(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153476
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20241022BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B65G47/14 101Z
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067393
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】392017705
【氏名又は名称】アラインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】田中 克弘
【テーマコード(参考)】
3C707
3F080
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS15
3C707JS02
3C707KS03
3C707KS04
3C707KT01
3C707KT06
3C707KT11
3C707NS02
3C707NS03
3F080AA01
3F080BC01
3F080BC07
3F080CB16
3F080CG01
3F080DA15
(57)【要約】
【課題】製作やメンテナンスが容易になり、しかも、動作の高速化が実現できるワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムとを提供する。
【解決手段】ワーク姿勢制御装置10は、駆動シャフト6aを有する一対の駆動エアシリンダ6と、上下にスライド可能なスライドシャフト8aを有する一対の従動エアシリンダ8と、スライドシャフト8aをスライド可能状態とスライド停止状態とに切替可能な第2エア供給源9とを備える。ユニット制御部3は、少なくとも1つの駆動シャフト6aを上下振動させて支持脚4及びプレート10aに上下振動を独立して印加し、残りの駆動シャフト6a及びスライドシャフト8aのうちの少なくとも1つを停止させて駆動シャフト6aの上下振動に伴うプレート10aの傾動中心がスライド停止状態の駆動シャフト6a又はスライドシャフト8aに接続されたフローティングジョイント5のジョイント部に存在するように制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された複数のワークを支持するプレートと、
前記プレートの下面を支える複数の支持脚と、
前記各支持脚にそれぞれ接続された複数のフローティングジョイントと、
上下にスライド動作を行う駆動シャフトを有し、前記フローティングジョイントの2つにそれぞれ前記駆動シャフトが接続された一対のアクチュエータと、
上下にスライド可能なスライドシャフトを有し、前記駆動シャフトが接続されていない残りの前記フローティングジョイントにそれぞれ前記スライドシャフトが接続された複数のスライドユニットと、
前記スライドシャフトをスライド可能状態とスライド停止状態とに切替可能な可動切替部と、
前記駆動シャフトのスライド動作と前記可動切替部の切替動作とを制御する制御装置と、を備え、
前記各スライドユニットのうちの少なくとも2つと一対の前記アクチュエータとの計4つについて平面視で前記両スライドユニットが対角に位置するとともに前記両アクチュエータが対角に位置する配置になっており、
前記制御装置は、少なくとも1つの前記駆動シャフトを上下振動させて前記支持脚及び前記プレートに上下振動を独立して印加し、残りの前記駆動シャフト及び前記スライドシャフトのうちの少なくとも1つを停止させて前記駆動シャフトの上下振動に伴う前記プレートの傾動中心が、スライド停止状態の前記駆動シャフト又は前記スライドシャフトに接続された前記フローティングジョイントのジョイント部に存在するように制御することを特徴とするワーク姿勢制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク姿勢制御装置において、
前記スライドユニットは、ポートを2つ有する複動式エアシリンダであり、
前記可動切替部は、前記各ポートに接続されたエア供給源であり、当該エア供給源からいずれか一方の前記ポートにのみエアを供給することにより、前記スライドシャフトをスライド停止状態に切り替える一方、前記エア供給源から前記ポートへのエアの供給を停止することにより、前記スライドシャフトをスライド可能状態に切り替えるように構成されていることを特徴とするワーク姿勢制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のワーク姿勢制御装置において、
前記スライドユニットは、前記スライドシャフトをスライド可能に支持するブッシュであり、
前記可動切替部は、前記スライドシャフトを把持可能なチャック機構であり、当該チャック機構が前記スライドシャフトを把持することにより、前記スライドシャフトをスライド停止状態に切り替える一方、前記チャック機構が前記スライドシャフトを離すことにより、前記スライドシャフトをスライド可能状態に切り替えるように構成されていることを特徴とするワーク姿勢制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のワーク姿勢制御装置の上流に配置され、前記ワークを搬送して前記ワーク姿勢制御装置に供給するワーク搬送装置と、前記プレートの上面に位置する前記ワークをピッキングするロボットと、当該ロボットによりピッキングされた前記ワークを受け取るワーク受取装置と、を備えていることを特徴とするワーク供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットがピッキングを行うワーク運搬領域において、ワークの密集状態や表裏反転状態、あるいは、互いに重なり合う状態を解消するワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレクトロニクス分野における半導体チップの生産ライン等では、ワーク供給装置やパーツフィーダによりライン上流側から順次供給される各ワーク(部品)をロボットが所定のワーク運搬領域においてピッキングしてライン下流側の設備へと順次受け渡すことが一般的になされている。
ところで、ピッキング対象の各ワークがワーク運搬領域において密集状態や表裏反転状態になっていたり、あるいは、互いに重なり合った状態になっていると、ロボットが各ワークを精度良く短い時間で効率的にピッキングできなくなってしまう。
【0003】
これを回避するために、ワーク運搬領域において各ワークの姿勢を制御するワーク姿勢制御装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されているワーク姿勢制御装置は、複数のワークを支持可能な平面視で矩形状をなすプレートと、このプレートの下面隅部にそれぞれ配置された4つの伸縮ユニットと、各伸縮ユニットを制御する制御装置と、を備えている。各伸縮ユニットは、上端がプレート下面に固定された細棒状をなす支持脚と、この支持脚の下端に接続されたフローティングジョイントと、上下にスライドして伸縮動作を行う駆動シャフトを有するアクチュエータと、を備え、駆動シャフトの上端がフローティングジョイントに接続されている。そして、制御装置は、4つのアクチュエータのうちの少なくとも1つのアクチュエータの駆動シャフトを停止させる一方、残りのアクチュエータのうちの少なくとも1つの駆動シャフトを上下振動させて、その上下振動に伴うプレートの傾動中心が、スライド停止状態の駆動シャフトに接続されたフローティングジョイントのジョイント部に存在するように制御するようになっている。これにより、各ワークがプレートの上面に位置する状態において制御装置を作動させると、駆動シャフトが駆動状態のアクチュエータ側から駆動シャフトが停止状態のアクチュエータ側へと連続してプレートの上面に水平方向分力、あるいは、見かけ上の水平方向分力が作用し、それによってプレートの上面の各ワークが連続的に移動して分散するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の如き装置の場合、プレートの傾動パターンを変えるために、各アクチュエータを単独で作動させるだけでなく、複数のアクチュエータを様々な組み合わせで同期させて作動させる必要があり、装置を稼動させる前やメンテナンス時にそれぞれ同期の調整をしなければならない。例えば、アクチュエータが4つある場合、隣り合う2つのアクチュエータの同期の調整と、隣り合う3つのアクチュエータの同期の調整を行う必要があるが、それぞれ全部で4カ所ずつ行う必要があり、隣り合う3つのアクチュエータの同期の調整においては、プレートが傾動時に真っすぐに延びる姿勢とするために、真ん中のアクチュエータの駆動シャフトの振幅に対し、その両隣りの各アクチュエータの駆動シャフトの振幅を半分にして同期をとる必要があり、調整が難しくてそれらの調整に費やす時間が非常にかかってしまうという課題があった。
また、各アクチュエータの同期の調整が非常に困難であるので、調整不足を起因として同期動作を行う一方のアクチュエータに負荷が掛かり過ぎて故障してしまうといったことを防ぐために、同期速度を極力遅くせざるを得ず、装置全体の動作速度が遅くなってしまうという課題もあった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製作やメンテナンスが容易になり、しかも、動作の高速化が実現できるワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、プレートを傾動させるアクチュエータを2つだけにするとともに、当該アクチュエータの傾動動作に連動して従動するスライドシャフトを有するスライドユニットを複数設けるようにしたことを特徴とする。
具体的には、ロボットにピッキングされるプレートの上面に位置する各ワークの姿勢を制御するワーク姿勢制御装置を対象とし、次のような対策を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明に係るワーク姿勢制御装置は、供給された複数のワークを支持するプレートと、前記プレートの下面を支える複数の支持脚と、前記各支持脚にそれぞれ接続された複数のフローティングジョイントと、上下にスライド動作を行う駆動シャフトを有し、前記フローティングジョイントの2つにそれぞれ前記駆動シャフトが接続された一対のアクチュエータと、上下にスライド可能なスライドシャフトを有し、前記駆動シャフトが接続されていない残りの前記フローティングジョイントにそれぞれ前記スライドシャフトが接続された複数のスライドユニットと、前記スライドシャフトをスライド可能状態とスライド停止状態とに切替可能な可動切替部と、前記駆動シャフトのスライド動作と前記可動切替部の切替動作とを制御する制御装置と、を備え、前記各スライドユニットのうちの少なくとも2つと一対の前記アクチュエータとの計4つについて平面視で前記両スライドユニットが対角に位置するとともに前記両アクチュエータが対角に位置する配置になっており、前記制御装置は、少なくとも1つの前記駆動シャフトを上下振動させて前記支持脚及び前記プレートに上下振動を独立して印加し、残りの前記駆動シャフト及び前記スライドシャフトのうちの少なくとも1つを停止させて前記駆動シャフトの上下振動に伴う前記プレートの傾動中心が、スライド停止状態の前記駆動シャフト又は前記スライドシャフトに接続された前記フローティングジョイントのジョイント部に存在するように制御することを特徴とする。
このように構成されるワーク姿勢制御装置では、2つのアクチュエータだけでプレートの上面において様々な方向に各ワークを移動させることが可能となるように作用する。また、同期の調整を行う対象が2つのアクチュエータのみであるので、両アクチュエータの同期作業を調整不足無くできるように作用する。
【0009】
第2の発明に係るワーク姿勢制御装置は、第1の発明において、前記スライドユニットは、ポートを2つ有する複動式エアシリンダであり、前記可動切替部は、前記各ポートに接続されたエア供給源であり、当該エア供給源からいずれか一方の前記ポートにのみエアを供給することにより、前記スライドシャフトをスライド停止状態に切り替える一方、前記エア供給源から前記ポートへのエアの供給を停止することにより、前記スライドシャフトをスライド可能状態に切り替えるように構成されていることを特徴とする。
このように構成されるワーク姿勢制御装置では、スライドシャフトのスライド可能状態とスライド停止状態との切り替えを一般的なエアシリンダとこのエアシリンダに圧縮エアを供給するエア供給源とを利用して行えるように作用する。
【0010】
第3の発明に係るワーク姿勢制御装置は、第1の発明において、前記スライドユニットは、前記スライドシャフトをスライド可能に支持するブッシュであり、前記可動切替部は、前記スライドシャフトを把持可能なチャック機構であり、当該チャック機構が前記スライドシャフトを把持することにより、前記スライドシャフトをスライド停止状態に切り替える一方、前記チャック機構が前記スライドシャフトを離すことにより、前記スライドシャフトをスライド可能状態に切り替えるように構成されていることを特徴とする。
このように構成されるワーク姿勢制御装置では、チャック機構がスライドシャフトを離して当該スライドシャフトがスライド可能状態になる際、チャック機構がスライドユニットから切り離された状態となるように作用する。
【0011】
また、本発明は、上述の如きワーク姿勢制御装置を備えたワーク供給システムをも対象とし、次のような対策を講じた。
すなわち、第4の発明に係るワーク供給システムは、第1から第3のいずれか1つの発明のワーク姿勢制御装置の上流に配置され、前記ワークを搬送して前記ワーク姿勢制御装置に供給するワーク搬送装置と、前記プレートの上面に位置する前記ワークをピッキングするロボットと、当該ロボットによりピッキングされた前記ワークを受け取るワーク受取装置と、を備えていることを特徴とする。
このように構成されるワーク供給システムでは、密集する複数のワークを効率的に分散させるか、あるいは、表裏反転させることができるように作用する。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明であるワーク姿勢制御装置は、平面視で互いに対角に位置する各アクチュエータ及び各スライドユニットのうち、少なくとも一方のアクチュエータを作動させるとともに、各スライドユニットにおけるスライドシャフトのスライド可能状態とスライド停止状態との組み合わせをそれぞれ変更させると、駆動するアクチュエータにおける駆動シャフトの上下振動によって、停止しているアクチュエータの駆動シャフト、及び/又は、停止しているスライドユニットのスライドシャフトが接続されたフローティングジョイントのジョイント部を中心としてプレートが傾動することで、上方及び下方への傾動のいずれでも傾いたプレートの上面において駆動状態のアクチュエータ側から停止状態のアクチュエータ、及び/又は、スライドユニット側へプレートの上面に対する水平方向の力を連続的にワークに対して付勢することが可能になる。したがって、2つのアクチュエータだけでプレートの上面におけるあらゆる方向に各ワークを移動させることができるようになり、アクチュエータを同期させる調整に費やす時間が短くなるので、製作やメンテナンスを容易にできる装置にすることができる。また、同期の調整を行う対象が2つのアクチュエータのみであるので、特許文献1の如きアクチュエータが4つある装置に比べて調整不足が起こり難くなって一方のアクチュエータに負荷が掛かり過ぎるというのを回避することができ、駆動制御も容易である。したがって、装置の各アクチュエータにおける同期速度を減らす必要が無くなり、装置の動作の高速化を実現することができる。さらに、フローティングジョイントによる当該フローティングジョイントのジョイント部を中心としたプレートが傾動可能となるような構成と、駆動エアシリンダの駆動シャフトや従動エアシリンダのスライドシャフトが停止可能な構成とを採用することで、駆動エアシリンダが配置される対角方向及び従動エアシリンダが配置される対角方向のいずれであっても振動の振幅を大きく取る、言わば「周期的な傾動」が可能である。そして、この「周期的な傾動」がワークに水平方向に働く力を付与し、ワークを搬送することを可能としている。
【0013】
第2の発明であるワーク姿勢制御装置は、スライドシャフトにおけるスライド可能状態とスライド停止状態との切り替えを一般的なエアシリンダとこのエアシリンダに圧縮エアを供給するエア供給源とを利用して行えるようになる。したがって、シンプルな構造で装置を完成させることができるとともに、部品コストを低く抑えることができる。
【0014】
第3の発明であるワーク姿勢制御装置は、スライドシャフトがスライド可能状態の際、チャック機構がスライドユニットに接触せずに当該スライドユニットから切り離された状態になるので、アクチュエータにおける駆動シャフトの伸縮動作に伴うプレートの上下振動の影響を受けなくなり、故障を少なくすることができる。
【0015】
第4の発明であるワーク供給システムは、密集する複数のワークを効率的に分散させるか、あるいは、表裏反転させることができるようになる。したがって、ロボットによるピッキング作業がミス無く時間をかけずに行われるようになり、ピッキングした各ワークをライン下流側の受取装置へと順次効率的に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係るワーク供給システムの概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るワーク供給システムのブロック図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るワーク姿勢制御装置の概略斜視図である。
【
図4】
図3のIV矢視図であり、アクチュエータによって上下振動が印加されてプレートが傾動している状態を示す図である。
【
図6A】本発明の実施例1に係るワーク姿勢制御装置を作動させる時のプレートの上面における各ワークの動きを示す平面図であり、ワーク姿勢制御装置を作動させる前の状態を示す。
【
図6B】
図6Aの後、ライン下流側のスライドユニットを停止させるとともにライン上流側のスライドユニットをスライド可能な状態にし、且つ、ライン下流側のアクチュエータを停止させた状態でライン上流側のアクチュエータを駆動させた後の状態を示す。
【
図7A】本発明の実施例1に係るワーク姿勢制御装置を作動させる時のプレートの上面における各ワークの動きを示す平面図であり、ワーク姿勢制御装置を作動させる前の状態を示す。
【
図7B】
図7Aの後、ライン下流側のスライドユニットを停止させるとともにライン上流側のスライドユニットをスライド可能な状態にし、且つ、ライン上流側のアクチュエータを停止させた状態でライン下流側のアクチュエータを駆動させた後の状態を示す。
【
図8A】本発明の実施例1に係るワーク姿勢制御装置を作動させる時のプレートの上面における各ワークの動きを示す平面図であり、ワーク姿勢制御装置を作動させる前の状態を示す。
【
図8B】
図8Aの後、両方のスライドユニットをスライド可能な状態にし、且つ、ライン下流側のアクチュエータを停止させた状態でライン上流側のアクチュエータを駆動させた後の状態を示す。
【
図9A】本発明の実施例1に係るワーク姿勢制御装置を作動させる時のプレートの上面における各ワークの動きを示す平面図であり、ワーク姿勢制御装置を作動させる前の状態を示す。
【
図9B】
図9Aの後、ライン下流側のスライドユニットを停止させるとともにライン上流側のスライドユニットをスライド可能な状態にし、且つ、両方のアクチュエータを駆動させた後の状態を示す。
【
図10】本発明の実施例2に係る
図2相当図である。
【
図11】本発明の実施例2に係る
図4相当図である。
【
図12】本発明の実施例2に係る
図5相当図である。
【
図13】本発明の実施例3に係る
図2相当図である。
【
図14】本発明の実施例3に係る
図4相当図である。
【
図15】本発明の実施例3に係る
図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施例の説明は、本質的に例示に過ぎない。
本願発明の実施例では、画像解析部、ユニット制御部あるいはピッキング制御部等、「部」という語を含んだ構成要素を採用しているが、この「部」とは、手段あるいは機能を意味し、具体的な構成要素としては、特定の動作を実行するための「素子」や「電子回路」、あるいは「構成物のユニット」又は「それらが集合した装置」であり、これらを概念化して「部」として示すものである。
【実施例0018】
図1及び
図2は、本発明の実施例1に係るワーク供給システム1を示す。このワーク供給システム1は、複数のワークW(
図6~
図9参照)を支持可能なプレート10aを有し、当該プレート10aの上面に位置する各ワークWの姿勢を制御するワーク姿勢制御装置10と、このワーク姿勢制御装置10の側方に配設され、プレート10aの上面に位置する各ワークWをピッキングするピッキングシステム11と、ワーク姿勢制御装置10のライン上流側に配置され、各ワークWを搬送して順次ワーク姿勢制御装置10に供給するワーク搬送装置12と、ワーク姿勢制御装置10のライン下流側に配置され、ピッキングシステム11によりピッキングされた各ワークWを受け取るワーク受取装置13と、を備えている。
【0019】
ピッキングシステム11は、先端にエンドエフェクタ11cが取り付けられたハンド11bを有するロボット11aと、プレート10aの上面に位置する各ワークWを撮影可能なカメラ11dと、当該カメラ11dによる撮影画像を解析する画像解析部11eと、ロボット11aと画像解析部11eとに接続されたピッキング制御部11fと、を備えている。
画像解析部11eは、カメラ11dにて撮影された画像を解析するとともに、それにより得た各ワークWの位置や向きの情報や、あるいは表裏の情報等のワーク状態情報をピッキング制御部11fに送信するようになっている。
ピッキング制御部11fは、画像解析部11eからワーク状態情報を受信すると、当該ワーク状態情報に基づいてロボット11aにピッキング指令を発信するようになっている。なお、ピッキング制御部11fは、ワーク状態情報に基づいて表面(おもてめん)が上向く各ワークWのみをピッキングするピッキング指令を発信するだけでなく、各ワークの姿勢が側面も含めて表裏構わずピッキングするピッキング指令をも発信することができるようになっている。
そして、ロボット11aは、ピッキング制御部11fからピッキング指令を受信すると、エンドエフェクタ11cがプレート10aの上面に位置する各ワークWをピッキングするとともに、ワーク受取装置13に受け渡すようになっている。
【0020】
ワーク搬送装置12は、無端状ベルトを有する搬送コンベア12aを備え、この搬送コンベア12aは、無端状ベルトを周回移動させることにより、各ワークWを下流端から順次落下させてワーク姿勢制御装置10に供給するようになっている。
また、ワーク受取装置13には、番重や段ボール箱等の容器(図示せず)が配置され、ロボット11aは、ワーク姿勢制御装置10にてピッキングした各ワークWをワーク受取装置13の容器に順次入れるようになっている。
【0021】
ワーク姿勢制御装置10は、プレート10aの上面に位置する各ワークWが密集状態や表裏反転状態になっていたり、あるいは、互いに重なり合った状態であるのを解消させるとともに、各ワークWをそれぞれ個片として分散させるものであり、
図2~
図4に示すように、プレート10aの下面隅部の下方にそれぞれ配置された4つの伸縮ユニット2と、当該各伸縮ユニット2を制御するユニット制御部3(制御装置)と、を備えている。
4つの伸縮ユニット2は、互いに対角に位置する一方の組である2つの第1ユニット2Aと、他方の組である2つの第2ユニット2Bと、で構成されている。すなわち、一対の第1ユニット2Aと一対の第2ユニット2Bとの計4つについて平面視で両第1ユニット2Aが対角に位置するとともに両第2ユニット2Bが対角に位置する配置になっている。
【0022】
第1ユニット2Aは、上端がプレート10aの下面に固定され、当該プレート10aの下面を支える細棒状の支持脚4と、上端が支持脚4の下端に接続されたフローティングジョイント5と、このフローティングジョイント5の下方に配置されたポートを2つ有する複動式の駆動エアシリンダ6(アクチュエータ)と、を備えている。この駆動エアシリンダ6は、上下にスライド動作を行う駆動シャフト6aを有し、当該駆動シャフト6aの上端がフローティングジョイント5の下端に接続されている。そして、駆動エアシリンダ6には、各ポートに圧縮エアを供給可能な第1エア供給源7が接続されていて、当該第1エア供給源7による圧縮エアの給排動作により、駆動シャフト6aを上下振動させてフローティングジョイント5を介して支持脚4及びプレート10aに対して上下振動を独立して印加できるようになっている。
【0023】
第2ユニット2Bは、駆動エアシリンダ6の部分がポートを2つ有する複動式の従動エアシリンダ8(スライドユニット)に変わる点を除いて第1ユニット2Aと同一の構造をしているので、当該第1ユニット2Aと同じ個所には同一の符号を付し、異なる部分のみを詳述する。
従動エアシリンダ8は、上下にスライド可能なスライドシャフト8aを有し、当該スライドシャフト8aの上端がフローティングジョイント5の下端に接続されている。
従動エアシリンダ8には、各ポートに圧縮エアを供給可能な第2エア供給源9(可動切替部)が接続されている。この第2エア供給源9は、いずれか一方のポートにのみ圧縮エアを供給することにより、スライドシャフト8aをスライド停止状態に切り替える一方、各ポートへの圧縮エアの供給を停止することにより、スライドシャフト8aをスライド可能状態に切り替えるようになっている。つまり、第2エア供給源9は、スライドシャフト8aをスライド可能状態とスライド停止状態とに切替可能になっている。
【0024】
ユニット制御部3は、各第1ユニット2Aの駆動シャフト6aのスライド動作と、各第2エア供給源9の第2ユニット2Bへの圧縮エアの供給停止の切替動作とを制御するようになっている。すなわち、ユニット制御部3は、
図4及び
図5に一例を示すように、少なくとも1つの駆動シャフト6aを上下振動させて支持脚4及びプレート10aに上下振動を独立して印加し、残りの駆動シャフト6a及びスライドシャフト8aのうちの少なくとも1つを停止させて駆動シャフト6aの上下振動に伴うプレート10aの傾動中心が、スライド停止状態の駆動シャフト6a又はスライドシャフト8aに接続されたフローティングジョイント5のジョイント部5aに存在するように制御するようになっている。そうすると、ワークWが供給された状態のプレート10aの上面において駆動状態の伸縮ユニット2側から停止状態の伸縮ユニット2側へプレート10aの上面に対する水平方向の力をワークWに対して付勢することが可能になるので、プレート10aの上面のワークWが駆動状態の伸縮ユニット2側から停止状態の伸縮ユニット2側へと移動するようになっている。
【0025】
なお、ワーク姿勢制御装置10のプレート10aが所定のフローティングジョイント5のジョイント部5aを中心に上下に傾動を繰り返すことにより、プレート10aの上面のワークWが駆動状態の伸縮ユニット2側から停止状態の伸縮ユニット2側へ移動する原理は、特許文献1に詳細に記載されているため、ここでは説明を割愛する。
【0026】
次に、ユニット制御部3の具体的な制御について詳述する。なお、以下では、便宜上、ライン上流側に位置する第1ユニット2Aを第1ユニット2A1と呼び、ライン下流側に位置する第1ユニット2Aを第1ユニット2A2と呼ぶ一方、ライン下流側に位置する第2ユニット2Bを第2ユニット2B1と呼び、ライン上流側に位置する第2ユニット2Bを第2ユニット2B2と呼ぶことにする。
【0027】
ユニット制御部3は、
図6Aに示すように、プレート10aのワーク搬送装置12側の領域に多数のワークWが位置する場合、第2ユニット2B
1の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド停止状態にするとともに第2ユニット2B
2の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド可能状態にし、且つ、第1ユニット2A
2の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを停止させた状態で第1ユニット2A
1の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを上下振動させるようになっている。そうすると、プレート10aの上面の各ワークWは、
図6Bに示すように、プレート10aの中央領域へと分散しながら移動するようになっている。
【0028】
また、ユニット制御部3は、
図7Aに示すように、プレート10aのワーク受取装置13側の領域に多数のワークWが位置する場合、第2ユニット2B
1の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド停止状態にするとともに第2ユニット2B
2の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド可能状態にし、且つ、第1ユニット2A
1の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを停止させた状態で第1ユニット2A
2の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを上下振動させるようになっている。そうすると、プレート10aの上面の各ワークWは、
図7Bに示すように、プレート10aの中央領域へと分散しながら移動するようになっている。
【0029】
さらに、ユニット制御部3は、
図8Aに示すように、プレート10aのワーク搬送装置12側で、且つ、ワーク受取装置13から遠い側の領域に多数のワークWが位置する場合、第2ユニット2B
1及び第2ユニット2B
2の各従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド可能状態にし、且つ、第1ユニット2A
2の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを停止させた状態で第1ユニット2A
1の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを上下振動させるようになっている。そうすると、プレート10aの上面の各ワークWは、
図8Bに示すように、プレート10aの中央領域へと分散しながら移動するようになっている。なお、駆動シャフト6aの上下振動に従動して両スライドシャフト8aが上下振動するようになっていて、プレート10aを上下振動させる際の第2ユニット2B
1及び第2ユニット2B
2の各従動エアシリンダ8のスライドシャフト8aの振幅w1は、
図8Cに示すように、第1ユニット2A
1の駆動エアシリンダ6の駆動シャフト6aの振幅w2の半分となるように同期設定されている。
【0030】
それに加えて、ユニット制御部3は、
図9Aに示すように、プレート10aのワーク搬送装置12側で、且つ、ワーク受取装置13側の領域に多数のワークWが位置する場合、第2ユニット2B
1の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド停止状態にするとともに第2ユニット2B
2の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド可能状態にし、且つ、第1ユニット2A
1及び第1ユニット2A
2の各駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを上下振動させるようになっている。そうすると、プレート10aの上面の各ワークWは、
図9Bに示すように、プレート10aの中央領域へと分散しながら移動するようになっている。なお、プレート10aを上下振動させる際の第1ユニット2A
1及び第1ユニット2A
2の各駆動エアシリンダ6の駆動シャフト6aの振幅w3は、同位相で、
図9Cに示すように、第2ユニット2B
2の従動エアシリンダ8のスライドシャフト8aの振幅w4の半分となるように同期設定されている。
【0031】
なお、
図9Aのように、多数のワークWがプレート10aのワーク搬送装置12側で、且つ、ワーク受取装置13側の領域に位置する場合においてプレート10aの中央領域へと分散させながら移動させるその他のユニット制御部3による制御手順として、まず、第2ユニット2B
1の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド停止状態にするとともに第2ユニット2B
2の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド可能状態にし、且つ、第1ユニット2A
2の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを停止させた状態で第1ユニット2A
1の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを上下振動させることにより、各ワークWをプレート10aにおけるワーク受取装置13側の略中央領域に移動させた後、第2ユニット2B
1の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド停止状態にするとともに第2ユニット2B
2の従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aをスライド可能状態にし、且つ、第1ユニット2A
1の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを停止させた状態で第1ユニット2A
2の駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aを上下振動させることにより、各ワークWをプレート10aの略中央領域へと分散させながら移動させるようにしてもよい。
また、
図6A,B、
図7A,B、
図8A~C、
図9A~Cで示した第1ユニット2A
1,2A
2と第2ユニット2B
1,2B
2の位置をそれぞれ入れ替えても、これらの図を用いて説明した方法で同様にワークWをプレート10aの略中央領域へと分散させながら移動させることが可能である。後述する実施例2の構成を採用した場合も同様である。
【0032】
さらに、各ワークWが、
図6A、
図7A、
図8A及び
図9Aに示すプレート10aの領域に位置しない場合であっても、ユニット制御部3は、少なくとも一方の駆動エアシリンダ6を作動させるとともに、各従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aのスライド可能状態とスライド停止状態との組み合わせをそれぞれ変更させることにより、プレート10aの上面の各ワークWをプレート10aの中央領域へと分散させながら移動させることができるようになっている。
【0033】
以上より、本発明の実施例1によると、平面視で互いに対角に位置する各駆動エアシリンダ6及び各従動エアシリンダ8のうち、少なくとも一方の駆動エアシリンダ6を作動させるとともに、各従動エアシリンダ8におけるスライドシャフト8aのスライド可能状態とスライド停止状態との組み合わせをそれぞれ変更させると、駆動する駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aの上下振動によって、停止している駆動エアシリンダ6の駆動シャフト6a、及び/又は、停止している従動エアシリンダ8のスライドシャフト8aが接続されたフローティングジョイント5のジョイント部5aを中心としてプレート10aが傾動することで、上方及び下方への傾動のいずれでも傾いたプレート10aの上面において駆動状態の駆動エアシリンダ6側から停止状態の駆動エアシリンダ6、及び/又は、従動エアシリンダ8側へプレート10aの上面に対する水平方向の力を連続的にワークWに対して付勢することが可能になる。したがって、2つの駆動エアシリンダ6だけでプレート10aの上面におけるあらゆる方向に各ワークWを移動させることができるようになり、駆動エアシリンダ6を同期させる調整に費やす時間が短くなるので、製作やメンテナンスを容易にできるワーク姿勢制御装置10にすることができる。
【0034】
また、同期の調整を行う対象が2つの駆動エアシリンダ6のみであるので、特許文献1の如き駆動エアシリンダが4つある装置に比べて調整不足が起こり難くなって一方の駆動エアシリンダ6に負荷が掛かり過ぎるというのを回避することができ、駆動制御も容易である。したがって、ワーク姿勢制御装置10の各駆動エアシリンダ6における同期速度を減らす必要が無くなり、ワーク姿勢制御装置10の動作の高速化を実現することができる。
さらに、フローティングジョイント5による当該フローティングジョイント5のジョイント部5aを中心としたプレート10aが傾動可能となるような構成と、駆動エアシリンダ6の駆動シャフト6aや従動エアシリンダ8のスライドシャフト8aが停止可能な構成とを採用することで、駆動エアシリンダ6が配置される対角方向及び従動エアシリンダ8が配置される対角方向のいずれであっても振動の振幅を大きく取る、言わば「周期的な傾動」が可能である。そして、この「周期的な傾動」がワークWに水平方向に働く力を付与し、ワークWを搬送することを可能としている。
【0035】
また、駆動エアシリンダ6の動作に伴って従動するスライドユニットの構造においてスライド可能状態とスライド停止状態との切り替えを一般的な構造からなる従動エアシリンダ8とこの従動エアシリンダ8に圧縮エアを供給する第2エア供給源9とを利用して行えるようになる。したがって、シンプルな構造でワーク姿勢制御装置10を完成させることができるとともに、部品コストを低く抑えることができる。
さらに、本発明の実施例1におけるワーク供給システム1は、ワーク姿勢制御装置10によって密集する複数のワークWを効率的に分散させるか、あるいは、表裏反転させることができるようになる。したがって、ロボット11aによるピッキング作業がミス無く時間をかけずに行われるようになり、ピッキングした各ワークWをライン下流側のワーク受取装置13へと順次効率的に送ることができる。
以上より、本発明の実施例2によると、駆動エアシリンダ6の動作に伴って従動するスライドユニットの構造においてスライドシャフト8aがスライド可能状態の際、チャック機構14がスライドユニット8Aに接触せずに当該スライドユニット8Aから切り離された状態になるので、駆動エアシリンダ6における駆動シャフト6aの伸縮動作に伴うプレート10aの上下振動の影響を受けなくなり、故障を少なくすることができる。