(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015347
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20240125BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240125BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J11/08
C09J201/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208764
(22)【出願日】2023-12-11
(62)【分割の表示】P 2021537240の分割
【原出願日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019144815
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 航大
(72)【発明者】
【氏名】副島 和樹
(57)【要約】
【課題】熱履歴による発泡温度の低下が防止された粘着テープを提供すること。
【解決手段】本発明の粘着テープは、熱膨張性微小球を含み、該熱膨張性微小球が、シェルと、該シェル内に含まれる揮発性物質とから構成され、該シェルが、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上の樹脂から構成される。1つの実施形態においては、上記シェルを構成する樹脂が、カルボキシル基を有する構成単位を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性微小球を含む粘着剤層を備え、該粘着剤層の少なくとも片側に配置された基材と、該粘着剤層の片側に配置された弾性層とを備え、
該熱膨張性微小球が、シェルと、該シェル内に含まれる揮発性物質とから構成され、
該シェルが、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上の樹脂から構成され、
該揮発性物質が有機溶媒であり、該有機溶媒の沸点(bp)と該シェルを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)との差(Tg-bp)が、50℃~150℃であり、
該基材が樹脂シートを含み、
該樹脂シートを構成する樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系樹脂又はポリエーテルエーテルケトンである、
粘着テープ。
【請求項2】
前記シェルを構成する樹脂が、カルボキシル基を有する構成単位を含む、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記カルボキシル基を有する構成単位の含有割合が、前記樹脂100重量部に対して、5重量部~97重量部である、請求項2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
25℃の環境温度下、前記粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の初期粘着力aが、0.5N/20mm~20N/20mmである、請求項1から3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
140℃まで加熱した後25℃にまで冷却した前記粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の粘着力bが、25℃の環境温度下で前記粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の初期粘着力aに対して、50%以上である、請求項1から4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
140℃まで加熱した後25℃にまで冷却するというサイクルを2回行った後の本発明の粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の粘着力cが、25℃の環境温度下で前記粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の初期粘着力aに対して、50%以上である、請求項1から5のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項7】
23℃における前記粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率が、0.1MPa~500MPaである、請求項1から6のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項8】
別の粘着剤層をさらに備え、
前記基材が、前記粘着剤層と該別の粘着剤層との間に配置される、
請求項1に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。より詳細には、熱刺激に応答して、易剥離性を発現し得る粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等を製造する工程において、被加工品を仮固定する目的で用いられる粘着テープとして、仮固定時には粘着性を発現し、固定を要さない場面では剥離性を発現するような易剥離性の粘着テープが知られている。このような粘着テープのひとつとして、粘着剤層中に発泡剤に代表される熱膨張性微小球を含有して構成される粘着テープが検討されている(例えば、特許文献1)。この粘着テープは、常温下に代表される比較的低い温度では所望の粘着力を発現する一方、所定温度(発泡温度)以上に加熱することにより、発泡剤が膨張し、粘着剤層表面に凹凸が発生して、粘着力が低下する。このような粘着テープにおいては、重力の作用のみで被着体を剥離することも可能となる。
【0003】
一方、近年、電子部品の製造工程および使用環境が多様化しており、電子部品は、従来よりも高温な環境下にさらされることが想定され、そのような環境下でも所望の性能を発揮することが求められている。そのため、電子部品を製造する際には、冷熱衝撃試験等の高温条件と低温条件とをサイクルさせて行う試験により信頼性を評価することがある。
【0004】
冷熱衝撃試験においても、被試験体の仮固定用に、発泡剤を含有して構成される粘着テープが用いられ得る。このようにして用いられる粘着テープには、冷熱衝撃試験の高温条件以上の温度で発泡し得る発泡剤が用いられ、冷熱衝撃試験時には剥離性を示さず、試験後の加熱により剥離性を示すという特性が求められる。しかしながら、従来の発泡剤は、発泡温度以下の熱履歴によって発泡温度が低下し、冷熱衝撃試験中に粘着テープの粘着力を不要に低下させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、熱履歴による発泡温度の低下が防止された粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粘着テープは、熱膨張性微小球を含み、該熱膨張性微小球が、シェルと、該シェル内に含まれる揮発性物質とから構成され、該シェルが、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上の樹脂から構成される。
1つの実施形態においては、上記シェルを構成する樹脂が、カルボキシル基を有する構成単位を含む。
1つの実施形態においては、上記カルボキシル基を有する構成単位の含有割合が、上記樹脂100重量部に対して、5重量部~97重量部である。
1つの実施形態においては、25℃の環境温度下、上記粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の初期粘着力aが、0.5N/20mm~20N/20mmである。
1つの実施形態においては、140℃まで加熱した後25℃にまで冷却した上記粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の粘着力bが、25℃の環境温度下で上記粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の初期粘着力aに対して、50%以上である。
1つの実施形態においては、140℃まで加熱した後25℃にまで冷却するというサイクルを2回行った後の本発明の粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の粘着力cが、25℃の環境温度下で上記粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の初期粘着力aに対して、50%以上である。
1つの実施形態においては、上記揮発性物質が有機溶媒であり、該有機溶媒の沸点(bp)と上記シェルを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)との差(Tg-bp)が、0℃以上である。
1つの実施形態においては、上記粘着テープは、基材をさらに備える。
1つの実施形態においては、上記粘着テープが、別の粘着剤層をさらに備え、上記基材が、上記粘着剤層と該別の粘着剤層との間に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱履歴による発泡温度の低下が防止された粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態による粘着テープの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.粘着テープの全体構成
図1(a)は、本発明の1つの実施形態による粘着テープの概略断面図である。代表的には、粘着テープ100は、粘着剤層10を備える。本発明の粘着テープは、粘着剤層10のみから構成されていてもよく、該粘着剤層の他に任意の適切な層をさらに備えていてもよい。
【0011】
図1(b)は、本発明の別の実施形態による粘着テープの概略断面図である。粘着テープ200は、粘着剤層10と粘着剤層10の少なくとも片側に配置された基材20とを備える。
図1(c)は、本発明のさらに別の実施形態による粘着テープの概略断面図である。粘着テープ300は、粘着剤層10と、粘着剤層10の少なくとも片側に配置された別の粘着剤層30とを備える。図示例のように粘着剤層10と別の粘着剤層30との間に基材20を配置してもよく、図示していないが、基材を省略して、粘着剤層と別の粘着剤層とから粘着テープを構成してもよい。また、図示していないが、上記粘着テープは、粘着剤層以外の層として、上記粘着テープに弾性を付与しうる弾性層(後述E項)、粘着剤層上に剥離可能に配置されたセパレータ(後述F項)等をさらに備え得る。
【0012】
上記粘着テープは、熱膨張性微小球を含む。1つの実施形態においては、上記粘着剤層に熱膨張性微小球が含まれる。該熱膨張性微小球は所定温度で膨張し得る。このような熱膨張性微小球を含む粘着剤層は、所定温度以上に加熱することよって熱膨張性微小球が膨張し、粘着面(すなわち粘着剤層表面)に凹凸が生じて、粘着力が低下または消失する。本発明の粘着テープを、例えば、電子部品(例えば、セラミックコンデンサ)の試験時、加工時等において、被試験体または被加工物の仮固定用シートとして用いた場合、固定が要される場面においては必要な粘着性が発現され、その後、粘着テープを剥離する際には、加熱により粘着力が低下または消失して、良好な剥離性が発現される。
【0013】
25℃の環境温度下、本発明の粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、厚さ25μm)に貼着した際の初期粘着力aは、好ましくは0.5N/20mm~20N/20mmであり、より好ましくは0.5N/20mm~18N/20mmであり、さらに好ましくは1N/20mm~12N/20mmである。このような範囲であれば、例えば、電子部品の製造に用いられる仮固定用シートとして有用な粘着テープを得ることができる。本明細書において、初期粘着力とは、50℃以上の熱履歴を経ていない状態の粘着力を意味する。また、粘着力とは、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力をいう。
【0014】
140℃まで加熱した後25℃にまで冷却した本発明の粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、厚さ25μm)に貼着した際の粘着力bは、0.4N/20mm~20N/20mmであり、より好ましくは0.4N/20mm~17N/20mmであり、さらに好ましくは0.8N/20mm~16N/20mmであり、特に好ましくは0.8N/20mm~14N/20mmであり、最も好ましくは0.8N/20mm~12N/20mmである。
【0015】
140℃まで加熱した後25℃にまで冷却した本発明の粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、厚さ25μm)に貼着した際の粘着力bは、初期粘着力aに対して、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0016】
140℃まで加熱した後25℃にまで冷却するというサイクルを2回行った後の本発明の粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、厚さ25μm)に貼着した際の粘着力cは、0.4N/20mm~20N/20mmであり、より好ましくは0.4N/20mm~17N/20mmであり、さらに好ましくは0.8N/20mm~16N/20mmであり、特に好ましくは0.8N/20mm~14N/20mmであり、最も好ましくは0.8N/20mm~12N/20mmである。
【0017】
140℃まで加熱した後25℃にまで冷却するというサイクルを2回行った後の本発明の粘着テープの粘着面をポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、厚さ25μm)に貼着した際の粘着力cは、初期粘着力aに対して、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明の粘着テープの厚さは、好ましくは30μm~500μmであり、より好ましくは40μm~300μmである。
【0019】
B.粘着剤層
上記のとおり、1つの実施形態において、上記粘着剤層は、熱膨張性微小球を含む。実用的には、粘着剤層は、粘着剤をさらに含む。
【0020】
B-1.熱膨張性微小球
熱膨張性微小球は、シェル(殻)と、当該シュル内に含まれる揮発性物質(代表的には、有機溶媒)とから構成される。本発明において、上記シェルは、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上の樹脂から構成される。本発明においては、このようなシェルを含む熱膨張性微小球を用いることにより、当該熱膨張性微小球の発泡温度が変動し難い粘着テープを得ることができる。より詳細には、従来の発泡剤は、発泡温度以下で加熱された場合に、この熱履歴に起因して発泡温度が低下する傾向にあるが、本発明においては、上記シェルを含む熱膨張性微小球を用いることにより、熱履歴による発泡温度の低下が防止される。
【0021】
上記シェルを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは125℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、さらに好ましくは135℃以上である。このような範囲であれば、上記本発明の効果はより顕著となる。シェルを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)の上限は、例えば、260℃である。上記ガラス転移温度は、Foxの計算式により求められる。Foxの計算式とは、下記に示すように、共重合体のガラス転移温度Tg(℃)と、共重合体を構成する単量体(モノマー)のそれぞれを単独重合した単重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度Tgi(℃)との関係式である。なお、以下のFoxの式において、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wiは単量体iの重量分率、Tgi(℃)は単量体iから形成される単重合体のガラス転移温度を示す。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
単量体から形成される単重合体のガラス転移温度としては、メタクリル酸単重合体:228℃、アクリロニトリル単重合体:97℃、メチルメタクリレート単重合体:102℃、メタクリロイルニトリル単重合体:120℃、塩化ビニリデン単重合体:75℃、イソボルニルアクリレート単重合体:97℃である。また、これら以外の単重合体のガラス転移温度としては、「Polymer Handbook」(第4版、John Wiley & Sons,Inc、1999年)に記載された値を使用することができる。なお、この文献中、複数のTgの値が記載されている場合は、「conventional」の値を採用する。
【0022】
上記シェルを形成する樹脂としては、例えば、ラジカル重合可能な単量体由来の構成単位を有する樹脂が用いられる。該単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボキシ基含有単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアミド単量体等が挙げられる。これらの単量体から構成される重合体は、単重合体であってもよく、共重合体であってもよい。
【0023】
1つの実施形態においては、上記シェルを構成する樹脂は、カルボキシル基を有する構成単位を含む。カルボキシル基を有する樹脂によりシェルを構成すれば、カルボキシル基同士の相互作用により、熱履歴を受けても分子の状態が維持でき、その結果、熱履歴による発泡温度の低下防止効果が顕著となる。カルボキシル基を有する構成単位は、例えば、上記カルボキシ基含有単量体由来の構成単位であり得る。1つの実施形態においては、上記シェルを構成する樹脂は、カルボキシル基を有する構成単位と、イソボルニルアクリレート由来の構成単位、メタクリロニトリル由来の構成単位、アクリロニトリル由来の構成単位、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位および塩化ビニリデン由来の構成単位からなる群から選択される少なくとも一種とを含む。好ましくは、上記シェルを構成する樹脂は、カルボキシル基を有する構成単位と、メタクリロニトリルおよび/またはアクリロニトリル由来の構成単位とを含む。
【0024】
上記シェルを構成する樹脂において、カルボキシル基を有する構成単位の含有割合は、樹脂100重量部に対して、好ましくは5重量部~97重量部であり、より好ましくは5重量部~90重量部であり、さらに好ましくは5重量部~85重量部であり、特に好ましくは5重量部~80重量部であり、最も好ましくは10重量部~75重量部である。このような範囲であれば、熱履歴による発泡温度の低下防止効果が有効に得られ得、かつ、溶媒耐性に優れるシェルを形成することができる。
【0025】
上記シェルを形成する樹脂は、架橋体であってもよい。架橋により、重合体の排除自由体積を調整することでき、それにより、内包された揮発性物質の拡散性、シェルの膨張性等を制御することができる。該架橋体は、分子内に2以上の重合性二重結合を有する単量体由来の構成単位をさらに含み得る。1つの実施形態においては、上記のラジカル重合可能な単量体と、分子内に2以上の重合性二重結合を有する単量体とが組み合わせて用いられる。分子内に2以上の重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0026】
上記シェルの厚みは、好ましくは1μm~15μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは1μm~5μmである。
【0027】
上記シェル内に含まれる揮発性物質は、代表的には有機溶媒である。該有機溶媒としては、例えば、炭素数3から8の直鎖状の脂肪族炭化水素およびそのフルオロ化物、炭素数3から8の分岐状の脂肪族炭化水素およびそのフルオロ化物、炭素数3から8の直鎖状の脂環族炭化水素およびそのフルオロ化物、炭素数が2から8の炭化水素基を有するエーテル化合物、または該炭化水素基の水素原子の1部が弗素原子によって置換された化合物等が挙げられる。1つの実施形態においては、有機溶媒として、プロパン、シクロプロパン、ブタン、シクロブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジメチルヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン、イソオクタン、メチルヘプタン類、トリメチルペンタン類等の水素原子および炭素原子のみから構成される炭化水素類;C3F7OCH3、C4F9OCH3、C4F9OC2H5などのハイドロフルオロエーテル類等が用いられる。こられの有機溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記有機溶媒は、シェルを形成する樹脂および/または粘着剤との親和性が低く、シェルおよび/または粘着剤を溶解し難く、熱性質等の物性を変化させにくいという利点がある。また、水素原子および炭素原子のみから構成される炭化水素類は、工業的利用の観点で好ましい。
【0028】
1つの実施形態においては、水素原子および炭素原子のみから構成される炭化水素類として、分岐状の炭化水素類(例えば、イソブタン、イソペンタン等)が用いられる。分岐状の炭化水素類は、帯電しがたく、この溶媒を用いれば、帯電による発火等の事故を防ぐことができる。
【0029】
上記有機溶媒の沸点は、好ましくは-50℃~100℃であり、より好ましくは-20℃~100℃である。このような範囲であれば、破壊することなくシェルが良好に膨張し得る熱膨張性微小球を得ることができる。なお、有機溶剤の沸点が低すぎる場合、熱膨張微小球製造時の揮発抑制のための操作が煩雑となるおそれがある。
【0030】
上記有機溶媒の沸点(bp)と、上記シェルを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)との差(Tg-bp)は、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは0℃~200℃であり、さらに好ましくは50℃~150℃である。シェルのガラス転移温度よりも高い沸点の有機溶媒を用いると、有機溶媒を加熱した際に生じる圧力でシェルが破壊されたり、さらには、粘着剤が飛散したりするなど、本願発明に期待する機能や効果を阻害するおそれがある。なお、2種類以上の有機溶媒(混合溶媒)が用いられる場合、「有機溶媒の沸点(bp)」とは、(各有機溶媒の沸点の和)/(有機溶媒の種類数)で算出される値である。
【0031】
上記有機溶媒の含有割合は、熱膨張性微小球の加熱前重量に対して、好ましくは5重量%~35重量%であり、より好ましくは10重量%~30重量%である。このような範囲であれば、熱膨張性微小球が、粘着剤層中において、高い均一性で分散している粘着テープを得ることができる。含有割合が5重量%未満の場合、密度が低いなどの理由で粘着剤層製造中に、熱膨張微小球が粘着剤層表面に偏在しやすくなり、加熱後には過剰な大きさの凸凹が粘着剤層表面に生じるおそれがある。含有割合が35重量%を超える場合、密度が高く粘着剤層内で沈降して、加熱しても、粘着剤層表面に十分な凹凸ができず、所望の剥離性が得られないおそれがあり、また、糊残りが発生するおそれもある。
【0032】
25℃の環境温度下、上記熱膨張性微小球を発泡させる前における、該熱膨張性微小球の平均粒子径(数基準)は、好ましくは5μm~30μmであり、より好ましくは5μm~28μmであり、さらに好ましくは10μm~25μmである。このような範囲であれば、粘着剤層中における分散性が高い熱膨張性微小球を得ることができる。分散性が高い状態で熱膨張性微小球を含む粘着剤層は、加熱により生じる凹凸の均一性が高く、優れた剥離性を発現し得る。上記熱膨張性微小球の平均粒子径は、例えば、該熱膨張性微小球を重合する際の条件により制御することができる(詳細は後述)。平均粒子径は、レーザー散乱法における粒度分布測定法により測定することができる。より具体的には、平均粒子径は、用いる熱膨張性微小球を所定の溶媒(例えば、水)に分散させた後、粒度分布測定装置(例えば、島津製作所製の商品名「SALD-2000J」)を用いて測定することができる。
【0033】
1つの実施形態において、熱膨張性微小球の含有割合は、断面から測定される熱膨張性微小球の面積割合で表される。所定断面における粘着剤層の断面積をAとし、該断面における熱膨張性微小球の断面積をBとした場合、熱膨張性微小球の断面積Bの割合は、粘着剤層の断面積Aに対して、好ましくは3%~75%であり、より好ましくは3.5%~70%である。断面積Bの割合が3%未満の場合、加熱して熱膨張微小球を膨張させても、粘着剤表面に生じる凹凸が不十分となり、所望の剥離性が得られないおそれがある。一方、断面積Bの割合が75%を超える場合、粘着剤層の体積変化が大きくなり過ぎ、基材と粘着剤層間での浮き・剥がれが生じるおそれがあり、また、粘着剤層中の粘着剤含有割が低く、所望の粘着力が得られないおそれがある。なお、熱膨張性微小球の断面積Bの割合は、例えば、粘着剤層の断面を電子顕微鏡(例えば、日立テクノロジーズ社製、商品名「S-3400N低真空走査電子顕微鏡」)により観察して得られた画像を、適切に処理して求めることができる。例えば、該画像を紙出力して、粘着剤層部分(すなわち、熱膨張性微小球を含む粘着剤層全体)の紙重量aと、熱膨張性微小球部分のみを切り出した紙の重量bとから、b/a×100の式により求めることができる。
【0034】
熱膨張性微小球の含有割合は、粘着剤層100重量部に対して、好ましくは20重量部~80重量部であり、より好ましくは20重量部~60重量部であり、さらに好ましくは20重量部~50重量部ある。このような範囲であれば、上記のような熱膨張性微小球の断面積Bの割合を実現することが可能となる。また、熱膨張性微小球の含有割合を上記範囲としつつ、粘着剤層中で熱膨張微小球が偏在しないようするため、塗布工程の直前まで粘着剤層形成用組成物を撹拌するなどの操作を行うことにより、熱膨張性微小球の断面積Bを好ましい範囲とすることができる。熱膨張性微小球の含有割合は、下記式により求められる。熱膨張性微小球の重量は、粘着剤層から抜き取られた熱膨張性微小球の重量を測定して求められる。
熱膨張性微小球の含有割合(重量%)=熱膨張性微小球の重量/粘着剤層の重量×100
【0035】
上記熱膨張性微小球は、任意の適切な方法により、製造され得る。1つの実施形態においては、上記熱膨張性微小球は、懸濁重合法により得られる。懸濁重合は、通常、分散剤を含有する水系分散媒体中に単量体(シェル形成材料)および有機溶媒を分散させ有機溶媒の存在下に単量体を重合させて行う。また、分散を安定させる分散安定剤を利用してもよい。水系分散媒体中における分散安定剤としては、例えばシリカ、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機微粒子等が挙げられる。また、分散安定補助剤として、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、各種乳化剤等を用いてもよい。
【0036】
上記懸濁重合の重合条件、混合成分の種類・添加量等により、粒径、有機溶媒の含有量等の熱膨張性微小球の特性を制御することができる。例えば、分散剤の添加量を少なくする、重合時の攪拌速度を遅くする等の操作により、大粒径の熱膨張性微小球を得ることができる。また、単量体の配合量を多くしたり、重合時の攪拌速度を遅くすれば、シェルの厚みが厚い熱膨張性微小球を得ることができる。
【0037】
B-2.粘着剤
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、活性エネルギー線硬化型粘着剤等が挙げられる。中でも好ましくは、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤またはシリコーン系粘着剤であり、より好ましくはアクリル系粘着剤である。
【0038】
上記粘着剤のゲル分率は、好ましくは20重量%~100重量%であり、より好ましくは30重量%~99重量%であり、さらに好ましくは50重量%~99重量%である。該ゲル分率が20重量%未満の場合、熱膨張微小球が膨張して粘着剤層表面に凸凹が生じても粘着剤層が流動して凸凹が短時間に消失するおそれがある。一方、ゲル分率が99重量%を超える場合、熱膨張性微小球の加熱膨張を阻害して十分な凸凹が生じなかったり、凸凹を生じる場合でも、熱膨張微小球が爆発して、熱膨張微小球のシェルや周囲の粘着剤層を飛散させるなどの現象が起こり、糊残り性が悪化するおそれがある。粘着剤のゲル分率は、粘着剤を構成するベースポリマーの組成、粘着剤に添加する架橋剤の種類や含有量、粘着付与剤の種類や含有量などを調節することによりコントロールすることができる。ゲル分率の測定方法は、以下のとおりである。
粘着剤約0.1gをサンプリングして精秤し(試料の重量)、該サンプルをメッシュ状シート(商品名「NTF-1122」、日東電工株式会社製)で包んだ後、約50mlのトルエン中に室温で1週間浸漬させた。その後、溶剤不溶分(メッシュ状シートの内容物)をトルエンから取り出し、70℃で約2時間乾燥させ、乾燥後の溶剤不溶分を秤量し(浸漬・乾燥後の重量)、下記式(a)よりゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率(重量%)=[(浸漬・乾燥後の重量)/(試料の重量)]×100 (a)
【0039】
上記粘着剤に含まれるベースポリマーは、OH基またはCOOH基を有することが好ましい。このようなベースポリマーを用いれば、架橋剤を用いて上記ゲル分率を調整することが可能となるからである。また、架橋剤と反応しないOH基またはCOOH基の量により、水素結合等の分子間力によるベースポリマーの凝集性を調整することができる。これにより、熱膨張性微小球の膨張により生じる粘着剤表面の凹凸形状、および、熱膨張性微小球に含まれる有機溶媒のシェル透過性を制御することができる。
【0040】
上記ベースポリマーの酸価は、好ましくは0~100であり、より好ましくは0~75であり、さらに好ましくは0~50である。なお粘着剤層中ポリマーの酸価は、粘着剤層中の溶媒可溶分を抽出して測定することができる。具体的には、以下の方法で溶媒可溶分を抽出することができる。
(i)粘着剤層を、溶媒に投入し、粘着剤層中の溶媒可溶分を上記溶媒に溶解させる溶液試料を調製する。
溶媒としては、極性等を考慮して、クロロホルム(CHCl3)、塩化メチレン(CH2Cl2)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、トルエンおよび水等から選択されるいずれか1種の溶媒または2種以上を任意の比率で含む混合溶媒を用いることができる。
典型的には、粘着剤層0.2g程度に溶媒30mL程度を加え、室温から用いる溶媒の沸点程度までの温度域で30分~12時間程度撹拌する。必要に応じて、例えば分析対象成分の抽出効率が低い場合等には、上記溶液を分取した後の試料に、分取した溶液と概ね同量の溶媒を新たに加えて撹拌し、その溶液を分取する操作を1回または複数回繰り返して溶液試料を調製してもよい。
(ii)上記溶液試料から溶媒を、蒸発等の方法により、溶媒を除去し、溶媒可溶性ポリマーを取り出すことができる。
なお溶媒可溶性ポリマーには未反応架橋剤の低分子量分など測定対象とならない溶媒可溶分が含まれることがある。その際には、上記溶液試料をポリマー成分のみ不溶な溶媒に投入する方法(再沈殿法)や、上記溶液試料を用いたゲル濾過クロマトグラフィーで分子量分画(分取液体クロマトグラフィ法)するなどして測定対象のみからなる溶媒可溶性ポリマーを調整する。
【0041】
(アクリル系粘着剤)
上記アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。なかでも、炭素数が4~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。
【0042】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマーに対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクルロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(シリコーン系粘着剤)
上記シリコーン系粘着剤としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。上記シリコーン系粘着剤として、例えば、オルガノポリシロキサンを含むシリコーンゴムまたはシリコーンレジン等をベースポリマーとするシリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。シリコーン系粘着剤を構成するベースポリマーとして、上記シリコーンゴムまたはシリコーンレジンを、架橋して得られたベースポリマーを用いてもよい。なお、本明細書において、「シリコーンゴム」とは、主成分としてのジオルガノシロキサン(D単位)が直鎖状に連なった重合体(例えば、粘度1000Pa・s)を意味し、「シリコーンレジン」とは、主成分としてのトリオルガノシルヘミオキサン(M単位)とシリケート(Q単位)から構成される重合体を意味する(「粘着剤(フィルム・テープ)の材料設計と機能性付与」、技術情報協会、2009年9月30日発刊)。
【0044】
上記シリコーンゴムとしては、例えば、ジメチルシロキサンを構成単位として含むオルガノポリシロキサン等が挙げられる。オルガノポリシロキサンには、必要に応じて、官能基(例えば、ビニル基)が導入されていてもよい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、好ましくは100,000~1000,000であり、より好ましくは150,000~500,000である。重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)により測定することができる。
【0045】
上記シリコーンレジンとしては、例えば、R3SiO1/2構成単位、SiO2構成単位、RSiO3/2構成単位およびR2SiO構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含むオルガノポリシロキサン挙げられる(Rは、一価炭化水素基または水酸基である)。
【0046】
上記シリコーンゴムとシリコーンレジンとは併用され得る。シリコーン粘着剤中のシリコーンゴムとシリコーンレジンの重量比(ゴム:レジン)は、好ましくは100:0~100:220であり、より好ましくは100:0~100:180であり、さらに好ましくは100:10~100:100である。シリコーンゴムとシリコーンレジンとは、単なる混合物としてシリコーン系粘着剤中に含まれていてもよく、シリコーンゴムとシリコーンレジンとが部分縮合した形態でシリコーン系粘着剤中に含まれていてもよい。ゴム:レジン比は、シリコーン粘着剤の組成を29Si-NMRにより測定して得られたQ単位(レジン)とD単位(ゴム)との比からも求めることができる。
【0047】
(ゴム系粘着剤)
上記ゴム系粘着剤としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。上記ゴム系粘着剤として、例えば、天然ゴム;ポリイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、またはこれらの変性体等の合成ゴム;等をベースポリマーとするゴム系粘着剤が好ましく用いられる。
【0048】
(添加剤)
上記粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0049】
上記粘着付与剤としては、任意の適切な粘着付与剤が用いられる。粘着付与剤としては、例えば、粘着付与樹脂が用いられる。粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、未変性ロジン、変性ロジン、ロジンフェノール系樹脂、ロジンエステル系樹脂など)、テルペン系粘着付与樹脂(例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂)、炭化水素系粘着付与樹脂(例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂(例えば、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂など)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂など)、フェノール系粘着付与樹脂(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂、レゾール、ノボラックなど)、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる。
【0050】
上記粘着付与剤の添加量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部~100重量部であり、より好ましくは10重量部~50重量部である。
【0051】
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なかでも好ましくは、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤である。
【0052】
上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロン ジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力、粘着剤層の弾性等に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~10重量部である。
【0053】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1600」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1500NP」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト40E」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト70P」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールE-400」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールP-200」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-611」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-314」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-512」)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力、粘着剤層の弾性等に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.03重量部~5重量部である。
【0054】
上記可塑剤としては、任意の適切な可塑剤が用いられ得る。可塑剤の具体例としては、例えば、トリメット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤等が挙げられる。なかでも好ましくは、トリメリット酸エステルエステル系可塑剤(例えば、トリメリット酸トリ(n-オクチル)、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)等)またはピロメリット酸エステル系可塑剤(例えば、ピロメリット酸テトラ(n-オクチル)、ピロメリット酸テトラ(2-エチルヘキシル)等)である。可塑剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。可塑剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部~20重量部であり、より好ましくは1重量部~5重量部である。
【0055】
B-3.粘着剤層の特性
23℃における上記粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは0.1MPa~500MPaであり、より好ましくは0.5MPa~400MPaである。ナノインデンテーション法による弾性率とは、粘着剤層表面から3μm程度内側で、かつ、熱膨張微小球の存在しない箇所(熱膨張微小球のシェル表面から1μm以上離れた箇所)を測定対象として、圧子を粘着剤層に押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さとを負荷時、除荷時にわたり連続的に測定し、得られた負荷荷重-押し込み深さ曲線から求められる。本明細書において、ナノインデンテーション法による弾性率とは、測定条件を負荷・除荷速度:1000nm/s、押し込み深さ:800nmとして上記のように測定した弾性率をいう。
【0056】
25℃の環境温度下、上記熱膨張性微小球を発泡させる前における、上記粘着剤層の算術平均高さSaは、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは400nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。このような範囲であれば、被着体の貼着面に生じる凹凸を低減し得る粘着テープを得ることができる。算術平均高さSaは、JIS B 0601:1994に準じ、レーザー顕微鏡(オリンパス製LEXT OLS-4000,画像倍率432倍、測定面積640×640μm(サンプリングレート0.625μm)を用いて測定することができる。
【0057】
上記粘着剤層の厚さは、好ましくは5μm~300μmであり、より好ましくは5μm~250μmであり、さらに好ましくは5μm~100μmであり、特に好ましくは5μm~60μmである。
【0058】
B-4.その他の成分
上記粘着剤層は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なその他の成分をさらに含み得る。その他の成分としては、例えば、ビーズが挙げられる。該ビーズとしては、例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ等が挙げられる。粘着剤層にこのようなビーズを添加すれば、粘着剤層の弾性率を向上させることができ、より精度良く被加工物を加工することができる粘着テープが得られ得る。ビーズの平均粒子径は、例えば0.01μm~50μmである。ビーズの添加量は、粘着剤層100重量部に対して、例えば10重量部~200重量部、好ましくは20重量部~100重量部である。
【0059】
C.基材
上記基材としては、例えば、樹脂シート、不織布、紙、金属箔、織布、ゴムシート、発泡シート、これらの積層体(特に、樹脂シートを含む積層体)等が挙げられる。樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。不織布としては、マニラ麻を含む不織布等の耐熱性を有する天然繊維による不織布;ポリプロピレン樹脂不織布、ポリエチレン樹脂不織布、エステル系樹脂不織布等の合成樹脂不織布等が挙げられる。金属箔としては、銅箔、ステンレス箔、アルミニウム箔等が挙げられる。紙としては、和紙、クラフト紙等が挙げられる。
【0060】
上記基材の厚さは、所望とする強度または柔軟性、ならびに使用目的等に応じて、任意の適切な厚さに設定され得る。基材の厚さは、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは1μm~1000μmであり、さらに好ましくは1μm~500μmであり、特に好ましくは3μm~300μmであり、最も好ましくは5μm~250μmである。
【0061】
上記基材は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、下塗り剤によるコーティング処理等が挙げられる。
【0062】
上記有機コーティング材料としては、例えば、プラスチックハードコート材料II(CMC出版、(2004))に記載される材料が挙げられる。好ましくはウレタン系ポリマー、より好ましくはポリアクリルウレタン、ポリエステルウレタンまたはこれらの前駆体が用いられる。基材への塗工・塗布が簡便であり、かつ、工業的に多種のものが選択でき安価に入手できるからである。該ウレタン系ポリマーは、例えば、イソシアナートモノマーとアルコール性水酸基含有モノマー(例えば、水酸基含有アクリル化合物又は水酸基含有エステル化合物)との反応混合物からなるポリマーである。有機コーティング材料は、任意の添加剤として、ポリアミンなどの鎖延長剤、老化防止剤、酸化安定剤等を含んでいてもよい。有機コーティング層の厚さは特に限定されないが、例えば、0.1μm~10μm程度が適しており、0.1μm~5μm程度が好ましく、0.5μm~5μm程度がより好ましい。
【0063】
D.別の粘着剤層
上記別の粘着剤層としては、任意の適切な粘着剤層が形成され得る。別の粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤等が挙げられる。粘着剤には、例えば、可塑剤、充填剤、界面活性剤、老化防止剤、粘着性付与剤などの公知乃至慣用の添加剤が配合されていてもよい。また、別の粘着剤層は、上記B項で説明したような構成であってもよい。
【0064】
別の粘着剤層の厚さは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは1μm~300μmであり、さらに好ましくは5μm~100μmである。
【0065】
E.弾性層
本発明の粘着テープは、弾性層をさらに備えていてもよい。弾性層は、粘着剤層の片面に配置され得る。粘着テープが基材を備える場合、弾性層は、粘着剤層と基材との間に配置され得る。弾性層を備えることにより、被着体に対する追従性が向上する。また、弾性層を備える粘着テープは、剥離時に加熱した際には、粘着剤層の面方向の変形(膨張)が拘束され、厚み方向の変形が優先される。その結果、剥離性が向上する。
【0066】
上記弾性層はベースポリマーを含み、該ベースポリマーとしては、上記粘着剤層を構成するベースポリマーとして例示したポリマーが用いられ得る。1つの実施形態においては、弾性層は、上記弾性層は、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂等を含んでいてもよい。該合成ゴムおよび合成樹脂としては、ニトリル系、ジエン系、アクリル系の合成ゴム;ポリオレフィン系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリウレタン;ポリブタジエン;軟質ポリ塩化ビニル等が挙げられる。上記弾性層を構成するベースポリマーは、上記粘着剤層を形成するベースポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよい。上記弾性層は、上記ベースポリマーから形成される発泡フィルムであってもよい。該発泡フィルムは、任意の適切な方法により得ることができる。なお、弾性層と粘着剤層とは、ベースポリマーの相違および/または発泡剤の有無(弾性層は発泡剤を含まない)で区別することができる。より詳細には、弾性層と粘着剤層とが異なるベースポリマーから形成されている場合など、断面観察により弾性層と粘着剤層との界面が識別できる場合には、弾性層と粘着剤層との境界は該界面により規定される。また、断面観察により弾性層と粘着剤層との界面が識別できない場合には、断面観察により発泡剤が観察される領域が、粘着剤層である。
【0067】
上記弾性層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、粘着付与樹脂、可塑剤、柔軟剤、充填剤、老化防止剤等が挙げられる。ベースポリマーとして、ポリ塩化ビニル等の硬質樹脂を用いる場合、可塑剤および/また柔軟剤を併用して、所望の弾性を有する弾性層を形成することが好ましい。
【0068】
上記弾性層の厚さは、好ましくは3μm~200μmであり、より好ましくは5μm~100μmである。このような範囲であれば、弾性層の上記機能を十分に発揮させることができる。
【0069】
上記弾性層の25℃における引っ張り弾性率は、好ましくは0.2MPa~500MPaであり、より好ましくは0.3MPa~500MPaであり、さらに好ましくは0.5MPa~500MPaである。このような範囲であれば、弾性層の上記機能を十分に発揮させることができる。なお、引っ張り弾性率は、JIS K 7161:2008に準じて測定することができる。
【0070】
F.セパレータ
本発明の粘着テープは、必要に応じて、セパレータをさらに備え得る。該セパレータは少なくとも一方の面が剥離面となっており、上記粘着剤層を保護するために設けられ得る。セパレータは、任意の適切な材料から構成され得る。
【0071】
G.粘着テープの製造方法
本発明の粘着テープは、任意の適切な方法により製造することができる。本発明の粘着テープは、例えば、基材上に直接、粘着剤および熱膨張性微小球を含む粘着剤層形成用組成物を塗工する方法、または任意の適切な基体上に粘着剤層形成用組成物を塗工し形成された塗工層を基材に転写する方法等が挙げられる。粘着剤層形成用組成物は、任意の適切な溶媒を含み得る。また、粘着剤を含む組成物により粘着剤塗工層を形成した後、該粘着剤塗工層に熱膨張性微小球を振りかけた後、ラミネーター等を用いて、該熱膨張性微小球を該塗工層中に埋め込んで、熱膨張性微小球を含む粘着剤層を形成してもよい。
【0072】
粘着剤層形成用組成物中の熱膨張性微小球の含有割合は、粘着剤層形成用組成物の固形分重量に対して、好ましくは5重量%~95重量%であり、より好ましくは10重量%~70重量%であり、さらに好ましくは10重量%~50重量%である。
【0073】
粘着剤層が上記弾性層を有する場合、弾性層は、例えば、基材上または粘着剤層上に、弾性層を形成するための組成物を塗工して形成することができる。
【0074】
上記各組成物の塗工方法としては、任意の適切な塗工方法が採用され得る。例えば、塗布した後に乾燥して各層を形成することができる。塗布方法としては、例えば、マルチコーター、ダイコーター、グラビアコーター、アプリケーター等を用いた塗布方法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥する場合の加熱温度は、乾燥対象となる物質の特性に応じて、任意の適切な温度に設定され得る。
【0075】
H.用途
本発明の粘着テープは、電子部品を製造・評価する際に、電子部品材料を仮固定するためのシートとして、好適に用いられ得る。1つの実施形態においては、本発明の粘着テープは、冷熱衝撃試験において被試験体を仮固定するための粘着テープとして用いられ得る。別の実施形態においては、本発明の粘着テープは、モールド工程(例えば、加熱を伴うモールド工程)において被加工体を仮固定するための粘着テープとして用いられ得る。
【実施例0076】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0077】
[評価]
(1)初期粘着力
粘着テープを幅:20mm、長さ:140mmのサイズに切断し、粘着剤層上に、被着体としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS-10」東レ社製;厚さ:25μm、幅:20mm)を、JIS Z 0237(2000年)に準じ、温度:25℃および湿度:65%RHの雰囲気下で、2kgのローラーを1往復させて圧着して貼り合わせた。次いで、被着体付きの粘着テープを、25℃に設定された恒温槽付き引張試験機(島津製作所社製、商品名「島津オートグラフAG-120kN」)にセットし、30分間放置した。その後、被着体を、剥離角度:180°、剥離速度(引張速度):300mm/minの条件で、粘着テープから引き剥がした時の荷重を測定し、その際の最大荷重(測定初期のピークトップを除いた荷重の最大値)を求め、この最大荷重を粘着力(N/20mm)とした。
【0078】
(2)140℃加熱後の粘着力
粘着テープを幅:20mm、長さ:140mmのサイズに切断し、粘着剤層上に、被着体としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS-10」東レ社製;厚さ:25μm、幅:20mm)を、JIS Z 0237(2000年)に準じ、温度:25℃および湿度:65%RHの雰囲気下で、2kgのローラーを1往復させて圧着して貼り合わせた。次いで、被着体付きの粘着テープを、140℃の環境下に30分間置き、その後、25℃の環境下に30分間置いた。
その後、上記(1)と同様の方法で、粘着力を測定した。
【0079】
(3)ヒートサイクル後の粘着力
粘着テープを幅:20mm、長さ:140mmのサイズに切断し、粘着剤層上に、被着体としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS-10」東レ社製;厚さ:25μm、幅:20mm)を、JIS Z 0237(2000年)に準じ、温度:25℃および湿度:65%RHの雰囲気下で、2kgのローラーを1往復させて圧着して貼り合わせた。次いで、被着体付きの粘着テープを、140℃の環境下に30分間置き、その後、25℃の環境下に30分間置き、再度、140℃の環境下に30分間置き、その後、25℃の環境下に30分間置いた。
その後、上記(1)と同様の方法で、粘着力を測定した。
【0080】
(4)140℃加熱後の外観
粘着テープを、140℃の環境下に30分間置き、その後、25℃の環境下に30分間置いた。その後、粘着剤層の外観を目視にて確認した。発泡なく外観が良好な場合を合格(表1中、○)、発泡が生じており外観が不良である場合を不合格(表1中、×)とした。
【0081】
(5)ヒートサイクル後の外観
粘着テープを、140℃の環境下に30分間置き、その後、25℃の環境下に30分間置き、再度、140℃の環境下に30分間置き、その後、25℃の環境下に30分間置いた。その後、粘着剤層の外観を目視にて確認した。発泡なく外観が良好な場合を合格(表1中、○)、発泡が生じており外観が不良である場合を不合格(表1中、×)とした。
【0082】
(6)パッケージの保持率
粘着テープの粘着剤層上に、エポキシ樹脂(日立化成社製、商品名「CEL-9200HF9」)で封止されたQFNリードフレーム(サイズ:125mm×65mm;粘着シートとの貼り合せ面は樹脂面(表面粗さRa:3μm))を貼着させ、それを6インチのダイシングリングに装着固定してダイサーを介し、5mm×5mmのサイズのチップ250個にフルカットした(ダイシングによる切断加工処理を施した)。次いで、被着体貼着面を上にした状態で140℃の環境下に30分間置き、その後、25℃の環境下に30分間置き、再度、140℃の環境下に30分間置き、その後、25℃の環境下に30分間置いた。次いで、被着体付きの粘着テープを反転させ、粘着剤層に残存したパッケージの個数から、パッケージの保持率を評価した。
【0083】
[製造例1]熱膨張性微小球Aの作製
塩化ナトリウム150重量部と、シリカ有効成分20重量%であるコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名「スノーテックス」)70重量部と、ポリビニルピロリドン1重量部と、ジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物0.5重量部とを、蒸留水600重量部に加えた後、得られた混合物のpHを2.8~3.2に調整して水性溶液を得た。
上記水性溶液に、シェルの材料となる油系添加剤として、アクリロニトリル70重量部と、メタクリル酸180重量部とを加えた。さらに、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート1重量部を加え、反応溶液を得た。
上記反応溶液をホモミキサー(特殊機化工業社製、商品名「TKホモミキサー」)付き耐圧反応容器に加え、さらに、シェルに内包されることを意図した有機溶媒としてイソペンタン(沸点:27.7℃)20重量部とイソオクタン(沸点:99℃)55重量部と、開始剤(ジイソプロピルオキシジカーボネート)5重量部とを耐圧反応容器に加えた。
ホモミキサーを所定の初期攪拌条件(攪拌速度:6000rpm、攪拌時間:2分間)で回転させて上記混合物を撹拌した後、80rpmで攪拌しながら60℃に加温して24時間反応を行った。反応後の反応溶液をろ過することで得られる固形分を窒素気流下室温に1週間放置することで熱膨張性微小球を得た。
なお、得られた熱膨張性微小球は、島津製作所製の商品名「SALD-2000J」で計測したところ、平均粒径が30μmであった。また、X線CT(ZEISS社製 Xradia520versa(測定条件:管電圧60KV 管電流83μA、ピクセルサイズ0.20μm/pixel)により、熱膨張微小球内の溶媒はイソペンタンおよびイソオクタンであり、熱膨張性微小球の重量に対して、15重量%含むことがわかった。また、上記X線CTにより測定したところ、熱膨張性微小球のシェルの厚みは、2.5μmであった。
【0084】
[製造例2~10]熱膨張性微小球B~J
シェルに内包されることを意図した有機溶媒の種類、油系添加剤(アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート)の組成を表1に記載のとおりとしたこと以外は、製造例1と同様にして、熱膨張性微小球B~Jを作製した。また、製造例1と同様にして、熱膨張性微小球の平均粒径、含有有機溶媒量、シェルの厚みを測定した。結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
[実施例1]
(弾性層形成用組成物の調製)
アクリル系コポリマー(2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、エチルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MMA)および2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)のコポリマー、2EHA構成単位:EA構成単位:MMA構成単位:HEA構成単位=30:70:5:5(重量比))100重量部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)1重量部と、トルエンを混合し、弾性層形成用組成物を調製した。
(粘着剤層形成用組成物の調製)
アクリル系コポリマー(2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、エチルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MMA)および2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)のコポリマー、2EHA構成単位:EA構成単位:MMA構成単位:HEA構成単位=30:70:5:5(重量比))100重量部と、粘着付与剤(ヤスハラケミカル社製、商品名「マイティーエースG125」)10重量部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)2重量部と、熱膨張性微小球Aを30重量部と、トルエンとを混合し、粘着剤層形成用組成物を調製した。
(粘着テープの作製)
基材としてのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:100μm)に、上記弾性層形成用組成物を塗布し、乾燥して、基材上に弾性層(厚み:15μm)を形成した。
シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「MRF38」)に、上記粘着剤層形成用組成物を塗布し、乾燥して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層(35μm)を形成した。
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された上記粘着剤層を、上記弾性層に転写して、基材、弾性層および粘着剤層をこの順に備える粘着テープを得た。得られた粘着テープを上記評価(1)~(6)に供した。結果を表5に示す。
【0087】
[実施例2~8、実施例11、比較例1~3]
弾性層形成用組成物(ベースポリマーの組成、架橋剤量)、および粘着剤層形成用組成物(ベースポリマーの組成、架橋剤種類、架橋剤量、熱膨張性微小球種類)の組成を表2~表4に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。得られた粘着テープを上記評価(1)~(6)に供した。結果を表5に示す。なお、表中、「架橋剤テトラッドC」は、三菱ガス化学社製のエポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」)である。
なお、実施例11においては、「140℃加熱後の外観」および「ヒートサイクル後の外観」について、発泡がなく良好ではあったが、当該評価前の段階から、粘着力に大きな影響を及ぼさない程度に、表面に微小な凹凸が見られた(それ故、評価結果を△としている)。
【0088】
[実施例9]
実施例1と同様にして、弾性層形成用組成物および粘着剤層形成用組成物を調製した。
さらに、アクリル系コポリマー (2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、エチルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MMA)および2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)のコポリマー、2EHA構成単位:EA構成単位:MMA構成単位:HEA構成単位=30:70:5:5(重量比))100重量部と、粘着付与剤(ヤスハラケミカル社製、商品名「マイティーエースG125」)10重量部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)3重量部と、トルエンとを混合し、別の粘着剤層形成用組成物を調製した。
基材としてのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:100μm)に、上記弾性層形成用組成物を塗布し、乾燥して、基材上に弾性層(厚み:15μm)を形成した。
シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「MRF38」)に、上記粘着剤層形成用組成物を塗布し、乾燥して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層(35μm)を形成した。
また、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「MRF38」)に、上記別の粘着剤層形成用組成物を塗布し、乾燥して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に別の粘着剤層(10μm)を形成した。
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された上記粘着剤層を上記弾性層に転写し、別の粘着剤層を基材の弾性層が形成されていない面に転写して、別の粘着剤層、基材、弾性層および粘着剤層をこの順に備える粘着テープを得た。
得られた粘着テープを上記評価(1)~(6)に供した。結果を表5に示す。
【0089】
[実施例10]
(シリコーン粘着剤層形成用組成物の調製)
付加反応型シリコーン系粘着剤(東レ社製、商品名「シリコーンゴムSD-4580L」、シリコーンゴム:シリコーンレジン=60:40(重量比))100重量部と、白金系触媒(東レ社製、商品名「SRX-212」)0.5重量部と、熱膨張性微小球Aを30重量部と、トルエン100重量部とを混合し、粘着剤層形成用組成物を調製した。
(粘着テープの作製)
基材層としてのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名「カプトン200H」、厚み50μm)に上記シリコーン粘着剤層形成用組成物を塗布し、乾燥して、基材上に粘着剤層(厚み:30μm)を形成し、粘着テープを得た。
得られた粘着テープを上記評価(1)~(6)に供した。結果を表5に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】