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特開2024-153432会計管理装置、会計管理方法、及び、会計管理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153432
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】会計管理装置、会計管理方法、及び、会計管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20241022BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067328
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 崇士
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝明
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】例えば工事等の、契約の作業に関するデータの異常値を簡単かつ迅速に検出して表示する。
【解決手段】取得部が、所定の契約の作業が完了した際の発注残金額及び見做し原価を取得する。比較部は、取得された発注残金額と見做し原価とを比較する。また、判定部は、見做し原価が発注残金額よりも多い金額である場合、又は、見做し原価が発注残金額よりも少ない金額である場合に、見做し原価の金額を異常な金額として判定する。そして、表示制御部は、少なくとも発注残金額及び見做し原価の計上状況グラフを表示部に表示すると共に、異常な金額として判定された見做し原価の計上状況グラフを、発注残金額とは異なる表示形態で表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の契約の作業が完了した際の発注残金額及び見做し原価を取得する取得部と、
取得された発注残金額と前記見做し原価とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて、前記発注残金額と前記見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外であるか、又は、許容範囲であるかを判定し、前記発注残金額と前記見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外である場合に、前記見做し原価の金額を異常な金額として判定する判定部と、
少なくとも前記発注残金額及び前記見做し原価の計上状況グラフを表示部に表示すると共に、前記判定部により、異常な金額として判定された前記見做し原価の計上状況グラフを、前記発注残金額とは異なる表示形態で表示する表示制御部と、
を有する会計管理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記見做し原価と前記発注残金額との差額金額が所定金額よりも多い金額である場合、又は、前記見做し原価と前記発注残金額との差額金額が所定金額よりも少ない金額である場合に、前記見做し原価の金額を異常な金額として判定すること、
を特徴とする請求項1に記載の会計管理装置。
【請求項3】
前記取得部は、所定の科目別に前記発注残金額及び前記見做し原価を取得し、
前記表示制御部は、科目別状況グラフを前記表示部に表示すると共に、前記判定部により、異常な金額として判定された前記科目の前記見做し原価の科目別状況グラフを、前記発注残金額の科目別状況グラフとは異なる表示形態で表示すること、
を特徴とする請求項2に記載の会計管理装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記契約の作業別に予算金額及び見做し原価を取得し、
前記判定部は、一方の座標軸を前記予算金額とし、他方の座標軸を前記見做し原価とした作業別原価計上状況グラフ上に、取得された前記予算金額及び前記見做し原価に対応する点をプロットした場合に、各点の母集団の中心点から所定の距離以上離れてプロットされている点に相当する前記見做し原価の金額を異常な金額として判定し、
前記表示制御部は、一方の座標軸を前記予算金額とし、他方の座標軸を前記見做し原価とした作業別原価計上状況グラフ上に、取得された前記予算金額及び前記見做し原価に対応する点をプロットして表示すると共に、異常な金額として判定された、前記母集団の中心点から所定の距離以上離れてプロットされる点を、他の点とは異なる表示形態で前記作業別原価計上状況グラフに表示すること、
を特徴とする請求項3に記載の会計管理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記母集団の輪郭に相当する位置にプロットされている点同士を結んだ正常範囲境界線を前記作業別原価計上状況グラフに表示すること、
を特徴とする請求項4に記載の会計管理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記契約の作業別に所定の費目毎の金額を取得し、
前記表示制御部は、前記契約の作業別に所定の費目毎の金額を示す作業別費目別作業状況データを前記表示部に表示すること、
を特徴とする請求項5に記載の会計管理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記見做し原価の金額が、異常な金額として判定された前記契約の作業を行った事業所及び担当者を含む作業詳細データを前記表示部に表示すること、
を特徴とする請求項6に記載の会計管理装置。
【請求項8】
取得部が、所定の契約の作業が完了した際の発注残金額及び見做し原価を取得する取得ステップと、
比較部が、取得された発注残金額と前記見做し原価とを比較する比較ステップと、
判定部が、前記比較ステップの比較結果に基づいて、前記発注残金額と前記見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外であるか、又は、許容範囲であるかを判定し、前記発注残金額と前記見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外である場合に、前記見做し原価の金額を異常な金額として判定する判定ステップと、
表示制御部が、少なくとも前記発注残金額及び前記見做し原価の計上状況グラフを表示部に表示すると共に、前記判定ステップで異常な金額として判定された前記見做し原価の計上状況グラフを、前記発注残金額とは異なる表示形態で表示する表示制御ステップと、
を有する会計管理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
所定の契約の作業が完了した際の発注残金額及び見做し原価を取得する取得部と、
取得された発注残金額と前記見做し原価とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて、前記発注残金額と前記見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外であるか、又は、許容範囲であるかを判定し、前記発注残金額と前記見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外である場合に、前記見做し原価の金額を異常な金額として判定する判定部と、
少なくとも前記発注残金額及び前記見做し原価の計上状況グラフを表示部に表示すると共に、前記判定部により、異常な金額として判定された前記見做し原価の計上状況グラフを、前記発注残金額とは異なる表示形態で表示する表示制御部として機能させること、
を特徴とする会計管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会計管理装置、会計管理方法、及び、会計管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2016-045819号公報)には、予算情報を効率的に作成することが可能な業績管理システムが開示されている。この業績管理システムは、先行案件に関する実績情報を記憶する実績情報DBと、作成対象案件に関する予算情報を記憶する予算情報DBと、予算情報を作成する予算作成管理部予算システムと、ユーザとの間で情報を交換する予算入力画面と、を備える。
【0003】
予算システムは、作成対象案件に対応付けられた識別情報に基づいて、実績情報DBに記憶された先行案件の実績情報のうち、作成対象案件に関連する関連先行案件の実績情報を抽出し、抽出した関連先行案件の実績情報と作成対象案件の予算情報とを関連付けて出力させます。これにより、予算情報を効率的に作成できる。
【0004】
このような特許文献1の段落0029には、予兆診断部が、作成対象案件と実施時期(製作期間)が似ている他の先行案件の実績情報を実績情報DBから読み出し、作成対象案件の原価項目と比較し、エラーの発生する可能性を診断して診断結果を出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-045819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば工事業界等では、工事等の契約の作業に関するデータが異常値を示すことがある。異常値の検出は、膨大なデータを探索して行う必要があるため、手動での検出は大変困難なものとなっている。このため、異常値を簡単かつ迅速に検出可能な技術の開発が求められている。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、契約の作業に関するデータの異常値を簡単かつ迅速に検出して表示可能な会計管理装置、会計管理方法、及び、会計管理プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る会計管理装置は、所定の契約の作業が完了した際の発注残金額及び見做し原価を取得する取得部と、取得された発注残金額と見做し原価とを比較する比較部と、比較部の比較結果に基づいて、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外であるか、又は、許容範囲であるかを判定し、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外である場合に、見做し原価の金額を異常な金額として判定する判定部と、少なくとも発注残金額及び見做し原価の計上状況グラフを表示部に表示すると共に、判定部により、異常な金額として判定された見做し原価の計上状況グラフを、発注残金額とは異なる表示形態で表示する表示制御部と、を有する。
【0009】
また、上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る会計管理方法は、取得部が、所定の契約の作業が完了した際の発注残金額及び見做し原価を取得する取得ステップと、比較部が、取得された発注残金額と見做し原価とを比較する比較ステップと、判定部が、比較ステップの比較結果に基づいて、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外であるか、又は、許容範囲であるかを判定し、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外である場合に、見做し原価の金額を異常な金額として判定する判定ステップと、表示制御部が、少なくとも発注残金額及び見做し原価の計上状況グラフを表示部に表示すると共に、判定ステップで異常な金額として判定された見做し原価の計上状況グラフを、発注残金額とは異なる表示形態で表示する表示制御ステップと、を有する。
【0010】
また、上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る会計管理プログラムは、コンピュータを、所定の契約の作業が完了した際の発注残金額及び見做し原価を取得する取得部と、取得された発注残金額と見做し原価とを比較する比較部と、比較部の比較結果に基づいて、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外であるか、又は、許容範囲であるかを判定し、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外である場合に、見做し原価の金額を異常な金額として判定する判定部と、少なくとも発注残金額及び見做し原価の計上状況グラフを表示部に表示すると共に、判定部により、異常な金額として判定された見做し原価の計上状況グラフを、発注残金額とは異なる表示形態で表示する表示制御部として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、契約の作業に関するデータの異常値を簡単かつ迅速に検出して表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態の会計管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2図2は、ルールベース法による見做し原価の異常値の検知手法を説明するための図である。
図3図3は、ホテリング法による見做し原価の異常値の検知手法を説明するための図である。
図4図4は、ルールベース法により見做し原価の異常値が検知される様子を示す図である。
図5図5は、ホテリング法を異常値の検知手法として用いる場合に好ましい母集団の正規分布を示す図である。
図6図6は、ホテリング法を異常値の検知手法として用いる場合ことが困難となる母集団の非正規分布を示す図である。
図7図7は、ホテリング法におけるクラスタリング等のグループ化及びマハラノビス距離による異常度の判定動作を説明するための図である。
図8図8は、見做し原価の異常値の一例を示す図である。
図9図9は、工事原価を材料費、外注費、労務費及び経費に分けて異常値の分析を行う例を示す図である。
図10図10は、分析画面の一例を示す図である。
図11図11は、分析詳細画面の一例を示す図である。
図12図12は、工事データ、工事原価データ及び工事発注データの一例を示す図である。
図13図13は、自動検知実行スケジュールデータ、異常判定結果登録対象期間データ、自動異常検知手法データ、及び、パラメータの一例を示す図である。
図14図14は、自動実行タイミング判定処理を説明するための図である。
図15図15は、ホテリング法を実行する際に用いる各種データを示す図である。
図16図16は、異常検知手法として「ホテリング法」が設定されている場合の、異常検知内部処理の正常データ範囲計算のイメージ図である。
図17図17は、異常検知手法として「ホテリング法」が設定されている場合の、異常検知内部処理の異常値判定のイメージ図である。
図18図18は、工事別原価計上状況グラフに正常範囲境界線を描画するための正常範囲境界線データの一例を示す図である。
図19図19は、異常検知手法として「ホテリング法」が設定されている場合の、異常な見做し原価が計上されている工事を検知する動作を説明するための図である。
図20図20は、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データ、及び、異常判定結果付属情報データの一例を示す図である。
図21図21は、工事データ、工事原価データ、工事発注データ、工事状況データ及びパラメータの一例を示す図である。
図22図22は、自動異常検知手法データ及び工事別状況データの一例を示す図である。
図23図23は、ルールベース法における異常判定手法を説明するための図である。
図24図24は、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、及び、異常判定結果メッセージ詳細データの一例を示す図である。
図25図25は、分析画面に表示するメッセージの生成動作を説明するための図である。
図26図26は、メッセージが表示された分析画面の一例を示す図である。
図27図27は、分析画面の抽出条件を入力するエリアを説明するための図である。
図28図28は、分析詳細画面に表示する詳細なメッセージの生成動作を説明するための図である。
図29図29は、詳細なメッセージが表示された分析詳細画面の一例を示す図である。
図30図30は、分析用データを収集する取得範囲の抽出条件の入力例を説明するための図である。
図31図31は、抽出条件が入力された分析詳細画面を示す図である。
図32図32は、工事別原価計上状況データの生成動作を説明するための図である。
図33図33は、正常範囲境界線の表示動作を説明するための図である。
図34図34は、科目別計上状況グラフの表示の仕方を説明するための図である。
図35図35は、工事別費目別工事状況データ及び工事別工事状況データの一例を示す図である。
図36図36は、パラメータ、異常判定結果データ、工事データ、工事発注データ、工事詳細データの一例を示す図である。
図37図37は、工事別原価計上状況グラフの描画用データの生成動作を説明するための図である。
図38図38は、工事別原価計上状況グラフの一例を示す図である。
図39図39は、計上状況グラフの表示動作を説明するための図である。
図40図40は、科目別計上状況グラフの表示動作を説明するための図である。
図41図41は、工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表の表示動作を説明するための図である。
図42図42は、異常検知された工事の詳細情報を出力する表の表示動作を説明するための図である。
図43図43は、見做し原価が異常値を示す工事を検知するための各種グラフ及び表が表示された状態の分析詳細画面の一例を示す図である。
図44図44は、分析詳細画面の各種グラフ及び表に対する表示形態の変更制御を説明するための図である。
図45図45は、見做し原価の異常を示す計上状況グラフの一例を示す図である。
図46図46は、見做し原価の異常を示す科目別計上状況グラフの一例を示す図である。
図47図47は、分析画面に対するメッセージの表示動作を説明するための図である。
図48図48は、分析詳細画面に表示する詳細メッセージの生成動作を説明するための図である。
図49図49は、詳細メッセージ、各種グラフ及び表が表示された状態の分析詳細画面を示す図である。
図50図50は、分析詳細画面の各種グラフ及び表に対する表示形態の変更制御を説明するための図である。
図51図51は、計上状況グラフに基づく、見做し原価が異常値となっている工事の検知動作を説明するための図である。
図52図52は、工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表に基づく、見做し原価が異常値を示す工事の検知動作を説明するための図である。
図53図53は、抽出条件の切り替え動作を説明するための図である。
図54図54は、切り替えられた抽出条件に基づく各種データの取得動作を説明するための図である。
図55図55は、切り替えられた抽出条件に基づく各種データの取得動作を説明するための他の図である。
図56図56は、各種グラフ及び表に対する表示形態が変更制御された分析詳細画面の一例を示す図である。
図57図57は、工事別原価計上状況グラフ上にプロットされる点を少なくする例を説明するための図である。
図58図58は、局所外れ値因子法を用いる場合の自動異常検知手法データに対する設定例を説明するための図である。
図59図59は、近傍数を説明するための図である。
図60図60は、局所外れ値因子法に基づく、見做し原価が異常値を示す工事の検知動作の流れを示す図である。
図61図61は、複数の母集団が存在する場合でも、見做し原価が異常値を示す工事が容易に検知可能となる様子を示す図である。
図62図62は、自動異常検知手法データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した実施の形態となる会計管理装置を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下一例として、契約の作業の一例である所定のプロジェクトの工事において、計上された見做し原価の異常値を、契約の作業に関するデータの異常値として検出する例を説明する。また、検出手法としては、「ホテリング法」又は(及び)「ルールベース法」を用いることとして説明を行うが、これも一例であり、「局所外れ値因子法」等の他の検出手法を用いてもよい。このように、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
(ハードウェア構成)
図1に示すように、実施の形態の会計管理装置1は、記憶部2、制御部3、通信インターフェース部4及び入出力インターフェース部5を備えている。入出力インターフェース部5には、入力装置6及び出力装置7が接続されている。出力装置7としては、モニタ装置(家庭用テレビを含む)等の表示部、印刷装置、又は、スピーカ装置等が相当する。入力装置6としては、キーボード装置、マウス装置及びマイクロホン装置等の他、マウス装置と協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタ装置等を用いることができる。通信インターフェース部4は、例えばインターネット等の広域網又はLAN(Local Area Network)等のプライベート網等のネットワークに接続される。
【0015】
記憶部2としては、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置を用いることができる。記憶部2には、会計計上された各工事の見做し原価の異常等を検知して所定のアラート表示を行う会計管理プログラム及び関連する各種データが記憶されている。
【0016】
(会計管理装置の機能構成)
次に、制御部3は、記憶部2に記憶されている会計管理プログラムを実行することで、図1に示すように、表示制御部21、取得部22、比較部23、判定部24、及び、記憶制御部25として機能する。
【0017】
取得部22は、所定の契約の作業(工事)が完了した際の発注残金額及び見做し原価を取得する。比較部23は、取得された発注残金額と見做し原価とを比較する。判定部24は、比較部23の比較結果に基づいて、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外であるか、又は、許容範囲であるかを判定し、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外である場合に、見做し原価の金額を異常な金額として判定する。
【0018】
詳しくは後述するが、発注残金額と見做し原価との相関関係が、所定の傾向の許容範囲外であるか否かの判定は、「ルールベース法」、「ホテリング法」、又は、「局所外れ値因子法」等を用いて判定することができる。「ルールベース法」を用いた場合、発注残金額と見做し原価の直接的な大小関係(等しくない)、及び、発注残金額と見做し原価の差額が所定の範囲外であるか否かということに基づいて、発注残金額と見做し原価との相関関係を判定することができる。また、「ホテリング法」を用いた場合、マハラノビス距離の正規分布に基づく所定の有意水準の正常境界線範囲外であるか否かということに基づいて、発注残金額と見做し原価との相関関係を判定することができる。また、「局所外れ値因子法」等を用いた場合、局所到達可能性密度から算出したLOF(Local Outlier Factor)インデックスが所定の閾値以上であるか否かということに基づいて、発注残金額と見做し原価との相関関係を判定することができる。
【0019】
表示制御部21は、少なくとも発注残金額及び見做し原価の計上状況グラフを表示部(出力装置7)に表示すると共に、判定部24により、異常な金額として判定された見做し原価の計上状況グラフを、発注残金額とは異なる表示形態で表示する。「異なる表示形態」としては、一例として表示色の変更又は輝度の変更等がある。
【0020】
また、取得部22は、所定の科目別に発注残金額及び見做し原価を取得する。表示制御部21は、科目別状況グラフを表示部に表示すると共に、判定部24により、異常な金額として判定された工事の見做し原価の科目別状況グラフを、発注残金額の科目別状況グラフとは異なる表示形態で表示する。所定の科目は、例えば材料費、外注費、労務費、及び、経費等である。
【0021】
また、取得部22は、契約の作業別に(工事別に)予算金額及び見做し原価を取得する。表示制御部21は、一方の座標軸を予算金額とし、他方の座標軸を見做し原価とした作業別原価計上状況グラフ上に、取得された予算金額及び見做し原価に対応する点をプロットする。判定部24は、一方の座標軸(例えばX軸)を予算金額とし、他方の座標軸(例えばY軸)を見做し原価とした作業別原価計上状況グラフ(工事別原価計上状況グラフ)上に、取得された予算金額及び見做し原価に対応する点をプロットした場合に、各点の母集団の中心点から所定の距離以上離れてプロットされている点に相当する見做し原価の金額を異常な金額として判定する。
【0022】
表示制御部21は、一方の座標軸を予算金額とし、他方の座標軸を見做し原価とした作業別原価計上状況グラフ上に、取得された予算金額及び見做し原価に対応する点をプロットして表示すると共に、異常な金額として判定された、母集団の中心点から所定の距離以上離れてプロットされる点を、他の点とは異なる表示形態で作業別原価計上状況グラフに表示する。
【0023】
また、表示制御部21は、母集団の輪郭に相当する位置にプロットされている点同士を結んだ正常範囲境界線を工事別原価計上状況グラフに表示する。
【0024】
また、取得部22は、契約の作業別(工事別)に所定の費目毎の金額を取得する。表示制御部21は、契約の作業別(工事別)に所定の費目毎の金額を示す作業別費目別工事状況データ(工事別費目別工事状況データ)を表示部に表示する。
【0025】
また、表示制御部21は、見做し原価の金額が、異常な金額として判定された契約の作業(工事)を行った事業所及び担当者を含む作業詳細データ(工事詳細データ)を表示部に表示する。
【0026】
(概要)
完成時期を迎えた工事について、原価となる発注分の請求書が発注先より届く前に、完成工事として実績計上しなければならないケースが存在する。これは、工事の完成月の翌月に請求書が届くケース等である。この場合に、原価として本来発生する分として「見做し原価」を計上する運用がある。基本は、図2(a)に示すように発注残をそのまま「見做し原価」として計上する運用が一般的である。
【0027】
しかし、この処理を自動化していない企業又は予定外の仕入が多い企業では、操作者が手動で「見做し原価」の計上を行うため、意図的な原価の増減操作や人為的な登録ミスが発生する。例えば、グループ企業の場合、各拠点の所長等の責任者により見做し額がコントロールされるため、図2(b)に示すように原価の水増し又は原価の後付け(報告処理後に計上)、或いは、図2(c)に示すように原価の計上漏れが発生することがある。
【0028】
実施の形態の会計管理装置1では、一例として、このような見做し原価の異常値を検知手法として、同規模工事間の見做し原価の発生傾向を利用する図3に示すホテリング法、又は(及び)、発注残と見做し原価を比較する図4に示すルールベース法を用いている。
【0029】
同規模工事は、原価の発生傾向(時期・材料量・手配人数等)が似る傾向にあり、完成時期における発注残の発生額も似ることが多い。図3に示すホテリング法では、このようなことを利用して見做し原価の異常値を検出する。
【0030】
また、企業によっては、工種、官民、組織等の観点で類似するケースも存在する。このため、実施の形態の会計管理装置1では、多くの企業が当てはまる共通軸を使用して、同規模工事単位での見做し原価比較を行い、異常値を検知する。工種、官民、組織等の観点は、企業に合わせて利用及び分析可能なように、分析画面側の抽出項目として設定可能としている。
【0031】
これに対して、工事業界等のように、原価の発注残をそのまま見做し原価として計上する運用が存在する場合、図4に示すルールベース法では、これを利用している。このルールベース法では、「発注残>見做し原価」を、計上漏れ又は原価の不正未計上(利益操作)として検知する。また、ルールベース法では、「発注残<見做し原価」を、誤入力又は重複計上として検知する。
【0032】
ホテリング法を異常値の検知手法として用いる場合、ホテリング法で利用できる母集団が、図5に示すように正規分布に従っている必要がある。ホテリング法では、正規分布に従うデータの特徴を活用して、例えば図7に示すようにクラスタリング等のグループ化を行う。そして、このグループ内で、マハラノビス距離を求めて異常度を判定する。
【0033】
実施の形態の会計管理装置1の異常値の検知に用いる、総原価予算と見做し原価の相関関係が図5に例示する正規分布に従うかは、利用企業の取引事情又はルールにもよるが、正規分布に従うことが前提として良いことがわかっている場合には、ホテリング法を用いることで異常値判定のための閾値を自動判定し、企業又は工事毎の特性に合わせた柔軟かつ精度が高い異常値の検知を可能とすることができる。
【0034】
また、図6に示すように、正規分布に従わないような例でも、工種、官民等の工事の種類でクラスタ分析することで母集団を正規分布に従う単位に区分けできる場合、区分けされたクラスタの母集団毎に工事データのラベル付けを行い、それぞれ異なる閾値を用いてホテリング法により異常値の検知を行ってもよい。
【0035】
また、正規分布に従わない場合、他の公知の統計手法で使用可能なものと任意で置き換えて実行しても良い。
【0036】
いずれの場合も、特定の閾値以上又は閾値未満のデータを異常値として検知し、この異常検知の結果を統一的に処理できる。
【0037】
なお、総原価予算、見做し原価が正規分布に略従う傾向が確認できる場合は、ホテリング法を適用することで、異常検知の精度向上が期待できる。
【0038】
次に、実施の形態の会計管理装置1では、一例として完成工事を対象として、見做し原価の異常値の検知及び分析を行う。すなわち、工事の完成時点で残っている見做し原価分に対して、予定原価又は発注残と比較して異常の有無を検知する。完成時点で原価が大きく変動することケースは考えにくく、基本は発注残=見做し原価となるパターンが多い。
【0039】
これに対して、見做し原価が発生しない工事は、見做し原価の異常値の検知の対象外とする。すなわち、実施の形態の会計管理装置1では、完成時点での工事別見做し原価に着目しており、見做し原価が存在しない工事は、実施の形態の会計管理装置1に対して、言わばノイズとなるため、確認対象外として取り扱う。
【0040】
次に、同規模な工事同士では、工事に必要となるもの(物又は人員)の種類、質、量が似てくる傾向にある。このため、同規模工事同士では、原価発生傾向も似る傾向にある。工事場所への移動費、空きのある外注先への手配、官民別工事毎の資材価格の差は、工事毎に金額が変動する原価要素であるが、工事原価となる材料費、外注費、労務費、経費等の大きな分類のトータルと比較すると、その差額は誤差の範囲となる。このため、母集団の偏りは、ある程度吸収されるため、おおよそ一定の正規分布に従うものと考えられる。
【0041】
次に、企業によって見做し原価の計上ルールが異なるため、見做し原価の異常値の検知手法を一律に決定することは困難となる。このため、実施の形態の会計管理装置1は、異常検知手法を選択可能とし、企業毎の運用形態、データの傾向又は特徴に応じた柔軟かつ汎用的な異常検知を可能としている。
【0042】
例えば、図8(a)に示すように発注残=見做し原価というシンプルな計上ルールが適用されている場合、システムによる自動化計上等を実施しているケースも存在する。この場合、チェック漏れが発生することが懸念され、利益操作等の不正操作が行われる恐れがある。
【0043】
発注残=見做し原価の計上ルールを自動化すると、簡素な処理であるため、不正は行われにくいという認識が生まれるが、逆に不正を誘発する要素となることが多い。また、発注残=見做し原価の計上ルールは、拠点数が多い企業で運用されることが多いが、チェックが拠点任せとなるため、拠点単位の不正が隠蔽される恐れがある。具体的には、建設業では拠点長の権限が強いことが多く、また、拠点の利益を水増しするために、拠点長の指示で不正操作が行われることがある。
【0044】
このため、実施の形態の会計管理装置1は、ルールベース法による異常検知を行い、データ量及び拠点量に限らず、発注残と見做し原価を可視化して、発生している異常値を操作者が気付き易くしている。これにより、拠点で操作及びチェックで行われている内容を、本社でも確認でき、見做し原価の異常値を気付き易くすることができる。このため、図8(a)に示したように、発注残=見做し原価の計上ルールが簡素なルールであるが故の不正を防止できる。
【0045】
次に、見做し原価の異常を同規模工事間での見做し原価の比較で確認する場合、同規模工事間の比較が困難なうえ、多額の作業コストが掛かる恐れがある。すなわち、同規模工事間の比較を行う場合、総原価予算を数等分して分類を行い、分類別で工事別実績を集計したうえで、同規模工事間で比較を行う必要がある。このため、集計ミス及び膨大なコストが発生する恐れがある。また、「同規模の工事」の定義が難しく、定義次第では見做し原価の異常に気付きにくくなる恐れがある。
【0046】
このため、実施の形態の会計管理装置1では、総原価予算と見做し原価の相関に注目し、同類グループ(類似工事間)と同類とみなせる範囲をシステム側で算出し、この同類とみなせる範囲外(仲間外れ)を異常として検知して操作者に通知(表示部に表示)する。これにより、図8(b)に示すように、同類の定義をシステム側で統計的に判定でき(市場分析等で用いられる手法より信頼度の高い定義を利用でき)、見做し原価の異常値を迅速に検知できる。
【0047】
次に、見做し原価の妥当性が、拠点別の責任者の認識より判定されるケースがある。責任者側の認識が低い場合、管理者側で確認及び是正を行うことが強いられ、管理者側の負担が大きくなる。
【0048】
すなわち見做し原価の妥当性の確認は、発注残及び過去の類似工事に基づいて、今後追加発生し得る仕入を確認し、又は、類似工事間の見做し原価を比較して確認して行われる。いずれの場合も確認範囲が広く、グループ企業であれば各拠点の責任者に確認を任せていることが多い。このため、責任者側の意識が低い場合、見做し原価の異常に気付きにくくなり、企業の利益の伸び悩み等の経営状態に悪影響が出る恐れがある。
【0049】
このため、実施の形態の会計管理装置1では、上述のように類似工事間で見做し原価を比較し、図8(c)に示すように仲間外れを可視化する。これにより、見做し原価の大体のレベルの妥当性を確認でき、明らかに異常な値を迅速に検知できる。
【0050】
また、実施の形態の会計管理装置1は、これら以外であっても、ルールベース法、同類の定義をシステム側で統計的に判定する統計手法の切り替えが可能となっており、様々なパターンに対応可能としている。
【0051】
次に、労務費及び経費等の発注計上がない原価の場合、工事の原価算入漏れ又は調整等、工事原価の異常の要因となり得る。このため、原価分類別の分析が必要だが、作業コストが膨大となり、その都度チェックを行うことは現実的ではない。
【0052】
また、工事原価を、図9に示すように材料費、外注費、労務費及び経費に区別して分析することで確認可能となるが、この場合、工事別かつ原価分類毎に集計が必要となり、集計漏れの発生、及び、膨大なコストが発生する恐れがある。また、予定原価との比較で異常性の分析を行うこともできるが、これを工事別に行うと、さらに作業コストが増加する恐れがある。
【0053】
なお、図9の例に示す材料費は、発注残と同値かつ予定原価とも見做し分含めて一致しており、異常性はないと考えられる。外注費は、発注残に対して見做し原価が少ない。このため、見做し原価の計上漏れが考えられる。反対に、発注残に対して見做し原価が多い場合は、不要な原価を見做し原価として計上している可能性がある。労務費は、予定原価に対して実績原価が多すぎる。このため、無駄な人件費及び不正な費用が発生している可能性が考えられる。経費は、予定原価に対して実績原価が少ない。このため、経費を抑えて工事の作業が行われている可能性もあるが、計上漏れの可能性もある。このため、確認対象としては認識することが好ましい。
【0054】
実施の形態の会計管理装置1は、工事別原価分類別の発生予定額、発注残、発注実績、見做し原価の情報を可視化する。これにより、一つの表示画面で、各原価の予実対比、発注残と見做しの比較を可能とすることができる。このため、各工事の原価毎に異常の有無を迅速に確認でき、異常の可能性がある原価の範囲の絞り込みを行うことができる。
【0055】
(分析用画面)
実施の形態の会計管理装置1の表示制御部20は、「工事別の総原価予算に対する見做し原価金額」、「工事内の原価分類別の発注予定、発注実績、発注残、見做し原価」を分析画面に表示する。また、表示制御部20は、異常を検知した情報を、視認可能となるように例えば表示色又は文字サイズ等の表示形態を変更することで、強調して表示する。
【0056】
確認可能な異常検知データは、上述のように完成工事の見做し原価金額を対象としており、異常検知手法によって、異常と判断される工事が変わる。例えば、ホテリング法を用いた場合、総原価予算が同規模の範囲で同様の見做し原価となっていない工事が検知される。また、ルールベース法を用いた場合、発注残>見做し原価となっている工事が検知される。
【0057】
(画面構成)
図10は、このような分析画面の一例を示す図である。表示制御部20は、「異常を検知した結果メッセージ表示を一覧で表示」、「異常を検知した結果メッセージを概要レベルで出力」の順番で、この分析画面の切り替えを行う。表示制御部20は、この図10に示すように、分析画面の異常検知処理に関するメッセージを表示するエリアR2に対して、異常として検知されたタイミング、工事、異常が検知された月、を表示する。表示制御部20は、この時点では異常検知の概要を表示し、操作者によりメッセージが選択された際に、図11に示す分析詳細画面に切り替えて、選択されたメッセージに対応する異常度の検知情報を表示する。また、異常として検知された情報が多数存在する場合、表示制御部20は、複数縦並びで(列毎に)各情報の表示を行う。なお、図10に示すエリアR1は、抽出条件の入力欄の表示エリアである。
【0058】
図11は、分析詳細画面の一例を示す図である。表示制御部20は、図10に示した分析画面において、メッセージが選択されると、この選択されたメッセージに対応する詳細情報を、図11に示す分析詳細画面に表示する。この分析詳細画面は、異常検知処理に関するメッセージを表示するエリアRS2を備えている。表示制御部20は、このエリアRS2に対して、「異常を検知する際に使用した検知方法」及び「異常を検知したデータのキーとなる情報」を表示する。また、表示制御部20は、異常として検知された情報が複数存在する場合は、その数分のメッセージをエリアRS2に表示する。
【0059】
また、操作者により、このエリアRS2に表示されたメッセージが選択操作された場合、表示制御部20は、以下に説明するエリアRS3~エリアRS5の各グラフにおいて、選択操作されたメッセージの異常検知情報に関連する部分を強調表示(=表示形態の変更:太線、高輝度表示、表示色変更等)する。
【0060】
表示制御部20は、エリアRS3に対しては、過去の工事の総原価予算金額と見做し原価金額」と「異常検知された工事の総原価予算金額と見做し原価金額」のグラフを表示する。すなわち、表示制御部20は、このエリアRS3に対して、「工事別の総原価予算金額と見做し原価金額の相関」を確認可能なグラフを表示する。総原価予算が似た工事については、一定の見做し原価金額範囲で実績が出力されることを前提とした表示となっている。同規模工事の過去の工事に対して、異常検知された工事の異常度の分析を可能とする。
【0061】
このエリアRS3に表示されるグラフは、似た総原価予算の範囲を「同規模工事」としてX軸で定義している(同規模の範囲の定義は企業によって異なるため、分析者側に委ねる範囲とする)。
【0062】
また、表示制御部20は、異常検知手法に限らず、当グラフを表示する。異常検知手法でホテリング法を用いる場合、表示制御部20は、さらに正常範囲と判断できる境界線をこのグラフに追加して表示する。また、異常検知手法がホテリング法以外であっても、プロットの傾向から、工事の発生傾向を可視化できる。例えば、ルールベース法を用いて異常検知を行ったが、プロット状況に基づいて、ホテリング法を利用できそうなデータ傾向を判断できる。
【0063】
また、表示制御部20は、エリアRS4には、「異常検知された工事の原価における発生予定・計上残・現時点実績と見做し原価」のグラフを表示する。すなわち、表示制御部20は、前月時点で当月発生予定としていた実績(今後予定原価)、当月内で発注済入荷・仕入待ちの残(発注残)、当月で発注・仕入れた実績(実績)、発注残で今月の原価実績として参入したもの(見做し原価)をエリアRS4に表示する。
【0064】
このエリアRS4のグラフに基づいて、「発注残」と「見做し原価」を比較して、「見做し原価の大小」を確認する。また、「今後予定原価」と「実績+見做し原価」を比較して、「実績+見做し原価の大小」を確認する。少ない場合は、計上漏れと判断でき、多い場合は不正計上の可能性があるものと判断できる。
【0065】
また、表示制御部20は、エリアRS5には、「異常検知された工事の原価分類別の予定・実績・残」のグラフを表示する。これにより、原価分類別に異常値の確認を行うことができる。労務費及び経費は、発注に含まれないため、今後予定原価と実績の視点のみ確認する。材料費で見做し額が多い場合は、他工事の分のものが入っていないか、また、外注費で見做しが多い場合は、余計な外注先への手配を行っていないか又は外注先への資金流出となっていないか等の異常根拠調査への分析誘導を図ることができる。
【0066】
また、表示制御部20は、エリアRS6には、工事・原価分類毎の予定・残・実績を数値で確認し、工事の原価着地予定分と比較して現状における原価が占める割合を示す表を表示する。すなわち、表示制御部20は、「工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況」を確認可能な表を、エリアRS6に表示する。着地予想が100%を超えている場合、利益が少ない又は赤字となり得る工事のため、チェック対象の工事として検出される。この表を表示することで、異常につながる原価分類を分析でき、また、関連する原価データの調査を行うことができる。
【0067】
また、表示制御部20は、エリアRS7には、「異常検知された工事の詳細情報」の表を表示する。すなわち、表示制御部20は、「異常検知された工事の詳細情報」を確認可能な表を、エリアRS7に表示する。この表には、工事を管理する組織・担当者・仕入先・完成時期を表示する。これにより、異常の通達と実態確認先情報を提供することができる。
【0068】
また、エリアRS1は、データ抽出用の抽出条件エリアとなっており、表示制御部20は、上述のグラフ又は表に表示したデータの抽出条件を表示する。具体的には、確認する決算期を抽出して分析する場合、表示制御部20は、指定決算期内の会計年月範囲で実績が発生している工事に限定して上述のグラフ又は表に表示する。また、組織レベルで出力データを抽出して分析を行う場合、表示制御部20は、事業所や部門を指定して上述のグラフ又は表を表示する。
【0069】
(処理フロー)
次に、実施の形態の会計管理装置1における上述の分析画面及び分析詳細画面を表示する際の処理フローを説明する。なお、一例ではあるが、異常検知手法としては、上述のホテリング法及びルールベース法を用いることとする。これらの異常検知手法は、使用企業のデータの傾向に合わせて変更可能である。このため、以下の説明は一例として理解されたい。
【0070】
実施の形態の会計管理装置1の場合、下記の2つの処理を行うことができる。
【0071】
1.業務データ内の[工事データ][工事原価データ][工事発注データ]を確認して、異常な工事を検知する。
【0072】
2.「1で検知した異常なデータ」と「検知するために参照した異常なデータと関連のあるデータ」を分析画面に表示する。
【0073】
(異常な工事の検知処理)
「1」の業務データ内の[工事データ][工事原価データ][工事発注データ]より、異常検知手法にあわせて異常な原価となっている工事を検知する処理には、下記のデータを用いる。
【0074】
<業務データ>:業務の中で蓄積されている想定のデータ
・工事データ(図12(a)参照)
・工事原価データ(図12(b)参照)
・工事発注データ(図12(c)参照)
【0075】
<異常検知実行用データ>:事前設定データ
・自動検知実行スケジュールデータ(図13(a)参照)
・自動異常検知手法データ(図13(c)参照)
・異常判定結果登録対象期間データ(図13(b)参照)
・工事データの取得範囲条件データ
【0076】
<異常判定結果データ>:異常検知実行の判定結果を格納するデータ
・異常判定結果データ(図20(a)参照)
・異常判定結果メッセージデータ(図20(b)参照)
・異常判定結果メッセージ詳細データ(図20(c)参照)
・異常判定結果付属情報データ(図20(d)参照)
【0077】
(事前設定)
まず、取得部22は、見做し原価の異常検知に必要となる、図13(a)に示す自動検知実行スケジュールデータ、図13(b)に示す異常判定結果登録対象期間データ、及び、図13(c)に示す自動異常検知手法データを取得する。記憶制御部25は、これらの情報を記憶部2に記憶させる。
【0078】
(自動実行)
次に、取得部22は、図13(d)に示す検知識別情報(検知ID)及びスケジュールIDに基づいて、図13(a)に示す自動検知実行スケジュールデータ及び図13(b)に示す異常判定結果登録対象期間データを参照し、異常を検知するタイミング情報を取得する。
【0079】
次に、判定部24は、自動実行したタイミングが、異常を検知するタイミングであるか判定する処理である、図14に示す自動実行タイミング判定処理を行う。この自動実行タイミング判定処理により「実行する」の判定結果が得られた場合、以下に説明する「ホテリング法」又は「ルールベース法」に基づいて異常検知処理が行われる。これに対して、自動実行タイミング判定処理により「実行しない」の判定結果が得られた場合、後続する処理を実行せず、次回の自動実行タイミング判定処理まで会計管理装置1は待機状態となる。
【0080】
なお、判定部24は、記憶部2に記憶されているカレンダーマスタ(図示せず)を参照して休日及び営業日を判断する。このカレンダーマスタは、販売の営業カレンダーベースで、常に最新化される。
【0081】
次に、取得部22は、図13(c)に示した自動異常検知データに記憶されている異常検知手法(ホテリング法又はルールベース法)に基づいて必要なデータを取得する。比較部23及び判定部24は、取得されたデータに基づいて、見做し原価の異常検知処理を行う。
【0082】
(ホテリング法が設定されている場合)
図13(c)に示した自動異常検知データで異常検知手法として、図16及び図17に例示する「ホテリング法」が設定されている場合、取得部22は、図15(a)に示すようにパラメータとして設定された取得基準(会計年月及び工事進捗状況が「完成」)に基づいて、図15(b)に示す工事データ、図15(c)に示す工事原価データを取得する。
【0083】
すなわち、会計年月以前の工事データを取得対象としている。異常検知対象は、「異常判定結果登録対象期間データ」の「取得基準」を参照して、対象を限定して異常判定を行う。この例の場合、起動日の所属する月の前月としており、2022年10月以前に完成した工事が対象となる(完成した工事のみが取得対象となる)。
【0084】
また、取得部22は、図15(b)に示す工事データから工事毎の予算金額を取得すると共に、図15(c)に示す工事原価データから工事毎の見做し原価金額を取得し、工事毎の見做し原価の合計額を算出する。記憶制御部25は、図15(d)に示すように、工事毎の予算金額、及び、工事毎の見做し原価金額の合計額を記憶部2に記憶させる。
【0085】
次に、判定部24は、図15(d)に示した工事毎の予算金額、及び、工事毎の見做し原価の合計金額に基づいて、全工事の見做し原価と総原価予算(予算金額)の相関を確認し、正常と考えられる範囲を算出する。
【0086】
具体的には、判定部24は、図19(a)に示すように、上述の母集団における中心点から各点までの距離(マハラノビス距離)をそれぞれ算出する。そして、判定部24は、図19(b)の「a(x)=(x-μ)÷δ=((x-μ)÷δ)」の数式に示すように、各点毎の距離を要素として正規分布に当て嵌め、「自動異常検知手法データが持つ異常判定方法の有意水準0.05」の範囲に満たない工事を、異常な見做し原価が計上されている工事として判定する。
【0087】
記憶制御部25は、正常範囲を出力するために、図18に示す正常範囲境界線用のプロット情報のデータを記憶部2に記憶させて保持する。また、詳しくは、判定部24は、正常範囲境界線用の点を、「自動異常検知手法データが持つ異常判定方法の有意水準0.05」の条件に基づいて求める。
【0088】
換言すると、「x」及び「μ」について、見做し原価及び総原価予算の2変量としてマハラノビス距離計算に当て嵌める。算出されたマハラノビス距離を、図19(b)の数式に示すように正規分布に当て嵌め、有意水準の0.05の範囲に満たない工事を、異常な見做し原価が計上されている工事として判定する。
【0089】
さらに詳しく説明すると、記憶部2には、図62に示すように検知ID、手法、利用例、基準値、比較値、及び、異常判定方法を含む自動異常検知手法データが記憶されている。この例の場合、判定部24は、検知IDに基づいて、この自動異常検知手法データの「ホテリング法」のレコードを参照し、有意水準が「0.05」に設定されていることを検出し、上述のように、有意水準の0.05の範囲に満たない工事を、異常な見做し原価が計上されている工事として判定する。
【0090】
次に、記憶制御部25は、図20(a)に示すように、記憶部2に記憶されている、異常と判定された工事の異常判定結果データに含まれる異常判定結果(異常結果かどうか)を「True(異常あり)」に更新する。また、記憶制御部25は、図20(b)に示すように、例えば「工事Aが検出されました」等の見做し原価アラートのメッセージを含む異常判定結果メッセージデータを記憶部2に記憶する。このメッセージは、後述する分析画面に表示される。
【0091】
また、記憶制御部25は、図20(c)に示す異常判定結果メッセージ詳細データ、及び、図20(d)に示す異常判定結果付属情報データに対して、上述の自動検知実行スケジュールデータ(図13(a)参照)の検知IDをそれぞれ入力する。
【0092】
(ルールベース法が設定されている場合)
次に、図13(c)に示した自動異常検知データで異常検知手法として「ルールベース法」が設定されている場合、取得部22は、図21(e)に示すようにパラメータとして設定された取得基準(会計年月及び工事進捗状況が「完成」)に基づいて、図21(a)に示す工事データ、図21(b)に示す工事原価データ、及び、図21(c)に示す工事発注データを取得する。
【0093】
記憶制御部25は、図21(b)に示す工事原価データに基づいて、工事の完成月である2022年10月の工事Aの材料費の見做し原価及び外注費の見做し原価を加算処理した見做し原価金額を、図21(d)に示す工事別状況データに入力する。
【0094】
また、記憶制御部25は、図21(c)に示す工事発注データに基づいて、工事の完成月である2022年10月の工事Aの材料費及び外注費の発注金額の合計額を算出すると共に、2022年10月の工事Aの材料費及び外注費の債務計上金額の合計額を算出する。そして、記憶制御部25は、発注金額の合計額から債務計上金額の合計額を減算処理することで発注残金額を算出し(発注残金額=発注金額-債務計上金額)、図21(d)に示す工事別状況データに入力する。
【0095】
なお、労務費及び経費は、給与関連の費目であるため、発注となる金額は発生しない。
【0096】
次に、比較部23は、図21(d)に示す工事別状況データに入力された2022年10月の工事Aの発注残金額を基準値とし、見做し原価金額を比較対象として、図22(a)及び図22(b)に示すように、両者の金額を比較する。図23は、この比較結果となる例を示している。図23(a)の例は、基準値である発注残金額と比較対象である見做し原価金額とが同じ金額の場合の例である。図23(b)の例は、基準値である発注残金額よりも、比較対象である見做し原価金額の方が大きな金額となった場合の例である。図23(c)の例は、基準値である発注残金額よりも、比較対象である見做し原価金額の方が小さな金額となった場合の例である。
【0097】
なお、この図23の例は、「基準値>比較対象」という条件の例であるが、「|基準値-比較対象|≧一定値」との条件で発注残金額及び見做し原価金額の比較を行ってもよい。
【0098】
次に、図22(b)に示す例の場合、発注残金額(基準値)が19万円であり、見做し原価金額(比較対象)が17万円であり、基準値よりも比較対象の方が小さい金額となる。これは、見做し原価が異常値を示すこととなるため、記憶制御部25は、図24(a)に示すように、記憶部2に記憶されている、異常と判定された工事の異常判定結果データに含まれる異常判定結果(異常結果かどうか)を「True(異常あり)」に更新する。また、記憶制御部25は、図24(b)に示す異常判定結果メッセージデータ、及び、図24(c)に示す異常判定結果メッセージ詳細データに対して、上述の自動検知実行スケジュールデータ(図13(a)参照)の検知IDをそれぞれ入力する。
【0099】
(分析画面の表示処理)
(ホテリング法を用いた場合)
次に、検知した異常データ及び異常データに関連があるデータを分析画面に表示する処理を説明する。なお、下記の例は、ホテリング法で異常検知を行った場合における分析画面の表示処理の例である。
【0100】
まず、取得部22が、図25(b)に示すように異常判定結果データを参照することで、「True」の異常判定結果、及び、「見做し原価アラート」のJOBID(ジョブID)を取得する。記憶制御部25は、取得された「True」の異常判定結果、及び、「見做し原価アラート」のJOBID(ジョブID)を、図25(a)に示すパラメータに設定する。なお、見做し原価の異常が検知された各工事に対するアラートを一覧表示するため、この時点では、検知IDは取得されず、パラメータに対する検知IDの設定は未設定となる。
【0101】
次に、取得部22は、図25(c)に示す異常判定結果メッセージデータを参照し、異常度、定義名、概要、及び、検知対象を取得する。表示制御部21は、図25(e)に示すように、取得された異常度、定義名、概要、及び、検知対象を含む、分析画面に表示するためのメッセージデータを生成する。そして、表示制御部21は、図26に示す分析画面のエリアR2に、異常度、定義名、概要、及び、検知対象を含む、異常が発生していることを示す工事毎のメッセージを一覧表示する。なお、図25(d)に示す異常判定結果メッセージ詳細データは、後述する分析詳細画面の表示時に参照される。
【0102】
次に、操作者は、図27(a)に示すように、分析画面を起動した日付を「基準日」として取得し、図27(b)に示すように、分析画面のエリアR1の抽出条件の「基準日」に設定する。
【0103】
(分析詳細画面の表示処理)
次に、操作者は、分析画面に一覧表示された各工事のメッセージのうち、詳細を確認する工事のメッセージを選択し、表示ボタンを操作する。この表示ボタンが操作されると、取得部22は、図28(a)に示す異常判定結果データから、事業所、部門、担当者、工事名、工事種類、完成時期の各データを取得する。また、取得部22は、図28(b)に示す異常判定結果メッセージ詳細データから検知手法(この場合は、ホテリング法)を取得する。
【0104】
表示制御部21は、一覧表示したメッセージと共に、取得された事業所、部門、担当者、工事名、工事種類、完成時期及び検知手法を含む、図28(c)に示す詳細メッセージを生成し、これを図29に示す分析詳細画面のエリアRS2に表示する。これにより、分析画面の一覧から選択されたメッセージに対応する工事に対応する詳細メッセージを、分析詳細画面を介して操作者に提供することができる。
【0105】
次に操作者は、分析用データを収集する取得範囲の抽出条件を、図29のエリアRS1の抽出条件の入力欄に入力する。例えば、図30(a)及び図30(b)に示すように2021年11月から2022年10月の間に完成工事が存在する場合、操作者は、図30(c)に示すように分析用データ取得範囲条件として、抽出条件列に「会計年月」を設定し、FROM条件に「2021年11月」を設定し、TO条件に「2022年10月」を設定する。これにより、記憶制御部25は、図31(a)に示す基準日を「2022年11月8日」とし、期間開始を「2021年11月」とし、期間終了を「2022年10月」とし、対象工事を「工事A」とした抽出条件初期値を記憶部2に記憶させる。表示制御部21は、図31(c)に示す分析詳細画面のエリアRS1に対して、図31(b)に示すように、操作者により設定された基準日、及び、会計年月等を表示する。
【0106】
次に、取得部22は、操作者により設定された図32(a)に示す期間開始のパラメータ及び期間終了のパラメータに基づいて、図32(b)に示す工事データを参照し、工事毎の予算金額を取得する。また、取得部22は、図32(b)に示す工事データの工事名及び完成時期を介して図32(c)に示す工事原価データを参照し、工事毎の見做し原価金額を取得する。記憶制御部25は、図32(d)に示すように、記憶部2に記憶されている工事別原価計上状況データに対して、取得された工事毎の予算金額を入力すると共に、工事毎の見做し原価の合計額(工事毎の合計額)を入力する。
【0107】
さらに、取得部22は、上述の正常範囲境界線を表示するために、図33(a)に示す異常判定結果データに基づいて図33(b)に示す異常判定結果付属情報データを参照し、正常範囲境界線情報も合わせて取得する。
【0108】
次に、取得部22は、図34(a)に示すパラメータに基づいて図34(b)に示す工事データを参照し、各工事の完成時期を取得する。記憶制御部25は、記憶部2に記憶されている、図34(e)に示す工事別費目別工事状況データに対して、この各工事の費目毎の完成時期を入力する。また、取得部22は、図34(c)に示す工事原価データを参照し、各工事の前月末となる例えば2022年9月度(工事Aの場合)における費目毎の今後予定原価、及び、各工事の完成月となる例えば2022年10月度(工事Aの場合)における費目毎の今後予定原価を取得する。記憶制御部25は、工事別費目別工事状況データの前月末時点予定原価に、2022年9月度における費目毎の今後予定原価を入力し、工事別費目別工事状況データの今後予定原価に2022年10月度における費目毎の今後予定原価を入力する。
【0109】
また、取得部22は、図34(c)に示す費目毎の発生原価金額を取得する。記憶制御部25は、取得された発生原価金額を、図34(e)に示す工事別費目別工事状況データの費目毎の発生原価金額として入力する。また、取得部22は、図34(c)に示す費目毎の見做し原価金額を取得する。記憶制御部25は、取得された費目毎の見做し原価金額を、図34(e)に示す工事別費目別工事状況データの費目毎の見做し原価金額として入力する。
【0110】
また、取得部22は、図34(d)に示す工事発注データから各工事の完成月の前の月における材料費及び外注費の各費目の発注金額及び債務計上金額を取得する。記憶制御部25は、材料費及び外注費の各費目の発注金額から債務計上金額を減算処理することで、材料費及び外注費の発注残金額を生成し、これを、図34(e)に示す工事別費目別工事状況データの材料費及び外注費の前月発注残金額として入力する。
【0111】
また、取得部22は、図34(d)に示す工事発注データから各工事の完成月における材料費及び外注費の各費目の発注金額及び債務計上金額を取得する。記憶制御部25は、材料費及び外注費の各費目の発注金額から債務計上金額を減算処理することで、材料費及び外注費の発注残金額を生成し、これを、図34(e)に示す工事別費目別工事状況データの材料費及び外注費の当月発注残金額として入力する。
【0112】
次に、取得部22は、このように形成された図35(a)に示す工事別費目別工事状況データから、各工事の当月発注残となる材料費及び外注費を取得する。記憶制御部25は、取得された材料費及び外注費の合計金額を、図35(b)に示す工事別工事状況データの当月発注残金額として入力する。また、取得部22は、図35(a)に示す工事別費目別工事状況データから、各工事の各費目の今後予定原価を取得する。記憶制御部25は、取得された各費目の今後予定原価の合計金額を、図35(b)に示す工事別工事状況データの今後予定原価として入力する。
【0113】
また、取得部22は、図35(a)に示す工事別費目別工事状況データから、各工事の各費目の発生原価金額を取得する。記憶制御部25は、取得された各費目の発生原価金額の合計金額を、図35(b)に示す工事別工事状況データの発生原価金額として入力する。また、取得部22は、図35(a)に示す工事別費目別工事状況データから、材料費及び外注費の見做し原価金額を取得する。記憶制御部25は、取得された材料費及び外注費の見做し原価金額合計金額を、図35(b)に示す工事別工事状況データの見做し原価金額として入力する。
【0114】
次に、取得部22は、図36(a)に示すパラメータに基づいて、図36(b)に示す異常判定結果データを参照し、見做し原価の異常値が検知された工事(異常結果がTrue)の工事名(工事A)及び完成時期(2022年10月)を取得する。また、取得部22は、異常判定結果データから取得した工事名及び完成時期に基づいて、図36(c)に示す工事データを参照し、事業所名、部門、担当者、工事種類を取得する。さらに、取得部22は、異常判定結果データから取得した工事名及び完成時期に基づいて、図36(d)に示す工事発注データを参照し、仕入先を取得する。
【0115】
記憶制御部25は、記憶部2に記憶されている、図36(e)に示す工事詳細データに対して、取得部22により取得された事業所名、部門、担当者、工事名、工事種類、完成時期、及び、仕入先を入力する。
【0116】
次に、表示制御部21は、記憶部2に記憶されている図37(a)に示すデータバインド情報に基づいて、図38に示すようにX軸を総原価予算とし、Y軸を見做し原価金額とした工事別原価計上状況グラフの描画用データを生成する。また、表示制御部21は、この工事別原価計上状況グラフ上に、図37(b)に示す各工事の総原価予算及び見做し原価金額に対応する点をプロットするための描画用のデータを生成する。さらに、表示制御部21は、図37(c)に示す異常判定結果付属情報データに基づいて、プロットされた点の母集団の輪郭に相当する点同士を結んだ正常範囲境界線表示するための描画用のデータを生成する。そして、図38に例示する工事別原価計上状況グラフの描画用のデータを生成する。
【0117】
また、取得部22は、図39(a)のパラメータで示される例えば工事Aの工事別工事状況データ(図39(c))を参照し、図39(b)のデータバインド情報で示される当月発注残金額、今後予定原価、発生原価金額、及び、見做し原価金額を取得する。表示制御部21は、図39(d)に例示する工事Aの計上状況グラフを描画するための描画用のデータを生成する。また、表示制御部21は、この計上状況グラフ上に表示する当月発注残金額の棒グラフを、取得された当月発注残金額に基づいて生成する。
【0118】
また、表示制御部21は、計上状況グラフ上に表示する今後予定原価の棒グラフを、取得された今後予定原価に基づいて生成する。また、表示制御部21は、発生原価金額を実績金額とし、この発生原価金額の先端に見做し原価金額を載置した状態の棒グラフの描画用のデータを、取得された発生原価金額及び見做し原価金額に基づいて生成する。
【0119】
次に、取得部22は、記憶部2に記憶されている図40(a)に示すパラメータに基づいて、図40(c)に示す工事別費目別工事状況データを参照し、各工事の材料費及び外注費に対応する前月発注残金額、当月発注残金額、見做し原価金額を取得する。また、取得部22は、図40(c)に示す工事別費目別工事状況データを参照することで、材料費、外注費、労務費及び経費の各費目に対する前月末時点予定原価、今後予定原価、及び、発生原価金額を取得する。
【0120】
表示制御部21は、図40(d)に例示する科目別計上状況グラフを描画するためのデータを生成する。また、表示制御部21は、取得された材料費の前月発注残金額、当月発注残金額、見做し原価金額に基づいて、材料費及び外注費の前月発注残金額の棒グラフ、今後予定原価の棒グラフ、及び、発生原価金額の先端に見做し原価金額を載置した状態の棒グラフを描画するためのデータを生成する。
【0121】
また、表示制御部21は、取得された材料費の前月発注残金額、当月発注残金額、見做し原価金額に基づいて、労務費及び経費の発生原価金額の棒グラフ、及び、見做し原価金額の棒グラフを描画するためのデータを生成する。
【0122】
次に、取得部22は、図41(b)に示すデータバインド情報に基づいて、図41(c)に示す工事別費目別工事状況データを参照し、各工事における材料費、外注費、労務費、及び、経費の各費目に対応する、前月発注残金額、当月発注残金額、前月末時点予定原価、今後予定原価、発生原価金額、及び、見做し原価金額を取得する。
【0123】
表示制御部21は、図41(d)に示す「工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表」を表示するための描画用のデータを生成する。また、表示制御部21は、取得された材料費の前月発注残金額、当月発注残金額、前月末時点予定原価、今後予定原価、発生原価金額、及び、見做し原価金額に基づいて、材料費の発注残金額、材料費の着地予想金額、材料費の実績金額、材料費の見做し原価金額、材料費の実績金額と見做し原価とを加算した着地予想金額、及び、材料費の実績金額と見做し原価とを加算した金額に対する着地予想金額の割合(%)を描画するためのデータを生成する。なお、取得された今後予定原価を着地予想金額として用いている。
【0124】
また、表示制御部21は、取得された外注費の前月発注残金額、当月発注残金額、前月末時点予定原価、今後予定原価、発生原価金額、及び、見做し原価金額に基づいて、外注費の発注残金額、外注費の着地予想金額、外注費の実績金額、外注費の見做し原価金額、外注費の実績金額と見做し原価とを加算した着地予想金額、及び、外注費の実績金額と見做し原価とを加算した金額に対する着地予想金額の割合(%)を描画するためのデータを生成する。なお、取得された今後予定原価を着地予想金額として用いている。
【0125】
また、表示制御部21は、取得された労務費の前月末時点予定原価、今後予定原価、及び、発生原価金額に基づいて、労務費の着地予想金額、実績金額、及び、実績金額に対する着地予想金額の割合(%)を描画するためのデータを生成する。
【0126】
また、表示制御部21は、取得された経費の前月末時点予定原価、今後予定原価、及び、発生原価金額に基づいて、経費の着地予想金額、実績金額、及び、実績金額に対する着地予想金額の割合(%)を描画するためのデータを生成する。
【0127】
また、取得部22図42(a)に示すパラメータに基づいて図42(c)に示す工事詳細データを参照し、事業所名、部門、工事名、工事種類、完成時期、及び、仕入先を取得する。表示制御部21は、図42(d)に示すデータバインド情報を参照し、図42(d)に示す「異常検知された工事の詳細情報を出力する表」を表示するための描画用のデータを生成する。また、表示制御部21は、取得された事業所名、部門、工事名、工事種類、完成時期、及び、仕入先を、異常検知された工事の詳細情報を出力する表上に表示するための描画用のデータを生成する。
【0128】
次に、表示制御部21は、図38に例示した工事別原価計上状況グラフを、図43に示す分析詳細画面のエリアRS3に表示する。また、表示制御部21は、図39(d)に示した計上状況グラフを、図43に示す分析詳細画面のエリアRS4に表示する。また、表示制御部21は、図40(d)に示した科目別計上状況グラフを、図43に示す分析詳細画面のエリアRS5に表示する。
【0129】
また、表示制御部21は、図41(d)に示した「工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表」を、図43に示す分析詳細画面のエリアRS6に表示する。また、表示制御部21は、図42(d)に示した「異常検知された工事の詳細情報を出力する表」を、図43に示す分析詳細画面のエリアRS7に表示する。これにより、見做し原価の異常値が発生している工事の詳細情報、及び、異常の程度(金額等)等を即座に認識可能とすることができる。
【0130】
(表示形態の変更表示)
さらに、表示制御部21は、異常値となっている見做し原価の工事に対応するプロットの点及び棒グラフ等の表示形態を、他のプロットの点又は棒グラフ等に対して異なる表示形態で表示する。
【0131】
具体的には、取得部22は、記憶部2に記憶されている、図44(a)に示すグラフ着色パラメータを参照し、図44(c)に示す異常判定結果データの異常結果が「True」の場合及び「False」の場合の異常フラグの表示色、参考情報フラグの表示色、及び、プロットの点及び折れ線の表示色を取得する。表示制御部21は、取得された表示色に基づいて、異常値が検知された工事(True)のプロットの点を、図44(d)のエリアRS3の工事別原価計上状況グラフに示すように、例えば赤色の点で表示する。
【0132】
また、取得部22は、図44(b)に示すグラフ着色パラメータ(見做し原価用)を参照し、当月発注残金額、今後予定原価金額、実績金額、及び、見做し原価金額等の各棒グラフの配色、濃淡、及び明暗を示す各種情報を取得する。表示制御部21は、取得された配色、濃淡、及び明暗を示す各種情報に対応する表示形態で、図44(d)のエリアR4の計上状況グラフの各棒グラフ、及び、図44(d)のエリアRS5の科目別計上状況グラフの各棒グラフを表示する。
【0133】
このような分析詳細画面では、エリアRS2に表示されたメッセージにより、異常検知された対象(工事名等)、検知の手法、異常と判断した基準値を含めた詳細な情報を表示できる。このため、異常の可能性がある工事が分かっている状態から分析を可能とすることができる。
【0134】
また、エリアRS3に表示された工事別原価計上状況グラフでは、過去の完成工事の情報より、総原価予算と見做し原価の相関を確認できる。ホテリング法における相関関係の前提として、「同規模工事は、原価の発生傾向(時期・材料量・手配人数等)が似る傾向にあり、完成時期における発注残の発生額も似ることが多い」との特徴を利用した分析を行う。そして、明らかに過去の傾向と異なっている工事を確認する。
【0135】
図44の例では、プロットされた点が赤色で表示された工事が、明らかに他の工事に比べて仲間外れな実績であること(見做し原価が異常値を示すこと)がわかる。
【0136】
なお、ホテリング法が利用不可な母集団データであっても、データのプロットより特徴が現れるケースが存在する。すなわち、相関関係があれば、その特徴が現れる。
【0137】
図45に示すように、エリアRS4に表示された計上状況グラフは、異常検知された工事の原価の状況を確認可能とすることができる。この計上状況グラフは、下記の情報が可視化できる。
【0138】
1.当月の発注残と見做し原価の状況:この両者は、基本的に一致することが多いが、不足している場合、発注残から見做し原価への計上漏れが考えられる。
2.今後予定原価と実績+見做し原価の状況:予定通りの実績となる予定か否か、予定より大きな実績となる場合、原価の積み過ぎ、又は、予定が甘く調整が必要となることが考えられる。
【0139】
図46に示すように、エリアRS5に表示された科目別計上状況グラフは、原価の内訳単位で予定と実績の状況を確認できる。具体的には、材料費は、緊急調達又は他工事の原価付け替え等の操作が考えられる。外注費は、外注先への資金流出、他工事の原価付け替え等の操作が考えられる。
【0140】
労務費のグラフは、図45の計上状況グラフと並行して確認する。今後予定原価との比較の際に、実績の部分で関わってくる情報である。また、人件費を削って原価操作されている場合、この労務費のグラフに特徴が現れる。
【0141】
経費のグラフは、図45の計上状況グラフと並行して確認する。今後予定原価との比較の際に、実績の部分で関わりが持たれる情報である。不正な交通費又は接待費等の原価が積み上がっている場合、この経費のグラフに特徴が現れる。
【0142】
(ルールベース法を用いた場合)
次に、ルールベース法で異常検知を行った場合における分析画面の表示処理を説明する。この場合も、まず、取得部22が、図47(b)に示すように異常判定結果データを参照することで、「True」の異常判定結果、及び、「見做し原価アラート」のJOBID(ジョブID)を取得する。記憶制御部25は、取得された「True」の異常判定結果、及び、「見做し原価アラート」のJOBID(ジョブID)を、図47(a)に示すパラメータに設定する。なお、見做し原価の異常が検知された各工事に対するアラートを一覧表示するため、この時点では、検知IDは取得されず、パラメータに対する検知IDの設定は未設定となる。
【0143】
次に、取得部22は、図47(c)に示す異常判定結果メッセージデータを参照し、異常度、定義名、概要、及び、検知対象を取得する。表示制御部21は、図47(e)に示すように、取得された異常度、定義名、概要、及び、検知対象を含む、分析画面に表示するためのメッセージデータを生成する。そして、表示制御部21は、図47(f)に示す分析画面のエリアR2に、異常度、定義名、概要、及び、検知対象を含む、異常が発生していることを示す工事毎のメッセージを一覧表示する。なお、図47(d)に示す異常判定結果メッセージ詳細データは、後述する分析詳細画面の表示時に参照される。
【0144】
次に、操作者は、分析画面を起動した日付を「基準日」として取得し、分析画面のエリアR1の抽出条件の「基準日」に設定する。
【0145】
(分析詳細画面の表示処理)
次に、操作者は、分析画面に一覧表示された各工事のメッセージのうち、詳細を確認する工事のメッセージを選択し、表示ボタンを操作する。この表示ボタンが操作されると、取得部22は、図48(a)に示す異常判定結果データから、事業所、部門、担当者、工事名、工事種類、完成時期の各データを取得する。また、取得部22は、図48(b)に示す異常判定結果メッセージ詳細データから検知手法(この場合は、ルールベース法)を取得する。
【0146】
表示制御部21は、一覧表示したメッセージと共に、取得された事業所、部門、担当者、工事名、工事種類、完成時期及び検知手法を含む、図48(c)に示す詳細メッセージを生成し、これを図49に示す分析詳細画面のエリアRS2に表示する。これにより、分析画面の一覧から選択されたメッセージに対応する工事に対応する詳細メッセージを、分析詳細画面を介して操作者に提供することができる。
【0147】
図50に示すエリアRS4~エリアRS7に表示するグラフ及び表の表示処理、及び、グラフ及び表を表示する際のプロットした点及び棒グラフ等の表示形態の変更処理等は、上述のホテリング法で異常を検知した場合と同様である。なお、エリアRS3に関しては、正常範囲境界線のプロットの有無が異なる。詳しくは、図44の説明等を参照されたい。
【0148】
図50(d)の分析詳細画面のエリアRS3に表示された工事別原価計上状況グラフでは、ルールベース法に基づいて、発注残金額と見做し原価が不一致となる工事を異常工事として検出できる。
【0149】
また、図50(d)の分析詳細画面のエリアRS3に表示された工事別原価計上状況グラフでは、過去の完成工事の情報より、総原価予算と見做し原価の相関を確認できる。見做し原価と総原価予算に相関があり、異常データが仲間外れの場合(母集団から離れた位置にプロットされた点が存在する場合)、こちらに特徴が現れる。従って、工事別原価計上状況グラフより、母集団から離れた位置にプロットが確認された場合、前述のホテリング法による異常検知を行ってもよい。
【0150】
図50(d)の分析詳細画面のエリアRS4に表示された計上状況グラフは、異常検知のKeyの情報を確認できる。如何に発注残に対して見做し原価が積み上がっていないかを確認する。
【0151】
エリアRS4には、例えば図51(a)に示すように、実績金額に加算処理される見做し原価金額が、当月発注残金額よりも大幅に少ない工事等が、検知対象の工事として棒グラフ化されて表示される。
【0152】
このように発注残金額と見做し原価との間に明らかな差があった場合は、確認が容易であるが、図51(b)に示すように当月発注残金額と見做し原価金額との差が少ない場合、見做し原価が異常値であるか否かの確認が困難となる。このような場合、図50(d)の分析詳細画面のエリアRS6に表示される「工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表」を用いる。
【0153】
図52は、この「工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表」の一例を示す図である。計上状況グラフにおいて、当月発注残金額と見做し原価金額との差が少ない場合でも、「工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表」において、例えば当月発注残金額が「80」であるのに対し、見做し原価金額が「70」である等のように、両者の差を数字で明確に確認することができる。このため、見做し原価の小さな異常値も、容易に検知可能とすることができる。
【0154】
(分析用のグラフの切り替え)
次に、実施の形態の会計管理装置は、分析用のグラフの表示を切り替えて分析を実施可能となっている。すなわち、操作者は、所望の抽出条件でデータを抽出し、より確認し易いデータで見做し原価の異常値を確認可能となっている。
【0155】
一例として、建築工事の工事種別を指定する例を説明すると、操作者は、分析詳細画面のエリアRS1に表示されている抽出条件の入力欄に対して、図53に示すように工事種別として「建築工事」を指定して入力する。記憶制御部25は、図54(a)に示すように記憶部2に記憶されているパラメータの工事種別に「建設工事」を設定する。
【0156】
これにより、取得部22により、図54(b)に示す工事データから、「建設工事」に対応する工事毎の予算金額が取得され、また、図54(c)に示す工事原価データから工事毎の見做し原価金額が取得される。記憶制御部25は、図54(d)に示すように、記憶部2に記憶されている工事原価計上状況データに対して、取得された工事毎の予算金額(総原価予算)及び工事毎の見做し原価の合計額を入力する。工事データ、工事原価データから取得された各種データ、及び、工事原価計上状況データに記憶された各種データは、図50(d)の分析詳細画面のエリアRS6に表示される「工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表」の表示に用いられる。
【0157】
また、取得部22は、図55(a)に示すように工事種類として「建築工事」が設定されたパラメータに基づいて、図55(b)に示す工事データを参照し、各工事の完成時期を取得する。記憶制御部25は、記憶部2に記憶されている、図55(e)に示す工事別費目別工事状況データに対して、各工事の費目毎の完成時期を入力する。また、取得部22は、図55(c)に示す工事原価データを参照し、各工事の前月末となる例えば2022年9月度(工事Aの場合)における費目毎の今後予定原価、及び、各工事の完成月となる例えば2022年10月度(工事Aの場合)における費目毎の今後予定原価を取得する。記憶制御部25は、図55(e)に示す工事別費目別工事状況データの前月末時点予定原価に、2022年9月度における費目毎の今後予定原価を入力し、工事別費目別工事状況データの今後予定原価に2022年10月度における費目毎の今後予定原価を入力する。
【0158】
また、取得部22は、図55(c)に示す工事原価データから費目毎の発生原価金額を取得する。記憶制御部25は、取得された発生原価金額を、図55(e)に示す工事別費目別工事状況データの費目毎の発生原価金額として入力する。また、取得部22は、図55(c)に示す工事原価データから費目毎の見做し原価金額を取得する。記憶制御部25は、取得された費目毎の見做し原価金額を、図55(e)に示す工事別費目別工事状況データの費目毎の見做し原価金額として入力する。
【0159】
また、取得部22は、図55(d)に示す工事発注データから各工事の完成月の前の月における材料費及び外注費の各費目の発注金額及び債務計上金額を取得する。記憶制御部25は、材料費及び外注費の各費目の発注金額から債務計上金額を減算処理することで、材料費及び外注費の発注残金額を生成し、これを、図55(e)に示す工事別費目別工事状況データの材料費及び外注費の前月発注残金額として入力する。
【0160】
また、取得部22は、図55(d)に示す工事発注データから各工事の完成月における材料費及び外注費の各費目の発注金額及び債務計上金額を取得する。記憶制御部25は、材料費及び外注費の各費目の発注金額から債務計上金額を減算処理することで、材料費及び外注費の発注残金額を生成し、これを、図55(e)に示す工事別費目別工事状況データの材料費及び外注費の当月発注残金額として入力する。図55(e)に示す工事別費目別工事状況データ等は、分析詳細画面のエリアRS6に表示される「工事・原価分類別の完成時点の原価積み上げ状況を確認するための表」、エリアRS7に表示される「異常検知された工事の詳細情報を出力する表」、及び、エリアRS5に表示される科目別計上状況グラフの表示に用いられる。
【0161】
抽出条件を変更した場合であっても、図56(a)~図56(d)に示すように、エリアRS3~エリアRS7に表示するグラフ及び表の表示処理、及び、グラフ及び表を表示する際のプロットした点及び棒グラフ等の表示形態の変更処理等は、上述のとおりである。詳しくは、図44の説明等を参照されたい。
【0162】
図57(a)に示すように、エリアRS3に表示された工事別原価計上状況グラフ上にプロットされた点が多数となると、見做し原価の異常値を示す工事の検知が困難となる。このような場合に、上述のように例えば「建築工事」等の工種を指定してデータを抽出することで、工事別原価計上状況グラフ上にプロットされる点を、図57(b)に示すように少なくすることができ、見做し原価の異常値を示す工事の検知を容易化することができる。
【0163】
また、工種で分けた場合にクラスタ(グループ)となり得る情報がある場合、これらを可視化することができる。図57(b)の例は、2つ存在するクラスタ(グループ)が可視化された例である。これにより、工事別原価計上状況グラフの表示に使用されたデータは、一つの正規分布に従うクラスタ(グループ)のみではなかった、ということが分かる。また、ホテリング法では検知できないことに気づくことができる。この場合、異常検知手法をルールベース法に変更して見做し原価の異常値の検知を行うこととなる。
【0164】
なお、このように確認できた工種などのパラメータでクラスタ分析を事前に行い、工事データの母集団毎にホテリング法を用いて分析を行ってもよい。
【0165】
(正規分布に従うか否か、又は、クラスタ分割のKeyとなる条件が不明な点群の密集する分布が1以上(複数も考慮)存在する可能性が高いケースについて)
次に、Keyとなる条件がわかれば、それぞれのクラスタ(グループ)についてホテリング法を用いることができるが、Keyとなる条件が不明な場合、クラスタ(グループ)を分けることが困難となる。このような場合、「局所外れ値因子法」を用いて異常検知を行うことができる。
【0166】
この「局所外れ値因子法」を用いる場合、操作者は、図58に示すように自動異常検知手法データとして、検知ID、手法、利用列、基準値、比較値、及び、異常判定方法を設定する。「手法」としては「局所外れ値因子法」が設定される。「利用列」としては、「見做し原価、予算金額」が設定される。「異常判定方法」としては、「近傍数=2、閾値=1.5」が設定される。記憶制御部25は、この自動異常検知手法データを記憶部2に記憶させる。
【0167】
「近傍数」は、各点から距離が近い点をいくつ参照するかを指定する値である。例えば、「近傍数=2」として設定した場合、図59の例では、点Aの近傍点として点B及び点Cの2点が参照される。
【0168】
図60(a)~図60(d)に、「局所外れ値因子法」を用いた処理の流れを示す。まず、表示制御部21が、各点の局所到達可能性密度を計算する。「局所到達可能性密度」は、ある点に対する各近傍との到達可能性距離の平均値の逆数であり、表示制御部21は、下記の数式に基づいて算出する。
【0169】
lrd(A)=1÷(((rd(A,B))+(rd(A,C))÷2)
【0170】
「A」は、自身の点であり、「B」は、第1の近傍点(Aより一番近い点)であり、「C」は、第2の近傍点(Aより二番目に近い点)である。「rd」は、距離であり、「rd(A,B)」は、AからBまでの距離である。また、「距離」とは、「到達可能性距離」を意味する。
【0171】
次に、表示制御部21は、LOF(Local Outlier Factor)を算出する。「LOF」は、近傍の2点の局所到達可能性密度をそれぞれ自身の局所到達可能性密度で除算した値の平均値である。記憶制御部25は、算出された各点のLOFを、図60(b)に示すように各点のスコア値として記憶部2に記憶させる。
【0172】
次に、判定部24は、図60(c)に示すように、図58に示した自動異常検知手法データの「異常判定方法」に設定された「閾値=1.5」よりも大きなLOFとなっている点を異常として検知(判定)する。
【0173】
次に、記憶制御部25は、LOF=1.5となる点の総原価予算及び見做し原価金額を、図60(d)に示すように、記憶部2に記憶されている「異常判定結果付属情報データ」に入力して記憶させる。
【0174】
図61は、各点とLOF=1.5の点を描画した一例となる図である。「異常判定結果付属情報データ」にある点を描画することで、図61に点線で示すように閾値線(正常範囲境界線)を描画することができる。これにより、複数の母集団が存在する場合でも、各母集団から離れた点に対応する、見做し原価が異常値を示す工事を容易に検知可能とすることができる。
【0175】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、実施の形態の会計管理装置1は、一例としてルールベース法に基づいて検知した異常値を示す見做し原価を計上状況グラフに、特定の表示形態で表示し、また、ホテリング法に基づいて検知した異常値を示す見做し原価を工事別原価計上状況グラフに、特定の表示形態で表示する。これにより、計上された工事の見做し原価の異常値を、企業又は工事毎の特性に合わせて柔軟かつ高精度に検知して表示でき、操作者に対して見做し原価の異常値が発生している工事を簡単かつ迅速に認識させることができる。
【0176】
また、実施の形態の会計管理装置1は、総原価予算と見做し原価の相関に注目し、同類グループ(類似工事間)と同類とみなせる範囲をシステム側で算出し、この同類とみなせる範囲外(仲間外れ)を異常として検知して操作者に通知(表示部に表示)する。これにより、同類の定義をシステム側で統計的に判定でき(市場分析等で用いられる手法より信頼度の高い定義を利用でき)、見做し原価の異常値を迅速に検知できる。
【0177】
また、実施の形態の会計管理装置1は、類似工事間で見做し原価を比較し、仲間外れを可視化可能に表示している。これにより、見做し原価の大体のレベルの妥当性を確認でき、明らかに異常な値を迅速に検知できる。
【0178】
また、実施の形態の会計管理装置1は、工事別原価分類別の発生予定額、発注残、発注実績、見做し原価の情報を可視化可能に表示する。これにより、一つの表示画面で、各原価の予実対比、発注残と見做しの比較を可能とすることができる。このため、各工事の原価毎に異常の有無を迅速に確認でき、異常の可能性がある原価の範囲の絞り込みを行うことができる。
【0179】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び目標9に貢献することが可能となる。
【0180】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、目標13及び目標15に貢献することが可能となる。
【0181】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0182】
[他の実施の形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態で実施してもよい。
【0183】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0184】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0185】
また、会計管理装置1に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも図示の如く物理的に構成されていることを要しない。
【0186】
例えば、会計管理装置1が備える処理機能、特に制御部3及び制御部3にて行われる各処理機能については、その全部又は任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて会計管理装置1に機械的に読み取られる。すなわち、ROM又はHDD等の記憶部等には、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部3を構成する。
【0187】
また、この会計管理装置1の会計管理プログラムは、会計管理装置1に対して任意のネットワークを介して接続された他のサーバ装置に記憶されていてもよく、必要に応じてその全部又は一部をダウンロードすることも可能である。
【0188】
また、本実施形態で説明した処理を実行するための会計管理プログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及び、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0189】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコード又はバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した会計管理装置1において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0190】
記憶部2は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、及び、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0191】
また、会計管理装置1は、既知のパーソナルコンピュータ装置又はワークステーション等の情報処理装置で構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された情報処理装置で構成してもよい。また、情報処理装置は、本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラム又はデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0192】
さらに、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部又は一部を、各種の付加等に応じて又は機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は、例えば建設業の会計業務に適用して好適である。
【符号の説明】
【0194】
1 会計管理装置
2 記憶部
3 制御部
4 通信インターフェース部
5 入出力インターフェース部
6 入力装置
7 出力装置
21 表示制御部
22 取得部
23 比較部
24 判定部
25 記憶制御部
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