(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153389
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】焼結原料の装入方法及びその装入装置
(51)【国際特許分類】
F27B 21/10 20060101AFI20241022BHJP
F27D 3/10 20060101ALI20241022BHJP
C22B 1/20 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F27B21/10 C
F27D3/10
C22B1/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067259
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小柳 秀太
(72)【発明者】
【氏名】原田 翼
(72)【発明者】
【氏名】檜枝 充徳
【テーマコード(参考)】
4K001
4K055
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA41
4K001GA10
4K001GB01
4K055AA05
4K055FA02
(57)【要約】
【課題】焼結原料の焼結パレットへの装入に用いるバースクリーンへ水を供給して原料付着を抑制し、歩留を改善させる技術において、更に高位な歩留を実現することができる焼結原料の装入方法及びその装入装置を提供する。
【解決手段】幅方向に隣り合うバー15~17の上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーン12により、装入シュート11から流下する焼結原料を分級しながら焼結パレットに装入する焼結原料の装入方法及びその装入装置10であり、バースクリーン幅方向に散水領域が広がるスプレーノズル13から、バースクリーン12の下面側に向けて散水を行ってその上面側に水を供給するに際し、スプレーノズル13のバースクリーン幅方向の設置位置を、複数のバー15~17のうち、幅方向に隣接するバー16、17の先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバー15が、スプレーノズル13から見て正面となる位置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結原料を焼結パレットに装入する装入シュートの幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバーを備え、かつ、一部又は全部の前記バーでは幅方向に隣り合う該バーの上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーンを、前記装入シュートの下流側に配置して、該装入シュートから流下する焼結原料を分級しながら前記焼結パレットに装入する焼結原料の装入方法において、
前記バースクリーン幅方向に散水領域が広がる1個のスプレーノズルから、前記バースクリーンの下面側に向けて散水を行って該バースクリーンの上面側に水を供給するに際し、
前記スプレーノズルの前記バースクリーン幅方向の設置位置を、前記複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、該スプレーノズルから見て正面となる位置とすることを特徴とする焼結原料の装入方法。
【請求項2】
焼結原料を焼結パレットに装入する装入シュートの幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバーを備え、かつ、一部又は全部の前記バーでは幅方向に隣り合う該バーの上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーンを、前記装入シュートの下流側に配置して、該装入シュートから流下する焼結原料を分級しながら前記焼結パレットに装入する焼結原料の装入方法において、
前記バースクリーン幅方向に間隔を有して複数個配置された、前記バースクリーン幅方向に散水領域が広がる複数個のスプレーノズルからそれぞれ、前記バースクリーンの下面側に向けて散水を行って該バースクリーンの上面側に水を供給するに際し、
一部又は全部の前記スプレーノズルの前記バースクリーン幅方向の設置位置を、前記複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、該スプレーノズルから見て正面となる位置とすることを特徴とする焼結原料の装入方法。
【請求項3】
請求項2記載の焼結原料の装入方法において、前記バーTは前記バースクリーン幅方向に複数あり、全ての前記バーTがそれぞれ前記スプレーノズルから見て正面となる位置に該スプレーノズルを配置することを特徴とする焼結原料の装入方法。
【請求項4】
請求項3記載の焼結原料の装入方法において、側面視して前記バースクリーンと前記各スプレーノズルの軸心の延長線との交差位置であり、前記各スプレーノズルの正面に配置された前記バーTの前記バースクリーン幅方向両側に隣接する前記バーRのうち、先端部がより低い位置に配置されるバーB同士を結ぶ仮想線上で、
前記各スプレーノズルより供給された水の流量が最も多い地点の流量を100%とし、該100%の地点から前記バースクリーン幅方向両側に離れた地点であり流量が10%に減少する2地点間の距離を噴射幅とし、
前記バースクリーン幅方向に隣り合う前記スプレーノズルの前記噴射幅が接している又は重複していることを特徴とする焼結原料の装入方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の焼結原料の装入方法において、前記装入シュートを側面視して、前記装入シュートの下流側端部の下端位置における鉛直線と前記バースクリーンとの交差位置から前記バーの延在方向に沿って下流側に100mmの位置よりも上流側の範囲にある前記バーに、前記スプレーノズルから供給した水を衝突させることを特徴とする焼結原料の装入方法。
【請求項6】
焼結原料を焼結パレットに装入する装入シュートと、
前記装入シュートの下流側に配置され、該装入シュートの幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバーを備え、かつ、一部又は全部の前記バーでは幅方向に隣り合う該バーの上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーンとを有し、
前記装入シュートから流下する焼結原料を分級しながら前記焼結パレットに装入する焼結原料の装入装置において、
前記バースクリーン幅方向に散水領域が広がる1個のスプレーノズルが設けられ、該スプレーノズルから前記バースクリーンの下面側に向けて散水が行われて該バースクリーンの上面側に水が供給され、
前記スプレーノズルの前記バースクリーン幅方向の設置位置を、前記複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、該スプレーノズルから見て正面となる位置としたことを特徴とする焼結原料の装入装置。
【請求項7】
焼結原料を焼結パレットに装入する装入シュートと、
前記装入シュートの下流側に配置され、該装入シュートの幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバーを備え、かつ、一部又は全部の前記バーでは幅方向に隣り合う該バーの上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーンとを有し、
前記装入シュートから流下する焼結原料を分級しながら前記焼結パレットに装入する焼結原料の装入装置において、
それぞれ前記バースクリーン幅方向に散水領域が広がる複数個のスプレーノズルが、前記バースクリーン幅方向に間隔を有して設けられ、該スプレーノズルから前記バースクリーンの下面側に向けて散水が行われて該バースクリーンの上面側に水が供給され、
一部又は全部の前記スプレーノズルの前記バースクリーン幅方向の設置位置を、前記複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、該スプレーノズルから見て正面となる位置としたことを特徴とする焼結原料の装入装置。
【請求項8】
請求項7記載の焼結原料の装入装置において、前記バーTは前記バースクリーン幅方向に複数あり、全ての前記バーTがそれぞれ前記スプレーノズルから見て正面となる位置に該スプレーノズルが配置されていることを特徴とする焼結原料の装入装置。
【請求項9】
請求項8記載の焼結原料の装入装置において、側面視して前記バースクリーンと前記各スプレーノズルの軸心の延長線との交差位置であり、前記各スプレーノズルの正面に配置された前記バーTの前記バースクリーン幅方向両側に隣接する前記バーRのうち、先端部がより低い位置に配置されるバーB同士を結ぶ仮想線上で、
前記各スプレーノズルより供給された水の流量が最も多い地点の流量を100%とし、該100%の地点から前記バースクリーン幅方向両側に離れた地点であり流量が10%に減少する2地点間の距離を噴射幅とし、
前記バースクリーン幅方向に隣り合う前記スプレーノズルの前記噴射幅が接している又は重複していることを特徴とする焼結原料の装入装置。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の焼結原料の装入装置において、前記装入シュートを側面視して、前記装入シュートの下流側端部の下端位置における鉛直線と前記バースクリーンとの交差位置から前記バーの延在方向に沿って下流側に100mmの位置よりも上流側の範囲にある前記バーに、前記スプレーノズルから供給した水を衝突させることを特徴とする焼結原料の装入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結原料の装入方法及びその装入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結プロセスにおいて、焼結パレットに装入された焼結原料層の表層部(以下、上層部とも記載)は、吸引された外気により冷却されて昇温不足になり歩留が低下する。一方で、焼結原料層の下層部は上層部と比較して、通気抵抗の大きい燃焼溶融帯が厚く形成されて焼成速度が遅くなる。
従って、焼結では、上層部の平均粒径を小さくして酸化発熱終了後の到達温度の上昇を図り、下層部の平均粒径を大きして焼成速度を増加させることが志向される。
このように、上層部の平均粒径を小さくし、下層部の平均粒径を大きくする方法として、偏析装入が行われている。
【0003】
例えば特許文献1では、焼結原料をパレットに装入するシュートの下部に、焼結原料の流下方向に沿って延在する複数のバーからなるバースクリーン(フルイ)を取付け、シュートから流下する焼結原料をバースクリーンで分級しながらパレットへ装入する技術が提案されている。
複数のバーは、シュートの幅方向に間隔を有して配置され、側面視して上下方向に隣り合うバーの間隔は下流側に行くにつれて拡大している。
このため、特許文献1記載の方法により、焼結原料の偏析装入が実現され、焼結鉱の歩留が向上する。
【0004】
また特許文献2では、特許文献1に記載された技術において、バースクリーンへ焼結原料が付着し、目標とする偏析装入が実現できなくなることを課題として記載し、これを解決するための手段として、バースクリーンの表面に水を供給する技術が提案されている。
特許文献2記載の方法により、バースクリーンの表面に水膜が形成され、バースクリーンへの原料付着を抑制することができ、その結果、偏析装入による高位な歩留を実現することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-190125号公報
【特許文献2】特開2014-77573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが行った各種試験により、上記特許文献2記載の方法においては、更なる歩留改善の余地があることが判明した。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、焼結原料の焼結パレットへの装入に用いるバースクリーンへ水を供給して原料付着を抑制し、歩留を改善させる技術において、更に高位な歩留を実現することができる焼結原料の装入方法及びその装入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、前記した特許文献2記載の方法で試験を行ったところ、相応に歩留改善効果が得られるものの、その効果は高位に安定するものではなかった。この原因について調査を行ったところ、バースクリーンと水を噴射するスプレーノズルの位置関係によっては、バースクリーンへ原料付着が生じたり、局所的に焼結パレット内の原料表層で水分上昇が発生したりしていることを知見した。
具体的には、
図7に示すように、スプレーノズルから見て正面にあって、かつ、スプレーノズルから噴射水が衝突する位置までの距離が近いバー(下段に配置されるバー:以下、下段バーとも記載)は、濡れ過剰となってバー先端から焼結パレット内の原料表層に滴下する水量が増加する一方、スプレーノズルから見て正面から外れる、スプレーノズルから噴射水衝突位置までの距離が遠い(上段に配置される)、より下段に配置されるバーの死角となる、等が重なったバーは、濡れ不足となって付着抑制効果が十分に発揮されないことが新たに分かった。
【0009】
従って、上段に配置されるバー(以下、上段バーとも記載)の正面にスプレーノズルを配置することで、スプレーノズルから噴射された水が、より下段に配置されるバーの死角となることなく上段バーに到達し、濡れ不足となるバーを大幅に減少させることができることに想到した。
また、スプレーノズルとバースクリーンとの距離が近く、スプレーの水平方向(バースクリーン幅方向に相当)の広がりを十分に確保できない場合、十分に付着抑制効果が発揮されないバーが存在することが分かったため、スプレーノズルとバースクリーンの距離を適正化する(全バーを後述する噴射幅の範囲内に位置させる)ことで更なる付着抑制効果が得られることも判明した。
更に、装入シュートの下端位置における鉛直線とバースクリーンとの交差位置から焼結原料の流下方向に向けて100mm地点以降でのバースクリーンへの原料付着が顕著であるため、それよりも上流側に水を供給することにより、バーの全長に亘って更なる付着抑制効果が得られることも判明した。
本発明は、以上の知見をもとになされたものであり、その要旨は以下の通りである。
【0010】
前記目的に沿う第1の発明に係る焼結原料の装入方法は、焼結原料を焼結パレットに装入する装入シュートの幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバーを備え、かつ、一部又は全部の前記バーでは幅方向に隣り合う該バーの上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーンを、前記装入シュートの下流側に配置して、該装入シュートから流下する焼結原料を分級しながら前記焼結パレットに装入する焼結原料の装入方法において、
前記バースクリーン幅方向に散水領域が広がる1個のスプレーノズルから、前記バースクリーンの下面側に向けて散水を行って該バースクリーンの上面側に水を供給するに際し、
前記スプレーノズルの前記バースクリーン幅方向の設置位置を、前記複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、該スプレーノズルから見て正面となる位置とする。
【0011】
ここで、スプレーノズルのバースクリーン幅方向の設置位置を、バーTがスプレーノズルから見て正面となる位置にするとは、スプレーノズル中心位置(水噴射口(ノズル噴射口)の軸心)の延長線と上段バーの中心(軸心)位置の延長線とが完全に一致する場合のみならず、本発明の効果が得られる範囲内で多少ずれる場合も含まれる。例えば、スプレーノズル中心位置の延長線が、バーTとバーTに隣接する(隣り合う)バーRのバースクリーン幅方向中間位置に配置される程度でもよい(以下、同じ)。
【0012】
前記目的に沿う第2の発明に係る焼結原料の装入方法は、焼結原料を焼結パレットに装入する装入シュートの幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバーを備え、かつ、一部又は全部の前記バーでは幅方向に隣り合う該バーの上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーンを、前記装入シュートの下流側に配置して、該装入シュートから流下する焼結原料を分級しながら前記焼結パレットに装入する焼結原料の装入方法において、
前記バースクリーン幅方向に間隔を有して複数個配置された、前記バースクリーン幅方向に散水領域が広がる複数個のスプレーノズルからそれぞれ、前記バースクリーンの下面側に向けて散水を行って該バースクリーンの上面側に水を供給するに際し、
一部又は全部の前記スプレーノズルの前記バースクリーン幅方向の設置位置を、前記複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、該スプレーノズルから見て正面となる位置とする。
【0013】
ここで、一部のスプレーノズルの設置位置を、バーTがスプレーノズルから見て正面となる位置とした場合、他のスプレーノズルの設置位置は、バーTが他のスプレーノズルから見て正面からずれた位置(例えば、複数のバーのうち、バーT以外のバーが、他のスプレーノズルから見て正面となる位置)となる(以下、同じ)。
また、全部のスプレーノズルの設置位置を、バーTがスプレーノズルから見て正面となる位置とした場合、複数のバーのうち、バーT以外のバーは、スプレーノズルから見て正面からずれた位置となる(以下、同じ)。
なお、スプレーノズルの本数は、例えば、バーTと同数であればよいが、バーTより少なくてもよく、また、バーTより多くてもよい。ここで、1本のバーTの正面となる位置に配置するスプレーノズルの本数は、1本であるが、2本以上の複数本でもよい(即ち、1本のバーTに対して複数のスプレーノズルから散水を行うこともできる:以下、同じ)。
【0014】
第2の発明に係る焼結原料の装入方法において、前記バーTは前記バースクリーン幅方向に複数あり、全ての前記バーTがそれぞれ前記スプレーノズルから見て正面となる位置に該スプレーノズルを配置することが好ましい。
ここで、側面視して前記バースクリーンと前記各スプレーノズルの軸心の延長線との交差位置であり、前記各スプレーノズルの正面に配置された前記バーTの前記バースクリーン幅方向両側に隣接する前記バーRのうち、先端部がより低い位置に配置されるバーB同士を結ぶ仮想線上で、
前記各スプレーノズルより供給された水の流量が最も多い地点の流量を100%とし、該100%の地点から前記バースクリーン幅方向両側に離れた地点であり流量が10%に減少する2地点間の距離を噴射幅とし、
前記バースクリーン幅方向に隣り合う前記スプレーノズルの前記噴射幅が接している又は重複していることが好ましい。
【0015】
第1、第2の発明に係る焼結原料の装入方法において、前記装入シュートを側面視して、前記装入シュートの下流側端部の下端位置における鉛直線と前記バースクリーンとの交差位置から前記バーの延在方向に沿って下流側に100mmの位置よりも上流側の範囲にある前記バーに、前記スプレーノズルから供給した水を衝突させることが好ましい。
【0016】
前記目的に沿う第3の発明に係る焼結原料の装入装置は、焼結原料を焼結パレットに装入する装入シュートと、
前記装入シュートの下流側に配置され、該装入シュートの幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバーを備え、かつ、一部又は全部の前記バーでは幅方向に隣り合う該バーの上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーンとを有し、
前記装入シュートから流下する焼結原料を分級しながら前記焼結パレットに装入する焼結原料の装入装置において、
前記バースクリーン幅方向に散水領域が広がる1個のスプレーノズルが設けられ、該スプレーノズルから前記バースクリーンの下面側に向けて散水が行われて該バースクリーンの上面側に水が供給され、
前記スプレーノズルの前記バースクリーン幅方向の設置位置を、前記複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、該スプレーノズルから見て正面となる位置とした。
【0017】
前記目的に沿う第4の発明に係る焼結原料の装入装置は、焼結原料を焼結パレットに装入する装入シュートと、
前記装入シュートの下流側に配置され、該装入シュートの幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバーを備え、かつ、一部又は全部の前記バーでは幅方向に隣り合う該バーの上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開するバースクリーンとを有し、
前記装入シュートから流下する焼結原料を分級しながら前記焼結パレットに装入する焼結原料の装入装置において、
それぞれ前記バースクリーン幅方向に散水領域が広がる複数個のスプレーノズルが、前記バースクリーン幅方向に間隔を有して設けられ、該スプレーノズルから前記バースクリーンの下面側に向けて散水が行われて該バースクリーンの上面側に水が供給され、
一部又は全部の前記スプレーノズルの前記バースクリーン幅方向の設置位置を、前記複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、該スプレーノズルから見て正面となる位置とした。
【0018】
第4の発明に係る焼結原料の装入装置において、前記バーTは前記バースクリーン幅方向に複数あり、全ての前記バーTがそれぞれ前記スプレーノズルから見て正面となる位置に該スプレーノズルが配置されていることが好ましい。
ここで、側面視して前記バースクリーンと前記各スプレーノズルの軸心の延長線との交差位置であり、前記各スプレーノズルの正面に配置された前記バーTの前記バースクリーン幅方向両側に隣接する前記バーRのうち、先端部がより低い位置に配置されるバーB同士を結ぶ仮想線上で、
前記各スプレーノズルより供給された水の流量が最も多い地点の流量を100%とし、該100%の地点から前記バースクリーン幅方向両側に離れた地点であり流量が10%に減少する2地点間の距離を噴射幅とし、
前記バースクリーン幅方向に隣り合う前記スプレーノズルの前記噴射幅が接している又は重複していることが好ましい。
【0019】
第3、第4の発明に係る焼結原料の装入装置において、前記装入シュートを側面視して、前記装入シュートの下流側端部の下端位置における鉛直線と前記バースクリーンとの交差位置から前記バーの延在方向に沿って下流側に100mmの位置よりも上流側の範囲にある前記バーに、前記スプレーノズルから供給した水を衝突させることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る焼結原料の装入方法及びその装入装置は、バースクリーンの下面側に向けて散水を行ってその上面側に水を供給するスプレーノズルのバースクリーン幅方向の設置位置を、複数のバーのうち、幅方向に隣接するバーRの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーTが、スプレーノズルから見て正面となる位置とする。
このように、バースクリーンのバーとスプレーノズルとの位置関係を限定することによって、各バーに到達する水量をより均一化できるため、濡れ不足によるバーへの原料付着や、濡れ過剰による焼結パレット内の局所的な原料表層の水分上昇を抑制でき、焼結鉱歩留を高位に維持できる。
【0021】
特に、バーTがバースクリーン幅方向に複数あり、全てのバーTがそれぞれスプレーノズルから見て正面となる位置にスプレーノズルを配置する場合、バースクリーンへの原料付着抑制効果を、バースクリーン幅方向全体に渡って付与できるため、焼結鉱歩留を更に高位に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る焼結原料の装入装置の説明図、(B)は同焼結原料の装入装置をスプレーノズルの散水方向に沿った平面で切断した断面を示す説明図、(C)は変形例に係る焼結原料の装入装置をスプレーノズルの散水方向に沿った平面で切断した断面を示す説明図である。
【
図2】スプレーノズルから噴射された水の水量分布の測定方法を示す説明図である。
【
図3】(A)は比較例及び実施例に用いた焼結原料の装入装置のバースクリーンとスプレーノズルの説明図、(B)は同バースクリーンを平面視した説明図である。
【
図4】(A)~(D)はそれぞれ比較例1及び実施例1-1~1-3で用いたバースクリーンをスプレーノズルの散水方向に沿った平面で切断した断面を示す説明図である。
【
図5】同比較例1及び実施例1-1~1-3の各バーからの落水量を測定した結果を示すグラフである。
【
図6】比較例2及び実施例2-1、2-2で用いた焼結原料の装入装置の説明図である。
【
図7】従来例に係る焼結原料の装入装置をスプレーノズルの散水方向に沿った平面で切断した断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る焼結原料の装入装置(以下、単に装入装置とも記載)10は、焼結原料を焼結パレット(図示しない)に装入する装入シュート11と、この装入シュート11の下流側に配置されたバースクリーン12と、バースクリーン12の下面側(下方側)に向けて散水を行い(水を噴射し)バースクリーン12の上面側(上方側)に水を供給するスプレーノズル13とを有し、装入シュート11から流下する焼結原料を分級しながら焼結パレットに装入するものであり、従来よりも高位な歩留を実現することができる装置である。
以下、詳しく説明する。
【0024】
装入シュート11は、焼結原料を貯蔵する貯蔵ホッパー(図示しない)の下方に配置され、焼結パレットの進行方向とは逆方向に向けて下方に傾斜する傾斜面14を有している。
装入シュート11の下流側に配置されるバースクリーン12は、装入シュート11の幅方向に間隔をあけて焼結原料の流下方向に延在する複数のバー15(バーT)、バー16(バーR)、バー17(バーRかつバーB)を備えている。この各バー15~17は、焼結原料の流下方向に向けて下方へ傾斜した状態で、かつ、装入シュート11の幅方向に隣り合うバー15~17の上下方向の間隔が焼結原料の流下方向に向けて拡開した状態で、その基端部が装入シュート11の下流側端部の裏側(下面側)に取り付けられている。
各バー15~17は、例えば、鉄などの金属製の棒材(直径:5mm~30mm程度、長さ:500mm~1500mm程度)からなり、材軸回りに自転するものであり、その断面は、通常円形であるが、焼結原料を分級できる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば楕円形や卵形、あるいは三角形や四角形などの多角形でもよい。
【0025】
上記した複数のバー15~17のうち、バー15は、バースクリーン幅方向に隣接するバー16、17の先端部よりも高い位置に先端部が配置されている。また、バー15のバースクリーン幅方向両側に隣接するバー16、17のうち、バー17は、先端部がより低い位置(最も低い位置)に配置されている。
具体的には、
図1(A)に示すスプレーノズル13の水噴射口18の軸心の延長線を含み、散水領域に沿った平面で、バースクリーン12及び散水領域を切断した断面図(
図1(B)参照)に示されるように、装入シュート11の幅方向に隣り合うバー15~17の切断位置(スプレーノズル13から噴射した水が衝突する位置)を順に結ぶ仮想線が逆V字状となるように、1段目バー(上段バーや最上段バーとも記載)15、2段目バー(中段バーとも記載)16、3段目バー(下段バーや最下段バーとも記載)17の三段配置とされている。このため、バースクリーン12を先端側から見た場合は、幅方向に隣り合うバー15~17の先端を順に結ぶ仮想線が逆V字状となる。
【0026】
なお、
図1(B)では、複数のバー15~17の切断位置を順に結ぶ仮想線が逆V字状となっているが、
図1(C)に示すバースクリーン12aのように、
図1(B)に示すバー15~17の配置が装入シュート11の幅方向に繰り返された場合、バー15~17の切断位置を順に結ぶ仮想線が逆W字状(即ち、山、谷、山)となる。
また、バースクリーンを構成する複数のバーの配置状況によっては、各バーの切断位置を順に結ぶ仮想線がV字状となる場合もあり、これが繰り返された場合、W字状(即ち、谷、山、谷)となる。
この
図1(B)に示すバー15~17の配置の繰り返し(即ち、逆V字状の繰り返し(連続する逆V字状):山、谷、山、・・・)は、例えば、装入シュートの幅等に応じて装入シュートの幅方向に複数行うこともできる(V字状の繰り返し(連続するV字状)、即ち、谷、山、谷、・・・も同様)。
【0027】
上記したように、バースクリーン12は、装入シュート11の幅方向に隣り合うバー15~17の下流側における上下方向の間隔が、上流側における上下方向の間隔よりも広くなっているので、下流側ほど粒径の大きな焼結原料が焼結パレットに落下する。
一方、焼結パレットは、バースクリーン12の下流側から上流側に向けて走行しているため、粒径の小さな焼結原料に比べて粒径の大きな焼結原料が焼結パレットに先に落下することになり、下層に行くほど焼結原料の粒径が大きくなる偏析装入が実現される。
なお、幅方向に隣り合うバーの上下方向の間隔は、一般的には、その全部が焼結原料の流下方向に向けて拡開した状態となっているが、上記したように焼結原料を分級できれば、その一部が拡開していない状態(平行な状態)でもよく、少なくとも一部が拡開した状態であればよい。
【0028】
スプレーノズル13は、
図1(A)に示すように、バースクリーン12の基端側下方に、装入シュート11の幅方向に間隔をあけて複数配置され、バースクリーン12の基端部の下面側に向けて散水するものである。これにより、スプレーノズル13からの散水によってバースクリーン12の基端部に付着した水は、各バー15~17を伝って先端部まで流れて、バー15~17の表面全体に渡って水膜を形成することができる。
このスプレーノズル13のバースクリーン幅方向(パレット幅方向)の設置位置は、
図1(B)に示すように、複数のバー15~17のうち、幅方向に隣接するバー16、17の先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバー15が、スプレーノズル13から見て正面となる位置としている。
以下、上記したように、バースクリーン12に対する相対的なスプレーノズル13の設置位置(バースクリーン幅方向)を規定した理由について、詳しく説明する。
【0029】
スプレーノズルから見て正面に上段バーが位置するように、スプレーノズルを配置(上段バーに対してスプレーノズルの水噴射口を対向配置)することで、スプレーノズルの正面のバーは噴射水の衝突位置までの距離が遠く、スプレー水の広がりによりバーに到達する水量の低下が懸念されるが、スプレー噴射の正面であるために高水量密度であり、バーに到達する水量を一定量確保できる。
一方、上段バーに隣接するバーは、スプレー噴射の正面ではないことから水量密度は低下するが、スプレーノズルからバー(噴射水の衝突位置)までの距離が近くなるため、スプレー水が広がる前にバーに水が到達する。このため、バーに到達する水量の低下を抑制でき、上段バーに到達する水量程度の水量を確保できる。
これにより、スプレーノズルの正面に上段バーが位置するように、スプレーノズルを配置することで、スプレーノズルの周辺のバーに付着する原料粉(焼結原料粉)の除去効果のばらつきが抑制でき、均一に付着粉を除去できる。また、上段バーや、上段バーに隣接するバー、等へ到達する水量も均一化できるため、各バーから焼結パレット内の焼結原料へ滴下する水量を均一に分散させることが可能となる。
【0030】
しかし、スプレーノズルの正面に上段バーがくる位置とは異なる位置に配置、例えばスプレーノズルの正面に下段バーが位置するように、スプレーノズルを配置すると、下段バーはスプレーノズルの噴射の正面かつスプレーノズルからの距離が最も近い位置となるため、下段バーに到達する水量は非常に増加する(
図7参照)。
このとき、下段バーに隣接するバー、更には上段バーは、スプレーノズルの噴射の正面にないため水量密度が低く、スプレーノズルとバー(噴射水の衝突位置)の距離も下段バーよりも遠くなるため、バーに到達する水量が下段バーに比べて低下する(
図7参照)。
加えて、上段バーは隣接するバーによってスプレーノズルの噴射の死角となるため、上段バーに到達する水量は更に低下する(
図7参照)。
スプレーノズルは、ノズル先端から噴射された水がバースクリーン幅方向に広がりを持ち(例えば扇状)、この広がり面に対して垂直方向は広がりが少ないことが一般的である(フラットパターンと称す)。広がり角度は種々の値のものが市販されているが、同じスプレーノズルを用いた場合、
図1(B)の配置と
図7の配置を比較すると、各バーに到達する水量は
図7に比べて
図1(B)が均等になっている傾向が得られる。なお、スプレーノズルの広がり角度は、ここでは70°程度であり、一般的には60°~80°程度であるが、特に限定されるものではない。
【0031】
これにより、スプレーノズルの正面に上段バーがくるようにスプレーノズルを配置した場合(
図1(B))に比べて、正面に上段バーがくる位置とは異なる位置に配置したスプレーノズル(
図7)は、その周辺のバーに付着する原料粉の除去効果のばらつきが大きく、付着粉を均一に除去できない。
また、下段バーや、下段バーに隣接するバー、等へ到達する水量の差が大きくなるため、各バーから焼結パレット内の焼結原料へ滴下する水量が不均一となり、局所的な水の集中落下を招く場合があるため、焼結鉱歩留まりが低下する原因となる。具体的には、下段バーから滴下する水量が顕著に増加するため、対応部位(焼結原料層の表層部)の水分が増加し、表層部の焼結歩留まり悪化の原因となる。
なお、本発明では、バースクリーン幅方向のスプレーノズル設置位置として、上段バーが正面にくる位置としているが、スプレーノズル軸心位置(水噴射口の軸心)の延長線と上段バーの軸心位置の延長線とが完全に一致する場合にのみ効果が得られるものではない。例えば、上段バーとその隣接する(隣り合う)バーのバースクリーン幅方向中間位置に、スプレーノズル軸心位置の延長線が配置される程度であれば、おおむね同等の効果を得ることができる。
【0032】
上記したスプレーノズル13が、バースクリーン幅方向に間隔を有して複数個配置された場合、一部又は全部のスプレーノズル13のバースクリーン幅方向の設置位置をそれぞれ、上段バー15がスプレーノズル13から見て正面となる位置とすることが好ましい。
即ち、少なくとも1個のスプレーノズル13の設置位置を上段バー15の正面となる位置とすることで、上記した作用効果を得ることができる。
特に、
図1(C)に示すように、上段バー15がバースクリーン幅方向に複数ある場合、全ての上段バー15がそれぞれスプレーノズル13から見て正面となる位置に各スプレーノズル13を配置、即ち、バースクリーン幅方向の全体に亘って上記したスプレーノズル13の配置を行うことが好ましい。
具体的には、バースクリーン12aを構成する各バー15~17の周期ピッチ(通常、山-谷-山となる)に合わせ、全ての上段バー15の正面にスプレーノズル13を配置(スプレーノズル13を逆V字状(V字状の場合も同様)の単位ごとに配置)することで、バースクリーン全幅においてバー15~17の付着抑制効果を発揮しつつ、局所的な焼結パレット内の焼結原料層の表層水分上昇を抑制し、より高位な歩留となる。
【0033】
ただし、隣り合うスプレーノズル13とスプレーノズル13間の領域に対応するバー16、17の付着抑制効果が減少する場合がある。
このため、
図1(C)に示すように、バースクリーン幅方向の全体に亘って上記したスプレーノズル13の配置を行う場合は、更に以下の配置とすることが好ましい。
焼結原料の装入装置10を側面視して、各スプレーノズル13と下段バー17との離間距離において、言い換えると、バースクリーン12aと各スプレーノズル13の軸心(水噴射口の軸心)の延長線との交差位置(
図1(A)参照)で、バースクリーン幅方向に隣り合う下段バー17同士を結ぶ仮想線上において、スプレーノズル13より供給された水の流量が最も多い地点(スプレーノズル13の軸心の延長線上)の流量を100%とし、この100%の地点からバースクリーン幅方向両側に離れた地点であり流量が10%に減少する2地点間の距離を噴射幅とし、バースクリーン幅方向に隣り合うスプレーノズル13の噴射幅を重複させる(接してもよい)。
【0034】
なお、上記した噴射幅は、以下の手順で決定した。
まず、スプレーノズルの幅方向の水量分布を測定する。
その方法は、
図2に示すように、スプレーノズルのノズル噴射口(水噴射口)から距離S(
図1(A)参照)離隔して設置した水槽で、スプレーノズルから噴射された水を受け、その質量を測定することで、バースクリーン幅方向の水量分布を定量する。この水槽は、スプレーの広がり方向(バースクリーン幅方向に相当)に10mm間隔で仕切られており、スプレーの広がり方向とは垂直な方向は100mm(スプレー厚みに対して十分広い)である。
次に、スプレーノズルから噴射された水量の分布において、スプレーノズルより供給された水の流量が最も多い地点(
図2ではノズル正面)の流量を100%とし、当該100%地点からスプレーの広がり方向(バースクリーン幅方向)の両方向に離れた地点であって10%の流量に減少する地点(一方側と他方側の2地点)の2地点間距離を、噴射幅とした。
【0035】
スプレーノズルから噴射する水は、当該スプレーノズル正面の上段バー、水の噴射領域の辺縁にあたる下段バー、のいずれにも到達する。このとき、水の噴射領域の辺縁にある下段バーに到達する水量は、上段バーに到達する水量よりも少ない場合が多い。
しかし、下段バーに到達する水はスプレーノズルが噴射する水以外に、スプレーノズル(以下、ノズル1とも記載)にバースクリーン幅方向に隣り合うスプレーノズル(以下、ノズル2とも記載)から噴射された水(直接到達する水の場合もあれば、他のバーに衝突した後にしぶきとなった水の場合もある)が存在する。下段バーは少なくとも2方向からの水の供給を受けるため、上段バーへの原料付着が抑制できる水量をノズル1が噴射する場合、下段バーに到達する水量は上段バーの水量の1/10まで低減しても、原料付着を抑制できることが判明した。
このように、2方向からの水の供給は原料付着抑制効果が大きいことが判明し、上記した配置に想到した。
【0036】
なお、スプレーノズル13からバースクリーン12の下面側に向けて散水を行うに際しては、
図1(A)に示すように、装入シュート11を側面視して、装入シュート11の下流側端部の下端位置における鉛直線とバースクリーン12との交差位置からバーの延在方向に沿って下流側に100mmの位置よりも上流側の範囲Hにあるバー15~17に、スプレーノズル13から供給した水を衝突させることが好ましい。
スプレーノズルからのスプレー水がバーに当たる位置を過度にバーの下流側に設定した場合、スプレー水が衝突する位置よりも基端側(上流側)で原料付着が発生する。具体的には、装入シュート下端から下流側100mmより下流側では原料付着発生が顕著となるため、装入シュート下端より下流側100mmの位置よりも上流側にスプレー水を供給することで、バーの全長に亘って原料付着を抑制できる。
【0037】
本発明の一実施の形態に係る焼結原料の装入方法は、上記構成を有する焼結原料の装入装置10を用いて焼結原料を焼結機の焼結パレットに装入する際に、スプレーノズル13のバースクリーン幅方向の設置位置を、上段バー15がスプレーノズル13から見て正面となる位置にして、スプレーノズル13からバースクリーン12に向けて散水し、バースクリーン12が常に水で濡れている状態にしておく。これにより、バースクリーン12を構成する各バー15~17に到達する水量を従来よりも均一化できるため、濡れ不足による各バー15~17への原料付着や、濡れ過剰による焼結パレット内の局所的な原料表層の水分上昇を抑制できる。
ここで、上段バー15がバースクリーン幅方向に複数ある場合、全ての上段バー15がそれぞれスプレーノズル13から見て正面となる位置に、各スプレーノズル13を配置することで、上記した作用効果が更に高められる。なお、焼結原料の装入に際しては、スプレーノズル13の水噴射口18が焼結原料により塞がって散水できなくなる場合も考えられるが、一部のスプレーノズル13から散水できれば、上記した作用効果が得られる。
【0038】
上記した状況下で、貯蔵ホッパーからドラムフィーダで焼結原料を切出して装入シュート11に投下すると、装入シュート11上を流下した焼結原料は、バースクリーン12(バー15~17)へ付着することなく、バースクリーン12で分級され、焼結パレットに装入される。
従って、焼結鉱歩留を高位に維持できる。
【実施例0039】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、以下に示す(1)設備構造と条件に示すバースクリーンを用いて、(2)でスプレーノズルからの到達水量の均一化効果をラボ試験にて評価した。更に、(3)で到達水量均一化による歩留改善効果を実機試験にて評価した。
【0040】
(1)設備構造と条件
実施するラボ試験及び実機試験では、
図3(A)、(B)に示すバースクリーンを使用しており、バースクリーンを先端側から見た際に、隣接するバーの先端を順に結ぶ仮想線が連続するV字状(W字状)となるように、バーは三段配置とした(
図4(A)~(D)参照)。また、側面視して上下方向に隣り合うバーの下流側における間隔は上流側における間隔よりも広くしている。
ここで、バースクリーンへ水を供給するスプレーノズルには、エバーロイ商事(株)のフラットアトマイジングノズルAS型の型番00480を用いた。バースクリーンの寸法やスプレーノズルの条件は表1に示す通りである。なお、表1中の供給水量の単位「L/min/本」は、スプレーノズル1本あたりに供給する1分あたりの水量L(リットル)である。
【0041】
【0042】
(2)ラボ試験
1)試験条件
本実施例によるスプレーノズルからの到達水量の均一化効果を確認するため、表2に示す条件でバー先端からの落水量を測定するラボ試験を行った。このとき、実施例1-1(
図4(B))と実施例1-2(
図4(C))においてバーNo.3とバーNo.7は、前記した噴射幅内に位置しておらず、実施例1-3(
図4(D))においては全バーが、前記した噴射幅内に位置している。なお、
図4(A)~(D)に図示したハッチングはスプレー水の散水領域を模式的に示したものだが、バーNo.3、7(最下段バー)における散水領域の幅は上記した噴射幅に相当する。
ここで、落水量の測定は、スプレーによる水の供給を開始してから30秒後より、バー先端に試験管形状の受水器を設置し、1分間受水させた後、その重量を測定することで、バーごとの落水量(g/min)をそれぞれ定量した。なお、このラボ試験では原料は落下させなかった。
【0043】
【0044】
2)試験結果
上記ラボ試験で測定した落水量を
図5に示す。なお、各バーの落水量差が最も少なかった実施例1-3の落水量平均値(27g/min)を基準とし、20~35g/minの範囲を落水量のバラつき評価の目安とし、適正範囲とした。この適正範囲に入る落水量のバーが多いほど、バーへの原料付着防止効果が増加し、落水量過多による焼結鉱歩留まり低下の抑制効果も増加する。
【0045】
・比較例1
スプレーノズル正面のバー(No.3)は、高水量密度かつ距離が近いため落水量が増加した。一方でスプレーノズル正面から離れるほど水量密度が低く、距離も遠くなるため、落水量は減少した(例えば、バーNo.3→No.2→No.1の推移、バーNo.3→No.4→・・・→No.7の推移)。
結果として適正範囲に入るバーは無かった(落水量が適正範囲内となるバーがゼロ本)。
【0046】
・実施例1-1
スプレーノズル正面に位置するバー(No.5)は、高水量密度となるが距離が遠くなるため、落水量が減少し、落水量が適正範囲に入った。No.4とNo.6のバーは、スプレーノズル正面から外れるためNo.5のバーよりも水量密度は低下するが、No.5よりもスプレーノズルとの距離が近いため水量密度が増加する傾向があり、結果としてNo.5と同様に落水量は適正範囲となった。
一方で、No.1~No.3とNo.7~No.9のバーは、スプレーの噴射幅外、スプレーノズル正面から大きく外れている、スプレーノズルからの距離が遠い、等の理由があり、結果として落水量は適正範囲を下回った。
従って、実施例1-1は比較例1に比べ、適正範囲の落水量のバーが3本に増加した。
【0047】
・実施例1-2
実施例1-1の配置に加えて、No.1とNo.9のバー正面にもスプレーノズルを設置したことで、該バー及びそれに隣接するバーの落下水量が増加した。また、No.4とNo.6のバーは2方向からのスプレー水により落水量が適正量を超過した。一方で、噴射幅に入っていないNo.3とNo.7のバーは落水量が適正量に満たないままであった。
従って、実施例1-2は実施例1-1に比べ、適正範囲の落水量のバーが更に増加し、5本となった。
【0048】
・実施例1-3
全バーを噴射幅に位置させたことで、実施例1-2までは濡れ過剰であったNo.4とNo.6のスプレーノズルからの距離が離れて落水量が適正化した。実施例1-2までは濡れ不足であったNo.3とNo.7のバーも水量密度を確保できたため、落水量を適正化することができた。
従って、実施例1-3は実施例1-2に比べ、適正範囲の落水量のバーが更に増加し、9本となった。
【0049】
(3)実機試験
1)試験条件
比較例及び実施例の条件を表3及び
図6に示す。
なお、実施例2-1と実施例2-2は、前記したラボ試験で落水量が最も均一化した実施例1-3に相当する条件(S=90mm)であって、全ての上段バーの正面にスプレーノズルを配置した。このため、バーに到達する水量は実施例1-3と同程度となる。
【0050】
【0051】
・比較例2
スプレーノズルは全ての下段バーの正面に配置した。
・実施例2-1
実施例1-3に相当する条件であり、スプレーノズルの設置間隔はバースクリーンの上段バーと上段バーの軸心間距離(バースクリーンピッチ)の72mmに一致する。
・実施例2-2
実施例1-3に相当する条件であるが、実施例2-1とは異なり、装入シュート下端における鉛直線とバースクリーンとの交差位置からバーの延在方向に沿って下流側に100mmの位置よりも上流側の範囲にあるバーにスプレー水を衝突させる。
なお、実機試験で使用した焼結原料は、500μmアンダーが20質量%以上80質量%以下の微粉鉱石と、粉コークスなどの凝結材及び石灰石などの副原料から構成されている。この焼結原料中の水分比率は7.0質量%~10.0質量%であった。ただし、水分比率(質量%)=水の量(kg)/(水の量kg+焼結原料(kg))×100、である。
また、焼結機への原料供給量は、装入シュート幅1mあたり200ton/hとした。
【0052】
2)試験結果
上記実機試験を実施したときの焼結鉱歩留の結果を表4に示す。
【0053】
【0054】
表4に示すように、実施例2-1では、焼結鉱歩留が比較例2と比較して+0.9%と激しく改善した。
特に、実施例2-2では、実施例2-1から更に、+0.2%もの改善効果を得ることができた。
仮に、比較例2のスプレーノズルのうち1つだけ上段バー正面に配置させた条件(実施例1-1に相当)、及び、すべての上段バーの正面にスプレーノズルを配置した条件(実施例1-2に相当)で実機試験を実施していれば、焼結鉱歩留はそれぞれ78.3%と78.8%に改善していたものと推定できた。
【0055】
以上のことから、本発明の焼結原料の装入方法及びその装入装置のように、バースクリーンのバーとスプレーノズルとの位置関係を限定することにより、各バーに到達する水量をより均一化できるため、濡れ不足によるバーへの原料付着や、濡れ過剰による焼結パレット内の局所的な原料表層の水分上昇を抑制でき、焼結鉱歩留を高位に維持できることを確認できた。
【0056】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の焼結原料の装入方法及びその装入装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、スプレーノズルとして水のみを噴射するタイプを使用した場合について説明したが、少なくとも水を噴射(散水)できれば特に限定されるものではなく、例えば、水と気体(空気等)を同時に噴射できるタイプ(気液混合ノズル)も使用できる。
なお、スプレーノズルにはフラットパターンのノズルを用いたが、バースクリーン幅方向に散水領域が広がるノズルであれば特に限定されるものではなく、例えば、フルコーンパターンのノズル(円錐状ノズル)も使用できる。
【0057】
また、前記実施の形態では、バースクリーンを構成する複数のバーを三段配置した場合について説明したが、例えば、二段でもよく、四段以上でもよい。なお、本発明のスプレーノズルの効果をより顕著に得るには、二段よりも三段以上であることが好ましい。この同一段に配置される複数のバーの先端部の高さ位置は、必ずしも全く同じ高さ位置である必要はなく、多少のずれがあってもよい。
そして、前記実施の形態では、バースクリーン幅方向両端部に位置するバーが、バーTあるいはバーBとなる場合について説明したが、必ずしもバーTあるいはバーBとなる必要はない。例えば、幅方向のいずれか一端部がバーTで他端部がバーBとなってもよく、また、幅方向のいずれか一端部又は両端部が、先端部の高さがバーTとバーBの間となるバーとなってもよい。なお、幅方向のいずれか一端部又は両端部のバーがバーTとなる場合、このバーTの正面にスプレーノズルを配置しなくてもよい。また、バースクリーンの幅が広くより多くのバーTが存在する場合は、幅方向のいずれか一端側又は両端側の領域にある複数のバーTの正面にスプレーノズルを配置しなくてもよい。
【0058】
前記実施の形態においては、複数のバーを三段配置した場合のバースクリーンに関し、スプレーノズルの設置位置の選定を、1周期(1単位、繰り返し単位)を構成する5本のバーを対象にして行った場合について説明した。即ち、上段バーは、幅方向両側にそれぞれ2本ずつ(合計4本)配置されるバーの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーである。
ここで、複数のバーを二段配置した場合、1周期を構成する3本のバーを対象にして、上段バーは、幅方向両側にそれぞれ1本ずつ(合計2本)配置されるバーの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーとなり、また、複数のバーを四段以上配置した場合、1周期を構成する7本以上の奇数本のバーを対象にして、上段バーは、幅方向両側にそれぞれ3本以上ずつ(合計6本以上)配置されるバーの先端部よりも高い位置に先端部が配置されるバーとなる。
【0059】
更に、前記実施の形態(
図3(A)参照)で示したように、バースクリーンを構成する各バーの俯角は、上段バーの俯角α<中段バーの俯角β<下段バーの俯角γとなっている。この各バーの俯角α、β、γは、バースクリーンが焼結原料の偏析装入を実現できれば、特に限定されるものではないが、例えば、上段バーの俯角αを29°~43°程度、中段バーの俯角βを32°~44°程度、下段バーの俯角γを35°~45°程度、に設定することができる。そして、
図3(B)に示すように、バースクリーン幅方向に隣り合うバーの水平方向の間隔dは3mm~20mm程度にすることができ、この間隔dは、バースクリーン幅方向に亘って同一でもよく、また、異なってもよい。
また、
図1(A)、
図3(A)に示すように、水平面に対するスプレーノズルの散水角度θは、特に限定されるものではなく、例えば、0°以上γ未満、即ち、水平線と最下段のバーを含む面との間の角度とするのがよく、スプレーノズルからバースクリーンに供給される水量は、特に限定されるものではなく、バー1本当たり0.01L/min以上1L/min以下とするのがよい。
10:焼結原料の装入装置、11:装入シュート、12、12a:バースクリーン、13:スプレーノズル、14:傾斜面、15:バー(バーT)、16:バー(バーR)、17:バー(バーB)、18:水噴射口