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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153393
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】塗装管理システム及び塗装管理方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 13/22 20060101AFI20241022BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C25D13/22 304Z
C25D21/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067266
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 光
(72)【発明者】
【氏名】増子 亘
(72)【発明者】
【氏名】三石 善生
(57)【要約】
【課題】塗装設備の前処理液及び塗料の分析を適切なタイミングで実施できるようにする。
【解決手段】塗装設備へ投入された被加工物ごとの設計情報として、少なくとも被加工物の名称、種類、表面積、及び板厚の情報を格納する設計情報格納部21と、塗装設備に投入された複数の被加工物の、少なくとも投入日時、投入順番、及び表面積の情報を含む加工実績を格納する加工実績格納部22と、複数の被加工物の表面積の累計値が、予め設定したしきい値を超過した場合に、前処理液及び塗料に対する分析指示を生成する分析指示生成部32と、分析指示生成部32により分析指示が生成されたことを表示部5に表示する表示処理部31と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装設備へ投入された被加工物ごとの設計情報として、少なくとも被加工物の名称、種類、表面積、及び板厚の情報を格納する設計情報格納部と、
前記塗装設備に投入された複数の前記被加工物の、少なくとも投入日時、投入順番、及び表面積の情報を含む加工実績を格納する加工実績格納部と、
前記加工実績格納部に格納された複数の前記被加工物の表面積の累計値が、予め設定したしきい値を超過した場合に、前処理液及び塗料に対する分析指示を生成する分析指示生成部と、
前処理液及び塗料に対する前記分析指示が生成されたことを表示部に表示する表示処理部と、を備える
塗装管理システム。
【請求項2】
前記表示処理部は、前記加工実績格納部に格納された前記加工実績を参照し、任意の期間における前記被加工物の投入順番を前記表示部に表示する
請求項1に記載の塗装管理システム。
【請求項3】
前記表示処理部は、前記加工実績格納部に格納された前記加工実績を参照し、任意の期間における前記被加工物の合計加工数を前記表示部に表示する
請求項1に記載の塗装管理システム。
【請求項4】
前記表示処理部は、作業者により入力された前記前処理液及び前記塗料の更新の実績から算出される、更新間隔の平均値を基に次回更新予定を前記表示部に表示する
請求項1に記載の塗装管理システム。
【請求項5】
前記表示処理部は、一定のタクトタイムでサイクル動作する前記塗装設備に対して、前記被加工物の投入が間に合わずに、前記塗装設備内に発生した空状態の発生時刻を前記表示部に表示する
請求項1に記載の塗装管理システム。
【請求項6】
前記加工実績格納部は、前記加工実績として前記塗装設備に投入された前記被加工物の種類を更に格納し、
前記表示処理部は、前記空状態を発生させた前後に投入された前記被加工物の種類の組合せを前記表示部に表示する
請求項5に記載の塗装管理システム。
【請求項7】
少なくとも、前記前処理液及び前記塗料についての分析結果のデータ、並びに、塗装後の前記被加工物の膜厚、光沢、及び色についての塗膜品質を示すデータを格納する品質実績格納部と、
前記品質実績格納部に格納された塗装後の前記被加工物の塗膜品質を示すデータを基に、膜厚を左右する塗装時の印加電圧値と、設定変更指示とを生成し、前記塗装設備へ出力する塗装条件生成部と、
前記品質実績格納部に格納された塗装後の前記被加工物の塗膜品質を示すデータを基に、光沢及び色を左右する前記前処理液及び前記塗料の種類と、補給量と、補給指示を生成し、前記塗装設備へ出力する補給指示生成部と、を備える
請求項1に記載の塗装管理システム。
【請求項8】
塗装設備へ投入された被加工物ごとの設計情報として、少なくとも被加工物の名称、種類、表面積、及び板厚の情報を格納する設計情報格納部を備えた、塗装管理システムによる塗装管理方法であって、
前記塗装管理システムにより、前記塗装設備に投入された複数の前記被加工物の、少なくとも投入日時、投入順番、及び表面積の情報を含む加工実績を加工実績格納部に格納する処理と、
前記塗装管理システムにより、前記加工実績格納部に格納された複数の前記被加工物の表面積の累計値が、予め設定したしきい値を超過した場合に、前処理液及び塗料に対する分析指示を生成する処理と、
前記塗装管理システムにより、前処理液及び塗料に対する前記分析指示が生成されたことを表示部に表示する処理と、を含む
塗装管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理及び塗装工程を有する塗装設備を管理する塗装管理システム及び塗装管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装では、塗装前に被加工物に付着した油分や錆等の不純物の除去及び防食性を高める化成皮膜処理といった前処理を施した後に、塗装を施すのが一般的である。これら前処理及び塗装においては、前処理液や塗料を満たした各槽へ被加工物を浸漬、又は前処理液や塗料を被加工物に直接塗布する方法がある。
【0003】
各槽の前処理液及び塗料は適正な濃度や配合で管理することで品質を維持するが、そのためには前処理液及び塗料をサンプリングして分析することで判明した濃度を基に、補給する前処理液の薬品や塗料の選択及び補給量を算出する必要がある。しかし、この方法ではサンプリング、分析、補給量の算出といった作業に一定以上の経験を要することに加え、作業に時間が掛かってしまう。
【0004】
この課題に対して、例えば特許文献1に記載されている薬液管理システムは、予め登録しておいた時刻に又は手動操作により分析指示を出力することで、前処理液のサンプリング、分析、演算、補給、及びバルブの開度調整といった一連のプロセスを自動管理する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-125034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている薬液管理システムは、任意のタイミングで動作指令を行うため分析頻度が過剰又は不足する可能性がある。分析頻度が適切な頻度よりも少ない場合、複数の工程からなる前処理において被加工物に付着した前処理液の次工程への持ち込み量が増加することや、被加工物から除去した油分や錆等の不純物が前処理液に残存することから、前処理液や塗料の液状態の変化(汚染)を検知するのが遅れて、適切に前処理及び塗装の処理機能を維持することができない。また、反対に分析頻度が適切な頻度よりも多い場合、まだ前処理液や塗料の液状態が変化しておらず、分析頻度を下げることが可能な状況であるにも関わらず、分析薬品、水、及び電力などの過剰消費に繋がる。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、塗装設備の前処理液及び塗料の分析を適切なタイミングで実施できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の塗装管理システムは、塗装設備へ投入された被加工物ごとの設計情報として、少なくとも被加工物の名称、種類、表面積、及び板厚の情報を格納する設計情報格納部と、塗装設備に投入された複数の被加工物の、少なくとも投入日時、投入順番、及び表面積の情報を含む加工実績を格納する加工実績格納部と、この加工実績格納部に格納された複数の被加工物の表面積の累計値が、予め設定したしきい値を超過した場合に、前処理液及び塗料に対する分析指示を生成する分析指示生成部と、分析指示生成部により分析指示が生成されたことを表示部に表示する表示処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
少なくとも本発明の一態様によれば、塗装設備へ投入された被加工物の表面積の累計値に基づいて、前処理液及び塗料の分析指示を行うため、被加工物の処理量に応じて適切なタイミングで前処理液及び塗料の分析を実施することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る塗装管理システムの構成例を示す図である。
図2】図面データの構造の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による表示プログラムが生成した加工実績データのデータ構造の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による表示プログラムが生成した合計加工数データのデータ構造の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による表示プログラムにおいて、加工実績データ、及び合計加工数データを基に作成される画面の例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による表示プログラムにおいて、更新履歴データを基に作成される画面の例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態における品質管理基準値の一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態による塗膜品質(例えば、膜厚)と印加電圧値との相関関係、及び印加電圧値の一例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態による各塗料の補給量と光沢及び色との相関関係、並びに補給前後の塗膜品質(品質実績値)の一例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態による被加工物の表面積の累積値と補給量との関係の一例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る塗装管理システムによる塗装管理処理の手順例を示すフローチャート(1)である。
図12】本発明の一実施形態に係る塗装管理システムによる塗装管理処理の手順例を示すフローチャート(2)である。
図13】本発明の一実施形態に係る塗装管理システムによる更新履歴の生成及び表示処理の手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において、同一の構成要素又は実質的に同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0012】
<第1の実施形態>
まず、本発明の一実施形態に係る塗装管理システムの構成について、図1を参照して説明する。
【0013】
[塗装管理システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る塗装管理システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る塗装管理システム100は、塗装設備10に接続されて塗装設備10を管理及び制御するシステムである。
【0014】
塗装設備10は、電着塗装装置であり、投入された被加工物に前処理を施した後、塗装工程、及び乾燥工程を実施する。前処理及び塗装工程では、被加工物が設置台(いわゆるプラテン)に設置された状態で搬送され、被加工物が設置台ごと前処理液及び塗料が貯留された槽に浸漬される。一般的に、前処理では、脱脂、除錆、皮膜化成、水洗といった複数の処理が行われる。
【0015】
塗装管理システム100は、主な機能として格納部20と演算部30を備えている。格納部20は、図面格納部21と、加工実績格納部22と、品質実績格納部23を備えている。演算部30は、表示プログラム31と、分析指示生成部32と、塗装条件生成部33と、補給指示生成部34を備えている。
【0016】
図面格納部21(設計情報格納部の一例)は、全ての被加工物の設計情報である図面データを予め格納しておく領域である。また、図面格納部21には、RFID(Radio Frequency Identifire)リーダ4により読み込まれた情報(加工実績に利用)が格納される。以下では、図2を用いて図面データに含まれるデータの構造について説明する。
【0017】
[図面データのプロパティデータ]
図2は、図面データが3次元CAD(Computer-Aided Design)データである場合のデータ構造の一例を示す図である。3次元CADデータには、プロパティデータ200のように、被加工物の名称、種類や表面積、板厚などの被加工物に関する情報が含まれている。図2では、一例として、名称が“被加工物(20)”である被加工物は、種類が“プレート”、表面積が“100cm”、板厚が“1.0mm”である。
【0018】
加工実績格納部22は、被加工物の加工実績に関するデータを格納する。加工実績格納部22は、表示プログラム31内のプログラムによって、図面格納部21に格納された3次元CADデータの中から抽出された、図3に示す加工実績データ300及び図4に示す合計加工数データ400を受け取って格納する。
【0019】
[加工実績データ]
図3は、表示プログラム31が生成した加工実績データ300のデータ構造の一例を示す図である。加工実績データ300は、図2に示した図面データ内の各被加工物のプロパティデータ(本例では、被加工物名称、種類、表面積)、投入日時、及び投入順番の各情報を含む。
【0020】
図3では、ある年の投入日時“4月1日9時11分34秒”における加工実績として、被加工物名称が“被加工物(20)”、種類が“プレート”、表面積が“100cm”の例が示されている。この被加工物“被加工物(20)”の4月1日における投入順番は“1”である。また、同年の投入日時“4月1日10時27分5秒”における加工実績として、被加工物名称が“空”、種類及び表面積は加工実績なしを表す“-”の例が示されている。“空”は後述する空状態を指す。この被加工物名称が“空”の4月1日における投入順番は“3”である。実際には、被加工物は段取工程に間に合わず塗装設備10に投入されていないが、被加工物を載置されていない設置台が塗装ラインを搬送されるため、投入順番をインクリメント処理する。そして、翌日の4月2日になると新たに投入順番が計算されて、投入日時が“4月2日9時4分19秒”のときの投入操作が、4月2日における投入順番“1”となる。
【0021】
一般的に、前処理及び塗装で使用する設置台は、被加工物を吊り下げたり載置したりできるような構造を持つ。大きな被加工物は設置台に載置され、小さな被加工物の場合は複数の被加工物が設置台に備えられたバーに吊り下げられる。このような被加工物を設置台に設置する段取工程では、設置する被加工物の数量が多いほど時間がかかる。被加工物を乗せた設置台は乾燥工程まで一定のタクトタイムで流れる(サイクル動作により各槽に搬送される)ので、段取工程がタクトタイムに間に合わない場合には、被加工物が設置されていない状態で設置台が搬送される状態(以下「空状態」)が発生する。すなわち、空状態は、一定のタクトタイムで加工を行う設備において被加工物の投入がタクトタイムに対して間に合わず、設備内に被加工物が投入されない状況が発生した状態を示している。
【0022】
[合計加工数データ]
図4は、表示プログラム31が生成した合計加工数データ400のデータ構造の一例を示す図である。合計加工数データ400は、各投入日における被加工物の種類別の合計加工数の情報を含む。例えば、ある年の投入日“4月1日”の合計加工数は、プレートが“30”枚、ドアが“25”枚、フレームが“45”枚である。
【0023】
表示プログラム31(表示処理部の一例)は、投入実績及び加工実績に対してインクリメント処理などの加算処理を行うことで、図3及び図4の投入順番及び合計加工数を演算する。また、投入日時は、表示プログラム31内で保持する、後述するRFIDリーダ4で作業指導票3の情報を読み取り時の時刻情報を用いる。
【0024】
品質実績格納部23は、前処理液及び塗料についての分析結果を分析結果出力部14から受け取る。この分析結果は、前処理液及び塗料の濃度や汚染度を示す品質記録である。例えば、前処理や塗装に不具合が発生した際に、そのときの処理液や塗料の品質記録(分析結果)を振り返り、不具合が発生した原因を分析することに活用することができる。分析結果には、例えば、前処理液及び塗料の濃度、薬品の濃度、アルカリ性の強さ、汚染度(錆や不純物による汚染の状態)などが含まれていてもよい。
【0025】
また、品質実績格納部23は、検査計器2が塗装工程を経た被加工物を測定して得られた膜厚、光沢、及び色等についての値を、品質実績値として格納する。また、品質実績格納部23は、前処理液及び塗料の汚染及び劣化が進み、前処理液及び塗料の定期更新が実施された際に、コンソール1(操作端末)を使用して入力された工程名称、更新履歴(更新日時)、及び更新量を、図6に示す更新履歴データ600として格納する。なお、図6では、前処理液及び塗料の更新量の記載を省略している。
【0026】
表示プログラム31(表示処理部の一例)は、加工実績格納部22に格納された加工実績データ300、合計加工数データ400、及び品質実績格納部23に格納された更新履歴データ600を受け取って、表示部5に情報を表示する処理を実行するプログラムである。表示部5は、液晶パネル等の表示装置である。
【0027】
[加工実績画面]
図5は、表示プログラム31において、加工実績データ300及び合計加工数データ400を基に作成される画面の例を示す図である。加工実績画面500は、加工実績表示エリア510、合計加工数表示エリア520、及び空状態表示エリア530を有する。
【0028】
例えば、図5に示すように、表示プログラム31は、合計加工数データ400を基に、任意の期間に投入された被加工物の種類ごとの個数をグラフで表示する(合計加工数表示エリア520)。図5には、4月1日の合計加工数100個の内訳は、プレートが30個、フレームが45個、ドアが25個である。合計加工数の集計期間は、1日でもよいし複数日でもよい。
【0029】
また、表示プログラム31は、加工実績データ300を基に、被加工物の塗装設備10への投入日ごとの投入順番を、被加工物の種類ごとに色分けして時系列的に表示する(加工実績表示エリア510)。図5には、4月1日の投入順番は、1番目がプレート、2番目がドア、3番目が空、4番目がプレート、5番目がドア、6番目がフレームである例が示されている。また、翌4月2日の投入順番は、1番目がドア、2番目もドア、3番目から5番目までがフレーム、6番目がプレートである。図5では、投入順番を表示する対象期間として1か月(30日)の例が示されているが、この例に限らない。
【0030】
さらに、表示プログラム31は、空状態の発生時刻(図中「空発生時刻」)、投入順番、及び空状態発生の直前に投入された被加工物の種類(図中「投入直前」)とその直後に投入された被加工物の種類(図中「投入直後」)の組合せを表示する(空状態表示エリア530)。図5では、4月1日に発生した空状態に関する情報として、投入順番が“3番目”、投入直前の被加工物が“ドア”、投入直後の被加工物が“プレート”である例が示されている。
【0031】
このように、表示プログラム31は、塗装設備10に対する被加工物の投入が間に合わずに、塗装設備10内に発生した空状態の発生時刻を表示部5に表示する。加工実績格納部22は、加工実績として塗装設備10に投入された被加工物の種類を格納しており、空状態を発生させた前後に投入された被加工物の種類の組合せを表示部5に表示する。
【0032】
加工実績画面500(加工実績表示エリア510)の例を示したように、加工実績データ300の情報を表示することで、作業者は、塗装工程(前処理を含む)の前工程である段取工程の遅延要因の分析に活用することができる。なお、コンピューターが、ソフトウェアを実行して上述の加工実績データ300を段取工程の遅延要因の分析に利用してもよいことは勿論である。
【0033】
また、コンソール1は、更新履歴データ600(後述する図6参照)における更新日の情報から前処理液及び塗料の更新間隔の平均値(平均更新間隔)を算出し、品質実績格納部23に格納する。表示プログラム31は、品質実績格納部23に格納された更新履歴データ600の情報を、図6に示すように表示する。この表示機能により、作業者は、前処理液及び塗料に関して、次回の定期更新のおおよその時期を把握することができる。なお、更新履歴データ600の内容を、加工実績画面500(図5参照)に表示するようにしてもよい。
【0034】
[更新履歴データ]
図6は、表示プログラム31により作成される更新履歴データ600の例を示す図である。更新履歴データ600は、工程名称、平均更新間隔、次回予測、及び更新履歴の各項目を有する。
【0035】
「工程名称」には、被加工物に対して実施した工程(前処理、塗装など)の名称が格納される。
「平均更新間隔」には、前処理液及び塗料の更新を実施した更新日から次の更新日までの間隔の平均値[月]が格納される。
「次回予測」には、次に前処理液及び塗料の更新が実施される時期(例えば年月)が格納される。すなわち、次回予測は、次の定期更新時期を示す情報である。
「更新履歴」には、過去に実施した前処理液及び塗料の更新の履歴(図6では更新を実施した年月)が格納される。
【0036】
図6には、更新履歴の一例として、工程名称“前処理(1)”で使用する薬品の更新時期が“22年7月”、“22年11月”、“23年3月”及び“23年7月”、平均更新間隔が“4か月”、次回予想が“23年11月”である例が示されている。
【0037】
図1に示した塗装管理システム100の構成についての説明に戻る。
分析指示生成部32は、予め登録しておいた表面積のしきい値に対して、加工実績データ300に含まれる投入された被加工物の表面積値を随時累計し、累計の表面積値がしきい値を超過したかどうかの比較処理を行い、超過した場合に分析指示を生成する。本実施形態における分析指示の生成では、加工実績データ300に、少なくとも投入順番と表面積の情報が含まれていればよい。また、表面積の累計値に対するしきい値は、例えば、分析指示生成部32の機能を実現するプログラムに記述する、又は、メモリもしくはマイクロコンピュータ等に格納することで用意しておくことができる。
【0038】
塗装条件生成部33は、塗装設備10において被加工物に塗装を施す際の塗装条件を生成する。塗装条件生成部33は、品質実績格納部23に格納された膜厚、光沢、及び色といった塗膜の品質実績値を受け取り、図7に示すように予め品質実績格納部23に登録しておいた品質管理基準値700との比較処理を行い、塗装条件である印加電圧値及び設定変更指示を生成する。
【0039】
図7には、品質管理基準値700として、膜厚、光沢、及び色の基準値の例が示されている。例えば、膜厚の基準値は“30μm以上”、光沢の基準値は“60度G40±5”、及び色の基準値として色差ΔEが1.0以下(ΔE≦1.0)であることが登録されている。“60度G40±5”は、入射角60度のときにGloss値が40±5が合格範囲という意味である。Glossは光沢度を表す指標である。
【0040】
[塗膜品質(膜厚)と印加電圧値との相関関係]
印加電圧値の生成は、例えば、図8のように塗膜品質(例えば、膜厚)と印加電圧値の相関関係を予め記憶しておくことで、塗装後の被加工物の膜厚値から印加電圧値810のように生成することができる。
【0041】
図8は、塗膜品質(例えば、膜厚)と印加電圧値との相関関係800、及び印加電圧値810の一例を示す図である。印加電圧値は、塗装条件制御部12が電極17に印加する電圧の値である。
【0042】
図8左側に、薬品配合率ごとの膜厚と印加電圧値との相関関係800を示すグラフの例が示されている。縦軸は膜厚[μm]、横軸は印加電圧[V]を表す。薬品配合率として、3.0[%]、2.5[%]、及び2.0[%]の例が示されている。薬品配合率が高い方が、同じ印加電圧値でも塗膜が被加工物につきやすくなる傾向がある。
【0043】
図8右側に、生成された印加電圧値810の例が示されている。薬品配合率が“3.0”[%]の場合、現在の印加電圧値が“180”[V]であると、膜厚が20[μm]にしかならず品質管理基準(30μm以上)に満たない。そこで、薬品配合率が同じ“3.0”[%]の条件で、印加電圧値を“190”[V]に上げることで、品質管理基準(30μm以上)を満たす膜厚の塗膜を形成することができる。
【0044】
また、塗装条件生成部33は、品質実績格納部23に格納された分析結果を受け取り、塗料に含まれる薬品(塗料以外の塗装を補助する材料)の配合率と、この配合率によって変化する膜厚との相関関係を印加電圧値の計算に反映してもよい。また、加工実績格納部22に格納された被加工物の表面積を印加電圧値の計算に含めてもよい。一般に薬品配合率が低い程、及び被加工物の表面積が大きい程、塗装に必要な印加電圧は高くなる。
【0045】
補給指示生成部34は、品質実績格納部23に格納された膜厚、光沢、色といった塗膜の品質実績値を受け取り、図7に示した品質管理基準値700との比較処理を行って、補給する塗料及び薬品の種類と補給量を算出し補給指示を生成する。この補給量の生成は、例えば、図9のように各塗料及び各薬品における補給量と、光沢及び色との相関関係を予め補給指示生成部34に記憶しておくことで、塗装後の被加工物の光沢及び色から、補給する塗料及び薬品の種類と量を、補給量930のように生成できる。
【0046】
[色味と補給量の相関関係、光沢値と補給量の相関関係]
図9は、各塗料の補給量と光沢及び色との相関関係、並びに補給前後の塗膜品質(品質実績値)の一例を示す図である。ここでは、塗料の例を示しているが、薬品についても考え方は同じである。図9左側上に赤方向と黄方向の色味と補給量[kg]との相関関係910の例、図9左側下に光沢値と補給量[kg]との相関関係920の例、図9右側に区分(色、光沢)ごとの、各塗料の補給量[kg]と品質実績値の例が示されている。
【0047】
塗料が満たされた槽に被加工物を浸漬して塗装する設備において、槽内は基本色塗料で満たされている。この基本色塗料が貯留された槽に、日々生産を重ねるごとに消費した分の基本色塗料を補給する。しかし、槽内の基本色塗料は、徐々に基本色から明るくなったり暗くなったり色味が僅かに変化する。槽内の基本色塗料の色味を目標の基本色に戻すために、基本色以外の原色塗料(赤、黄、黒等)を適宜補給し色味を調整する。
【0048】
図9の例では、塗膜の現在の色味“ΔE=1.1”は、品質管理基準値“ΔE≦1.0”を0.1超えており、品質管理基準を満たしていない。そこで、赤方向と黄方向の色味と補給量との相関関係910に基づいて、赤色塗料2[kg]、黄色塗料1[kg]を補給することで、現在の色味“ΔE=1.1”から合格範囲内となる目標の色味“ΔE=0.6”に変化させることができる。
【0049】
また、塗膜の現在の光沢値は、入射角60度の場合でGloss値30(G30)であり、品質管理基準値のG40を10下回っているため品質管理基準を満たしていない。そこで、光沢値と補給量との相関関係920に基づいて、光沢調整用塗料を15[kg]補給することで、Gloss値を現在の“30”から合格範囲内の“40”に変化させることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、光沢調整用塗料は塗料の一種として扱っているが、塗膜の品質に影響を与える薬品として、図示しないシンナーや酢酸などを補給する。
【0051】
また、補給指示生成部34は、分析指示生成部32において累計した表面積値を受け取り、塗料の消費量すなわち補給量を図10のように算出して、通常の塗装加工で消費する分の基本色塗料の補給量を補給量1010のように生成できる。
【0052】
[表面積と補給量の関係]
図10は、被加工物の表面積の累積値と補給量との関係の一例を示す図である。図10左側に累積表面積と補給量の関係1000、図10右側に基本色塗料の補給量[kg]と累積表面積値[Mcm]の例が示されている。「M」は100万の意味である。図10の例では、累積表面積値が100Mcmであるので、累積表面積と補給量の関係1000に基づいて、基本色塗料の補給量は10[kg]と求められる。
【0053】
以上のように、図9及び図10に示した各相関関係を用いて各塗料(薬品)の補給量を決定することで、生産で消費した分の塗料の補給と色調整のための補給の両方を行うことができる。
【0054】
[塗装設備]
ここで、塗装設備10の構造について説明する。塗装設備10は、図1に示すように、分析制御部11と、塗装条件制御部12と、補給制御部13と、分析結果出力部14と、電極17と、前処理液サンプリング用配管15と、塗料サンプリング用配管16と、塗料タンク18と、薬品タンク19を備えている。
【0055】
分析制御部11は、分析指示生成部32で生成された分析指示を受け取り、塗装設備10の前処理液サンプリング用配管15と塗料サンプリング用配管16から各液をサンプリングし分析制御部11にて分析動作を行う。この分析動作で得られた分析結果は、分析結果出力部14にて品質実績格納部23に送られ、品質実績の一つとして格納する。
【0056】
塗装条件制御部12は、塗装条件生成部33で生成された設定変更指示及び印加電圧値を受け取り、塗装設備10は塗装条件制御部に格納された印加電圧値の設定値を変更して、塗装する際に電極17に設定された電圧値を印加することで塗装を行う。
【0057】
補給制御部13は、補給指示生成部34で生成された、塗料及び薬品の補給量を受け取り、塗料タンク18と薬品タンク19から前処理及び塗装工程において塗料及び薬品の補給を行う。補給量の実績値に関しては、流量計で検知、又は投入開始からの経過時間から換算した補給量として算出することができ、これらを品質実績格納部23に格納することで塗料及び薬品の補給量を記録してもよい。
【0058】
塗料タンク18及び薬品タンク19はそれぞれ、図示しない複数のタンクで構成される。すなわち、塗料及び薬品ごとにタンクが用意されている。例えば、塗料タンク18としては、基本色塗料タンク、赤色塗料タンク、黄色塗料タンク、及び光沢調整用タンクなどがある。また、薬品タンク19としては、脱脂用薬品タンク、除錆用薬品タンク、皮膜化成用薬品タンク、水洗用の水タンク、シンナータンク、及び酢酸タンクなどがある。
【0059】
以下、本実施形態に係る塗装管理システム100の動作について、図11図12、及び図13に示すフローチャートを用いて説明する。
【0060】
[演算部のハードウェア構成]
ここでは、図1に示した演算部30は、ハードウェアとしてCPUやMPU等の、図示しない処理装置とメモリを用いて構成される。演算部30の処理装置がメモリに格納されたコンピュータープログラムを実行することにより、表示プログラム31、分析指示生成部32、塗装条件生成部33、及び補給指示生成部34の機能がソフトウェアによって実現される。コンピュータープログラムは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの、不揮発性ストレージに格納されている。ソフトウェア実行時に、対象のコンピュータープログラムが不揮発性ストレージからメモリに読み込まれる。格納部20は不揮発性ストレージで構成されていてもよい。また、コンピュータープログラムが図示しないROMに格納されていてもよい。
【0061】
ただし、演算部30の機能の一部又は全部を、集積回路などのハードウェアによって実現することも可能である。ハードウェアによって実現する場合には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICやPLC(Programmable Logic Controller)を用いることができる。演算部30にプログラマブルICやPLC等のハードウェアを用い、少なくとも表示プログラム31、分析指示生成部32、塗装条件生成部33、及び補給指示生成部34の各機能の一部又は全部の動作を実現するように回路設計を行えばよい。
【0062】
図1及び図2を用いて説明したように、塗装加工を行う加工対象の設計情報は、3次元CADソフトウェアにて作成された3次元CADデータとして、図面格納部21に保存されている。
【0063】
[塗装管理処理の手順]
図11は、塗装管理システム100による塗装管理処理の手順例を示すフローチャート(1)である。
図12は、塗装管理システム100による塗装管理処理の手順例を示すフローチャート(2)である。
【0064】
作業者は塗装設備10に被加工物を投入する際に、作業指導票3に書き込まれた情報をRFIDリーダ4で読み込む。例えば、作業指導票3は非接触ICカードであり、ICチップ内の不揮発性メモリに加工対象を特定する図面番号や型式といった情報が記録されている。なお、非接触ICカードからなる作業指導票3とRFIDリーダ4を用いる例の他に、バーコード又は2次元コードで書き込まれた作業指導票3の情報をリーダで読み込む等の仕組みでもよい。そして、ステップS1101において、表示プログラム31は、RFIDリーダ4で読み込まれた作業指導票3の情報を基に、図面格納部21に格納されている被加工物の3次元CADデータを参照する。このとき、表示プログラム31は、RFIDリーダ4から作業指導票3の読み取り日時(投入日時)を取得する。
【0065】
次いで、ステップS1102において、表示プログラム31が、3次元CADデータから得られた被加工物の種類、表面積の情報と、表示プログラム31にて計算した投入順番と、表示プログラム31にて保持する投入日時(読み取り日時)の時刻情報とを併せて、加工実績格納部22に格納することで図3に示す加工実績データ300が生成される。
【0066】
次いで、ステップS1103において、表示プログラム31が合計加工数を計算し、その合計加工数を加工実績格納部22に格納することで図4に示す合計加工数データ400が生成される。
【0067】
次いで、ステップS1104において、表示プログラム31は、加工実績格納部22に格納された、図3に示す加工実績データ300、及び図4に示す合計加工数データ400の情報を参照して、図5に示す加工実績画面500を生成して表示部5に表示する。
【0068】
次いで、ステップS1105において、分析指示生成部32にて加工実績格納部22を参照して、加工対象の表面積を累計する。
【0069】
次いで、ステップS1106において、分析指示生成部32が、被加工物の表面積の累計値としきい値を比較し、累計値がしきい値を超過しているか否かを判定する。
【0070】
ここで、累計値がしきい値を超過していた場合(S1106のYES判定)は、ステップS1107において、分析指示生成部32が分析指示を生成し、塗装設備10の分析制御部11へ分析指示を通知する。なお、このとき、表示プログラム31は、分析指示生成部32から塗装設備10へ分析指示が通知されたことを、表示部5に表示するようにしてもよい。これにより、作業者は、分析が必要な程度に被加工物の処理量が累積したことを認識するとともに、前処理液又は塗料の液状態が変化したことを推測することができる。
【0071】
次いで、ステップS1108において、分析指示を受け取った塗装設備10の分析制御部11は、前処理液及び塗料のそれぞれを採取して分析する一連の分析動作を行う。
【0072】
次いで、分析結果をステップS1109において、分析制御部11の分析動作により得られた前処理液及び塗料の分析結果を、分析結果出力部14から品質実績格納部23に格納する。
【0073】
次いで、ステップS1110において、分析指示生成部32は、該分析指示生成部32内の表面積の累計値をリセットして、図12に示すステップS1200に進む。また、ステップS1106において表面積の累計値がしきい値を超過していない場合(S1106のNO判定)は、ステップS1106から図12に示すステップS1200に進む。
【0074】
次に、ステップS1200において、塗装条件生成部33は、品質実績格納部23に格納された塗装完了後の被加工物の膜厚値を参照する。
【0075】
次いで、ステップS1201において、塗装条件生成部33は、品質実績格納部23の被加工物の膜厚値を、品質実績格納部23に格納しておいた品質管理基準値700の膜厚値と比較し、被加工物の膜厚値が品質管理基準から逸脱しているか否かを判定する。例えば、被加工物の膜厚値が品質管理基準を含む所定の範囲内(例えば、品質管理基準の±10%の範囲内等)にあれば、品質管理基準から逸脱していないと判断することができる。
【0076】
そして、被加工物の膜厚値が品質管理基準から逸脱していた場合には(ステップS1201のYES判定)、ステップS1202において、塗装条件生成部33は、該塗装条件生成部33に登録しておいた膜厚と印加電圧値との相関関係(図8参照)のデータを用いて、印加電圧値及び設定変更指示を生成する。
【0077】
次いで、ステップS1203において、塗装設備10の塗装条件制御部12は、塗装条件生成部33から新たな印加電圧値と設定変更指示を受け取り、設定電圧をその印加電圧値に変更する。ステップS1203の処理後、ステップS1204へ進む。
【0078】
ステップS1201において被加工物の膜厚値が品質管理基準から逸脱していない場合には(ステップS1201のNO判定)、ステップS1201からステップS1204に進む。
【0079】
ステップS1204において、ステップS1200と同様に、補給指示生成部34は、品質実績格納部23に格納された塗装完了後の被加工物の光沢及び色の値を参照する。
【0080】
次いで、ステップS1205において、補給指示生成部34は、品質実績格納部23の被加工物の光沢及び色の値を、品質実績格納部23に格納しておいた品質管理基準値700の光沢及び色の値と比較し、被加工物の光沢及び色の値が品質管理基準から逸脱しているかどうかを判定する。
【0081】
そして、被加工物の光沢及び色の値が品質管理基準から逸脱していた場合には(ステップS1205のYES判定)、ステップS1206において、補給指示生成部34は、該補給指示生成部34に登録しておいた各塗料の補給量と光沢及び色との相関関係(図9及び図10参照)のデータを用いて、補給する塗料(及び薬品)の種類と補給量と補給指示を生成する。
【0082】
次いで、ステップS1207において、塗装設備10の補給制御部13は、補給指示生成部34から補給する塗料(及び薬品)の種類と補給量と補給指示を受け取り、塗料タンク18及び薬品タンク19の塗料及び薬品を、前処理液及び塗料の槽へ補給する。
【0083】
次いで、ステップS1208において、補給制御部13は、塗料及び薬品の補給量の実績値を品質実績格納部23に格納する。
【0084】
ステップS1205において被加工物の光沢及び色の値が品質管理基準から逸脱していない場合には(ステップS1205のNO判定)、本処理を終了する。
【0085】
[更新履歴の生成及び表示の手順]
次に、塗装管理システム100による更新履歴の生成及び表示処理の手順について、図13を参照して説明する。
【0086】
図13は、塗装管理システム100による更新履歴の生成及び表示処理の手順例を示す図である。ステップS1300において、前処理液及び塗料の定期更新を実施した際に、作業者がコンソール1を操作して更新日時と更新量を入力し、品質実績格納部23に格納する。この入力作業は、少なくとも前処理液及び塗料のいずれか一方を更新したときに行うものとする。
【0087】
次いで、ステップS1301において、コンソール1において前処理液及び塗料の定期更新の平均間隔(平均更新間隔)を算出して品質実績格納部23に格納する。コンソール1は、塗装管理システム100と同様のハードウェア構成を備えるものとする。すなわち、コンソール1は、CPUやMPU等の処理装置、メモリ、コンピュータープログラムを格納する不揮発性ストレージ、及び表示部を備えるものとする。なお、平均更新間隔を表示プログラム31で計算するように構成してもよい。
【0088】
次いで、ステップS1302において、表示プログラム31は、品質実績格納部23を参照して、図6に示す更新履歴データ600の内容を含む画面を生成して表示部5に表示する。
【0089】
以上のとおり、本実施形態に係る塗装管理システム100は、塗装設備へ投入された被加工物ごとの設計情報として、少なくとも被加工物の名称、種類、表面積、及び板厚の情報を格納する設計情報格納部(図面格納部21)と、塗装設備に投入された複数の被加工物の、少なくとも投入日時、投入順番、及び表面積の情報を含む加工実績を格納する加工実績格納部と、この加工実績格納部に格納された複数の被加工物の表面積の累計値が、予め設定したしきい値を超過した場合に、前処理液及び塗料に対する分析指示を生成する分析指示生成部と、分析指示生成部により分析指示が生成されたことを表示部に表示する表示処理部(表示プログラム31)と、を備える。
【0090】
上述した本実施形態に係る塗装管理システム100によれば、塗装設備へ投入された被加工物の表面積の累計値を基に、前処理液及び塗料の分析指示を行うため、被加工物の処理量に応じて適切なタイミングで前処理液及び塗料の分析を実施することができる。
【0091】
実際の前処理液や塗料は、被加工物の処理量(数量)によって液状態が変化する。本実施形態では、塗装設備へ投入された被加工物の表面積の累積値(図10参照)に基づいて分析指示を行うことで、前処理液や塗料の液状態が変化する適切なタイミングで前処理液及び塗料の分析を実施することができる。これにより、被加工物の処理量が多い場合であっても、適切なタイミングで前処理液及び塗料を分析し、適切に前処理及び塗装の処理機能を維持することができる。反対に、被加工物の処理量が少ない場合には、前処理液及び塗料の分析を実施するタイミングを遅らせることができるため、分析薬品、水、及び電力などの節約に寄与することができる。
【0092】
さらに、本実施形態に係る塗装管理システム100では、表示プログラム31が、作業者により入力された前処理液及び塗料の更新の実績から算出される、更新間隔の平均値を基に次回更新予定を表示部に表示する。
【0093】
例えば、特許文献1に記載の薬液管理システムは、前処理液に薬品を適宜補給して濃度を自動管理する。しかし、前処理液を貯留した槽では被加工物の表面から除去した不純物の含有量が徐々に増加して汚染が進むため、適切な濃度管理のみでは前処理機能を維持することは難しい。この場合、前処理液の一部又は全量を定期更新する必要があるが、槽容量の大きい設備においては更新量が多く工事規模が大きくなる。本実施形態に係る塗装管理システム100は、前処理液及び塗料の更新履歴(図6参照)に基づいて平均更新間隔を計算し事前に更新予定を把握することができる。それゆえ、作業者は、事前に定期更新の際の作業計画や準備を行うことができる。
【0094】
また、本実施形態に係る塗装管理システム100は、少なくとも、前処理液及び塗料についての分析結果のデータ、並びに、塗装後の被加工物の膜厚、光沢、及び色についての塗膜品質を示すデータを格納する品質実績格納部と、この品質実績格納部に格納された塗装後の被加工物の塗膜品質を示すデータを基に、膜厚を左右する塗装時の印加電圧値と、設定変更指示とを生成し、塗装設備へ出力する塗装条件生成部と、この品質実績格納部に格納された塗装後の被加工物の塗膜品質を示すデータを基に、光沢及び色を左右する前処理液及び塗料の種類と、補給量と、補給指示を生成し、塗装設備へ出力する補給指示生成部と、を備える。
【0095】
上述した本実施形態では、塗装後の被加工物の塗膜品質の実績値(品質実績値)を基に、演算部において塗装条件(印加電圧値)の生成、並びに、塗料又は薬品の補給指示ができるため、人手の判断を介さず塗装設備の品質管理が可能となる。
【0096】
塗装加工では、被加工物のサイズや形状によって塗膜の付き方に個体差が生じるため、印加電圧値などの塗装条件を調整する必要がある。しかし、この塗装条件の設定変更には塗装の都度対応する必要があった。そのため、塗装条件に関して、塗装設備に投入された被加工物ごとに塗装条件を予め登録しておくことが考えられる。しかし、多品種少量生産などでは一度に異なる複数の種類の被加工物を設置台に設置することがあり、その組合せが無数に存在する生産形態では組合せを網羅して塗装条件を最適化することは難しい。また、被加工物への塗膜の付き方は前処理液や塗料の液状態によって変化する。これに対して、本実施形態では、塗装後の被加工物の膜厚と塗装条件の相関関係を基に、品質管理基準を満たすように塗装条件を随時かつ適切に変更することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る塗装管理システム100は、塗装後の被加工物の色や光沢といった品質実績値と、塗料又は薬品ごとの補給量の相関関係を基に、品質管理基準を満たすように塗料や薬品の補給量を自動的に計算することができる。さらにまた、本実施形態では、基本色塗料について、表面積の累積値と基本色塗料の補給量との関係を基に、消費量分の基本色塗料の補給量を自動的に計算することができる。
【0098】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにその構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成要素の追加又は置換、削除をすることも可能である。
【0099】
また、上述した実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成要素が相互に接続されていると考えてもよい。
【0100】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的、あるいは個別に実行される処理(例えば、オブジェクトによる処理)をも含むものである。また、時系列的な処理を記述する処理ステップについては、処理結果に影響を及ぼさない範囲で、処理順序を変更してもよい。
【符号の説明】
【0101】
10…塗装設備、 11…分析制御部、 12…塗装条件制御部、 13…補給制御部、 14…分析結果出力部、 15…前処理液サンプリング用配管、 16…塗料サンプリング用配管、 17…電極、 18…塗料タンク、 19…薬品タンク、 20…格納部、 21…図面格納部、 22…加工実績格納部、 23…品質実績格納部、 30…演算部、 31…表示プログラム、 32…分析指示生成部、 33…塗装条件生成部、 34…補給指示生成部、 100…塗装管理システム、 200…プロパティデータ(図面データの例)、 300…加工実績データ、 400…合計加工数データ、 500…加工実績画面、 510…加工実績表示エリア、 520…合計加工数表示エリア、 530…空状態表示エリア、 600…更新履歴データ、 700…品質管理基準値、 800…印加電圧値、 900…補給量、 1000…補給量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13