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  • 特開-リーマ付きドリルねじ 図1
  • 特開-リーマ付きドリルねじ 図2
  • 特開-リーマ付きドリルねじ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153442
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】リーマ付きドリルねじ
(51)【国際特許分類】
   F16B 25/10 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
F16B25/10 A
F16B25/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067344
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000181963
【氏名又は名称】若井ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土井 康平
(57)【要約】
【課題】ウッドデッキの構築において、アルミのような軟質の材料で形成された根太に、木製のデッキ材を支障なくねじ止め固定できるリーマ付きドリルねじを提供する。
【解決手段】軸部3の一方端部に頭部4と他方端部にドリル部5を設け、この軸部3外周面に雄ねじ2を形成し、前記ドリル部5の外面で雄ねじ部2側の位置に、前記軸部3の軸線に沿う方向の幅を有し、前記軸線に直行する外方向に突出するリーマ部6を設けたリーマ付きドリルねじであり、前記リーマ部6の突出方向の先端に、このリーマ部6の一面側に向けて折れ曲がる屈曲部8が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の一方端部に頭部と他方端部にドリル部を設け、この軸部の外周面に雄ねじ部を形成し、前記ドリル部の外面で雄ねじ部側の位置に、前記軸部の軸線に沿う方向の幅を有し、前記軸線に直行する外方向に突出するリーマ部を設けたリーマ付きドリルねじにおいて、前記リーマ部の突出方向の先端に、このリーマ部の一面側に向けて折れ曲がる屈曲部を設けたことを特徴とするリーマ付きドリルねじ。
【請求項2】
上記リーマ部と屈曲部の、ドリルねじの螺進方向の前方に向く前縁が面一面になっていることを特徴とする請求項1に記載のリーマ付きドリルねじ。
【請求項3】
上記リーマ部に対して屈曲部が、ドリルねじのねじ込み回転方向の前方に向けて突出するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2のリーマ付きドリルねじ。
【請求項4】
軸部の一方端部に頭部と他方端部にドリル部を設け、この軸部の外周面に雄ねじ部を形成し、前記ドリル部の外面で雄ねじ部側の位置に、前記軸部の軸線に沿う方向の幅を有し、前記軸線に直行する外方向に突出するリーマ部を設けたリーマ付きドリルねじにおいて、前記ドリル部は、軸部に連なる基部が雄ねじ部の外径よりも小径内に収まり、前記基部から先鋭の先端に向けて先細のテーパ状に形成され、前記リーマ部が、前記ドリル部の基部で軸線を挟む両側の位置に設けられ、このリーマ部の突出方向の先端に、該リーマ部の一面側に向けて折れ曲がる屈曲部を設けたことを特徴とするリーマ付きドリルねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重ね合わせた木材と金属板製の部材を締結するために使用されるリーマ付きドリルねじに関し、更に詳しくは、アルミのような軟質材料を用いた根太に木製のデッキ材を固定するのに適したドリルねじに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ウッドデッキの構築において、リーマ部のない一般的なドリルねじを用いて木製のデッキ材を金属板製の根太に固定する場合、ドリルねじをデッキ材から根太に向けて直接ねじ込むと、軸部の雄ねじ部が、デッキ材と根太の両方に螺合することにより固定状態が得られることになるが、木製であるデッキ材と金属製の根太では硬度が異なり、ドリル部の削孔時に発生する抵抗が両者で相違するので、ドリル部が根太に達した時点で抵抗が増大し、ねじ込みを続けると、デッキ材に対してドリルねじは、雄ねじ部が同じ位置で複数回回転することになる。
【0003】
これにより、デッキ材はドリルねじの軸部に沿って頭部側へ浮き上がった後、元の状態に戻ろうとするので、このようなデッキ材の動きにより生じた上下方向の力がドリルねじに作用し、これが根太を穿孔しているタイミングのドリル部に加わり、その刃部に対して損傷を生じさせことになり、根太への穿孔が行えない事態が生じる場合がある。
【0004】
また、デッキ材と根太の締結完了時に、上記のように、根太の穿孔時にデッキ材の上下動が生じるので、デッキ材にねじ山部が完全にねじ込まれた状態で、ねじ山部が根太へ完全にねじ込めていない状態が発生し、その結果、デッキ材の固定に浮き上がりが生じることになる。
【0005】
上記のような、ドリル部の刃部損傷の発生やデッキ材の浮き上がりを防ぐには、少なくともデッキ材にねじ山部の外径よりも少し大径の下孔を予め穿設するようにすればよいが、下孔の穿設には別途穿孔用の工具が必要になり、下孔を穿孔するための作業に余分な手間と時間がかかることになる。
【0006】
このような、リーマ部のないドリルねじの使用における不都合を解決するため、ドリル部の両側に一対のリーマ部を設けたリーマ付きドリルねじが提案されている。
【0007】
このリーマ付きドリルねじは、デッキ材へのねじ込み時に、ドリル部で削られた穿孔をリーマ部が拡径し、この拡径孔が下孔に該当するので、軸部に設け出た雄ねじ部がデッキ材と螺合することがなく、これにより、デッキ材を根太に留め付ける際に、デッキ材に予め下穴を穿孔することなく、デッキ材を根太に締結することができ、しかも、雄ねじ部がデッキ材と螺合することがないので、ドリル部が根太を穿孔するとき、デッキ材の持ち上げと引き戻しの動作が発生しないことになり、該ドリル部に軸方向の衝撃を加えてその刃部を損傷させるようなことがなく、ドリル部による根太への穿孔が支障なく行える共に、デッキ材の浮き上がり固定の発生を防げることになる。
【0008】
このような利点を有する従来のリーマ付きドリルねじは、特許文献1と2に示されているように、外周面に雄ねじ部が形成された軸部の一方端部に頭部と他方端部にドリル部を設け、このドリル部の外面で雄ねじ部の先端寄りの位置に、軸部の軸線を挟む両側から外方に向けて突出する一対のリーマ部を突設した構造を有している。
【0009】
このリーマ部は、軸部の軸線方向に沿う幅と、軸部の軸線に対して直角方向の突出長さを有する板状に形成され、ねじの製造工程時に、ねじ素材となる線材からドリル部の外側に圧造されることになる。
【0010】
上記のようなリーマ付きドリルねじのねじ込みを更に詳しく述べると、木製デッキ材の表面からねじ込むことにより、先ず、ドリル部によって雄ねじ部の外径より小径の穿孔を削り、続いてこの穿孔をリーマ部で拡径することで、軸部の雄ねじ部がデッキ材に螺合することなく拡径孔内を進み、次に、ドリル部が根太に達してこの根太をドリル部の外径に見合う穿孔を穿ちながら進むと、リーマ部の前端縁が根太に当接する。
【0011】
この当接によって、リーマ部に対して前進を阻止しようとする抵抗と、この状態でねじ込み回転が加わることで、該リーマ部と根太の間にリーマ部を停止させようとする摩擦抵抗が生じ、この抵抗値がリーマ部の破壊強度を上回ることで、リーマ部がドリル部から千切れるように破壊し、以後、ドリル部によって形成された根太の穿孔がリーマ部で拡径されることがないので、この穿孔に軸部の雄ねじ部がねじ込まれ、これによって、デッキ材が頭部と根太で挟まれて締め付け固定化されることになる。
【0012】
上記したように、リーマ付きドリルねじにおいて、ドリル部の外面に設けた両側のリーマ部は、木製のデッキ材を貫通するとき、ドリル部によって雄ねじ部の外径より小径に削られた穿孔を雄ねじ部の外径より大径に拡径し、ねじ込み途中でドリル部が根太を穿孔するとき、前記リーマ部は前端縁が根太の表面に当接することで破壊し、ドリル部から千切れることで、根太に形成される穿孔の棄損を防ぎ、該穿孔への雄ねじ部のねじ込みが行えることで、根太に対するデッキ材のねじ留め固定が得られることになる。
【0013】
このように、ドリル部の外面に設けた両リーマ部の強度は、木製のデッキ材を貫通するとき、ドリル部によって削られた穿孔を雄ねじ部の外径より大径に削ることができる拡径強度を保ち、根太への当接時には確実にドリル部から分離する破壊強度の範囲に設定する必要があり、根太が鋼材製のような硬質の場合、リーマ部に十分な強度をもたせても、根太を形成する鋼材の硬度が高いので、根太への当接時に発生する摩擦抵抗で根太に棄損を生じさせることなく破壊させることができ、これにより、デッキ材における前記穿孔の拡径強度が十分に得られるので、デッキ材の穿孔に対する拡径は支障なく行えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特公平1-48408号公報
【特許文献2】特公昭43-25402号公報
【特許文献3】特開2001-12428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、ウッドデッキを構築する場合において、根太にアルミのような軟質金属製のものを用いることがあり、このような場合に、特許文献1や2で示されている従来のリーマ付きドリルねじを用いると、リーマ部の破壊強度が鋼材に対応して高く設定されているので、材質的に鋼製よりも柔らかい軟質金属製の根太に当接しても破壊せず、根太を棄損させることで雄ねじ部を螺合させる穿孔の形成ができなくなってしまう。
【0016】
このため、根太が軟質金属製の場合に用いるリーマ付きドリルねじには、リーマ部の破壊強度が軟質金属に適応し、デッキ材の穿孔を削る拡径強度を確保しながら、軟質金属製の根太に当接した時にドリル部から分離する破壊強度に設定しなければならず、このように、リーマ部の破壊強度は、従来のドリルねじにおけるリーマ部よりも低く設定する必要があり、このため、破壊強度と拡径強度の設定幅が狭まることになる。
【0017】
しかしながら、リーマ部の強度において、破壊強度を単純に低くなるように形成すると、リーマ部の全体的な強度低下を招くことになり、結果としてデッキ材の穿孔を拡径するための強度が不足し、デッキ材の木質が硬いような場合には、穿孔を拡径する工程でリーマ部が破損するという事態が生じる危惧がある。
【0018】
リーマ部の破壊強度を低くする具体的な方法として、特許文献1や2に示されているような、単板状のリーマ部では、その板厚を薄くしたり軸部の軸方向に沿う幅を狭くする方法が考えられる。
【0019】
しかし、これらの破壊強度を低くする単純な方法は、ドリル部に対して径方向の外方に位置する先端の強度が必要以上に低下することになり、リーマ部による穿孔の拡径時において、リーマ部の先端部に、木材を削る際の摩擦による負荷が集中的に作用し、これが原因で先端縁が歪んだり折損することになり、穿孔の拡径途中で一方のリーマ部が破壊すると、それ以後、残ったリーマ部も大きな抵抗が掛かって破壊することになり、結果として、穿孔を拡径できない事態が発生することになる。
【0020】
また、単板状のリーマ部に対してその上限強度を従来よりも低下させる手段として、特許文献3に示されているように、リーマ部の根元部分の位置に薄肉厚部分を設け、リーマ部が根太に当接したときに、強度的に弱い薄肉厚部分から破断させようにしたものが提案されているが、このような構造にすると、デッキ材の穿孔を拡径するとき薄肉厚部分に折り曲げ方向の力が集中するため、これに耐えるように薄肉厚部分に破壊強度と相応の拡径強度を持たせなければならないが、現実としてリーマ部の根元に位置する薄肉厚部分での破壊強度の設定には構造的に困難性があり、しかも、根元部分に薄肉厚部分を位置させるため、リーマ部の構造とこれを成型する金型の構造を単に複雑化させるだけとなり、破壊強度の設定は結果的に特許文献1と2のような単板のリーマ部の場合と実質的に大差はなく、実用性に乏しいものであるという問題がある。
【0021】
そこでこの発明は、ドリル部に設けるリーマ部の拡径強度を確保しながら破壊強度を低下させることができ、これにより、軟質材料の根太を棄損させることなくリーマ部を破壊させることが可能となり、しかも、リーマ部の外方に位置する先端側の強度を向上させることで、先端部の歪みや折れを防いでデッキ材に形成される穿孔の拡径が確実に行えるリーマ付きドリルねじを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、軸部の一方端部に頭部と他方端部にドリル部を設け、この軸部の外周面に雄ねじ部を形成し、前記ドリル部の外面で雄ねじ部側の位置に、前記軸部の軸線に沿う方向の幅を有し、前記軸線に直行する外方向に突出するリーマ部を設けたリーマ付きドリルねじにおいて、前記リーマ部の突出方向の先端に、このリーマ部の一面側に向けて折れ曲がる屈曲部を設けた構成としたものである。
【0023】
請求項2の発明は、上記リーマ部と屈曲部の、ドリルねじのねじ込み方向の前方に向く前縁が面一面になっているようにしたものである。
【0024】
請求項3の発明は、上記リーマ部に対して屈曲部が、ドリルねじのねじ込み回転方向の前方に向けて突出するように設けられているようにしたものである。
【0025】
請求項4の発明は、軸部の一方端部に頭部と他方端部にドリル部を設け、この軸部の外周面に雄ねじ部を形成し、前記ドリル部の外面で雄ねじ部側の位置に、前記軸部の軸線に沿う方向の幅を有し、前記軸線に直行する外方向に突出するリーマ部を設けたリーマ付きドリルねじにおいて、前記ドリル部は、軸部に連なる基部が雄ねじ部の外径よりも小径内に収まり、前記基部から先鋭の先端に向けて先細のテーパ状に形成され、前記リーマ部が、前記ドリル部の基部で軸線を挟む両側の位置に設けられ、このリーマ部の突出方向の先端に、該リーマ部の一面側に向けて折れ曲がる屈曲部を設けた構成としたものである。
【0026】
ここで、ドリル部は、軸部の他方端部に同軸心状の配置で設けられ、このドリル部の軸部に連なる基部が雄ねじ部の外径よりも小径内に収まり、該ドリル部は、前記基部から先鋭の先端に向けて先細のテーパ状に形成され、上記リーマ部が、前記ドリル部の基部で軸線を挟む両側の位置に設けられている。
【発明の効果】
【0027】
この発明のリーマ付きドリルねじは、ドリル部の両側に設けたリーマ部の突出方向の先端に、このリーマ部の一面側に向けて折れ曲がる屈曲部を設けたので、リーマ部と屈曲部の前縁によって、根太への当接面積が拡大し、根太への当接により得られる摩擦抵抗を増大させて破壊させることができるので、その分リーマ部の破壊強度を、デッキ材の穿孔を拡径できる強度を維持した状態で低くでき、これにより、軟質材料の根太を棄損させることなくリーマ部を破壊させることができ、軟質材料を用いた根太へのデッキ材の固定が行えることになる。
【0028】
また、リーマ部の先端に屈曲部を折り曲げて設けることにより、折り曲げ部分に加工硬化が生じ、これにより、リーマ部の先端強度が向上し、デッキ材の穿孔を拡径するときの破損発生が防げると共に、拡径時に屈曲部が切削するので拡径が効率的に行え、締結作業の効率化が図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明に係るリーマ付きドリルねじの正面図
図2】(a)はドリル部とリーマ部の構造を示す要部の拡大正面図、(b)は同上の拡大した横断平面図
図3】この発明に係るリーマ付きドリルねじの使用途中であり、デッキ材にねじ込んだドリルねじのドリル部が根太材を穿孔し、リーマ部が根太に当接して破壊が発生する直前の状態を示す縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0031】
図1のように、この発明のリーマ付きドリルねじ1は、木質のデッキ材aをアルミのような軟質金属製の根太bに固定するために用いるためのものであり、断面が円形で所定の長さを有し、外周面に雄ねじ部2が形成された軸部3と、この軸部3の一方端部に設けた頭部4と、軸部3の他方端部に設けたドリル部5と、前記ドリル部5の外面で雄ねじ部2側の位置に設けられ、前記軸部3の軸線に対して直行する外方向に突出する一対のリーマ部6とを備えた構造を有している。
【0032】
上記ドリル部5は、所定長さの軸状となって軸部3の先端側端部から軸方向へ延長状に突出し、全体形状が、軸部3側の端部に対して先端側が少し小径となるテーパ状となり、その先端面が先鋭端5aとなり、軸線を挟む両側の外面に、先鋭端5aから軸部3の端部に達する凹溝7が設けられている。
【0033】
このドリル部5は、凹溝7の開口縁でねじ込み回転方向の後位に位置する開口縁が切削刃7aとなり、リーマ付きドリルねじ1を、木質のデッキ材aから根太bにねじ込んだとき、デッキ材aと根太bに雄ねじ部2の外径よりも小径で谷径と同程度の穿孔を切削するように軸部2側の外径が設定され、該ドリル部5は、軸方向に沿う全体形状を先端側が小径となるテーパ状とすることにより、穿孔時の前進に対して生じる抵抗を少なくして掘進機能の向上を図っている。
【0034】
上記両リーマ部6は、ドリル部5の外面における両側で軸部3の端部に近接し、かつ、両凹溝7間の位置に設けられ、図2(a)と(b)に示すように、軸部3の軸方向に沿う幅Wと、この軸方向に対して直角に外方へ突出する突出長さLを有する板状に形成され、前記突出長さLとはドリル部5の外面に位置する根元から突出方向の先端までの長さであり、図3のように、ドリル部5によって削られたデッキ材aの穿孔を、雄ねじ部2の外径よりも大径で頭部4の外径よりも小径の拡径孔に切削することができる寸法に設定されている。
【0035】
上記両リーマ部6には、径方向の外方に突出する先端に、該リーマ部6の一面側に向けて折れ曲がる屈曲板8が設けられ、リーマ部6と屈曲板8とは例えば等しい板厚を有し、軸部3の軸方向に沿う幅寸法が等しくなっていると共に、屈曲板8の折れ曲がり方向は、リーマ付きドリルねじ1のねじ込み回転方向の前方に向くよう設定されている。
【0036】
上記両リーマ部6は、軸部3の軸方向に沿う幅寸法Wを、特許文献1や2で示した従来のリーマ付きドリルねじにおけるリーマ部よりも狭く設定し、その根元部分のドリル部5との接合部分の接続面積を少なくすることで、当該部分の破壊強度を低く設定し、これにより、軟質金属の根太aにリーマ部6が当接したときに生じる摩擦抵抗で、根太aに破損を生じさせる前に、自身に根元部分からの破壊が確実に生じるようにしている。
【0037】
上記屈曲板8は、リーマ部6の突出方向の先端に略直角の角度で折り曲げ形成されるとことにより、リーマ部6と屈曲板8の折れ曲がりコーナ部分8aに加工硬化が生じ、これにより、リーマ部6の突出方向の先端側における強度が向上し、リーマ部6の幅寸法Wを狭く設定した場合の先端部の強度確保が行え、ドリル部5による穿孔を拡径孔cにするとき、デッキ材aの木質が硬い場合でも、リーマ部6の先端に損傷が生じるのを防ぐ拡径強度を確保することができる。このような、コーナ部分8aの加工硬化を得るため、屈曲部8の折れ曲がり方向を、図示例と逆にねじ込み回転方向に対して後方に向くようにしてもよい。
【0038】
また、リーマ部6と屈曲板8は、リーマ付きドリルねじ1のねじ込み前進方向の前方に向く前縁dが面一面になっているので、リーマ部6が根太6に当接したときの根太6に対する接触面積を屈曲板8によって増加させることができる。
【0039】
即ち、リーマ部6が根太aに当接したとき、根太aの損傷発生を防いで自身が破壊するようにリーマ部6を形成するとき、リーマ部6をドリル部5への付け根部分から破壊させるために外力を与える要素として、リーマ部6が根太aに当接したときの接触によって発生する摩擦抵抗を増大させることが重要になる。
【0040】
また、デッキ材aにねじ込んだリーマ付きドリル1のリーマ部6の前縁が根太bに当接したとき、リーマ部6は、ねじ込み方向へ回転しながら前方へ進もうとしているが、根太bへの当接により前進にブレーキがかかり、それによって生じる摩擦抵抗がドリル部6からリーマ部6を千切れるようにする破壊力として作用するので、リーマ部6の先端に屈曲板8を設けてリーマ部6の根太bに対する接触面積を多くすれば、それによって発生する摩擦力が増加してリーマ部6を破壊させる力が増大し、これにより、リーマ部6を形成するとき、軸部3の軸方向に沿う幅寸法を狭くしたり板厚を薄くすることによって、破壊強度を低く設定できることになり、それによって、軟質金属製の根太bに損傷を生じさせる前にリーマ部6をドリル部5から破壊させることができる。
【0041】
ちなみに、図2を参照して、リーマ部6についての寸法的な好ましい一例を示すと、雄ねじ部2の外径が5mmのドリルねじにおいて、リーマ部6の軸部3の軸方向に沿う幅寸法wは、従来のドリルねじでは2.4mm程度であったのに対し、この発明では1.7mmに設定し、また、上記軸方向に対して直角方向に突出すドリル部5から先端までの突出方向の長さLは、従来のドリルねじが0.5~1.0mm程度であったのに対し、この発明では1.5mmに設定され、厚みについては、この発明は0.5mmになっていると共に、屈曲板8の折れ曲がり方向の寸法lは0.5mm程度である。
【0042】
なお、リーマ部6の突出方向の先端に設けた屈曲板8は、その自由先端をねじ込み回転方向の前方に向けることにより、この先端がデッキ材aへのねじ込み時における削孔効果を発揮し、ドリル部5による削孔の拡径が効率よく行え、更に効率化を図るため、先端部を薄くして先鋭の刃先のようにすることもできる。
【0043】
この発明のリーマ付きドリルねじ1は上記のような構成であり、軟質金属製の根太b上に重ねたデッキ材aを該根太bに固定するには、両者の重なり部分にリーマ付きドリルねじ1を臨ませ、デッキ材a上からねじ込むと、先端のドリル部5がデッキ材aに穿孔を掘進し、続いてリーマ部6とその突出方向の先端に設けた屈曲板8が、この削孔の内周を効率よく削って軸部3に形成した雄ねじ部2の外径よりも大径の拡径孔cに削り、デッキ材aの厚みを貫通したドリル部5は根太bに達してこの根太bにその外径に見合う穿孔を形成する。
【0044】
図3に示すように、ドリル部5が根太bを穿孔しながら前進すると、このドリル部5の外面に突設したリーマ部6の前端縁dが根太bの表面で穿孔の周囲に当接し、この当接により生じる摩擦抵抗によってリーマ部6にブレーキがかかり、リーマ部6にはねじ込み方向への前進力とねじ込み回転とが加わっているので、発生する摩擦抵抗がリーマ部6の破壊強度を上回り、リーマ部6は根太bを棄損させることなく自身が根元部分から破壊してドリル部5から千切れる。
【0045】
上記のように、リーマ部6が千切れたドリル部5は、根太bに形成した穿孔を雄ねじ部2の外径より小径で谷径に見合う径に形成した状態で根太bを貫通し、続いてこの穿孔に雄ねじ部2が螺合して進み、頭部4で押さえ込んだデッキ材aを根太bに締め付け固定することになる。
【0046】
このように、ドリル部5の両側に突設したリーマ部6の突出方向の先端に屈曲板8を設けることにより、単板のリーマ部に比べて穿孔を拡径孔cに削る切削機能が向上し、また、幅寸法wを従来よりも狭く設定することで、リーマ部6の根元部分とドリル部5との接合強度を、拡径孔cの切削に耐える強度の確保が行える範囲内で低減でき、軟質材の根太bに当接することで確実に破壊させることができ、しかも、突出方向先端の強度を向上させることで、デッキ材aの木質が硬い場合であっても穿孔の拡径時に先端が破損するのを防ぐことができる。
【0047】
また、リーマ部6の突出方向の先端に設けた屈曲板8は、リーマ部6の前縁d側における根太bへの接触面積を増大させ、発生する摩擦抵抗を大きくしてリーマ部6を破壊させやすくするものであるが、単にリーマ部6の突出方向の先端延長部分を曲げるだけであるので、構造的に簡単で製ねじに用いる金型の構造を簡略化でき、製造コストの上昇を抑えることができるという利点がある。
【符号の説明】
【0048】
1 リーマ付きドリルねじ
2 雄ねじ部
3 軸部
4 頭部
5 ドリル部
5a 先鋭端
6 リーマ部
7 凹溝
7a 切削刃
8 屈曲板
8a コーナ部分
図1
図2
図3