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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153390
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241022BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G05D1/02 G
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067260
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】池戸 賢吾
【テーマコード(参考)】
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
3F022AA08
3F022LL12
3F022MM11
3F022NN50
3F022NN52
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE02
5H301EE12
5H301EE16
5H301EE17
5H301FF06
5H301FF08
5H301FF15
5H301GG08
(57)【要約】
【課題】複数の候補ルートから適切なルートを選択でき、物品の搬送効率を高め易い物品搬送設備を提供する。
【解決手段】移動可能経路2は、主経路3と、主経路3に比べて単位距離当たりのステーション8及び経路交差部9の数の少なくとも一方が少ないバイパス経路4と、を備え、制御装置は、物品搬送車1の移動距離が長くなるに従って大きくなる距離コストと、移動可能経路2の構造に応じて物品搬送車1の移動速度が低くなるに従って大きくなる構造コストと、を含む経路コストを用いて、対象車1Tを出発地点P1から目的地点P2まで移動させることが可能な複数の候補ルートRの中から、経路コストが最も低いルートを選択するルート選択処理を実行し、ルート選択処理において、予め定められた判定条件を満たす場合には、バイパス経路4を通る候補ルートRの経路コストを、判定条件を満たさない場合に比べて低くするように調整するコスト調整処理を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の移動可能経路に沿って移動して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記移動可能経路は、前記物品搬送車の停止位置となるステーション、及び経路が交差する経路交差部のそれぞれが複数設定された主経路と、前記主経路に比べて単位距離当たりの前記ステーションの数及び単位距離当たりの前記経路交差部の数の少なくとも一方が少ないバイパス経路と、を備え、
前記バイパス経路は、前記主経路に設定された複数の接続部のそれぞれにおいて前記主経路と接続され、
前記制御装置は、
前記物品搬送車の移動距離が長くなるに従って大きくなる距離コストと、前記移動可能経路の構造に応じて前記物品搬送車の移動速度が低くなるに従って大きくなる構造コストと、を含む経路コストを用いて、複数の前記物品搬送車の1つである対象車を前記移動可能経路上の出発地点から目的地点まで移動させることが可能な複数の候補ルートの中から、前記経路コストが最も低い前記候補ルートを選択するルート選択処理を実行し、
前記ルート選択処理において、予め定められた判定条件を満たす場合には、前記バイパス経路を通る前記候補ルートの前記経路コストを、前記判定条件を満たさない場合に比べて低くするように調整するコスト調整処理を実行する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記判定条件は、前記出発地点から前記目的地点までの前記物品搬送車の移動距離の指標である移動距離指標が、予め定められた第1閾値以上であるという条件を含む、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記移動距離指標は、前記主経路のみを通るルートであって前記経路コストが最も低い前記候補ルートに沿う前記物品搬送車の移動距離である、請求項2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記判定条件は、前記バイパス経路にある前記物品搬送車の台数が、予め定められた第2閾値以下であるという条件を含む、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記判定条件は、前記出発地点が属するエリアと前記目的地点が属するエリアとの組み合わせが、予め設定された組み合わせであるという条件を含む、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記判定条件は、前記主経路のみを通るルートであって前記経路コストが最も低い前記候補ルートの少なくとも一部に前記物品搬送車の渋滞が生じている、又は、当該候補ルートにある前記物品搬送車の台数が予め定められた第3閾値以上である、という条件を含む、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記バイパス経路は、前記主経路が設定された高さである第1高さとは異なる第2高さに設置された別層経路と、前記第1高さと前記第2高さとの間で前記物品搬送車を昇降させる昇降装置と、を含み、
前記構造コストは、前記昇降装置により昇降されることによる前記物品搬送車の移動速度の低下を反映したコストを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の移動可能経路に沿って移動して物品を搬送する複数の物品搬送車と、当該物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備の一例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1の物品搬送設備では、制御装置が、物品搬送車を移動可能経路上の出発地点から目的地点まで移動させるためのルートを設定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-080411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の物品搬送設備では、物品搬送車の出発地点から目的地点までのルートの候補となる候補ルートが複数存在する場合も有り得る。このような場合、複数の候補ルートのうち、経路の長さ及び経路の構造等に応じて設定されたコストが最も低い候補ルートを選択する手法が知られている。
【0005】
しかしながら、そのような手法では、複数の物品搬送車が移動する移動可能経路の状況によっては、選択されなかった候補ルートの方が、物品搬送車が目的地点に到達するまでの時間が短くなることが考えられる。このように、画一的な基準でルートを設定すると、複数の候補ルートから適切なルートを選択できず、物品搬送設備の全体での物品の搬送効率が悪化する場合があった。
【0006】
そこで、複数の候補ルートから適切なルートを選択でき、物品の搬送効率を高め易い物品搬送設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、物品搬送設備の特徴構成は、
規定の移動可能経路に沿って移動して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記移動可能経路は、前記物品搬送車の停止位置となるステーション、及び経路が交差する経路交差部のそれぞれが複数設定された主経路と、前記主経路に比べて単位距離当たりの前記ステーションの数及び単位距離当たりの前記経路交差部の数の少なくとも一方が少ないバイパス経路と、を備え、
前記バイパス経路は、前記主経路に設定された複数の接続部のそれぞれにおいて前記主経路と接続され、
前記制御装置は、
前記物品搬送車の移動距離が長くなるに従って大きくなる距離コストと、前記移動可能経路の構造に応じて前記物品搬送車の移動速度が低くなるに従って大きくなる構造コストと、を含む経路コストを用いて、複数の前記物品搬送車の1つである対象車を前記移動可能経路上の出発地点から目的地点まで移動させることが可能な複数の候補ルートの中から、前記経路コストが最も低い前記候補ルートを選択するルート選択処理を実行し、
前記ルート選択処理において、予め定められた判定条件を満たす場合には、前記バイパス経路を通る前記候補ルートの前記経路コストを、前記判定条件を満たさない場合に比べて低くするように調整するコスト調整処理を実行する点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、予め定められた判定条件を満たす場合には、対象車を出発地点から目的地点まで移動させるためのルートとして、バイパス経路を通る候補ルートが選択され易くなる。これにより、主経路を通る物品搬送車の台数が多くなり易い場合等に、バイパス経路を通る物品搬送車の台数を増加させ、主経路とバイパス経路とで物品搬送車の台数の分散を図り易くなる。このように、本構成によれば、複数の候補ルートから適切なルートを選択でき、物品搬送設備の全体での物品の搬送効率を高め易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る物品搬送設備の全体構成を示す模式図
図2】実施形態に係る物品搬送設備の制御ブロック図
図3】複数の候補ルートの一例を示す図
図4】経路コストの一例を示す図
図5】ルート選択処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、実施形態に係る物品搬送設備100について、図面を参照して説明する。図1に示すように、物品搬送設備100は、規定の移動可能経路2に沿って移動して物品を搬送する複数の物品搬送車1を備えている。本実施形態では、移動可能経路2は、天井から吊り下げられたレールにより構成されている。つまり、本実施形態では、物品搬送車1は、天井搬送車である。物品搬送車1は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)を物品として搬送する。
【0011】
移動可能経路2は、直線状に形成された直線部2aと、曲線状に形成された曲線部2bとの組み合わせによって構成されている。移動可能経路2には、複数のステーション8、及び複数の経路交差部9が設定されている。
【0012】
ステーション8は、当該ステーション8に対応する位置に物品搬送車1が停止し、当該物品搬送車1との間で物品の受け渡し等が行われるように構成されている。ステーション8における物品の受け渡し対象は、例えば、物品を処理対象とする処理装置のロードポート、物品を保管する保管装置の入出庫ポート、物品を一時的に保管する保管棚等である。
【0013】
経路交差部9は、複数の経路同士が交差する部分である。経路交差部9は、複数の経路に分岐する分岐部91と、複数の経路が合流する合流部92と、を含む。本実施形態では、分岐部91及び合流部92のそれぞれにおいて、直線部2aと曲線部2bとが互いに接続されている。
【0014】
移動可能経路2は、主経路3と、バイパス経路4と、を備えている。バイパス経路4は、主経路3に設定された複数の接続部Cのそれぞれにおいて、主経路3と接続されている。接続部Cは、主経路3とバイパス経路4とが交差する経路交差部9である。より詳細には、主経路3からバイパス経路4に分岐する分岐部91、及びバイパス経路4が主経路3に合流する合流部92のそれぞれが接続部Cである。
【0015】
バイパス経路4は、主経路3に比べて単位距離当たりのステーション8の数及び単位距離当たりの経路交差部9の数の少なくとも一方が少ない経路である。本実施形態では、バイパス経路4には、ステーション8が設定されていない。つまり、本願において、特定の比較対象に対して数が「少ない」とは、ゼロを含む概念である。
【0016】
本実施形態では、主経路3は、第1経路31と、当該第1経路31に接続された複数の第2経路32と、を備えている。第1経路31及び第2経路32のそれぞれは、環状に形成されている。本実施形態では、複数の第2経路32のそれぞれに複数のステーション8が設定され、第1経路31にはステーション8が設定されていない。また、本実施形態では、2つの第2経路32を互いに接続するように、バイパス経路4が配置されている。図1に示す例では、4つの第2経路32が第1経路31に接続されている。そして、4つの第2経路32のそれぞれに、6つのステーション8が設定されている。なお、図1において、物品搬送車1の移動方向を矢印にて示している。
【0017】
また、本実施形態では、主経路3は、その全域において同一の高さに設定されている。そして、バイパス経路4は、主経路3が設定された高さである第1高さに設置された同層経路41と、第1高さとは異なる第2高さに設置された別層経路42と、第1高さと第2高さとの間で物品搬送車1を昇降させる昇降装置43と、を含む。本実施形態では、第2高さは、第1高さよりも高い。つまり、本実施形態では、バイパス経路4は、主経路3よりも高い位置を通るように形成されている。
【0018】
本例では、バイパス経路4は、一対の同層経路41としての第1同層経路41A及び第2同層経路41Bと、別層経路42と、一対の昇降装置43としての第1昇降装置43A及び第2昇降装置43Bと、を含む。
【0019】
第1同層経路41Aは、主経路3の第2経路32に接続され、第2経路32からバイパス経路4に分岐する分岐部91を構成している。本実施形態では、第1同層経路41Aは、2つの曲線部2bを含む。第2同層経路41Bは、主経路3の第2経路32に接続され、バイパス経路4が第2経路32に合流する合流部92を構成している。本実施形態では、第2同層経路41Bは、2つの曲線部2bを含む。
【0020】
本実施形態では、別層経路42は、2つの曲線部2bを含む。
【0021】
第1昇降装置43Aは、第1同層経路41Aから別層経路42に物品搬送車1を持ち上げるための昇降装置43である。第2昇降装置43Bは、別層経路42から第2同層経路41Bに物品搬送車1を降ろすための昇降装置43である。
【0022】
図2に示すように、物品搬送設備100は、物品搬送車1を制御する制御装置5を備えている。本実施形態では、物品搬送車1は、走行部11と、移載部12と、検出部13と、制御部14と、を備えている。
【0023】
走行部11は、移動可能経路2を構成するレール上を転動する複数の車輪を備えている。そして、走行用モータの駆動力により、複数の車輪の少なくとも1つが回転してレール上を転動することで、走行部11が移動可能経路2に沿って走行する。
【0024】
移載部12は、所定の移載対象箇所(例えば、ステーション8)との間で物品を移載する。詳細な説明は省略するが、移載部12は、例えば、物品を保持する保持部と、当該保持部を走行部11に対して昇降移動させる昇降部と、を備えている。また、移載部12は、必要に応じて、上記保持部を走行部11に対して水平移動させる水平移動部と、上記保持部を鉛直方向に沿う回転軸を中心として走行部11に対して回転させる旋回部と、を備えている。なお、移載部12は、上記の移載対象箇所との間で物品を移載するために必要な構成を備えていれば良く、上記のような構成に限定されない。
【0025】
検出部13は、移動可能経路2に沿って設置された複数の被検出体(図示を省略)を検出し、当該被検出体に保持された位置情報Lを読み取り可能に構成されている。位置情報Lは、当該位置情報Lを保持する被検出体の設置位置を示す情報である。なお、被検出体としては、例えば、バーコード、無線タグ等を用いて構成可能である。被検出体がバーコードを用いて構成されている場合には、検出部13は、バーコードリーダとして構成されていれば良い。また、被検出体が無線タグを用いて構成されている場合には、検出部13は、タグリーダとして構成されていれば良い。
【0026】
制御部14は、制御装置5からの指令に基づいて、走行部11及び移載部12を制御する。また、制御部14は、検出部13により読み取られた位置情報Lを制御装置5へ送信する。
【0027】
本実施形態では、制御装置5は、種々の情報を記憶する記憶部51を備えている。記憶部51は、制御部14から送信された位置情報Lを記憶する。また、移動可能経路2の構造を示すマップ情報Mが、記憶部51に予め記憶されている。
【0028】
図3に示すように、制御装置5は、移動可能経路2上の出発地点P1から目的地点P2まで、複数の物品搬送車1の1つである対象車1Tを移動させることが可能な複数の候補ルートRを抽出するように構成されている。本実施形態では、バイパス経路4によって互いに接続された2つの第2経路32のうちの一方に配置されたステーション8の1つが出発地点P1として設定されている。そして、バイパス経路4によって互いに接続された2つの第2経路32のうちの他方に配置されたステーション8の1つが目的地点P2として設定されている。
【0029】
なお、図3では、説明の便宜上、複数の第2経路32のうち、出発地点P1及び目的地点P2が設定された2つの第2経路32のみを図示している。以下の説明では、出発地点P1が設定された第2経路32を「出発側経路32A」とし、目的地点P2が設定された第2経路32を「目的側経路32B」とする。
【0030】
本実施形態では、制御装置5が、複数の候補ルートRとして、第1ルートR1及び第2ルートR2を抽出した場合について説明する。第1ルートR1は、バイパス経路4を通らず主経路3のみを通る候補ルートRである。第2ルートR2は、主経路3及びバイパス経路4の双方を通る候補ルートRである。
【0031】
本実施形態では、第1ルートR1は、出発地点P1から目的地点P2までにおいて、出発側経路32A、出発側経路32Aから第1経路31に合流する合流部92、第1経路31、第1経路31から目的側経路32Bに分岐する分岐部91、目的側経路32Bを順に通るルートである。
【0032】
また、本実施形態では、第2ルートR2は、出発地点P1から目的地点P2までにおいて、主経路3の出発側経路32A、バイパス経路4の第1同層経路41A、第1昇降装置43A、別層経路42、第2昇降装置43B、第2同層経路41B、主経路3の目的側経路32Bを順に通るルートである。
【0033】
制御装置5は、複数の候補ルートRの中から、経路コストが最も低い候補ルートRを選択するルート選択処理を実行するように構成されている。経路コストは、対象車1Tが出発地点P1から目的地点P2までの移動に要すると判断されるコストである。経路コストは、距離コストと、構造コストと、を含む。
【0034】
距離コストは、物品搬送車1の移動距離が長くなるに従って大きくなるコストである。図4に示す例では、第2ルートR2における対象車1Tの移動距離は、第1ルートR1における対象車1Tの移動距離の3/4である。そのため、第1ルートR1の距離コストを「4」とし、第2ルートR2の距離コストを「3」としている。なお、図4において、黒塗りの横棒は、第1ルートR1及び第2ルートR2のそれぞれにおける主経路3の長さを表している。そして、白塗りの横棒は、第2ルートR2におけるバイパス経路4の長さを表している。
【0035】
構造コストは、移動可能経路2の構造(形状等)に応じて物品搬送車1の移動速度が低くなるに従って大きくなるコストである。本実施形態では、構造コストは、曲線部2bに進入する際の物品搬送車1の移動速度の低下を反映したコストと、昇降装置43により昇降されることによる物品搬送車1の移動速度の低下を反映したコストと、を含む。
【0036】
図3に示すように、第1ルートR1では、出発側経路32Aから第1経路31に合流する合流部92における曲線部2b、第1経路31の2つの曲線部2b、第1経路31から目的側経路32Bに分岐する分岐部91における曲線部2b、つまり、合計4つの曲線部2bを通る。
【0037】
また、第2ルートR2では、第1同層経路41Aの2つの曲線部2b、別層経路42の2つの曲線部2b、第2同層経路41Bの2つの曲線部2b、つまり、合計6つの曲線部2bを通る。更に、第2ルートR2では、第1昇降装置43A及び第2昇降装置43B、つまり、合計2つの昇降装置43を通る。
【0038】
そのため、図4に示す例では、第1ルートR1の構造コストを「4」とし、第2ルートR2の構造コストを「8」としている。なお、図4において、黒塗りの三角形は、曲線部2bを表している。そして、白塗りの三角形は、昇降装置43を表している。
【0039】
図4に示す例では、第1ルートR1及び第2ルートR2のそれぞれの経路コストを、距離コストと構造コストとの合計としている。そのため、第1ルートR1の経路コストは「8」であり、第2ルートR2の経路コストは「11」である。
【0040】
このような場合、通常であれば、ルート選択処理により、複数の候補ルートRの中から経路コストが最も低い候補ルートRが選択されるため、第1ルートR1が選択される。しかしながら、制御装置5は、ルート選択処理において、予め定められた判定条件を満たす場合には、バイパス経路4を通る候補ルートRの経路コストを、判定条件を満たさない場合に比べて低くするように調整するコスト調整処理を実行する。
【0041】
本実施形態では、コスト調整処理は、バイパス経路4を通る候補ルートRの経路コストを一定割合低減する処理、言い換えると、バイパス経路4を通る候補ルートRの経路コストに規定の小数(例えば、「0.7」)を乗ずる処理である。図4に示す例では、第2ルートR2の経路コストである「11」に「0.7」を乗ずることで算出される「7.7」が、第1ルートR1の経路コストである「8」よりも小さくなる。その結果、ルート選択処理において、経路コストが最も低い候補ルートRとして、第2ルートR2が選択されることになる。
【0042】
本実施形態では、「判定条件」は、以下の第1条件から第4条件を含む。
【0043】
第1条件は、出発地点P1から目的地点P2までの物品搬送車1の移動距離の指標である移動距離指標が、予め定められた第1閾値以上であるという条件である。本実施形態では、移動距離指標は、主経路3のみを通るルートであって経路コストが最も低い候補ルートRに沿う物品搬送車1の移動距離である。本例では、移動距離指標は、主経路3のみを通って最短距離となる候補ルートRである第1ルートR1に沿う物品搬送車1の移動距離である。
【0044】
第2条件は、バイパス経路4にある物品搬送車1の台数が、予め定められた第2閾値以下であるという条件である。
【0045】
第3条件は、主経路3のみを通るルートであって経路コストが最も低い候補ルートRの少なくとも一部に物品搬送車1の渋滞が生じている、又は、当該候補ルートRにある物品搬送車1の台数が予め定められた第3閾値以上である、という条件である。図3に示す例では、主経路3のみを通るルートであって経路コストが最も低い候補ルートRは、第1ルートR1である。そして、第1ルートR1における渋滞エリアAcにおいて、3台の物品搬送車1による渋滞が生じている。
【0046】
第4条件は、出発地点P1が属するエリアである出発エリアA1と目的地点P2が属するエリアである目的エリアA2との組み合わせが、予め設定された組み合わせであるという条件である。本実施形態では、出発エリアA1は、出発側経路32Aの全域を含むように設定され、目的エリアA2は、目的側経路32Bの全域を含むように設定されている。なお、出発エリアA1と目的エリアA2との組み合わせは、任意に手動で設定する構成であっても良いし、移動可能経路2の構造に応じて自動で設定される構成であっても良い。
【0047】
図5は、制御装置5によるルート選択処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、制御装置5は、移動可能経路2上の出発地点P1から目的地点P2まで、複数の物品搬送車1の1つである対象車1Tを移動させることが可能な複数の候補ルートRを抽出する(ステップ#1)。
【0048】
次に、制御装置5は、複数の候補ルートRのそれぞれの距離コストを算出する(ステップ#2)。そして、制御装置5は、複数の候補ルートRのそれぞれの構造コストを算出する(ステップ#3)。
【0049】
続いて、制御装置5は、複数の候補ルートRの中に、バイパス経路4を通る候補ルートRがあるか否かを判定する(ステップ#4)。制御装置5は、複数の候補ルートRの中にバイパス経路4を通る候補ルートRがある場合(ステップ#4:Yes)、移動距離指標が予め定められた第1閾値以上であるか否か、つまり、上記の第1条件を満たすか否か、を判定する(ステップ#5)。
【0050】
制御装置5は、移動距離指標が第1閾値以上である場合(ステップ#5:Yes)、上記の通りコスト調整処理を実行する(ステップ#9)。
【0051】
一方、制御装置5は、移動距離指標が第1閾値未満である場合(ステップ#5:No)、バイパス経路4にある物品搬送車1の台が、予め定められた第2閾値以下であるか否か、つまり、上記の第2条件を満たすか否か、を判定する(ステップ#6)。
【0052】
制御装置5は、バイパス経路4にある物品搬送車1の台数が第2閾値以下である場合(ステップ#6:Yes)、上記の通りコスト調整処理を実行する(ステップ#9)。
【0053】
一方、制御装置5は、バイパス経路4にある物品搬送車1の台数が第2閾値より大きい場合(ステップ#6:No)、主経路3のみを通るルートであって経路コストが最も低い候補ルートR(以下、「基準候補ルート」と記す)の少なくとも一部に物品搬送車1の渋滞が生じている、又は、基準候補ルートにある物品搬送車1の台数が予め定められた第3閾値以上であるか否か、つまり、上記の第3条件を満たすか否か、を判定する(ステップ#7)。
【0054】
制御装置5は、基準候補ルートの少なくとも一部に物品搬送車1の渋滞が生じている、又は、基準候補ルートにある物品搬送車1の台数が第3閾値以上である場合(ステップ#7:Yes)、上記の通りコスト調整処理を実行する(ステップ#9)。
【0055】
一方、制御装置5は、基準候補ルートに物品搬送車1の渋滞が生じておらず、かつ、基準候補ルートにある物品搬送車1の台数が第3閾値未満である場合(ステップ#7:No)、出発エリアA1と目的エリアA2との組み合わせが予め設定された組み合わせであるか否か、つまり、上記の第4条件を満たすか否か、を判定する(ステップ#8)。
【0056】
制御装置5は、出発エリアA1と目的エリアA2との組み合わせが予め設定された組み合わせである場合(ステップ#8:Yes)、上記の通りコスト調整処理を実行する(ステップ#9)。
【0057】
制御装置5は、コスト調整処理(ステップ#9)を実行した後、複数の候補ルートRの中から経路コストが最も低い候補ルートRを選択ルートとして選択する(ステップ#10)。
【0058】
なお、制御装置5は、抽出された複数の候補ルートRの中にバイパス経路4を通る候補ルートRがない場合(ステップ#4:No)、又は、出発エリアA1と目的エリアA2との組み合わせが予め設定された組み合わせではない場合(ステップ#8:No)においては、コスト調整処理(ステップ#9)を実行することなく、複数の候補ルートRの中から経路コストが最も低い候補ルートRを選択ルートとして選択する(ステップ#10)。
【0059】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、ルート選択処理において、判定条件が第1条件から第4条件を含み、第1条件を満たすか否かの判定(ステップ#5)、第2条件を満たすか否かの判定(ステップ#6)、第3条件を満たすか否かの判定(ステップ#7)、及び第4条件を満たすか否かの判定(ステップ#8)を記載の順に行う構成を例として説明した。しかし、それらの判定を行う順序は問わない。また、判定条件が、第1条件から第4条件のうち、1つの条件、2つの条件、又は3つの条件のみを含む構成としても良い。
【0060】
(2)上記の実施形態では、バイパス経路4にステーション8が設定されていない構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、バイパス経路4にステーション8が設定されていても良い。
【0061】
(3)上記の実施形態では、バイパス経路4の別層経路42が設置された高さである第2高さが、主経路3が設定された高さである第1高さよりも高い構成、つまり、バイパス経路4が主経路3よりも高い位置を通るように形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2高さが第1高さよりも低い構成、つまり、バイパス経路4が主経路3よりも低い位置を通るように形成された構成であっても良い。或いは、第1高さと第2高さとが同じ高さである構成、つまり、バイパス経路4がその全域に亘って主経路3と同じ高さとなるように設置された構成であっても良い。
【0062】
(4)上記の実施形態では、バイパス経路4が同層経路41と別層経路42と昇降装置43とを含み、昇降装置43が同層経路41と別層経路42との間で物品搬送車1を昇降させる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、バイパス経路4が同層経路41を含まず、昇降装置43が主経路3と別層経路42との間で物品搬送車1を昇降させる構成としても良い。この構成では、昇降装置43が、分岐部91又は合流部92を構成している。
【0063】
(5)上記の実施形態では、バイパス経路4が昇降装置43を含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、バイパス経路4が、昇降装置43に加えて、又は、昇降装置43に代えて、水平方向に対して傾斜した傾斜経路を含む構成であっても良い。
【0064】
(6)上記の実施形態では、出発エリアA1が出発側経路32Aの全域を含むように設定され、目的エリアA2が目的側経路32Bの全域を含むように設定された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、出発エリアA1が出発側経路32Aにおける1つのステーション8を含むように設定され、目的エリアA2が目的側経路32Bにおける1つのステーション8を含むように設定された構成としても良い。
【0065】
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0066】
〔本実施形態のまとめ〕
以下では、上記において説明した物品搬送設備の概要について説明する。
【0067】
物品搬送設備は、
規定の移動可能経路に沿って移動して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記移動可能経路は、前記物品搬送車の停止位置となるステーション、及び経路が交差する経路交差部のそれぞれが複数設定された主経路と、前記主経路に比べて単位距離当たりの前記ステーションの数及び単位距離当たりの前記経路交差部の数の少なくとも一方が少ないバイパス経路と、を備え、
前記バイパス経路は、前記主経路に設定された複数の接続部のそれぞれにおいて前記主経路と接続され、
前記制御装置は、
前記物品搬送車の移動距離が長くなるに従って大きくなる距離コストと、前記移動可能経路の構造に応じて前記物品搬送車の移動速度が低くなるに従って大きくなる構造コストと、を含む経路コストを用いて、複数の前記物品搬送車の1つである対象車を前記移動可能経路上の出発地点から目的地点まで移動させることが可能な複数の候補ルートの中から、前記経路コストが最も低い前記候補ルートを選択するルート選択処理を実行し、
前記ルート選択処理において、予め定められた判定条件を満たす場合には、前記バイパス経路を通る前記候補ルートの前記経路コストを、前記判定条件を満たさない場合に比べて低くするように調整するコスト調整処理を実行する。
【0068】
この構成によれば、予め定められた判定条件を満たす場合には、対象車を出発地点から目的地点まで移動させるためのルートとして、バイパス経路を通る候補ルートが選択され易くなる。これにより、主経路を通る物品搬送車の台数が多くなり易い場合等に、バイパス経路を通る物品搬送車の台数を増加させ、主経路とバイパス経路とで物品搬送車の台数の分散を図り易くなる。このように、本構成によれば、複数の候補ルートから適切なルートを選択でき、物品搬送設備の全体での物品の搬送効率を高め易くなる。
【0069】
ここで、前記判定条件は、前記出発地点から前記目的地点までの前記物品搬送車の移動距離の指標である移動距離指標が、予め定められた第1閾値以上であるという条件を含むと好適である。
【0070】
通常、出発地点から目的地点までの物品搬送車の移動距離が短い場合には、主経路を通る候補ルートが選択される可能性が高い。そのため、出発地点から目的地点までの移動距離が長い場合にも主経路を通る候補ルートが選択される割合が高いと、主経路において物品搬送車の渋滞が生じ易くなる。
本構成によれば、出発地点から目的地点までの物品搬送車の移動距離が長い場合に、バイパス経路を通る候補ルートが選択され易くなる。したがって、主経路とバイパス経路とで物品搬送車の台数の分散を図り易くなる。
【0071】
上記の構成において、前記移動距離指標は、前記主経路のみを通るルートであって前記経路コストが最も低い前記候補ルートに沿う前記物品搬送車の移動距離であると好適である。
【0072】
この構成によれば、適切な移動距離指標を用いて、判定条件を適切に判定することができる。
【0073】
また、前記判定条件は、前記バイパス経路にある前記物品搬送車の台数が、予め定められた第2閾値以下であるという条件を含むと好適である。
【0074】
バイパス経路にある物品搬送車の台数が多い場合にまで、バイパス経路を通る候補ルートが選択され易くすると、バイパス経路で渋滞が生じる、或いはバイパス経路で渋滞が生じないまでも、当該バイパス経路を通る物品搬送車の目的地点への到着が遅れる、といった問題が生じ得る。
本構成によれば、このような問題が生じないようにしつつ、主経路とバイパス経路とで物品搬送車の台数の分散を図ることができる。
【0075】
また、前記判定条件は、前記出発地点が属するエリアと前記目的地点が属するエリアとの組み合わせが、予め設定された組み合わせであるという条件を含むと好適である。
【0076】
この構成によれば、主経路を通って特定のエリア同士を移動する物品搬送車により渋滞が生じ易い場合には、当該特定のエリアの組み合わせを予め設定しておくことで、出発地点が属するエリアと目的地点が属するエリアとの組み合わせが予め設定された組み合わせに該当する場合に、バイパス経路を通る候補ルートが選択され易くすることができる。これにより、当該特定のエリア同士を移動する物品搬送車による渋滞を生じ難くすることができ、物品搬送設備の全体での物品の搬送効率を高め易くなる。
【0077】
また、前記判定条件は、前記主経路のみを通るルートであって前記経路コストが最も低い前記候補ルートの少なくとも一部に前記物品搬送車の渋滞が生じている、又は、当該候補ルートにある前記物品搬送車の台数が予め定められた第3閾値以上である、という条件を含むと好適である。
【0078】
この構成によれば、主経路を通る候補ルートに渋滞が生じている又は渋滞が生じる可能性がある場合に、当該候補ルートが選択され難くなり、バイパス経路を通る候補ルートが選択され易くなるようにできる。したがって、物品搬送車の渋滞を生じ難くすることができ、物品搬送設備の全体での物品の搬送効率を高め易くなる。
【0079】
また、前記バイパス経路は、前記主経路が設定された高さである第1高さとは異なる第2高さに設置された別層経路と、前記第1高さと前記第2高さとの間で前記物品搬送車を昇降させる昇降装置と、を含み、
前記構造コストは、前記昇降装置により昇降されることによる前記物品搬送車の移動速度の低下を反映したコストを含むと好適である。
【0080】
一般的に、バイパス経路が物品搬送車を昇降させる昇降装置を含む場合、バイパス経路の経路コストが高くなり、主経路を通る候補ルートが選択され易くなる。しかし、上記のようなコスト調整処理を実行することで、バイパス経路が昇降装置を含む場合であっても、主経路とバイパス経路とで物品搬送車の台数の分散を効果的に図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示に係る技術は、規定の移動可能経路に沿って移動して物品を搬送する複数の物品搬送車と、当該物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
100 :物品搬送設備
1 :物品搬送車
1T :対象車
2 :移動可能経路
3 :主経路
4 :バイパス経路
5 :制御装置
8 :ステーション
9 :経路交差部
C :接続部
P1 :出発地点
P2 :目的地点
R :候補ルート
図1
図2
図3
図4
図5