(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153400
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ドラフト装置
(51)【国際特許分類】
D01H 5/16 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
D01H5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067274
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】秋元 理宏
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056BC02
4L056BC42
(57)【要約】
【課題】位置精度の低下に起因する糸品質の低下を回避可能であり、かつ、工作機械による機械加工で製造する場合の手間を軽減したドラフト装置を提供する。
【解決手段】ドラフト装置は、ドラフトベース50と、フロントローラハウジング61と、フロントボトムローラと、第2取付部85と、を備える。フロントローラハウジング61には軸心孔61aが形成される。フロントローラハウジング61はドラフトベース50に接続される。第2取付部85はドラフトベース50に接続される。第2取付部85は、空気紡績装置の取付軸又は取付孔に取り付けられる。フロントローラハウジング61と第2取付部85の少なくとも何れかはドラフトベース50と一体的に形成されている。フロントローラハウジング61の軸心孔61aの軸方向と、第2取付部85の軸方向と、が平行である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束をドラフトするドラフト装置において、
ドラフトベースと、
軸心孔が形成され、前記ドラフトベースに接続される第1取付部と、
複数のドラフトボトムローラのうち繊維束走行方向の最も下流に配置され、前記第1取付部の前記軸心孔に取り付けられるフロントボトムローラと、
前記ドラフトベースに接続され、空気紡績装置の取付軸又は取付孔に取り付けられる第2取付部と、
を備え、
前記第1取付部と前記第2取付部の少なくとも何れかは前記ドラフトベースと一体的に形成されており、
前記第1取付部の軸心孔の軸方向と、前記第2取付部の軸方向と、が平行であることを特徴とするドラフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドラフト装置であって、
前記第1取付部と前記第2取付部の両方が前記ドラフトベースと一体的に形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドラフト装置であって、
前記ドラフトボトムローラに対向するドラフトトップローラを支持し、前記ドラフトベースに対して開閉するドラフトクレードルと、
前記ドラフトクレードルが回転可能に取り付けられる第3取付部と、
を備え、
前記第3取付部が前記ドラフトベースと一体的に形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のドラフト装置であって、
前記フロントボトムローラよりも繊維束走行方向の上流に配置されるミドルボトムローラと、
前記ミドルボトムローラを位置決めする位置決め部と、
を備え、
前記位置決め部が前記ドラフトベースと一体的に形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項5】
請求項4に記載のドラフト装置であって、
前記ミドルボトムローラに巻き掛けられ、前記繊維束をドラフトするボトムエプロンベルトと、
繊維束走行方向において、前記フロントボトムローラと前記ミドルボトムローラの間の領域を含む範囲に配置され、前記ボトムエプロンベルトの張りを調整するベルト案内部材と、
を備え、
前記第1取付部が前記ドラフトベースと一体的に形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のドラフト装置であって、
前記ドラフトベースには、前記第1取付部が前記軸方向に並べて2つ配置され、それぞれの前記第1取付部に前記フロントボトムローラが1つずつ取り付けられ、
前記ドラフトベースには、前記第2取付部が前記軸方向に並べて2つ配置され、それぞれの前記第2取付部に前記空気紡績装置が1つずつ取り付けられることを特徴とするドラフト装置。
【請求項7】
請求項6に記載のドラフト装置であって、
2つの前記第1取付部は軸方向に離間して配置されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のドラフト装置であって、
前記ドラフトベースに接続され、当該ドラフトベースから前記軸方向に突出するとともに、前記ドラフトベースを紡績機のフレームに固定させるための固定部を備えることを特徴とするドラフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ドラフトベースを備えるドラフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドラフト機構を開示する。ドラフト機構は、複数のボトムローラと、ローラスタンドと、複数のトップローラと、トップアーム部と、を備える。複数のボトムローラは、ローラスタンドに支持される。複数のトップローラは、トップアーム部に支持される。複数のボトムローラと複数のトップローラが繊維束を挟み込んで回転することにより、繊維束が所定の倍率になるようにドラフト処理される。ドラフト処理された繊維束は紡績機構に供給される。紡績機構は、繊維束に撚りを付与して紡績糸を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のボトムローラのうち最も紡績機構に近いローラはフロントボトムローラと称される。特許文献1では、ローラスタンドにフロントボトムローラを取り付ける構造が詳細には記載されていない。仮に、ローラスタンドのベースとなるベース部材と、フロントボトムローラを取り付ける取付部材と、が別部材である場合、ベース部材と取付部材の取付誤差等に起因して、フロントボトムローラの位置精度が低下する可能性がある。
【0005】
また、特許文献1では、ローラスタンドに紡績機構を取り付ける構造が図で示されているが、その構造は詳細には記載されていない。仮に、ローラスタンドのベースとなるベース部材と、紡績機構を取り付ける取付部材と、が別部材である場合、ベース部材と取付部材の取付誤差等に起因して、紡績機構の位置精度が低下する。
【0006】
フロントボトムローラと空気紡績装置(紡績機構)の位置は、空気紡績装置が生成する紡績糸の糸品質に影響する。従って、フロントボトムローラ及び/又は空気紡績装置の位置精度が低い場合、紡績糸の糸品質が低下する可能性がある。
【0007】
また、工作機械を用いてドラフトベースを機械加工することにより、フロントボトムローラを取り付けるための部分と、空気紡績装置を取り付けるための部分と、が形成される場合がある。この場合、工作機械による機械加工の手間を軽減することが望まれる。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、位置精度の低下に起因する糸品質の低下を回避可能であり、かつ、工作機械による機械加工で製造する場合の手間を軽減したドラフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成のドラフト装置が提供される。即ち、ドラフト装置は、繊維束をドラフトする。ドラフト装置は、ドラフトベースと、第1取付部と、フロントボトムローラと、第2取付部と、を備える。前記第1取付部には軸心孔が形成され、前記第1取付部は前記ドラフトベースに接続される。前記フロントボトムローラは、複数のドラフトボトムローラのうち繊維束走行方向の最も下流に配置され、前記第1取付部の前記軸心孔に取り付けられる。前記第2取付部は、前記ドラフトベースに接続され、空気紡績装置の取付軸又は取付孔に取り付けられる。前記第1取付部と前記第2取付部の少なくとも何れかは前記ドラフトベースと一体的に形成されている。前記第1取付部の軸心孔の軸方向と、前記第2取付部の軸方向と、が平行である。
【0011】
これにより、第1取付部と第2取付部の一方又は両方がドラフトベースと一体的に形成されているため、フロントボトムローラと空気紡績装置の一方又は両方の位置精度が高い。そのため、フロントボトムローラ又は空気紡績装置の位置精度の低下に起因する糸品質の低下を回避できる。また、工作機械による機械加工で第1取付部と第2取付部を形成する場合、第1取付部と第2取付部の軸方向が平行であるため、ドラフトベースを固定する向きを変更することなく、第1取付部と第2取付部の機械加工を実施できる。そのため、工作機械による機械加工で第1取付部と第2取付部を製造する場合の手間を軽減できる。
【0012】
前記のドラフト装置においては、前記第1取付部と前記第2取付部の両方が前記ドラフトベースと一体的に形成されていることが好ましい。
【0013】
これにより、フロントボトムローラと空気紡績装置の両方の位置精度が高いため、糸品質の低下を一層回避できる。
【0014】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、ドラフト装置は、ドラフトクレードルと、第3取付部と、を備える。前記ドラフトクレードルは、前記ドラフトボトムローラに対向するドラフトトップローラを支持し、前記ドラフトベースに対して開閉する。前記第3取付部には、前記ドラフトクレードルが回転可能に取り付けられる。前記第3取付部が前記ドラフトベースと一体的に形成されている。
【0015】
これにより、ドラフトクレードルの位置精度が高いため、ドラフトボトムローラとドラフトボトムローラの位置ズレを回避できる。
【0016】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、ドラフト装置は、ミドルボトムローラと、位置決め部と、を備える。前記ミドルボトムローラは、前記フロントボトムローラよりも繊維束走行方向の上流に配置される。前記位置決め部は、前記ミドルボトムローラを位置決めする。前記位置決め部が前記ドラフトベースと一体的に形成されている。
【0017】
これにより、ミドルボトムローラの位置精度が高いため、糸品質の低下を一層回避できる。
【0018】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。ドラフト装置は、ボトムエプロンベルトと、ベルト案内部材と、を備える。前記ボトムエプロンベルトは、前記ミドルボトムローラに巻き掛けられ、前記繊維束をドラフトする。前記ベルト案内部材は、繊維束走行方向において、前記フロントボトムローラと前記ミドルボトムローラの間の領域を含む範囲に配置され、前記ボトムエプロンベルトの張りを調整する。前記第1取付部が前記ドラフトベースと一体的に形成されている。
【0019】
これにより、フロントボトムローラの位置精度が高いため、フロントボトムローラとベルト案内部材の間の隙間の精度も高くなる。そのため、適切な位置にベルト案内部材を配置することができる。
【0020】
前記のドラフト装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ドラフトベースには、前記第1取付部が前記軸方向に並べて2つ配置され、それぞれの前記第1取付部に前記フロントボトムローラが1つずつ取り付けられる。前記ドラフトベースには、前記第2取付部が前記軸方向に並べて2つ配置され、それぞれの前記第2取付部に前記空気紡績装置が1つずつ取り付けられる。
【0021】
これにより、軸方向に並べて配置される2つのフロントボトムローラの位置及び/又は軸方向に並べて配置される2つの空気紡績装置の位置を揃えることができる。従って、軸方向に並べて配置される2つの構成同士で、糸品質のバラツキを低下させることができる。
【0022】
前記のドラフト装置においては、2つの前記第1取付部は軸方向に離間して配置されていることが好ましい。
【0023】
これにより、2つの第1取付部の間にスペースを形成できる。また、第1取付部を設けるために必要な材料の量を削減できる。
【0024】
前記のドラフト装置においては、前記ドラフトベースに接続され、当該ドラフトベースから前記軸方向に突出するとともに、前記ドラフトベースを紡績機のフレームに固定させるための固定部を備えることが好ましい。
【0025】
これにより、オペレータがアクセスし易い位置に固定部が形成されているため、紡績機のフレームに対するドラフトベースの着脱作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドラフト装置を備える紡績機の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の一実施形態に係るドラフト装置5を備える紡績機1について、図面を参照して説明する。
図1に示す紡績機1は、並設された複数の紡績ユニット2と、フレーム3と、糸継台車30と、を備える。
【0028】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、繊維束ガイド4と、ドラフト装置5と、空気紡績装置6と、糸監視装置7と、糸貯留装置8と、巻取装置9と、を備える。紡績ユニット2が備える各装置は、フレーム3によって支持されている。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での繊維束及び糸の走行方向における上流及び下流を意味する。
【0029】
繊維束ガイド4は、図略のスライバケースから供給される繊維束10をガイドする。繊維束ガイド4がガイドした繊維束10は、ドラフト装置5に供給される。
【0030】
ドラフト装置5は、繊維束10をドラフトする。ドラフト装置5は、ドラフトを行うための部材として、ドラフトボトムローラ群5aと、ドラフトトップローラ群5bと、を備える。ドラフトボトムローラ群5aは、複数のドラフトボトムローラを備える。ドラフトボトムローラは、図示しないモータにより回転駆動される。ドラフトトップローラ群5bは、複数のドラフトトップローラを有する。ドラフトボトムローラとドラフトトップローラは対向するように配置されている。ドラフトボトムローラとドラフトトップローラとの間に繊維束10を挟み込んで搬送することにより、繊維束10を引き延ばすことができる。ドラフト装置5の詳細については後述する。
【0031】
空気紡績装置6は、内部に旋回空気流を発生させて、空気紡績を行うことができる。空気紡績装置6は、ドラフト装置5から供給された繊維束10に対して旋回空気流により撚りを加えて紡績することにより、糸15を生成する。なお、空気紡績装置6に代えて、リング紡績を行う装置を用いてもよい。
【0032】
空気紡績装置6により生成された糸15は、糸監視装置7を通過する。糸監視装置7は、走行する糸15の太さを、図略の光学式のセンサによって監視する。糸監視装置7は、糸15の糸欠陥(例えば糸15の太さ等に異常がある箇所)を検出した場合に、糸欠陥検出信号をユニット制御部26へ送信する。ユニット制御部26は、糸欠陥検出信号を受信した場合、糸15を切断する。ユニット制御部26は、空気紡績装置6を停止させて糸15を切断してもよいし、カッタを駆動して糸15を切断してもよい。なお、糸監視装置7は光学式のセンサに限らず、例えば静電容量式のセンサにより糸15の太さを監視してもよい。また、糸欠陥として、糸15に含まれる異物、及び/又は糸15のテンションの異常を監視してもよい。
【0033】
糸監視装置7を通過した糸15は、巻取装置9によってボビン17に巻き取られる。巻取装置9は、糸15を巻き取ってパッケージ18を形成する。巻取装置9は、クレードルアーム19と、巻取ドラム20と、トラバース装置21と、を備える。
【0034】
クレードルアーム19は、糸15を巻き取るためのボビン17を回転可能に支持する。巻取ドラム20は、前記ボビン17の外周面又は前記パッケージ18の外周面に接触して回転駆動されることにより、前記ボビン17(又はパッケージ18)を従動回転させる。トラバース装置21は、トラバースガイド22を備える。トラバースガイド22は、糸15を案内した状態でボビン17の巻幅方向に駆動される。これにより、ボビン17に巻き取られる糸15をトラバースすることができる。
【0035】
以上の構成の紡績ユニット2により、繊維束10から糸15を生成して、ボビン17に巻き取ることができる。
【0036】
本実施形態の紡績機1では、糸監視装置7と巻取装置9の間に、糸貯留装置8が配置されている。糸貯留装置8は、
図2に示すように、糸貯留ローラ23と、当該糸貯留ローラ23を回転駆動する電動モータ25と、を備える。
【0037】
電動モータ25が糸貯留ローラ23を回転駆動することにより、糸貯留装置8が空気紡績装置6から糸15を引き出す。糸貯留ローラ23は、引き出した糸15を外周面に巻き付けて一時的に貯留できる。このように糸15を一時的に貯留するので、糸貯留装置8は一種のバッファとして機能する。これにより、空気紡績装置6における紡績速度と、巻取装置9における巻取速度と、が何らかの理由により一致しない場合の不具合(例えば糸15の弛みなど)を解消することができる。
【0038】
それぞれの紡績ユニット2は、ユニット制御部26を備える。ユニット制御部26は、紡績ユニット2が備える各構成を制御する。1つのユニット制御部26が、2以上の所定数の紡績ユニット2を制御するように構成されてもよい。
【0039】
糸継台車30は、
図1及び
図2に示すように、糸継装置31と、サクションパイプ32と、サクションマウス33と、を備える。
【0040】
糸継装置31は、糸端同士を接合するための装置である。糸継装置31の構成は特に限定されないが、例えば旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせる空気式のスプライサを採用できる。糸継装置31は、糸端同士を機械的に結ぶノッターであってもよい。前記サクションパイプ32は、空気紡績装置6から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉して、糸継装置31へ案内する。サクションマウス33は、巻取装置9に支持されたパッケージ18から糸端を吸引しつつ捕捉して、糸継装置31へ案内する。
【0041】
糸継装置31は、サクションパイプ32及びサクションマウス33によって案内された糸端同士の接合を行う。これにより、切断された糸15が、空気紡績装置6と巻取装置9の間で再び連続状態になる。
【0042】
次に、
図3を参照して、ドラフト装置5及び空気紡績装置6について説明する。
【0043】
図3に示すように、ドラフト装置5は、ドラフトベース50を備える。ドラフトベース50は、フレーム状又はブロック状の部材である。ドラフトベース50は、フレーム3に固定される。
【0044】
ドラフトベース50には、ドラフトボトムローラ群5aと、空気紡績装置6と、が取り付けられている。ドラフトベース50は、ドラフトボトムローラ群5aと、空気紡績装置6と、を支持する。
図3に示すように、ドラフトボトムローラ群5aは、繊維走行方向の下流から上流に向かって順に並べられた、フロントボトムローラ51と、ミドルボトムローラ52と、サードボトムローラ53と、バックボトムローラ54と、を備える。繊維走行方向において、フロントボトムローラ51とミドルボトムローラ52の間の領域を含む範囲には、テンサバー(ベルト案内部材)56が配置されている。ドラフト装置5において繊維束10は繊維走行方向にドラフトされるので、ドラフト方向は繊維走行方向と平行である。ミドルボトムローラ52及びテンサバー56には、ボトムエプロンベルト57が巻き掛けられている。テンサバー56は、ボトムエプロンベルト57の張りを調整する。
【0045】
ドラフト装置5は、図示しない複数のモータを備える。それぞれのモータは、フロントボトムローラ51、ミドルボトムローラ52、サードボトムローラ53及びバックボトムローラ54を回転駆動することができる。
【0046】
図3に示すように、ドラフト装置5は、ドラフトクレードル90を備える。ドラフトクレードル90にはドラフトトップローラ群5bが取り付けられており、ドラフトクレードル90はドラフトトップローラ群5bを支持する。ドラフトクレードル90は、開閉軸90aを中心として、ドラフトベース50に対して開閉可能である。ドラフトクレードル90を閉じることにより、ドラフトトップローラ群5bがドラフトボトムローラ群5aに接触又は近接する。
図3に示すように、ドラフトトップローラ群5bは、繊維走行方向の下流から上流に向かって順に、フロントトップローラ91と、ミドルトップローラ92と、サードトップローラ93と、バックトップローラ94と、を備える。ミドルトップローラ92には、トップエプロンベルト97が巻き掛けられている。
【0047】
図4に示すように、本実施形態では、1つのドラフトベース50に対し、2つのドラフトボトムローラ群5a及び2つの空気紡績装置6が並べて配置されている。言い換えれば、本実施形態では、1つのドラフトベース50に対して2つの繊維束経路が並べて配置される。1つのドラフトベース50における2つのドラフトボトムローラ群5aの並列方向と2つの空気紡績装置6の並列方向は、ドラフトボトムローラ群5aを構成する各ドラフトローラの軸方向と平行である。以下、ドラフトボトムローラ群5aの各ドラフトローラの軸方向に平行な方向を、ローラ軸方向と呼ぶことがある。2つのドラフトボトムローラ群5a及びその支持構造は対称線L1に関して対称な構造であるため、まとめて説明する。対称線L1は、2つの繊維束経路の中間位置に配置されている。
【0048】
2つの繊維束経路に平行な平面へ、ドラフトベース50及び2つの繊維束経路が、平面に垂直な向きに投影された投影面を考える。この投影面において、ドラフトベース50は、2つの繊維束経路の間に配置されている。詳細には、ローラ軸方向及び繊維走行方向の両方に直交する方向で見たときに、投影面において、2つのドラフトボトムローラ群5aの間を含む位置にドラフトベース50が配置されている。これにより、2つのドラフトボトムローラ群5aに対して1つのドラフトベース50を設けることができる。ドラフトベース50は、前述の対称線L1に関して実質的に対称に形成されている。
【0049】
図3に示すように、空気紡績装置6は、第1ブロック71と、第2ブロック72と、第1アーム73と、第2アーム74と、取付軸75と、を備える。
【0050】
第1ブロック71には、フロントボトムローラ51及びフロントトップローラ91から送出された繊維束10が供給される。第1ブロック71には、ノズルが形成されている。ノズルから空気を噴出することにより、空気紡績装置6内に旋回空気流が発生する。発生した旋回空気流は、繊維束10に作用する。第2ブロック72には、中空ガイド軸体が設けられている。旋回空気流が作用することにより、繊維束10の繊維は、中空ガイド軸体の先端の周囲を振り回される。これにより、繊維束10に撚りが加えられて糸15が生成される。
【0051】
第1アーム73は、長手状の部材であり、長手方向の一端に第1ブロック71が固定されている。第1アーム73は、長手方向の他端を支持する取付軸75を中心として回転することができる。第2アーム74は、長手状の部材であり、長手方向の一端に第2ブロック72が固定されている。第2アーム74は、長手方向の他端を支持する取付軸75を中心として回転することができる。これにより、第1ブロック71と第2ブロック72を離間させて、例えば清掃等のメンテナンスを行うことができる。具体的には、複動式のエアシリンダ、又は単動式のエアシリンダと弾性部材(例えばバネ)により、回転動作を行ってもよい。
【0052】
また、空気紡績装置6の取付軸75は、ドラフトベース50に取り付けられている。なお、取付軸75は回転中心としての軸に限られず、空気紡績装置6を支持するための軸であればよい。また、第2ブロック72を回転させる構成に代えて、第1ブロック71に対して第2ブロック72を直線移動させる構成であってもよい。
【0053】
図4に示すように、ドラフト装置5は、フロントローラハウジング(第1取付部)61と、ミドルローラハウジング62と、サードローラハウジング63と、バックローラハウジング64と、を備える。
【0054】
フロントローラハウジング61は、フロントボトムローラ51を片持ちで支持する。フロントローラハウジング61は、1つのフロントボトムローラ51に対して1つ設けられている。即ち、1つのドラフトベース50に2つのフロントローラハウジング61が配置されている。2つのフロントローラハウジング61はローラ軸方向に離間して配置されているため、それらの間には隙間(空間)が存在する。フロントローラハウジング61には、軸心孔61aが形成されている。軸心孔61aには、フロントボトムローラ51の回転軸のうち、対称線L1に近い側の端部が取り付けられる。なお、フロントローラハウジング61がフロントボトムローラ51を両持ちで支持してもよい。
【0055】
図5において、フロントローラハウジング61は、ドラフトベース50から上方へ(ドラフトクレードル90に向けて)突出するように、ドラフトベース50と一体的に形成されている。詳細には、型を用いてドラフトベース50とフロントローラハウジング61が一体的に製造された後に、工作機械を用いてフロントローラハウジング61を機械加工して軸心孔61aが形成される。従って、ドラフトベース50とフロントローラハウジング61の間には、接続痕はなく、更に固定具等も取り付けられていない。
【0056】
仮に、ドラフトベース50に固定具等によりフロントローラハウジング61を取り付ける場合、ドラフトベース50とフロントローラハウジング61の取付誤差に起因して、フロントローラハウジング61の位置精度が低下する可能性がある。また、固定具の緩み又はガタツキ等に起因して、フロントローラハウジング61の位置が変化する可能性もある。その結果、空気紡績装置6とフロントボトムローラ51の位置関係が適切な範囲から外れ、繊維束10が随伴気流の影響を大きく受けて、糸品質が低下することがある。
【0057】
この点、本実施形態のようにドラフトベース50とフロントローラハウジング61を一体的に形成することにより、フロントローラハウジング61の位置精度が高くなる。その結果、空気紡績装置6とフロントボトムローラ51の位置関係を適切な範囲に維持することができるので、糸品質の低下を回避できる。
【0058】
ミドルローラハウジング62は、ミドルボトムローラ52を片持ちで支持する。ミドルローラハウジング62は、1つのミドルボトムローラ52に対して1つ設けられている。即ち、1つのドラフトベース50に2つのミドルローラハウジング62が配置されている。ミドルローラハウジング62は、ミドルボトムローラ52の端部のうち、対称線L1に近い側の端部を支持する。なお、ミドルローラハウジング62がミドルボトムローラ52を両持ちで支持してもよい。
【0059】
図5に示すように、ドラフトベース50には位置決め孔81が形成されている。位置決め孔81はローラ軸方向に平行なキー溝である。また、ミドルローラハウジング62の底面には、図略のキーが固定されている。ミドルローラハウジング62のキーと位置決め孔81がキー結合することにより、ミドルローラハウジング62がドラフトベース50に対して位置決めされる。つまり、ミドルボトムローラ52は位置決め孔81によって位置決めされる。この状態で、ミドルローラハウジング62を適宜の固定具によりドラフトベース50に対して固定する。
【0060】
ミドルローラハウジング62には、固定用アーム58が固定されている。固定用アーム58はローラ軸方向に延びており、固定用アーム58の端部にテンサバー56が固定されている。
【0061】
以上により、ドラフトベース50を基準として、フロントボトムローラ51、ミドルボトムローラ52、及びテンサバー56が位置決めされる。ドラフト装置5では、特に、フロントボトムローラ51とテンサバー56の間の隙間(繊維走行方向の長さ)が重要であり、この隙間を精度良く定める必要がある。この点、本実施形態ではフロントボトムローラ51の位置精度が高いため、この隙間の長さの精度も高くなる。
【0062】
なお、本実施形態では、ドラフトベース50とミドルローラハウジング62は一体的に形成されていないが、ドラフトベース50とミドルローラハウジング62を一体的に形成してもよい。
【0063】
サードローラハウジング63は、サードボトムローラ53を両持ちで支持する。サードローラハウジング63は、2つのサードボトムローラ53に対して1つ設けられ、2つのサードボトムローラ53の間を繋ぐように配置されている。なお、サードローラハウジング63がサードボトムローラ53を片持ちで支持してもよい。
【0064】
図5に示すように、ドラフトベース50には第1調整孔82が形成されている。第1調整孔82は、繊維走行方向に細長い長孔である。サードローラハウジング63は、固定具としての1対のネジにより、第1調整孔82に固定されている。ネジを緩めることにより、サードローラハウジング63を第1調整孔82に沿って移動させ、所望の位置においてネジを締め付けて固定することができる。これにより、サードボトムローラ53の繊維走行方向の位置を調整することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、ドラフトベース50とサードローラハウジング63は一体的に形成されていないが、ドラフトベース50とサードローラハウジング63を一体的に形成してもよい。
【0066】
バックローラハウジング64は、バックボトムローラ54を両持ちで支持する。バックローラハウジング64は、2つのバックボトムローラ54に対して1つ設けられ、2つのバックボトムローラ54の間を繋ぐように配置されている。なお、バックローラハウジング64がバックボトムローラ54を片持ちで支持してもよい。
【0067】
バックローラハウジング64は、サードローラハウジング63と同様の構成により、ドラフトベース50に取り付けられている。即ち、
図5に示すように、ドラフトベース50には第2調整孔83が形成されている。第2調整孔83は、繊維走行方向に細長い長孔である。バックローラハウジング64は、固定具としての1対のネジにより、第2調整孔83に固定されている。ネジを緩めることにより、バックローラハウジング64を第2調整孔83に沿って移動させ、所望の位置においてネジを締め付けて固定することができる。これにより、バックボトムローラ54の繊維走行方向の位置を調整することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、ドラフトベース50とバックローラハウジング64は一体的に形成されていないが、ドラフトベース50とバックローラハウジング64を一体的に形成してもよい。
【0069】
図5に示すように、ドラフト装置5は、更に、第2取付部85と、第3取付部86と、を備える。
【0070】
第2取付部85は、繊維走行方向においてフロントローラハウジング61の下流側に配置されている。第2取付部85は、空気紡績装置6を取り付けるための部分である。第2取付部85には、空気紡績装置6の取付軸75を取り付けるための孔が形成されている。第2取付部85の孔の軸方向は、ローラ軸方向と平行である。
【0071】
第2取付部85はドラフトベース50と一体的に形成されている。詳細には、型を用いてドラフトベース50と第2取付部85が一体的に製造された後に、工作機械を用いて第2取付部85を機械加工して孔が形成される。従って、ドラフトベース50と第2取付部85の間には、接続痕はなく、更に固定具等も取り付けられていない。
【0072】
本実施形態では、フロントローラハウジング61と第2取付部85の両方がドラフトベース50と一体的に形成されている。そのため、空気紡績装置6とフロントボトムローラ51の位置関係を更に高精度に定めることができるので、糸品質の低下をより一層回避できる。なお、フロントローラハウジング61と第2取付部85の一方のみが、ドラフトベース50とは一体的に形成されていてもよい。言い換えると、この場合、フロントローラハウジング61と第2取付部85の一方のみは、ドラフトベース50とは一体的に形成されていない。
【0073】
なお、第2取付部85は孔に代えて軸部材であってもよい。この場合、第2取付部85の軸部材に空気紡績装置6の取付孔が取り付けられる。この場合であっても、第2取付部85の軸部材の軸方向は、ローラ軸方向と平行である。
【0074】
第3取付部86は、繊維走行方向においてバックローラハウジング64(ドラフトボトムローラ群5a)の上流側に位置している。第3取付部86は、ドラフトクレードル90を取り付けるための部分である。詳細には、第3取付部86には、ドラフトクレードル90の開閉軸90aが回転可能に取り付けられる。開閉軸90aの軸方向、及び、第3取付部86の軸方向は、ローラ軸方向と平行である。
【0075】
第3取付部86はドラフトベース50と一体的に形成されている。詳細には、型を用いてドラフトベース50と第3取付部86が一体的に製造された後に、工作機械を用いて第3取付部86を機械加工して開閉軸90aを取り付けるための部分が形成される。従って、ドラフトベース50と第3取付部86の間には、接続痕はなく、更に固定具等も取り付けられていない。第3取付部86をドラフトベース50と一体的に形成することにより、第3取付部86の位置精度が高くなる。その結果、ドラフトボトムローラ群5aとドラフトトップローラ群5bの位置関係の精度を高くすることができる。
【0076】
上述したようにフロントローラハウジング61、第2取付部85、及び第3取付部86は、ドラフトベース50に対して、工作機械を用いて機械加工することで形成される。ここで、フロントローラハウジング61、第2取付部85、及び第3取付部86の軸方向は何れもローラ軸方向と平行である。そのため、ドラフトベース50をチャックを用いて工作機械に固定する際には、ドラフトベース50の側面(ローラ軸方向に垂直な面)に対して機械加工を行うことができるような向きで、ドラフトベース50が工作機械に固定される。この向きでドラフトベース50を工作機械に固定することにより、ドラフトベース50を固定する向きを変更することなく、フロントローラハウジング61、第2取付部85、及び第3取付部86を連続して形成することができる。つまり、ドラフトベース50を固定する向きを変更する手間が掛からないので、作業工数を低減でき、さらに、位置精度を向上できる。
【0077】
なお、第3取付部86はドラフトベース50と一体的に形成されていなくてもよい。
【0078】
図5に示すように、ドラフト装置5は、更に、第1固定部87と、第2固定部88と、を備える。第1固定部87は、繊維走行方向においてフロントローラハウジング61及び第2取付部85よりも下流側に位置している。投影面において、第1固定部87は、2つの繊維束経路の中間位置と重なる。第2固定部88は、繊維走行方向においてバックローラハウジング64及び第3取付部86よりも上流側に位置している。第2固定部88は、対称線L1に対して対称に合計2つ設けられている。それぞれの第2固定部88は、ドラフトベース50からローラ軸方向の外側(対称線L1から離れる側)に突出する。
【0079】
第1固定部87及び第2固定部88は、ドラフト装置5(ドラフトベース50)をフレーム3に固定するために用いられる。詳細には、第1固定部87及び第2固定部88にはそれぞれ固定孔が形成されている。第1固定部87及び第2固定部88の固定孔をフレーム3に形成された孔と合わせてボルト等の固定具を締結することにより、ドラフト装置5がフレーム3に固定される。
【0080】
仮に、第2固定部88が投影面において2つの繊維束経路の中間位置と重なる位置に設けられている場合、第2固定部88の近傍に第3取付部86が位置し、第3取付部86にドラフトクレードル90が取り付けられるため、第2固定部88がドラフトクレードル90で覆われる可能性がある。この場合、ドラフトベース50をフレーム3に固定する作業を容易に行うことができない可能性がある。また、第2固定部88とドラフトクレードル90の位置関係によっては、ドラフトベース50にドラフトクレードル90を取り付けた状態では、ドラフトベース50とフレーム3の着脱作業を行うことができない可能性もある。この場合は、ドラフトベース50からドラフトクレードル90を取り外した後に、ドラフトベース50とフレーム3の着脱作業を行う必要があるため、手間が掛かる。
【0081】
これに対し、本実施形態では、第2固定部88がドラフトベース50からローラ軸方向に突出するように設けられているため、第2固定部88がドラフトクレードル90に覆われない。そのため、ドラフトベース50をフレーム3に固定する作業を容易に行うことができる。更に、ドラフトベース50にドラフトクレードル90を取り付けた状態で、ドラフトベース50とフレーム3の着脱作業を行うことができる。以上により、本実施形態では、ドラフトベース50とフレーム3の着脱作業の作業性が高い。
【0082】
第1固定部87及び第2固定部88は、ドラフトベース50と一体的に形成されていてもよいし、溶接又は固定具等でドラフトベース50に取り付けられていてもよい。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態のドラフト装置5は、繊維束10をドラフトする。ドラフト装置5は、ドラフトベース50と、フロントローラハウジング61と、フロントボトムローラ51と、第2取付部85と、を備える。フロントローラハウジング61は、軸心孔61aが形成され、ドラフトベース50に接続される。フロントボトムローラ51は、複数のドラフトボトムローラのうち繊維束走行方向の最も下流に配置され、フロントローラハウジング61の軸心孔61aに取り付けられる。第2取付部85は、ドラフトベース50に接続され、空気紡績装置6の取付軸75又は取付孔に取り付けられる。フロントローラハウジング61と第2取付部85の少なくとも何れかはドラフトベース50と一体的に形成されている。フロントローラハウジング61の軸心孔61aの軸方向と、第2取付部85の軸方向と、が平行である。
【0084】
これにより、フロントローラハウジング61と第2取付部85の一方又は両方がドラフトベース50と一体的に形成されているため、フロントボトムローラ51と空気紡績装置6の一方又は両方の位置精度が高い。そのため、フロントボトムローラ51又は空気紡績装置6の位置精度の低下に起因する糸品質の低下を回避できる。また、工作機械による機械加工でフロントローラハウジング61と第2取付部85を形成する場合、フロントローラハウジング61と第2取付部85の軸方向が平行であるため、ドラフトベース50を固定する向きを変更することなく、フロントローラハウジング61と第2取付部85の機械加工を実施できる。そのため、工作機械による機械加工で製造する場合の手間を軽減できる。
【0085】
本実施形態のドラフト装置5において、フロントローラハウジング61と第2取付部85の両方がドラフトベース50と一体的に形成されている。
【0086】
これにより、フロントボトムローラ51と空気紡績装置6の両方の位置精度が高いため、糸品質の低下を一層回避できる。
【0087】
本実施形態のドラフト装置5は、ドラフトクレードル90と、第3取付部86と、を備える。ドラフトクレードル90は、ドラフトボトムローラに対向するドラフトトップローラを支持し、ドラフトベース50に対して開閉する。第3取付部86には、ドラフトクレードル90が回転可能に取り付けられる。第3取付部86がドラフトベース50と一体的に形成されている。
【0088】
これにより、ドラフトクレードル90の位置精度が高いため、ドラフトボトムローラ群5aとドラフトボトムローラ群5aの位置ズレを回避できる。
【0089】
本実施形態のドラフト装置5は、ミドルボトムローラ52と、位置決め孔81と、を備える。ミドルボトムローラ52は、フロントボトムローラ51よりも繊維束走行方向の上流に配置される。位置決め孔81は、ミドルボトムローラ52を位置決めする。位置決め孔81がドラフトベース50と一体的に形成されている。
【0090】
これにより、ミドルボトムローラ52の位置精度が高いため、糸品質の低下を一層回避できる。
【0091】
本実施形態のドラフト装置5は、ボトムエプロンベルト57と、テンサバー56と、を備える。ボトムエプロンベルト57は、ミドルボトムローラ52に巻き掛けられ、繊維束10をドラフトする。テンサバー56は、繊維束走行方向において、フロントボトムローラ51とミドルボトムローラ52の間の領域を含む範囲に配置され、ボトムエプロンベルト57の張りを調整する。フロントローラハウジング61がドラフトベース50と一体的に形成されている。
【0092】
これにより、フロントボトムローラ51の位置精度が高いため、フロントボトムローラ51とテンサバー56の間の隙間の精度も高くなる。そのため、適切な位置にテンサバー56を配置することができる。
【0093】
本実施形態のドラフト装置5において、ドラフトベース50には、フロントローラハウジング61が軸方向に並べて2つ配置され、それぞれのフロントローラハウジング61にフロントボトムローラ51が1つずつ取り付けられる。ドラフトベース50には、第2取付部85が軸方向に並べて2つ配置され、それぞれの第2取付部85に空気紡績装置6が1つずつ取り付けられる。
【0094】
これにより、軸方向に並べて配置される2つのフロントボトムローラ51の位置及び/又は軸方向に並べて配置される2つの空気紡績装置6の位置を揃えることができる。従って、軸方向に並べて配置される2つの構成同士で、糸品質のバラツキを低下させることができる。
【0095】
本実施形態のドラフト装置5において、2つのフロントローラハウジング61は軸方向に離間して配置されている。
【0096】
これにより、2つのフロントローラハウジング61の間にスペースを形成できる。また、フロントローラハウジング61を設けるために必要な材料の量を削減できる。
【0097】
本実施形態のドラフト装置5において、ドラフトベース50に接続され、ドラフトベース50から軸方向に突出するとともに、ドラフトベース50を紡績機1のフレーム3に固定させるため第2固定部88を備える。
【0098】
これにより、オペレータがアクセスし易い位置に第2固定部88が形成されているため、紡績機1のフレーム3に対するドラフトベース50の着脱作業を容易に行うことができる。
【0099】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0100】
ドラフト装置5において、2つのドラフトボトムローラ群5aが非対称的に配置されても良い。ドラフト装置5が、1つだけのドラフトボトムローラ群5aを有していても良い。この場合、ドラフトクレードル90は、1つの紡績ユニット2のドラフトトップローラ群5bを支持する。
【0101】
本実施形態では、2組のドラフトボトムローラ群5aがドラフトベース50に取り付けられて支持される。これに代えて、1組だけのドラフトボトムローラ群5aがドラフトベース50に取り付けられて支持されてもよい。
【0102】
上記実施形態では、機台高さ方向において、上側から供給された糸15が下側において巻き取られるように各装置が配置されていた。しかし、下側から供給された糸15が上側において巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
【0103】
上記実施形態では、糸貯留ローラ23により糸15を空気紡績装置6から引き出していた。しかし、公知のデリベリローラとニップローラにより糸15を空気紡績装置6から引き出してもよい。この場合、デリベリローラとニップローラよりも下流に、糸貯留ローラ23と、機械式のコンペンセータと、吸引式のスラックチューブとの少なくとも何れかを配置してもよい。
【0104】
上記実施形態では、紡績機1が糸継台車30を備えているが、糸継ぎに関連する装置の少なくとも1つが各紡績ユニット2に設けられていてもよい。また、糸継ぎ方法も、糸継装置31に限定されず、紡績機1はピーシングにより糸継ぎを行ってもよい。
【0105】
ドラフト装置5には、ドラフトローラを清掃する清掃部材及び/又はその他の部材が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 紡績機
5 ドラフト装置
6 空気紡績装置
50 ドラフトベース
61 フロントローラハウジング(第1取付部)
81 位置決め孔(位置決め部)
82 第1調整孔
83 第2調整孔
85 第2取付部
86 第3取付部
87 第1固定部
88 第2固定部(固定部)