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特開2024-153448排水ポンプシステム及び排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153448
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】排水ポンプシステム及び排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/00 20060101AFI20241022BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20241022BHJP
   F04B 17/05 20060101ALI20241022BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALN20241022BHJP
   B60P 3/00 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
F04B9/00 C
F04B53/00 H
F04B17/05
G06Q50/26
B60P3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067350
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 康弘
【テーマコード(参考)】
3H069
3H071
3H075
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3H069AA02
3H069BB11
3H069CC01
3H069DD42
3H069DD43
3H069DD46
3H069EE14
3H069EE15
3H071AA01
3H071CC19
3H071CC34
3H071CC36
3H071DD31
3H071DD45
3H071DD89
3H075AA06
3H075CC33
3H075CC35
3H075CC36
3H075DA11
3H075DA14
3H075DB04
3H075DB37
3H075EE03
3H075EE04
3H075EE09
3H075EE12
3H075EE17
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】
特注車両(専用品)を不要とすると共に、一般車両を用いた排水が可能であり、洪水時に排水ポンプユニットのみを現地に輸送するだけで、容易に排水ポンプシステムを組み上げることが可能なこと。
【解決手段】
本発明の排水ポンプシステムは、上記課題を解決するために、陸上排水ポンプと、該陸上排水ポンプの主軸を接続することで車両(自動車)の車輪(タイヤ)を外したドライブシャフトのホイールハブ、或いはタイヤホールに設けた接続ハブに接続可能とするユニバーサルジョイントと、該ユニバーサルジョイントと前記陸上排水ポンプの主軸とをつなぐカップリングと、を備えていることを特徴とする。
【選択図】図2(b)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(自動車)の車輪(タイヤ)を外したドライブシャフトのホイールハブに接続され、吸水ホースと排水ホースを有する排水ポンプを備え、
前記車両のアクセルで前記排水ポンプの回転数を制御することで、前記排水ポンプにより吸水、排水を行うことを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項2】
陸上排水ポンプと、該陸上排水ポンプの主軸を接続することで車両(自動車)の車輪(タイヤ)を外したドライブシャフトのホイールハブ、或いはタイヤホールに設けた接続ハブに接続可能とするユニバーサルジョイントと、該ユニバーサルジョイントと前記陸上排水ポンプの主軸とをつなぐカップリングと、を備えていることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の排水ポンプシステムであって、
前記車両は、前記ドライブシャフトに取り付けられたホイールハブと、該ホイールハブに対して取り付けられたホイールと、該ホイールに前記タイヤをナットで締結固定するハブボルトと、を備えていることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の排水ポンプシステムであって、
前記車両の前記ドライブシャフトに対して前記ユニバーサルジョイントを取り付けると共に、前記ユニバーサルジョイントに取り付けられている第1のカップリングと前記陸上排水ポンプの主軸に取り付けられている第2のカップリングをボルト締結し、前記陸上排水ポンプを前記ユニバーサルジョイントに接続することを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の排水ポンプシステムであって、
前記第1のカップリングと前記第2のカップリングは、たわみ軸継手が用いられていることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項6】
請求項2に記載の排水ポンプシステムであって、
前記ユニバーサルジョイント又は前記カップリングの回転数を計測する回転計を備えていることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の排水ポンプシステムであって、
前記回転計は、前記回転数が車両の運転席に目視可能に設置されていることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項8】
請求項2に記載の排水ポンプシステムであって、
前記陸上排水ポンプには吸水ホースと排水ホースが接続されており、前記吸水ホースの一端が前記陸上排水ポンプに接続されていると共に他端がため池に投入され、一方、前記排水ホースの一端が前記陸上排水ポンプに接続されていると共に他端が放流河川に接続され、前記放流河川と前記ため池のそれぞれに水位計が設置されていることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項9】
請求項8に記載の排水ポンプシステムであって、
前記車両の運転席から直接見える位置に、前記ため池に設置された前記水位計のデータがしきい値を越えた場合にアラームを発報するアラーム表示器が設置されていることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項10】
請求項8に記載の排水ポンプシステムであって、
前記陸上排水ポンプの主軸の回転数を測定する回転計と、前記排水ホースの排水圧力を計る圧力計と、を備え、前記回転計と前記圧力計は、前記車両の運転席の操作者から見える位置に設置されていることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項11】
請求項6に記載の排水ポンプシステムであって、
前記回転計で計測された前記ユニバーサルジョイント又は前記カップリングの回転数を、前記車両の操作者にクラウドに送信し、前記回転数に基づいて前記車両のアクセル制御を行うことを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項12】
請求項11に記載の排水ポンプシステムであって、
前記回転計から出力されたアナログ信号を信号変換器に取り込むことでデジタルデータとし、前記デジタルデータを無線通信によりパーソナルコンピュータ(PC)に取込むと共に、前記PC内では、取込んだ前記デジタルデータをクラウドサーバに送信し、かつ、前記クラウドサーバの内部では、閲覧用の画面として計測値トレンド画面が用意された携帯電話に配信され、前記携帯電話の画面上では、現在の計測値情報が見れると共に、他に排水流量の表示が計算にて見ることができることを特徴とする排水ポンプシステム。
【請求項13】
陸上排水ポンプと、該陸上排水ポンプの主軸を接続することで車両(自動車)の車輪(タイヤ)を外したドライブシャフトのホイールハブ、或いはタイヤホールに設けた接続ハブに接続可能とするユニバーサルジョイントと、該ユニバーサルジョイントと前記陸上排水ポンプの主軸とをつなぐカップリングと、を備えている排水ポンプシステムを排水現場へ設置、運用するに当たって、
前記車両(自動車)を排水現場まで運転するステップと、
ピックアップトラックから機材を降ろすステップと、
前記車両の駆動側をジャッキアップするステップと、
前記車両の駆動側をジャッキアップした後、ホイールからナットを取り外しハブボルトから前記車輪(タイヤ)を外すステップと、
前記ユニバーサルジョイントを、前記車輪(タイヤ)を外したホイールハブの前記ハブボルトに取り付けるステップと、
前記車両又は別の車両に積載してきた前記陸上排水ポンプを屋外に設置するステップと、
前記車両の前記ドライブシャフトに前記ユニバーサルジョイントを取り付けると共に、前記ユニバーサルジョイントに取り付けられている第1のカップリングとポンプ主軸に取り付けられている第2のカップリングをボルト締結し、前記陸上排水ポンプを前記ユニバーサルジョイントに接続するステップと、
前記陸上排水ポンプへ吸水ホース及び排水ホースを接続する配管接続を行うステップと、
放流河川とため池のそれぞれに水位計を設置するステップと、
前記陸上排水ポンプの前記ポンプ主軸の回転数を測定する回転計と、前記排水ホースの排水圧力を計る圧力計と、を前記車両の運転席の操作者から見える位置に設置するステップと、
前記操作者が前記車両の運転席に乗り込み前記車両のエンジンをスタートした後、前記圧力計と前記回転計を見ながら前記車両のアクセルのスロット調整を行うステップと、を実行することを特徴とする排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法。
【請求項14】
請求項13に記載の排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法であって、
前記車両又は別の車両に積載してきた前記陸上排水ポンプを屋外に設置するステップを実行する際は、前記陸上排水ポンプの下に鉄板を敷き、地盤沈下しないよう設置床の養生を行うことを特徴とする排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法。
【請求項15】
請求項13に記載の排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法であって、
前記陸上排水ポンプへ吸水ホース及び排水ホースを接続する配管接続を行うステップを実行する際は、前記吸水ホースの一端を前記陸上排水ポンプに接続すると共に、他端を前記ため池に投入し、一方、前記排水ホースの一端を前記陸上排水ポンプに接続し、他端を前記放流河川に投入することを特徴とする排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水ポンプシステム及び排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法に係り、例えば、洪水時の排水や土木工事の排水、農業用給排水等の給排水作業に使用するに好適な排水ポンプシステム及び排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、頻発する局地的な大雨による河川の氾濫に迅速に対応するため、機動性に優れた排水ポンプ車に有用性が認識されつつあり、これに伴い排水ポンプ車の普及と総排水量の大容量化が進んでいる。
【0003】
また、従来の排水ポンプ車は、車両に水中ポンプを含む排水機材一式が積載されていて、河川の氾濫による洪水が発生した場合、排水ポンプ車を洪水発生現場まで移動して排水作業を行っている。
【0004】
このような車両に水中ポンプ等を積載した排水ポンプ車の先行技術文献としては、特許文献1を挙げることができる。
【0005】
上記した特許文献1の段落[0020]には、「図1に示す排水ポンプ車は、前部に運転室2を有する車両1よりなり、運転室2の下部に設置されたエンジン(図示せず)により自走自在となっている。運転室2の後方には荷台3が設けられていて、この荷台3の運転室2側端部には、前記エンジンより動力を取り出す動力取り出し手段(PTO)4が設置されており、動力取り出し手段4の出力軸4aに継手5を介して減速機6の入力軸6aが接続されている。減速機6の出力軸6bには、動力反転手段7を介して排水ポンプ8の回転軸9が接続されている。」と記載され、車両エンジンの動力で排水ポンプを駆動することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-125856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の排水ポンプ車は、取り出し手段(PTO)4を備えた特注車両(専用品)でしか動かせないことから、車両故障が発生した場合、特注車両であるため入手に時間が掛かり、復旧時間が数日~数十日となってしまう恐れがある。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、特注車両(専用品)を不要とすると共に、一般車両を用いた排水が可能であり、洪水時に排水ポンプユニットのみを現地に輸送するだけで、容易に排水ポンプシステムを組み上げることが可能な排水ポンプシステム及び排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排水ポンプシステムは、上記目的を達成するために、車両(自動車)の車輪(タイヤ)を外したドライブシャフトのホイールハブに接続され、吸水ホースと排水ホースを有する排水ポンプを備え、前記車両のアクセルで前記排水プンプの回転数を制御することで、前記排水ポンプにより吸水、排水を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の排水ポンプシステムは、上記目的を達成するために、陸上排水ポンプと、該陸上排水ポンプの主軸を接続することで車両(自動車)の車輪(タイヤ)を外したドライブシャフトのホイールハブ、或いはタイヤホールに設けた接続ハブに接続可能とするユニバーサルジョイントと、該ユニバーサルジョイントと前記陸上排水ポンプの主軸とをつなぐカップリングと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法は、上記目的を達成するために、陸上排水ポンプと、該陸上排水ポンプの主軸を接続することで車両(自動車)の車輪(タイヤ)を外したドライブシャフトのホイールハブ、或いはタイヤホールに設けた接続ハブに接続可能とするユニバーサルジョイントと、該ユニバーサルジョイントと前記陸上排水ポンプの主軸とをつなぐカップリングと、を備えている排水ポンプシステムを排水現場へ設置、運用するに当たって、前記車両(自動車)を排水現場まで運転するステップと、ピックアップトラックから機材を降ろすステップと、前記車両の駆動側をジャッキアップするステップと、前記車両の駆動側をジャッキアップした後、ホイールからナットを取り外しハブボルトから前記車輪(タイヤ)を外すステップと、前記ユニバーサルジョイントを、前記車輪(タイヤ)を外したホイールハブの前記ハブボルトに取り付けるステップと、前記車両又は別の車両に積載してきた前記陸上排水ポンプを屋外に設置するステップと、前記車両の前記ドライブシャフトに前記ユニバーサルジョイントを取り付けると共に、前記ユニバーサルジョイントに取り付けられている第1のカップリングとポンプ主軸に取り付けられている第2のカップリングをボルト締結し、前記陸上排水ポンプを前記ユニバーサルジョイントに接続するステップと、前記陸上排水ポンプへ吸水ホース及び排水ホースを接続する配管接続を行うステップと、放流河川とため池のそれぞれに水位計を設置するステップと、
前記陸上排水ポンプの前記ポンプ主軸の回転数を測定する回転計と、前記排水ホースの排水圧力を計る圧力計と、を前記車両の運転席の操作者から見える位置に設置するステップと、前記操作者が前記車両の運転席に乗り込み前記車両のエンジンをスタートした後、前記圧力計と前記回転計を見ながら前記車両のアクセルのスロット調整を行うステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特注車両(専用品)を不要とすると共に、一般車両を用いた排水が可能であり、洪水時に排水ポンプユニットのみを現地に輸送するだけで、容易に排水ポンプシステムを組み上げることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の排水ポンプシステムの実施例1であり、可搬型陸上排水ポンプと自動車からなる排水ポンプシステムを示す図である。
図2(a)】本発明の排水ポンプシステムの実施例1における陸上排水ポンプと自動車のドライブシャフトとの接続部の拡大図であり、自動車の走行可能な状態を示す図である。
図2(b)】本発明の排水ポンプシステムの実施例1における陸上排水ポンプと自動車のドライブシャフトとの接続部の拡大図であり、陸上排水ポンプと自動車のドライブシャフトとの接続状態を示す図である。
図3】本発明の排水ポンプシステムの実施例1を活用した具体的な排水現場への設置例を示す図である。
図4】本発明の排水ポンプシステムの実施例1における排水現場への設置、運用のフローを示す図である。
図5(a)】本発明の排水ポンプシステムの実施例1に採用される遠隔監視システムの例を示す図である。
図5(b)】図5(a)の遠隔監視システムにおけるスマートフォンの画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の排水ポンプシステム及び排水ポンプシステムの排水現場への設置、運用方法を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例0015】
図1は、可搬型陸上排水ポンプ(以下、陸上排水ポンプという)1と自動車(車両)2からなる本実施例の排水ポンプシステムを示す図であり、図1の(a)は走行可能状態の自動車2を示す図、図1の(b)は、自動車2の前輪(タイヤ)3aをジャッキアップして前輪3aを外した状態を示す図、図1の(c)は外した前輪3aの代わりに陸上排水ポンプ1を自動車2に取り付けた状態を示す図である。なお、3bは、自動車2の後輪(タイヤ)である。
【0016】
なお、本実施例の自動車(車両)2は、いわゆる発電機やポンプを固定搭載したポンプ車とは異なり、軽トラック、ピックアップトラック、2トントラックなどの汎用自動車であり、陸上排水ポンプ1や関連部品(ユニバーサルジョイントやカップリングなどのジョイント類、各種ホース、水位計等)を搭載して現場に行くことが可能であれば、貨物車両でも乗用車でもよい。
【0017】
図2(a)及び図2(b)は、本実施例の排水ポンプシステムにおける陸上排水ポンプ1と自動車2のドライブシャフト4との接続部の拡大図であり、図2(a)は自動車2の走行可能な状態を示し、図2(b)は陸上排水ポンプ1と自動車2のドライブシャフト4との接続状態を示している。
【0018】
図3は、図1図2(a)及び図2(b)に示した本実施例の排水ポンプシステムを活用した具体的な排水現場への設置例を示す図、図4は、本実施例の排水ポンプシステムにおける排水現場への設置、運用のフローを示す図である。
【0019】
以下、図4に示す本実施例の排水ポンプシステムにおける排水現場への設置、運用のフローに沿って図1図2(a)、図2(b)及び図3を参照しながら本実施例の排水ポンプシステムを説明する。
【0020】
図1の(a)及び図2(a)に示すように、走行可能状態の自動車2は、ドライブシャフト4に取り付けられたホイールハブ5、このホイールハブ5に対して取り付けられたホイール6、ホイール6にタイヤ(図示せず)をナット(図示せず)で締結固定するハブボルト7を有している。
【0021】
上記した自動車2を、図4に示すように排水現場まで運転し(S1)、駐車前に排水現場に鉄板を敷き自動車2を駐車する。なお、本実施例では、図3のように、陸上排水ポンプ1を搭載したピックアップトラックを放流河川8とため池9の間に駐車した場合を想定としている。鉄板は地盤沈下防止で敷いているが、地盤沈下の恐れがなければ、鉄板は敷かなくてもよい。
【0022】
次に、ピックアップトラックから機材を降ろし(S2)、自動車2の駆動側を図1の(b)のようにジャッキアップする(S3)。その後、ホイール6からナットを取り外し、ハブボルト7からタイヤを外す(S4)。そして、図2(b)に示すように、ユニバーサルジョイント10を、タイヤを外したホイールハブ5のハブボルト7に取り付ける(S5)。即ち、ナットを締め付けることで、ホイールハブ5のハブボルト7にユニバーサルジョイント10を取り付ける。
【0023】
次に、図1の(c)及び図2(b)に示すように、自動車2又は別自動車に積載してきた陸上排水ポンプ1を屋外に設置する。この際、陸上排水ポンプ1の設置床は、砂利や土といった舗装されていない場合も考慮し、陸上排水ポンプ1の下には小さな鉄板を敷き、地盤沈下しないよう設置床の養生を行う(S6)。これも地盤沈下の恐れがなければ、鉄板は設置不要である。
【0024】
次に、自動車2のドライブシャフト4に対してユニバーサルジョイント10を取り付けると共に、ユニバーサルジョイント10と陸上排水ポンプ1のポンプ主軸11とを接続すべく、ユニバーサルジョイント10に取り付けられている第1のカップリング10aとポンプ主軸11に取り付けられている第2のカップリング11aをボルト締結し、陸上排水ポンプ1をユニバーサルジョイント10に接続している(S7)。
【0025】
このように、本実施例では、接続機構として自由に折れ曲がるリンク機構を備えたユニバーサルジョイント10と第1のカップリング10a及び第2のカップリング11aを備えていることから、ハブボルト7の位置と陸上排水ポンプ1のポンプ主軸11との位置ズレがあった場合でも接続が可能となる。
【0026】
なお、本実施例では、第1のカップリング10aと第2のカップリング11a同士の面倒れ等を考慮し、第1のカップリング10aと第2のカップリング11aは、両者の間にゴムなどが入ったたわみ軸継手が使用されている。
【0027】
次に、陸上排水ポンプ1へ吸水ホース12及び排水ホース13を接続する配管接続を行う(S8)。即ち、図3に示すように、吸水ホース12の一端を陸上排水ポンプ1に接続すると共に、他端をため池9に投入する。一方、排水ホース13の一端を陸上排水ポンプ1に接続し、他端を放流河川8に投入する。
【0028】
次に、放流河川8とため池9のそれぞれに水位計14a、14bを設置する(S9)。これは、まれに大雨が継続している中での排水や調整池、別の地下河川等の送水量上限がある場所へ吐き出す場合も考えられるからである。
【0029】
また、本実施例では、直接運転席から見える位置に、ため池9に設置された水位計14bのデータがしきい値を越えた場合に発報するアラーム表示器15aを設置している。排水ホース13は、暴れ動く可能性もあるので監視者16を配置する場合がある。
【0030】
従って、吸水側のため池9、排水側の放流河川8に監視者がいて水位監視している場合には、アラーム表示器15a、15bは設置せずに、自動車2の運転席の操作者17に電話連絡するようにしてもよい。
【0031】
次に、陸上排水ポンプ1のポンプ主軸11の回転数(ユニバーサルジョイント10又は第1のカップリング10a、第2のカップリング11aの回転数でもある)を測定する回転計18と、排水ホース13の排水圧力を計る圧力計19と、を自動車2の運転席の操作者17から見える位置に設置している(S9)。
【0032】
これは、自動車2の操作者17は、自動車2のアクセルで陸上排水ポンプ1を制御しているが、回転数を上げすぎると陸上排水ポンプ1内でキャビテーションが発生してしまい、送水性能が落ちてしまうため、回転計18と圧力計19を見ながら送水性能が落ちないように制御するためである。なお、陸上排水ポンプ1には、振動を測定する振動計20を設置している。
【0033】
次に、陸上排水ポンプ1に呼び注水を行い(S10)、監視人を配置し(S11)、操作者17が自動車2の運転席に乗り込み(S12)、自動車2のエンジンをスタート(S13)した後、圧力計19と回転計18を見ながら自動車2のアクセルのスロット調整を行う(S14)。必要により自動車2のスロットを固定して一定回転数を実現する(S15)。
【0034】
なお、上述した圧力計19、水位計14b及び振動計20は、目視やアラーム表示器15aへの通報を前提としたが、クラウドサーバを活用した遠隔監視システムとしてもよい。
【0035】
図5(a)は、上記した遠隔監視システムの例を示す図である。
【0036】
図5(a)に示すように、各計測器(例えば圧力計19、水位計14a、14b)から出力された4~20mAのアナログ信号(圧力信号19a、水位信号14a1(14b1))を信号変換器21a、21bに取り込むことでデジタルデータとし、wifiやbluetooth等といった無線通信により小型PC22にデータを取込む。小型PC22内では、取込んだデータをクラウドサーバ23に送信する。クラウドサーバ23の内部では、閲覧用の画面として計測値トレンド画面が用意され、スマートフォン24等の携帯電話に配信される。スマートフォン24の画面上では、図5(b)に示すように、現在の計測値情報が見れる他に排水流量の表示が計算にて見ることができる。
【0037】
具体的には、自動車2のアクセルを操作することで、いくらでも回転数を上げることはできるが、陸上排水ポンプ1は基本的に定格回転数があり、その定格回転数付近で回転されることが望ましい。陸上排水ポンプ1の排水量を増量させるためには、自動車2のアクセルを踏み込んで回転数を上げればよいが、回転数を上げ過ぎると陸上排水ポンプ1の内部でキャビテーションが発生する。
【0038】
これは、陸上排水ポンプ1の回転数を上げ過ぎることにより羽根車の周辺で飽和蒸気圧を越え、気体となってしまう現象である。このキャビテーション状態となると液体の排水から気液混合水の排水となり、排水性能が低下してしまう。そのため、図5(b)に示すように、キャビテーション状態とならない流量を限界流量値Aとしてスマートフォン24の画面24aに表示できれば、自動車2の操作者17は、その値を目安にアクセル操作を行えば良い。
【0039】
スマートフォン24の画面24aへの表示方法としては、採用した陸上排水ポンプ1をスマートフォン24の画面24aのポンプ選定一覧表より選択し、該当する陸上排水ポンプ1の揚程-流量関係図をグラフ表示し、限界流量値Aと現在流量値Bをグラフ内に表示することが考えられる。
【0040】
更に、陸上排水ポンプ1がキャビテーションを発生している異常状態を把握し、アラームを発報させる機能も装備する。
【0041】
その方法としては、陸上排水ポンプ1に、前述の圧力計19の他に振動計20、回転計18を設置し、キャビテーション発生時の圧力低下と陸上排水ポンプ1の内部振動の上昇を計測する。
【0042】
アラームの発生条件は回転数上昇、吐出圧力低下、振動加速度上昇であるから、これらが合致した状態の1分後にアラーム発報させる。なお、回転速度は自動車2から信号を取出しても良い。
【0043】
この遠隔監視システムは、洪水等であふれた水を排水することを想定したシステムであるため、吸込側では水の他、泥や異物を吸込むことが想定され、その場合は、異物等で詰まることも想定される。詰りが発生した場合は圧力値が急激に下がるため、自動車2の操作者17は、圧力値を常に見ながらの運転操作が必要であり、圧力状況を時系列グラフで表示するか、或いは短間に一定以上の圧力低下が出たときはアラームを発報させる。
【0044】
次に、陸上排水ポンプ1の排水運転の時間計測について説明する。
【0045】
通常、自動車2に燃料を供給すると、自動車2の走行燃費より残走行距離の期待値が自動車2のディスプレイに表示される。一方、排水用途として自動車2を使用する場合、走行距離に変わる指標を表示しなければ、あと何時間排水可能なのか、燃料調達のタイミングなどを推定することができない。
【0046】
そのため、本実施例の排水ポンプシステムには、簡易の陸上排水ポンプ1の残排水時間を推定表示する機能が装備されている。
【0047】
上記した陸上排水ポンプ1の残排水時間の計算方法は、以下の通りである。
【0048】
初期値として、A:自動車2のタンク容量(自動車2のカタログに記載)、B:満タンからの走行距離(トリップメータの読み値)、C:現在の瞬間燃費(自動車2のディスプレイに表示)を画面より入力する。
【0049】
使用した自動車2の燃料の量D=B/C、残量E=D-A、と計算される。
【0050】
次に自動車2の車種を選択する。
【0051】
自動車2の車種毎にエンジンの出力曲線は、自動車2のカタログ等で公表されており、各車種における運転回転数、出力、燃料消費率Fの対応表が予めサーバに記憶されている。
【0052】
次に、自動車2の運転開始後、タイマにて運転時間Gが累積される。陸上排水ポンプ1の排水用途で使用する場合、基本的には、大容量を排水したいという心理から陸上排水ポンプ1の出力は、限界流量値A付近までアクセルを開くこととなる。
【0053】
そのため、陸上排水ポンプの出力は、限界流量値Aの出力であると仮定することができるため、出力値Hは、陸上排水ポンプ1の性能グラフから一定値であると想定できる。自動車2の運転時間Gと燃料消費率F及び出力Hから燃料使用量I=F×H×Gがわかり、一定時間運転後の燃料残量期待値J=E-Iが求められる。
【0054】
表示器には、上記した運転時間G、燃料残量期待値Jが表示され、あと何時間運転可能か、何時間後までに燃料を調達してもらうか等、燃料補充の計画を立案することが可能となる。
【0055】
なお、本実施例の陸上排水ポンプ1は、前輪3aの片側に装備した場合を記載したが、自動車2は、両軸から動力を取ることができるので、両輪に本実施例の陸上排水ポンプ1を設置してもよい。この場合は、陸上排水ポンプ1個につき圧力計が追加される形となる。
【0056】
また、4輪駆動の自動車2もあり、理論的には4輪から動力を取り出すことは可能であるが、自動車2の4輪が浮いた状態で、地震などの影響を受けないように固定することは難しいため、前輪3a又は後輪3bのどちらかに設置する。
【0057】
また、駆動輪の反対側は車輪(タイヤ)が付いたままとし、万が一、地震などで地面が揺れた場合には、タイヤとサスペンションにて揺れを吸収するようにして姿勢を維持する。自動車2を持ち上げるジャッキは、自動車2の中心に油圧フロアジャッキにて持ち上げるか或いはパンタグラフ式ジャッキを2個使い、左右のタイヤ付近に設置して持ち上げて固定する。
【0058】
このように本実施例によれば、特注車両が不要で、一般車両(自動車)を用いて排水が可能であり、洪水時に構成部品のみを現地に輸送すればよく、容易に排水ポンプシステムを組み上げることが可能である。
【0059】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…可搬型陸上排水ポンプ、2…自動車(車両)、3a…前輪(タイヤ)、3b…後輪(タイヤ)、4…ドライブシャフト、5…ホイールハブ、6…ホイール、7…ハブボルト、8…放流河川、9…ため池、10…ユニバーサルジョイント、10a…第1のカップリング、11…ポンプ主軸、11a…第2のカップリング、12…吸水ホース、13…排水ホース、14a、14b…水位計、14a1、14b1…水位信号、15a、15b…アラーム表示器、16…監視者、17…操作者、18…回転計、19…圧力計、19a…圧力信号、20…振動計、21a、21b…信号変換器、22…小型PC、23…クラウドサーバ、24…スマートフォン、24a…スマートフォンの画面。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】