(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153436
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】運転支援システム
(51)【国際特許分類】
B61L 27/14 20220101AFI20241022BHJP
【FI】
B61L27/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067334
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 景子
(72)【発明者】
【氏名】▲片▼桐 厚
(72)【発明者】
【氏名】田口 航太郎
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ22
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の運転士による停車後の速度規制の失念を抑制できる運転支援システムを提供する。
【解決手段】本開示は、鉄道車両の運転士に運転支援情報を提供する運転支援システムである。運転支援システムは、運転支援情報を生成するサーバと、鉄道車両に設置された出力部と、サーバから受信した運転支援情報を出力部に出力させる制御部と、鉄道車両の加速度を検出する加速度センサ、又は鉄道車両の位置を検出するGPS装置と、を備える。制御部は、加速度センサが取得した加速度、又はGPS装置が取得した鉄道車両の位置の変化に基づいて鉄道車両の発車を検出すると共に、鉄道車両の発車時に速度規制に関するアラートを出力部に出力させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の運転士に運転支援情報を提供する運転支援システムであって、
前記運転支援情報を生成するように構成されたサーバと、
前記鉄道車両に設置された出力部と、
前記サーバから受信した前記運転支援情報を前記出力部に出力させるように構成された制御部と、
前記鉄道車両の加速度を検出するように構成された加速度センサ、又は前記鉄道車両の位置を検出するように構成されたGPS装置と、
を備え、
前記制御部は、前記加速度センサが取得した前記加速度、又は前記GPS装置が取得した前記鉄道車両の位置の変化に基づいて前記鉄道車両の発車を検出すると共に、前記鉄道車両の発車時に速度規制に関するアラートを前記出力部に出力させる、運転支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援システムであって、
前記サーバと通信を行うように構成された携帯端末を備え、
前記携帯端末は、前記出力部、前記制御部及び前記加速度センサを有する、運転支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の運転支援システムであって、
前記制御部は、前記運転支援情報に含まれる複数の要素を前記出力部に同時に表示させると共に、前記複数の要素のうち、停車駅情報を常に前記出力部に表示させる、運転支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援システムであって、
前記制御部は、前記鉄道車両の停車時に、前記複数の要素のうち、速度規制情報を前記出力部に表示させる、運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両において、運転士に運転支援情報を提供するシステムが公知である(特許文献1参照)。運転支援情報には、停車駅、発着時刻、速度規制等の情報が含まれる。運転士は、任意の運転支援情報を携帯端末に表示させることで、運転に必要な情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の運転支援システムでは、複数の情報を同時に表示できる一方で、優先度の高い情報を見落とすおそれがある。特に、駅等に停車した後、発車までに一定の時間が経過した際に、運転士が速度規制を失念するおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、鉄道車両の運転士による停車後の速度規制の失念を抑制できる運転支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、鉄道車両の運転士に運転支援情報を提供する運転支援システムである。運転支援システムは、運転支援情報を生成するように構成されたサーバと、鉄道車両に設置された出力部と、サーバから受信した運転支援情報を出力部に出力させるように構成された制御部と、鉄道車両の加速度を検出するように構成された加速度センサ、又は鉄道車両の位置を検出するように構成されたGPS装置と、を備える。
【0007】
制御部は、加速度センサが取得した加速度、又はGPS装置が取得した鉄道車両の位置の変化に基づいて鉄道車両の発車を検出すると共に、鉄道車両の発車時に速度規制に関するアラートを出力部に出力させる。
【0008】
このような構成によれば、鉄道車両の発車時に速度規制に関するアラートが表示されるため、発車時において運転士に速度規制を強制的に認知させることができる。そのため、運転士による停車後の速度規制の失念を抑制できる。
【0009】
本開示の一態様は、サーバと通信を行うように構成された携帯端末を備えてもよい。携帯端末は、出力部、制御部及び加速度センサを有してもよい。このような構成によれば、携帯端末を運転席に設置することで運転支援システムが利用可能となるため、設備の導入コストが低減される。
【0010】
本開示の一態様では、制御部は、運転支援情報に含まれる複数の要素を出力部に同時に表示させると共に、複数の要素のうち、停車駅情報を常に出力部に表示させてもよい。このような構成によれば、運転士が停車駅情報を見落とすことを抑制しつつ、運転士に他の運転支援情報を提供することができる。
【0011】
本開示の一態様では、制御部は、鉄道車両の停車時に、複数の要素のうち、速度規制情報を出力部に表示させてもよい。このような構成によれば、停車時に速度規制情報が強制表示されるため、停車後の速度規制の失念の抑制効果を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態における運転支援システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図5】
図5は、徐行アラートのタイミングを説明するグラフである。
【
図8】
図8は、
図1の制御部が実行する処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す運転支援システム1は、鉄道車両の運転士に運転支援情報を提供する。運転支援情報には、駅の発着時刻、着発番線、停止位置目標、速度規制情報、現在時刻等が含まれる。
【0014】
運転支援システム1は、サーバ10と、複数の携帯端末20とを備える。サーバ10及び複数の携帯端末20は、それぞれインターネット等のネットワーク100に接続されている。
【0015】
<サーバ>
サーバ10は、運転支援情報を生成すると共に、複数の携帯端末20と通信を行うように構成されている。
【0016】
サーバ10は、例えばプロセッサと、メモリ等の記憶媒体と、入出力装置とを備える1又は複数の情報処理装置で構成される。サーバ10は、鉄道車両の運行を監視する地上設備である指令所、又は指令所外の施設(つまりクラウドサーバ)に配置される。
【0017】
サーバ10は、複数の携帯端末20に対し、個別に運転支援情報を送信する。運転支援情報は、オペレータ(つまり指令員)の入力又は指令所の自動制御機能によって生成される。また、サーバ10は、複数の携帯端末20それぞれから、運転支援情報の受領通知を受信する。
【0018】
<携帯端末>
携帯端末20は、サーバ10と通信を行うように構成されている。携帯端末20は、1人の運転士に対し1台ずつ割り当てられている。携帯端末20は、プロセッサと、記憶媒体と、入出力装置とを備える携帯型コンピュータ(例えばタブレット型端末)により構成される。
【0019】
携帯端末20は、出力部21と、入力部22と、通信部23と、制御部24と、加速度センサ25とを有する。携帯端末20は、運転士によって鉄道車両の運転席に設置される。つまり、出力部21、入力部22、通信部23、制御部24及び加速度センサ25は、鉄道車両に設置される。
【0020】
<出力部>
出力部21は、画像及び音声を出力するように構成されている。出力部21は、例えば、携帯端末20が有するディスプレイ及びスピーカによって構成される。
【0021】
<入力部>
入力部22は、運転支援情報の受領操作、出力部21に表示される情報の切替、文字入力等を運転士が行うように構成されている。入力部22は、例えば、携帯端末20が有するタッチディスプレイによって構成される。
【0022】
<通信部>
通信部23は、サーバ10と情報の送受信を行うように構成されている。具体的には、通信部23は、サーバ10から運転支援情報を受信すると共に、受領通知をサーバ10に送信する。
【0023】
<制御部>
制御部24は、サーバ10から受信した運転支援情報を、画像又は音声として出力部21に出力させるように構成されている。制御部24の具体的な処理については後述する。
【0024】
<加速度センサ>
加速度センサ25は、携帯端末20に生ずる加速度、つまり携帯端末20が設置された鉄道車両の加速度を検出するように構成されている。
【0025】
<制御部の処理>
制御部24は、例えば、
図2に示す情報表示画面PVにて、運転支援情報を出力部21に出力させる。情報表示画面PVは、ヘッダエリアA1と、通知エリアA2と、メインエリアA3と、時刻表エリアA4と、地図エリアA5と、時計エリアA6とを有する。
【0026】
ヘッダエリアA1は、情報表示画面PVの最上部に配置されている。ヘッダエリアA1には、鉄道車両の基本情報が表示される。基本情報には、車両形式、列車番号、編成両数、区間ごとの最高速度等が含まれる。
【0027】
通知エリアA2は、ヘッダエリアA1の下に配置されている。通知エリアA2には、サーバ10から送信された複数の通知がそれぞれ短冊I11として表示される。短冊I11には、通知の概要が表示される。短冊I11として表示される通知には、速度規制情報(例えば徐行情報)が含まれる。
【0028】
短冊I11には、それぞれ、受領状態を示す状態マークMが付されている。受信直後の短冊I11には、「未受領」の状態マークMが付される。短冊I11に対する受領操作を行うと、状態マークMは「受領済」に変化する。
【0029】
メインエリアA3は、通知エリアA2の下、かつ情報表示画面PVの左右方向の中央部に配置されている。メインエリアA3には、次の停車駅I31、次の停車駅の着時刻I32、停車番線I33、停止位置目標I34、及び着分岐器制限速度I35が表示される。
【0030】
次の停車駅I31、次の停車駅の着時刻I32、停車番線I33、停止位置目標I34及び着分岐器制限速度I35は、停車駅情報I37を構成している。また、メインエリアA3には、先の停車駅I36も表示される。先の停車駅I36は、次の停車駅I31の情報よりも上方に、かつ、次の停車駅I31よりも小さく表示される。
【0031】
時刻表エリアA4は、メインエリアA3の左側に配置されている。時刻表エリアA4には、通過又は発着済みの駅及び到達する予定の駅それぞれの発着時刻I41、及び駅間の運転時分I42が簡易表示される。
【0032】
地図エリアA5は、メインエリアA3の右側に配置されている。地図エリアA5には、鉄道車両が走行している線路I51と、鉄道車両の現在位置I52とが簡易表示される。線路I51には、駅、信号、踏切等の位置がアイコンで表示される。
【0033】
時計エリアA6は、メインエリアA3の下方に配置されている。時計エリアA6には、現在時刻I61、及びボタン群B1が表示されている。ボタン群B1は、運転士がタップすることで画面の切替等を行う。ボタン群B1に表示されるボタンは、鉄道車両の運行状況、表示されている情報等によって切り替わる。
【0034】
図3A及び
図3Bに示すように、鉄道車両が駅の間を走行中は、ボタン群B1には、「停車」ボタンが表示される。例えば駅P11に停車後、運転士が「停車」ボタンをタップすると、停車駅情報I37が、
図3Cに示す表示に切り替わる。
図3Cの停車状態では、情報表示画面PVにおける停車駅情報I37として、停車駅I31、発時刻I32A、時刻カウントダウンI32B及び発車番線I33Aが表示される。
【0035】
また、「停車」ボタンがタップされると、「停車」ボタンに替えて、ボタン群B1に
図3Dに示す「次へ」ボタンが表示される。運転士が「次へ」ボタンをタップすると、停車駅情報I37に、次の停車駅又は通過駅(例えばP12)の情報が表示される。
【0036】
情報表示画面PVの各エリアに表示される情報は、サーバ10から受信した情報に基づき、自動的、又は運転士の操作に基づいて更新される。つまり、列車の在線位置情報の更新又は運転士のボタン操作によって、情報表示画面PVにおいて各種情報がアップデートされる。
【0037】
図3Aに示すように、通知エリアA2に表示された短冊I11を運転士がタップする(つまり入力操作によって選択する)と、
図3Bに示すように、詳細表示エリアA7が展開され、タップした短冊I11の詳細情報が詳細表示エリアA7に表示される。
【0038】
詳細表示エリアA7は、通知エリアA2を下方に拡大したものであり、メインエリアA3の上部、時刻表エリアA4の上部、及び地図エリアA5の上部に対し、上から重なるように表示される。
【0039】
ただし、メインエリアA3のうち、次の停車駅I31、次の停車駅の着時刻I32、停車番線I33、停止位置目標I34、着分岐器制限速度I35、発時刻I32A、時刻カウントダウンI32B、及び発車番線I33Aを含む停車駅情報I37は、詳細表示エリアA7とは重ならない。したがって、情報表示画面PVにおいて、短冊I11の詳細情報と、次の停車駅の情報とが同時に表示される。また、ヘッダエリアA1及び時計エリアA6も詳細表示エリアA7とは重ならない。
【0040】
このように、制御部24は、運転支援情報に含まれる複数の要素を情報表示画面PVとして出力部21に同時に表示させると共に、複数の要素のうち、停車駅情報I37を常に出力部21に表示させる。
【0041】
詳細表示エリアA7には、確認が必要な項目ごとに付された確認ボタンB2と、受領ボタンB3とが表示される。確認ボタンB2を運転士がタップすることで、確認ボタンB2にチェックマークが付される。
【0042】
全ての確認ボタンB2にチェックマークが付されると、受領ボタンB3がタップ可能となる。この状態で受領ボタンB3がタップされると、通信部23によって情報の受領通知がサーバ10に送信される。
【0043】
また、
図4Aに示すように、受領ボタンB3がタップされると、詳細表示エリアA7が消えて通知エリアA2が表示される。つまり、短冊I11の詳細情報の表示が終了し、短冊I11が再び表示される。受領操作を行った短冊I11では、状態マークMが「受領済」となる。
【0044】
確認済の短冊I11がタップされると、
図4Bに示すように、詳細表示エリアA7が展開され、タップした短冊I11の詳細情報が再度詳細表示エリアA7に表示される。つまり、確認済の短冊I11は、削除条件(例えば乗務の終了)まで削除されることなく、タップによって内容を再確認できる。
【0045】
制御部24が出力部21に通知を短冊I11として出力させてから、一定時間受領操作が行われない場合(つまり、状態マークMが「未受領」のまま一定時間経過した場合)、制御部24は、出力部21に対し、運転士への警告出力を行わせる。警告出力は、例えば、警告画像の表示、警告音声の発出などである。
【0046】
さらに、制御部24は、一定時間受領操作が行われない場合、サーバ10に受領操作未完了の通知を行う。サーバ10が受領操作未完了の通知を受けた場合、オペレータ(つまり指令員)が当該列車に無線を交信し、口頭にて通告を行う。
【0047】
制御部24は、上述した情報表示出力処理に加えて、アラート出力処理も実行する。アラート出力処理では、制御部24は、加速度センサ25が取得した鉄道車両の加速度に基づいて鉄道車両の発車を検出すると共に、鉄道車両の発車時に速度規制に関するアラートを出力部21に出力させる。
【0048】
具体的には、制御部24は、鉄道車両が停車領域に存在し、かつ、加速度センサ25が取得する加速度が一定時間継続してゼロである場合を「鉄道車両の停車時」と判定する。また、制御部24は、「鉄道車両の停車時」から加速度が上昇し始めた時点を「鉄道車両の発車時」と判定する。
【0049】
制御部24は、「鉄道車両の発車時」を検出すると、例えば、現在地又は走行予区間に徐行規制があることを運転士へ知らせる徐行アラート(つまり、速度規制に関するアラート)を出力部21に出力させる。徐行アラートとしては、例えば、音声発信、警告表示、又はこれらの組み合わせが用いられる。
【0050】
なお、制御部24は、乗務開始時(例えば携帯端末20を運転台に設置した時)、鉄道車両の停車時に運転士が停車確認操作を行った時など、一定のタイミングで加速度センサ25が検出する加速度をゼロにリセットするゼロ点補正を行う。
【0051】
制御部24は、徐行区間の直前の駅に鉄道車両が停車した際に、第1徐行アラートを出力させる。第1徐行アラートは、徐行区間の存在とその内容とを確認させるアラートである。
【0052】
制御部24は、さらに、
図5に示す徐行区間Rの手前の領域に設けられたアラート出力位置に鉄道車両が到達した際に、第2徐行アラートを出力させる。
図5の横軸は、鉄道車両の走行位置Dであり、縦軸は鉄道車両の走行速度Vである。
図5の例では、駅の停車領域Sと、停車領域Sの前後の領域を含む徐行区間Rとが設定されている。徐行区間Rでは、走行速度が徐行速度VRに制限される。
【0053】
具体的には、制御部24は、鉄道車両が停車領域Sよりも例えば800m手前のアラート出力位置への到達時T1、例えば600m手前のアラート出力位置への到達時T2、及び例えば200m手前のアラート出力位置への到達時T3それぞれにおいて、第2徐行アラートを出力させる。第2徐行アラートは、鉄道車両が徐行区間Rへ接近していることを通知するアラートである。
【0054】
また、制御部24は、鉄道車両の徐行区間Rに存在する駅への停車時T4において、第3徐行アラートを出力させる。第3徐行アラートは、鉄道車両が徐行区間R内の駅に存在することを通知するアラートである。
【0055】
さらに、制御部24は、鉄道車両の徐行区間Rに存在する駅からの発車時T5において、第4徐行アラートを出力させる。第4徐行アラートは、鉄道車両が徐行区間R内の駅に存在することを再通知するアラートである。
【0056】
制御部24は、サーバ10から受信した徐行情報に基づき、
図6Aに示すように、通知エリアA2に徐行情報を示す速度規制短冊I12を表示させる。速度規制短冊I12には、徐行速度I13が表示される。また、メインエリアA3及び地図エリアA5それぞれに、徐行区間の開始地点又は終了地点を表す徐行予告I38,A53を表示させる。徐行予告I38,A53は、例えば黄と黒との縞模様で構成される。
【0057】
図6Aは、鉄道車両が徐行区間の手前の駅P11に到着する際の情報表示画面PVの一例である。この情報表示画面PVでは、現在の駅P11と次の駅P12との間から徐行区間が始まっている。
【0058】
鉄道車両が駅P11に到着し、運転士が停車を確認した後に停車ボタンB4をタップすると、
図6Bに示すように、詳細表示エリアA7が強制表示され、速度規制短冊I12の詳細情報が自動表示される。
【0059】
また、徐行区間内の駅(例えば駅P12)への停車時に停車ボタンB4をタップした際も、同様に速度規制短冊I12の詳細情報が自動表示される。つまり、制御部24は、鉄道車両の停車時に、第1徐行アラート又は第3徐行アラートとして、運転支援情報に含まれる複数の要素のうち、速度規制情報を出力部21に強制表示させる。
【0060】
速度規制短冊I12の詳細情報を表示する詳細表示エリアA7には、通常の短冊I11の場合と同様に、項目ごとに確認ボタンB2が表示される。確認ボタンB2を運転士がタップすることで、確認ボタンB2にチェックマークが付される。
【0061】
全ての確認ボタンB2にチェックマークが付されると、確認ボタンB5がタップ可能となる。発車直前に運転士が確認ボタンB5をタップすると、詳細表示エリアA7が消えて、通知エリアA2が表示される。
【0062】
図7Aに示すように、鉄道車両が、徐行区間Rの直前の駅、徐行アラート区間又は徐行区間に進入すると、通知エリアA2において、速度規制短冊I12が速度規制以外の情報を示す短冊I11よりも目立つようにハイライト表示される。また、メインエリアA3に、徐行区間をアラートする徐行指示I39が表示される。徐行指示I39は、例えば黄と黒との縞模様で構成される。
【0063】
徐行アラート区間は、徐行区間から予め定めた距離以下となる区間であり、上述の
図5の例では、徐行区間から例えば800m以下となる区間である。上述の通り、徐行アラート区間では、徐行区間から一定の距離(つまりアラート出力位置)に到達する都度、第2徐行アラートとして、出力部21はメインエリアA3に徐行区間までの距離を表示すると共に、音声で鉄道車両が徐行アラート区間に存在することを通知する。
【0064】
また、鉄道車両が徐行区間内の駅から発車する際は、第4徐行アラートとして、出力部21は音声で鉄道車両が徐行区間に存在することを通知する。
【0065】
図7Aにおいて、速度規制短冊I12を運転士がタップすると、
図7Bに示すように、詳細表示エリアA7が展開し、速度規制短冊I12の詳細情報が表示される。そのため、運転士が速度規制情報を再確認できる。
【0066】
<その他の機能>
携帯端末20は、携帯端末20をそれぞれ携帯している乗務員(つまり運転士)の定時出場支援機能を有してもよい。
【0067】
定時出場支援機能では、制御部24は、予め登録された行路情報と担当乗務員とを紐づけたテーブルに基づいて、所定時刻に出場アラームを出力させる。出場アラームは、担当乗務員が出場前に所定のボタンをタップするまで、又は一定時間が経過するまで停止しない。また、一定時間出場アラームが停止しなかった場合、当直者(つまりサーバ10)に通知が行われる。サーバ10は、乗務員の操作の有無をリスト化する。
【0068】
携帯端末20は、地震時の避難誘導などの異常時における状況報告機能を有してもよい。状況報告機能では、運転士が入力部22に入力した、停車状況、乗客人数、降車状況等がサーバ10に送信される。
【0069】
携帯端末20は、乗務員の位置把握機能を有してもよい。位置把握機能では、携帯端末20は、携帯端末20の位置と乗務中の列車番号とをサーバ10に送信する。サーバ10では、乗務員の現在位置と状況(乗務の有無及び乗務中の列車)とをリスト化する。
【0070】
[1-2.処理]
以下、
図8のフロー図を参照しつつ、徐行アラート機能が有効な状態で携帯端末20が徐行規制を受信した場合に制御部24が実行する処理の一例について説明する。
【0071】
本処理では、制御部24は、最初に、速度規制短冊I12を出力部21に表示させる(ステップS110)。次に、制御部24は、鉄道車両が徐行区間の直前の駅又はアラート出力位置に存在するか否か判定する(ステップS120)。
【0072】
鉄道車両が徐行区間の直前の駅又はアラート出力位置に存在する場合(S120:YES)、制御部24は、第1徐行アラート又は第2徐行アラートを出力部21に出力させる(ステップS130)。鉄道車両が徐行区間の直前の駅及びアラート出力位置に存在しない場合(S120:NO)、制御部24は、鉄道車両が徐行区間に存在するか否か判定する(ステップS140)。
【0073】
鉄道車両が徐行区間に存在する場合(S140:YES)、制御部24は、鉄道車両が停車した直後か否か判定する(ステップS150)。鉄道車両が停車した直後の場合(S150:YES)、制御部24は第3徐行アラートを出力部21に出力させる(S130)。
【0074】
一方、鉄道車両が停車した直後でない場合(S150:NO)、制御部24は、鉄道車両が発車した直後か否か判定する(ステップS160)。鉄道車両が発車した直後の場合(S160:YES)、制御部24は、第4徐行アラートを出力部21に出力させる(S130)。
【0075】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)鉄道車両の発車時に速度規制に関するアラートが表示されるため、発車時において運転士に速度規制を強制的に認知させることができる。そのため、運転士による停車後の速度規制の失念を抑制できる。
【0076】
(1b)携帯端末20を運転席に設置することで運転支援システム1が利用可能となるため、設備の導入コストが低減される。
【0077】
(1c)制御部24が停車駅情報を常に出力部21に表示させることで、運転士が停車駅情報を見落とすことを抑制しつつ、運転士に他の運転支援情報を提供することができる。
【0078】
(1d)制御部24が鉄道車両の停車時に速度規制情報を出力部21に表示させることで、停車時に速度規制情報が強制表示されるため、停車後の速度規制の失念の抑制効果を促進できる。
【0079】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0080】
(2a)上記実施形態の運転支援システムは、加速度センサに加えて、又は加速度センサに替えて、鉄道車両の位置を検出するように構成されたGPS装置を備えてもよい。制御部は、加速度センサが取得した加速度と、GPS装置が取得した鉄道車両の位置の変化(つまり速度)とに基づいて、鉄道車両の発車を検出してもよいし、GPS装置が取得した鉄道車両の位置の変化のみに基づいて、鉄道車両の発車を検出してもよい。
【0081】
(2b)上記実施形態の運転支援システムにおいて、出力部、制御部及び加速度センサは1つの装置(つまり携帯端末)に集約されなくてもよい。例えば、出力部及び加速度センサは、鉄道車両に固定された装置であってもよい。また、携帯端末に替えて、鉄道車両に固定された情報処理装置が用いられてもよい。
【0082】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0083】
1…運転支援システム、10…サーバ、20…携帯端末、21…出力部、
22…入力部、23…通信部、24…制御部、25…加速度センサ、
100…ネットワーク、A1…ヘッダエリア、A2…通知エリア、
A3…メインエリア、A4…時刻表エリア、A5…地図エリア、A6…時計エリア、
A7…詳細表示エリア、B1…ボタン群、B2…確認ボタン、B3…受領ボタン、
B4…停車ボタン、B5…確認ボタン、I11…短冊、I12…速度規制短冊、
I13…徐行速度、I31…停車駅、I32…着時刻、I33…停車番線、
I34…停止位置目標、I35…着分岐器制限速度、I36…停車駅、
I37…停車駅情報、I38…徐行予告、I39…徐行指示、I41…発着時刻、
I42…運転時分、I51…線路、I52…現在位置、I61…現在時刻。