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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153396
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】繊維機械及び連結部材
(51)【国際特許分類】
   D01H 11/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
D01H11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067270
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】澤田 晴稔
(72)【発明者】
【氏名】中原 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】宮川 敬史
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056BG52
(57)【要約】
【課題】ブロアが発生させた空気流をダクトを介して複数の巻取ユニットに作用させる繊維機械において、ダクト内の圧力損失を低減する構成を提供する。
【解決手段】紡績機は、複数の紡績ユニットと、ダクト30と、ブロアと、複数の第1ユニット配管(ユニット配管31,32)と、空気流変向部83と、を備える。紡績ユニットは、一方向に並べて配置され、糸を巻き取る。ダクト30は、紡績ユニットの並列方向と同じ方向であるダクト長手方向に沿って配置される。ブロアは、ダクト30の内部の空気を吸引してダクト30に空気流を発生させる。複数の第1ユニット配管は、複数の紡績ユニットとダクト30との間にそれぞれ配置され、ダクト30の空気流を紡績ユニットに作用させる。空気流変向部83は、少なくとも1つの第1ユニット配管からダクト30への合流箇所であって、かつ、ダクト30の内部に位置し、ダクト30における空気流の下流側を向く。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に並べて配置され、糸を巻き取る複数の巻取ユニットと、
前記巻取ユニットの並列方向と同じ方向であるダクト長手方向に沿って配置されたダクトと、
前記ダクトの内部の空気を吸引して当該ダクトに空気流を発生させるブロアと、
複数の前記巻取ユニットと前記ダクトとの間にそれぞれ配置され、前記ダクトの空気流を前記巻取ユニットに作用させる複数の第1ユニット配管と、
少なくとも1つの前記第1ユニット配管から前記ダクトへの合流箇所であって、かつ、前記ダクトの内部に位置し、前記ダクトにおける前記空気流の下流側を向く空気流変向部と、
を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維機械であって、
少なくとも1つの前記第1ユニット配管は、当該第1ユニット配管の長手方向と前記ダクト長手方向が直交するように、前記ダクトに接続されることを特徴とする繊維機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維機械であって、
前記ダクトのうち前記ダクト長手方向の中央よりも、前記空気流の上流側に接続される少なくとも1つの前記第1ユニット配管から前記ダクトへの前記合流箇所に、前記空気流変向部が配置されることを特徴とする繊維機械。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
全ての前記第1ユニット配管から前記ダクトへの前記合流箇所に、前記空気流変向部が配置されることを特徴とする繊維機械。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記ダクト長手方向と、前記合流箇所における前記第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、
前記ダクト長手方向に直交する方向に対して、前記空気流変向部がなす角が20°以上90°以下であることを特徴とする繊維機械。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記ダクト長手方向と、前記合流箇所における前記第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、
前記空気流変向部の全体が、前記ダクトの内寸の中央、又は当該中央よりも前記第1ユニット配管の取付位置に近い領域に位置することを特徴とする繊維機械。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維機械であって、
前記ダクト長手方向と、前記合流箇所における前記第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、
前記空気流変向部は、前記ダクトの内寸を4等分した領域のうち、前記第1ユニット配管の取付位置に最も近い領域に位置することを特徴とする繊維機械。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記空気流変向部を含み、前記ダクトに着脱可能に取り付けられる連結部材を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項9】
請求項8に記載の繊維機械であって、
前記連結部材は、前記ダクトの開口に取り付けられる取付部を備え、
前記連結部材を前記ダクトに取り付けた状態において、前記取付部の外寸は、前記ダクトの前記開口の内寸以下であることを特徴とする繊維機械。
【請求項10】
請求項9に記載の繊維機械であって、
前記取付部は、前記合流箇所における空気流の漏れを低減するシーリング部を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記ダクトの流路断面積は、前記第1ユニット配管の流路断面積よりも大きいことを特徴とする繊維機械。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記巻取ユニットは、
繊維束をドラフトするドラフト装置と、
前記ドラフト装置によりドラフトした前記繊維束に対して空気紡績を行って紡績糸を生成する空気紡績装置と、
前記紡績糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項13】
請求項12に記載の繊維機械であって、
前記第1ユニット配管は、前記空気紡績装置と、前記ダクトと、を接続することを特徴とする繊維機械。
【請求項14】
請求項13に記載の繊維機械であって、
複数の前記巻取ユニットと前記ダクトとの間にそれぞれ配置され、前記ダクトの空気流を前記巻取ユニットに作用させる複数の第2ユニット配管を備え、
前記第2ユニット配管は、前記ドラフト装置において発生した風綿を吸引する吸引装置と、前記ダクトと、を接続し、
前記空気流変向部は、少なくとも1つの前記第1ユニット配管から前記ダクトへの合流箇所に加え、少なくとも1つの前記第2ユニット配管から前記ダクトへの合流箇所にも位置していることを特徴とする繊維機械。
【請求項15】
繊維機械が備える巻取ユニットの第1ユニット配管とダクトとの合流箇所に取り付けられる連結部材において、
前記第1ユニット配管に取り付けられるとともに、前記ダクトに取り付けられ、空気流が流れる空間が形成された管状の本体部と、
前記ダクトの内部に位置し、前記第1ユニット配管から前記ダクトに流れる空気流を変向する空気流変向部と、
前記本体部の軸方向を回転中心とした回転位置を正しい位置に合わせるための位置決め部と、
を備えることを特徴とする連結部材。
【請求項16】
請求項15に記載の連結部材であって、
前記本体部から径方向の外側に突出する突出部を備え、
前記位置決め部は、前記突出部の周方向の所定位置に形成された目印であることを特徴とする連結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、繊維機械に設けられる空気流変向部に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ユニット(錘)を複数備える繊維機械を開示する。各ユニットは、糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、糸を吸引する糸吸引装置と、糸吸引装置に接続される小径管と、を備える。各ユニットの小径管は、1つの大径管に接続されている。大径管の下流側には、吸引ブロアが設けられている。ブロアは、大径管を介して糸吸引装置に吸引流を作用させる。また、小径管は、大径管の垂直方向に対して傾斜した向きで大径管に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-106139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、小径管と大径管の接続構造については詳細に記載されていない。しかし、小径管と大径管の接続構造によっては、圧力損失が大きくなる。特に、繊維機械が複数のユニットを備える場合は、ブロアから遠い領域に配置されるユニットの糸吸引装置に作用する吸引流が弱くなり易い。この場合、必要な圧力を得るためにブロアの出力を上げたり、管の内寸を大きくしたりする必要がある。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ブロアが発生させた空気流をダクトを介して複数の巻取ユニットに作用させる繊維機械において、ダクト内の圧力損失を低減する構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の繊維機械が提供される。即ち、繊維機械は、複数の巻取ユニットと、ダクトと、ブロアと、複数の第1ユニット配管と、空気流変向部と、を備える。前記巻取ユニットは、一方向に並べて配置され、糸を巻き取る。前記ダクトは、前記巻取ユニットの並列方向と同じ方向であるダクト長手方向に沿って配置される。前記ブロアは、前記ダクトの内部の空気を吸引して当該ダクトに空気流を発生させる。複数の前記第1ユニット配管は、複数の前記巻取ユニットと前記ダクトとの間にそれぞれ配置され、前記ダクトの空気流を前記巻取ユニットに作用させる。前記空気流変向部は、少なくとも1つの前記第1ユニット配管から前記ダクトへの合流箇所であって、かつ、前記ダクトの内部に位置し、前記ダクトにおける前記空気流の下流側を向く。
【0008】
第1ユニット配管からダクトに流れる空気流が、空気流変向部によってダクトの下流側に向けてガイドされるため、圧力損失を低減できる。
【0009】
前記の繊維機械においては、少なくとも1つの前記第1ユニット配管は、当該第1ユニット配管の長手方向と前記ダクト長手方向が直交するように、前記ダクトに接続されることが好ましい。
【0010】
これにより、第1ユニット配管をコンパクトに配置できる。
【0011】
前記の繊維機械においては、前記ダクトのうち前記ダクト長手方向の中央よりも、前記空気流の上流側に接続される少なくとも1つの前記第1ユニット配管から前記ダクトへ前記合流箇所に、前記空気流変向部が配置されることが好ましい。
【0012】
これにより、空気流が停滞する傾向がある領域に空気流変向部が配置されるので、圧力損失の低減効果を高めることができる。
【0013】
前記の繊維機械においては、全ての前記第1ユニット配管から前記ダクトへの前記合流箇所に、前記空気流変向部が配置されることが好ましい。
【0014】
これにより、全ての合流箇所に空気流変向部が配置されるので、圧力損失の低減効果を高めることができる。
【0015】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ダクト長手方向と、前記合流箇所における前記第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、前記ダクト長手方向に直交する方向に対して、前記空気流変向部がなす角が20°以上90°以下である。
【0016】
これにより、第1ユニット配管からの空気流を適切な向きに変更することができる。
【0017】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ダクト長手方向と、前記合流箇所における前記第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、前記空気流変向部の全体が、前記ダクトの内寸の中央、又は当該中央よりも前記第1ユニット配管の取付位置に近い領域に位置する。
【0018】
これにより、空気流変向部によるダクト内の空気流の阻害を低減できる。
【0019】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ダクト長手方向と、前記合流箇所における前記第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、前記空気流変向部は、前記ダクトの内寸を4等分した領域のうち、前記第1ユニット配管の取付位置に最も近い領域に位置する。
【0020】
これにより、空気流変向部によるダクト内の空気流の阻害を一層低減できる。
【0021】
前記の繊維機械においては、前記空気流変向部を含み、前記ダクトに着脱可能に取り付けられる連結部材を備えることが好ましい。
【0022】
これにより、既存の繊維機械に容易に空気流変向部を取り付けることができる。また、空気流変向部を容易に交換できる。
【0023】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記連結部材は、前記ダクトの開口に取り付けられる取付部を備える。前記連結部材を前記ダクトに取り付けた状態において、前記取付部の外寸は、前記ダクトの前記開口の内寸以下である。
【0024】
これにより、ダクトの開口に差し込むようにして連結部材をダクトに取り付けることができる。
【0025】
前記の繊維機械においては、前記取付部は、前記合流箇所における空気流の漏れを低減するシーリング部を備えることが好ましい。
【0026】
これにより、空気流の漏れに起因する圧力損失を低減できる。
【0027】
前記の繊維機械においては、前記ダクトの流路断面積は、前記第1ユニット配管の流路断面積よりも大きいことが好ましい。
【0028】
これにより、ダクトの流路断面積が比較的大きいため、圧力損失が低減される。
【0029】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記巻取ユニットは、ドラフト装置と、空気紡績装置と、巻取装置と、を備える。前記ドラフト装置は、繊維束をドラフトする。前記空気紡績装置は、前記繊維束に対して空気紡績を行って紡績糸を生成する。前記巻取装置は、前記紡績糸を巻き取ってパッケージを形成する。
【0030】
これにより、空気紡績装置を備える繊維機械において、ダクトの圧力損失を低減できる。
【0031】
前記の繊維機械においては、前記第1ユニット配管は、前記空気紡績装置と、前記ダクトと、を接続することが好ましい。
【0032】
これにより、空気紡績装置において作用する吸引流が安定するため、紡績糸を安定的に生成できる。
【0033】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、繊維機械は、複数の前記巻取ユニットと前記ダクトとの間にそれぞれ配置され、前記ダクトの空気流を前記巻取ユニットに作用させる複数の第2ユニット配管を備える。前記第2ユニット配管は、前記ドラフト装置において発生した風綿を吸引する吸引装置と、前記ダクトと、を接続する。前記空気流変向部は、少なくとも1つの前記第1ユニット配管から前記ダクトへの合流箇所に加え、少なくとも1つの前記第2ユニット配管から前記ダクトへの合流箇所にも位置している。
【0034】
これにより、吸引装置において作用する吸引流が安定するため、風綿を適切に吸引除去できる。
【0035】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の連結部材が提供される。即ち、前記連結部材は、繊維機械が備える巻取ユニットの第1ユニット配管とダクトとの合流箇所に取り付けられる。前記連結部材は、本体部と、空気流変向部と、位置決め部と、を備える。前記本体部は、管状であり、前記第1ユニット配管に取り付けられるとともに、前記ダクトに取り付けられ、空気流が流れる空間が形成される。前記空気流変向部は、前記ダクトの内部に位置し、前記第1ユニット配管から前記ダクトに流れる空気流を変向する。前記位置決め部は、前記本体部の軸方向を回転中心とした回転位置を正しい位置に合わせるために設けられている。
【0036】
第1ユニット配管からダクトに流れる空気流が、空気流変向部によってダクトの下流側に向けてガイドされるため、圧力損失を低減できる。また、連結部材に位置決め部が設けられているため、連結部材を容易に正しい向きに取り付けることができる。
【0037】
前記の連結部材においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、連結部材は、前記本体部から径方向の外側に突出する突出部を備える。前記位置決め部は、前記突出部の周方向の所定位置に形成された目印である。
【0038】
これにより、目印としての位置決め部を参照することにより連結部材を容易に正しい向きに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の正面図。
図2】紡績ユニットの側面図。
図3】ダクト、連結部材、及びユニット配管の斜視図。
図4】ダクト、連結部材、及びユニット配管を、配管長手方向及びダクト長手方向を含む平面で切った断面図。
図5】第1変形例の空気流変向部を示す斜視図。
図6】第2変形例の空気流変向部を、配管長手方向及びダクト長手方向を含む平面で切った断面図。
図7】第3変形例の空気流変向部を、配管長手方向及びダクト長手方向を含む平面で切った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の一実施形態に係る紡績機(繊維機械)1について、図面を参照して説明する。
【0041】
図1に示すように、紡績機1は、ブロアボックス111と、制御ボックス112と、糸継台車90と、複数の紡績ユニット(巻取ユニット)2と、を備える。複数の紡績ユニット2は、所定の方向に並べて配置されている。各紡績ユニット2は、後述の空気紡績装置22等を用いて紡績を行う。
【0042】
ブロアボックス111内には、負圧源として機能するブロア113が設けられている。ブロア113は、ダクト30に接続されている。ブロア113は、複数の羽根を備え、羽根を回転させることによりダクト30内の空気を吸引して、ブロア113に向かう空気流(吸引流)を発生させる。ブロア113が発生させる空気流は、後述するように、紡績ユニット2において糸及び風綿を吸引するために用いられる。
【0043】
ダクト30には、ブロア113が発生させた空気流が流れる。ダクト30は、ブロア113が発生させた空気流を各紡績ユニット2に作用させるために設けられている。そのため、ダクト30の長手方向(以下、ダクト長手方向)は、紡績ユニット2の並列方向と同じ方向である。本実施形態のダクト30は直線状であるが、湾曲又は屈曲を含んでいてもよい。ダクト30が湾曲又は屈曲を含んでいる場合であっても、ダクト30の主たる長手方向は、紡績ユニット2の並列方向と同方向である。このようにダクト30が配置されることを、ダクト30が紡績ユニット2の並列方向に沿って配置されると称する。本実施形態では、1つのダクト30が配置されるが、複数のダクト30が配置されてもよい。
【0044】
制御ボックス112には、中央制御装置115が設けられている。中央制御装置115は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。
【0045】
糸継台車90は、各紡績ユニット2に対して移動可能に設けられている。糸継台車90は、複数の紡績ユニット2に対して1つ備えられている。図1では1台の糸継台車90が図示されているが、紡績機1は、複数台の糸継台車90を備えていてもよい。
【0046】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置21と、空気紡績装置22と、糸貯留装置23と、巻取装置25と、を備える。これらの装置は、紡績糸5等の走行方向において上流側から下流側へ向かって順に配置されている。
【0047】
ドラフト装置21は、4つのドラフトローラ対を備える。4つのドラフトローラ対は、上流側から下流側へ向かって順に配置された、バックローラ対41、サードローラ対42、ミドルローラ対43、及びフロントローラ対44である。ミドルローラ対43の各ドラフトローラには、エプロンベルト45が設けられている。
【0048】
ドラフト装置21は、スライバ供給部から供給される繊維束(スライバ)4を、各ドラフトローラ対のドラフトローラ同士の間(駆動ローラと従動ローラとの間)で挟み込んで搬送する。この過程で、繊維束4が引き延ばされる。ドラフト装置21は、繊維束4が所定の繊維量となるまで引き延した後に、空気紡績装置22に繊維束4を供給する。
【0049】
フロントローラ対44の下方には、吸引装置24が配置されている。吸引装置24は、ドラフト時に発生した風綿を吸引して除去する。吸引装置24は、ドラフトユニット配管(第1ユニット配管、第2ユニット配管)32を介してダクト30に接続されている。これにより、ブロア113が発生させた空気流を用いて吸引装置24は風綿を吸引可能である。本実施形態の吸引装置24は、フロントローラ対44の下方に配置され、フロントローラ対44で発生した風綿を吸引して除去する。これに代えて又は加えて、バックローラ対41、サードローラ対42、又は、ミドルローラ対43で発生した風綿を吸引して除去する吸引装置を更に設けてもよい。
【0050】
空気紡績装置22は、ドラフト装置21が供給した繊維束4から紡績糸5を生成する。図2に示すように、空気紡績装置22は、紡績ユニット配管(第1ユニット配管)31を介してダクト30に接続されている。これにより、ブロア113が発生させた空気流を、空気紡績装置22に作用させることができる。この空気流を用いて旋回空気流が生成され、空気紡績装置22は、繊維束4に旋回空気流を作用させることにより撚りを加えて、紡績糸5を生成する。
【0051】
上述した、ダクト30の流路断面積は、紡績ユニット配管31の流路断面積より大きく、かつ、ドラフトユニット配管32の流路断面積より大きい。また、ダクト30の流路断面は多角形であるが、円形であってもよい。紡績ユニット配管31及びドラフトユニット配管32の流路断面は円形であるが、多角形であってもよい。
【0052】
糸貯留装置23は、糸貯留ローラ51と、当該糸貯留ローラ51を回転駆動するモータ52と、を備える。
【0053】
糸貯留ローラ51は、その外周面に一定量の紡績糸5を巻き付けて一時的に貯留することができる。糸貯留ローラ51の外周面に紡績糸5を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ51を所定の回転速度で回転させることにより、空気紡績装置22から紡績糸5を所定の速度で引き出して下流側に搬送することができる。また、糸貯留装置23は、糸貯留ローラ51の外周面に紡績糸5を一時的に貯留することができるので、糸貯留装置23は一種のバッファとして機能する。これにより、空気紡績装置22における紡績速度と、巻取速度(パッケージ7へ巻き取られる紡績糸5の速度)と、が何らかの理由により一致しない不具合(例えば紡績糸5の弛みなど)を解消することができる。
【0054】
空気紡績装置22と糸貯留装置23との間には、糸監視装置47が設けられている。糸監視装置47は、糸貯留装置23よりも上流側で紡績糸5の状態を検知する。空気紡績装置22により生成された紡績糸5は、糸貯留装置23により貯留される前に糸監視装置47を通過する。
【0055】
糸監視装置47は、走行する紡績糸5の品質を光センサによって監視し、紡績糸5に含まれる糸欠陥を検出する。糸欠陥としては、例えば、紡績糸5の太さの異常、及び/又は、紡績糸5に含まれる異物等がある。糸監視装置47は、紡績糸5の糸欠陥を検出した場合、ユニット制御部へ糸欠陥検出信号を送信する。糸監視装置47は、光センサの代わりに、例えば静電容量式のセンサを用いて紡績糸5の品質を監視してもよい。糸監視装置47は、これらの糸欠陥に代えて、あるいは、これらの糸欠陥に加えて、紡績糸5のテンションの異常を検出するように構成されていてもよい。
【0056】
糸監視装置47が糸欠陥を検出した場合、空気紡績装置22による紡績を停止するように紡績ユニット2が制御され、紡績糸5が切断される。紡績糸5の切断は、ドラフト装置21によるドラフト(例えば、バックローラ対41の回転)を停止することによって実現されてもよい。あるいは、紡績ユニット2にカッタを設け、ユニット制御部がカッタにより紡績糸5の切断を行ってもよい。
【0057】
巻取装置25は、糸貯留装置23を通過した紡績糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する。巻取装置25は、糸貯留装置23よりも下流側に配置されている。巻取装置25は、クレードル71と、接触ローラ72と、トラバース装置73と、クレードルアーム74と、を備える。
【0058】
クレードル71は、1対のクレードルアーム74を備える。クレードル71は、紡績糸5を巻き取るためのボビン7a(ひいてはパッケージ7)を、1対のクレードルアーム74の間で回転可能に支持することができる。
【0059】
接触ローラ72は、ボビン7a又はパッケージ7の外周面に接触する。接触ローラ72は、図略のモータにより回転駆動される。トラバース装置73は、パッケージ7に巻き取られる紡績糸5に作用して、紡績糸5をパッケージ7の巻幅方向(パッケージ7の軸方向)に往復動させる。これにより、巻取装置25は、紡績糸5をトラバースしつつ、紡績糸5をパッケージ7に巻き取る。
【0060】
糸継台車90は、走行車輪91と、糸継装置92と、サクションパイプ93と、サクションマウス94と、を備える。
【0061】
走行車輪91は、図略の駆動手段(例えばモータ)によって回転駆動可能に構成されている。走行車輪91が駆動されることによって、糸継台車90が複数の紡績ユニット2のそれぞれに対して走行することができる。
【0062】
サクションパイプ93は、パイプ状の部分を有する部材である。サクションパイプ93の先端には開口が形成されている。サクションパイプ93は、その先端に吸引空気流を発生させることができる。紡績糸5に分断が発生した後、サクションパイプ93は、空気紡績装置22に接近した位置で、空気紡績装置22から新たに送出される紡績糸5を吸い込むことにより捕捉し、糸継装置92まで紡績糸5をガイドすることができる。
【0063】
サクションマウス94は、パイプ状の部分を有する部材である。サクションマウス94の先端には開口が形成されている。サクションマウス94は、その先端に吸引空気流を発生させることができる。紡績糸5に分断が発生した後、サクションマウス94は、巻取装置25に接近した位置で、巻取装置25側(パッケージ7側)の紡績糸5をサクションマウス94の先端から吸い込むことにより捕捉し、糸継装置92まで紡績糸5をガイドすることができる。
【0064】
糸継装置92は、紡績糸5の分断の発生後に、サクションパイプ93によって捕捉された空気紡績装置22側の紡績糸5と、サクションマウス94により捕捉されたパッケージ7側の紡績糸5と、の糸継ぎを行う。本実施形態において、糸継装置92は、旋回空気流により糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。糸継装置92は、前記のスプライサ装置に限定せず、例えば機械式のノッタ等とすることもできる。
【0065】
次に、図3及び図4を参照して、紡績ユニット配管31又はドラフトユニット配管32と、ダクト30と、の接続箇所について説明する。本実施形態では、紡績ユニット配管31とダクト30の接続箇所の構成は、ドラフトユニット配管32とダクト30の接続箇所の構成と同じである。以下では、紡績ユニット配管31とドラフトユニット配管32をまとめて、ユニット配管31,32と称してまとめて説明する。また、以下では、ブロア113が発生させた空気流の上流又は下流を単に「上流」又は「下流」と称する。
【0066】
図3に示すように、ダクト30には、複数の開口30aが形成されている。開口30aは、ユニット配管31,32を取り付けるための部分である。本実施形態のダクト30には、全てのユニット配管31,32が取り付けられる。なお、紡績機1が複数のダクト30を備える場合は、複数のダクト30に対して、ユニット配管31,32が取り付けられる。
【0067】
開口30aには、連結部材80が取り付けられる。連結部材80は、ダクト30に取り付けられるとともに、ユニット配管31,32に取り付けられる。言い換えれば、ユニット配管31,32は、連結部材80を介して、ダクト30に取り付けられる。
【0068】
ユニット配管31,32をダクト30に取り付けることにより、ユニット配管31,32の空間(空気流が流れる空間)が、ダクト30の空間(空気流が流れる空間)に合流する。以下では、ユニット配管31,32がダクト30に合流する箇所を合流箇所と称する。合流箇所は、ユニット配管31,32のうち空気流が流れる空間の下流端から、この空気流がダクト30に導入される空間及びその周囲の空間を示す。
【0069】
以下では、ユニット配管31,32の下流端の長手方向を「配管長手方向」と称する。本実施形態では、配管長手方向とダクト長手方向は直交する。本明細書において直交とは、2つの方向が厳密に90°となる状態だけでなく、数度程度の誤差を含む状態(即ち、略直交)を含む。ただし、配管長手方向とダクト長手方向は直交していなくてもよい。
【0070】
連結部材80は、例えば樹脂製又はゴム製であり、弾性変形可能である。連結部材80は、型を用いて一体的に形成された1部品であってもよいし、複数の部品を組み付けて製造されてもよい。図3及び図4に示すように、連結部材80は、本体部81と、突出部82と、空気流変向部83と、を備える。
【0071】
本体部81は、第1管部81aと、第2管部81bと、取付部81cと、を備える。第1管部81aは、管状(筒状)の部分であり、空気流が流れる空間が形成されている。第1管部81aの空間には、ユニット配管31,32の空間が接続される。つまり、第1管部81aには、ユニット配管31,32が取り付けられる。本実施形態では、第1管部81aの内側にユニット配管31,32が取り付けられるが、第1管部81aの外側にユニット配管31,32が取り付けられてもよい。
【0072】
第2管部81bは、管状の部分であり、空気流が流れる空間が形成されている。第2管部81bの空間には、ダクト30の空間が接続される。取付部81cは、連結部材80をダクト30に取り付けるための部分である。図4に示すように、取付部81cは、配管長手方向において第1管部81aと第2管部81bの間に位置している。取付部81cは、径方向に僅かに突出するとともに、挿入先端側が小径で挿入根元側が大径のテーパ構造であるシーリング部を有している。連結部材80を開口30aに挿入することにより、取付部81cのテーパ構造が圧縮して潰れ、連結部材80が開口30aの縁部に密着する。これにより、空気流の漏れを低減できる。
【0073】
このように、連結部材80は、開口30aに挿入するだけで、ダクト30に取り付けられる。そのため、連結部材80をダクト30に取り付けた状態において、取付部81cの内寸は、開口30aの内寸と同じか、それよりも小さい。なお、内寸とは、内側の寸法であり、円管の場合は直径を指し、四角管の場合は一辺の長さを指す。外寸は、外側の寸法である。また、本実施形態の連結部材80はダクト30及びユニット配管31,32に対して着脱可能であるため、既存の紡績機1に対しても適用可能である。ただし、後述の第1変形例のように、空気流変向部83がダクト30及び/又はユニット配管31,32に対して着脱不能に固定されていてもよい。
【0074】
突出部82は、配管長手方向において取付部81cの近傍(より具体的には、空気流の方向においては取付部81cよりも上流側)、言い換えれば、配管長手方向において第1管部81aと第2管部81bの間に位置している。突出部82は、径方向の外側に突出する形状である。本実施形態では、突出部82は円形に突出するが、他の形状に突出してもよい。また、突出部82には、位置決め部82aが形成されている。位置決め部82aは、本体部81の軸方向を回転中心とした連結部材80の回転位置を正しい位置に合わせるための部分(目印)である。詳細には、円板状の突出部82の一部を切り取った直線状の部分が位置決め部82aである。連結部材80をダクト30に取り付ける場合、位置決め部82aがダクト長手方向の下流側を向くように取り付ける。これにより、後述するように空気流変向部83の向きを正しい向きに合わせることができる。
【0075】
なお、位置決め部82aの形状は、連結部材80(突出部82)の回転位置が特定できる形状であれば、直線状に限られない。例えば、位置決め部82aは、突出部82から更に径方向外側に突出する形状であってもよい。あるいは、位置決め部82aは、連結部材80の外側に付された識別情報(線、記号、文字など)であってもよい。位置決め部82aが直線状である場合であっても、位置決め部82aを設ける箇所は上記の箇所に限定されない。
【0076】
上述した位置決め部82aは、作業者が連結部材80をダクト30に取り付ける際に連結部材80の回転位置を分かり易くするための部分である。これに代えて、位置決め部82aは、連結部材80を正しい回転位置に取り付ける場合は他の部材と干渉せずに、連結部材80を誤った回転位置に取り付ける場合は他の部材と干渉する部分であってもよい。例えば、開口30aにキー溝を形成し、キー溝に対応する凸部を連結部材80に形成し、当該凸部を位置決め部82aとしてもよい。
【0077】
空気流変向部83は、ユニット配管31,32からダクト30に向けて流れる空気流の向きを変える部分である。詳細に説明すると、ユニット配管31,32を流れる空気流は、配管長手方向に沿う向きに流れる。空気流変向部83は、この空気流の向きをダクト長手方向の下流側に向けて変向する。空気流変向部83は、空気流の向きをダクト長手方向の下流側に近づけるように変向すればよく、空気流の向きをダクト長手方向の下流側に一致させることは必須ではない。なお、空気流変向部83は、ユニット配管31,32からダクト30に向けて流れる空気流を特定の方向にガイドしている。空気流変向部83は、当該ガイド方向を向く面を有している。
【0078】
空気流の向きをダクト長手方向の下流側に向けて変向するため、空気流変向部83は、ダクト長手方向の下流側を向く形状である。空気流変向部83の向きとは、空気流変向部83が空気流をガイドする向きである。詳細には、空気流変向部83のうち、空気流に接触して空気流をガイドするガイド面に沿う方向は、ダクト長手方向の下流側の成分を含む。ガイド面に沿う方向とは、ガイド面が平面である箇所については、ダクト30の径方向で見たときに、当該平面に平行な方向である。ガイド面が曲面である箇所については、ダクト30の径方向で見たときに、当該曲面の接線の方向である。以下では、図4の平面において、ダクト長手方向に直交する方向に対して、空気流変向部83(詳細には下流側の内壁面)がなす角をガイド角θと称する。更に詳細に定義すると、ガイド角θは、空気流変向部83の先端かつ内側の面と、空気流変向部83の先端からユニット配管31,32側に向けて、ダクト長手方向に直交するように引いた直線と、がなす角である。
【0079】
ガイド角θが0°以上20°未満である場合、ユニット配管31,32を流れた空気流が、ダクト長手方向の下流側に殆どガイドされないため、圧力損失をあまり低減できない。一方で、ガイド角θが90°を超過する場合、ダクト30内の空気流の流れを阻害したり、風綿が空気流変向部83に引っ掛かり易くなったりすることがある。以上により、ガイド角θは、20°以上90°以下であることが好ましい。
【0080】
本実施形態の空気流変向部83は、図4の平面において、角度が徐々に変化する湾曲状である。これにより、空気流の向きを徐々に変向することができるので、圧力損失が低減できる。ただし、後述の第1変形例に示すように、空気流変向部83は平板状であってもよい。
【0081】
また、空気流変向部83は、ユニット配管31,32からダクト30への合流箇所であって、かつ、ダクト30の内部に位置する。具体的には、配管長手方向とダクト長手方向を含む平面(図4)において、ダクト30の内寸を4等分し、ダクト30とユニット配管31,32の取付位置側から順に、第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域とする。空気流変向部83の全体が、第1領域に位置する。言い換えれば、空気流変向部83は、この平面におけるダクト30の内寸の中央又は中央よりもダクト30とユニット配管31,32の取付位置に近い領域に位置する。したがって、空気流変向部83は、第2領域内に配置されていてもよい。
【0082】
空気流変向部83の全体をユニット配管31,32に近い領域(第1領域、又は、第1領域と第2領域を合わせた領域)に配置することにより、空気流変向部83がダクト30内の空気流を阻害しにくい。更に、ダクト30内の風綿が空気流変向部83に引っ掛かりにくい。
【0083】
本実施形態では、連結部材80(即ち、空気流変向部83)は、全てのユニット配管31,32に取り付けられている。この構成に代えて、一部のユニット配管31,32のみに、連結部材80が取り付けられてもよい。何れのユニット配管31,32に連結部材80を取り付ける構成であってもよいが、例えば、ダクト長手方向の上流側に取り付けられるユニット配管31,32に連結部材80を優先的に取り付けることが好ましい。言い換えれば、ダクト30のうちダクト長手方向の中央よりも上流側に接続される少なくとも1つのユニット配管31,32からダクト30への合流箇所に、連結部材80が取り付けられることが好ましい。これらのユニット配管31,32は、ブロア113から遠い位置にあるため、空気流の合算流量が少なく、空気流が停滞する傾向にある。そのため、このような位置に連結部材80を取り付けることにより、空気流を下流側に変向する効果を一層有効に活用できる。
【0084】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。なお、以下の変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0085】
図5には、連結部材80を用いずに空気流変向部83を設けた第1変形例が示されている。具体的には、ユニット配管31,32は、ダクト30の内面に溶接等により固定されている。第1変形例の空気流変向部83は、ダクト30の内面に接続されている。空気流変向部83は、ダクト長手方向の下流側を向く1枚の平板であってもよいし、複数枚の平板又は複数面を有する1枚の板状部材であってもよい。また、上記実施形態のような湾曲状の空気流変向部83をダクト30の内面に接続してもよい。図5には2種類の空気流変向部83が図示されているが、ダクト30に取り付けられる空気流変向部83は、何れか1種類であってもよい。
【0086】
図6には、ユニット配管31,32に空気流変向部83を一体的に設けた第2変形例が示されている。具体的には、ユニット配管31,32の下流端はダクト長手方向の下流側を向くように湾曲している。そのため、湾曲している部分(特に湾曲部分の外側部分)が空気流変向部83に相当する。
【0087】
図7には、ユニット配管31,32を直線状にしつつ、空気流変向部83を設けた第3変形例が示されている。第3変形例では、配管長手方向とダクト長手方向は直交しない。ユニット配管31,32の下流端には、ダクト長手方向の下流側を向く面が含まれるため、この部分が空気流変向部83に相当する。
【0088】
上記実施形態、第1変形例、及び第2変形例では、配管長手方向とダクト長手方向が直交する。そのため、ユニット配管31,32をダクト30に取り付ける構造が単純になったり、ユニット配管31,32が占めるスペースを低減したりすることが可能となる。また、配管長手方向とダクト長手方向は直交するが、空気流変向部83とダクト長手方向は直交しない。そのため、ユニット配管31,32に沿って下流側に辿った場合に、ダクト30の内部で湾曲又は屈曲する部分が存在することとなる。
【0089】
以上に説明したように、本実施形態の紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、ダクト30と、ブロア113と、複数の第1ユニット配管(ユニット配管31,32)と、空気流変向部83と、を備える。紡績ユニット2は、一方向に並べて配置され、紡績糸5を巻き取る。ダクト30は、紡績ユニット2の並列方向と同じ方向であるダクト長手方向に沿って配置される。ブロア113は、ダクト30の内部の空気を吸引してダクト30に空気流を発生させる。複数の第1ユニット配管は、複数の紡績ユニット2とダクト30との間にそれぞれ配置され、ダクト30の空気流を紡績ユニット2に作用させる。空気流変向部83は、少なくとも1つの第1ユニット配管からダクト30への合流箇所であって、かつ、ダクト30の内部に位置し、ダクト30における空気流の下流側を向く。
【0090】
第1ユニット配管からダクト30に流れる空気流が、空気流変向部83によってダクト30の下流側に向けてガイドされるため、圧力損失を低減できる。
【0091】
本実施形態の紡績機1において、少なくとも1つの第1ユニット配管は、第1ユニット配管の長手方向とダクト長手方向が直交するように、ダクト30に接続される。
【0092】
これにより、第1ユニット配管をコンパクトに配置できる。
【0093】
本実施形態の紡績機1において、ダクト30のうちダクト長手方向の中央よりも、空気流の上流側に接続される少なくとも1つの第1ユニット配管からダクト30への合流箇所に、空気流変向部83が配置される。
【0094】
これにより、空気流が停滞する傾向がある領域に空気流変向部83が配置されるので、圧力損失の低減効果を高めることができる。
【0095】
本実施形態の紡績機1において、全ての第1ユニット配管からダクト30への合流箇所に、空気流変向部83が配置される。
【0096】
これにより、全ての合流箇所に空気流変向部83が配置されるので、圧力損失の低減効果を高めることができる。
【0097】
本実施形態の紡績機1において、ダクト長手方向と、合流箇所における第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、ダクト長手方向に直交する方向に対して、空気流変向部83がなす角が20°以上90°以下である。
【0098】
これにより、第1ユニット配管からの空気流を適切な向きに変更することができる。
【0099】
本実施形態の紡績機1において、ダクト長手方向と、合流箇所における第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、空気流変向部83の下流端は、ダクト30の内寸の中央、又は中央よりも第1ユニット配管の取付位置に近い領域に位置する。
【0100】
これにより、空気流変向部83によるダクト30内の空気流の阻害を低減できる。
【0101】
本実施形態の紡績機1において、ダクト長手方向と、合流箇所における第1ユニット配管の長手方向と、を含む平面において、空気流変向部83の下流端は、ダクト30の内寸を4等分した領域のうち、第1ユニット配管の取付位置に最も近い領域に位置する。
【0102】
これにより、空気流変向部83によるダクト30内の空気流の阻害を一層低減できる。
【0103】
本実施形態の紡績機1は、空気流変向部83を含み、ダクト30に着脱可能に取り付けられる連結部材80を備える。
【0104】
これにより、既存の紡績機1に容易に空気流変向部83を取り付けることができる。また、空気流変向部83を容易に交換できる。
【0105】
本実施形態の紡績機1において、連結部材80は、ダクト30の開口30aに取り付けられる取付部81cを備える。連結部材80をダクト30に取り付けた状態において、取付部81cの外寸は、ダクト30の開口30aの内寸以下である。
【0106】
これにより、ダクト30の開口に差し込むようにして連結部材80をダクト30に取り付けることができる。
【0107】
本実施形態の紡績機1において、取付部81cは、合流箇所における空気流の漏れを低減(防止)するシーリング部を備える。
【0108】
これにより、空気流の漏れに起因する圧力損失を低減できる。
【0109】
本実施形態の紡績機1において、ダクト30の流路断面積は、第1ユニット配管の流路断面積よりも大きい。
【0110】
これにより、ダクト30の流路断面積が比較的大きいため、圧力損失が低減される。
【0111】
本実施形態の紡績機1において、紡績ユニット2は、ドラフト装置21と、空気紡績装置22と、巻取装置25と、を備える。ドラフト装置21は、繊維束4をドラフトする。空気紡績装置22は、ドラフト装置21によりドラフトした繊維束4に対して空気紡績を行って紡績糸5を生成する。巻取装置25は、紡績糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する。
【0112】
これにより、紡績機1のダクト30の圧力損失を低減できる。
【0113】
本実施形態の紡績機1において、第1ユニット配管は、空気紡績装置22と、ダクト30と、を接続する紡績ユニット配管31である。
【0114】
これにより、空気紡績装置22において作用する吸引流が安定するため、紡績糸5を安定的に生成できる。
【0115】
本実施形態の紡績機1は、複数の紡績ユニット2とダクト30との間にそれぞれ配置され、ダクト30の空気流を紡績ユニット2に作用させる複数のドラフトユニット配管32を備える。ドラフトユニット配管32は、ドラフト装置21で発生した風綿を吸引する吸引装置24と、ダクト30と、を接続する。空気流変向部83は、少なくとも1つの紡績ユニット配管31からダクト30への合流箇所に加え、少なくとも1つのドラフトユニット配管32からダクト30への合流箇所にも位置している
【0116】
これにより、吸引装置24において作用する吸引流が安定するため、風綿を適切に吸引除去できる。
【0117】
本実施形態の連結部材80は、紡績機1が備える紡績ユニット2の第1ユニット配管と、ダクト30と、の合流箇所に取り付けられる。連結部材80は、本体部81と、空気流変向部83と、位置決め部82aと、を備える。本体部81は、管状であり、ユニット配管に取り付けられるとともに、ダクト30に取り付けられ、空気流が流れる空間が形成される。空気流変向部83は、ダクト30の内部に位置し、第1ユニット配管からダクト30に流れる空気流を変向する。位置決め部82aは、本体部81の軸方向を回転中心とした回転位置を正しい位置に合わせるために設けられている。
【0118】
第1ユニット配管からダクト30に流れる空気流が、空気流変向部83によってダクト30の下流側に向けてガイドされるため、圧力損失を低減できる。また、連結部材80に位置決め部82aが設けられているため、連結部材80を容易に正しい向きに取り付けることができる。
【0119】
本実施形態の連結部材80は、本体部81から径方向の外側に突出する突出部82を備える。位置決め部82aは、突出部82の周方向の所定位置に形成されている。
【0120】
これにより、目印としての位置決め部82aを参照することにより、連結部材80を容易に正しい向きに取り付けることができる。
【0121】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0122】
複数の連結部材80同士及び/又は空気流変向部83同士で、形状が異なっていてもよい。例えば、連結部材80のガイド角θ、ダクト30内の配管長手方向の位置、空気流変向部83の有無等が異なっていてもよい。また、紡績機1において、上記好適な実施の形態での形状を有する空気流変向部83と、変形例での各形状を有する空気流変向部83と、の少なくとも何れか2種類が混在していてもよい。
【0123】
ユニット配管31,32と空気流変向部83との材質は特に限定されず、例えば、可撓性がある材質で形成されたホースであってもよい。
【0124】
紡績ユニット配管31からダクト30への合流箇所に空気流変向部83が設けられていなくてもよい。この場合は、ドラフトユニット配管32が第1ユニット配管に相当する。また、ドラフトユニット配管32からダクト30への合流箇所に空気流変向部83が設けられていなくてもよい。また、吸引装置24とドラフトユニット配管32は必須の構成要素ではなく、省略することができる。
【0125】
上記実施形態の連結部材80(特に空気流変向部83)が設けられる繊維機械は空気紡績機に限られない。繊維機械は、例えば、自動ワインダ、リング精紡機、オープンエンド精紡機、又は撚糸機等であっても良い。
【符号の説明】
【0126】
1 紡績機(繊維機械)
2 紡績ユニット(巻取ユニット)
30 ダクト
31 紡績ユニット配管(第1ユニット配管)
32 ドラフトユニット配管(第1ユニット配管、第2ユニット配管)
80 連結部材
81 本体部
82 突出部
83 空気流変向部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7