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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153444
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】巻回装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 18/10 20060101AFI20241022BHJP
   B65H 16/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B65H18/10
B65H16/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067346
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】390002015
【氏名又は名称】ヒラノ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 健二
【テーマコード(参考)】
3F052
3F055
【Fターム(参考)】
3F052BA16
3F052CA01
3F055CA19
3F055CA20
3F055DA03
(57)【要約】
【課題】左右一対のチャック部材で巻芯をチャッキングするときに、チャッキング圧力を直接かつ正確に測定できる巻回装置を提供する。
【解決手段】ウエブWを巻回するための円管状の巻芯1を、左右両側からチャッキングする左右一対の左チャック部材20と右チャック部材22を有し、左チャック部材20の左テーパーコーン46と右チャック部材22の右テーパーコーン86の間に巻芯1がチャッキングされ、左テーパーコーン46が左回転部34を押圧するチャッキング圧力を測定する圧力計52が、左回転部34と左テーパーコーン46との間に設けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを巻回するための円管状の巻芯を、左右両側からチャッキングする左右一対の左チャック部材と右チャック部材を有する巻回装置において、
左取り付け部に取り付けられた左側の左チャック部材は、
前記左取り付け部に対し左右方向、かつ水平に移動自在な左筒部と、
前記左筒部へ回転自在に収納された左回転部と、
前記左回転部の右先端部に設けられた円錐台形の左テーパーコーンと、
を有し、
右取り付け部に取り付けられた右側の右チャック部材は、
前記右取り付け部に対し左右方向に、かつ水平に移動自在な右筒部と、
前記右筒部へ回転自在に収納された右回転部と、
前記右回転部の左先端部に設けられた円錐台形の右テーパーコーンと、
を有し、
前記左テーパーコーンと前記右テーパーコーンの間に前記巻芯がチャッキングされ、
前記左テーパーコーンが前記左回転部を押圧するチャッキング圧力を測定する圧力計が、前記左回転部と前記左テーパーコーンとの間に設けられている、
ことを特徴とする巻回装置。
【請求項2】
前記左回転部の右端部から円柱状の左突出部が突出し、
前記左突出部に押圧部が嵌め込まれ、
前記押圧部に対し前記左テーパーコーンが左右方向に移動自在に取り付けられ、
前記押圧部と前記左テーパーコーンの間に前記圧力計であるロードセルが設けられている、
請求項1に記載の巻回装置。
【請求項3】
前記押圧部の上部に、傾斜角測定装置が設けられている、
請求項2に記載の巻回装置。
【請求項4】
前記右回転部には、当該右回転部を回転させるモータが接続されている、
請求項1に記載の巻回装置。
【請求項5】
前記左取り付け部に左エアーシリンダの左シリンダ本体が設けられ、
前記左シリンダ本体から左側に突出し、左右方向に伸縮する左ピストンロッドに前記左筒部が取り付けられ、
前記左エアーシリンダによって、前記左筒部を右方向に移動させて前記左テーパーコーンによって前記巻芯の左端部をチャッキングする、
請求項1に記載の巻回装置。
【請求項6】
前記右筒部に右エアーシリンダの右シリンダ本体が設けられ、
前記右シリンダ本体から左側に突出し、左右方向に伸縮する右ピストンロッドを有し、
前記右取り付け部にジャッキが設けられ、
前記右ピストンロッドが前記ジャッキに取り付けられ、
前記ジャッキによって前記右ピストンロッドと前記右シリンダ本体と前記右筒部を一体に左右方向にチャッキング位置まで移動させ、
前記右ピストンロッドが前記ジャッキに固定された状態でエアーの圧力で前記右シリンダ本体を移動させることによって、前記チャッキング位置から前記右筒部を左方向に移動させて、前記右テーパーコーンによって前記巻芯の右端部をチャッキングする、
請求項1に記載の巻回装置。
【請求項7】
前記巻回装置は、空の前記巻芯によって前記ウエブを巻き取る、
請求項1に記載の巻回装置。
【請求項8】
前記巻回装置は、前記ウエブが巻かれた前記巻芯から前記ウエブを巻き出す、
請求項1に記載の巻回装置。
【請求項9】
ウエブを巻回するための円管状の巻芯を左右両側からチャッキングする左右一対の左チャック部材と右チャック部材を有する巻回装置において、
左取り付け部に取り付けられた左側の左チャック部材は、
前記左取り付け部に対し左右方向に移動自在な左筒部と、
前記左筒部へ回転自在に収納された左回転部と、
前記左回転部の右先端部に設けられた円錐台形の左テーパーコーンと、
を有し、
右取り付け部に取り付けられた右側の右チャック部材は、
前記右取り付け部に対し左右方向に移動自在な右筒部と、
前記右筒部へ回転自在に収納された右回転部と、
前記右回転部の右先端部に設けられた円錐台形の右テーパーコーンと、
を有し、
前記右筒部に右エアーシリンダの右シリンダ本体が設けられ、
前記右シリンダ本体から左側に突出し、左右方向に伸縮する右ピストンロッドを有し、
前記右取り付け部にジャッキが設けられ、
前記右ピストンロッドが前記ジャッキに取り付けられ、
前記ジャッキによって前記右ピストンロッドと前記右シリンダ本体と前記右筒部を一体に左右方向にチャッキング位置まで移動させ、
前記右エアーシリンダによって、前記チャッキング位置から前記右筒部を左方向に移動させて前記右テーパーコーンによって前記巻芯の右端部をチャッキングする、
ことを特徴とする巻回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブを巻き取ったり巻き出したりする巻回装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエブに熱処理などを施す場合には、ウエブを巻き付けた巻芯からウエブを巻き出し、熱処理などを行っている。そしてこの熱処理などが終了したウエブは、巻き取り装置によって巻芯に巻き取られている。巻き出し装置や巻き取り装置などの巻回装置において、ウエブを巻回する円管状の巻芯は、左右一対のチャック部材によってチャッキングされ、この左右一対のチャック部材をモータによって回転させ、ウエブを巻き出し、又は、巻き取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-130528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような巻き取り装置や巻き出し装置などの巻回装置において、左右一対のチャック部材によって巻芯をどの程度のチャッキング圧力で挟んでいるかは、チャッキングさせるエアーシリンダの圧力で代替していた。しかし、この圧力であるとメカロスなどがあり、テーパーコーンに直接かかるチャッキング圧力とは異なり、また、チャッキングするときに左右のチャッキング部材が左右方向に揺動すると、チャッキング圧力が正確に測定できないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、左右一対のチャック部材で巻芯をチャッキングするときに、チャッキング圧力を直接かつ正確に測定できる巻回装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウエブを巻回するための円管状の巻芯を、左右両側からチャッキングする左右一対の左チャック部材と右チャック部材を有する巻回装置において、左取り付け部に取り付けられた左側の左チャック部材は、前記左取り付け部に対し左右方向、かつ水平に移動自在な左筒部と、前記左筒部へ回転自在に収納された左回転部と、前記左回転部の右先端部に設けられた円錐台形の左テーパーコーンと、を有し、右取り付け部に取り付けられた右側の右チャック部材は、前記右取り付け部に対し左右方向に、かつ水平に移動自在な右筒部と、前記右筒部へ回転自在に収納された右回転部と、前記右回転部の左先端部に設けられた円錐台形の右テーパーコーンと、を有し、前記左テーパーコーンと前記右テーパーコーンの間に前記巻芯がチャッキングされ、前記左テーパーコーンが前記左回転部を押圧するチャッキング圧力を測定する圧力計が、前記左回転部と前記左テーパーコーンとの間に設けられている、ことを特徴とする巻回装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記実施形態によれば、左回転部と左テーパーコーンとの間に設けられた圧力計によって、巻芯をチャッキングするチャッキング圧力を直接かつ正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を示す巻き取り装置の一部切り欠き背面図である。
図2】巻芯にウエブを巻回した状態で、右側から左フレームと基台を見た状態の縦断面図である。
図3】左筒部、左回転部、押圧部、左テーパーコーン、巻芯の拡大縦断面図である。
図4】左筒部、押圧部、左テーパーコーン、圧力計を右側から見た右縦断面図である。
図5】作業用の左テーパーコーンを取り付けた状態の左筒部、左回転部の拡大正面図である。
図6】変更例1の巻き取り装置の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の巻回装置について説明する。なお、本実施形態では巻回装置として巻き取り装置10を用いて図1図5を参照して説明する。本実施形態の巻き取り装置10は、長尺状のウエブWを円管状の巻芯1に巻き取るものである。ウエブWとしては、例えばフィルム、金属箔、紙、布地などである。
【0010】
(1)巻き取り装置10の全体の構造
巻き取り装置10の全体の構造について図1図2を参照して説明する。なお、本明細書においてウエブWは後から前に前後方向に搬送されるものであり、左右方向は後から前を見た場合における方向である。
【0011】
水平な床面に載置された基台12には、左右一対の厚みのある金属板よりなる左フレーム14と右フレーム16が鉛直方向に、かつ、相対向するように立設されている。この左フレーム14と右フレーム16の上端部の間には、金属板よりなる架設部材18が左右方向に、かつ、水平に架設されている。左フレーム14には、左チャック部材20が設けられ、右フレーム16には、右チャック部材22が設けられている。
【0012】
(2)左チャック部材20
次に、左フレーム(左取り付け部材)14に設けられている左チャック部材20について図1図4を参照して説明する。
【0013】
左フレーム14の上下方向のほぼ中央部には円形の左支持孔24が開口し、この左支持孔24の内周には、筒状の左支持部26が、左右方向で、かつ、水平に貫通している。筒状の左支持部26の外周部には、左フランジ部27が突出し、この左フランジ部27が、左支持孔24の縁部にある左フレーム14の左面に固定されている。左支持部26の内周の下部には左突部28が内周に向かって突出している。
【0014】
筒状の左支持部26の内周には、筒状の左筒部30がさらに収納されている。左筒部30も、左右方向で、かつ水平に収納され、左支持部26の内部を左右方向に移動自在となっている。左筒部30の下周面には、左右方向に左溝32が刻設され、この左溝32に、上記した左突部28が係合している。これによって、固定された左突部28に対し左溝32をスライドさせることにより、左筒部30は、回転しないで左右方向に移動できる。
【0015】
左筒部30の内周には、円柱状の左回転部34が、収納されている。左筒部30の左端部の内周と左回転部34の左端部の外周との間にはベアリング36が設けられ、左筒部30の右端部の内周と左回転部34の右端部の外周との間にはベアリング38が設けられている。これにより、左回転部34は、左筒部30に対し回転自在であり、かつ、左右方向の移動が阻止されている。
【0016】
左回転部34の右端部から左回転部34よりも直径が小さい円柱型の左突出部40が突出している。この左突出部40には、円柱型の押圧部42が取り付けられる。すなわち、押圧部42の左面には、開口形状が円形の凹部44が設けられ、この凹部44に左突出部40が嵌め込まれ固定される。押圧部42の右側には所定距離を離して円錐台型の左テーパーコーン46が設けられている。左テーパーコーン46には、4個の摺動孔48が軸方向に貫通している。この4個の摺動孔48には、摺動孔48の内径よりも若干小さい外径を有するボルト50が嵌め込まれ、このボルト50の右端部のボルト頭は、左テーパーコーン46の右面から突出し、このボルト50の左端部の雄ネジ部は、押圧部42に螺合されている。これによって、押圧部42に対し左テーパーコーン46は所定距離を介し、かつボルト50が摺動孔48の内径よりボルト50の外径が小さいため、左テーパーコーン46は左右方向に移動自在となっている。
【0017】
押圧部42の右面であって、左テーパーコーン46との間には、円盤形のダイヤフラム型のロードセルよりなる圧力計52が設けられている。この圧力計52は、円盤形の円形の面において圧力を測定できる。そのため、左テーパーコーン46が左方向に移動して、圧力計52を押圧する力(チャッキング圧力)を測定できる。
【0018】
円柱型の押圧部42の上部には、傾斜角測定装置54が設けられている。この傾斜角測定装置54は、左筒部30、左回転部34の水平に対する傾斜角を測定できる。
【0019】
左支持部26の上方に位置する左フレーム14には、左エアーシリンダ56が設けられている。この左エアーシリンダ56は、左シリンダ本体58が左フレーム14に固定され、左ピストンロッドが左シリンダ本体58から左右方向で、かつ水平に伸縮できる。左ピストンロッド60の先端には、左連結部材62の上部が取り付けられ、左連結部材62の下部は左筒部30の左端部に取り付けられている。これによって、左エアーシリンダ56が、左ピストンロッド60を伸縮させると、それと共に左筒部30と、左筒部30の内部の左回転部34が左右方向に移動する。
【0020】
(3)右チャック部材22
次に、右フレーム(右取り付け部材)16に設けられている右チャック部材22の構造について図1を参照して説明する。
【0021】
右フレーム16の上下方向の中央部分には、円形の右支持孔64が開口し、この右支持孔64の内周には、筒状の右支持部66が、左右方向で、かつ水平に貫通している。また、右支持部66の位置は、左支持部26と左右対称の位置にある。筒状の右支持部66の外周部には、右フランジ部67が突出し、この右フランジ部67が、右支持孔64の縁部にある右フレーム16の右面に固定されている。右支持部66の内周の下部には右突部68が突出している。
【0022】
筒状の右支持部66の内周には、筒状の右筒部70がさらに収納されている。右筒部70の外周の下部には、右溝72が左右方向に刻設され、前記した右突部68が係合している。これによって、固定された右突部68に対し右溝72をスライドさせることにより、右筒部70は、回転しないで左右方向に移動できる。
【0023】
右筒部70の内部には、円柱型の右回転部74が収納されている。右筒部70の左端部の内周と右回転部74の左端部の外周との間にはベアリング76が設けられ、右筒部70の右端部の内周と右回転部74の右端部の外周との間にベアリング78が設けられている。これにより、右回転部74は、右筒部70に対し回転自在であり、かつ、左右方向の移動が阻止されている。なお、左チャック部材20と右チャック部材22は、左回転部34の回転軸と右回転部74の回転軸が、水平な状態で一致するように左フレーム14と右フレーム16に取り付けられている。
【0024】
右回転部74の左端部から円柱型の右突出部80が突出している。この右突出部80には、円錐台型の右テーパーコーン86が取り付けられている。
【0025】
右回転部74の右端部から回転軸88が左右方向に、かつ水平に突出している。この回転軸88の右端部にはスプロケット90が設けられている。基台12の上面右側には、モータ92が設けられ、その回転シャフトには減速機94が設けられている。減速機94から突出した出力軸96の端部にはスプロケット98が取り付けられている。そしてスプロケット90とスプロケット98には、無端状のベルト82が架け渡されている。これにより、モータ92が回転すると、ベルト82を介してスプロケット90が回転し、右回転部74が回転する。
【0026】
右筒部70の上方には、右エアーシリンダ100が設けられている。この右エアーシリンダ100の右シリンダ本体102は、右連結部材104を介して右筒部70の上部と一体に連結され、かつ、右筒部70に支持されている。右シリンダ本体102の左側から右ピストンロッド106が伸縮自在に突出している。一方、右フレーム16に固定された右支持部66には、ジャッキ108が取り付けられている。このジャッキ108には、右ピストンロッド106が取り付けられ、ジャッキ108のハンドル110を回転させることにより、右ピストンロッド106と右シリンダ本体102と右筒部70が一体に左右方向に、かつ水平に移動する。そして、このジャッキ108は、右筒部70を左右方向に移動させ、右テーパーコーン86が、巻芯1の右端部の近傍にあるチャッキング位置まで移動させる。このチャッキング位置から、円管状の巻芯1を右テーパーコーン86がチャッキングするときには、右エアーシリンダ100を作動させる。この場合に、右ピストンロッド106の左端部がジャッキ108によって固定された状態で、エアーの圧力で右シリンダ本体102を移動させ、これによって右筒部70が移動して右テーパーコーン86で巻芯1の左端部をチャッキングできる。
【0027】
(4)巻き取り装置10の測定動作状態
次に、巻き取り作業を行う前に巻き取り装置10の状態を測定する測定動作状態について説明する。この測定動作状態において、測定するのは、左右一対の左チャック部材20と右チャック部材22によって巻芯1をチャッキング(挟持)するチャッキング圧力と、巻芯1をチャッキングした場合の左回転部34の傾斜状態である。
【0028】
まず、ウエブWを巻回するための空の巻芯1を、不図示の巻芯支持台に左右方向に、かつ水平に載置する。これにより、空の巻芯1は、左右一対の左テーパーコーン46と右テーパーコーン86の間に配される。
【0029】
次に、ジャッキ108のハンドル110を作業員が回転させて操作することにより、右シリンダ本体102、右連結部材104、右筒部70、右回転部74を左方向に移動させて、右テーパーコーン86が巻芯1をチャックするためのチャッキング位置まで移動させる。この場合に、特徴なのは、右ピストンロッド106の左端部がジャッキ108に固定され、作業員がハンドル110を回転させることにより、右ピストンロッド106が左方向に移動し、それと共に右シリンダ本体102が移動し、これに基づいて右回転部74が移動する。
【0030】
次に、左右一対の左エアーシリンダ56、右エアーシリンダ100を同時に動作させて、左右一対の左テーパーコーン46と右テーパーコーン86によって、巻芯1の左右両端部をチャッキングする。このとき左テーパーコーン46は、左エアーシリンダ56が動作し、左ピストンロッド60が縮む方向(右方向)に移動し、これによって左筒部30と左回転部34と左テーパーコーン46が右方向に移動する。また、右エアーシリンダ100が動作すると、右ピストンロッド106の左端部がジャッキ108によって固定されているため、左側とは異なり右シリンダ本体102が左方向に移動し、これによって右筒部70と右回転部74と右テーパーコーン86が左方向に移動する。なお、右テーパーコーン86が、巻芯1をチャッキングするときは右エアーシリンダ100によって左方向に移動するが、この状態において、右エアーシリンダ100のエアー圧力は、左エアーシリンダ56のエアー圧力よりも強くし、左側から巻芯1を右方向に押圧してチャッキングしても巻芯1が移動しないように設定されている。特に、チャッキングをするときは、右ピストンロッド106の左端部がジャッキ108によって固定され、右シリンダ本体102が移動した状態であるので、チャッキングするときに右シリンダ本体102の推力の分だけ巻芯1が左右方向に揺動しにくい。
【0031】
次に、この巻芯1をチャッキングすると、左テーパーコーン46が、巻芯1の左端部から押圧力がかかり、左テーパーコーン46は左方向に移動し、圧力計52を押圧する。そのため、この圧力計52は、巻芯1の押圧力(チャッキング圧力)を直接測定できる。なお、左テーパーコーン46が左右方向に移動自在なのは、左テーパーコーン46に設けられている摺動孔48が、ボルト50よりも内径が大きいためである。このチャッキング圧力が、予め設定したチャッキング圧力の場合にはそのまま巻き取り作業に移行できる。しかし、設定範囲外である場合には、左エアーシリンダ56に供給するエアー圧力を調整して、チャッキング圧力を調整する。
【0032】
次に、巻芯1を左右一対の左テーパーコーン46と右テーパーコーン86でチャッキングした状態で、傾斜角測定装置54で、押圧部42、すなわち、左筒部30の傾斜状態を調べる。この測定した傾斜角が水平の場合にはそのまま巻き取り作業を行うことができる。一方、左筒部30が傾斜している場合には、巻き取り装置10の左フレーム14、右フレーム16やその他の部材の組み付け具合や加工した軸、ボスなどの嵌合具合を再度点検し、隙間やガタつきがないようにする。
【0033】
以上により、左エアーシリンダ56で測定した間接的な圧力でなく、左テーパーコーン46にかかるチャッキング圧力を直接測定するため、メカロスなどが除去された純粋なチャッキング圧力を測定できる。
【0034】
(5)巻き取り装置10の巻き取り作業の動作状態
次に、巻き取り装置10によって、ウエブWを巻芯1に巻き取る巻き取り作業の動作状態について説明する。
【0035】
まず、上記測定において用いた左テーパーコーン46と押圧部42を左突出部40から取り外す。
【0036】
次に、左テーパーコーン46を外した後、左突出部40に作業用の左テーパーコーン146を嵌め込む。この作業用の左テーパーコーン146も円錐台型であり、その左面には開口形状が円形の凹部148が設けられている。そして、この凹部148に左突出部40を嵌め込み、作業用の左テーパーコーン146を左回転部34に固定する。
【0037】
次に、左右一対の左チャック部材20と右チャック部材22とによって、ウエブWを巻き取る空の巻芯1を左右両側からチャッキングする。このときは、測定用の動作と同様に、ジャッキ108によって右筒部70をチャッキング位置まで移動させ、その後に左右一対の左エアーシリンダ56と右エアーシリンダ100を用いて、作業用の左テーパーコーン146と右テーパーコーン86で、巻芯1をチャッキングする。
【0038】
次に、モータ92を回転させ、それに伴って右回転部74が回転し、巻芯1、左回転部34も回転する。そして、搬送されてくるウエブWを巻芯1に巻き取る。
【0039】
(6)効果
上記実施形態によれば、左テーパーコーン46と右テーパーコーン86で巻芯1をチャッキングした場合に、左テーパーコーン46が巻芯1の左端部からの左方向への圧力により移動し圧力計52を押圧し、チャッキング圧力を直接測定できる。そしてこのチャッキング圧力によって、左エアーシリンダ56のエアー圧力を調整し、所定のチャッキング圧力に正確に調整できる。
【0040】
また、左テーパーコーン46と右テーパーコーン86で巻芯1をチャッキングした場合に、傾斜角測定装置54で左回転部34、すなわち巻芯1が水平であるか否かを測定でき、水平でない場合には巻き取り装置10全体の組み付けなどを確認して水平にできる。
【0041】
また、右エアーシリンダ100に関しては、右ピストンロッド106に固定されたジャッキ108によって左右方向に移動でき、これに基づいてチャッキングを行うためのチャッキング位置に右筒部70を移動させることができる。そして、巻芯1をチャッキングする場合には、ジャッキ108に固定された右ピストンロッド106が移動するのでなく、右ピストンロッド106の伸縮に応じて右シリンダ本体102が移動する。そのため、チャッキング位置まで正確に移動させることができ、また、チャッキングをするときは、右ピストンロッド106の左端部がジャッキ108によって固定され、右シリンダ本体102が移動した状態であるので、チャッキングするときに右シリンダ本体102は左エアーシリンダ56より推力が大きいため巻芯1が左右方向に揺動しにくいのでチャッキング圧力を正確に測定できる。
【変更例】
【0042】
次に、上記実施形態の変更例について説明する。
【0043】
(1)変更例1
上記実施形態では、巻芯1を1本だけ取り付ける巻き取り装置10について説明したが、これに代えて図6に示すように2本の巻芯1を取り付けるターレット型の巻き取り装置200に上記実施形態を適用してもよい。
【0044】
ターレット型の巻き取り装置200は、図6に示すように、基台202から左右一対の支持脚204が立設されている。左右一対の支持脚204の間には回転自在に主回転軸206が水平に架け渡されている。
【0045】
この主回転軸206から左右一対の第1腕部(第1取り付け部)208が突出している。左側の第1腕部208には左チャック部材20が設けられ、右側の第1腕部208には右チャック部材22が設けられている。左チャック部材20と右チャック部材22の間には、第1巻芯1がチャッキングされている。
【0046】
主回転軸206を中心に左右一対の第1腕部208から180°離れた位置にもう1組の左右一対の第2腕部(第2取り付け部)210が突出している。左側の第2腕部210には左チャック部材20が設けられ、右側の第2腕部210には右チャック部材22が設けられている。左チャック部材20と右チャック部材22の間には、第2巻芯1がチャッキングされている。
【0047】
主回転軸206には、左右一対の第1腕部208と第2腕部210の間であって、互いに90°離れた位置に左右一対の補助腕部212が2組突出し、左右一対の補助腕部212にはガイドローラ214が回転自在に取り付けられている。
【0048】
ウエブWは、ガイドローラ214を経て、第1巻芯1に巻き取られる。そして、第1巻芯1が満巻になると、主回転軸206が図6で時計回りの方向に回転して、空の第2巻芯1にウエブWが巻き取られる。
【0049】
このような巻き取り装置200においても、作業前に第1腕部208と第2腕部210に設けられている左チャック部材20に圧力計52と傾斜角測定装置54を有する左テーパーコーン46を取り付けて、チャッキング圧力と傾斜角を測定してもよい。
【0050】
(2)変更例2
上記実施形態や変更例1では、巻回装置として巻き取り装置10,200で説明したが、これに代えて巻芯1からウエブWを巻き出す巻き出し装置においても、左チャック部材20に圧力計52や傾斜角測定装置54を設けてもよい。
【0051】
また、巻き出し装置においても、右チャック部材22には、ジャッキ108を設け、右エアーシリンダ100の右シリンダ本体102を移動させる構造にしてもよい。
【0052】
(3)変更例3
上記実施形態では、ジャッキ108をハンドル110を回転させて操作したが、これに代えて手動によるレバーの上下動やモータによって操作してもよい。
【0053】
(4)その他
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・巻芯、10・・・巻き取り装置、12・・基台、14・・・左フレーム、16・・・右フレーム、20左チャック部材、22・・・右チャック部材、30・・・左筒部、34・・・左回転部、42・・・押圧部、46・・・左テーパーコーン、52・・・圧力計、54・・・傾斜角測定装置、56・・・左エアーシリンダ、70・・・右筒部、74・・・右回転部、86・・・右テーパーコーン、92・・・モータ、100・・・右エアーシリンダ、102・・・右シリンダ本体、106・・・右ピストンロッド、108・・・ジャッキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6