(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153383
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】二酸化炭素を排出せずに極低温を達成できる冷却システム
(51)【国際特許分類】
F25B 9/14 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
F25B9/14 520A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067247
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】507092573
【氏名又は名称】A・Tコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】豊泉 博
(72)【発明者】
【氏名】東 陽一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】垣岡 隆文
(57)【要約】 (修正有)
【課題】二酸化炭素を排出せずに、極低温まで、冷却できる冷却システムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素を排出せずに冷却対象空間を冷却するための冷却システムであって、冷却対象を収容するための冷却対象空間を有する収容部と、気体冷媒を膨張させると冷えるという性質を利用し、二酸化炭素を排出せずに冷却部分を低温にする冷却機器と、収容部と冷却機器とを接続し、収容部内の熱を冷却機器に伝えることで、収容部内の温度を下げるための冷却媒体とを含む、冷却システム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を排出せずに冷却対象空間を冷却するための冷却システムであって、
冷却対象を収容するための冷却対象空間を有する収容部と、
気体冷媒を膨張させると冷えるという性質を利用し、二酸化炭素を排出せずに冷却部分を低温にする冷却機器と、
前記収容部と前記冷却機器とを接続し、前記収容部内の熱を前記冷却機器に伝えることで、前記収容部内の温度を下げるための冷却媒体と
を含む、冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却システムであって、
前記冷却機器は、前記冷却部分と、
往復運動するピストンにより発生する圧縮力により熱エネルギーを排出するための高温部と、
前記冷却部分と、前記高温部との間で熱を交換するための熱交換器とを有する、
冷却システム。
【請求項3】
請求項2に記載の冷却システムであって、
前記冷却機器は、突起状の冷却部を有し、
前記冷却媒体は,前記冷却部を取り囲み、前記冷却部に熱を伝える部位である冷却部接続部位を有する、冷却システム。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却システムであって、
前記収容部は、真空チャンバである、冷却システム。
【請求項5】
請求項3に記載の冷却システムであって、
前記収容部は、サーバルームである、冷却システム。
【請求項6】
請求項3に記載の冷却システムであって、
前記収容部は、瞬間冷凍用容器、低温に保持する必要があるワクチンを収容するための容器、臓器を保存するための容器、又は食品を冷却完走するための容器である、冷却システム。
【請求項7】
請求項3に記載の冷却システムであって、
前記収容部は、冷却コンテナ、又は物流物資保存庫である、冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却システムに関する。より詳しく説明すると、二酸化炭素を排出しない冷却機器を用いて、二酸化炭素を排出せずに所定空間を冷却できる冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,暗号資産や電気自動車の普及により,コンピュータの演算装置の冷却が急務とされている。コンピュータの演算装置の冷却には,風冷や水冷などが用いられている。
【0003】
特許第6689047号公報には、保冷ユニットが記載されている。この保冷ユニットは、容器の保冷ジャケットに空気を使用し、冷却のための水を全く必要としない保冷ユニットである。しかしながら、この保冷ユニットは、ペルチェ素子を用いて、空気を冷却し、冷却した空気を用いて、容器を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペルチェ素子を利用した冷却系は、冷却できる温度領域が限られる。このため、二酸化炭素を排出せずに、極低温まで、冷却できる冷却系が望まれた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、気体冷媒を膨張させると冷えるという性質を利用すれば、ニ酸化炭素を排出せずに、極低温まで、迅速に冷却できるという知見に基づく。
【0007】
この冷却システムは、二酸化炭素を排出せずに収容部を冷却する系に関する。この系は、例えば、収容部を極低温から常温まで幅広い温度帯に急速に冷却でき、所望温度に至った後は、収容部内をほぼ一定の温度に維持できる。この冷却システムは、二酸化炭素を排出せずに、効果的に対象物を冷却できるので、冷却や冷凍が必要なあらゆる対象物について、利用できる。
【0008】
この冷却システムは、収容部と、冷却機器と、冷却媒体とを含む。
収容部は、冷却対象を収容するための冷却対象空間を有する要素である。
冷却機器は、気体冷媒を膨張させると冷えるという性質を利用し、二酸化炭素を排出せずに温度が低くなる部位である冷却部を有する機器である。
冷却媒体は、収容部と冷却機器とを接続し、収容部内の熱を冷却機器に伝えることで、収容部内の温度を下げるための要素である。
【0009】
冷却機器は、冷却部分と、往復運動するピストンにより発生する圧縮力により熱エネルギーを排出するための高温部と、冷却部分と、高温部との間で熱を交換するための熱交換器とを有する。冷却機器の例は、突起状の冷却部を有するものである。この場合、冷却媒体の例は,冷却部を取り囲み、冷却部に熱を伝える部位である冷却部接続部位を有するものである。
【0010】
収容部の例は、真空チャンバである。
【0011】
収容部の例は、サーバルームである。
【0012】
収容部の例は、瞬間冷凍用容器、低温に保持する必要があるワクチンを収容するための容器、臓器を保存するための容器、又は食品を冷却完走するための容器である。
【0013】
収容部の例は、冷却コンテナ、又は物流物資保存庫である。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、二酸化炭素を排出せずに、極低温まで、冷却できる冷却システムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0016】
この冷却システムは、収容部と、冷却機器と、冷却媒体とを含む。
収容部は、冷却対象を収容するための冷却対象空間を有する要素である。収容部は、冷却対象を冷却するために二酸化炭素を排出しないものが好ましい。例えば、ドライアイスを収容した場合は、収容部内において二酸化炭素が発生しても構わない。収容部は、基本的には、冷却機器と冷却媒体を介して接続され、収容部内の熱を効率的に、冷却機器に伝えるようにしている。また、収容部内に外部からの熱が伝わらないように、断熱性の高い素材の隔壁により囲まれていることが好ましい。各用途に応じて、収容部の構造は異なる。
【0017】
冷却機器は、気体冷媒を膨張させると冷えるという性質を利用し、二酸化炭素を排出せずに温度が低くなる部位(冷却部)を有する機器である。冷却機器の例は、突起状の冷却部を有するものである。冷却機器の例は、冷却部分と、往復運動するピストンにより発生する圧縮力により熱エネルギーを排出するための高温部と、冷却部分と、高温部との間で熱を交換するための熱交換器とを有する。
【0018】
冷却機器の例は、外燃機関であるスターリング機構を駆動させることで低温部を形成する冷却器(スターリング冷却器)である。スターリング冷却器は,特開2020-165615号公報や特許第6953858号公報に記載される通り公知である。具体的なスターリング冷却器の例は,スターリング エンジン ジャパン 株式会社製クライオ Mや,同社製クライオ S シリーズ(S50,S100)である。例えばクライオ Mは,冷却部を摂氏-196度まで低温にできる。このためスターリング冷却器を用いることで,効果的に冷却対象を冷却できることとなる。スターリング冷却器は,スターリングエンジンを利用する。スターリングエンジンは一般的に大掛かりであるため,利用しにくかった。また,スターリング冷却器は,ごく低温となるため,用途が限られていた。この発明では,そのようなスターリング冷却器をあえて用いることで,迅速かつ有効に冷却対象を冷却できる。
【0019】
例えば、スターリング冷却器として、ヘリウムガスを用いた場合、ヘリウムガスの気圧と、ピストン運動の速度を調整することで、冷却温度を調整できる。ヘリウムガスの気圧が高く、ピストン運動の頻度が高いほど、冷却温度を低くできる。以下の表は、クライオ Mを用いて、ワクチン冷凍保存用容器を冷却した際の温度を示す。
【0020】
【0021】
冷却媒体は、収容部と冷却機器とを接続し、収容部内の熱を冷却機器に伝えることで、収容部内の温度を下げるための要素である。冷却機器が突起状の冷却部を有する場合、冷却媒体の例は,冷却部を取り囲み、冷却部に熱を伝える部位である冷却部接続部位を有するものである。
【0022】
冷却媒体は,冷却機器と接触した冷却のための媒体であって,収容部又は収容部の内部を冷却するためのものである。冷却機器が収容部の筐体表面と接触する表面を有する場合,冷却機器の筐体表面が冷却媒体として機能してもよい。そのような筐体表面は,熱を伝えやすい材質(例えば下記の金属)でできていることが好ましい。冷却機器が冷却部(突起部)を有する場合,冷却媒体の例は,その冷却部を取り囲むとともに,収容部の筐体と接触するものである。冷却媒体は,袋や筐体に収容された液体であってもよいし,金属であってもよい。液体の例は,水,シリコーン油,トランス油,エチレングリコール,不凍液,パーフルオロポリエーテルフッ素系流体(例えば,ガルデン(登録商標)),及びフッ素系不活性液体(例えば,フロリナート(登録商標))である。金属の例は,アルミニウム,銅,ステンレス,及び合金である。金属を用いる場合,例えば,冷却機器が冷却部(突起部)とフィットする凹部と,収容部の筐体の表面とフィットする平面とを有する形状のものが好ましい。このような形状とすることで,収容部と冷却機器との熱交換を容易に行うこととができることとなる。また,冷却媒体として金属を用いる場合,結露を防止するために,収容部や冷却機器と接触しない部分を覆うカバー層を有することが好ましい。カバー層は,熱絶縁機能を有するものが好ましい。カバー層の例は,セラミックス層や樹脂層(ゴム層)である。冷却媒体は,例えば,放熱板等で囲まれてもよい。また,冷却媒体は,収容部の一表面のみならず,収容部の表面と裏面とを含む面を取り囲むような形状であることが好ましい。この場合,冷却媒体は,収容部の表面と接する第1の表面と,収容部の裏面(又は収容部の裏側に位置する基板の面)と接する第2の表面と,第1の表面及び第2の表面を接続するための接続部とを有するものが好ましい。接続部は基板を貫いて存在してもよい。
【0023】
冷却機器と収容部とが物理的に離れている場合,冷却媒体を介して,収容部の熱を冷却機器に伝えればよい。そのような冷却媒体の例は,上記と同様のものである。この場合,収容部の筐体表面は,放熱板などで覆われた部分を有することが好ましい。放熱板で囲まれた箱に,収容部を含む基板を収容し,放熱板で囲まれた箱と冷却媒体とを接触させることで,冷却機器と収容部との熱交換を行ってもよい。さらに,箱に液体の冷却媒体を収容し,収容部を含む基板を浸漬し,冷却機器と収容部との熱交換を行ってもよい。この場合,液体の冷却媒体を収容した箱が冷却媒体として機能してもよい。さらに,液体の冷却媒体を収容した箱と冷却媒体とを接触させ,冷却媒体及び箱を介して,収容部の熱を冷却機器に伝えてもよい。
【0024】
収容部の例は、真空チャンバである。この場合、冷却媒体は、真空チャンバの外側をらせん状に周回する管を有するものや、真空チャンバ内をらせん状に周回する管を有するものであってもよい。このようにすれば、真空チャンバを効果的に冷却し、真空度を向上させることができる。真空チャンバ内には、例えば、量子コンピュータや、半導体が収容されてもよいし、TOF-MSなどの分析系が収容されてもよいし、CVDやスパッタリングを行うための要素が収容されてもよい。
【0025】
収容部の例は、サーバルームである。この場合、冷却媒体は、サーバルームの内壁を取り囲む管を有するものが好ましい。
【0026】
収容部の例は、瞬間冷凍用容器、低温に保持する必要があるワクチンを収容するための容器、臓器を保存するための容器、又は食品を冷却完走するための容器である。
【0027】
収容部の例は、冷却コンテナ、又は物流物資保存庫である。冷却コンテナは、車載コンテナ、海上コンテナ、貨物コンテナ、リーファーコンテナ、タンク・コンテナ、又はバルク・コンテナであってもよい。物流物資保存庫は、宅配ボックス、冷蔵庫、物流センタ、又は倉庫であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は,対象物を冷却できるので,冷却を必要とするあらゆる産業において利用されうる。