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特開2024-153384固定子の製造方法、固定子を備える回転電機の製造方法、及び固定子の製造に用いる補助部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153384
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】固定子の製造方法、固定子を備える回転電機の製造方法、及び固定子の製造に用いる補助部材
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H02K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067249
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴志
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ06
5H615QQ12
5H615SS10
5H615SS16
(57)【要約】
【課題】単位コイルの溶接の精度を向上した回転電機の固定子の製造方法及び当該製造方法に使用される補助部材を提供する。
【解決手段】固定子の製造方法は、第1口出し線及び第2口出し線と第1貫通孔及び第2貫通孔とを位置合わせして配置する配置工程と、第1口出し線及び第2口出し線が、第1貫通孔及び第2貫通孔を貫通した状態で、第1補助部材を軸方向に垂直な第1方向に移動させ、第1貫通孔の周縁部に少なくとも第1口出し線を接触させる第1移動工程と、第1口出し線及び第2口出し線が、第1貫通孔及び第2貫通孔を貫通した状態で、第2補助部材を第1方向と逆の第2方向に移動させ、第2貫通孔の周縁部に少なくとも第2口出し線を接触させる第2移動工程と、第1補助部材と第2補助部材とによって固定された状態で第1口出し線の先端部と第2口出し線の先端部とを溶接する溶接工程と、を含む。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線の周りに円環状に配置された複数の単位コイルを備える回転電機の固定子の製造方法であって、
前記複数の単位コイルの各々は、電線が巻回された巻回部と、前記巻回部から引き出された口出し線と、を有し、
第1単位コイルが有する第1口出し線と、前記第1口出し線と接合すべき第2単位コイルが有する第2口出し線と、を揃えて組にする準備工程と、
厚み方向に貫通して形成された第1貫通孔を有する第1補助部材と、厚み方向に貫通して形成された第2貫通孔を有する第2補助部材と、を前記第1貫通孔と前記第2貫通孔の少なくとも一部とが重なるように重ね合わせた状態で、前記第1口出し線及び前記第2口出し線と前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔とを位置合わせして配置する補助部材配置工程と、
前記第1口出し線及び前記第2口出し線が、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を貫通した状態で、前記第1補助部材を軸方向に垂直な第1方向に移動させ、前記第1貫通孔の周縁部に少なくとも前記第1口出し線を接触させる第1移動工程と、
前記第1口出し線及び前記第2口出し線が、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を貫通した状態で、前記第2補助部材を前記第1方向と逆の第2方向に移動させ、前記第2貫通孔の周縁部に少なくとも前記第2口出し線を接触させる第2移動工程と、
前記第1口出し線及び前記第2口出し線が、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を貫通した状態で、前記第1補助部材と前記第2補助部材とによって固定された状態で前記第1口出し線の先端部と前記第2口出し線の先端部とを溶接する溶接工程と、を含む、
固定子の製造方法。
【請求項2】
前記準備工程において、前記第1口出し線の先端部と、前記第2口出し線の先端部とは、前記第1方向と平行な方向に順に並べられる、
請求項1に記載の固定子の製造方法。
【請求項3】
前記溶接工程において、前記第1補助部材又は前記第2補助部材のいずれか一方は接地されている、
請求項1に記載の固定子の製造方法。
【請求項4】
前記固定子は、前記第1口出し線と前記第2口出し線との組を複数組備え、
前記第1補助部材は複数の前記第1貫通孔を有し、
前記第2補助部材は複数の前記第1貫通孔と位置合わせされた複数の前記第2貫通孔を有し、
前記複数の第1貫通孔と前記複数の第2貫通孔とのそれぞれに、一組の第1口出し線と第2口出し線とを貫通させた状態で、
前記第1移動工程において前記第1補助部材を前記軸方向に垂直な第1方向に移動させ、前記複数の第1貫通孔の各々の周縁部に少なくとも前記複数の第1口出し線のいずれか一つを接触させ、
前記第2移動工程において前記第2補助部材を前記第1方向と逆の第2方向に移動させ、前記複数の第2貫通孔の各々の周縁部に少なくとも前記複数の第2口出し線のいずれか一つを接触させる、
請求項1に記載の固定子の製造方法。
【請求項5】
前記複数の第1貫通孔と前記複数の第2貫通孔とは、前記配置工程後の状態において前記第1補助部材と前記第2補助部材とに前記回転軸線を中心とした同心円状にそれぞれ配置されており、
前記第1方向は、前記回転軸線の周りに周方向時計回りであり、
前記第2方向は、前記回転軸線の周りに周方向反時計回りである、
請求項4に記載の固定子の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された固定子を用いる回転電機の製造方法。
【請求項7】
前記第1補助部材と、前記第2補助部材と、を含み、
前記位置合わせされた状態で前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが重なる部分の面積は、前記第1口出し線と前記第2口出し線の前記軸方向に垂直な方向の断面積の和よりも大きく設定されている、
請求項1から5のいずれか一項記載の固定子の製造方法に用いられる補助部材。
【請求項8】
前記第1補助部材又は前記第2補助部材のいずれか一方又は両方は、前記軸方向視において前記複数の単位コイルの前記巻回部を覆っている、
請求項7に記載の補助部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の本実施形態は、固定子の製造方法と、固定子を備える回転電機の製造方法と、固定子の製造に用いる補助部材とに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機として、固定子と回転子とを備えたものがある。固定子は、例えば円環状の固定子コアと、固定子コアの内周面から径方向内側に向かって突出した複数のティースと、各ティースに巻回された単位コイルから成るコイル導線と、を備える。
【0003】
固定子を製造するにあたり、単位コイル間、電源線と単位コイルとの間、及び中性点と単位コイル間とは、それぞれ例えば溶接などによって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-233397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単位コイルを組み合わせて溶接する際に、単位コイルの固定子コアへの組付け精度や、単位コイル各々の寸法精度等の影響により、単位コイルの先端部間つまり溶接部間に意図しない隙間が生じてしまうことがある。この場合、溶接部間の接触が不安定な状態で溶接を施すと、溶接不良等の問題が発生する虞がある。
【0006】
そこで、単位コイルの溶接の精度を向上した回転電機の固定子の製造方法及び当該製造方法に使用される補助部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の製造方法は、回転軸線の周りに円環状に配置された複数の単位コイルを備える回転電機の固定子の製造方法である。前記複数の単位コイルの各々は、電線が巻回された巻回部と、前記巻回部から引き出された口出し線と、を有する。固定子の製造方法は、第1単位コイルが有する第1口出し線と、前記第1口出し線と接合すべき第2単位コイルが有する第2口出し線と、を揃えて組にする準備工程と、厚み方向に貫通して形成された第1貫通孔を有する第1補助部材と、厚み方向に貫通して形成された第2貫通孔を有する第2補助部材と、を前記第1貫通孔と前記第2貫通孔の少なくとも一部とが重なるように重ね合わせた状態で、前記第1口出し線及び前記第2口出し線と前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔とを位置合わせして配置する補助部材配置工程と、前記第1口出し線及び前記第2口出し線が、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を貫通した状態で、前記第1補助部材を軸方向に垂直な第1方向に移動させ、前記第1貫通孔の周縁部に少なくとも前記第1口出し線を接触させる第1移動工程と、前記第1口出し線及び前記第2口出し線が、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を貫通した状態で、前記第2補助部材を前記第1方向と逆の第2方向に移動させ、前記第2貫通孔の周縁部に少なくとも前記第2口出し線を接触させる第2移動工程と、前記第1補助部材と前記第2補助部材とによって固定された状態で前記第1口出し線の先端部と前記第2口出し線の先端部とを溶接する溶接工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による回転電機の一例を軸方向の一の側から見た概略図
図2】第1実施形態による回転電機の一例について固定子の製造過程の状態を示す概略斜視図
図3】第1実施形態による回転電機の一例の固定子の一組の口出し線の接合過程を示す補助部材と一組の口出し線の概略部分平面図(その1)
図4図3のIV-IV線に沿って示す補助部材と一組の口出し線の概略断面図
図5】第1実施形態による回転電機の一例の固定子の一組の口出し線の接合過程を示す補助部材と一組の口出し線の概略平面図(その2)
図6図5のVI-VI線に沿って示す補助部材と一組の口出し線の概略断面図
図7】第1実施形態による回転電機の一例の固定子の一組の口出し線の接合過程を示す補助部材と一組の口出し線の概略平面図(その3)
図8図7のVIII-VIII線に沿って示す補助部材と一組の口出し線の概略断面図
図9】第1実施形態による回転電機一例の固定子の製造工程を示すフローチャート
図10】第2実施形態による回転電機の一例の製造工程に使用する補助部材の概略斜視図
図11】第2実施形態による回転電機の一例の製造工程に使用する補助部材の概略平面図
図12】第2実施形態による回転電機の一例の製造工程において第2補助部材を配置した状態を示す概略斜視図
図13】第2実施形態による回転電機の一例の製造工程において第2補助部材と第1補助部材とを配置した状態を示す概略斜視図
図14】第2実施形態による回転電機の一例の一組の口出し線の接合過程を図13の円XIII内を拡大して示す概略部分平面図(その1)
図15】第2実施形態による回転電機の一例の一組の口出し線の接合過程を図13の円XIII内を拡大して示す概略部分平面図(その2)
図16】第2実施形態による回転電機の一例の一組の口出し線の接合過程を図13の円XIII内を拡大して示す概略部分平面図(その3)
図17】第2実施形態による回転電機の一例の固定子の口出し線の接合過程を示す概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について図1図9を参照して説明する。回転電機1は、図1に示すように、固定子10と、回転子11と、を備える。図1は、回転電機1を軸方向の一の側から見た図である。以下の説明では、図1の紙面に直交する向きである回転子11の回転軸線Axと平行な方向を軸方向、回転子11の回転方向を周方向、軸方向及び回転方向に直交する回転子11の径方向を径方向と称する。図面においては、軸方向をA、周方向をC、径方向をRと記載する。また、図1の紙面手前側を上側、紙面奥側を下側ということがある。
【0011】
固定子10は、略円筒状に形成されている。回転子11は、固定子10の径方向内側に配置され、固定子10に対して回転自在に設けられている。
【0012】
回転子11は、シャフト12と、回転子コア13と、図示しない磁石とを有する。シャフト12は、円柱状に形成されて回転軸線Ax回りに回転する。回転子コア13は、シャフト12に固定されており、径方向中央に回転子コア13を軸方向に貫通する貫通孔131が形成されている。シャフト12は、貫通孔131に例えば圧入により固定されている。回転子コア13の外周部寄りに、図示しない複数の磁石が周方向に並んで取り付けられている。
【0013】
固定子10は、固定子コア14と、複数この場合24個の単位コイル20と、を有する。固定子コア14は、磁性体部材で全体として円筒状に形成されている。固定子コア14は、複数この場合24個のティース15を有する。複数のティース15は、径方向内側に向かってすなわち回転子11に向かって突出している。各単位コイル20は、各ティース15に巻回されている。
【0014】
各単位コイル20は、ティース15に巻回される巻回部21と、巻回部21の両側から外部に引き出される口出し線22と、を有している。本実施形態では、単位コイル20を構成する導線は断面形状が矩形のいわゆる平角線であるが、これに限らない。他の実施形態では、単位コイル20は断面形状が円形のいわゆる丸線によって構成されていても良い。
【0015】
詳細は図示しないが、本実施形態では、固定子10は、同相の単位コイル4つが並んだU相、V相、及びW相の3相を一組とした回路を二組含んで構成されている。隣り合う同相の単位コイル20は、口出し線22同士が例えば溶接により接合される。また、一組の同相の単位コイル20のうち両端の単位コイル20の口出し線22は、図示しない渡り線によって中性点又は他の同相の単位コイル20と例えば溶接により接合される。
【0016】
図3図9も参照して、固定子の製造方法について説明する。図2に示すように、接合される口出し線22は、軸方向一の方向この場合上方に引き出される。以下、説明のため、一の単位コイル201の口出し線22を第1口出し線221と、当該一の単位コイル20の口出し線22と接合すべき他の単位コイル202の口出し線22を第2口出し線222と称する。第1口出し線221と第2口出し線222とを例えば溶接により接合する際、強固な接合を担保するためには、第1口出し線221の先端部と、第1口出し線221と接続すべき第2口出し線222の先端部とをできるだけ平行にして広い面積が接触した状態で溶接することが望ましい。とりわけ単位コイル20が平角線により構成されている場合、図2に示されるように、断面の長手方向同士が向かい合う接触するように第1口出し線221と第2口出し線222とが配置されることが望ましい。
【0017】
本実施形態では、2枚の補助部材30を使用して製造工程が実施される。2枚の補助部材30は、軸方向すなわち上下方向に互いに重ね合わせて使用される。軸方向一の側この場合上側の補助部材30を第1補助部材301と、軸方向他の側この場合下側の補助部材30を第2補助部材302と称する。すなわち、第1補助部材301は、固定子10から遠い側に位置し、第2補助部材302は、固定子10に近い側に位置する。なお、第1補助部材301と第2補助部材302とを区別する必要がない場合には、補助部材30と総称することがある。
【0018】
補助部材30は、金属部材により例えば矩形の板状に形成されている。第1補助部材301と第2補助部材302とは、同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。本実施形態では、第1補助部材301と第2補助部材302とは同一形状を有する。
【0019】
補助部材30は、貫通孔31を有する。貫通孔31は、補助部材30を厚み方向に貫いて形成されている。第1補助部材301の貫通孔31を第1貫通孔311と、第2補助部材302の貫通孔31を第2貫通孔312と称する。貫通孔31は、円形、長円形、楕円形又は多角形に形成することができる。本実施形態では、貫通孔31は円形に形成されている。貫通孔31の開口面積は、第1口出し線221と第2口出し線222との断面積の和よりも十分大きく設定されている。これにより、口出し線221、222を貫通孔31に通して補助部材30の軸方向一の側この場合上方に引き出すことが容易となる。なお、本実施形態では、第1貫通孔311と第2貫通孔312との形状及び寸法は同一であるが、第1貫通孔311と第2貫通孔312との形状及び寸法は同一でなくともよい。
【0020】
本実施形態の固定子10の製造工程は、準備工程と、補助部材配置工程と、第1移動工程と、第2移動工程と、第3移動工程と、溶接工程とを含む。準備工程は、第1口出し線221と、第1口出し線221と接合すべき第2口出し線222と、を揃えて組にする工程である。図2は準備工程が実行された後の状態を示している。
【0021】
配置工程は、第1補助部材301と第2補助部材302とを第1貫通孔311と第2貫通孔312の少なくとも一部とが重なるように重ね合わせた状態で、第1口出し線221及び第2口出し線222と第1貫通孔311及び第2貫通孔312とを位置合わせして配置する工程である。図3は、配置工程後の第1補助部材301と第2補助部材302とを示している。配置工程を実行すると、第1口出し線221及び第2口出し線222は第1貫通孔311及び第2貫通孔312の両方を貫通して、第1補助部材301と第2補助部材402を挟んで軸方向に関して固定子10と反対側に端部が引き出された状態となる。
【0022】
なお、配置工程を実行した後に、第1口出し線221及び第2口出し線222が第1貫通孔311及び第2貫通孔312の両方を貫通していない場合は、作業者は引き出し工程を実行することができる。引き出し工程は、第1口出し線221及び第2口出し線222を、第1貫通孔311及び第2貫通孔312を貫通させて第1補助部材301と第2補助部材402を挟んで軸方向に関して固定子10と反対側に引き出す工程である。
【0023】
図3及び図4は、2枚重ねた補助部材301、302の貫通孔311、312を通して、口出し線221、222が固定子10の反対側に突出した状態を示している。この場合、第1補助部材301と第2補助部材302とを重ね合わせて配置した状態で、第1貫通孔311と第2貫通孔312とは、軸方向視で少なくとも一部が重なっている。第1貫通孔311と第2貫通孔312との重なった部分の面積を実質開口面積Sとすると、実質開口面積Sは口出し線221、222の断面積の和より大きく設定されている。本実施形態では、実質開口面積Sは口出し線221、222の断面積の和の例えば1.5倍~10倍の範囲内、又は2倍~5倍の範囲内に設定することができる。そのため、口出し線221、222を貫通孔311、312に通すことが容易であり、また引き出した後の状態において口出し線221、222は軸方向に垂直な方向つまり水平方向例えば径方向又は周方向に移動可能である。なお、本実施形態では、第1補助部材301と第2補助部材302とを重ねた状態で、第1貫通孔311と第2貫通孔312とは、軸方向視で少なくとも一部が重なっているが、他の実施形態では、第1貫通孔311と第2貫通孔312とは、軸方向視で全体が重なっていても良い。
【0024】
第1移動工程は、第1補助部材301を軸方向に垂直な第1方向に移動させて第1貫通孔311の周縁部に少なくとも前記第1口出し線221を接触させる工程である。第1移動工程において、第1補助部材301又は第2補助部材302のいずれか一方この場合第1補助部材301は、口出し線221、222に対して相対的に軸方向に垂直な方向この場合水平方向の一の方向に移動される。これにより、図5及び図6に示すように、第1貫通孔311の移動方向と反対側の周縁部が、口出し線221、222の少なくとも一方この場合第1口出し線と接触する。換言すると、作業者は、第1貫通孔311の周縁部が口出し線221、222の少なくとも一方この場合第1口出し線221と接触するまで軸方向に垂直な方向に第1補助部材301を移動させる。これにより、口出し線221、222の少なくとも一方この場合第1口出し線の、第1補助部材301の移動方向と反対方向への移動が規制される。
【0025】
この場合、第1補助部材301を移動する一の方向は、第1口出し線221と第2口出し線222とが並ぶ方向に平行な方向であることが好ましい。更に、第1口出し線221と第2口出し線222とが平角線である場合、断面の矩形形状の短手方向と平行な方向であることが好ましい。これにより、補助部材301、302と口出し線221、222との接触面積を大きくすることができる。
【0026】
第2移動工程は、第2補助部材302を第1方向と逆の第2方向に移動させ、第2貫通孔312の周縁部に少なくとも第2口出し線222を接触させる工程である。第1移動工程において移動していない補助部材30この場合第2補助部材302は、口出し線221、222に対して第1移動工程における第1補助部材301の移動方向と反対方向に移動される。これにより、図7及び図8に示すように、第2貫通孔312の移動方向と反対側の周縁部が、口出し線221、222の少なくとも一方この場合第2口出し線と接触する。換言すると、作業者は、第2貫通孔312の周縁部が口出し線221、222の少なくとも一方この場合第2口出し線222と接触するまで軸方向に垂直な方向に第2補助部材302を移動させる。これにより、口出し線221、222の少なくとも一方この場合第2口出し線の、第2補助部材302の移動方向と反対方向への移動が規制される。
【0027】
更に、第1口出し線221と第2口出し線222との間に隙間がある場合には、第1補助部材301及び第2補助部材302のうちいずれか一方又は両方をそれぞれ上述の移動方向に口出し線221、222に対して相対的に移動させる第3移動工程が実行される。これにより、第1口出し線221と、第2口出し線222とは、それぞれ第1貫通孔311の周縁部と第2貫通孔312の周縁部とによって押されて、互いに密着する。更に、ばらばらな方向を向いていた口出し線221、222は、補助部材301、302に挟まれることによって姿勢が強制され、少なくとも接合される先端部付近において互いに平行になりかつ軸方向に概ね平行に延びる。この場合、実質開口面積Sは第1口出し線221及び第2口出し線222の断面積の和と同程度となっている。
【0028】
なお、第1移動工程、第2移動工程、第3移動工程は、それぞれ単独で実行されても良いし、2工程又は3工程が同時に実行されても良い。つまり、作業者は、第1補助部材301を移動させながら第2補助部材302を反対方向に移動させても良い。
【0029】
溶接工程は、第1口出し線221と第2口出し線222とが第1補助部材301と第2補助部材302とによって固定された状態で第1口出し線221の先端部と第2口出し線222の先端部とを溶接する工程である。作業者は、第1口出し線221と第2口出し線222とが密着した状態で、溶接により両者の先端部を電気的に接合する。この場合、溶接は、レーザー溶接や、TIG溶接等のアーク溶接によって行うことができる。この際、第1補助部材301又は第2補助部材302のいずれか一方を例えば接地端子100により挟持して接地することができる。これにより、単位コイル201、202の全体に電流を流して加熱することなく、口出し線221、222の先端部つまり溶接部位のみを効率的に加熱することができる。更に、補助部材301、302は口出し線221、222と比較して表面積が大きいため、溶接後の放熱冷却効率が向上する。
【0030】
第1口出し線221と第2口出し線222とは、第1補助部材301の第1貫通孔311の周縁部と第2補助部材302の第2貫通孔312の周縁部とに挟まれて、軸方向に垂直な方向つまり水平方向への移動が規制される。そのため、溶接作業時に、第1口出し線221と第2口出し線222とが互いに離れるように移動してしまい、接合が不完全になることが抑制される。
【0031】
第1補助部材301と第2補助部材302とは、互換可能である。つまり、第1補助部材301と第2補助部材302とは、その配置つまりこの場合上下方向の並びを逆にしても使用することができる。また、第1補助部材301を軸方向に垂直な他の方向に移動させ少なくとも第2口出し線222と接触させ、第2補助部材302を軸方向に垂直な一の方向に移動させ少なくとも第1口出し線221と接触させても良い。
【0032】
固定子10の製造工程について図9に示すフローチャートを参照して説明する。作業者は、ステップS11において、導線を巻き取って単位コイル20を形成する。この際、巻回部21と、口出し線22とが形成される。口出し線22は、各単位コイル20が相手方の単位コイル20と接合される固定子10上の位置を考慮して、長さ及び形状が設定されている。続いて、ステップS12において、作業者は、固定子コア14の各ティース15に各単位コイル20を嵌め込む。これにより、第1単位コイル201が有する第1口出し線221と、第1口出し線221と接合すべき第2単位コイル202が有する第2口出し線222とは、互いに近傍に位置するように組み合わされる。ステップS11からステップS12までの工程は、第1口出し線221と第2口出し線222とを揃えて一組にする準備工程である。この際、口出し線22は、必要に応じて接合する相手方の単位コイル20の近傍まで固定子コア14の円環形状に沿って渡されて渡り線となる。
【0033】
ステップS13において、作業者は、第1補助部材301と第2補助部材302とを、貫通孔311、312と接合する一組の口出し線221、222とが位置合わせされた所定の位置に配置する補助部材配置工程を実行する。この際、第1補助部材301と第2補助部材302とを固定子10からの距離が所定の距離以下となるように固定子10に近づけることにより、接合する一組の口出し線221、222は、貫通孔311、312を貫通して補助部材301、302の外側に突出する。
【0034】
ステップS14において、作業者は、第1補助部材301を、軸方向に垂直な一の方向に移動させて第1貫通孔311の周縁部を少なくとも第1口出し線221と接触させる第1移動工程を実行する。これにより、第1口出し線221の移動が規制される。ステップS15において作業者は、第2補助部材302を、当該一の方向と反対側の方向に移動させて第2貫通孔312の周縁部を少なくとも第2口出し線222と接触させる第2移動工程を実行する。これにより、第2口出し線222の移動が規制される。更に、ステップS16において作業者は、第1補助部材301を当該一の方向に、第2補助部材302を当該一の方向と反対の方向に互いに相対的に可能な限り移動させる第3移動工程を実行する。これにより、第1口出し線221の先端部と第2口出し線222の先端部とが互いに平行となり更に密着する。なお、ステップS14とステップS15とを実行後に、既に第1口出し線221の先端部と第2口出し線222の先端部とが互いに平行となり密着した状態である場合には、ステップS16は実行されなくても良い。
【0035】
ステップS17において作業者は、第1補助部材301と第2補助部材302との位置を固定した状態で、貫通孔311、312から突出している第1口出し線221と第2口出し線222との先端部を例えばレーザー溶接又はTIG溶接により接合する溶接工程を実行する。これにより、接合に際して第1口出し線221と第2口出し線222とが密着した状態を担保できるため、接合作業が容易となり、また、接合の精度を高めることができる。
【0036】
ステップS18において作業者は、第1補助部材301と第2補助部材302とを一組の口出し線221、222から取り外す。作業者は、接合すべき口出し線221、222の組数の分だけ、ステップS13からステップS20を繰り返す。このようにして、回転電機1の固定子10が製造される。
【0037】
以上説明した本実施形態の製造方法は、回転軸線Axの周りに円環状に配置された複数の単位コイル20を備える回転電機1の固定子10の製造方法である。複数の単位コイル20の各々は、電線が巻回された巻回部21と、巻回部21から引き出された口出し線22、221、222と、を有する。固定子10の製造方法は、準備工程と、補助部材配置工程と、第1移動工程と、第2移動工程と、溶接工程と、を含む。準備工程は、第1単位コイル201が有する第1口出し線221と、第1口出し線221と接合すべき第2単位コイル202が有する第2口出し線222と、を揃えて組にする工程である。補助部材配置工程は、厚み方向に貫通して形成された第1貫通孔311を有する第1補助部材301と、厚み方向に貫通して形成された第2貫通孔312を有する第2補助部材302と、を第1貫通孔311と第2貫通孔312の少なくとも一部とが重なるように重ね合わせた状態で、第1口出し線221及び第2口出し線222と第1貫通孔311及び第2貫通孔312とを位置合わせして配置する工程である。第1移動工程は、第1口出し線221及び第2口出し線222が、第1貫通孔311及び第2貫通孔312を貫通した状態で、第1補助部材301を軸方向に垂直な第1方向に移動させて第1貫通孔311の周縁部に少なくとも前記第1口出し線221を接触させる工程である。第2移動工程は、第1口出し線221及び第2口出し線222が、第1貫通孔311及び第2貫通孔312を貫通した状態で、第2補助部材302を第1方向と逆の第2方向に移動させ、第2貫通孔312の周縁部に少なくとも第2口出し線222を接触させる工程である。溶接工程は、第1補助部材301と第2補助部材302とによって固定された状態で第1口出し線221の先端部と第2口出し線222の先端部とを溶接する工程である。
【0038】
これによれば、準備工程完了時に口出し線221、222の先端部同士がばらばらな方向を向いて離れていても、2枚の補助部材301、302によって位置や向きが矯正されて、先端部間の隙間の発生が抑制される。これにより、安定した状態で溶接作業が行われる結果、溶接不良の発生を低減することができる。
【0039】
準備工程において、第1口出し線221の先端部と、第2口出し線222の先端部とは、軸方向に垂直な第1方向と平行な方向に順に並べられる。
【0040】
これによれば、第1口出し線221と第1貫通孔311の周縁部との接触面積が大きくなり、また、第2口出し線222と第2貫通孔312の周縁部との接触面積が大きくなるため、補助部材301、302による口出し線221、222の固定能力が向上する。更に第1口出し線221と第2口出し線222とが、補助部材301、302の移動方向に平行に並んでいるため、両補助部材301、302を移動させた後の状態で、第1口出し線221と第2口出し線222とが一層緊密に接触し易くなる。これにより、更に安定した状態で溶接作業が行われる結果、溶接不良の発生を一層低減することができる。
【0041】
溶接工程において、第1補助部材301又は第2補助部材302のいずれか一方は接地されている。
【0042】
これにより、単位コイル20全体を加熱しなくて済み、口出し線221、222の先端部つまり溶接部位のみを効率的に加熱することができる。
【0043】
回転電機1は、本実施形態による製造方向によって製造された固定子10を用いて製造される。
【0044】
本実施形態の固定子10の製造方法に用いられる補助部材30は、第1補助部材301及び第2補助部材302を含む。第1補助部材301は、厚み方向に貫通して形成された第1貫通孔311を有する。第2補助部材302は、厚み方向に貫通して形成されて第1補助部材301と重ね合わせた状態で第1貫通孔311と少なくとも一部が重なるように位置合わせされて第2貫通孔312を有する。位置合わせされた状態で第1貫通孔311と第2貫通孔312とが重なる部分の面積である実質開口面積Sは、第1口出し線221と第2口出し線222の前記軸方向に垂直な方向の断面積の和よりも大きく設定されている。
【0045】
これによれば、剛性の高い口出し線221、222が補助部材301、302の貫通孔311、312を貫通して補助部材301、302の外側つまり固定子10に対する反対側に突出した状態となることが容易となる。また、第1移動工程及び又は第2移動工程において、口出し線221、222は軸方向に垂直な方向に移動する余地があるため、補助部材301、302の移動方向に従って移動させることで、口出し線221、222を溶接工程において望ましい相対位置と姿勢に移動し望ましい姿勢に矯正することができる。
【0046】
なお、第1補助部材301と第2補助部材302とは、互換して使用することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図10図17を参照して、第2実施形態について説明する。本実施形態では、複数この場合2個の補助部材40を用いて固定子10を製造する。補助部材40は複数この場合30個の貫通孔41を有する。貫通孔41は、補助部材40を厚み方向に貫通して形成されている。
【0048】
補助部材40は、金属部材により板状に構成されている。補助部材40の寸法は、図12に示すように各組の口出し線221、222と各貫通孔41とを位置合わせして補助部材40を固定子10の上方に配置した状態で、固定子10の外形よりも大きく設定されている。補助部材40は、軸方向視例えば円形又は多角形に形成されている。本実施形態では、補助部材40は円形に形成されている。
【0049】
本実施形態では、軸方向に関して固定子10から遠い側すなわち上側の第1補助部材401と、固定子10に近い側すなわち下側の第2補助部材402とを用いて固定子10を製造する。第1補助部材401と第2補助部材402とは、本実施形態では同一の寸法及び形状を有する。第1補助部材401は第1貫通孔411を、第2補助部材402は第2貫通孔412を有する。貫通孔411、412は、それぞれ同心円状に配置されている。第1補助部材401と第2補助部材402とを重ね合わせた状態で、それぞれの同心円の中心は一致する。本実施形態では、複数の貫通孔411、412は、第1補助部材401と第2補助部材402とにおいて同様に配置されている。
【0050】
貫通孔41は、円形、長円形、楕円形又は多角形に形成することができる。本実施形態では、貫通孔41は円形に形成されている。貫通孔41の開口面積は、第1口出し線221と第2口出し線222との断面積の和よりも十分大きく設定されている。
【0051】
この場合、固定子10は、単位コイル20間の接合部を30個有している。すなわち、30組の口出し線221、222を接合する必要がある。補助部材401、402は、複数の貫通孔41を有しているため、作業者は、複数組の口出し線221、222を一セットの第1移動工程、第2移動固定、第3移動工程及び溶接工程によって接合することができる。本実施形態では、接合部の個数と貫通孔41の個数が一致しているため、全組の口出し線221、222を一セットの第1移動工程、第2移動工程、第3移動工程及び溶接工程によって接合することができる。
【0052】
配置工程において、作業者は、第1補助部材401と第2補助部材402とを、各組の第1貫通孔411と第2貫通孔412とを、第1貫通孔411と第2貫通孔412の少なくとも一部とが重なるように重ね合わせた状態で、各組の第1口出し線221及び第2口出し線222と第1貫通孔411及び第2貫通孔412とが位置合わせされるように配置する。図12は、第2補助部材402を配置した状態を示す。図13は、更に第1補助部材401を第2補助部材402に重ねて配置した状態を示す。なお、図12及び図13において、接合される複数組の口出し線221、222のうち、隣接しない同相の単位コイル20からの渡り線に該当するものは図示が省略されている。
【0053】
図14図16は、一組の貫通孔411、412の近傍を拡大して示す部分拡大図である。他の組の貫通孔411、412や口出し線221、222は省略されている。図14は、補助部材配置工程後の状態を示す。この場合、第1補助部材401と第2補助部材402とは、相対的に回転軸線Axを中心として周方向に若干回転した位置で重ね合わされている。そのため、第1貫通孔411と第2貫通孔412は軸方向に大部分が重なっているが、一部は重なっていない。なお、第1貫通孔411と第2貫通孔412の全体が重なるように第1補助部材401と第2補助部材402とを重ね合わせて配置しても良い。
【0054】
図14は、第1移動工程後の状態を示す。第1移動工程において、第1補助部材401は回転軸線Axを中心として周方向の一の方向に回転移動し、第1貫通孔411の周縁部は第1口出し線221と第2口出し線222の少なくとも一方又は両方に接触する。この場合、第1補助部材401は時計回りに回転移動する。第1貫通孔411の周縁部は第1口出し線221と第2口出し線222の両方に接触する。
【0055】
図15は、第2移動工程後の状態を示す。第2移動工程において、第2補助部材402は回転軸線Axを中心として周方向の他の方向に回転移動し、第2貫通孔412の周縁部は第1口出し線221と第2口出し線222の少なくとも一方又は両方に接触する。この場合、第2補助部材402は時計回りに回転移動する。第2貫通孔412の周縁部は第1口出し線221と第2口出し線222の両方に接触する。この後、必要があれば第1補助部材401と第2補助部材402とは、相対的にそれぞれ当該周方向一の方向及び他の方向に回転移動される規制工程が実行されて、補助部材401,402と口出し線221、222との接触が更に確実にされる。貫通孔411、412の周縁部に挟まれて、口出し線221、222の軸方向に垂直な方向への移動が規制され、また、姿勢も矯正されて軸方向に略平行となるため、口出し線221、222同士の接触が確実になる。これにより、溶接工程における溶接不良の発生を抑制することができる。
【0056】
図16は、第1移動工程と、第2移動工程と、必要に応じて規制工程実行後の固定子10の軸方向視概略図である。本実施形態では、貫通孔411、412を同心円状に配置したことで、第1補助部材401を周方向の一の方向に、第2補助部材402を周方向の他の方向に、それぞれ移動させることで、一セットの動作により複数組の口出し線221、222に対して移動の規制と姿勢の矯正を実行することができる。引き続いて溶接工程を実行して、各貫通孔411、412から突出した各組の口出し線221、222の先端部が接合される。
【0057】
溶接工程において、第1補助部材401又は第2補助部材402のいずれか一方は接地端子100により挟持して接地することができる。これにより、単位コイル201、202の全体に電流を流して加熱することなく、口出し線221、222の先端部つまり溶接部位のみを効率的に加熱することができる。更に、補助部材401、402は口出し線221、222と比較して表面積が大きいため、溶接後の放熱冷却効率が向上する。更に、溶接する単位コイル20を変える毎に接地端子を一度単位コイル20から外して再度新たな単位コイル20に取付けなくても良いため、溶接工程の作業性が向上する。
【0058】
図17に示すように、補助部材401、402のいずれか一方又は両方は、軸方向視の場合の外形が、円環状に配置された複数この場合24個の単位コイル20の外形よりも外側となるように形成されている。すなわち、溶接工程に際して、軸方向視で、複数の単位コイル20の巻回部21は補助部材40により覆われて露出していない。これにより、溶接工程において発生するスパッタ等から、単位コイル20の巻回部21を保護することができる。本実施形態では、補助部材401、402の直径は、固定子10の直径よりも大きく設定されている。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、固定子10は、第1口出し線221と第2口出し線222との組を複数組備える。第1補助部材401は複数の第1貫通孔411を有する。第2補助部材402は複数の第1貫通孔411と位置合わせされた複数の第2貫通孔412を有する。複数の第1貫通孔411と複数の第2貫通孔412とのそれぞれに、一対の第1口出し線221と第2口出し線222とを貫通させた状態で、第1移動工程において第1補助部材401を前記軸方向に垂直な第1方向に移動させ、複数の第1貫通孔411の各々の周縁部に少なくとも複数の第1口出し線221のいずれか一つを接触させる。第2移動工程において第2補助部材402を第1方向と逆の第2方向に移動させ、複数の第2貫通孔412の各々の周縁部に少なくとも複数の第2口出し線222のいずれか一つを接触させる。
【0060】
これによれば、一セットの動作により複数組の口出し線221、222を同時に固定することができるので、一組ずつ治具で固定して溶接する製造方法に比べて、作業性が向上する。
【0061】
複数の第1貫通孔411と複数の第2貫通孔412とは、配置工程後の状態において第1補助部材401と第2補助部材402とに回転軸線Axを中心とした同心円状にそれぞれ配置されている。第1方向は、回転軸線Axの周りに周方向時計回りであり、第2方向は、回転軸線Axの周りに周方向反時計回りである。
【0062】
複数の単位コイル20は円環状に配置されているため、補助部材401、402を直線移動ではなく回転移動させることで、複数組の口出し線221、222に対して無理なく同様の移動の規制効果と姿勢矯正の効果を奏することができる。またこの場合、作業者は、固定子10に対して任意の位置から作業を行うことができるため、作業の自由度が上がり作業性が向上する。
【0063】
第1補助部材401及び第2補助部材402のいずれか一方又は両方は、軸方向視において、複数の単位コイル20の巻回部21を覆っている。すなわち、複数の単位コイル20の巻回部21は、第1補助部材401及び第2補助部材402のいずれか一方又は両方に覆われて外部に露出していない。
【0064】
これにより、溶接工程において、複数の巻回部21は、溶接部や溶接トーチに対して露出していない。そのため、溶接の際に発生するスパッタ等から、単位コイル20の巻回部21を保護することができる。
【0065】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…回転電機、10…固定子、11…回転子、20…単位コイル、201…第1単位コイル、202…第2単位コイル、21…巻回部、22…口出し線、221…第1口出し線、222…第2口出し線、30…補助部材、301…第1補助部材、302…第2補助部材、31…貫通孔、311…第1貫通孔、312…第2貫通孔、40…補助部材、401…第1補助部材、402…第2補助部材、41…貫通孔、411…第1貫通孔、412…第2貫通孔、Ax…回転軸線、S…実質開口面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17