IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スエヒロシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図1
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図2
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図3
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図4
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図5
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図6
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図7
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図8
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図9
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図10
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図11
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図12
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図13
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図14
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図15
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図16
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図17
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図18
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図19
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図20
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図21
  • 特開-長尺アンカ一体型ライナー 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153409
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】長尺アンカ一体型ライナー
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20241022BHJP
   E02D 27/44 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
E02D27/00 B
E02D27/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067288
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】598118400
【氏名又は名称】スエヒロシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】末廣 盛男
(72)【発明者】
【氏名】末廣 大幸
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA03
2D046DA44
(57)【要約】
【課題】機器を据え付ける機械基礎鉄筋コンクリートを組立打設する前に機器付属のアンカーボルトの位置を決定することができる長尺アンカ一体型ライナーを提供する。
【解決手段】本発明の長尺アンカ一体型ライナー10は、一端が機械基礎鉄筋コンクリート下のスラブに固定され、他端に前記機械基礎鉄筋コンクリートの上面に突出するネジ部及び前記ネジ部に螺合し上面に機器を据え付けるプレート又は前記機器の取り付け面を形成し前記プレート又は前記機器の据え付け高さを調整可能なライナー部を有するシャフトを備え、前記ライナー部の上面から前記シャフトの下端までの全長Lは、機械基礎の長さHと前記シャフトのあと施工アンカー定着代H1を合計した長さ(L=H+H1)に設定していることを特徴としている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が機械基礎鉄筋コンクリート下のスラブに固定され、他端に前記機械基礎鉄筋コンクリートの上面に突出するネジ部及び前記ネジ部に螺合し上面に機器を据え付けるプレート又は前記機器の取り付け面を形成し前記プレート又は前記機器の据え付け高さを調整可能なライナー部を有するシャフトを備え、前記ライナー部の上面から前記シャフトの下端までの全長Lは、機械基礎の長さHと前記シャフトのあと施工アンカー定着代H1を合計した長さ(L=H+H1)に設定していることを特徴とする長尺アンカ一体型ライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械基礎鉄筋コンクリート上に据え付ける機械機器(以下単に機器ということあり)のベースプレート(大型ポンプベースの場合、ソールプレートという)、仮設テンプレート(機器ベース裏面をかたどったプレート)(以下これらを単にプレートということあり)又は機械機器そのものの精密な位置調整を行うアンカ一体型ライナー(勾配ライナー、平ライナーの組み合わせ)に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は大型揚水ポンプの据付側面図である。図示のように大型揚水ポンプ100は、ポンプ本体102と、吐出管104と、揚水管106と、インペラー108を備え、水槽110の水を揚水して外部に吐出するものである。大型揚水ポンプ100は、水槽110の上面のスラブ1の開口112の周囲に設けた機械基礎114の上に水平、垂直状態の高い精度(0.01mmから0.001mm)で据え付ける必要がある。従来は、水平方向の調整は、押しボルト治具を使用して、垂直方向は勾配ライナー、平ライナー、本出願人はアンカ一体型ライナーを使用して行ってきた(特許文献1、2)。図14図22は従来の機器の据付方法の説明図である。以下、従来の大型ポンプなどの機器の据付方法について説明する。
【0003】
(基礎工事)
図14図13のD-D矢視の従来の大型揚水ポンプ基礎工事の機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。図15図14のE-E矢視の断面図である。図16図14のF-F矢視の側面図である(型枠4を除く)。
1.機械基礎鉄筋コンクリート2を組立打設する為に、スラブ1(既設躯体ともいう)の上に機械基礎鉄筋コンクリート2の平面上の基準線(X方向,Y方向)を墨出(罫書)し、基礎の平面寸法を罫書く。基礎の高さ寸法であるZ方向は副基準線として近くの壁、柱等に罫書いておく。アンカーボルト20(機器アンカーボルトともいう)位置のX,Y位置を墨出しする。アンカーボルト20の高さ(Z方向)は近くの壁、柱等に罫書いておくとよい。(図14参照)また、鉄筋3の平面位置をスラブ1に罫書いておく。
2.差し筋(Z方向)を施工する。差し筋(Z方向)は、躯体鉄筋を斫り出して基礎鉄筋を結束する場合と(図15の右断面参照)、またはあと施工アンカーとして鉄筋3をスラブ1に打ち込む場合がある(図15の左側断面参照)。この差し筋に絡めてX方向,Y方向,Z方向の配筋を組み立てる。
3.図15の型枠4(箱抜き穴5と同じ)を取り付ける。箱抜き穴5に発砲スチロール等を充填する。アンカー箱抜き穴として型枠4を取り付ける。(図15参照)
4.箱抜き穴部分を除いて図14の機械基礎鉄筋コンクリート2を組立打設する。基礎の高さL(図16参照)より基礎グラウト分(50mm~70mmほど)控えてコンクリートを組立打設する。コンクリートが固まるまで28日間養生する。
【0004】
(箱抜き穴)
図17は従来の箱抜き穴を設ける場合の機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。図18図17のH-H矢視の断面図である。図19図17のG-G矢視の側面図である(型枠4を除く)。
5.箱抜き穴5の発泡スチロール等を取り除き、アンカーボルト20を取付ける空間を設ける。成形された機械基礎鉄筋コンクリート2の上面に基準線を墨出しする(X方向,Y方向)。機械基礎鉄筋コンクリート2上にアンカーボルト20の位置決めを行う(X方向,Y方向図17参照)。アンカーボルト20が十分に納まる箱抜き穴位置であることを確認する。
6.機械基礎鉄筋コンクリート2上面に一次芯出し用の仮ライナー6(平ライナー、勾配ライナー、アンカ一体型ライナー)又はパッカーを取り付ける。
7.プレート7(上側が機器のベースプレート、下側がソールプレート(アンカーボルト取付穴有り))を仮ライナー6の上に乗せ据え付け(一次)芯出しを行う(X,Y,Z方向)。機械付属のアンカーボルト20をプレート7にナットを表裏より締め付けることにより固定する。(図18,19参照)
8.箱抜き穴5内へコンクリートあるいはモルタルを充填する。コンクリートが固まるまで28日の養生が必要となる。又は期間短縮、コンクリート強度確保のために無収縮モルタルを使用することもある。この場合養生期間は3日間必要となる。アンカーボルト20の固定が完了する。
【0005】
(機器の芯出し)
図20は従来の機器の芯出しの機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。図21図20のI-I矢視の断面図である。図22図20のJ-J矢視の側面図である。
9.アンカーボルト20の円周方向(X,Y方向中心とする同心円)の両サイドに本ライナー8(平ライナー、勾配ライナーの組合せ、あるいはアンカ一体型ライナー)を設置する(図20参照)。ポンプを据え付け、本ライナー8を調整して(二次)芯出しを行う。シムによる調整を行う。本ライナー8を点溶接して固定する。
10.グラウチングを行う。プレート7の下面及び周囲に基礎グラウト116を無収縮モルタル又はモルタルで固定する(図21参照)。機械基礎鉄筋コンクリート2の周囲にモルタル仕上118を施す(図21参照)。
【0006】
従来の機器据付方法は、機械基礎鉄筋コンクリートを組立打設した後でなければ、仮ライナーを設置することができず、本設のアンカーボルトを位置決めすることができなかった。また、箱抜き穴にコンクリートを充填して本設のアンカーボルトをコンクリートで固定しなければ本芯出しができなかった。このため、基礎工事がスタートしてから機器芯出し作業を完了させるまでの工期が長期化していた。
またスラブ上面で全体位置出しをして機械基礎鉄筋コンクリートの組立打設後に再度、機械基礎鉄筋コンクリート上面に基準線の墨出しを行わなければならない。このため、墨出し作業が二度手間となり、その度に検査を受けて工程を進めないといけないので工期が長期化していた。
また機器を据え付ける二次芯出しの際に、本ライナーによる調整に加えて、シムによる微妙な調整作業が必要となり、煩雑な作業かつ工期が長期化していた。特許文献1,2のアンカ一体型ライナーの据え付けによる工期短縮も従来の芯出し作業工程の時間を短縮するものである。その短縮時間は4時間から72時間ほどである。基礎工事から機器据え付け完了までの所要時間を更に約1カ月以上短縮することは、工事従事者の大きな課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3775717号
【特許文献2】特許第4065957号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】編著 地方共同法人 日本下水道事業団,発行 一般財団法人 下水道事業支援センター,“機械設備工事必携 工事管理記録(本編)令和3年度”,第3章,主ポンプ設備,P12~P21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、機器を据え付ける機械基礎鉄筋コンクリートを組立打設する前に機器付属のアンカーボルトを位置決めして取り付けることができる長尺アンカ一体型ライナーを提供することにある。
また機械基礎鉄筋コンクリートを組立打設する前に取り付けるアンカ一体型ライナーの全長を数式化した長尺アンカ一体型ライナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、一端が機械基礎鉄筋コンクリート下のスラブに固定され、他端に前記機械基礎鉄筋コンクリートの上面に突出するネジ部及び前記ネジ部に螺合し上面に機器を据え付けるプレート又は前記機器の取り付け面を形成し前記プレート又は前記機器の据え付け高さを調整可能なライナー部を有するシャフトを備え、前記ライナー部の上面から前記シャフトの下端までの全長Lは、機械基礎Hと前記シャフトのあと施工アンカー定着代H1を合計した長さ(L=H+H1)に設定していることを特徴とする長尺アンカ一体型ライナーを提供することにある。
上記第1の手段によれば、機械基礎鉄筋コンクリートを組立打設する前にスラブに固定できるため、コンクリート打設後は強固に固定されて機器据付の工程を大幅に短縮できる。
またライナーの全長が特定できるため、据付箇所の設計書において設計価格を提示できる。あるいはライナーを規格化して物価本に建設資材価格として掲載することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械基礎鉄筋コンクリートの組立打設前にアンカーボルトを位置決めでき、墨出し作業回数が少なくなり、箱抜き穴作成作業をなくし、コンクリート充填作業をなくし、コンクリート組立打設後の養生期間を省略でき、シム調整が省略でき、ステップ毎の品質検査を省略できるので、機器据付の工程を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の長尺アンカ一体型ライナーの正面図である。
図2】長尺アンカ一体型ライナーの据付図である。
図3】芯出しナットの説明図である。
図4】箱抜き穴有りの機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。
図5】箱抜き穴有りの図4のA-A矢視の断面図である。
図6】箱抜き穴有りの図4のB-B矢視の側面図である。
図7】箱抜き穴を打設した図4のA1-A1矢視の断面図である。
図8】箱抜き穴を打設した図4のB-B矢視の側面図である。
図9】箱抜き穴無しの機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。
図10図9の機械基礎コンクリート打設前のC-C矢視の側面図である。
図11図9の基礎コンクリート打設後のC-C矢視の側面図である。
図12図9の基礎グラウト後のC-C矢視の側面図である。
図13】大型揚水ポンプの据付側面図である。
図14図13のD-D矢視の従来の大型揚水ポンプ基礎工事の機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。
図15図14のE-E矢視の断面図である。
図16図14のF-F矢視の側面図である。
図17】従来の箱抜き穴を設ける場合の機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。
図18図17のH-H矢視の断面図である。
図19図17のG-G矢視の側面図である。
図20】従来の機器の芯出しの機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。
図21図20のI-I矢視の断面図である。
図22図20のJ-J矢視の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の長尺アンカ一体型ライナーの実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
本実施形態では、機器を据え付けるスラブ面の横方向、縦方向をX方向,Y方向とし、スラブ面からの高さ方向をZ方向として以下説明する。
[長尺アンカ一体型ライナー10]
図1は本発明の長尺アンカ一体型ライナーの正面図である。図2は長尺アンカ一体型ライナーの据付図である。
機器はプレート7を介して、現場のスラブ1上に形成する機械基礎114の上に高精度で据え付けられる。機械基礎114は機械基礎鉄筋コンクリート2と基礎グラウト116からなる。機械基礎鉄筋コンクリート2は、内部に基礎鉄筋(基礎カゴ筋ともいう)が配置されている。基礎鉄筋は鉄筋3をカゴ状に組み合わせてコンクリートの強度を高めている。本発明の長尺アンカ一体型ライナー10は、スラブ1と機械基礎114に取り付けている。
長尺アンカ一体型ライナー10は金属製であり、一端が機械基礎鉄筋コンクリート2下のスラブ1に固定され、他端にシャフト径よりも大径のネジ部13aと、上面が機械基礎114の上面と同じ高さに配置され、ネジ部13aに螺合して上面に機器を据え付けるプレート7の取り付け面を形成しプレート7の据え付け高さを調整可能なライナー部13bを備え、前記ライナー部13bの上面から前記シャフト12の下端までの全長Lは、機械基礎114の長さ(厚み又は深さ)(H)と前記シャフトのあと施工アンカー定着代115(H1)を合計した長さ(L=H+H1)に設定している。機械基礎114(H)は設計図で決定される。ライナー調整は機械基礎天端と機械基礎114の表面に近い第一鉄筋の間(コンクリート定着代)で行う。コンクリート定着代は図2中の(A)寸法で表されるが、その寸法はコンクリート標準示方書(2002年制定 コンクリート標準示方書[構造性能照査編]120頁 発行所 社団法人 土木学会)によれば、特に厳しい腐食性環境の場合70mm以下である。本発明の長尺アンカ一体型ライナー10は、あと施工アンカーとして躯体スラブ1に打ち込まれる。例えば、耐震のあと施工アンカーにスラブへの打ち込み深さ(H1)13Dである(あと施工アンカー[接着系]技術資料 2頁 製造元 日本デコラックス株式会社)。従って長尺アンカ一体型ライナーの全長Lは、上記の式(L=H+H1)で定義づけられる。
シャフト12は、機械基礎鉄筋コンクリート2を形成している基礎カゴ筋の上場筋と下場筋の工程差寸法よりも長く(図2参照)、金属製のシャフトの下端をスラブ1にあと施工アンカーとして固定する。シャフト12は接着剤またはコンクリートクサビ打ち込み方式で下端をスラブ1の穿孔に埋め込んで固定できる。
シャフト12は上端にシャフト径よりも大径のネジ部13aを有し、上面が機械基礎114の上面と同じ高さに配置され、ネジ部13aに螺合して上面に機器を据え付けるプレートの取付面を形成してプレートの据え付け高さを調整できるライナー部13bを備えている。ライナー部13bの上面は機械基礎114の上面と一致しており、プレート7との接触面となる。プレート7は、ベースプレート、ソールプレート、仮設テンプレート等である。なお機器が小型の場合にはプレートを用いずに機械基礎114上に直に機器を据え付ける場合もある。なおライナー部13bは、周面(側面)に4つの回転用穴(このうち中心と対向する2つの孔は樹脂の充填孔を兼用)を設置し、この回転用穴にシャフトを差し込んで回転させてプレート7又は機器の据付位置の調整を行うことができる。
従って、機械基礎鉄筋コンクリートを組立打設する前にプレート又は機器を配置してアンカーボルトを位置決めできるため、機器据付の工程を大幅に短縮できる。
また機械基礎鉄筋コンクリートを組立打設する前にスラブに固定できるため、コンクリート打設後は強固に固定されて機器据付の工程を大幅に短縮できる。
[芯出しナット40]
図3は芯出しナットの説明図である。芯出しナット40は、プレート7又は機器のアンカーボルト取付穴7aに嵌めるナットである。芯出しナット40は、アンカーボルト取付穴7aに嵌る筒体42と、アンカーボルト取付穴7aの孔径よりも大きいヘッド44を一体形成したナットである。筒体42の外径はアンカーボルト取付穴7aの穴径より少し小さく嵌めたときに1mm以下、好ましくは0.5mm以下の隙間とし、大きな隙間が生じないように形成し、筒体42の内側はアンカーボルト20が螺合できる雌ネジ構造になっている。ヘッド44は六角形状(その他、四角形を含む多角形であっても良い)であり六角スパナなどの工具で締結又は取り外しができる。このような芯出しナット40は、据付位置を微調整するためにプレート7又は機器のアンカーボルト取付穴7aの穴径がアンカーボルト20の軸径よりも大きく設定されているので、アンカーボルト取付穴7aに芯出しナット40を介してアンカーボルト20の軸心をアンカーボルト取付穴7aの中心に緩みなく一致させて取り付けることができる。このためアンカーボルト20のX方向及びY方向を緩みなく高精度に位置合わせすることができる。
【0014】
上記構成による本発明の機器の据付方法について以下説明する。
(実施例1:機器の据付方法(アンカーの箱抜き穴を設ける据付方法))
図4は箱抜き穴有りの機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。図5は箱抜き穴有りの図4のA-A矢視の断面図である。図6は箱抜き穴有りの機械基礎鉄筋コンクリートのB-B矢視の側面図である(本芯用アンカ一体型ライナー30有り)。図7は箱抜き穴を打設した図4のA1-A1矢視の断面図である(本芯用アンカ一体型ライナー30有り)。図8は箱抜き穴を打設した図4のB-B矢視の側面図である(本芯用アンカ一体型ライナー30有り)。
実施例1の機器の据付方法は、従来技術と同様にアンカーの箱抜き穴を設ける方法である。アンカーボルトの箱抜き穴を設ける場合、本発明の長尺アンカ一体型ライナー10は仮芯用のライナー(従来の仮ライナー)として用いる。また短尺のアンカ一体型ライナー30(従来型)を本芯用のライナーとして用いる。
1.機械基礎鉄筋コンクリート2の基準線(X方向,Y方向)をスラブ1の上に墨出しする。Z方向は近くの壁、柱等に罫書く。またアンカーボルト20位置のX,Y基準線を墨出しする。基礎高さ(Z方向)は近くの壁、柱等に罫書く。仮芯用の長尺アンカ一体型ライナー10の位置を罫書く。(図4参照)。仮芯用の長尺アンカ一体型ライナー10の位置は、従来工法の仮ライナーの取付位置と同様に、アンカーボルト20を配置する箱抜き穴5から離れた箇所となる。このとき基礎の鉄筋3の位置も罫書き、仮芯用の長尺アンカ一体型ライナー10の位置と重ならないようにする。
2.仮芯用の長尺アンカ一体型ライナー10を長さ調整(シャフト12の長さをαに設定)して、接着剤またはコンクリートクサビ打ち込み方式で下端をスラブ1の穿孔に埋め込んで固定する。
3.差し筋(Z方向)を施工する。スラブ1の鉄筋を斫り出して基礎鉄筋を結束、又はあと施工アンカーとして鉄筋3をスラブ1に打ち込む。機械基礎鉄筋コンクリート2の配筋を行う。
4.プレート7を仮芯用の長尺アンカ一体型ライナー10上に配置する(図5参照)。シャフト径が細いときはプレート7を配置するとぐらつくため水平方向にサポートバーを設けて近接する鉄筋に固定するとよい。シャフト径が太いときにはプレート7を配置しても安定している。アンカーボルト20をプレート7のアンカーボルト取付穴7aにぶら下げるように取り付ける(図6参照)。アンカーボルト20を囲むように箱抜き穴5を作成する。アンカーボルト20、アンカ一体型ライナー30は取り外した状態で、箱抜き穴を作成する。
5.機械基礎鉄筋コンクリート2を組立打設する。コンクリートが固まるまで28日間養生する。型枠4を分解撤去し、アンカー箱抜き穴空間を作成する。
6.仮芯用の長尺アンカ一体型ライナー10の上面にスライドペーパー50を(2枚)敷く(図6参照)。プレート7の一次芯出しを行う。仮芯用の長尺アンカ一体型ライナー10のライナー部13bを調整して行う。このときスライドペーパー50により滑り抵抗が大幅に低減されて重量物の芯出しの調整作業を容易に行える。芯出し後は仮芯用の長尺アンカ一体型ライナー10を1個ずつ下げてスライドペーパーを取り除き元に戻す。
プレート7のアンカーボルト取付穴7aに芯出しナット40を挿入する。芯出しナット40にアンカーボルト20を挿入して固定する。これによりアンカーボルト取付穴内における隙間を最小限にできるので、アンカーボルトのX,Y方向の精度良い取付が実現できる。
本芯用アンカ一体型ライナー30をアンカーボルト20の近く両サイドに2本設置する。プレート7の裏面に磁石60で固定する。箱抜き穴5の空間内において、プレート7又は機器の裏面(鉄製)に磁石を取り付ける簡易な行為により、そこに従来のアンカ一体型ライナー30を容易に固定することができる。なお本芯用アンカ一体型ライナー30は、本出願の既出願となる特許第4065957号に開示のライナーを用いている。
7.箱抜き穴5内へコンクリートを充填する。コンクリートが固まるまで28日間養生する。アンカーボルト20が固定される。本芯用アンカ一体型ライナー30も固定される。本芯用アンカ一体型ライナー30の磁石を取り外し、上面にスライドペーパー50を(2枚)敷く(図7参照)。
8.ポンプを据え付ける。二次芯出しを行う。本芯用アンカ一体型ライナー30を調整する。本芯用アンカ一体型ライナー30を1個ずつ下げてスライドペーパーを取り除き元に戻す。芯出しの最終確認後、ライナー部13bの開口から内部へ樹脂を注入して固定する。これによりライナー部13bが振動等により回転することがなく、据え付け精度を確保できる。
9.グラウチングを行って基礎グラウト116を形成する。ポンプベース(ソールプレート)の下面及び周囲をコンクリート又はモルタルで固定する。基礎の周囲にモルタル仕上を施す。
このような実施例1の機器の据え付け方法によれば、機械基礎鉄筋コンクリートの組立打設前にプレート又は機器、アンカーボルト、仮芯用の長尺アンカ一体型ライナーを設置することができ、工程を大幅に短縮できる。
【0015】
(実施例2:機器の据付方法(アンカーの箱抜き穴を設けない据付方法))
図9は箱抜き穴無しの機械基礎鉄筋コンクリートの平面図である。図10図9の機械基礎コンクリート打設前のC-C矢視の側面図である。図11図9の基礎コンクリート打設後のC-C矢視の側面図である。図12図9の基礎グラウト後のC-C矢視の側面図である。アンカーボルトの箱抜き穴を設けない場合、従来工法の仮ライナーを使用しない。本発明の長尺アンカ一体型ライナー10は本芯用のライナーとして用いる。
1.機械基礎鉄筋コンクリート2の基準線(X方向,Y方向)をスラブ1の上に墨出しする。Z方向は近くの壁、柱等に罫書く。アンカーボルト20位置のX,Y基準線を墨出しする。基礎高さ(Z方向)は近くの壁、柱等に罫書く(図9参照)。
2.アンカーボルト20の罫書き位置を中心にして2つの本芯用の長尺アンカ一体型ライナー10を両サイドに取り付ける。このときアンカ一体型ライナー10はシャフト12の長さをαに調整しておく(図10参照)。
3.差し筋(X方向,Y方向)を施工する。スラブ1の鉄筋を斫り出して基礎鉄筋を結束、又はあと施工アンカーとして鉄筋をスラブに打ち込む。配筋を行う。型枠を取り付ける。
4.プレート7を本芯用の長尺アンカ一体型ライナー10上に配置する。シャフト径が細いときはプレート7を配置するとぐらつくため水平方向にサポートバーを設けて近接する鉄筋に固定するとよい。
プレート7のアンカーボルト取付穴7aに芯出しナット40を挿入する。芯出しナット40にアンカーボルト20を挿入する。これによりアンカーボルト取付穴内における隙間を最小限にできるので、アンカーボルトのX,Y方向の精度良い取付が実現できる。
5.グラウト位置レベルまで機械基礎鉄筋コンクリートを組立打設する。コンクリートが固まるまで28日間養生する。
6.本芯用の長尺アンカ一体型ライナー10の上面にスライドペーパー50を(2枚)敷く(図11参照)。プレート7の一次芯出しを行う。このときスライドペーパー50により滑り抵抗が大幅に低減されて重量物の一次芯出しの調整作業を容易に行える。本芯用の長尺アンカ一体型ライナー10のライナー部13bを調整して行う。アンカーボルト40の罫書きが完了する。本芯用の長尺アンカ一体型ライナー10の一次芯出しが完了する。
7.ポンプを据え付ける。二次芯出しを行う。本芯用の長尺アンカ一体型ライナー10を調整する。スライドペーパー50により滑り抵抗が大幅に低減されて重量物の芯出しの調整作業を容易に行える。また二次芯出し作業が、同一の長尺アンカ一体型ライナー10で作業できるので何種類ものシム板を使用する従来の煩雑なシム調整作業が不要となり、短期間で効率的な作業が行える。本芯用の長尺アンカ一体型ライナー10を1個ずつ下げてスライドペーパーを取り除き元に戻す。芯出しの最終確認後、ライナー部13bの開口から内部へ樹脂を注入して固定する。これによりライナー部13bが振動等により回転することがなく、据え付け精度を確保できる。
8.グラウチングを行って基礎グラウト116を形成する。ポンプベース(ソールプレート)の下面及び周囲をコンクリート又はモルタルで固定する。基礎の周囲にモルタル仕上を施す(図12参照)。
このような実施例2の機器の据え付け方法によれば、機械基礎鉄筋コンクリートの組立打設前にプレート又は機器、アンカーボルト、本芯用のアンカ一体型ライナーを設置することができ、箱抜き穴を形成する工程を除きさらに箱抜き穴にコンクリートを充填する作業を省略することができるので、工程を大幅に短縮できる。従来工法の箱抜き穴を設ける必要がなく、大幅な工程の短縮が実現できる。
本発明は機械基礎鉄筋コンクリート上にベースを据え付ける方法について説明したが、この他にも機械基礎鉄筋コンクリート上にベースを用いずに直接、小型機器を据え付ける場合にも適用することができる。
本発明は、この他、機械基礎鉄筋コンクリートにアンカーボルトを埋め込んで設置するあらゆる構造物に適用することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
機械基礎鉄筋コンクリート上に据え付ける機械機器、捨てコンクリート又はスラブの上に鉄塔を立てる作業、捨てコンクリート又はスラブの上に鉄骨、コラムを建てる建築工事、橋梁工事、道路工事、電気機器を取り付ける電気工事、ダム工事に適用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 スラブ
2 機械基礎鉄筋コンクリート
3 鉄筋
4 型枠
5 箱抜き穴
6 仮ライナー
7 プレート
8 本ライナー
10 長尺アンカ一体型ライナー
12 シャフト
13a ネジ部
13b ライナー部
20 アンカーボルト
30 本芯用アンカ一体型ライナー(従来型)
40 芯出しナット
50 スライドペーパー
60 磁石
100 大型揚水ポンプ
102 ポンプ本体
104 吐出管
106 揚水管
108 インペラー
110 水槽
112 開口
114 機械基礎
116 基礎グラウト
118 モルタル仕上
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22