(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153381
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電力変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241022BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067245
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 幸平
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA44
5H770EA27
5H770EA30
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA03Y
5H770HA07Z
(57)【要約】
【課題】コンバータを並列接続して位相差駆動することで出力電流リップルの低減効果を維持しつつ、指令値の絶対値が小さい場合でも、コンバータがパルスを出力する際に電流波形歪みを抑制できるようにした電力変換器を提供する。
【解決手段】並列接続された2以上のn個のコンバータはパルスを生成してモータ4に出力することでモータ4を駆動させる。パルス制御部12は、モータ制御部11により出力される制御情報に基づいて、三相コンバータ3のn個のコンバータを多重動作させる多重パルスを生成する。電流不連続動作切替部24は、指令値に応じて電流境界モード又は電流不連続動作モードに切り替えてコンバータを動作させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された2以上のn個のコンバータ(5u1…5un、5v1…5vn、5w1…5wn)を備えた電力変換部(3)と、
入力される指令値に応じた制御情報を出力するモータ制御部(11)と、
前記モータ制御部の制御情報に基づいて前記電力変換部のn個のコンバータを駆動するパルス信号を出力するパルス制御部(12)と、を備え、
前記パルス制御部は、
前記指令値に応じて電流境界モード又は電流不連続動作モードに切り替えて前記コンバータを動作させる電流不連続動作切替部(24)を備える電力変換器。
【請求項2】
前記パルス制御部は、
前記電力変換部のコンバータを駆動するゲート駆動部(21)と、
前記ゲート駆動部により駆動される前記コンバータの電流がゼロに達したことを検出するゼロ電流検出部(22)と、
前記電流境界モード又は前記電流不連続動作モードにて前記コンバータを動作させるときのパルス信号のオン時間、周期、及び、各コンバータに印加する多重パルス信号間の位相差を算出し、前記ゲート駆動部にパルス信号を出力するパルス制御部(23)と、
を備える請求項1記載の電力変換器。
【請求項3】
前記コンバータは、電源電圧が入力される上アームスイッチ(SW1)及び下アームスイッチ(SW2)、並びに、インダクタ(L)及びコンデンサ(C)を用いた降圧型のコンバータにより構成され、
前記電流不連続動作切替部は、前記指令値としての電流指令値の絶対値が所定値以上のときには前記電流境界モードに切り替え、
前記ゲート駆動部は、前記指令値としての電流指令値が正のとき、前記コンバータの上アームスイッチを駆動するものであり、前記パルス演算部は、前記上アームスイッチのオン時間Ton1及びオフ時間Toff1、並びに、周期T及び前記多重パルスの間の位相差Tdを、それぞれ(1-1)式~(1-4)式に基づいて設定し、
前記ゲート駆動部は、前記指令値としての電流指令値が負のとき、前記コンバータの下アームスイッチを駆動するものであり、前記パルス演算部は、前記下アームスイッチのオン時間Ton2及びオフ時間Toff2、並びに、周期T及び前記多重パルスの間の位相差Tdを、(2-1)式~(2-4)式に基づいて設定する請求項1又は2記載の電力変換器。
ここで、Vin:入力電圧、Vout:出力電圧、I
Lはインダクタ電流、L:インダクタのインダクタンス、n:コンバータの多重数を示す。
【数1】
【数2】
【請求項4】
前記コンバータは、電源電圧が入力される上アームスイッチ(SW1)及び下アームスイッチ(SW2)、並びに、インダクタ(L)及びコンデンサ(C)を用いた降圧型のコンバータにより構成され、
前記電流不連続動作切替部は、前記指令値としての電流指令値の絶対値が所定値未満のときには前記電流不連続動作モードに切り替え、
前記ゲート駆動部は、前記指令値としての電流指令値が正のとき、前記コンバータの上アームスイッチを駆動するものであり、前記パルス演算部は、前記上アームスイッチのオン時間Ton3及びオフ時間Toff3を(5)式に基づいて設定し、前記オン時間及び前記オフ時間とは別に前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチを共にオフにする待機期間を設け、
前記ゲート駆動部は、前記指令値としての電流指令値が負のとき、前記コンバータの下アームスイッチを駆動するものであり、前記パルス演算部は、前記下アームスイッチのオン時間Ton3及びオフ時間Toff3を(5)式に基づいて設定し、前記オン時間及び前記オフ時間とは別に前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチを共にオフにする待機期間を設ける請求項1又は2記載の電力変換器。
ここで、Vin:入力電圧、Iout:出力電流、L:インダクタのインダクタンス、n:コンバータの多重数を示す。
【数5】
【請求項5】
前記コンバータは、降圧型、昇圧型、又は昇降圧型である請求項1から4の何れか一項に記載の電力変換器。
【請求項6】
前記コンバータは、非絶縁型又は絶縁型である請求項1から4の何れか一項に記載の電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電力変換器としてハイブリッド車の動力発生装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の動力発生装置は、永久磁石同期モータの各相にマルチフェーズコンバータを接続すると共に、各相に接続されたマルチフェーズコンバータを並列接続している。各マルチフェーズコンバータが、それぞれ位相を変化させながら駆動することで正弦波状の電圧を出力しており、これにより、出力電流リップルを低減している。
【0003】
一般に、コンバータの並列接続数をより多くすることで出力電流リップルを低減できるが、電流指令値が小さくなると周期が短くなる。この結果、コンバータを駆動するパルス幅も短くなる。コンバータを駆動するパルス幅が短いと、コンバータはパルスを正常に出力できない虞がある。この場合、電流波形歪みを生じ、ノイズや騒音が増加する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コンバータを並列接続して位相差駆動することで出力電流リップルの低減効果を維持しつつ、指令値の絶対値が小さい場合でも、コンバータがパルスを出力する際に電流波形歪みを抑制できるようにした電力変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、並列接続された2以上のn個のコンバータを備える電力変換部を備える。モータ制御部が、入力される指令値に応じた制御情報を出力すると、パルス制御部は、モータ制御部の制御情報に基づいて電力変換部のn個のコンバータを駆動するパルス信号を出力する。パルス制御部は、指令値に応じて電流境界モード又は電流不連続動作モードに切り替えてコンバータを動作させる電流不連続動作切替部を備える。
【0007】
電流不連続動作切替部は、例えば、指令値の絶対値が所定値より大きいときに電流境界モードに切り替え、指令値の絶対値が所定値より小さいときに電流不連続動作モードに切り替えることで、コンバータはパルス幅の短縮化を抑制しつつ電流波形歪みを抑制してパルスを出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】第1実施形態におけるコンバータの制御構成図
【
図4】第1実施形態における多重パルス生成処理を概略的に説明するフローチャートのその1
【
図5】第1実施形態における多重パルスの生成方法の説明図
【
図6】第1実施形態における多重パルス生成処理を概略的に説明するフローチャートのその2
【
図7】第1実施形態における四多重の場合のコンバータの駆動電圧及び駆動電流波形
【
図8】第1実施形態において四多重の電流境界モードにおけるインダクタ電流と出力電流との関係性を示す説明図のその1
【
図9】第1実施形態における指令電流と動作周波数との関係性を示す説明図
【
図10】第1実施形態において四多重の電流不連続動作モードにおけるインダクタ電流と出力電流との関係性を示す説明図
【
図11】比較例における指令電流と動作周波数との関係性を示す説明図
【
図12】第2実施形態における多重パルス生成処理を概略的に説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。複数の実施形態について同一又は類似の構成部分には同一又は類似符号を付して説明を省略することがある。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1から
図11を参照しながら説明する。
図1に例示したように、バッテリ2には電力変換器としての三相インバータ3が接続されている。バッテリ2は、ニッケル水素蓄電池やリチウム蓄電池などの蓄電池である。三相インバータ3にはモータ4が接続されている。モータ4は、例えば電気自動車又はハイブリッド車の車輪を駆動する動力発生装置であり、永久磁石同期モータ(PMSM)を例示している。
【0011】
三相インバータ3には、U相、V相、W相の複数相分のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wが用意されている。三相インバータ3は、それぞれ、基本単位となるコンバータ5u、5v、5wを2以上のn個多重並列接続したマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wにより構成されている。
【0012】
図1には、基本単位となるコンバータ5u、5v、5wの符号にそれぞれ添え字「1~n」を付して図示している。以下の説明では、コンバータ5u1、5u2、5u3…5un、5v1、5v2、5v3…5vn、5w1、5w2、5w3…5wn、のうち個々又はその一つを単にコンバータ5と略することもある。また、インダクタLに流れる電流(以下、インダクタ電流IL)の検出対象となるコンバータ5u1、5v1、5w1を、「マスタ相のコンバータ5」と称することもある。コンバータ5の構成例は
図3に示している。
【0013】
例えば、U相のマルチフェーズコンバータ6uは、n個のコンバータ5に流す全電流を1/nでそれぞれ分担すると共に、互いに位相差T/nを存して駆動することで各コンバータ5u1…5unの駆動電流を平準化する。各コンバータ5u1…5unの出力電流が合成されるため電流リップルを相殺でき、これにより、所望の電流波形、ここでは正弦波電流を出力するように構成されている。V相、W相のマルチフェーズコンバータ6v、6wも同様である。
【0014】
上記の個々のコンバータ5は、
図3に示すように、上アームスイッチSW1、下アームスイッチSW2、インダクタL、及びコンデンサCを図示形態に備え、バッテリ2の電圧を所望に変換する降圧型の非反転形バックコンバータにより構成される。
【0015】
上アームスイッチSW1、下アームスイッチSW2は、Nチャネル型のパワーMOSFETなどのパワースイッチとして構成され、ドレインソース間には負荷電流を転流するためそれぞれ還流ダイオードD1、D2が接続されている。以下の説明では、上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2の双方、又はその一方を「パワースイッチ」と称することもある。
【0016】
本実施形態に係る制御システム1は、三相インバータ3に制御装置10を接続しており、
図1に示す制御装置10を主体として制御を実行する。制御装置10は、複数のコア及び揮発性及び不揮発性のメモリ17などを備えたコンピュータにより構成されるもので、機能的にはモータ制御部11及びパルス制御部12としての構成を備える。メモリ17は、非遷移的実体的記憶媒体として各種のデータを保持する保持部として用いられる。バッテリ2には電圧センサ13が設置されており、電圧センサ13の検出電圧はモータ制御部11に入力されている。
【0017】
また、UVW各相のマスタ相となるコンバータ5u1、5v1、5w1を構成するインダクタLの通電経路には、電流センサ14が設けられている。モータ制御部11は、電流センサ14により検出されたインダクタ電流ILを入力している。また電圧センサ15が、コンデンサCの出力電圧Voutを検出するために設けられており、当該電圧センサ15による検出電圧はモータ制御部11に入力されている。
【0018】
モータ制御部11は、要求トルクに応じて算出された電流指令値Ioを指令値として入力し当該電流指令値Ioに応じた制御情報をパルス制御部12に出力する。なお、電流指令値Ioの更新周期は、交流周波数の周期に比較して十分短い時間に設定されており、交流周波数にて変化する電流指令値Ioを細かく設定できる。
【0019】
また電流センサ16は、モータ4に入力させる相電流Iu、Iv、Iwを検出するために設けられており、電流センサ16による検出電流はモータ制御部11に入力されている。またモータ制御部11は、モータ4に設置されるレゾルバなどの回転位置センサ4aによりロータの角度θを入力し角速度ωの情報を演算する。
【0020】
図2に示すように、モータ制御部11は、減算器30、電流制御器31、相変換器としての二相三相変換器32、及び三相二相変換器33を図示形態に接続して構成される。モータ制御部11は、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*を入力する。またモータ制御部11の三相二相変換器33は、相電流Iu、Iv、Iwを入力すると共に、モータ4に設置されるレゾルバなどの回転位置センサ4aによりロータの角度θを入力し角速度ωの情報を演算する。三相二相変換器34は、モータ4の三相の相電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id、q軸電流Iqに変換し減算器30に出力する。
【0021】
減算器30は、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*からd軸電流Id、q軸電流Iqをそれぞれ減算し、電流制御器31に出力する。電流制御器31は、例えば、比例積分制御によりdq軸の電流指令値Id_cmd、Iq_cmdを二相三相変換器32に出力する。二相三相変換器32は、電流制御器31から入力されるdq軸の電流指令値をモータ4の三相毎の電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmd、に変換し、パルス制御部12に出力する。
【0022】
モータ制御部11は、これらの情報をフィードバック制御情報としてパルス制御部12に出力する。パルス制御部12は、パルス生成ブロック12u、12v、12wを三相の相毎に備える。
図2に機能的に例示したように、パルス制御部12のパルス生成ブロック12u、12v、12wは、それぞれ、ゲート駆動部21、ゼロ電流検出部22、パルス演算部23、及び、電流不連続動作切替部24としての機能的構成を備える。
【0023】
各パルス生成ブロック12u、12v、12wの各相のパルス演算部23は、それぞれ、モータ4の三相毎の電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmdを入力する。ゼロ電流検出部22は、相毎にゼロ電流を検出し、パルス演算部23に出力する。
【0024】
図3に示したように、各相のパルス演算部23は、オン時間カウンタ24a、開始位相カウンタ24b、終了位相カウンタ24cなどによるカウンタを備える。パルス演算部23は、各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wの各コンバータ5が電流境界モードにて動作するときの上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、周期T、及び、同相(例えばU相)の複数のコンバータ5に入力させる多重パルス間の位相差Tdの各パラメータを算出する。
【0025】
本実施形態の電流境界モードとは、インダクタ電流ILがゼロとなることを検出すると当該検出タイミングで上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2のオン・オフを切り替え、各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wの各コンバータ5を絶えず動作させてインダクタ電流ILを変化させ続けるモードを示す。オン時間Ton、オフ時間Toff、周期T、位相差Tdの各パラメータは、同相のマルチフェーズコンバータ(例えば6u)の各コンバータ5に入力させる多重パルスの間で同一に設定される。下記で詳述するが、オン時間Tonは、電流指令値I0>0のときのパワースイッチSW1のオン時間Ton1、又は、電流指令値I0<0のときのパワースイッチSW2のオン時間Ton2を示す。オフ時間Toffは、電流指令値I0>0のときのパワースイッチSW1のオフ時間Toff1、又は、電流指令値I0<0のときのパワースイッチSW2のオフ時間Toff2を示す。
【0026】
ゲート駆動部21は、パルス演算部23の演算結果に基づいて三相インバータ3を駆動する。ゲート駆動部21は、パルス演算部23により算出されたオン時間Ton、周期T、位相差Tdに基づいて上アームスイッチSW1、下アームスイッチSW2をオン・オフ駆動する。これにより、パルス制御部12は、モータ制御部11から入力される制御情報に基づいて、多重パルス(マルチフェーズパルス)を生成して三相インバータ3の3×n個のコンバータ5に印加することでコンバータ5を多重動作させることができる。
【0027】
<基本的なマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wの動作説明>
以下、フローチャートを用いて各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wに係る基本的処理動作を説明する。UVW各相の動作は概ね同一であるため、U相のマルチフェーズコンバータ6uの処理動作を説明し、V相、W相のマルチフェーズコンバータ6v、6wの処理動作説明を省略する。
【0028】
図4に1多重目のコンバータ5u1の処理ステップを示す。ゼロ電流検出部22がS1においてインダクタ電流ILがゼロとなるタイミングを検出したことを条件として、ゲート駆動部21がS3又はS4において上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2をターンオンさせる。このとき、パルス演算部23はS2において電流指令値Ioの値に基づいて、上アームスイッチSW1をオンするか、下アームスイッチSW2をオンするかを決定する。
【0029】
<電流指令値Ioがゼロを超えている場合>
電流指令値Ioがゼロを超えていれば、ゲート駆動部21は、S3において上アームスイッチSW1をターンオンする。例えばU相の電流指令値Ioが0を超える場合、ゲート駆動部21が、マルチフェーズコンバータ6uを構成する各コンバータ5の下アームスイッチSW2をオフに保持した状態で、上アームスイッチSW1をオン・オフ駆動する。上アームスイッチSW1がオンすると、バッテリ2から上アームスイッチSW1を通じてインダクタ電流ILを漸増させながらコンデンサCを充電する。
【0030】
その後、S5においてオン時間Ton1が経過すると、ゲート駆動部21はS6において上アームスイッチSW1をターンオフ駆動する。上アームスイッチSW1がオフしても、下アームスイッチSW2に付属した還流ダイオードD2を通じてインダクタ電流ILが流れ続ける。
【0031】
インダクタ電流ILは漸減するが、ゼロ電流検出部22は、インダクタ電流ILがゼロとなるタイミングを検出する。ゲート駆動部21は、インダクタ電流ILがゼロとなると、上アームスイッチSW1を再びオンする。電流指令値Ioが0を超える限り、この動作が繰り返される。各コンバータ5は、ゼロ電流検出部22によりインダクタ電流ILがゼロ検出されたことを条件として、上アームスイッチSW1をターンオンする電流境界モードにて動作する。
【0032】
<電流指令値Ioがゼロ未満の場合>
逆に、電流指令値Ioがゼロ未満であれば、ゲート駆動部21はS4において下アームスイッチSW2をターンオンする。ゲート駆動部21は、上アームスイッチSW1をオフに保持した状態で、下アームスイッチSW2をオン・オフ駆動する。下アームスイッチSW2がオンすると、インダクタ電流ILを漸減させながらコンデンサCから放電する。この後、S5においてオン時間Ton2が経過すると、ゲート駆動部21はS6において下アームスイッチSW2をターンオフ駆動する。下アームスイッチSW2がオフしても、上アームスイッチSW1に接続された還流ダイオードD1を通じてインダクタ電流ILが流れ続ける。
【0033】
インダクタ電流ILは漸増するが、ゼロ電流検出部22は、インダクタ電流ILがゼロとなるタイミングを検出する。ゲート駆動部21は、インダクタ電流ILがゼロになると再び下アームスイッチSW2をオンする。電流指令値Ioが0を下回る限り、この動作が繰り返される。各コンバータ5は、ゼロ電流検出部22によりインダクタ電流ILがゼロ検出されると、下アームスイッチSW2をターンオンする電流境界モードにて動作する。
【0034】
<パルス演算部23による演算方法>
なお、各コンバータ5を駆動する際、パルス演算部23は、各コンバータ5のパワースイッチSW1又はSW2をオン継続させるオン時間Ton、及び、各コンバータ5に印加する多重パルスの間の位相差Tdを算出する。
【0035】
相電流Iuの電流指令値Io、コンバータ5の多重数nであれば、コンバータ5の平均電流I=Io/nとなる。本制御システム1では、インダクタ電流ILはゼロを境界として漸増又は漸減を繰り返すため、インダクタ電流ILのピーク電流ILpは、平均電流Iの2倍=2Iとなる。
【0036】
パルス演算部23は、電流指令値Io>0のときには、上アームスイッチSW1のオン時間Ton1及びオフ時間Toff1、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ下記の(1-1)式~(1-4)式に基づいて算出する。
【数1】
ここで、Vinは入力電圧、Voutは相電圧、Lはインダクタのインダクタンス、nはコンバータ5の多重動作数を示す。
【0037】
電流指令値I
0が0未満の場合、パルス制御部12は、下アームスイッチSW2を駆動するためのパルスを生成する。パルス演算部23は、電流指令値Io<0のときには、下アームスイッチSW2のオン時間Ton2及びオフ時間Toff2、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ下記の(2-1)式~(2-4)式に基づいて算出する。
【数2】
【0038】
図5に1多重目~n多重目のコンバータ5を起動させるためのパルス演算部23によるパルス生成例を示している。オン時間カウンタ24aは、ゼロ電流検出部22によりインダクタ電流I
Lがゼロ検出されたことを条件として、カウンタ値を所定値に設定しダウンカウントすることでオン時間Ton1又はTon2を計測する。
【0039】
パルス演算部23は、オン時間Tonを経過すれば
図4のS5においてYESと判定し、オンされているパワースイッチSW1又はSW2をS6においてターンオフする。これにより、オン時間Ton1又はTon2だけパワースイッチSW1又はSW2をオン継続させることできる。
【0040】
またパルス制御部12のパルス演算部23は、オン時間カウンタ24aと同時に開始位相カウンタ24bを動作させる。開始位相カウンタ24bは、2多重目~n多重目のコンバータ5u2…5unに入力させるパルスの開始タイミングを計測するためのカウンタを示す。
【0041】
開始位相カウンタ24bは、カウンタ値を所定値に設定しダウンカウントすることでパルス演算部23にて演算された位相差Tdに相当する時間を計測する。終了位相カウンタ24cは、1多重目~n多重目のコンバータ5u1…5unにそれぞれ入力させるパルスの終了タイミングを計測するカウンタを示す。終了位相カウンタ24cは、カウンタ値を所定値に設定しダウンカウントすることでパルス演算部23にて演算された位相差Tdに相当する時間を計測する。
【0042】
図6にm多重目(ただしm≧2)のコンバータ5の処理ステップを示す。パルス制御部12は、S11においてm-1多重目のコンバータ5のパワースイッチSWm-1をオンしていることを条件としてS12以降の処理を行っている。ここで示したパワースイッチSWm-1とは、m-1多重目のコンバータ5の上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2の何れかを示し電流指令値I
oに基づいて変化する。
【0043】
m-1多重目のコンバータ5のパワースイッチSWm-1がオンした後、S12においてm多重目の開始タイミングである位相差Td=Ton/nを経過したか否かを開始位相カウンタ24bにより計測し、S12の条件を満たしたとき、S13においてm多重目のコンバータ5のパワースイッチSWmをターンオンさせる。パワースイッチSWmとは、m多重目のコンバータ5の上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2の何れかを示し電流指令値Ioに基づいて変化する。
【0044】
以降、パルス制御部12は、開始位相カウンタ24bのカウントが終了する度に、m多重目のコンバータ5のパワースイッチSWmを順次オンさせるパルスを生成する。これにより、互いに位相差Tdを存して駆動用のパルスを出力開始できる。
【0045】
他方、
図5に示すように、1多重目のコンバータ5u1のオン時間カウンタ24aによるカウントが終了するとオン時間Tonを経過したと判断し、パルス制御部12は、1多重目のコンバータ5u1のパワースイッチSW1又はSW2へのパルス出力を停止する。パルス制御部12は、オン時間カウンタ24aによるカウントを終了したタイミングにおいて終了位相カウンタ24cのカウントを開始する。その後、パルス制御部12は、終了位相カウンタ24cによるカウントを終了し、S14においてオン時間Tonを経過する度に、m多重目のコンバータ5のパワースイッチSWmへ出力しているパルスを順次停止させる。これにより、m多重目のパワースイッチSWmを順次ターンオフさせる。
【0046】
パワースイッチSW1又はSW2をターンオフするときにはハードスイッチングとなる。しかし、パワースイッチSW1及びSW2の出力に設けられるコンデンサCの充電時間をスイッチング時間より十分長くすれば、電圧上昇を制限する期間を長期間化でき、ZVS(Zero Voltage Switching)とすることができる。これにより、スイッチング損失を概ねゼロにできる。出力コンデンサの容量が不足している場合には、並列にコンデンサCを追加するとよい。
【0047】
この結果、パルス演算部23は、1多重目のコンバータ5u1へのパルスを出力したタイミングから前述のように計算した位相差Tdの後に順次パルスを出力することで、1…n多重目のコンバータ5u1…5unに入力させる多重パルスを生成できる。
【0048】
各コンバータ5の共振時間は、パワースイッチSW1及びSW2の出力容量と、還流ダイオードD1及びD2の接合容量と、インダクタLのインダクタンスとにより決定される。パワースイッチSW1、SW2のオンタイミングは、これらの容量とインダクタンスによる共振半周期後の電圧最下点に設定することが好ましい。共振半周期後の電圧最下点とは、パワースイッチSW1又はSW2をオフすることで、インダクタ電流ILがゼロをオーバーシュートした後に再度ゼロに近接するタイミングになる。これにより、ZCS(Zero-Current-Switching)、且つ、疑似ZVS(Zero-Voltage-Switching)にできるようになり、ターンオン時のスイッチング損失を実質ゼロにできる。
【0049】
図7に多重数n=4とし、周期をT、位相差TdをT/nとした場合の電流境界モードにおける基本的な波形例と一部拡大図を示している。インダクタ電流ILが漸増しその後に漸減すると、インダクタLにはインダクタ電流ILが三角波状に通電されることになる。
【0050】
制御装置10は、前述のフィードバック情報に基づいてUVW各相の電流指令値Ioを正弦波状に徐々に変化させながらパルス制御部12に制御情報を出力する。パルス制御部12は、
図5に例示したように多重パルスの各パラメータ(オン時間Ton、オフ時間Toff、周期T、位相差Td)を変化させる。
【0051】
各コンバータ5は、互いに同一の位相差Td=T/nを有して相電流Iu、Iv、Iwをモータ4に通電することで、各コンバータ5の出力電流を多重数n分だけ重畳しつつ、モータ4のUVW各相に通電できる。これにより、所望の電流指令値Io、ここでは正弦波状に変化する電流指令値Ioに各相電流Iu、Iv、Iwを制御できる。
【0052】
各相電流Iu、Iv、Iwの最大出力は、インダクタ飽和電流より小さく且つ三相インバータ3の発熱要件を満たすように決定され、多重数nは最大出力を満たす上限に基づいて決定すると良い。また、多重パルスの周期Tに対応した周波数は、可聴周波数より高く設定すると良い。
【0053】
多重数nは、大きいほど電流リップル相殺効果が高くなるため極力大きくすることが望ましい。なお、多重数nを大きくしすぎると制御装置10による制御を複雑化する要因となるため、制御装置10のリソースに基づく処理能力に応じて多重数nを決定すると良い。
【0054】
<電流不連続動作切替部24の説明>
次に、本実施形態の電流不連続動作切替部24、及び、その技術的意義について説明する。前述したように電流境界モードにおける基本的な制御を実行することで正弦波状の駆動電流によりモータ4を駆動できる。
【0055】
しかし、背景技術欄に述べたように、電流指令値I0が小さくなると周期が短くなり、コンバータ5を駆動するパルス幅も短くなる。コンバータ5を駆動するパルス幅が短い場合、コンバータ5はパルスを正常に出力できない虞がある。この場合、電流波形歪みを生じノイズや騒音が増加する虞がある。
【0056】
そこで本実施形態では、
図2に示したように、パルス制御部12のパルス生成ブロック12u、12v、12wがそれぞれ電流不連続動作切替部24としての機能を備えている。電流不連続動作切替部24は、電流指令値I
0の大きさに応じてコンバータ5を電流境界モードに切り替えたり、又は、電流不連続動作モードに切り替えたりする機能を備えるブロックである。以下では、本願に係る電流不連続動作切替部24によるモード切替方法を説明すると共にその意義を説明する。
【0057】
本実施形態の電流不連続動作モードは、少なくとも前述の電流境界モードにならないモードを示している。前述したように電流境界モードは、インダクタ電流ILがゼロとなることを検出すると当該検出タイミングで上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2のオン・オフを切り替え、各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wの各コンバータ5を絶えず動作させてインダクタ電流ILを変化させ続けるモードを示している。
【0058】
これに対し、電流不連続動作モードは、インダクタ電流ILがゼロと検出されると当該検出タイミングから上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2を共にオフし続けることで、動作周波数に対応した周期の中でインダクタ電流ILをゼロのまま保持する期間を設ける動作モードを示す。
【0059】
電流不連続動作切替部24は、電流指令値I0(Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmd)の絶対値が所定値以上のときには電流境界モードに切り替え、パルス演算部23に電流境界モードとして指令することで電流境界モードの処理を実行させる。電流境界モードの動作説明は前述と同様である。
【0060】
パルス演算部23は、電流指令値I0が正のとき、上アームスイッチSW1のオン時間Ton1及びオフ時間Toff1、並びに、周期T及び前記多重パルスの間の位相差Tdを、それぞれ前述の(1-1)式~(1-4)式に基づいて設定し、ゲート駆動部21が上アームスイッチSW1を駆動する。逆に、パルス演算部23は、電流指令値I0が負のとき、下アームスイッチSW2のオン時間Ton2及びオフ時間Toff2、並びに、周期T及び多重パルスの間の位相差Tdを前述の(2-1)式~(2-4)式に基づいて設定し、ゲート駆動部21が下アームスイッチSW2を駆動する。
【0061】
他方、電流不連続動作切替部24は、電流指令値I0(Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmd)の絶対値が所定値未満の場合には、電流不連続動作モードに切り替える。電流不連続動作切替部24は、パルス演算部23に電流不連続動作モードを指令することで、パルス演算部23は下記のようにオン時間Ton3及びオフ時間Toff3並びに周期T3及び多重パルスの間の位相差Td3を下記のように算出して設定する。
【0062】
例えば、電流不連続動作モードでは、インダクタピーク電流:ILp、周期T3=動作周波数限界F0における周期Tmin、上アームスイッチSW1のオン時間Ton3、上アームスイッチSW1がオフで且つインダクタ電流ILがゼロにならない時間をオフ時間Toff3と定義する。ここで周期T3を、動作周波数限界F0における周期Tminに設定している。この動作周波数限界F0は、上アームスイッチSW1、下アームスイッチSW2を安定して動作させるための周波数であり、各素子の特性により予め決められている値である。
【0063】
パルス演算部23は、電流指令値Ioが正で所定値未満のときにはVout≒Vin/2と仮定し、前述の(1-1)式及び(1-2)式と同様にオン時間Ton3及びオフ時間Toff3を算出する。これにより、パルス演算部23は、オン時間Ton3及びオフ時間Toff3を(3)式に示すように設定する。
【数3】
【0064】
コンバータ5の平均出力電流はIout/nで求められる。このため、平均出力電流Iout/nは、下記の(4)式のように求めることができる。
【数4】
【0065】
したがって、所望の出力電流を得るためのオン時間Ton3及びオフ時間Toff3は、下記の(5)式のように求めることができる。
【数5】
【0066】
なお、オン時間Ton3、オフ時間Toff3を経過した後、周期Tminが終了するタイミングまでの期間の長さはTmin-(Ton3+Toff3)によって表すことができる。この期間は電流ゼロに設定される(待期期間)。また電流不連続動作モードにおいて、位相差Tdは、電流Iout及び入力電圧Vinなどのパラメータに基づいて最適化できるが、処理時間が膨大になるため、動作周波数F0における位相差Td=Tmin/nを簡易的に用いてもよい。
【0067】
パルス演算部23が、オン時間Ton3、オフ時間Toff3、位相差Td、周期Tminを設定すると、ゲート駆動部21はオン時間Ton3、オフ時間Toff3、位相差Td、周期Tminに基づいて、下アームスイッチSW2をオフに保持したまま上アームスイッチSW1を駆動する。具体的には、オン時間Ton3の間、ゲート駆動部21は、下アームスイッチSW2をオフに保持したまま上アームスイッチSW1をオンするが、オフ時間Toff3の間、上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2を共にオフにする。オン時間Ton3の間、インダクタ電流ILは上昇し続けるが、オフ時間Toff3の間、インダクタ電流ILは下降する。またオン時間Ton3及びオフ時間Toff3とは別に設けられた前述の待期期間の間、ゲート駆動部21は、上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2を共にオフにし続けることで、インダクタ電流ILをゼロに保持する。
【0068】
このように、ゲート駆動部21が駆動することで、
図10に示すように、各インダクタ電流ILを加算して得られる相電流Iu、Iv、Iwを所望の出力電流に制御できる。特に、パルス演算部23は、オン時間Ton3及びオフ時間Toff3を経過した後に電流をゼロに設定する待機期間を設けて電流不連続動作モードを設定しているため、たとえ電流指令値I
0の絶対値が所定値より小さく、相電流を小さくする必要があっても指令に合わせて出力の相電流Iu、Iv、Iwを制御できる。
【0069】
逆に、パルス演算部23は、電流指令値I0が負で絶対値が所定値未満のときにも同様にVout≒Vin/2と仮定し、前述の(2-1)式及び(2-2)式と同様にオン時間Ton3及びオフ時間Toff3を算出する。これによりパルス演算部23は、オン時間Ton3及びオフ時間Toff3を前述の(3)式~(5)式に示すように設定する。また、周期Tminは動作周波数限界F0に対応して設定すると共に、位相差Td=Tmin/nとすると良い。
【0070】
前述と同様に、オン時間Ton3、オフ時間Toff3を経過した後、周期Tminが終了するタイミングまでの期間の長さはTmin-(Ton3+Toff3)により表すことができるが、この期間は電流ゼロに設定される(待機期間)。
【0071】
パルス演算部23が、オン時間Ton3、オフ時間Toff3、位相差Td、周期Tminを設定すると、ゲート駆動部21はオン時間Ton3、オフ時間Toff3、位相差Td、周期Tminに基づいて上アームスイッチSW1をオフに保持したまま下アームスイッチSW2を駆動する。具体的には、オン時間Ton3の間、ゲート駆動部21は、上アームスイッチSW1をオフに保持したまま下アームスイッチSW2をオンするが、オフ時間Toff3の間、上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2を共にオフにする。オン時間Ton3の間、インダクタ電流ILは下降し続けるが、オフ時間Toff3の間、インダクタ電流ILは上昇する。またオン時間Ton3及びオフ時間Toff3とは別に設けられた前述の待期期間の間、ゲート駆動部21は、上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2を共にオフにし続けることで、インダクタ電流ILをゼロに保持する。
【0072】
前述では、Vout≒Vin/2と仮定してオン時間Ton3、オフ時間Toff3を設定した形態を示したが、出力電圧Voutを電圧センサ15により検出すると共に、入力電圧Vinを電圧センサ13により検出し、この検出結果に基づいてオン時間Ton3、オフ時間Toff3を算出して設定するようにしてもよい。
【0073】
<比較例>
電流境界モードを適用したまま、電流指令値Ioの絶対値を小さくするように設定すると、動作周波数限界F0を超える周波数で駆動しなければ理想的な波形を得ることができない。実際には、スイッチSW1、SW2を動作周波数限界F0以下の周波数で駆動しなければ素子の特性を満足に満たすことができない。すると、電流境界モードを維持しようとすると、
図11の上図に示すように、コンバータ5が多重パルスを出力する際に電流波形歪みを生じてしまう。
【0074】
<本実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、電流不連続動作切替部24は、指令値に応じて電流境界モード又は電流不連続動作モードに切り替えている。電流不連続動作切替部24は、例えば、指令値の絶対値が所定値より大きいときに電流境界モードに切り替え、指令値の絶対値が所定値より小さいときに電流不連続動作モードに切り替えている。
【0075】
本実施形態によれば、電流不連続動作切替部24は、電流指令値I
0の絶対値が所定より小さいときに電流不連続動作モードに切り替えている。例えば、極力高い例えば最大の動作周波数限界F0(周期T3=Tmin)のパルスを出力している。このように処理動作させることで、
図9に示すように、コンバータ5はパルス幅の短縮化を抑制しつつ電流波形歪みを抑制して出力できる。
【0076】
指令値として電流指令値I0を用いた形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、指令値として指令回転数を用いても良い。指令回転数が大きくなれば指令回転数の変化に依存して電流指令値I0が大きくなる。
【0077】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図12を参照しながら説明する。第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分について説明し、同一部分についての説明を省略する。
【0078】
図12には
図6に代わるフローチャートを示している。
図12に示すように、S11aにおいて1多重目のコンバータ5のパワースイッチSW1又はSW2をオンしたタイミングから、S12aにおいて1多重目のパルスを基準としてm多重目のパルスの位相差T
dm=Ton×(m-1)/nを経過した後、S13においてm多重目のコンバータ5のパワースイッチSWmをターンオンするようにしても良い。オン時間Tonは、電流指令値I
0>0のときのパワースイッチSW1のオン時間Ton1、又は、電流指令値I
0<0のときのパワースイッチSW2のオン時間Ton2を示す。
【0079】
なお、1多重目の開始位相を基準としたm多重目の開始位相の位相差T
dmは、下記の(6)式の関係性に基づいて算出できる。
【数6】
【0080】
例えばU相の場合、1多重目のコンバータ5u1をマスタ相として、当該マスタ相のコンバータ5u1のパワースイッチSW1又はSW2をターンオンさせた後に、2以上のm多重目のコンバータ5u2…5unをスレーブ相として順にパワースイッチSW1又はSW2をターンオンさせるようにしても良い。本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0081】
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができ、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
【0082】
前述実施形態では、降圧型のコンバータ5を用いた電力変換器を記載しているが、これに限定されるものではなく、例えば、昇圧型、昇降圧型のコンバータ5を用いることができる。またコンバータ5は、非絶縁型であっても絶縁型であっても良い。電圧センサ15は必要に応じて設ければ良い。
【0083】
前述実施形態では、多重動作させる多重数nを4に設定した形態を示しているが、多重数nは2でも3でも5以上でも良い。前述実施形態では、パワースイッチSW1及びSW2は、Nチャネル型のパワーMOSFETを例示しているが、他種類のパワースイッチング素子により構成しても良い。
【0084】
前述実施形態では、パワースイッチSW1、SW2を構成するパワーMOSFETに負荷電流を転流するため、並列に還流ダイオードD1、D2をそれぞれ設けているが、これに限定されるものではない。還流ダイオードD1、D2に代えてパワーMOSFETに付加されるボディダイオードを用いても良い。また逆導通性を備えたパワースイッチ(例えば逆導通IGBT(RC-IGBT))を用いて構成しても良い。
【0085】
また、1多重目のコンバータ5u1、5v1、5w1と同様に、2以上のm多重目のコンバータ5u2…5un、5v2…5vn、5w2…5wnにゼロ電流検出部22を設け、インダクタ電流ILをゼロ検出した後に、対応するパワースイッチSW1又はSW2をオンするようにしても良い。パワースイッチSW1、SW2のオン時間Tonは、前述(1-1)式、(2-1)式のように算出したオン時間Tonを用いることが望ましい。
【0086】
制御装置10の中の構成である「モータ制御部11」、「パルス制御部12」は、ロジック回路を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよいし、マイコンなどのハードウェアがプログラムを実行することで実現しても良い。
【0087】
本開示に記載の制御装置10による手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御装置10及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。
【0088】
若しくは、本開示に記載の制御装置10及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【0089】
本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0090】
図面中、3は三相インバータ(電力変換部)、5、5u1、5v1、5w1、5u2、5v2、5w2、5u3、5v3、5w3、5un、5vn、5wnはコンバータ、6u、6v、6wはマルチフェーズコンバータ、10は制御装置、11はモータ制御部、12はパルス制御部、21はゲート駆動部、22はゼロ電流検出部、23はパルス制御部、24は電流不連続動作切替部、SW1は上アームスイッチ、SW2は下アームスイッチ、を示す。