度での受光動作とが行われる。次に、時間u=2では、発光区画A1の冷却期間のうち1/3(単位時間1個分)が経過するとともに、照射区画B2に対応する発光区画A2における発光動作と、対応する受光区画C2における位相差φ=0度での受光動作とが行われる。さらに、時間u=3において、発光区画A1および発光区画A2の冷却期間のうち1/3が経過するとともに、照射区画B3に対応する発光区画A3における発光動作と、対応する受光区画C3における位相差φ=0度での受光動作とが行われる。このことを繰り返し、時間u=12において、最後の照射区画B12に対応する発光区画A12における発光動作と、対応する受光区画C12における位相差φ=0度での受光動作とが行われると、時間u=13では、冷却期間が完了していない発光区画A10,A11,A12の冷却期間のうち1/3が経過するとともに、制御部8によりすべての受光区画51(C1~C12)に対する読み出し動作が行われる。これにより、制御部8は、すべての照射区画61について1回目の位相差φ=0度での受光の結果を取得する。そして、時間u=14以降では、同様にして、2回目の位相差φ=0度における受光の結果と、1回目の位相差φ=180度での受光の結果と、2回目の位相差φ=180度での受光の結果と、が取得される。そして、時間u=52において、制御部8により受光区画C1~C12に対する合計4回目の読み出し動作が行われることで、すべての照射区画61(B1~B12)の測距が完了する。
なお、図7の例では、発光区画A1~A12の発光動作が番号順に行われることとしたが、発光動作を行う順番は限定されない。同様に、他の動作パターンにおいても、順序の変更が可能である。
【0053】
以上説明したように、第1の動作パターン801では、発光区画Aiの発光動作と受光区画Ciの受光動作の後、次の発光区画Ajの発光動作と受光区画Cjの受光動作を行い、すべての照射区画61について1回の受光動作が完了してから、すべての受光区画51に対する読み出し動作が行われる。これを4回繰り返し、4回目の受光の結果の読み出し動作が完了することで、すべての照射区画61の測距が完了し、制御部8による距離画像100(図5(c)参照)の作成に必要なデータが揃うことになる。図7に示すように、第1の動作パターン801において、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間は、単位時間u×52個分(=26.0ms)である。
また、第1の動作パターン801では、発光区画Aiにおける4回の発光期間の後に、他の発光区画Aj(j=i+1)の発光期間が設けられている。図7に示すように、第1の動作パターン801において、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間は、単位時間u×51個分(=25.5ms)である。
【0054】
このように、第1の動作パターンでは、すべての発光区画41における予定回数の発光期間が完了するまでの時間(25.5ms)が、比較例の動作パターン701(83.5ms)と比較して、短くなる。
また、第1の動作パターンでは、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間(26.0ms)が、比較例の動作パターン701(84.0ms)と比較して、短くなる。この結果、第1の動作パターン801に従って動作する測距装置1では、比較例の動作パターン701に従って動作する測距装置と比較して、制御部8が1枚の距離画像100を作成するために必要な時間が短くなる。
【0055】
ところで、測距装置1において、図5(c)に示した距離画像100を連続して作成して時系列で並べ、時間経過に対応する測距の結果を示す動画(「距離動画」と呼ぶ場合がある。)を作成する場合がある。このような距離動画を用いると、例えば、動体である対象物Sについて時間経過による距離(位置)の変化を追跡し、移動速度の算出や移動パターンの監視等を行うことができる。
距離動画は、1枚の距離画像100を1フレームとして作成され、単位時間あたりに作成された距離画像100の枚数に対応するフレームレートを有する。上述したように、比較例の動作パターン701に従って動作する測距装置では、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間が84.0msであるので、距離動画のフレームレートは最大でも12fps(frames per second)となる。一方、第1の動作パターン801に従って動作する測距装置1では、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間が26.0msであるので、距離動画のフレームレートが最大38fpsまで向上する。したがって、より移動速度の高い対象物Sの追跡に用いることができる。
【0056】
次に、本実施の形態が適用される測距装置1の他の動作パターンの例を説明する。
なお、以降説明する図8図14において、1行目~13行目の各項目および網掛けH1~H3の示す内容は、図7の対応する表記と同様である。また、各図において、動作パターンを2段(前段、後段)に分けて記載する場合がある。さらに、何れの動作パターンも、図7を用いて説明した第1の動作パターン801と同様に、各発光区画41の発光期間が500μsであり、冷却期間が1500μsである場合を例にして説明する。
【0057】
図8は、本実施の形態が適用される測距装置1の第2の動作パターン802を示す図である。
第2の動作パターン802では、照射区画61および対応する発光区画41、受光区画51を複数のグループに分け、このグループ分けに基づいて測距装置1の動作が定められている。図示するように、照射区画B1~B3はグループG1に属し、照射区画B4~B6はグループG2に属し、照射区画B7~B9はグループG3に属し、照射区画B10~B12はグループG4に属している。また、各発光区画Aiおよび各受光区画Ciは、対応する照射区画Biと同じグループに属している。なお、図8では、各グループに3つずつ、照射区画61および対応する発光区画41、受光区画51が属する場合を例示しているが、限定されない。発光部4(図2参照)の備える発光区画41の個数や、優先する性能(図12を用いて後述)に応じて、グループ分けを行ってよい。以下、これらのグループG1~G4を区別せず、グループGと呼ぶ場合がある。
【0058】
そして、図8に示す第2の動作パターン802では、グループGiの測距に係る動作が完了した後に、グループGj(j=i+1)の測距に係る動作が開始される。発光動作の観点からは、グループGiに属する発光区画Aiの非発光期間に同じグループGiに属する発光区画Aj(j≠i)の発光期間が設けられ、グループGiに属する発光区画Ai,Ajにおける予定回数4回の発光期間の後に、グループGjに属する発光区画Ak(k≠i,j)の発光期間が設けられている。なお、この例において、発光区画Aiは第1の発光区画の一例であり、発光区画Ajは第2の発光区画の一例であり、グループGiは一の発光区画群の一例であり、グループGjは他の発光区画群の一例である。
【0059】
図示するように、第2の動作パターン802では、時間u=1において、照射区画B1に対応する発光区画A1が発光動作を行い、対応する受光区画C1が位相差φ=0度で1回目の受光動作を行う。また、時間u=2において、照射区画B2に対応する発光区画A2が発光動作を行い、対応する受光区画C2が受光動作を行う。さらに、時間u=3において、照射区画B3に対応する発光区画A3が発光動作を行い、対応する受光区画C3が受光動作を行う。そして、時間u=4において、制御部8が受光区画C1~C3の各々に対する読み出し動作を行う。これにより、測距装置1(制御部8)は、グループG1に属する照射区画B1~B3における、位相差φ=0度での1回目の受光の結果を取得する。つまり、第2の動作パターン802における制御部8は、グループG1に属するすべての発光区画A1~A3が1回ずつ発光期間を終えた後で、最初の発光区画A1が発光期間を開始してから最後の発光区画A3が発光期間を終えるまでの間に、受光区画C1~C3が受光した結果を取得することになる。なお、時間u=2~4において発光区画A1の冷却期間が確保され、時間u=3~5において発光区画A2の冷却期間が確保され、時間u=4~6において発光区画A1の冷却期間が確保される。同様に、時間u=5~8では位相差φ=0度での2回目の受光の結果が取得され、時間u=9~12では位相差φ=180度での1回目の受光の結果が取得され、時間u=13~16では位相差φ=180度での2回目の受光の結果が取得される。このようにして、時間u=1~16において、グループG1の照射区画B1~B3に対応する発光区画A1~A3における4回の発光動作と、対応する受光区画C1~C3における4回の受光動作と、制御部8の受光区画C1~C3に対する4回の読み出し動作と、が行われる。言い換えると、時間u=16において、グループG1に属するすべての照射区画B1~B3についての予定回数4回の発光動作、受光動作および読み出し動作が完了し、グループG1の測距に係る動作が完了する。
【0060】
グループG1の測距に係る動作が完了すると、時間u=17において、照射区画B4に対応する発光区画A4が発光動作を行い、対応する受光区画C4が位相差φ=0度で1回目の受光動作を行うことで、グループG2の測距に係る動作が開始する。そして、グループG1と同様に、グループG2に属する発光区画A4~A6による予定回数4回の発光動作、受光区画C4~C6による予定回数4回の受光動作、制御部8による4回の読み出し動作が行われ、時間u=32にてグループG2の測距に係る動作が完了する。同様に、時間u=33~48にてグループG3の測距に係る動作が行われ、時間u=49~64にてグループG4の測距に係る動作が行われる。こうして、第2の動作パターン802では、すべての照射区画61(B1~B12)の測距が完了する。
【0061】
このように、第2の動作パターン802では、最後のグループG4における4回目の読み出し動作が行われることで、すべての照射区画61の測距が完了し、制御部8による距離画像100(図5(c)参照)の作成に必要なデータが揃うことになる。図8に示すように、第2の動作パターン802において、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間は、単位時間u×64個分(=32.0ms)である。また、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間は、単位時間u×63個分(=31.5ms)である。すなわち、第2の動作パターン802を適用した場合であっても、すべての発光区画41における予定回数の発光期間が完了するまでの時間(31.5ms)が、比較例の動作パターン701(83.5ms)と比較して、短くなる。また、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間(32.0ms)も、比較例の動作パターン701(84.0ms)と比較して、短くなる。この結果、第2の動作パターン802に従って動作する測距装置1においても、比較例の動作パターン701に従って動作する測距装置と比較して、制御部8が1枚の距離画像100を作成するために必要な時間が短くなる。付言すると、第2の動作パターン802に従って動作する測距装置1では、距離動画のフレームレートが最大31fpsまで向上する。
【0062】
ここで、対象物S(図5(a)参照)が動体である場合、測距装置1のある照射区画61に対する発光動作および受光動作と次回の発光動作および受光動作との間隔(「測距間隔」と呼ぶ場合がある。)が大きいと、モーションアーチファクト(motion artifact)の影響が大きくなる恐れがある。より具体的には、例えば、ある照射区画61に対応する発光区画41の1回目の発光動作および受光区画51の1回目の受光動作と、同じ発光区画41の2回目の発光動作および受光区画51の2回目の受光動作との間隔が大きいと、その間の対象物Sの動きが大きくなり、1回目の受光の結果と2回目の受光の結果に大きな差が生じてしまう。この受光の結果の差は、モーションアーチファクトとして測距の結果に影響を及ぼし、例えば対象物Sまでの距離に大きな誤差が生じる他、距離画像100(図5(c)参照)において像S′が実際の対象物Sとは異なる形状で描写される等、測距の精度の低下をもたらす恐れがある。
【0063】
図7を用いて説明したように、第1の動作パターン801では、例えば照射区画B1に対する1回目の発光動作および受光動作は時間u=1において行われ、2回目の発光動作および受光動作は時間u=14において行われる。つまり、第1の動作パターン801に従って動作する測距装置1では、測距間隔は単位時間12個分(6.0ms)である。
これに対し、第2の動作パターン802では、例えば照射区画B1に対する1回目の発光動作および受光動作は時間u=1において行われ、2回目の発光動作および受光動作は時間u=5において行われる。つまり、第2の動作パターン802に従って動作する測距装置1では、測距間隔は単位時間3個分(1.5ms)であり、第1の動作パターン801に従って動作する場合に比べ、モーションアーチファクトの影響を軽減することができる。
【0064】
図9は、本実施の形態が適用される測距装置1の第3の動作パターン803を示す図である。
図7図8を用いて説明した第1の動作パターン801、第2の動作パターン802では、制御部8の受光区画Ciに対する読み出し動作と、発光区画Aj(j≠i)の発光動作および受光区画Ciの受光動作とを並列で行わないように、動作パターンが定められている場合を例にして説明した。これに対し、図9に示す第3の動作パターン803では、制御部8の受光区画Ciに対する読み出し動作と、発光区画Aj(j≠i)の発光動作および受光区画Cjの受光動作とを並列で行うことが許容される。より詳しくは、第3の動作パターン803では、制御部8が受光区画Ciに対する読み出し動作を行い、受光区画Ciにおける受光の結果を取得する期間において、発光区画Aj(j≠i)が発光動作を行い、発光期間を有するようになっている。なお、この例において、発光区画Aiは第1の発光区画の一例であり、発光区画Ajは第2の発光区画の一例である。
なお、第3の動作パターン803では、照射区画B1~B4はグループG1に属し、照射区画B5~B8はグループG2に属し、照射区画B9~B12はグループG3に属しており、グループ分けに基づいて測距装置1の動作が定められている。また、発光区画A1~A12および受光区画C1~C12は、それぞれ、対応する照射区画61と同じグループに属している。以下、これらのグループG1~G3を区別せず、グループGと呼ぶ場合がある。
【0065】
図示するように、第3の動作パターン803では、時間u=1において、照射区画B1に対応する発光区画A1が発光動作を行い、対応する受光区画C1が位相差φ=0度で1回目の受光動作を行う。また、時間u=2において、制御部8の受光区画C1に対する読み出し動作と並列で、照射区画B2に対応する発光区画A2が発光動作を行い、対応する受光区画C2が受光動作を行う。さらに、時間u=3において、制御部8の受光区画C2に対する読み出し動作と並列で、照射区画B3に対応する発光区画A3が発光動作を行い、対応する受光区画C3が受光動作を行う。さらにまた、時間u=4において、制御部8の受光区画C3に対する読み出し動作と並列で、照射区画B4に対応する発光区画A4が発光動作を行い、対応する受光区画C4が受光動作を行う。そして、時間u=5では、制御部8の受光区画C4に対する読み出し動作と並列で、発光区画A1が発光動作を行い、受光区画C1が位相差φ=0度で2回目の受光動作を行う。これにより、測距装置1(制御部8)は、照射区画B1~B4における位相差φ=0度での1回目の受光の結果を取得するとともに、位相差φ=0度での2回目の測距に係る動作を開始する。これを繰り返し、時間u=1~17において、グループG1の照射区画B1~B4に対応する発光区画A1~A4における4回の発光動作と、対応する受光区画C1~C4における4回の受光動作と、制御部8の受光区画C1~C4に対する4回の読み出し動作と、が行われる。言い換えると、時間u=17において、グループG1に属するすべての照射区画B1~B4についての予定回数4回の発光動作、受光動作および読み出し動作が完了し、グループG1の測距に係る動作が完了する。
【0066】
また、時間u=17において、制御部8の受光区画C4に対する4回目の読み出し動作と並列に、照射区画B5に対応する発光区画A5が発光動作を行い、対応する受光区画C5が位相差φ=0度で1回目の受光動作を行うことで、グループG2の測距に係る動作が開始する。そして、グループG1と同様に、グループG2に属する発光区画A5~A8による予定回数4回の発光動作、受光区画C5~C8による4回の受光動作、制御部8の受光区画C5~C8に対する4回の読み出し動作が行われ、時間u=33にてグループG2の測距に係る動作が完了する。同様に、時間u=34~49にてグループG3の測距に係る動作が行われる。こうして、第3の動作パターン803では、すべての照射区画61(B1~B12)の測距が完了する。
【0067】
図9に示すように、第3の動作パターン803において、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間は、単位時間u×49個分(=24.5ms)であり、比較例の動作パターン701(84.0ms)と比較して、短くなる。また、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間は、単位時間u×48個分(=24.0ms)であり、比較例の動作パターン701(83.5ms)と比較して、短くなる。付言すると、第3の動作パターン803に従って動作する測距装置1では、距離動画のフレームレートが最大40fpsまで向上する。また、第3の動作パターン803における測距間隔は単位時間3個分(1.5ms)であり、第1の動作パターン801に従って動作する場合に比べ、モーションアーチファクトの影響を軽減することができる。
【0068】
ここで、図2を用いて、発光区画41同士の隣接について説明する。上述したように、本実施の形態に係る発光部4において、12個の発光区画A1~A12は、x方向(図2における紙面左右方向)、およびx方向に直交するy方向(紙面上下方向)の2方向に沿って並んでいる。そして、ある発光区画Aiに隣接するとは、発光区画Aiに対してx方向およびy方向の何れか一方に、他の発光区画41を挟まずに並ぶことを指す。したがって、発光区画Aiに対し他の発光区画41を挟んで並ぶ発光区画41や、発光区画Aiに対して紙面斜め方向、すなわちx方向且つy方向に並ぶ発光区画41は、発光区画Aiに隣接しない。例えば、図2に示す発光部4において、発光区画A6に隣接するのは、発光区画A6に対して+y方向に並ぶ発光区画A2、+x方向に並ぶ発光区画A5、-x方向に並ぶ発光区画A7、-y方向に並ぶ発光区画A10のみであり、他の発光区画41は発光区画A6に隣接しない発光区画41である。
図8図9に例示した第2の動作パターン802および第3の動作パターン803では、同じグループGに属する発光区画41が互いに隣接するように、グループ分けが行われている。グループ分けの方法は限定されず、例えば発光区画A1,A7,A12のように、互いに隣接しない発光区画41が同じグループGに属していても良い。ただし、図8図9の例のように、グループGが互いに隣接する発光区画41で構成されると、対応する照射区画61も互いに近接することとなる。この結果、互いに近接する照射区画61への予定回数の発光動作および受光動作が、短い時間で行われることになり、測距装置1における測距の精度の向上に寄与する。
【0069】
図10は、本実施の形態が適用される測距装置1の第4の動作パターン804を示す図である。
図7図9を用いて説明した第1の動作パターン801、第2の動作パターン802、第3の動作パターン803では、ある発光区画Aiにおける発光期間と、他の発光区画Aj(j≠i)における発光期間とが重ならないように、動作パターンが定められている場合を例にして説明した。これに対し、図10に示す第4の動作パターン804では、ある発光区画Aiにおける発光期間と、発光区画Aiと隣接しない発光区画Ak(k≠i)の発光期間とが重なるように、発光動作を行うことが許容される。この例において、発光区画Aiは第1の発光区画の一例であり、発光区画Akは第3の発光区画の一例である。
【0070】
第4の動作パターン804では、時間u=1において、照射区画B1に対応する発光区画A1が発光動作を行い、対応する受光区画C1が位相差φ=0度で1回目の受光動作を行う。同じく時間u=1において、並列して、照射区画B3に対応する発光区画A3が発光動作を行い、対応する受光区画C3が位相差φ=0度で1回目の受光動作を行う。また、時間u=2において、照射区画B2に対応する発光区画A2が発光動作を行い、対応する受光区画C2が受光動作を行う。同じく時間u=2において、並列して、照射区画B4に対応する発光区画A4が発光動作を行い、対応する受光区画C4が受光動作を行う。同様に、照射区画B5,B7の組み合わせ、照射区画B6,B8の組み合わせ、照射区画B9,B11の組み合わせ、照射区画B10,B12の組み合わせについて、対応する発光区画41の発光動作および対応する受光区画51の受光動作が、並列して行われる。したがって、第4の動作パターン804では、隣接しない発光区画A1,A3の組み合わせ、発光区画A2,A4の組み合わせ、発光区画A5,A7の組み合わせ、発光区画A6,A8の組み合わせ、発光区画A9,A11の組み合わせ、発光区画A10,A12の組み合わせで、同じ時間uにて発光動作が行われ、発光期間が重なることになる。そして、時間u=7にて、制御部8が、各受光区画C1~C12に対する読み出し動作を行うことで、すべての照射区画61について位相差φ=0度での1回目の受光の結果を取得する。同様に、時間u=8~14では、位相差φ=0度での2回目の受光の結果が取得され、時間u=15~21では、位相差φ=180度での1回目の受光の結果が取得され、時間u=22~28では、位相差φ=180度での2回目の受光の結果が取得される。こうして、第4の動作パターン804では、すべての照射区画61(B1~B12)の測距が完了する。
【0071】
図10に示すように、第4の動作パターン804において、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間は、単位時間u×28個分(=14.0ms)であり、比較例の動作パターン701(84.0ms)と比較して、短くなる。また、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間は、単位時間u×27個分(=13.5ms)であり、比較例の動作パターン701(83.5ms)と比較して、短くなる。付言すると、第4の動作パターン804に従って動作する測距装置1では、距離動画のフレームレートが最大71fpsまで向上する。また、第4の動作パターン804における測距間隔は単位時間6個分(3.0ms)であり、第1の動作パターン801に従って動作する場合に比べ、モーションアーチファクトの影響を軽減することができる。
【0072】
ここで、上述した第4の動作パターン804とは異なり、発光区画Aiの発光期間と隣接する発光区画Aj(j≠i,k)の発光期間とが重なるように、測距装置1の動作パターンを設定することも可能である。この場合も、第4の動作パターン804と同様に、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間、及びすべての発光区画41における予定回数の発光期間が完了するまでの時間は短くなる。しかしながら、隣接する発光区画Ai,Ajの発光期間が重なると、対応する受光区画Ci,Cjが受光動作を行う期間が重なることになる。この結果、例えば発光区画Aiが照射して対応する照射区画Biにて反射した光が、対応する受光区画Ciだけでなく隣接する受光区画Cjにも入射し、受光区画Cjにおける測距の精度が低下する恐れがある。このため、第4の動作パターン804のように、発光区画Aiの発光期間と隣接しない発光区画Akの発光期間とが重なることを許容し、発光区画Aiの発光期間と隣接する発光区画Ajの発光期間とが重なることは許容せずに、測距装置1の動作パターンを設定するとよい。
【0073】
なお、発光期間が重なる発光区画41の組み合わせは、図10に例示したものに限定されない。例えば、発光区画A1,A4の組み合わせ、発光区画A2,A9の組み合わせのように、上記とは異なる組み合わせにて、発光期間が重なることとしてもよい。
また、図10の例では、何れか2つの発光区画41の組み合わせについて、互いの発光期間が重なるように動作パターンを設定したが、発光期間が重なる発光区画41の数は限定されない。例えば、互いに隣接しない3個以上の発光区画41の組み合わせにて、発光期間が重なることとしてもよい。
さらに、図10の例では、すべての受光区画51(C1~C12)の読み出し動作が同じ時間uにて行われるように動作パターンを設定したが、例えば図8図9に示した動作パターン802,803のように、一部または全部の受光区画51について互いに異なる時間uにて読み出し動作が行われることとしてもよい。
【0074】
<その他>
(冷却期間)
上述した第1~第4の動作パターン801,802,803,804では、何れも、冷却期間が単位時間3個分である場合を例にして説明した。冷却期間の長さは限定されるものではなく、単位時間3個分より短くてもよく、長くてもよい。また、冷却期間は単位時間の整数倍に限定されない。何れの場合であっても、ある照射区画Biに対応する発光区画Aiの発光期間と次回の発光期間との間の、発光区画Aiの非発光期間に、次の発光区画Aj(j=i+1)が発光期間を有するように、動作パターンが設定されていればよい。一例として、第2の動作パターン802において、冷却期間を単位時間4個分とした変形例を説明する。
【0075】
図11は、第2の動作パターンの変形例802′を示す図である。
図示するように、変形例802′では、照射区画B1~B4はグループG1に属し、照射区画B5~B8はグループG2に属し、照射区画B9~B12はグループG3に属しており、グループ分けに基づいて測距装置1の動作が定められている。また、発光区画A1~A12および受光区画C1~C12は、それぞれ、対応する照射区画61と同じグループに属している。
【0076】
変形例802′では、時間u=1~3における測距装置1の動作は、第2の動作パターン802と同様である。時間u=4において、照射区画B4に対応する発光区画A4が発光動作を行い、対応する受光区画C4が受光動作を行う。そして、時間u=5において、制御部8が受光区画C1~C4の各々に対する読み出し動作を行う。これにより、測距装置1(制御部8)は、グループG1に属する照射区画B1~B4における、位相差φ=0度での1回目の受光の結果を取得する。なお、時間u=2~5において発光区画A1の冷却期間が確保され、時間u=3~6において発光区画A2の冷却期間が確保され、時間u=4~7において発光区画A3の冷却期間が確保され、時間u=5~8において発光区画A4の冷却期間が確保される。同様に、時間u=6~10では位相差φ=0度での2回目の受光の結果が取得され、時間u=11~15では位相差φ=180度での1回目の受光の結果が取得され、時間u=16~20では位相差φ=180度での2回目の受光の結果が取得される。このようにして、時間u=1~20において、グループG1の照射区画B1~B4に対応する発光区画A1~A4における4回の発光動作と、対応する受光区画C1~C4における4回の受光動作と、制御部8の受光区画C1~C4に対する4回の読み出し動作と、が行われる。また、発光区画A1~A4の発光動作の後には、読み出し動作の期間を含む、単位時間4個分の冷却期間が確保される。
その後、他のグループG2,G3についても同様にして、測距に係る動作が行われる。
【0077】
図11に示すように、変形例802′において、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間は、単位時間u×60個分(=30.0ms)であり、比較例の動作パターン701(84.0ms)と比較して、短くなる。また、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間は、単位時間u×59個分(=29.5ms)であり、比較例の動作パターン701(83.5ms)と比較して、短くなる。付言すると、変形例802′に従って動作する測距装置1では、距離動画のフレームレートが最大33fpsまで向上する。また、第4の動作パターン804における測距間隔は単位時間4個分(2.0ms)である。
このように、冷却期間に応じて動作パターンを変形した場合であっても、予定回数の発光期間が完了するまでの時間を短くすることができる。なお、第2の動作パターン802の変形例802′を例示したが、第1、第3、第4の動作パターン801,803,804においても、冷却期間に応じた変形が可能である。
【0078】
ところで、発光部4が設置される環境の温度によって、発光動作を行った後の発光部4の温度の推移が異なる場合がある。例えば発光部4が低温環境に設置された場合は、高温環境に設置された場合と比較して、発光動作を行った後の発光部4の温度低下が早くなる。そこで、発光部4の冷却期間は、環境の温度及び発光部4の温度に基づいて決定されてもよい。例えば制御部8が、温度センサ等により測定された環境の温度と発光部4の温度とを取得し、取得した温度の情報に応じて冷却期間を決定することとしてもよい。より具体的には、制御部8は、環境の温度と発光部4の温度との差がより大きいときには冷却期間を短く、環境の温度と発光部4の温度との差がより小さいときには冷却期間を長く決定するとよい。そして、制御部8は、決定した冷却期間に応じた動作パターンを選択し、測距に係る動作を制御するとよい。
【0079】
(非発光期間)
また、上述した第1~第4の動作パターン801,802,803,804及び変形例802′では、何れも、非発光期間が冷却期間と一致する場合を例にして説明した。非発光期間の長さは限定されるものではなく、冷却期間よりも長くてもよい。一例として、第2の動作パターン802において、冷却期間を単位時間3個分とし、非発光期間を単位時間4個分とした変形例を説明する。
図12は、第2の動作パターンの変形例802″を示す図である。
【0080】
図示するように、変形例802″は、各発光区画41における冷却期間が単位時間3個分である他は、図11に示した変形例802′と同様である。したがって、変形例802″において、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間(単位時間60個分=30.0ms)、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間(単位時間59個分=29.5ms)、距離動画のフレームレート(最大33fps)、測距間隔(単位時間4個分=2.0ms)は、変形例802′と等しくなっている。
このように、非発光期間を冷却期間とは異ならせた場合であっても、予定回数の発光期間が完了するまでの時間を短くすることができる。
【0081】
ところで、各グループGに属する発光区画41の数や非発光期間の長さは限定されないため、各グループGに属する発光区画41の数と、非発光期間として定められた単位時間の数とを異ならせて、動作パターンを設定することもできる。しかしながら、第2の動作パターン802、第3の動作パターン803、変形例802′、変形例802″のように、各グループGに属する発光区画41の数と、非発光期間として定められた単位時間の数とを一致させることで、これらを異ならせる場合に比べ、各グループGにおける予定回数の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
【0082】
また、変形例802″においては、非発光期間が冷却期間に一致する第2の動作パターン802に比べ、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間、及び、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間が短くなっており、距離動画のフレームレートが向上している。一方で、測距間隔は、第2の動作パターン802でより短くなっている。つまり、各グループGに属する発光区画41の数と、非発光期間として定められた単位時間の数とを一致させる場合、変形例802″のように、非発光期間を冷却期間よりも長くして、各グループGに属する発光区画41の数を増やすと、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間、及び、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間を短くすることができ、距離動画のフレームレートが向上する。反対に、第2の動作パターン802のように、非発光期間を冷却期間に一致させ、各グループGに属する発光区画41の数を減らすと、測距間隔を短くすることができる。このように、非発光期間は、測距装置1において優先される性能に応じて定められてもよい。
【0083】
なお、冷却期間と同様に、非発光期間は単位時間の整数倍に限定されない。このため、単位時間の整数倍でない冷却時間に一致させ、単位時間の整数倍でない非発光期間を設けることも可能である。しかしながら、図7図12の例のように、発光動作や読み出し動作の期間が単位時間と対応している場合には、非発光期間を単位時間の整数倍にすることで、動作パターンを設定し易くなる。したがって、仮に冷却期間が単位時間の整数倍でなくとも、単位時間の整数倍で非発光期間を設けるとよい。例えば、冷却期間が単位時間2.5個分である場合、非発光期間を単位時間3個分として、冷却期間を確保しつつ非発光期間を単位時間の整数倍にするとよい。
【0084】
(単位時間)
上述した例では、発光区画41が発光動作を行う発光期間と、制御部8が受光区画51に対する読み出し動作を行う期間とが等しいものとして、発光期間及び読み出し動作の期間に相当する時間(500μs)を単位時間とし、動作パターンを設定することを説明した。発光期間と読み出し動作の期間は異なっていてもよく、発光期間と読み出し動作の期間とのうち、より長い一方及びより短い他方の何れかに対応する時間を、単位時間とすることができる。そして、より長い一方を選択した場合には、より短い他方を単位時間とする場合と比較して、非発光期間が長く確保される。反対に、より短い他方を選択した場合には、より長い一方を単位時間とする場合と比較して、すべての発光区画41で予定回数の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
その他、上述した例とは異なり、単位時間に基づかずに動作パターンが設定されていてもよい。
【0085】
(予定回数)
上述した例では、各発光区画41が予定回数4回の発光期間を有するものとして、動作パターンを説明した。予定回数は限定されるものではなく、例えば間接ToF法においては、光の出射に対して0度、90度、180度、270度の4個の位相差φでそれぞれ2回の受光を行った結果から、測距を行う場合もある。この場合、測距装置1では、例えばある照射区画Biの測距を行う場合、対応する発光区画Aiにおける発光動作と、対応する受光区画Ciにおける位相差φでの受光動作と、制御部8による受光区画Ciに対する読み出し動作と、をそれぞれ8回繰り返す。より詳しくは、各発光区画41における8回の発光動作と、各受光区画51における8回の受光動作と、各受光区画51に対する8回の読み出し動作とを行うことになる。
予定回数が増加すると、測距に係る動作に必要な時間は長くなる。例えば、比較例の動作パターン701(図6参照)において、予定回数を8回とした場合、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間は、単位時間240個分(120.0ms)となる。また、すべての発光区画41において発光期間が完了するまでの時間は、単位時間239個分(119.5ms)となる。そして、距離動画のフレームレートは、最大5fpsとなる。
【0086】
以下、予定回数を8回とした測距装置1の第5の動作パターン及び第6の動作パターンを説明する。なお、第5の動作パターン及び第6の動作パターンでは、第3の動作パターン803(図9参照)と同様に、制御部8の受光区画Ciに対する読み出し動作と、発光区画Aj(j≠i)の発光動作および受光区画Cjの受光動作とを並列で行うことが許容される。
図13は、本実施の形態が適用される測距装置1の第5の動作パターン805を示す図である。
図14は、本実施の形態が適用される測距装置1の第6の動作パターン806を示す図である。
【0087】
図13に示すように、第5の動作パターン805では、時間u=1において、照射区画B1に対応する発光区画A1が発光動作を行い、対応する受光区画C1が位相差φ=0度で1回目の受光動作を行う。また、時間u=2において、制御部8の受光区画C1に対する読み出し動作と並列で、照射区画B2に対応する発光区画A2が発光動作を行い、対応する受光区画C2が受光動作を行う。これを繰り返し、時間u=13では、制御部8の受光区画C12に対する読み出し動作と並列で、発光区画A1が発光動作を行い、受光区画C1が位相差φ=0度で2回目の受光動作を行う。これにより、測距装置1(制御部8)は、照射区画B1~B4における位相差φ=0度での1回目の受光の結果を取得するとともに、位相差φ=0度での2回目の測距に係る動作を開始する。これを各位相差φについて繰り返し、時間u=97において、すべての照射区画B1~B12に対応する発光区画A1~A12における予定回数8回の発光動作と、対応する受光区画C1~C12における8回の受光動作と、制御部8の受光区画C1~C12に対する8回の読み出し動作とが完了する。こうして、第5の動作パターン805では、すべての照射区画61(B1~B12)の測距が完了する。
【0088】
図14に示すように、第6の動作パターン806では、第3の動作パターン803(図9参照)と同様に、照射区画B1~B4がグループG1に属し、照射区画B5~B8がグループG2に属し、照射区画B9~B12がグループG3に属しており、グループ分けに基づいて測距装置1の動作が定められている。また、発光区画A1~A12および受光区画C1~C12は、それぞれ、対応する照射区画61と同じグループに属している。
そして、第6の動作パターン806では、時間u=1において、照射区画B1に対応する発光区画A1が発光動作を行い、対応する受光区画C1が位相差φ=0度で1回目の受光動作を行う。また、時間u=2において、制御部8の受光区画C1に対する読み出し動作と並列で、照射区画B2に対応する発光区画A2が発光動作を行い、対応する受光区画C2が受光動作を行う。これを繰り返し、時間u=5では、制御部8の受光区画C4に対する読み出し動作と並列で、発光区画A1が発光動作を行い、受光区画C1が位相差φ=0度で2回目の受光動作を行う。これにより、測距装置1(制御部8)は、照射区画B1~B4における1回目の受光の結果を取得するとともに、位相差φ=0度での2回目の測距に係る動作を開始する。これを繰り返し、時間u=33において、グループG1に属するすべての照射区画B1~B4についての予定回数8回の発光動作、受光動作および読み出し動作が完了し、グループG1の測距に係る動作が完了する。
また、時間u=33において、制御部8の受光区画C4に対する8回目の読み出し動作と並列に、照射区画B5に対応する発光区画A5が発光動作を行い、対応する受光区画C5が1回目の受光動作を行うことで、グループG2の測距に係る動作が開始する。そして、グループG1と同様に、グループG2に属する発光区画A5~A8による予定回数8回の発光動作、受光区画C5~C8による8回の受光動作、制御部8の受光区画C5~C8に対する8回の読み出し動作が行われ、時間u=65にてグループG2の測距に係る動作が完了する。同様に、時間u=65~97にてグループG3の測距に係る動作が行われる。こうして、第6の動作パターン806では、すべての照射区画61(B1~B12)の測距が完了する。
【0089】
図13図14に示すように、第5の動作パターン805及び第6の動作パターン806において、すべての照射区画61の測距が完了するまでの時間は、単位時間u×97個分(=48.5ms)であり、比較例の動作パターン701(84.0ms)と比較して、短くなる。また、すべての発光区画41における予定回数4回の発光期間が完了するまでの時間は、単位時間u×96個分(=48.0ms)であり、比較例の動作パターン701(83.5ms)と比較して、短くなる。付言すると、第5の動作パターン805または第6の動作パターン806に従って動作する測距装置1では、距離動画のフレームレートが最大20fpsまで向上する。
このように、本実施の形態に係る動作パターンによれば、予定回数が増加した場合であっても、すべての発光区画41にて予定回数の発光期間が完了するまでの時間を短くすることができる。なお、第5の動作パターン805及び第6の動作パターン806とは異なり、制御部8の受光区画Ciに対する読み出し動作と、発光区画Aj(j≠i)の発光動作および受光区画Cjの受光動作とを並列で行うことが許容されない場合であっても、ある照射区画Biに対応する発光区画Aiの発光期間と次回の発光期間との間の、発光区画Aiの非発光期間に、次の発光区画Aj(j=i+1)が発光期間を有するように、動作パターンを設定することで、すべての発光区画41にて予定回数の発光期間が完了するまでの時間を短くすることができる。
【0090】
(動作パターンの切り替え)
本実施の形態が適用される測距装置1は、上述したような動作パターンのうち、何れか1つのみに従ってもよく、複数の動作パターンを切り替え可能であってもよい。例えば、制御部8は、ユーザの入力や測距の履歴等に基づいて、複数の動作パターンの中から1つを選択し、選択した動作パターンに従って測距装置1の動作を制御してよい。なお、制御部8における動作パターンの選択肢としては、上述した本実施の形態に係る動作パターン801~806,802′,802″だけでなく、比較例の動作パターン701のように、本実施の形態が適用されない動作パターンが含まれていてもよい。
付言すると、制御部8は、複数の動作パターンの各々での測距の結果から、対象物Sの測距の精度を評価した評価値に基づいて、より測距の精度が向上する動作パターンを選択してもよい。
【0091】
(測距装置1、発光装置2及び駆動装置9)
以上説明した動作パターン801~806,802′,802″に従って動作する測距装置1は、第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、第1の発光区画が発光しない非発光期間に、第2の発光区画が発光期間を有するように、発光部を駆動する駆動部を備えた測距装置の一例である。
また、図1において破線で示すように、発光部4と、発光駆動部6と、制御部8とを含む発光装置2を構成することができる。言い換えると、動作パターン801~806,802′,802″に従って発光部4を発光させる発光装置2を構成することができる。この発光装置2は、第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、第1の発光区画が発光しない非発光期間に、第2の発光区画が発光期間を有するように、発光部を駆動する駆動部を備えた発光装置の一例である。
さらに、図1において一点鎖線で示すように、発光駆動部6と、制御部8とを含み、発光部4(発光デバイスの一例)を駆動する駆動装置9を構成することができる。言い換えると、動作パターン801~806,802′,802″に従って発光部4が発光するように、発光部4を駆動する駆動装置9を構成することができる。この駆動装置9は、第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、第1の発光区画が発光しない非発光期間に、第2の発光区画が発光期間を有するように、発光デバイスを駆動する駆動装置の一例である。
【0092】
<付記>
(((1)))
第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光デバイスを駆動する駆動装置であって、
前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた複数回の発光期間を有し、
前記発光期間において前記発光デバイスを500回以上パルス発光させ、
前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光デバイスを駆動する
ことを特徴とする駆動装置。
(((2)))
前記発光デバイスが備える前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とについて、当該一の発光区画群の前記予め定められた複数回の発光期間の後に、当該他の発光区画群が発光期間を有するように、当該発光デバイスを駆動することを特徴とする、(((1)))に記載の駆動装置。
(((3)))
前記一の発光区画群に属する発光区画同士が隣接するように、前記発光デバイスを駆動することを特徴とする、(((2)))に記載の駆動装置。
(((4)))
前記非発光期間は、前記発光期間に相当する時間を単位時間として、当該単位時間の数にて定められ、
前記発光デバイスが備える前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とについて、当該一の発光区画群に属する発光区画の数は、前記非発光期間として定められた単位時間の数と一致する
ことを特徴とする、(((1)))に記載の駆動装置。
(((5)))
前記発光デバイスの備える前記第1の発光区画と隣接しない第3の発光区画の発光期間と当該第1の発光区画の発光期間とが重なるように、当該発光デバイスを駆動することを特徴とする、(((1)))乃至(((4)))に記載の駆動装置。
(((6)))
第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光部と、
前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた複数回の発光期間を有するように、前記発光部を駆動する駆動部と、
前記発光部から出射され対象物で反射した光を受光する受光部と、
前記受光部における受光の結果に基づいて、前記対象物までの距離を算出する算出部と、を備え、
前記駆動部は、前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光部を駆動する
ことを特徴とする測距装置。
(((7)))
前記発光部は、前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画を含む一の発光区画群と、他の発光区画を含む他の発光区画群とを備え、
前記算出部は、前記一の発光区画群に属するすべての発光区画が1回ずつ発光期間を終えた後で、当該一の発光区画群において最初の発光区画が発光期間を開始してから最後の発光区画が発光期間を終えるまでの間に前記受光部が受光した結果を取得することを特徴とする、(((6)))に記載の測距装置。
(((8)))
前記受光部は、前記第1の発光区画の発光期間において対象物で反射した光を受光する第1の受光区画と、前記第2の発光区画の発光期間において対象物で反射した光を受光する第2の受光区画とを備え、
前記算出部は、前記受光部が備える受光区画毎に、前記受光の結果を取得する
ことを特徴とする、(((6)))記載の測距装置。
(((9)))
前記駆動部は、前記算出部が前記第1の受光区画における受光の結果を取得する期間において、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、前記発光部を駆動することを特徴とする、(((8)))記載の測距装置。
(((10)))
第1の発光区画と第2の発光区画とを含む発光部と、
前記第1の発光区画及び前記第2の発光区画の各々が、予め定められた発光期間を予め定められた複数回有するように、前記発光部を駆動する駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記発光期間において前記発光部を500回以上パルス発光させ、前記第1の発光区画の発光期間と次回の発光期間との間の、当該第1の発光区画が発光しない非発光期間に、前記第2の発光区画が発光期間を有するように、当該発光部を駆動する
ことを特徴とする発光装置。
【0093】
(((1)))に係る駆動装置によれば、ある発光区画における予め定められた複数回の発光期間の後に他の発光区画の発光期間を設ける場合と比較して、すべての発光区画で予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
(((2)))に係る駆動装置によれば、発光区画群単位の駆動を行わない場合と比較して、一の発光区画群における予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
(((3)))に係る駆動装置によれば、互いに近接する照射区画への予め定められた複数回の光の照射が、短い時間で行われる。
(((4)))に係る駆動装置によれば、一の発光区画群に属する発光区画の数が非発光時間として定められた単位時間の数よりも多い場合と比較して、一の発光区画群における予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
(((5)))に係る駆動装置によれば、第1の発光区画の発光期間と第3の発光区画の発光期間とが重ならない場合と比較して、すべての発光区画で予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
(((6)))に係る測距装置によれば、ある発光区画における予め定められた複数回の発光期間の後に他の発光区画の発光期間を設ける場合と比較して、すべての発光区画で予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
(((7)))に係る測距装置によれば、異なるタイミングで読み出しを行う場合と比較して、すべての照射区画で測距が完了するまでの時間が短くなる。
(((8)))に係る測距装置によれば、発光区画の発光期間毎に受光の結果が取得され、測距の精度の向上に寄与する。
(((9)))に係る発光装置によれば、第1の受光区画における受光の結果を取得する期間に第2の発光区画が発光期間を有しない場合と比較して、測距が完了するまでの時間が短くなる。
(((10)))に係る発光装置によれば、ある発光区画における予め定められた複数回の発光期間の後に他の発光区画の発光期間を設ける場合と比較して、すべての発光区画で予め定められた複数回の発光期間が完了するまでの時間が短くなる。
【符号の説明】
【0094】
1…測距装置、2…発光装置、3…光学装置、4…発光部、5…受光部、6…発光駆動部、7…受光駆動部、8…制御部、9…駆動装置、41…発光区画、51…受光区画、43…VCSEL、100…距離画像、801,802,802′,802″,803,804,805,806…動作パターン
図1
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