(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153373
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】算出システム、算出方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067233
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】310008701
【氏名又は名称】住友林業アーキテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 信一
(72)【発明者】
【氏名】小涌 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岩岡 信一
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌博
(72)【発明者】
【氏名】奥山 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】須田 千尋
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065CC14
2F065GG04
2F065MM14
2F065MM15
2F065QQ25
2F065RR09
(57)【要約】
【課題】ウレタン層Uの厚みの算出精度を向上する。
【解決手段】算出システム100は、第1測定位置を基準とする第1座標系における壁Wの表面の三次元座標を示す第1点群データを含む点群データを取得する第1取得部21と、第2測定位置を基準とする第2座標系における壁Wの表面上に形成されたウレタン層Uの表面の三次元座標を示す第2点群データを含む点群データを取得する第2取得部22と、第1点群データと第2点群データとを合成して合成点群データを生成する合成部25と、合成点群データに基づいて、ウレタン層Uの厚みを算出する算出部26と、ユーザが指定する指定位置の入力を受け付ける受付部23と、を含み、合成部25は、第1座標系における指定位置の座標と、第2座標系における指定位置の座標とに基づいて、合成点群データを生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の表面上に形成される被覆材の厚みを算出する算出システムであって、
第1測定位置を基準とする第1座標系における前記躯体の表面の三次元座標を示す第1点群データを含む点群データを取得する第1取得部と、
第2測定位置を基準とする第2座標系における前記躯体の表面上に形成された前記被覆材の表面の三次元座標を示す第2点群データを含む点群データを取得する第2取得部と、
前記第1点群データと前記第2点群データとを合成して合成点群データを生成する合成部と、
前記合成点群データに基づいて、前記被覆材の厚みを算出する算出部と、
ユーザが指定する指定位置の入力を受け付ける受付部と、
を含み、
前記合成部は、前記第1座標系における前記指定位置の座標と、前記第2座標系における前記指定位置の座標とに基づいて、前記合成点群データを生成する、
算出システム。
【請求項2】
前記躯体の表面以外の面に配置されるターゲットシート上の点群に関する点群データに基づいて前記指定位置の座標を演算する演算部を含む、
請求項1に記載の算出システム。
【請求項3】
前記演算部は、少なくとも、前記躯体の表面以外の第1面に配置される第1ターゲットシート上の点群に関する点群データに基づいて指定位置の座標を演算し、前記躯体の表面以外の第2面に配置される第2ターゲットシート上の点群に関する点群データに基づいて指定位置の座標を演算し、
前記合成部は、前記第1座標系における少なくとも2以上の前記指定位置の座標と、前記第2座標系における少なくとも2以上の前記指定位置の座標とに基づいて、前記合成点群データを生成する、
請求項2に記載の算出システム。
【請求項4】
躯体の表面上に形成される被覆材の厚みを算出する算出方法であって、
第1測定位置を基準とする第1座標系における前記躯体の表面の三次元座標を示す第1点群データを含む点群データを取得する手順と、
第2測定位置を基準とする第2座標系における前記躯体の表面上に形成された前記被覆材の表面の三次元座標を示す第2点群データを含む点群データを取得する手順と、
前記第1点群データと前記第2点群データとを合成して合成点群データを生成する手順と、
前記合成点群データに基づいて、前記被覆材の厚みを算出する手順と、
ユーザが指定する指定位置の入力を受け付ける手順と、
を含み、
前記合成点群データを生成する手順において、前記第1座標系における前記指定位置の座標と、前記第2座標系における前記指定位置の座標とに基づいて、前記合成点群データを生成する、
算出方法。
【請求項5】
躯体の表面上に形成される被覆材の厚みを算出する算出手段をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記算出手段は、
第1測定位置を基準とする第1座標系における前記躯体の表面の三次元座標を示す第1点群データを含む点群データを取得する手順と、
第2測定位置を基準とする第2座標系における前記躯体の表面上に形成された前記被覆材の表面の三次元座標を示す第2点群データを含む点群データを取得する手順と、
前記第1点群データと前記第2点群データとを合成して合成点群データを生成する手順と、
前記合成点群データに基づいて、前記被覆材の厚みを算出する手順と、
ユーザが指定する指定位置の入力を受け付ける手順と、
を含み、
前記合成点群データを生成する手順において、前記第1座標系における前記指定位置の座標と、前記第2座標系における前記指定位置の座標とに基づいて、前記合成点群データを生成する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、算出システム、算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に開示されるように、躯体に形成された被覆材の厚みを測定する技術が知られている。特許文献1においては、三次元計測装置でスキャンした形状を点群として取得する技術を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-76585号公報
【特許文献2】特開2021-152497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被覆材の厚みを測定する技術においては、その精度が求められる。しかしながら、スキャンにより取得される点群の密度が低い場合などにおいては、精度の高い厚み測定ができない。
【0005】
本発明の目的は、被覆材の厚みの算出精度を向上する算出システム、算出方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下のとおりである。
【0007】
(1)躯体の表面上に形成される被覆材の厚みを算出する算出システムであって、第1測定位置を基準とする第1座標系における前記躯体の表面の三次元座標を示す第1点群データを含む点群データを取得する第1取得部と、第2測定位置を基準とする第2座標系における前記躯体の表面上に形成された前記被覆材の表面の三次元座標を示す第2点群データを含む点群データを取得する第2取得部と、前記第1点群データと前記第2点群データとを合成して合成点群データを生成する合成部と、前記合成点群データに基づいて、前記被覆材の厚みを算出する算出部と、ユーザが指定する指定位置の入力を受け付ける受付部と、を含み、前記合成部は、前記第1座標系における前記指定位置の座標と、前記第2座標系における前記指定位置の座標とに基づいて、前記合成点群データを生成する、算出システム。
【0008】
(2)(1)において、前記躯体の表面以外の面に配置されるターゲットシート上の点群に関する点群データに基づいて前記指定位置の座標を演算する演算部を含む、算出システム。
【0009】
(3)(2)において、前記演算部は、少なくとも、前記躯体の表面以外の第1面に配置される第1ターゲットシート上の点群に関する点群データに基づいて指定位置の座標を演算し、前記躯体の表面以外の第2面に配置される第2ターゲットシート上の点群に関する点群データに基づいて指定位置の座標を演算し、前記合成部は、前記第1座標系における少なくとも2以上の前記指定位置の座標と、前記第2座標系における少なくとも2以上の前記指定位置の座標とに基づいて、前記合成点群データを生成する、算出システム。
【0010】
(4)躯体の表面上に形成される被覆材の厚みを算出する算出方法であって、第1測定位置を基準とする第1座標系における前記躯体の表面の三次元座標を示す第1点群データを含む点群データを取得する手順と、第2測定位置を基準とする第2座標系における前記躯体の表面上に形成された前記被覆材の表面の三次元座標を示す第2点群データを含む点群データを取得する手順と、前記第1点群データと前記第2点群データとを合成して合成点群データを生成する手順と、前記合成点群データに基づいて、前記被覆材の厚みを算出する手順と、ユーザが指定する指定位置の入力を受け付ける手順と、を含み、前記合成点群データを生成する手順において、前記第1座標系における前記指定位置の座標と、前記第2座標系における前記指定位置の座標とに基づいて、前記合成点群データを生成する、算出方法。
【0011】
(5)躯体の表面上に形成される被覆材の厚みを算出する算出手段をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記算出手段は、第1測定位置を基準とする第1座標系における前記躯体の表面の三次元座標を示す第1点群データを含む点群データを取得する手順と、第2測定位置を基準とする第2座標系における前記躯体の表面上に形成された前記被覆材の表面の三次元座標を示す第2点群データを含む点群データを取得する手順と、前記第1点群データと前記第2点群データとを合成して合成点群データを生成する手順と、前記合成点群データに基づいて、前記被覆材の厚みを算出する手順と、ユーザが指定する指定位置の入力を受け付ける手順と、を含み、前記合成点群データを生成する手順において、前記第1座標系における前記指定位置の座標と、前記第2座標系における前記指定位置の座標とに基づいて、前記合成点群データを生成する、プログラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被覆材の厚みの算出精度を向上する算出システム、算出方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】ウレタン層の形成前においてレーザスキャナによる測定を行う様子を模式的に示す図である。
【
図1B】ウレタン層の形成後の様子を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態における算出システムの物理構成の一例を示す図である。
【
図3】算出システムで実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4A】第1座標系におけるターゲットシートを示す図である。
【
図4B】第2座標系におけるターゲットシートを示す図である。
【
図5A】第1座標系におけるターゲットシートがディスプレイに表示される様子を模式的に示す図である。
【
図5B】
図5Aに示すターゲットシート上に表示される点群を示す図である。
【
図6A】第2座標系におけるターゲットシートがディスプレイに表示される様子を模式的に示す図である。
【
図6B】
図6Aに示すターゲットシート上に表示される点群を示す図である。
【
図7】点群データ記憶部に記憶される情報を示す図である。
【
図8】本実施形態における処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態(以下、本実施形態という)について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
[概要]
図1Aは、ウレタン層の形成前においてレーザスキャナによる測定を行う様子を模式的に示す図である。
図1Bは、ウレタン層の形成後の様子を模式的に示す図である。
【0016】
本実施形態に係る算出システム100は、躯体である壁Wの表面に形成された被覆材であるウレタン層Uの厚みを算出するシステムである。本実施形態において、ウレタン層Uの厚みとは、壁Wの表面に垂直な方向におけるウレタン層Uの幅である。壁Wの全面にウレタン層Uが形成された状態において、ウレタン層Uの厚みを直接測定することはできない。そこで、本実施形態においては、ウレタン層Uが形成される前後の点群データに基いてウレタン層Uの厚みを算出する。
【0017】
点群データを取得するために、まず
図1Aに示すように、壁Wを含む室内に、レーザスキャナLS、及びターゲットシートTS1~TS3を配置する。
【0018】
レーザスキャナLSは、例えば、赤外線測距センサを備えており、色情報と深さ情報を含む撮影画像を生成可能な撮像装置である。レーザスキャナLSは、例えば、撮影角度を上下方向及び左右方向で変更可能とするパン・チルト機構を備える全方位カメラであるとよい。
【0019】
ターゲットシートTS1~TS3は、平面形状が正方形のシートであって、表面の色の明暗によって中心が決められるシートであるとよい。例えば、ターゲットシートTS1~TS3は、白色の矩形部分と黒色の矩形部分とが互い違いに配置される明暗模様を有するとよい。これら矩形部分の交点がターゲットシートの中心である。
【0020】
ターゲットシートTS1~TS3は、ウレタン層Uが形成される壁Wと同一空間内にある当該壁W以外の壁や床面に配置されているとよい。
図1A、
図1Bにおいては、ウレタン層が形成される壁W以外の壁にターゲットシートTS1、TS3が配置され、床面にターゲットシートTS2が配置された様子を示している。なお、ここで同一空間とは、
図1Aに示すレーザスキャナLSの撮影可能な範囲内の空間であるとよい。
【0021】
図1Aに示す状態において、レーザスキャナLSを用いたスキャンを行い、部屋の形状を表す点群に関する点群データを取得する。その後、レーザスキャナLSを部屋の外に移動させ、躯体の一の面に、吹付け工法によってウレタン材料を吹き付けてウレタン層Uを形成する。そして、ウレタン層Uが形成された壁Wを含む室内に、レーザスキャナLSを再度配置する。その状態において、レーザスキャナLSを用いたスキャンを行い、ウレタン層Uが形成された後の部屋の形状を表す点群に関する点群データを取得する。
【0022】
すなわち、本実施形態においては、同一空間においてウレタン層Uが形成される前後の点群データを取得している。そして、ウレタン層Uが形成される前後の点群データに基づいて、ウレタン層Uの厚みを算出する。具体的には、ウレタン層Uが形成される前の壁Wの表面の座標と、壁Wに形成されたウレタン層Uの表面の座標との差分を計算することで、ウレタン層Uの厚みを算出する。
【0023】
算出システム100においては、ウレタン層Uが形成される前後の点群データを合成する。ウレタン層Uが形成される前後の点群データを合成するためには、ウレタン層Uが形成される前後の点群データにおける座標系を合わせる必要がある。しかしながら、上述のように、ウレタン層Uを吹き付けて形成する際、レーザスキャナLSを一度部屋の外に移動させる必要がある。そして、ウレタン層Uを形成した後の点群データを取得するためにレーザスキャナLSを室内に再度設置している。レーザスキャナLSがウレタン層Uを形成する前後で同じ場所、同じ向きで配置されていれば座標系は同じとなるが、手作業で配置することより、全く同じ場所、同じ向きで配置することは難しい。また、レーザスキャナLSの位置の誤差を小さくできたとしても、ウレタン層Uを形成する前後において取得される点群データは異なるデータであるため、それらを合成するには工夫が必要となる。そのため、本実施形態においては、後述のように、ウレタン層Uが形成される前後の点群データのそれぞれに基準となる座標を設定し、基準となる座標に基づいて点群データの合成を行うこととした。
【0024】
本実施形態において、点群とは、複数の点の集合体であって、ディスプレイ15に表示されるものである。点群を表す複数の点のそれぞれは三次元座標情報を含んでいる。また、点群データは、各点の座標情報と、色情報を含むデータであるとよい。なお、点群は白黒で表示されるものであっても構わない。
【0025】
[算出システム100の物理構成]
図2は、本実施形態における算出システムの物理構成の一例を示す図である。算出システム100は、ユーザが操作するコンピュータである。算出システム100は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の携帯電話機などのコンピュータである。なお、算出システム100は1のコンピュータであってもよいし、複数のコンピュータを含むものであってもよい。
図2に示すように、算出システム100には、例えば、プロセッサ11、通信部12、メモリ13、操作部14、ディスプレイ15が含まれる。
【0026】
プロセッサ11は、例えば、算出システム100にインストールされるプログラムに従って動作するCPU等のプログラム制御デバイスである。
【0027】
通信部12は、例えば、有線通信又は無線通信用の通信インターフェイスであり、ネットワークを介してデータ通信を行う。通信部12は、ネットワークを介してレーザスキャナLSで取得された撮影画像を受信するとよい。
【0028】
メモリ13は、例えば、ROMやRAM等の記憶素子やハードディスクドライブ等である。メモリ13には、プロセッサ11によって実行されるプログラム等が記憶される。
【0029】
操作部14は、例えばキーボード、マウス、タッチパネルなどといったユーザインターフェイスであって、ユーザの操作入力を受け付けて、その内容を示す信号を出力する。
【0030】
ディスプレイ15は、例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスであって、プロセッサ11の指示に従って各種の画像を表示する。ディスプレイ15には、レーザスキャナLSのスキャンによって取得された点群データに関する点群が表示される。
【0031】
なお、メモリ13に記憶されるものとして説明するプログラム及びデータは、ネットワークを介して供給されるようにしてもよい。また、上記説明した各コンピュータのハードウェア構成は、上記の例に限られず、種々のハードウェアを適用可能である。例えば、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を読み取る読取部(例えば、光ディスクドライブやメモリカードスロット)や外部機器とデータの入出力をするための入出力部(例えば、USBポート)が含まれていてもよい。例えば、情報記憶媒体に記憶されたプログラムやデータが読取部や入出力部を介してコンピュータに供給されるようにしてもよい。
【0032】
[算出システム100で実現される機能]
図3は、算出システムで実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、算出システム100では、第1取得部21、第2取得部22、受付部23、演算部24、合成部25、算出部26、点群データ記憶部27が実現される。第1取得部21、第2取得部22、受付部23、演算部24、合成部25、及び算出部26は、プロセッサ11を主として実現される。点群データ記憶部27は、メモリ13を主として実現される。これら各機能は、本実施形態に係るプログラムをコンピュータが実行することで実現される。このプログラムはコンピュータ可読情報記録媒体に格納されていてもよい。
【0033】
第1取得部21は、第1測定位置を基準とする第1座標系における壁Wの表面の三次元位置座標を示す第1点群データを含む点群データを取得する。第1測定位置は、機械点とも呼ばれる位置であって、第1座標系における原点である。
【0034】
第2取得部22は、第2測定位置を基準とする第2座標系におけるウレタン層Uの表面の三次元位置座標を示す第2点群データを含む点群データを取得する。第2測定位置は、機械点とも呼ばれる位置であって、第2座標系における原点である。
【0035】
受付部23は、ユーザが指定する指定位置の入力を受け付ける。例えば、ユーザが操作部14であるマウスを操作することでディスプレイ15の表示画面上に表示されるカーソルを動かし、マウスのボタンをクリックすることで、カーソルが示す位置が指定位置として入力されるとよい。
【0036】
演算部24は、受付部23が受け付けた指定位置の座標を演算する。具体的には、演算部24は、ターゲットシート上の点群に関する点群データに基づいて指定位置の座標を演算する。
【0037】
合成部25は、第1点群データと第2点群データとを合成して合成点群データを生成する。合成部25による合成は、例えば、第2座標系を第1座標系に変換することで行うとよい。合成部25により生成された合成点群データに関する点群は、ディスプレイ15の表示画面に表示可能であるとよい。
【0038】
算出部26は、合成部25により生成された合成点群データに基づいて、壁Wに形成されたウレタン層Uの厚みを算出する。具体的には、壁Wの表面の座標と、ウレタン層Uの表面の座標との差分を計算することで、ウレタン層Uの厚みを算出するとよい。
【0039】
点群データ記憶部27は、第1点群データ及び第2点群データを含む点群データを記憶する。点群データ記憶部27は、第1点群データ及び第2点群データに関する各点群を位置座標と紐づけてそれぞれ記憶する。
【0040】
[点群データの合成処理]
次に、主に、
図4A~
図7を参照して、点群データの合成処理について説明する。
図4Aは、第1座標系におけるターゲットシートを示す図である。
図4Bは、第2座標系におけるターゲットシートを示す図である。
図5Aは、第1座標系におけるターゲットシートがディスプレイに表示される様子を模式的に示す図である。
図5Bは、
図5Aに示すターゲットシート上に表示される点群を示す図である。
図6Aは、第2座標系におけるターゲットシートがディスプレイに表示される様子を模式的に示す図である。
図6Bは、
図6Aに示すターゲットシート上に表示される点群を示す図である。
図7は、点群データ記憶部に記憶される情報を示す図である。
【0041】
ここでは、説明を簡単にするために、1枚のターゲットシートTS1を用いて、第1点群データと第2点群データを合成する例を説明する。ただし、これに限られず、
図1A及び
図1Bに示すようにターゲットシートTS2、TS3を更に用いてもよい。互いに異なる3面に配置されるターゲットシートTS1、TS2、TS3を用いることで、より精度の高い合成を行うことができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、第1点群データ及び第2点群データは、メートル法に基づく三次元座標情報として取得されるものである。
【0043】
図4Aに示すように、第1測定位置を基準とする第1座標系におけるターゲットシートTS1の中心座標を(x1’、y1’、z1’)とする。ここで、第1測定位置は第1座標系における原点(0、0、0)である。
【0044】
図4Bに示すように、第2測定位置を基準とする第2座標系におけるターゲットシートTS1の中心座標を(x1”、y1”、z1”)とする。ここで、第2測定位置は第2座標系における原点(0、0、0)である。
【0045】
レーザスキャナLSによりスキャンを行うことで、第1座標系及び第2座標系のそれぞれにおいて、ターゲットシートTS1上に複数の点群が生成される。本実施形態においては、ターゲットシートTS1の中心座標を基準として、第1座標系の第1点群データと第2座標系の第2点群データとを合成する。すなわち、第1座標系のターゲットシートTS1の中心と第2座標系のターゲットシートTS1の中心とが一致するように、第1点群データと第2点群データとを合成する。
【0046】
しかしながら、ターゲットシートTS1の中心に点群が存在しない場合においては、ターゲットシートTS1の中心を基準とすることができない。ターゲットシートTS1の中心に近い位置に存在する点群を基準とすることで、ある程度の精度を出すことはできるが、取得される点群の密度が低い場合などにおいては、合成の精度が低下してしまう。第1点群データと第2点群データとの合成の精度が低い場合、ウレタン層Uの厚みの算出の精度が低下してしまう。
【0047】
そこで、本実施形態においては、レーザスキャナLSのスキャンにより生成された点群データに加えて、ユーザが指定した指定位置の座標を用いて、第1点群データと第2点群データとを合成することとした。本実施形態において、指定位置は、ターゲットシートTS1の中心である。
【0048】
図5Aに示すように、ディスプレイ15の表示画面には、第1測定位置から見た様子を示すターゲットシートTS1が表示される。また、
図5Bに示すように、ターゲットシートTS1上には、第1座標系における点群が表示される。
図5Bにおける複数の黒点が点群を示している。
【0049】
本実施形態においては、ユーザが指定位置として、ターゲットシートTS1の中心を指定する。具体的には、ディスプレイ15の表示画面に表示されるターゲットシートTS1の中心に表示画面に表示されるカーソルCRを合わせて、マウスをクリックすることで、ターゲットシートTS1の中心を指定する。受付部23は、ユーザが指定した第1指定位置を受け付ける。これにより、
図5Bに示すように、ディスプレイ15の表示画面には、ユーザが指定した第1指定位置に新たに点P0’(x1’、y1’、z1’)が追加して表示されるとよい。
【0050】
また、
図7の左側の表に示すように、点群データ記憶部27には、ターゲットシートTS1の中心に対応する第1指定位置の位置情報が追加されるとよい。
図7の左側の表においては、第1点群データに関する位置情報を示している。また、
図7の左側に示す表においては、一番下の行を除く各行に、レーザスキャナLSのスキャンにより取得された点群の位置情報を示しており、一番下の行に、ユーザが指定することにより追加された点P0’の位置情報を示している。
【0051】
次に、演算部24により、第1指定位置の座標を演算する。すなわち、演算部24により、第1指定位置として指定されたターゲットシートTS1の中心の座標(x1’、y1’、z1’)を演算する。演算部24は、例えば、ターゲットシートTS1上に表示される点群の座標に基づいて、第1指定位置の座標を演算するとよい。ここで、ターゲットシートTS1上に表示される点群は同一平面上に存在している。そのため、例えば、
図5Bに示す点P1’、点P2’、点P3’は同一平面上に存在している。また、これら3点に囲まれる領域内に存在する点群についても、これら3点と同一平面上に存在している。演算部24は、例えば、ディスプレイ15の表示画面に表示される第1指定位置を囲む少なくとも3つ以上の任意の点を選択し、それら点の座標に基づいて第1指定位置の座標を演算するとよい。
【0052】
図6Aに示すように、ディスプレイ15の表示画面には、第2測定位置から見た様子を示すターゲットシートTS1が表示される。また、
図6Bに示すように、ターゲットシートTS1上には、第2座標系における点群が表示される。
図6Bにおける複数の黒点が点群を示している。
【0053】
図5Bを参照して説明したのと同様に、ユーザは、ターゲットシートTS1の中心を指定するとよい。受付部23は、ユーザが指定した第2指定位置を受け付ける。これにより、ディスプレイ15の表示画面には、ユーザが指定した第2指定位置に新たに点P0”(x1”、y1”、z1”)が追加して表示されるとよい。
【0054】
また、
図7の右側の表に示すように、点群データ記憶部27には、ターゲットシートTS1の中心に対応する第2指定位置の位置情報が追加されるとよい。
図7の右側の表においては、第2点群データに関する位置情報を示している。また、
図7の右側に示す表においては、一番下の行を除く各行に、レーザスキャナLSのスキャンにより取得された点群の位置情報を示しており、一番下の行に、ユーザが指定することにより追加された点P0”の位置情報を示している。
【0055】
次に、演算部24により、第2指定位置の座標を演算する。すなわち、演算部24により、第2指定位置として指定されたターゲットシートTS1の中心の座標(x1”、y1”、z1”)を演算する。演算部24は、ターゲットシートTS1上に表示される点群の座標に基づいて、第2指定位置の座標を演算するとよい。ここで、ターゲットシートTS1上に表示される点群は同一平面上に存在している。そのため、例えば、
図6Bに示す点P1”、点P2”、点P3”は同一平面上に存在している。また、これら3点に囲まれる領域内に存在する点群についても、これら3点と同一平面上に存在している。演算部24は、例えば、ディスプレイ15の表示画面に表示される第2指定位置を囲む少なくとも3つ以上の任意の点を選択し、それら点の座標に基づいて第2指定位置の座標を演算するとよい。
【0056】
第1指定位置の座標と、第2指定位置の座標とは、同一の座標系において同一である。本実施形態においては、例えば、合成部25は、第2座標系における点群を第1座標系の点群に合わせ込むとよい。この際、合成部25は、第1指定位置の座標と第2指定位置を基準として、座標系の合成を行うとよい。
【0057】
なお、演算部24による第1指定位置及び第2指定位置の座標の演算は上記に限られるものではない。演算部24は、レーザスキャナLSのスキャンにより取得された点群データに基づいて第1指定位置及び第2指定位置における未知の座標を演算するものであればよい。
【0058】
本実施形態においては、ユーザが指定した指定位置の座標に基づいて点群データを合成することより、高い精度で点群データを合成することができる。そのため、ウレタン層Uの厚みを高い精度で算出することができる。また、指定位置の座標を基準として合成を行うことより、合成の際に実行される回転、平行移動などの座標変換に関する演算量が少なくなり、合成処理に要する時間を短縮することができる。
【0059】
[処理フロー]
次に、
図8を参照して、本実施形態におけるウレタン層の厚み算出における処理フローを説明する。
図8は、本実施形態における処理フローを示すフローチャートである。
【0060】
まず、第1取得部21により、ウレタン層Uを形成する前の第1点群データを含む点群データを取得する(ステップS1)。次に、第2取得部22により、ウレタン層Uが形成された後の第2点群データを含む点群データを取得する(ステップS2)。
【0061】
受付部23により、ユーザが指定する第1指定位置及び第2指定位置の入力を受け付ける(ステップS3)。そして、演算部24により、第1指定位置及び第2指定位置の座標を演算する(ステップS4)。
【0062】
合成部25により、第1指定位置の座標及び第2指定位置の座標に基づいて、第1点群データと第2点群データを合成することで、合成点群データを生成する(ステップS5)。そして、算出部26により、合成点群データに基づいて、ウレタン層Uの厚みを算出する(ステップS6)。
【0063】
[その他]
本実施形態においては、被覆材としてウレタン層Uを例に挙げて説明したが、これに限られず、他の材料から成る断熱層や防水層であってもよい。また、本実施形態においては、躯体である壁Wに被覆材が形成される例を説明したが、これに限られず、被覆材は天井等に形成されるものであってもよい。
【0064】
また、本実施形態においては、平面形状が正方形のターゲットシートを例に挙げて説明したが、これに限られず、平面形状が円形等のターゲットシートを用いてもよい。ターゲットシートは、少なくとも、その表面の色の明暗により合成の基準となる位置が特定できるものであればよい。また、ターゲットシートを用いることは必須ではなく、被覆材が形成される躯体以外の躯体の面に、合成の基準となるマーカー等が設けられていればよい。
【0065】
また、
図4A~
図7においては、1枚のターゲットシートを用いる例を説明したが、
図1A、
図1Bに示すように、複数のターゲットシートを用いてもよい。この場合、ターゲットシートの数に応じて、
図7に示す指定位置の位置情報の数を増やすとよい。すなわち、各ターゲットシートの中心の座標をユーザが指定すると共に、それら座標を演算部24により演算するとよい。そして、演算された複数の指定位置の座標を基準として、合成部25により第1点群データと第2点群データとを合成するとよい。このように、基準となる指定位置の数を複数にすることにより、合成の精度をより向上することができる。
【符号の説明】
【0066】
11 プロセッサ、12 通信部、13 メモリ、14 操作部、15 ディスプレイ、21 第1取得部、22 第2取得部、23 受付部、24 演算部、25 合成部、26 算出部、27 点群データ記憶部、100 算出システム、LS レーザスキャナ、TS1~TS3 ターゲットシート、U ウレタン層、W 壁。