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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153434
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/122 20210101AFI20241022BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20241022BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20241022BHJP
【FI】
H01M50/122
H01M50/119
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/105
H01M50/131
H01M50/133
H01G11/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067332
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078AB12
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA13
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC05
5H011CC06
5H011CC09
5H011CC10
5H011DD03
(57)【要約】
【課題】成形性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供する。
【解決手段】本発明は、金属箔層4と、金属箔層5の外面側に設けられた基材層2と、金属箔層4の内面側に設けられた熱融着層3とを含む蓄電デバイス用外装材を対象とする。熱融着層3のうち最内面側に配置されるシール層31は、レーザー回析散乱法による粒度分布測定において累積分布の50%粒径となるD50としての体積平均粒子径が異なる少なくとも2種以上の混合粒子を含み、混合粒子の累積分布において、粒径が小さい方からカウントして、累積分布の10%粒径となるD10が2μm以下であり、かつ累積分布の90%粒径となるD90が6μm以上であり、混合粒子の粒度分布においてD10~D90の範囲でピークを1つだけ含み、混合粒子の粒度分布におけるピーク値が1μm~10μmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた樹脂製の基材層と、前記金属箔層の内面側に設けられた熱可塑性樹脂製の熱融着層とを含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記熱融着層のうち最内面側に配置されるシール層は、レーザー回析散乱法による粒度分布測定において累積分布の50%粒径となるD50としての体積平均粒子径が異なる少なくとも2種以上の混合粒子を含み、
前記混合粒子の累積分布において、粒径が小さい方からカウントして、累積分布の10%粒径となるD10が2μm以下であり、かつ累積分布の90%粒径となるD90が6μm以上であり、
前記混合粒子の粒度分布においてD10~D90の範囲でピークを1つだけ含み、
前記混合粒子の粒度分布におけるピーク値が1μm~10μmであることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記混合粒子は、体積平均粒子径が異なる3分布の非相溶粒子である小粒子、中粒子および大粒子を含み、
前記小粒子の体積平均粒子径は0.05μm~5μmであり、
前記中粒子の体積平均粒子径は3μm~8μmであり、
前記大粒子の体積平均粒子径は7~15μmである請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記シール層は、前記混合粒子の重量含有率が3000ppm~20000ppmである請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記シール層は、厚みが5μm以上である請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記混合粒子は、アスペクト比が0.2~1である請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記シール層に滑剤が含有されている請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
(D90-D10)/D50=0.5~5の関係式を満たす請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項8】
請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材における熱融着層に用いられるフィルムであって、
前記シール層に相当する部分が、前記混合粒子を含む樹脂層によって構成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材の熱融着層用フィルム。
【請求項9】
請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材における熱融着層に用いられるフィルムの製造方法であって、
前記シール層に相当する部分を、前記混合粒子を配合した樹脂層によって形成するようにしたことを特徴とする蓄電デバイス用外装材の熱融着層用フィルムの製造方法。
【請求項10】
蓄電デバイス本体部と、
請求項1または2に記載の外装材と、を備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に用いられる電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用の外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ等の蓄電デバイスの外装材としては、従来の金属缶に代えて、耐熱性樹脂層(基材層)/接着層/金属箔層(バリア層)/接着層/熱可塑性樹脂層(熱融着層)からなる積層体が用いられている。また、電気自動車等の電源、蓄電用途の大型電源、キャパシタ等も上記構成の積層体(外装材)で外装されることも増加傾向にある。蓄電デバイス用外装材を形成するに際しては、前記積層体に対して張り出し成形や深絞り成形等の冷間成形が行われることによって、略直方体形状等の立体形状に成形される。このような立体形状に成形することにより、蓄電デバイス本体部を収容するための収容空間を確保することができる。従って高精度の収容空間を確保するには、成形性を向上させるのが好ましい。
【0003】
例えば下記特許文献1に示す蓄電デバイス用外装材は、内側層(熱融着層)の表出面に滑剤を添加して滑り性を向上させることにより、良好な成形性を確保するようにしている。
【0004】
また下記特許文献2に示す蓄電デバイス用外装材は、熱融着層の表出面を相分離させたり、表出面の層に微細な粒子を添加することによって、中心線平均粗さ(Ra)を適度に調整し、良好な成形性を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3774163号
【特許文献2】特許第5380762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の蓄電デバイス用外装材においては、滑剤が添加される表出面の層は、転写されやすい表層なので滑剤の存在量が使用時に変化することによって、滑り性にバラツキが生じ、安定した良好な成形性を得ることができない、という課題があった。さらに成形部の入り隅部のように、ほぼ直角に近い角度で成形するところでは、デラミネーションが発生し易く、この点からも良好な成形性を得ることができなかった。
【0007】
また特許文献2に示す従来の蓄電デバイス用外装材においては、表出面の広い範囲でうねり等の凹凸が必要であるが、中心線平均粗さ(Ra)を調整するだけでは、部分的に滑り性が向上するものの、全域においてバラツキのない滑り性を得ることができず、安定した良好な成形性を得ることができない、という課題があった。
【0008】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、安定した良好な成形性を得ることができる蓄電デバイス用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0010】
[1]金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた樹脂製の基材層と、前記金属箔層の内面側に設けられた熱可塑性樹脂製の熱融着層とを含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記熱融着層のうち最内面側に配置されるシール層は、レーザー回析散乱法による粒度分布測定において累積分布の50%粒径となるD50としての体積平均粒子径が異なる少なくとも2種以上の混合粒子を含み、
前記混合粒子の累積分布において、粒径が小さい方からカウントして、累積分布の10%粒径となるD10が2μm以下であり、かつ累積分布の90%粒径となるD90が6μm以上であり、
前記混合粒子の粒度分布においてD10~D90の範囲でピークを1つだけ含み、
前記混合粒子の粒度分布におけるピーク値が1μm~10μmであることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0011】
[2]前記混合粒子は、体積平均粒子径が異なる3分布の非相溶粒子である小粒子、中粒子および大粒子を含み、
前記小粒子の体積平均粒子径は0.05μm~5μmであり、
前記中粒子の体積平均粒子径は3μm~8μmであり、
前記大粒子の体積平均粒子径は7~15μmである前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0012】
[3]前記シール層は、前記混合粒子の重量含有率が3000ppm~20000ppmである前項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0013】
[4]前記シール層は、厚みが5μm以上である前項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[5]前記混合粒子は、アスペクト比が0.2~1である前項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0015】
[6]前記シール層に滑剤が含有されている前項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0016】
[7](D90-D10)/D50=0.5~5の関係式を満たす前項1~6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0017】
[8]前項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材における熱融着層に用いられるフィルムであって、
前記シール層に相当する部分が、前記混合粒子を含む樹脂層によって構成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材の熱融着層用フィルム。
【0018】
[9]前項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材における熱融着層に用いられるフィルムの製造方法であって、
前記シール層に相当する部分を、前記混合粒子を配合した樹脂層によって形成するようにしたことを特徴とする蓄電デバイス用外装材の熱融着層用フィルムの製造方法。
【0019】
[10]蓄電デバイス本体部と、
前項1~7のいずれか1項に記載の外装材と、を備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0020】
発明[1]の蓄電デバイス用外装材によれば、熱融着層における内面側のシール層に、粒径の異なる混合粒子が添加されているため、大小の凸部を形成でき、更に混合粒子が粒度分布測定結果で一定の粒度分布幅で条件内に1つのピークを持つ粒子として計測できることから、混合粒子の凝集が発生し難く、熱融着層の内面に、粒子1つ1つが分散して偏りのない凸部を形成することができ、成形時に金型等の成形治具との接触面積を減少できて、滑り性を向上でき、安定した良好な成形性を得ることができる。
【0021】
発明[2]の蓄電デバイス用外装材によれば、シール層に、粒径が特定された小粒子、中粒子および大粒子が含まれているため、所望の粒度分布を持つ混合粒子を配合し易くなり、狙い通りの凹凸を熱融着層の内面に形成でき、成形時に成形治具との接触面積をより一層小さくできて、一段と成形性を向上させることができる。
【0022】
発明[3]の蓄電デバイス用外装材によれば、シール層の混合粒子の含有量を特定しているため、シール層内に混合粒子を適度に分散させつつバランス良く配置でき、所望の凹凸を熱融着層の内面に形成できて、より一層成形性を向上させることができる。
【0023】
発明[4]の蓄電デバイス用外装材によれば、シール層の厚みを特定しているため、混合粒子をシール層に安定した状態でしっかりと固定でき、混合粒子の脱落等の不具合を防止できて、より一層確実に成形性を向上させることができる。
【0024】
発明[5]の蓄電デバイス用外装材によれば、混合粒子のアスペクト比を特定しているため、どの方向に混合粒子が傾いていても十分に凸部を形成できるとともに、脱落が起こり難くなり、成形性をさらに向上させることができる。
【0025】
発明[6]の蓄電デバイス用外装材によれば、シール層に滑材を含有しているため、一定温度以上になると滑材が析出して熱融着層の内面に表出し、滑り性を一層向上できて、なお一層成形性を向上させることができる。
【0026】
発明[7]の蓄電デバイス用外装材によれば、(D90-D10)/D50=0.5~5の関係式を満たしているため、混合粒子の体積分布を、より確実にブロードな分布とすることができ、成形時における成形性を一段と向上させることができる。
【0027】
発明[8]の蓄電デバイス用外装材の熱融着層用フィルムによれば、そのフィルムを用いて上記発明の外装材を確実に製作することができる。
【0028】
発明[9]の蓄電デバイス用外装材の熱融着層用フィルムの製造方法によれば、上記発明の外装材を確実に製作することができる。
【0029】
発明[10]によれば、成形治具に対する滑り性に優れた上記外装材を備えているため、動作信頼性が高い高品質の蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1はこの発明の実施形態である蓄電デバイス用外装材を示す断面図である。
図2図2は実施形態の蓄電デバイス用外装材の熱融着層を説明するための模式断面図である。
図3図3は実施形態における各粒子および混合粒子全体の粒度分布を示すグラフである。
図4図4は実施形態における混合粒子の粒度分布および累積分布を示すグラフである。
図5図5は実施形態における混合粒子の粒度分布においてピーク値を説明するためのグラフである。
図6図6は実施形態の熱融着層において滑剤が析出されたシール層を説明するための模式断面図である。
図7図7は実施形態の外装材を用いて製作された蓄電デバイスを示す断面図である。
図8図8は実施形態の蓄電デバイスを分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1はこの発明の実施形態である蓄電デバイス用外装材を示す断面図である。同図に示すようにこの蓄電デバイス用外装材1は、金属箔によって構成された金属箔層4と、金属箔層4の外面側に設けられ、かつ外側層としての耐熱樹脂製の基材層2と、金属箔層4の内面側に設けられた接着層5と、接着層5の内面側に設けられ、かつ内側層としての熱融着樹脂製の熱融着層(シーラント層)3とを備えている。
【0032】
なお、本明細書において、電池用包装材を構成する各層の位置を方向(図1の上方向)で説明する場合に、基材層2の方向を外側、熱融着層3の方向(図1の下方向)を内側と称する。
【0033】
基材層2は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂などを用いるのが良く、塗工膜やフィルムによって層を形成することができる。基材層2は特に前記樹脂の二軸延伸フィルムを用いるのが好ましく、中でも、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルムを用いるのが好ましい。これらの中で二軸延伸ポリアミドフィルムとしては、特に限定されるものではないが、二軸延伸6ナイロンフィルム、二軸延伸6,6ナイロンフィルム、二軸延伸MXDナイロンフィルム等を好適に用いることができ、ポリエステルフィルムとしては二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等を好適に用いることができる。
【0034】
また基材層2を構成する耐熱性樹脂としては、熱融着層3を構成する熱融着樹脂に対し10℃以上の熱可塑性樹脂を用いるのが良く、より好ましくは20℃以上の熱可塑性樹脂を用いるのが良い。基材層2の厚みは、9μm~50μmに設定するのが良い。
【0035】
金属箔層4は、アルミニウム(Al)箔、銅(Cu)箔、ステンレス(SUS)箔、チタン(Ti)箔、ニッケル(Ni)箔からなる金属箔を単独で用いるものや、2種以上の金属を貼り合わせたクラッド材等を好適に用いることができる。金属箔層4の厚みは、20μm~150μmに設定するのが良い。すなわちこの厚みが薄過ぎる場合にはピンホール発生等による耐久性が低下するおそれがあり、逆に厚過ぎる場合には、成形性の低下を来すおそれがある。
【0036】
金属箔層4の内面および外面の少なくともいずれか一方の面、特に熱融着層3側の面(内面)には、下地層を形成しておくのが好ましい。
【0037】
下地層は、シランカップリング剤の塗布処理や、クロメート処理などの化成処理を行うことによって形成することができる。下地層の厚みは、0.01μm~1μmに設定するのが良い。
【0038】
このように下地層を形成することによって、金属箔層4の耐食性を向上できるとともに、内面に設けられる接着層5との接着強度を向上させることができ、接着層5の剥がれを有効に防止することができる。
【0039】
化成処理による被膜(化成処理被膜)によって下地層を形成する場合、化成処理被膜は、接着層5との組み合わせによって選定されることもあるが、例えばクロム酸処理による被膜、リン酸クロメート処理による被膜、リン酸亜鉛処理による被膜、ジルコニウムやチタンをCr代替の金属成分とする非クロム酸塩処理による被膜、ベーマイト処理による酸化被膜を好適に用いることができる。
【0040】
この金属箔層4の外面に、必要に応じて接着剤を介して上記基材層2が貼り付けられて積層一体化される。
【0041】
基材層2と金属箔層4を接着するための接着剤、および基材層2を複数のフィルムによって形成する際のフィルム間の接着剤としては、2液硬化型接着剤により形成された接着層等を好適に用いることができる。例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液(主剤)と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤等を用いることができる。この接着剤の厚みは2μm~5μmに設定するのが好ましい。
【0042】
金属箔層4の内面に設けられる接着層5としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー系樹脂、フッ素系樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂を1種以上含む接着剤等を好適に用いることができ、中でも特に、酸変性ポリオレフィンを主剤とするポリウレタン複合樹脂からなる接着剤を用いるのが好ましい。接着層5の厚みは、2μm~5μmに設定するのが好ましい。
【0043】
なお接着層5は、ポリオレフィンの変性体(例えば酸変性ポリプロピレン)を用いたヒートラミネーションによって形成しても良い。この場合、好ましい厚みは、10μm~30μmである。
【0044】
熱融着層3を構成する熱可塑性樹脂としては、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、ポリエチレン系共重合体等といったポリエチレン系樹脂、rPP(ランダムポリプロピレン)、bPP(ブロックポリプロピレン)、hPP(ホモポリプロピレン)やポリプロピレン系共重合体といったポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系共重合体、アイオノマー等が挙げられる。中でもが耐電解液性や耐水性、耐酸素バリア性などからポリプロピレン系樹脂が好適に用いられる。また、取り扱いの観点からフィルム状であることが好ましく、特にCPP(キャストポリプロピレン)、IPP(インフレーションポリプロピレン)等の無延伸ポリプロピレンフィルムを用いるのが好ましい。
【0045】
図2は本実施形態の外装材1における熱融着層3を示す断面図である。図1および図2に示すように本実施形態において、熱融着層3は、最も内面側に配置されるシール層31と、最も外面側に配置される金属箔側層、ラミネート層等とも称される外側層33と、シール層31および外側層33間に配置される中間層32との3層の積層体によって構成されている。
【0046】
なお本発明において、熱融着層3は、3層に限定されず、単層であっても、2層であっても、4層以上であっても良い。もっとも本発明においては、熱融着層3を積層構造とする場合には、複層である方が、所望の積層構造を形成し易くなる。
【0047】
また本発明において、各層で必ずしも樹脂を変える必要がなく、例えば混合粒子が添加される最も内側に配置される層の樹脂と混合粒子を添加しない隣接する層の樹脂を同種の樹脂として、シール層31と中間層32や外側層33を構成するようにしても良い。
【0048】
熱融着層3用のフィルムは既述した通り、単層であっても、複層であっても良いが、ヒートシール性、デラミネーション耐性、絶縁性を考慮すると、共押出品等による複層のフィルムによって形成するのが好ましい。例えば本実施形態においてはhPP層またはbPP層の両面に、rPP層を配した3層の共押出CPPフィルムを好適に用いることができる。この3層共押出CPPフィルムによる熱融着層3においては、中間のhPP層またはbPP層が中間層32として構成され、両面(内外面)のうち一方のrPP層がシール層31として構成され、他方のrPP層が外側層33として構成される。
【0049】
本実施形態において熱融着層3全体の厚みは、20μm~120μmに設定するのが好ましい。またシール層31の厚みは、5μm以上に設定するのが良く、より好ましくは10μm以上に設定するのが良く、更に好ましいくは20μm以上に設定するのが良い。すなわちシール層31の厚みをこの範囲に特定する場合には、シール層31に含まれる後述の混合粒子をシール層に安定した状態で確実に保持でき、混合粒子が脱落する等の不具合を確実に防止することができる。
【0050】
本実施形態においては、シール層31に、混合粒子として、相溶性がない3種類の粒子、つまり非相溶性を有する非相溶粒子である3種類の粒子M1~M3が含まれている。
【0051】
混合粒子M1~M3としては、金属酸化物、樹脂ビーズ等を用いることができる。具体例には、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、タルク、カオリン、アクリル樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ、ポリエチレンエラストマーを好適に用いることができる。なお、粒子M1~M3の構成は前記粒子から2種類以上の組み合わせで混合粒子を作成することが好ましい。2種類以上の違う組成の粒子を用いることでファンデルワールス力による混合粒子の凝集が起こりにくくなり、シール層31内で混合粒子を分散させ、適度な凹凸を形成することができる。
【0052】
シール層31に対し、混合粒子M1~M3の含有量は、重量含有率で3000ppm~20000ppmに設定するのが良く、より好ましくは7000ppm~18000ppmに設定するのが良い。すなわち混合粒子M1~M3の含有量がこの範囲に設定される場合には、シール層31内に混合粒子M1~M3を適度に分散させつつバランス良く配置でき、所望の凹凸を熱融着層3の内面に形成することができる。
【0053】
本実施形態において、シール層31に含まれる混合粒子(非相溶粒子)は、累積分布の50%粒径のD50である体積平均粒子径(メジアン径)が異なる3種類の粒子、つまり小粒子M1、中粒子M2および大粒子M3によって構成されている。
【0054】
サイズが異なる小粒子M1、中粒子M2および大粒子M3が含まれるシール層31は、rPP等の樹脂成分の内側面(図1および図2の下側面)から各粒子M1~M3の一部が内方(同図の下方)に突出するように配置されており、シール層31の内面側は凹凸が形成される。
【0055】
小粒子M1としては、体積平均粒径(D50)が0.05μm~5μmのものを用いるのが良く、より好ましくは0.5μm~3μmのものを用いるのが良い。
【0056】
中粒子M2としては、体積平均粒径(D50)が3μm~8μmのものを用いるのが良く、より好ましくは4μm~7μmのものを用いるのが良い。
【0057】
大粒子M3としては、体積平均粒径(D50)が7μm~15μmのものを用いるのが良く、より好ましくは8μm~13μmのものを用いるのが良い。
【0058】
本実施形態においては、シール層31に粒子径D50が異なる3種類の粒子M1~M3を含んでいるため、小粒子M1と大粒子M3によって粒子のサイズ分布をブロードにし、中粒子M2によって1つの分布としてまとめることで、各サイズの粒子を全体に分散して偏りのない様々なサイズの凸部の形成に寄与することができ、外装材1を成形する際に成形治具等の金型との接触面積を減少できて、滑り性を向上でき、安定した良好な成形性を得ることができる。
【0059】
なお異なるサイズではなく同じサイズの粒子を混合して含ませると、凸部のサイズが均一化されるため、表面形状が単調になり滑り性および成形性の低下や凸部による外装材1への型付を来すおそれがある。
【0060】
また本実施形態においては小粒子M1によって、熱融着層3の表面(内面)に細かい凹凸を形成できて、外装材1を成形する際に金型との密着性を抑制することができる。
【0061】
また大粒子M3によって、熱融着層3の内面に凸部(突起)を確実に形成できて、外装材1を成形する際に金型との動摩擦力を低減することができる。
【0062】
さらに中粒子M2によって、熱融着層3の内面に小さな凸部を形成し、かつ、凸部の偏りを防止できて、小粒子M1および大粒子M3による効果を一段と高めることができる。
【0063】
また本実施形態において、各粒子M1~M3の粒径(D50)を上記の範囲に特定することによって、所望の粒度分布を持つ混合粒子を配合し易くなり、狙い通りの凹凸を熱融着層3の内面に形成することができ、外装材1の成形時等に金型との接触面積をより一層小さくできて、一段と成形性を向上させることができる。
【0064】
さらに本実施形態において、混合粒子の含有量を上記の範囲に特定する場合や、シール層31の厚みを上記の範囲に特定する場合には、各粒子のシール層31からの脱落を予防でき、凸部による効果を十分に発揮できて、良好な成形性をより確実に得ることができる。
【0065】
本実施形態において、大粒子M3:中粒子M2:小粒子M1の配合比率(重量比率)としては、0.5~1.5:1~3:0.5~1.5に調整するのが良く、より好ましくは0.8~1.2:1.5~2.5:0.8~1.2に調整するのが良い。すなわち配合比率をこの範囲に調整することによって、粒子M1~M3の配合による上記の効果をより確実に得ることができる。
【0066】
図3は本実施形態における小粒子M1、中粒子M2、大粒子M3のそれぞれ単独の粒度分布と、小粒子M1、中粒子M2、大粒子M3を混合した混合粒子の粒度分布を示すグラフである。同図に示すように、小粒子M1や中粒子M2は、大粒子M3に比べて粒子径が小さいため、大粒子M3と同じ配合量(重量や体積)を混合した場合、粒度分布での存在量である粒子量(粒子数)が大きくなる。
【0067】
本発明において、粒度分布、累積分布の測定は、レーザー回析法(レーザー回析散乱法)に基づいて行うものである。
【0068】
なお本実施形態においては、混合粒子として、体積平均粒径(D50)の異なる3種類の粒子M1~M3を用いる場合を例に挙げて説明しているが、それだけに限られず、混合粒子が粒度分布における条件を満たせば、本発明においては、混合粒子として体積平均粒径(D50)の異なる少なくとも2種類の粒子を用いれば良い。例えば小粒子M1と中粒子M2との2種類で混合粒子としたり、小粒子M1と大粒子M3との2種類で混合粒子としても良い。さらに体積平均粒径(D50)の異なる4種類以上の粒子を用いて混合粒子を形成するようにしても良い。
【0069】
図4は本実施形態における混合粒子の粒度分布および累積分布を示すグラフである。同図に示すように混合粒子の粒度分布において、粒径が小さい方からカウントして、累積分布の10%粒径(D10)~90%粒径(D90)の範囲内でピーク(山部)を1つだけ含んでおり、その範囲内にピークが2つ以上存在しない。
【0070】
ここで本発明は、混合粒子の粒度分布において、D10~D90の範囲内にピークが1つだけ含むものであり、D10~D90の範囲外にピークがあってもその範囲外のピークは本発明では無関係である。例えば図5における粒度分布ではD10未満の位置にピークが存在しているが、このピークは本発明ではカウントしない。つまり同図の粒度分布は、D10~D90の範囲内にピークを1つだけ含むものであり、本発明の対象となる。
【0071】
また本実施形態では、混合粒子の累積分布において、D10の粒径が2μm以上であり、かつD90の粒径が6μm以上である。さらに本実施形態においては、混合粒子の粒度分布におけるピーク値としてのモード径が1μm~10μmである。
【0072】
本実施形態において、D10、D90の粒径や、モード径を上記の数値に特定しているため、混合粒子全体で、シャープではない1つのブロードな分布を持たせることででき、熱融着層3の内面に、粒子M1~M3による凸部が偏りなく均一に分散して形成できる。このため、外装材1の成形時に、金型に対する応力集中が起こり難くなるので、滑り性が良くなり、より一層成形性が高くなる。
【0073】
ここで本実施形態においては、(D90-D10)/D50=0.5~5の関係式を満足させるのが良く、より好ましくは(D90-D10)/D50=1.5~3の関係式を満足させるのが好ましい。すなわちこの関係式を満足する場合には、混合粒子全体で体積分布を、より確実にブロードな分布とすることができ、様々なサイズの凹凸を設けることができるため外装材1の成形時における成形性をより一層向上させることができる。
【0074】
また本実施形態において、混合粒子を構成する各粒子M1~M3として、アスペクト比(短径/長径)が0.2~1のものを採用するのが好ましい。すなわちこの場合には、粒子が一定の塊状を形成しているため、どの方向に粒子M1~M3が傾いていても十分に凸部を形成できるとともに、脱落が起こり難くなり、外装材1の成形時に、より一層確実に成形性を向上させることができる。
【0075】
本実施形態においては、熱融着層3のシール層31に、滑剤を含有させるのが好ましい。
【0076】
この滑剤としては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミド等を例示することができる。
【0077】
さらに具体的には、飽和脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等を例示することができる。
【0078】
さらに不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等を例示することができる。
【0079】
さらに置換アミドとしては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等を例示することができる。
【0080】
さらにメチロールアミドとしては、メチロールステアリン酸アミド等を例示することができる。
【0081】
さらに飽和脂肪酸ビスアミドとしては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等を例示することができる。
【0082】
さらに不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等を例示することができる。
【0083】
さらに脂肪酸エステルアミドとしては、ステアロアミドエチルステアレートを例示することができる。
【0084】
芳香族系ビスアミドとしては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-システアリルイソフタル酸アミド等を例示することができる。
【0085】
滑剤の熱融着層3の内表面の析出量は0.1μg/cm~1μg/cm(0.1μg/cmおよび1μg/cmを含む)に調整するのが好ましい。滑剤の析出量が少な過ぎる場合には、良好な滑り性を得ることができないおそれがあり、好ましくない。逆に滑剤の析出量が多過ぎる場合には、滑剤による白紛や装置汚染等の発生頻度が上昇するおそれがあり、好ましくない。
【0086】
なお図6に示すように、熱融着層3の内表面は、粒子M1~M3によって凹凸構造に形成されているため、熱融着層3の内表面に滑剤が過剰に析出するのを抑制しつつ、所定温度以上になると適量の滑剤が析出してその滑剤による滑剤層6によって熱融着層3の内表面が被覆され、成形治具に対する滑り性を一層向上させることができる。
【0087】
また本実施形態の外装材1を例えば、ロール状に巻き取った際には熱融着層3が基材層2等の最外層にある層と接することにより、各粒子M1~M3による凸部の位置が優先的に他の部位(基材層2等)に接触するため、他の部位への滑剤の転移量も抑制することができる。
【0088】
なお、本発明においては、成形時の滑り性を一層向上させるために基材層2のさらに外側に、微粒子を含んだバインダー樹脂で形成した基材保護層を設けても良い。この微粒子としては、本実施形態の上記混合粒子として用いられる非相溶粒子等を用いることができ、バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。
【0089】
以上のように構成された本実施形態の蓄電デバイス用外装材1は、シート状のままで、あるいは必要に応じて深絞り成形や張り出し成形等の熱成形によって所定の形状に成形して、蓄電デバイスの外装ケースとして用いるものである。
【0090】
例えば図7および図8は本実施形態の外装材1を用いて製造された蓄電デバイス30を示す断面図および分解斜視図である。両図に示すようにこの蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、外装材1を成形して得られたトレイ部材14と、平面状(シート状)の外装材1により構成された蓋部材10とにより外装ケース15が構成されている。しかして、本発明の外装材1を成形して得られたトレイ部材14の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)35が収容され、該蓄電デバイス本体部35の上に、本発明の蓋部材10(外装材1)がその熱融着層3側を内方(下側)にして配置され、該蓋部材10の熱融着層3の外周縁部と、トレイ部材14のフランジ部(封止用周縁部)29の熱融着層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、蓄電デバイス30が構成されている。なお、トレイ部材14の収容凹部の内側の表面は、熱融着層3になっており、収容凹部の外面が基材層2側になっている。
【0091】
図7において、符号の「39」は、蓋部材10の外周縁部と、トレイ部材14のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(溶着)されたヒートシール部である。なお、蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部35に接続されたタブリードの先端部が、外装ケース15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0092】
本実施形態の外装材1を用いて作製された蓄電デバイス30は、成形用金型に対する滑り性に優れ、かつ熱融着層3および接着層5間の接着強度が高い外装材1を備えているため、動作信頼性が高く、かつ高品質の蓄電デバイス製品を確実に提供することができる。
【0093】
蓄電デバイス本体部35としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0094】
なお、上記実施形態では、外装ケース15が、外装材1を成形して得られたトレイ部材14と、平面状の蓋部材10とによって構成されているが、本発明においては特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、外装ケース15が、一対の平面状(シート状)の外装材1からなる構成であっても良いし、あるいは、一対のトレイ部材14を対向状態で重ね合わせた構成であっても良い。
【実施例0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
1.熱融着層用フィルムの作製
<実施例1>
表1および表2に示すように蓄電デバイス用外装材1における実施例1の熱融着層3用のフィルムを製作した。すなわち熱融着層3のフィルムとして、シール層用の16μm厚のrPP、中間層用の48μm厚のbPPおよび外側層用の16μm厚のrPPを、Tダイによる3層共押出によって積層したCPPフィルムを作製した。
【0098】
この実施例1の熱融着層用フィルムにおいて、シール層31には、小粒子M1として平均粒径1.5μmのシリカ粒子を3000ppm、中粒子M2として平均粒径6μmのシリカ粒子を6000ppm、大粒子M3として平均粒径12μmのHDPE(高密度ポリエチレン)粒子を3000ppm添加させた。
【0099】
表2に示すようにシール層31に添加された混合粒子M1~M3において、10%粒径(D10)は0.8μm、50%粒径(D50)は3.8μm、90%粒径は8.2μm、(D90-D10)/D50が1.9、アスペクト比は0.8、体積分布のD10~D90の範囲内のピーク数は1つ、ピーク位置は4.1μmである。
【0100】
なお混合粒子の粒度分布は、レーザー回析法を用いて行った。具体的には、装置としてマイクロトラック MT3000IIを用いて、測定条件における測定範囲は0.02μm―2000μm、測定時間は30秒、測定回数は2回、溶媒はメタノール(屈折率1.33)、粒子設定条件は非球状粒子(屈折率1.54)である。
【0101】
また各粒子のアスペクト比はシスメックス社製のFPIA-3000を用いて測定した。
【0102】
<実施例2~17>
表1および表2に示すシール層用樹脂、中間層用樹脂および外側層用樹脂を、上記実施例1と同様に積層して、実施例2~17の熱融着層用フィルムを作製した。
【0103】
<実施例18,19>
表1および表4に示すシール層用樹脂を用いて、Tダイにより単層の無延伸フィルムを作製して、実施例18,19の熱融着用フィルムとした。
【0104】
<比較例1~4>
表1および表2に示すシール層用樹脂、中間層用樹脂および外側層用樹脂を、上記実施例1と同様に積層して熱融着層用フィルムを作製した。なお比較例1の混合粒子において、体積分布のD10~D90の範囲内のピーク数は2つであり、各ピーク位置は1.9μm、9.3μmであった。
【0105】
2.蓄電デバイス用外装材の作製
金属箔層4としての厚さ40μmのアルミニウム箔(A8021-O)の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/mであった。
【0106】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔(金属箔層4)の一方の面(外面)に、2液硬化型のウレタン系接着剤(3μm)を介して基材層2として厚さ15μmの二軸延伸6ナイロン(ONy)フィルムをドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0107】
次に上記実施例および比較例で準備した熱融着層用のCPPフィルムの外側層の外面を、上記ドライラミネート後のアルミニウム箔(金属箔層)の他方の面(内面)に、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂とイソシアネートの2液硬化型接着剤(2μm)を介して重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートした。その後、40℃で10日間エージングして、試料となる実施例および比較例の外装材(積層体)を得た。
【0108】
3.各外装材に対する評価試験
【0109】
【表3】
【0110】
<成形性試験>
実施例および比較例の各外装材を所定の大きさに切り出した外装材試験片に対し、深絞り成形用金型を用いて、縦55mm×横35mmの範囲を、成形高さ(絞り深さ)を0.5mm単位で増加させつつ深絞り試験を行った。この成形時のシワ押さえ圧におけるゲージ圧は0.475MPa、実圧(計算値)0.7MPaである。
【0111】
この成形によって、絞り凹部のコーナー部にピンホールが発生しないかを透過光を用いて目視により確認した。
【0112】
そして、成形深さが7mm以上でピンホールの発生が認められたものを「◎」、成形深さが6mm以上、7mm未満でピンホールの発生が認められたものを「○」、成形深さが5mm以上、6μm未満でピンホールの発生が認められたものを「△」、成形深さが5mm未満でピンホールの発生が認められたものを「×」と評価した。この評価において本実施例では「◎」、「○」、「△」を合格とした。その結果を表3に示す。
【0113】
<ラミネート強度(シール性)試験>
実施例および比較例の各外装材を15mm幅の短冊状にカットして、JIS K6854-3(1999年)に準拠し、金属箔層および熱融着層間の剥離強度を測定した。その剥離強度が、4.0N/15mm以上のものを「◎」、3.0N/15mm以上で4.0N/15mm未満のものを「○」、2.0N/15mm以上、3.0N/15mm未満のものを「△」、2.0N/15mm未満のものを「×」と評価した。この評価において本実施例では「◎」、「○」、「△」を合格とした。その結果を表3に示す。
【0114】
<滑り性試験(動摩擦係数)>
実施例および比較例の各外装材を、80mm×200mmの大きさにカットして、JIS K 7125に準拠し、動摩擦係数を測定した。測定条件としてのローセル重量は100N、重りは200g(滑り片重量含む)である。動摩擦係数の結果を表3に示す。
【0115】
<総評>
表3に示すように、実施例の外装材では、結果に多少ばらつきはあるものの、全ての実施例で、問題のない評価が得られ、合格水準に達している。
【0116】
これに対し、本発明の要旨を逸脱する比較例1~4の外装材においては、成形性、シール性および滑り性のいずれかの評価が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
この発明の蓄電デバイス用外装材は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイスを製造する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0118】
1:外装材
2:基材層
3:熱融着層
30:蓄電デバイス
31:シール層
35:デバイス本体部
4:金属箔層
6:滑剤層
M1:小粒子
M2:中粒子
M3:大粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8