IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-インクジェット記録装置 図1
  • 特開-インクジェット記録装置 図2
  • 特開-インクジェット記録装置 図3
  • 特開-インクジェット記録装置 図4
  • 特開-インクジェット記録装置 図5
  • 特開-インクジェット記録装置 図6
  • 特開-インクジェット記録装置 図7
  • 特開-インクジェット記録装置 図8
  • 特開-インクジェット記録装置 図9
  • 特開-インクジェット記録装置 図10
  • 特開-インクジェット記録装置 図11
  • 特開-インクジェット記録装置 図12
  • 特開-インクジェット記録装置 図13
  • 特開-インクジェット記録装置 図14
  • 特開-インクジェット記録装置 図15
  • 特開-インクジェット記録装置 図16
  • 特開-インクジェット記録装置 図17
  • 特開-インクジェット記録装置 図18
  • 特開-インクジェット記録装置 図19
  • 特開-インクジェット記録装置 図20
  • 特開-インクジェット記録装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153449
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 301
B41J2/165 201
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067351
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 崇史
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056JA17
2C056JA21
2C056JB04
2C056JC13
2C056KA00
2C056KB26
2C056KC00
(57)【要約】
【課題】ノズル面に残留したインクへの洗浄液の浸透を簡潔な構成で促進することを目的とする。
【解決手段】インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドのノズル面12Fに装着されるキャップ72と、インクジェットヘッドとキャップ72との少なくとも一方を昇降させる昇降機構と、ノズル面12Fに洗浄液を供給する洗浄液供給装置と、を備え、キャップ72は、基部72Bと、基部72Bの上面から上方に突出し、ノズル面12Fのノズルが形成された領域12NAを包囲し、可撓性を有する壁部72Wと、基部72Bのうち壁部72Wの内側の領域に敷設された弾性材72Eと、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのノズル面に装着されるキャップと、
前記インクジェットヘッドと前記キャップとの少なくとも一方を昇降させる昇降機構と、
前記ノズル面に洗浄液を供給する洗浄液供給装置と、を備え、
前記キャップは、
基部と、
前記基部の上面から上方に突出し、前記ノズル面のノズルが形成された領域を包囲し、可撓性を有する壁部と、
前記基部のうち前記壁部の内側の領域に敷設された弾性材と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記弾性材の上面が前記壁部の上端部よりも低い位置にあることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記基部は、前記壁部の内側の領域に前記洗浄液を供給する供給路を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ノズル面に残留したインクを除去するワイプユニットと、
前記洗浄液供給装置と前記昇降機構と前記ワイプユニットとを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記洗浄液供給装置によって前記ノズル面に前記洗浄液を供給した後、前記昇降機構により前記弾性材を所定時間だけ前記ノズル面に押圧し、その後、前記ワイプユニットによって前記ノズル面からインクを除去することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記インクジェットヘッドによるインクの吐出状況に応じて、前記弾性材を前記ノズル面に押圧するか否かを決定することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記インクジェットヘッドによるインクの吐出状況に応じて、前記弾性材を前記ノズル面に押圧する時間の長さを決定することを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、画像形成ジョブが実行されていない期間にインクジェットヘッドのノズル内のインクから水分が蒸発し、インクの粘度上昇や固着によってノズルが目詰まりすることが考えられる。そこで、目詰まりの予防を目的としてノズル内のインクを吐出させるパージ処理が行われる。しかし、パージ処理後にノズル面に残留したインクを放置すると、画像形成ジョブの実行中にシートにインクが落下したり、ノズル面にインクが固着したりするという問題がある。そこで、ノズル面に残留したインクを除去する技術が検討されている。例えば、特許文献1では、ノズル面に接触するブレードを所定方向にスライドさせることによって、ノズル面に付着したインクを除去する構成が提案されている。
【0003】
ところで、ノズル面には吐出性能を高めるための撥水処理が施されているが、ブレードを用いたワイプ動作を繰り返すことで撥水膜が削られ、撥水性が低下することが知られている。撥水性が低下すると、ノズル面の濡れが拡がりやすくなり、インクの付着面積が大きくなる。付着したインクが固着すると、さらにインクが付着しやすくなるため、ブレードの押圧力を高める必要がある。しかし、押圧力を高めると、さらに撥水膜が削られやすくなるという問題がある。そこで、ノズル面に残留したインクへの洗浄液の浸透を促進する手段を講じることが考えられる。例えば、特許文献2では、ノズル面を覆うキャップ内に洗浄液を満たしてノズル面を洗浄液に浸漬させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-108711号公報
【特許文献2】特開2013-176898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載された構成では、ノズル面を洗浄液に浸漬させることから、いくつかの問題が生じる。例えば、ノズル面を浸漬している間に洗浄液にインクが溶け出すため、洗浄液が徐々に汚染されてしまう。また、キャップの上縁部付近まで洗浄液を注入する必要があるため、洗浄液が溢れるおそれがある。また、キャップの着脱のたびに洗浄液を注入、排出する必要がある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、ノズル面に残留したインクへの洗浄液の浸透を簡潔な構成で促進することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドのノズル面に装着されるキャップと、前記インクジェットヘッドと前記キャップとの少なくとも一方を昇降させる昇降機構と、前記ノズル面に洗浄液を供給する洗浄液供給装置と、を備え、前記キャップは、基部と、前記基部の上面から上方に突出し、前記ノズル面のノズルが形成された領域を包囲し、可撓性を有する壁部と、前記基部のうち前記壁部の内側の領域に敷設された弾性材と、を備える。
【0008】
前記弾性材の上面は、前記壁部の上端部よりも低い位置にあってもよい。
【0009】
前記基部は、前記壁部の内側の領域に前記洗浄液を供給する供給路を備えていてもよい。
【0010】
前記インクジェット記録装置は、前記ノズル面に残留したインクを除去するワイプユニットと、前記洗浄液供給装置と前記昇降機構と前記ワイプユニットとを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記洗浄液供給装置によって前記ノズル面に前記洗浄液を供給した後、前記昇降機構により前記弾性材を所定時間だけ前記ノズル面に押圧し、その後、前記ワイプユニットによって前記ノズル面からインクを除去してもよい。
【0011】
前記制御部は、前記インクジェットヘッドによるインクの吐出状況に応じて、前記弾性材を前記ノズル面に押圧するか否かを決定してもよい。
【0012】
前記制御部は、前記インクジェットヘッドによるインクの吐出状況に応じて、前記弾性材を前記ノズル面に押圧する時間の長さを決定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ノズル面に残留したインクへの洗浄液の浸透を簡潔な構成で促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の内部を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る作像ユニットを示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る作像ユニットを示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインク供給路を模式的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドを示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るキャップユニットを右方にスライドさせた様子を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るワイプユニットとキャップユニットを右方にスライドさせた様子を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係るキャップを示す平面図である。
図10図9のI-I断面を示す断面図である。
図11図9のII-II断面を示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る洗浄液供給装置を示す斜視図である。
図13】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置とヘッドユニットの動作を示す断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置とヘッドユニットの動作を示す断面図である。
図15】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置とヘッドユニットの動作を示す断面図である。
図16】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置とヘッドユニットの動作を示す断面図である。
図17】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置とヘッドユニットの動作を示す断面図である。
図18】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置とヘッドユニットの動作を示す断面図である。
図19】本発明の一実施形態に係るキャップ装着位置におけるキャップの様子を示す断面図である。
図20】本発明の一実施形態に係る洗浄液供給位置におけるキャップの様子を示す断面図である。
図21】本発明の一実施形態の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。
【0016】
最初に、インクジェット記録装置1の全体の構成について説明する。図1は、インクジェット記録装置1の内部を模式的に示す正面図である。図2は、作像ユニット6を示す平面図である。図3は、作像ユニット6を示す断面図である。図4は、インク供給路60を模式的に示す図である。図5は、インクジェットヘッド12を示す断面図である。以下、図1における紙面手前側をインクジェット記録装置1の正面側(前側)とし、左右の向きはインクジェット記録装置1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0017】
インクジェット記録装置1(図1参照)は、直方体状の本体ハウジング3を備える。本体ハウジング3内の下部には、普通紙、コート紙等の枚葉のシートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを送り出す給紙ローラー5が設けられている。給紙カセット4の上方には、シートSを吸着して搬送する搬送ユニット7が設けられている。搬送ユニット7の上方には、インクジェット方式の作像ユニット6が設けられている。本体ハウジング3の左上部には、画像が形成されたシートSを排出する排出ローラー8と、排出されたシートSが積載される排出トレイ9が設けられている。
【0018】
本体ハウジング3の内部には、給紙カセット4から作像ユニット6と搬送ユニット7との間隙を経て排出トレイ9に至る搬送路10が設けられている。搬送路10には、シートSを搬送する複数の搬送ローラー17が設けられている。作像ユニット6よりも搬送方向上流側には、レジストローラー18が設けられている。
【0019】
搬送ユニット7は、無端の搬送ベルト21と、支持板23と、吸引部24と、を備える。搬送ベルト21は、多数の通気孔(図示省略)を有し、駆動ローラー25と従動ローラー22に巻き掛けられている。支持板23は、多数の通気孔を有し、上面が搬送ベルト21の内面に接触している。吸引部24は、支持板23の通気孔と搬送ベルト21の通気孔を介して空気を吸引することでシートSを搬送ベルト21に吸着させる。モーターと減速ギアとを含む駆動部(図示省略)により駆動ローラー25が反時計回り方向に駆動されることで搬送ベルト21が反時計回り方向に回転し、搬送ベルト21に吸着されたシートSがY方向に搬送される。
【0020】
作像ユニット6は、ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11M(ヘッドユニット11と総称する)を備える。ヘッドユニット11は、1つ以上のインクジェットヘッド12、例えば、千鳥に配置された3つのインクジェットヘッド12を備える(図2参照)。ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mには、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクコンテナ20Y、20Bk、20C、20M(インクコンテナ20と総称する)がインク供給路60(図4参照)を介して接続されている。
【0021】
図4では、1色のインクに対応するインク供給路60が図示されているが、本実施形態では4色のインクを用いるため、実際には4系統のインク供給路60が設けられている。インクジェット記録装置1は、インクコンテナ20が装着されるコンテナ装着部61と、インクを濾過するフィルター62と、インクコンテナ20からフィルター62を介してインクを吸引するポンプ63と、ポンプ63から送り出されたインクを貯留するサブタンク64と、メンテナンス装置30から排出された廃液を貯留する廃液タンク69と、を備えている。なお、図4では、1つのインクジェットヘッド12が図示されているが、実際には1つのヘッドユニット11に属する3つのインクジェットヘッド12が1つのサブタンク64に接続されている。
【0022】
インクジェットヘッド12(図5参照)は、前後方向を長手方向とする直方体状の筐体12Hと、筐体12Hの底部に設けられたノズルプレート12Pと、サブタンク64からの配管が接続されるソケット12Sと、を備える。ノズルプレート12Pは、前後方向に並ぶ多数のノズル12Nを備えている。ノズル12Nは、ソケット12Sの下流側から分岐した分岐流路12Bと、ノズルプレート12Pの下面であるノズル面12Fに設けられた吐出口12Aと、を含む。振動板12Vは、分岐流路12Bの内壁の一部を兼ねている。振動板12Vには加圧素子12Zが設けられている。加圧素子12Zとしては、圧電素子、静電アクチュエータ、ヒーター等が用いられる。加圧素子12Zには、加圧素子12Zを駆動する駆動回路(図示省略)が接続されている。サブタンク64内の液面は、ノズル面12Fよりも若干低くなるように調整される。液面をノズル面12Fよりも低くすることで、ノズル12N内に負圧が発生し、上方に凹んだ凹形のメニスカスが形成される。
【0023】
制御部2(図1参照)は、演算部と記憶部とを備える(図示省略)。演算部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。演算部は、記憶部に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。なお、制御部2は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0024】
本体ハウジング3の上部には、表示操作部19が設けられている(図1参照)。表示操作部19は、表示パネルと、表示パネルに積層されたタッチパネルと、キーパッドと、を備える(図示省略)。制御部2は、インクジェット記録装置1の操作メニューやステータス等を表す画面を表示パネルに表示させ、タッチパネル及びキーパッドで検知された操作に応じてインクジェット記録装置1の各部を制御する。
【0025】
インクジェット記録装置1の基本的な画像形成動作は、次のとおりである。表示操作部19や外部のコンピューター等からインクジェット記録装置1に画像形成ジョブが入力されると、給紙ローラー5が給紙カセット4から搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー18がシートSの斜行を補正する。レジストローラー18が所定のタイミングで搬送ユニット7にシートSを送り出すと、搬送ユニット7が搬送ベルト21にシートSを吸着してY方向に搬送する。制御部2がシートSの搬送と同期させてラスター形式の画像データを駆動回路に供給すると、駆動回路が画素に応じた吐出信号を加圧素子12Zに供給してノズル12Nからインクが吐出され、シートSに画像が形成される。
【0026】
[メンテナンス装置]
次に、メンテナンス装置30について説明する。図6は、メンテナンス装置30を示す斜視図である。図7は、キャップユニット70を右方にスライドさせた様子を示す斜視図である。図8は、ワイプユニット80とキャップユニット70を右方にスライドさせた様子を示す斜視図である。図9は、キャップ72を示す平面図である。図10は、図9のI-I断面を示す断面図である。図11は、図9のII-II断面を示す断面図である。図12は、洗浄液供給装置40を示す斜視図である。
【0027】
本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド12と、インクジェットヘッド12のノズル面12Fに装着されるキャップ72と、インクジェットヘッド12とキャップ72との少なくとも一方を昇降させる昇降機構11Lと、ノズル面12Fに洗浄液を供給する洗浄液供給装置40と、を備え、キャップ72は、基部72Bと、基部72Bの上面から上方に突出し、ノズル面12Fのノズル12Nが形成された領域12NAを包囲し、可撓性を有する壁部72Wと、基部72Bのうち壁部72Wの内側の領域に敷設された弾性材72Eと、を備える。具体的には、以下のとおりである。
【0028】
メンテナンス装置30は、ヘッドユニット11毎に、各ヘッドユニット11の左隣り(搬送方向Y下流側)に設けられている(図2、3参照)。メンテナンス装置30(図6乃至8参照)は、キャップユニット70と、ワイプユニット80と、ハウジング31と、を備える。キャップユニット70は、ノズル面12Fに装着されるキャップ72を備える。ワイプユニット80は、ノズル面12Fに残留したインクを除去するブレード82を備える。ハウジング31は、キャップユニット70とワイプユニット80を収容する。ハウジング31は、前後方向を長手方向とする直方体状に形成され、直方体の右側面に相当する部分が開口している。なお、各ヘッドユニット11の右隣り(搬送方向Y上流側)にメンテナンス装置30が設けられていてもよい。
【0029】
メンテナンス装置30は、キャップユニット70を左右方向にスライドさせるキャップスライド機構32と、ワイプユニット80を左右方向にスライドさせるワイプスライド機構33と、を備える。キャップスライド機構32、ワイプスライド機構33は、例えば、ボールねじ、ベルト駆動等である。
【0030】
[キャップユニット]
キャップユニット70(図7参照)は、フレーム71と、フレーム71の上方に設けられたキャップ72と、を備える。フレーム71は、前後方向を長手方向とする長方形に形成されている。フレーム71には、インクジェットヘッド12と同数のキャップ72がインクジェットヘッド12と同様に千鳥に配置されている。
【0031】
[キャップ]
キャップ72(図9乃至11参照)は、基部72Bと、壁部72Wと、弾性材72Eと、を備える。基部72Bは、前後方向を長手方向とする平板状に形成されている。基部72Bは、金属、樹脂等で形成されている。基部72Bの上面には、溝部72Gが設けられている。溝部72Gは、上方から見て前後方向を長手方向とする長方形状に形成されている。壁部72Wの下端部が溝部72Gに収容されている。換言すれば、壁部72Wは、基部72Bの上面から上方に突出している。壁部72Wは、ゴム等の可撓性を有する素材で形成されている。基部72Bの前後両端部には、基部72Bをフレーム71に締結するためのねじ(図示省略)が通される孔部72Hが設けられている。
【0032】
図10、11には、ノズル面12Fのノズル12Nが形成された領域12NA(図10、11参照)が示されている。壁部72Wは、前後方向及び左右方向において、ノズル12Nが形成された領域12NAの若干外側に位置している。換言すれば、壁部72Wは、ノズル12Nが形成された領域12NAを包囲するように設けられている。
【0033】
壁部72Wの内側には、弾性材72Eが設けられている。弾性材72Eの下面は、基部72Bの上面に接している。弾性材72Eの上面は、壁部72Wの上端部よりも低い位置に位置し、ノズル面12Fと平行である。弾性材72Eとしては、スポンジ、布、ゴム、ウレタン、パイル織物などが用いられる。弾性材72Eは、吸液性を有する素材でも、吸液性を有しない素材でもよいが、弾性材72Eの上面に洗浄液が保持されることが望ましいため、吸液性を有する素材を用いる場合には、洗浄液を透過しないフィルム等(図示省略)で少なくとも弾性材72Eの上面を覆うことが望ましい。
【0034】
[ワイプユニット]
ワイプユニット80(図8参照)は、フレーム81と、フレーム81の上方に設けられたキャリッジ83と、キャリッジ83から上方に突出したブレード82と、キャリッジ83を前後方向にスライドさせるキャリッジスライド機構34と、を備える。フレーム81は、前後方向を長手方向とする長方形に形成されている。キャリッジ83には、インクジェットヘッド12と同数のブレード82がインクジェットヘッド12と同様に千鳥に配置されている。キャリッジスライド機構34は、例えば、ボールねじ、ベルト駆動等である。
【0035】
[昇降機構]
インクジェット記録装置1は、ヘッドユニット11を昇降させる昇降機構11Lを備えている(図2参照)。昇降機構11Lは、例えば、ボールねじ、ベルト駆動等である。昇降機構11Lは、画像形成を行う場合の画像形成位置と、退避位置と、キャップ装着位置と、洗浄液浸透位置と、の間でヘッドユニット11を昇降させる。
【0036】
画像形成位置は、ヘッドユニット11の昇降範囲の下限位置であり、搬送ベルト21とノズル面12Fとの間隔が1mm程度となるようにヘッドユニット11が位置決めされる。退避位置は、ヘッドユニット11の昇降範囲の上限位置であり、搬送ベルト21とノズル面12Fとの間にキャップユニット70及びワイプユニット80を移動させることが可能な空間が形成される。キャップ装着位置は、キャップ72をノズル面12Fに装着する場合の位置であり、キャップ72の壁部72Wの上端部がノズル面12Fに押圧される。洗浄液装着位置は、ノズル面12Fに残留したインクに洗浄液を浸透させる場合の位置であり、キャップ装着位置よりも若干低く、キャップ72の弾性材72Eの上面、及び、壁部72Wの条端部がノズル面12Fに押圧される。
【0037】
[洗浄液供給装置]
洗浄液供給装置40(図12参照)は、前後方向を長手方向とする直方体状の支持体41を備える。直方体の上面に相当する部分は開口している。支持体41には、繰出部43、巻取部44、第1押圧部45、ガイド部46が設けられている。支持体41は、繰出部43等の下方および側方を囲う枠形状の部材である。
【0038】
[繰出部、洗浄液供給部材]
繰出部43は、支持体41の前側下部に設けられている。繰出部43は、左右方向を軸方向とする軸43Sを備える。軸43Sの左右両端部は、支持体41に支持されている。軸43Sには、モーター、減速ギア等を備える駆動部(図示省略)が設けられている。軸43Sには、洗浄液供給部材42が巻き付けられている。洗浄液供給部材42は、不織布、織布、多孔質の樹脂等、吸液性を有する素材で形成された帯状の部材である。
【0039】
[巻取部]
巻取部44は、支持体41の後側下部に設けられている。巻取部44は、左右方向を軸方向とする軸44Sを備える。軸44Sの左右両端部は、支持体41に支持されている。軸44Sには、モーター、減速ギア等を備える駆動部(図示省略)が設けられている。軸44Sには、繰出部43から繰り出された洗浄液供給部材42が巻き付けられている。
【0040】
[押圧部]
押圧部45は、支持体41の上部、且つ、巻取部44の前方上方に設けられている。押圧部45は、左右両端部を支持体41に支持された従動ローラーである。押圧部45は、左右方向を軸方向とする軸と、軸の周りにシリコーンゴム等を用いて形成された弾性層と、を備える。弾性層の上部は、支持体41から露出している。押圧部45は、例えば、圧縮コイルばね(図示省略)によって上方に付勢されることでノズル面12Fに押圧される。
【0041】
[ガイド部]
ガイド部46は、支持体41の上部、且つ、繰出部43の上方に設けられている。ガイド部46は、左右方向を軸方向とする従動ローラーである。ガイド部46は、軸と、軸の周りにシリコーンゴム等を用いて形成された弾性体の層と、を備える。
【0042】
[洗浄液供給部]
洗浄液供給部47は、例えば、従動ローラーであり、繰出部43の前方上方、且つ、ガイド部46の前方下方に設けられている。洗浄液供給部47は、中空構造を有し、放射方向に貫通した多数の微細な孔を備えている(図示省略)。洗浄液供給部47の内部には、洗浄液が充填されている。洗浄液供給部材42の繰り出しに伴って洗浄液供給部47が回転し、孔から滲み出た洗浄液が洗浄液供給部材42に染み込む。インクが水系インクの場合、洗浄液の主成分は水である。洗浄液には界面活性剤等が添加されていてもよい。
【0043】
[ガイドローラー]
ガイドローラー48は、巻取部44の上方、且つ、押圧部45の後方下方に設けられている。繰出部43から繰り出された洗浄液供給部材42は、順に、洗浄液供給部47、ガイド部46、押圧部45、ガイドローラー48を経由して巻取部44に巻き取られる。
【0044】
なお、上記の洗浄液供給装置40を用いてノズル面12Fに洗浄液を供給する場合、ヘッドユニット11の下方に洗浄液供給装置40が位置するようにヘッドユニット11と洗浄液供給装置40との少なくとも一方を移動させることが必要となるが、ヘッドユニット11又は洗浄液供給装置40の移動手段はいかなる構成であってもよい。また、上記の洗浄液供給装置40は一例に過ぎず、洗浄液供給装置40はいかなる構成であってもよい。
【0045】
次に、メンテナンス装置30の動作について説明する。図13乃至18は、メンテナンス装置30とヘッドユニット11の動作を示す断面図である。図19は、キャップ装着位置におけるキャップ72の様子を示す断面図である。図20は、洗浄液供給位置におけるキャップ72の様子を示す断面図である。以下、ヘッドユニット11が画像形成位置に位置する状態(図13参照)を初期状態として説明する。以下に示される動作は、制御部2が昇降機構11L、キャップスライド機構32、ワイプスライド機構33、キャリッジスライド機構34を制御することで実行される。
【0046】
最初に、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ヘッドユニット11を退避位置に上昇させる(図14参照)。次に、制御部2は、キャップスライド機構32を動作させて、キャップユニット70をヘッドユニット11の下方にスライドさせる(図15参照)。次に、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ノズル面12Fがキャップ72の壁部72Wを押圧する高さ(キャップ装着位置)までヘッドユニット11を下降させる(図16参照)。このとき、図19に示されるように、壁部72Wが押圧されることで壁部72Wの上端部がノズル面12Fに密着する。一方、弾性材72Eとノズル面12Fとの間には間隙が確保される。
【0047】
次に、制御部2は、インクジェットヘッド12を制御して、キャップ72にインクをパージさせる。パージされたインクは、基部72Bに設けられた排出口(図示省略)を通じて廃液タンク69に排出される。次に、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ヘッドユニット11を退避位置に上昇させる(図15参照)。次に、制御部2は、洗浄液供給装置40を動作させて、ノズル面12Fに洗浄液を供給する。
【0048】
次に、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ノズル面12Fがキャップ72の弾性材72Eを押圧する高さ(洗浄液供給位置)までヘッドユニット11を下降させ(図16参照)、所定時間が経過するまで待機する。このとき、図20に示されるように、ヘッドユニット11が図19と比べて若干低い位置に下降することで弾性材72Eが押圧される。ノズル面12Fに付着した洗浄液が弾性材72Eとノズル面12Fとに挟まれるため、ノズル面12Fに残留したインクへの洗浄液の浸透が促進される。
【0049】
洗浄液供給位置において所定時間が経過したならば、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ヘッドユニット11を退避位置に上昇させる(図15参照)。次に、制御部2は、ワイプスライド機構33を動作させて、ワイプユニット80をヘッドユニット11の下方にスライドさせる(図17参照)。次に、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ノズル面12Fがブレード82に接触する高さまでヘッドユニット11を下降させる(図18参照)。
【0050】
次に、制御部2は、キャリッジスライド機構34を動作させてブレード82をスライドさせる。ブレード82は、ノズル面12Fから洗浄液とインクを掻き取りながらスライドする。インクは洗浄液で希釈され、落下する。インクと洗浄液との混合物である廃液は、キャップ72に受け止められ、廃液タンク69に排出される。
【0051】
次に、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ヘッドユニット11を退避位置に上昇させる(図17参照)。次に、制御部2は、ワイプスライド機構33を動作させて、ワイプユニット80をハウジング31に収容する(図15参照)。次に、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ノズル面12Fが壁部72Wを押圧する高さまでヘッドユニット11を下降させる(図16参照)。この動作によって、インクの粘度上昇や乾燥が抑制される。
【0052】
画像形成を行う場合には、制御部2は、昇降機構11Lを動作させて、ヘッドユニット11を退避位置に上昇させる(図11参照)。次に、制御部2は、キャップスライド機構32を動作させて、キャップユニット70をハウジング31に収容し(図10参照)、昇降機構11Lを動作させて、ヘッドユニット11を画像形成位置に下降させる(図9参照)。
【0053】
以上説明した本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、インクジェットヘッド12と、インクジェットヘッド12のノズル面12Fに装着されるキャップ72と、インクジェットヘッド12とキャップ72との少なくとも一方を昇降させる昇降機構11Lと、ノズル面12Fに洗浄液を供給する洗浄液供給装置40と、を備え、キャップ72は、基部72Bと、基部72Bの上面から上方に突出し、ノズル面12Fのノズル12Nが形成された領域12NAを包囲し、可撓性を有する壁部72Wと、基部72Bのうち壁部72Wの内側の領域に敷設された弾性材72Eと、を備える。この構成によれば、昇降機構11Lを動作させてノズル面12Fがキャップ72の弾性材72Eを押圧する高さ(洗浄液供給位置)までヘッドユニット11を下降させることで弾性材72Eが押圧される。ノズル面12Fに付着した洗浄液が弾性材72Eとノズル面12Fとに挟まれるため、ノズル面12Fに残留したインクへの洗浄液の浸透が促進される。よって、本実施形態によれば、ノズル面12Fに残留したインクへの洗浄液の浸透を簡潔な構成で促進することができる。
【0054】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、弾性材72Eの上面は、壁部72Wの上端部よりも低い位置にある。この構成によれば、インクの粘度上昇や乾燥を抑制するためにキャップ72をノズル面12Fに装着する場合に、昇降機構11Lにより壁部72Wのみをノズル面12Fに押圧することで弾性材72Eとノズル面12Fとの間に間隙が設けられるため、洗浄液によるノズル12N内のインクの濃度低下を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、ノズル面12Fに残留したインクを除去するワイプユニット80と、洗浄液供給装置40と昇降機構11Lとワイプユニット80とを制御する制御部2と、を備え、制御部2は、洗浄液供給装置40によってノズル面12Fに洗浄液を供給した後、昇降機構11Lにより弾性材72Eを所定時間だけノズル面12Fに押圧し、その後、ワイプユニット80によってノズル面12Fからインクを除去する。この構成によれば、ノズル面12Fからインクを除去する前にインクに洗浄液を浸透させるから、インク除去性能を向上させることができる。
【0056】
上記実施形態は、以下のように変形されてもよい。
【0057】
図21は、上記実施形態の変形例を示す断面図である。本変形例に係る基部72Bは、壁部72Wの内側の領域に洗浄液を供給する供給路72Pを備えている。供給路72Pには、洗浄液タンクとポンプが接続されている(図示省略)。この構成によれば、簡潔な構成でノズル面12Fに洗浄液を供給することができる。また、インクをパージした場合に、キャップ72に吐出されたインクを供給路72Pを介して吸引し、廃液タンク69に排出するように構成されていてもよい。
【0058】
制御部2は、インクジェットヘッド12によるインクの吐出状況に応じて、弾性材72Eをノズル面12Fに押圧するか否かを決定してもよい。例えば、制御部2は、最後にインクを吐出してからの経過時間が所定時間に達した場合に弾性材72Eを押圧してもよい。あるいは、制御部2は、所定期間内のインクの総吐出量が所定量未満である場合に弾性材72Eを押圧してもよい。
【0059】
制御部2は、インクジェットヘッド12によるインクの吐出状況に応じて、弾性材72Eをノズル面12Fに押圧する時間の長さを決定してもよい。例えば、制御部2は、最後にインクを吐出してからの経過時間が長いほど、弾性材72Eを押圧する時間を長く設定してもよい。あるいは、制御部2は、所定期間内のインクの総吐出量が少ないほど、弾性材72Eを押圧する時間を長くしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 インクジェット記録装置
2 制御部
11L 昇降機構
12 インクジェットヘッド
12N ノズル
12F ノズル面
12NA ノズルが形成された領域
40 洗浄液供給装置
72 キャップ
72B 基部
72P 供給路
72W 壁部
72E 弾性材
80 ワイプユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21