(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153385
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】多目的車両
(51)【国際特許分類】
B60K 17/16 20060101AFI20241022BHJP
B60G 7/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B60K17/16 Z
B60G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067250
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安田 紀史
(72)【発明者】
【氏名】門出 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩之
(72)【発明者】
【氏名】高見 亮大
【テーマコード(参考)】
3D042
3D301
【Fターム(参考)】
3D042AA07
3D042AB01
3D042AB07
3D042CB02
3D042CB13
3D301AA69
3D301AA79
3D301CA11
3D301DB09
3D301DB10
3D301DB20
3D301DB60
(57)【要約】
【課題】車体フレームに保持される差動機構を備える多目的車両において、差動機構を車体フレームに連結する構造を損傷され難くし、かつ、差動機構を車体フレームに迅速に連結作業することを可能にする。
【解決手段】差動機構35の車体前後方向での両端部のうちの一方に筒部38が形成され、車体前後方向での両端部のうちの他方の端部に連結部39が形成されている。筒部38が挿通する貫通孔によって筒部38を係止することによって筒部38を車体フレーム20Aに保持させる第1保持部40が備えられている。連結部39を第1取付片44と第2取付片45との間に位置させて車体横幅方向の連結ボルト47によって第1取付片44及び前記第2取付片45に取付けることによって連結部39を車体フレーム20Aに保持させる第2保持部41が備えられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに保持される差動機構と、
前記差動機構の車体前後方向での両端部のうちの一方の端部から車体前後方向に沿う方向に突出する入力軸と、
前記差動機構の両横側部から車体横外側に向けて延ばされ、前記入力軸からの動力を車輪に伝達する車輪駆動軸と、が備えられ、
前記差動機構に、前記入力軸に外嵌する状態で前記両端部のうちの前記一方の端部から突出する筒部と、前記両端部のうちの他方の端部から車体前後方向に沿う方向に突出する連結部と、が形成され、
前記車体フレームに、前記筒部を前記車体フレームに保持させる第1保持部、および、前記連結部を前記車体フレームに保持させる第2保持部が備えられ、
前記第1保持部は、前記筒部が挿通する貫通孔を有し、前記筒部を前記貫通孔によって係止することによって前記筒部を前記車体フレームに保持させるように構成され、
前記第2保持部は、第1取付片及び第2取付片を車体横幅方向に並ぶ状態で有し、前記第1取付片と前記第2取付片との間に前記連結部を位置させて前記第1取付片、前記第2取付片及び前記連結部に対して連結ボルトを車体横幅方向に挿通させて前記連結部を前記連結ボルトによって前記第1取付片及び前記第2取付片に連結することによって前記連結部を前記車体フレームに保持させるように構成されている多目的車両。
【請求項2】
前記車体フレームは、車体前後方向に延びる左右の前後向きフレームと、前記左右の前後向きフレームの間に位置して前記左右の前後向きフレームを連結する連結フレームと、を備え、
前記第1保持部、前記第1取付片および前記第2取付片は、前記連結フレームから上向きに突設されている請求項1に記載の多目的車両。
【請求項3】
前記差動機構は、前車輪用であり、
前記車輪は、操向可能な前車輪であり、
前記差動機構の後上方箇所に設けられ、前記車輪の操向操作を行う操向操作機構が備えられ、
前記車体フレームに立設され、前記操向操作機構を連結して前記車体フレームに保持させる第3保持部が備えられ、
前記第1保持部に、前記第3保持部の上部を係止する係止部が備えられている請求項1に記載の多目的車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多目的車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、車体フレームに保持される差動機構(差動装置)と、差動機構の車体前後方向での両端部のうちの一方の端部から車体前後方向に沿う方向に突出する入力軸と、差動機構の両横側部から車体横外側に向けて延ばされ、入力軸からの動力を車輪に伝達する車輪駆動軸(駆動軸)と、が備えられた多目的車両がある。
この種の多目的車両において、差動機構を下方から受止めるアンダープレートが車体フレームに備えられ、アンダープレートを下方から上向きに挿通して差動機構に係合する連結ボルトにより、差動機構をアンダープレートに締め付けて車体フレームに連結するものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、大きな車輪駆動トルクが掛かって差動機構を車体フレームに対して押し上げる方向の操作力が発生した場合、この操作力によって連結ボルトが延び操作されてしまう。また、連結ボルトがアンダープレートから下方に突出し、不整地では連結ボルトに石など当り易く、連結ボルトが破損し易い。また、差動機構を車体フレームに連結する作業の際、アンダープレートの下方において、上向き姿勢で連結ボルトを締込み操作せねばならず、締込み操作し難くて連結作業に手間が掛かる。
【0005】
本発明は、差動機構を車体フレームに連結する構造を損傷され難くでき、かつ、差動機構を車体フレームに連結する作業が迅速に行える多目的車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による多目的車両は、
車体フレームに保持される差動機構と、前記差動機構の車体前後方向での両端部のうちの一方の端部から車体前後方向に沿う方向に突出する入力軸と、前記差動機構の両横側部から車体横外側に向けて延ばされ、前記入力軸からの動力を車輪に伝達する車輪駆動軸と、が備えられ、前記差動機構に、前記入力軸に外嵌する状態で前記両端部のうちの前記一方の端部から突出する筒部と、前記両端部のうちの他方の端部から車体前後方向に沿う方向に突出する連結部と、が形成され、前記車体フレームに、前記筒部を前記車体フレームに保持させる第1保持部、および、前記連結部を前記車体フレームに保持させる第2保持部が備えられ、前記第1保持部は、前記筒部が挿通する貫通孔を有し、前記筒部を前記貫通孔によって係止することによって前記筒部を前記車体フレームに保持させるように構成され、前記第2保持部は、第1取付片及び第2取付片を車体横幅方向に並ぶ状態で有し、前記第1取付片と前記第2取付片との間に前記連結部を位置させて前記第1取付片、前記第2取付片及び前記連結部に対して連結ボルトを車体横幅方向に挿通させて前記連結部を前記連結ボルトによって前記第1取付片及び前記第2取付片に連結することによって前記連結部を前記車体フレームに保持させるように構成されている。
【0007】
本構成によると、筒部を貫通孔に通すと、第1保持部が貫通孔によって筒部を係止して筒部が車体フレームに保持され、連結部を連結ボルトによって第1取付片および第2取付片に取付けると、連結部が第2保持部に連結されて車体フレームに保持されるので、筒部を貫通孔に通し、連結ボルトを連結状態にするだけで差動機構を車体フレームに連結できる。筒部を貫通孔に通すだけで第1保持部が筒部に係止するので、また、連結部、第1取付片および第2取付片に対して車体横幅方向に挿通する連結ボルトは、車体横外側方から連結状態に操作できて連結ボルトを連結状態に操作し易いので、差動機構を車体フレームに連結する作業が迅速に行える。
連結ボルトは、連結部、第1取付片および第2取付片を車体横幅方向に挿通しているので、差動機構を押し上げる方向の操作力が発生してもこの操作力によって連結ボルトが延び操作されない。また、不整地でも連結ボルトに石などが当り難いので差動機構を車体フレームに連結する構造を損傷され難くできる。
本構成によると、入力軸を外嵌する筒部が貫通孔を通ることによって入力軸が貫通孔を通るので、入力軸と第1保持部との当接を回避するための特別な対策を第1保持部に施さずに済み、第1保持部の構造を簡素に済ませることができる。
【0008】
本発明においては、
前記車体フレームは、車体前後方向に延びる左右の前後向きフレームと、前記左右の前後向きフレームの間に位置して前記左右の前後向きフレームを連結する連結フレームと、を備え、前記第1保持部、前記第1取付片および前記第2取付片は、前記連結フレームから上向きに突設されていると好適である。
【0009】
本構成によると、筒部および連結ボルトが連結フレームよりも高い位置に位置して筒部および連結ボルトに石などが当り難いので差動機構を車体フレームに連結する構造を損傷され難くできる。
【0010】
本発明においては、
前記差動機構は、前車輪用であり、前記車輪は、操向可能な前車輪であり、前記差動機構の後上方箇所に設けられ、前記車輪の操向操作を行う操向操作機構が備えられ、前記車体フレームに立設され、前記操向操作機構を連結して前記車体フレームに保持させる第3保持部が備えられ、前記第1保持部に、前記第3保持部の上部を係止する係止部が備えられていると好適である。
【0011】
本構成によると、第1保持部の係止部が第3保持部の上部を係止することによって第1保持部と第3保持部とが係合して第1保持部が第3保持部によって補強され、第3保持部が第1保持部によって補強されるので、特別な補強部材を設けずに、差動機構および操向操作機構を車体フレームに連結する構造の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】多目的車両を左横側方から見た側面図である。
【
図2】前車輪のサスペンション機構の正面図である。
【
図3】差動機構を車体フレームに連結する構造の平面図である。
【
図4】差動機構を車体フレームに連結する構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、多目的車両(utility vehicle)の走行車体に関し、
図1に示される矢印Fの方向を「車体前側」、矢印Bの方向を「車体後側」、矢印Uの方向を「車体上側」、矢印Dの方向を「車体下側」、
図1の紙面表側の方向を「車体左側」、
図1の紙面裏側の方向を「車体右側」とする。車体左右方向が車体横幅方向に対応する。
【0014】
〔多目的車両の全体の構成〕
図1に示される多目的車両は、荷物の運搬やレクレーション等の多目的な用途に用いられる。多目的車両は、左右一対の前車輪1が操向および駆動可能に備えられ、左右一対の後車輪2が駆動可能に備えられた走行車体3を有している。走行車体3の前部に、フロントバンパー5、フロントカバー6、フロントガード7が設けられている。フロントカバー6の上方に、フロントラック8が設けられている。フロントバンパー5に、左右の前照灯9が取り付けられている。走行車体3の前後方向での中間部に、搭乗部10が形成されている。搭乗部10には、運転座席11、前車輪1を操向操作するステアリングホィール12、助手座席を有する前搭乗部10A、後部座席13を有する後搭乗部10B、前搭乗部10Aの搭乗空間および後搭乗部10Bの搭乗空間を囲うロプス14が備えられている。搭乗部10の後方に、荷台15が設けられている。荷台15の下方に、原動部16が形成されている。原動部16には、エンジン(図示せず)、エンジンの出力を変速して前車輪1および後車輪2に伝達する走行動力伝達装置17などが備えられている。
【0015】
〔前車輪について〕
左右の前車輪1は、
図2に示されるように、サスペンション機構25を介して車体フレーム20に保持されている。
【0016】
詳述すると、
図2に示されるように、車体フレーム20の前部に、下前部フレーム20Aと、下前部フレーム20Aの上方に位置する上前部フレーム20Bと、が備えられている。
【0017】
下前部フレーム20Aには、
図2,3に示されるように、車体前後方向に延びる左右の下前後向きフレーム21、および、左右の下前後向きフレーム21を連結する連結フレーム22が備えられている。連結フレーム22は、左右の下前後向きフレーム21の間に配置され、左右の下前後向きフレーム21に溶接によって連結されている。連結フレーム22は、
図3,4に示されるように、前部22aが後部22bよりも上側に位置するように曲げ成形された鋼板材によって構成されている。上前部フレーム20Bには、
図2に示されるように、車体前後方向に延びる左右の上前後向きフレーム23が備えられている。
【0018】
左右の前車輪1それぞれのサスペンション機構25は、
図2に示されるように、下前後向きフレーム21に上下揺動可能に保持されるロアアーム26、上前後向きフレーム23に上下揺動可能に保持されるアッパアーム27、ロアアーム26の遊端部とアッパアーム27の遊端部とに保持されて前車輪1が回転可能に連結されるナックル28を備えている。アッパアーム27に、ショックアブソーバ(図示せず)およびコイルスプリング(図示せず)を備えるクッション機構29が連結されている。
【0019】
ロアアーム26の下前後向きフレーム21による保持は、下前後向きフレーム21の前後2箇所に備えられた支持部21a(
図2,3参照)によって行われる。アッパアーム27の上前後向きフレーム23による保持は、上前後向きフレーム23の前後2箇所に備えられた支持部23a(
図2参照)によって行われる。ナックル28のロアアーム26およびアッパアーム27による保持は、ボールジョイント30を介して行われる。ナックル28は、ボールジョイント30の作用によってロアアーム26およびアッパアーム27に操向揺動可能に保持される。これにより、左右の前車輪1は、ロアアーム26およびアッパアーム27に操向揺動可能に保持される。
【0020】
〔前車輪の駆動について〕
図2,3に示されるように、左右の前車輪1の間において、差動機構35が車体フレーム20のうちの下前部フレーム20Aに連結されて保持されている。差動機構35には、差動機構35の車体前後方向での両端部のうちの車体後方側の端部から後向きに車体前後方向に沿って突出する入力軸36と、差動機構35の両横側部から車体横外側に向かって延びる車輪駆動軸37と、が備えられている。
【0021】
入力軸36と、原動部16に位置する走行動力伝達装置17の出力軸(図示せず)とが回転軸(図示せず)を介して連結され、原動部16においてエンジンから走行動力伝達装置17に入力されて走行動力伝達装置17から出力される前輪駆動力が回転軸(図示せず)を介して入力軸36に伝達されて差動機構35に入力される。左の車輪駆動軸37が左の前車軸(図示せず)に連結され、差動機構35に入力された前輪駆動力が左の車輪駆動軸37によって左の前車輪1に伝達される。右の車輪駆動軸37が右の前車軸(図示せず)に連結され、差動機構35に入力された前輪駆動力が右の車輪駆動軸37によって右の前車輪1に伝達される。
【0022】
図3,4に示されるように、差動機構35の下前部フレーム20Aへの連結は、差動機構35に形成された筒部38及び連結部39と、下前部フレーム20Aに備えられた第1保持部40及び第2保持部41とによって行われる。さらに、差動機構35に備えられた後横連結部42と、第1保持部40とによっても行われる。
【0023】
詳述すると、筒部38は、
図3,4に示されるように、差動機構35の車体前後方向での両端部のうちの車体後方側の端部から後方向きに車体前後方向に沿う状態で突出されている。筒部38は、入力軸36を外嵌するように形成されている。
図4,5に示されるように、第1保持部40は、下前部フレーム20Aのうちの連結フレーム22から上向きに突設されている。第1保持部40の連結フレーム22への連結は、溶接によって行われる。
【0024】
第1保持部40は、
図3,4,5に示されるように、筒部38が抜き差し可能に挿通する貫通孔43を有し、貫通孔43に筒部38が通されることにより、筒部38を貫通孔43によって係止し、係止した筒部38を連結フレーム22に保持させる。
【0025】
連結部39は、
図3,4に示されるように、差動機構35の車体前後方向での両端部のうちの車体前方側の端部から前方向きに車体前後方向に沿う状態で突出されている。第2保持部41は、
図3,4,6に示されるように、車体横幅方向に間隔を空けて並ぶ第1取付片44と第2取付片45とを有している。第1取付片44および第2取付片45は、第1取付片44の下部と第2取付片45の下部とを連結する連結片46から立ち上がっている。連結片46が連結フレーム22に連結されており、第1取付片44および第2取付片45は、連結フレーム22から上向きに突設されている。連結片46の連結フレーム22への連結は、溶接によって行われている。
【0026】
第2保持部41は、
図3,4,6に示されるように、第1取付片44と第2取付片45との間に連結部39が配置され、連結部39が連結ボルト47によって第1取付片44および第2取付片45に取付けられることにより、連結部39が連結され、連結された連結部39を連結フレーム22に保持させる。連結ボルト47は、第1取付片44および第2取付片45に備えられたボルト挿通孔48、連結部39に備えられたボルト挿通孔49を車体横幅方向に挿通してナット等のネジ孔部材50によって締め付け固定されるように構成されている。
【0027】
後横連結部42は、
図3に示されるように、差動機構35のうちの筒部38から車体横外側に向けて突設されている。後横連結部42は、筒部38のうち、貫通孔43に挿通さされる部位よりも前側に位置する部位から突設されており、筒部38を貫通孔43に通すことの障害にならない。第1保持部40に、後横連結部42に横外側方から当て付け可能な横保持部51が備えられている。
【0028】
第1保持部40は、
図3に示されるように、横保持部51と後横連結部42とが連結ボルト52によって連結されることにより、後横連結部42が連結され、連結された後横連結部42を連結フレーム22に保持させる。連結ボルト52は、横保持部51に備えられたボルト挿通孔53を車体横外側方から車体横幅方向に貫通して後横連結部42に備えられたネジ孔に係合され、横保持部51および後横連結部42に車体横幅方向に沿う方向に締め付け連結されるように構成されている。
【0029】
差動機構35の下前部フレーム20Aへの連結は、次の連結要領に基づいて行うことができる。
差動機構35の筒部38を第1保持部40の貫通孔43に前方から通すことにより、第1保持部40が貫通孔43によって筒部38を係止し、筒部38が連結フレーム22に第1保持部40によって保持される。筒部38の貫通孔43に通る長さが適切になることにより、連結部39のボルト挿通孔49が第1取付片44および第2取付片45それぞれのボルト挿通孔48に合致する。連結ボルト47を第1取付片44および第2取付片45のボルト挿通孔48、連結部39のボルト挿通孔49に通してネジ孔部材50を取り付けて締め付け操作することにより、連結部39が連結ボルト47によって第1取付片44および第2取付片45に取付けられて、連結部39が連結フレーム22に第2保持部41によって保持される。第1保持部40が筒部38を係止し、第2保持部41が連結部39を保持すると、後横連結部42のネジ孔と横保持部51のボルト挿通孔53とが合致する。連結ボルト52を横保持部51のボルト挿通孔53に通して後横連結部42のネジ孔に係合させて締め付け操作することにより、後横連結部42が連結ボルト52によって横保持部51に連結されて後横連結部42が連結フレーム22に第1保持部40によって保持される。連結フレーム22が第1保持部40によって筒部38および後横連結部42を保持し、連結フレーム22が第2保持部41によって連結部39を保持することにより、差動機構35が下前部フレーム20Aに連結されて保持される。
【0030】
〔前車輪の操向操作について〕
図2,4に示されるように、差動機構35の後上方箇所に操向操作機構55が設けられている。操向操作機構55の上部に備えられた入力軸56がステアリングホィール12に回転軸(図示せず)を介して連結され、操向操作機構55の左の出力軸57が左のナックアームにタイロッド58を介して連結され、操向操作機構55の右の出力軸57が右のナックアームにタイロッド58を介して連結されている。
【0031】
ステアリングホィール12が回転操作されると、操向操作機構55の入力軸56が回転操作されて操向操作機構55が操作され、左右のタイロッド58が操向操作機構55によって押しあるいは引き操作されて左右のナックル28がタイロッド58によって揺動操作され、左右の前車輪1がステアリングホィール12の回転方向に対応する操舵方向に、ステアリングホィール12の操作ストロークに対応した操舵角で操向操作される。
【0032】
操向操作機構55は、
図4,5に示されるように、第3保持部59に取付けられ、第3保持部59によって下前部フレーム20Aに連結されて保持されている。
【0033】
詳述すると、第3保持部59は、
図3,4,5に示されるように、下前部フレーム20Aに立設されている。第3保持部59は、車体前後方向視で門型状に形成され、車体横幅方向に間隔を隔てて並ぶ左右の縦辺部59a、および、左右の縦辺部59aの上部を連結する横辺部59bを備えている。第3保持部59は、
図5に示されるように、左右の縦辺部59aの間に第1保持部40が位置する状態で下前部フレーム20Aのうちの左右の下前後向きフレーム21に立設されている。左右の縦辺部59aの下前後向きフレーム21への連結は、溶接によって行われる。
【0034】
操向操作機構55の第3保持部59への取付けは、
図4,5に示されるように、操向操作機構55の車体横幅方向および車体上下方向に分散する複数箇所に連結部60が形成され、複数箇所の連結部60を第3保持部59のうちの横辺部59bの前面側に連結ボルト61によって連結することによって行われる。
【0035】
図4,5に示されるように、第1保持部40の上部に、第3保持部59の上部に位置する横辺部59bを下方から係止する係止部62が備えられている。第1保持部40が係止部62によって第3保持部59の上部を係止することにより、第1保持部40と第3保持部59とが係合によって連結し、第1保持部40が第3保持部59によって補強され、第3保持部59が第1保持部40によって補強される。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、前車輪1がサスペンション機構25を介して車体フレーム4に保持される例を示したが、サスペンション機構25を備えず、差動機構35と前車輪1とを連結する車軸ケースが車体フレームに固定されるものであってもよい。
【0037】
(2)上記した実施形態では、差動機構35が前車輪用である例を示したが、差動機構35は、前車輪用に限らず、後車輪用であってもよい。差動機構35が後車輪用である場合、差動機構35の車体前後方向での両端部のうち車体前方側の端部に入力軸36及び筒部38が備えられ、差動機構35の車体前後方向での両端部のうち車体後方側の端部に連結部39が備えられる。
【0038】
(3)上記した実施形態では、後横連結部42および横保持部51を備える例を示したが、後横連結部42および横保持部51を備えないものであってもよい。
【0039】
(4)上記した実施形態では、連結フレーム22を備え、第1保持部40、第1取付片44および第2取付片45が連結フレーム22から上向きに突設された例を示したが、連結フレーム22を備えず、第1保持部40を下前後向きフレーム21に連結して保持させる専用の連結部材を設け、第1取付片44および第2取付片45を下前後向きフレーム21に連結して保持させる専用の連結部材を設けることにより、第1保持部40、第1取付片44および第2取付片45を下前部フレーム20Aに備えるものであってもよい。
【0040】
(5)上記した実施形態では、係止部62を備えた例を示したが、係止部62を備えないものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、車体フレームに保持される差動機構を備える多目的車両に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 車輪(前車輪)
20A 下前部フレーム(車体フレーム)
22 連結フレーム
35 差動機構
36 入力軸
37 車輪駆動軸
38 筒部
39 連結部
40 第1保持部
41 第2保持部
43 貫通孔
44 第1取付片
45 第2取付片
47 連結ボルト
55 操向操作機構
59 第3保持部
62 係止部