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特開2024-15348情報処理装置、情報処理システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015348
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240125BHJP
   A61B 34/20 20160101ALN20240125BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61B34/20
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208836
(22)【出願日】2023-12-11
(62)【分割の表示】P 2021165054の分割
【原出願日】2017-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】田口 安則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 航
(57)【要約】
【課題】被検体内のオブジェクトの追跡精度の向上を図ることができる情報処理装置、情報処理システム、およびプログラムを提供することである。
【解決手段】実施形態の情報処理装置は、テンプレート選択部と、追跡部と、を持つ。前記テンプレート選択部は、複数のテンプレートの中の少なくとも1つのテンプレートを選択する。前記追跡部は、前記テンプレート選択部により選択された前記少なくとも1つのテンプレートを用いて、被検体の画像内のオブジェクトを追跡する。さらに前記追跡部は、前記複数のテンプレートに含まれる1つ以上のテンプレートのうち、前記被検体の画像内のオブジェクトとの類似度が所定の条件を満たすテンプレートを示す情報を用いて、前記被検体の画像内のオブジェクトの追跡に用いる1つ以上のテンプレートを切り換える。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のテンプレートの中の少なくとも1つのテンプレートを前記複数のテンプレートの中から選択するテンプレート選択部と、
前記テンプレート選択部により選択された前記少なくとも1つのテンプレートを用いて、被検体の画像内のオブジェクトを追跡する追跡部と、
を備え、
前記追跡部は、
前記複数のテンプレートに含まれる1つ以上のテンプレートのうち、前記被検体の画像内のオブジェクトとの類似度が所定の条件を満たすテンプレートを示す情報を用いて、前記被検体の画像内のオブジェクトの追跡に用いる1つ以上のテンプレートを切り換える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記追跡部は、
前記少なくとも1つのテンプレートと、前記被検体の画像内のオブジェクトとの類似度が所定の条件を満たして類似する類似テンプレートとを用いて前記オブジェクトを追跡する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記追跡部は、
前記少なくとも1つのテンプレートと、前記被検体の画像内のオブジェクトとの類似度が所定の条件を満たして類似する類似テンプレートとのなかで、前記オブジェクトの形状に前記類似テンプレートが前記少なくとも1つのテンプレートよりも類似する場合に、前記類似する類似テンプレートを用いて前記オブジェクトを追跡する、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
ユーザーの入力操作として、表示部に表示された前記画像内の1点または前記画像の部分領域を指定する指定操作を受け付ける入力受付部と、
少なくとも前記複数のテンプレートに含まれる第1テンプレートおよび第2テンプレートを前記表示部に表示させる表示処理部と、
をさらに備え、
前記表示処理部は、
前記テンプレート選択部が前記第2テンプレートを特定せずに前記第1テンプレートを特定する場合に、前記表示処理部は前記複数のテンプレートの中から前記第2テンプレートよりも前記第1テンプレートに類似する第3テンプレートおよび第4テンプレートを前記表示部に表示する、
請求項2または請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記被検体の画像内のオブジェクトは、前記被検体内に留置されたオブジェクトの形状を示し、
前記テンプレート選択部は、
前記複数のテンプレートの中の少なくとも1つのテンプレートを、画像取得部により取得された被検体の画像に基づいて選択することとユーザーの入力操作に基づいて特定する、
請求項1から4のうち何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
ユーザーの入力操作として、表示部に表示された前記画像内の1点または前記画像の部分領域を指定する指定操作を受け付ける入力受付部をさらに備え、
前記テンプレート選択部は、前記入力受付部により受け付けられた前記ユーザーの指定操作に基づいて前記少なくとも1つのテンプレートを特定する、
請求項1から3のうち何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記テンプレート選択部は、前記画像内の1点を含む前記画像の領域または前記画像の部分領域との類似度に基づき、前記少なくとも1つのテンプレートを選択する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記テンプレート選択部は、前記類似度の閾値に基づき、前記少なくとも1つのテンプレートを選択する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記テンプレート選択部により特定された前記少なくとも1つのテンプレートに類似する類似テンプレートを示す情報を出力するテンプレート取得部をさらに備え、
前記追跡部は、前記テンプレート選択部により特定された前記少なくとも1つのテンプレートと、前記テンプレート取得部により出力された情報を用いて前記オブジェクトを追跡する、
請求項3から請求項8のうち何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記追跡部により追跡された前記オブジェクトの位置を、画像取得部により取得された前記被検体の画像に重ね合わせて表示部に表示させる表示処理部をさらに備えた、
請求項3から請求項9のうち何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記テンプレート選択部により特定された前記少なくとも1つのテンプレートに類似する類似テンプレートを示す情報を出力するテンプレート取得部をさらに備え、
前記追跡部は、前記テンプレート選択部により特定された前記少なくとも1つのテンプレートよりも、前記類似テンプレートの方が前記被検体の画像内のオブジェクトに類似する場合に前記類似テンプレートを用いて前記オブジェクトを追跡する、
請求項3から請求項8のうち何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記被検体内に留置されたオブジェクトは、金属製のマーカーであり、
前記被検体の画像内のオブジェクトは、前記被検体内に留置されたオブジェクトの形状を示し、
前記テンプレート選択部は、
前記複数のテンプレートの中の少なくとも1つのテンプレートを、前記被検体の画像内のオブジェクトの形状に基づいて選択する、
請求項1から請求項11のうち何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記被検体内に留置されたオブジェクトの3次元形状に基づき前記複数のテンプレートを生成するテンプレート取得部をさらに備えた、
請求項1から請求項12のうち何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記テンプレート選択部により選択されたテンプレートの内容に基づき、前記少なくとも1つの類似テンプレートを取得するテンプレート取得部
を備え、
前記テンプレート選択部は、
複数のテンプレートの中から前記複数のテンプレートの数よりも少ない、少なくとも1つのテンプレートを、画像取得部により取得された被検体の画像に基づいて選択することとユーザーの入力操作に基づいて特定することとの少なくとも一方を行い、
前記追跡部は、
前記テンプレート選択部により選択または特定された前記少なくとも1つのテンプレートを用いて前記被検体の画像内のオブジェクトを追跡し、
前記追跡部は、前記複数のテンプレートに含まれる2つ以上のテンプレートのうち、画像内の前記オブジェクトとの類似度が所定の条件を満たすテンプレートを特定し、
前記追跡部は、前記テンプレート取得部により出力された情報に基づき、前記オブジェクトの追跡に用いる1つ以上のテンプレートを切り換える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
複数のテンプレートの中の少なくとも1つのテンプレートを前記複数のテンプレートの中から選択するテンプレート選択部と、
前記テンプレート選択部により選択された前記少なくとも1つのテンプレートを用いて、被検体の画像内のオブジェクトを追跡する追跡部と、
を備え、
前記追跡部は、
前記複数のテンプレートに含まれる1つ以上のテンプレートのうち、前記被検体の画像内のオブジェクトとの類似度が所定の条件を満たすテンプレートを示す情報を用いて、前記被検体の画像内のオブジェクトの追跡に用いる1つ以上のテンプレートを切り換える、
を備えた情報処理システム。
【請求項16】
コンピュータに、
複数のテンプレートの中の少なくとも1つのテンプレートを前記複数のテンプレートの中から選択させ、
前記選択された前記少なくとも1つのテンプレートを用いて、被検体の画像内のオブジェクトを追跡させ、
前記複数のテンプレートに含まれる1つ以上のテンプレートのうち、前記被検体の画像内のオブジェクトとの類似度が所定の条件を満たすテンプレートを示す情報を用いて、前記被検体の画像内のオブジェクトの追跡に用いる1つ以上のテンプレートを切り換えさせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内のオブジェクトが撮影された画像を用いて、テンプレートマッチングの手法により前記オブジェクトの位置を検出する情報処理装置が知られている。このような手法の場合、テンプレートの数が多くなると、計算負荷が高くなり、オブジェクトの追跡精度のさらなる向上を図ることが難しくなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-131737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、被検体内のオブジェクトの追跡精度の向上を図ることができる情報処理装置、情報処理システム、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報処理装置は、テンプレート選択部と、追跡部と、を持つ。前記テンプレート選択部は、複数のテンプレートの中の少なくとも1つのテンプレートを選択する。前記追跡部は、前記テンプレート選択部により選択された前記少なくとも1つのテンプレートを用いて、被検体の画像内のオブジェクトを追跡する。さらに前記追跡部は、前記複数のテンプレートに含まれる1つ以上のテンプレートのうち、前記被検体の画像内のオブジェクトとの類似度が所定の条件を満たすテンプレートを示す情報を用いて、前記被検体の画像内のオブジェクトの追跡に用いる1つ以上のテンプレートを切り換える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の治療システム1の構成例を示す図。
図2】第1の実施形態の情報処理装置100のハードウェア構成例を示す図。
図3】第1の実施形態のマーカーMKの2次元平面での姿勢が考慮されたテンプレート210の一例を示す図。
図4】第1の実施形態のマーカーMKの3次元空間での姿勢が考慮されたテンプレート210を説明するための図。
図5】第1の実施形態の表示部1032に表示される操作画面Z110の一例を示す図。
図6】第1の実施形態のテンプレート選択画面Sの内容の一例を示す図。
図7】第1の実施形態のマーカーMKの位置の追跡処理を説明するための図。
図8】第1の実施形態の分離度の計算処理について説明するための図。
図9】第1の実施形態のテンプレート情報DB107aの内容の一例を示す図。
図10】第1の実施形態の選択テンプレート230を選択する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図11】第1の実施形態の類似テンプレート250を示す図。
図12】第1の実施形態の治療段階での処理の流れの一例を示すフローチャート。
図13】第1の実施形態の第1変形例のテンプレート選択画面Sの内容の一例を示す図。
図14】第1の実施形態の第2変形例のテンプレート選択画面Sの内容の一例を示す図。
図15】第1の実施形態の第3変形例のテンプレート選択画面Sの内容の一例を示す図。
図16】第1の実施形態の第3変形例のテンプレート情報DB107aの内容の一例を示す図。
図17】第1の実施形態の第4変形例の操作画面Z110の内容の一例を示す図。
図18】第1の実施形態の第4変形例の操作画面Z110の内容の一例を示す図。
図19】第2の実施形態の治療システム1の構成例を示す図。
図20】第2の実施形態の治療段階での処理の流れの一例を示すフローチャート。
図21】第3の実施形態の表示処理部106Aにより表示される画像IMの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の情報処理装置、情報処理システム、およびプログラムを、図面を参照して説明する。以下の実施形態では、情報処理装置、情報処理システム、およびプログラムが、放射線治療に関する装置およびシステムに適用される例を取り上げて説明する。ただし、情報処理装置、情報処理システム、およびプログラムは、上記例に限定されず、治療とは異なる他の用途に適用される情報処理装置、情報処理システム、およびプログラムであってもよい。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0008】
また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の情報処理装置100を含む治療システム1の構成例を示す図である。治療システム1は、例えば、放射線照射型の治療に用いられる治療システムである。ここで言う「放射線」とは、X線やγ線などの電磁波、および陽子線や重粒子線などの粒子線を含む。治療システム1は、「情報処理システム」の一例である。
【0010】
図1に示すように、治療システム1は、例えば、放射線照射装置10と、情報処理装置100とを備える。なおここでは、説明の便宜上、放射線照射装置10と、情報処理装置100とを分けて説明するが、情報処理装置100は、放射線照射装置10の一部として設けられてもよい。治療システム1は、放射線照射装置10および情報処理装置100に関連して、治療計画を管理する計画管理装置20をさらに備えてもよい。ここでは先に放射線照射装置10および計画管理装置20について説明し、その後、情報処理装置100について説明する。
【0011】
またここで、「被検体」および「オブジェクト」について定義する。「被検体」とは、情報処理装置100による情報処理の対象体を広く意味する。例えば、「被検体」とは、情報処理装置100によるオブジェクトの検出処理が行われる対象体を意味する。「被検体」は、情報処理装置100が治療システム1で用いられる場合、例えば患者である。「オブジェクト」とは、被検体の組織における腫瘍(病巣)などであってもよく、経皮的な処置により被検体内に留置されたマーカーなどであってもよい。本実施形態では、マーカーは、金属製である。マーカーは、例えば非球状であり、棒型や楔型などであるが、これら以外の形状でもよい。以下では、オブジェクトとして、被検体内に留置された金属製のマーカーが該当する例を示す。言い換えると、以下の説明における「マーカー」は、全て「オブジェクト」と読み替えられてもよい。
【0012】
[放射線照射装置]
放射線照射装置10は、被検体Pに向けて放射線を照射する装置である。放射線照射装置10は、例えば、寝台11と、放射線源(透視用放射線照射部)12-1、12-2と、放射線検出器13-1、13-2と、照射門14(治療ビーム照射部)と、制御部15と、入力表示部16とを備える。
【0013】
寝台11には、図示しない固定具により被検体Pが固定される。被検体Pは、固定具によって被検体Pの体位が変化しないように支持される。
【0014】
放射線源12-1は、被検体Pに対して透視用の放射線r-1を照射する。放射線源12-2は、放射線源12-1とは異なる位置(異なる角度)から被検体Pに対して透視用の放射線r-2を照射する。透視用の放射線r-1およびr-2は、例えばX線である。
【0015】
放射線検出器13-1は、被検体Pを間に挟んで放射線源12-1に向かい合う。放射線検出器13-1は、アレイ状に配置された検出素子を含み、放射線源12-1から照射された透視用の放射線r-1を検出する。放射線検出器13-1は、放射線r-1のエネルギーを検出し、前記エネルギーをデジタル変換し、第1画像(第1透視画像)を生成する。放射線検出器13-1は、生成した第1画像を、情報処理装置100の画像取得部102に出力する。ただし、第1画像の生成は、放射線検出器13-1の検出結果を受け取る画像取得部102で行われてもよい。
【0016】
放射線検出器13-2は、被検体Pを間に挟んで放射線源12-2に向かい合う。放射線検出器13-2は、アレイ状に配置された検出素子を含み、放射線源12-2から照射された透視用の放射線r-2を検出する。放射線検出器13-2は、放射線r-2のエネルギーを検出し、前記エネルギーをデジタル変換し、第2画像(第2透視画像)を生成する。放射線検出器13-2は、生成した第2画像を、情報処理装置100の画像取得部102に出力する。ただし、第2画像の生成は、放射線検出器13-2の検出結果を受け取る画像取得部102で行われてもよい。
【0017】
放射線検出器13-1および13-2は、フラット・パネル・ディテクタ(FPD:Flat Panel Detector)やイメージインテンシファイア、カラーイメージインテンシファイアなどである。図1では、2組の放射線源および放射線検出器を示したが、これに限定されない。放射線照射装置10は、3組以上の放射線源および放射線検出器を備えてもよい。なお、以下では説明の便宜上、第1画像および第2画像は、第1画像と第2画像とを分けて説明する場合を除いて、画像IMとして説明する。
【0018】
照射門14は、治療段階において、被検体Pに向けて治療ビームBを照射する。治療ビームBには、例えば、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、重粒子線などが含まれる。治療ビームBは、「エネルギー」の一例である。照射門14は、「照射部」の一例である。図1では、1つの照射門14のみ示す。ただし、放射線照射装置10は、複数の照射門14を備えてもよい。また、照射門14の位置は、図1に示す位置に限定されず、被検体Pと略水平方向で並ぶ位置などでもよい。
【0019】
制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、制御部15は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御部15は、例えば、図2を参照して後述する情報処理装置100のハードウェア構成と略同じ構成を有してもよい。
【0020】
制御部15は、後述する治療計画に基づき、所定の間隔(所定の周期)で透視用の放射線r-1およびr-2の照射を行うように放射線源12-1および12-2を制御する。また、制御部15は、治療計画に基づいて治療ビームBの照射を行うように照射門14を制御する。例えば、制御部15は、後述する情報処理装置100の追跡部105により追跡されたマーカーMKの位置に基づき、照射門14を制御する。
【0021】
入力表示部16は、例えば、タッチパネル、汎用キーボード、マウス、専用キー、ダイヤル、またはマイクなどの入力デバイスと、液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイなどの表示デバイスとを含む。入力表示部16は、情報処理装置100から出力される画像などを表示する。なお、入力表示部16は、後述する情報処理装置100の入力表示部103と一体でもよい。
【0022】
[計画管理装置]
計画管理装置20は、放射線治療における治療計画を記憶する計画データ記憶部25を有する。計画データ記憶部25は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)などである。ここで、「治療計画」について説明する。治療計画は、被検体Pに照射する放射線(例えば治療用ビームB)のエネルギー、照射方向、照射範囲の形状、複数回に分けて照射する線量の配分などを含む。治療計画の作成では、治療計画作成時に撮影されたCT(Computed Tomography)画像に対して、腫瘍と正常領域との境界、腫瘍周辺の重要臓器との境界が指定され、腫瘍の位置の体表面からの深さや腫瘍の大きさに基づいて、照射する治療ビームBの方向や強度が決定される。このとき、被検体P内に留置されたマーカーMKの位置も治療計画に登録される。
【0023】
腫瘍と正常領域との境界を指定することは、腫瘍の位置および体積を指定することになる。この体積は、GTV(Gross Target Volume)、CTV(Clinical Target Volume)、ITV(Internal Target Volume)、PTV(Planning Target Volume)などと呼ばれる。GTVは、画像から肉眼で確認できる腫瘍の体積であり、根治治療においては十分な線量が照射されなければならない部位である。CTVは、GTVと治療すべき潜在性の腫瘍とを含む体積である。ITVは、予測される生理的な動きなどによりCTVが移動することを考慮してCTVにマージンを付加した体積である。PTVは、治療時の位置合わせの誤差を考慮して、ITVにマージンを付加した体積である。したがって、これら体積には、GTV∈CTV∈ITV∈PTVの関係がある。このように、治療計画において設定された実際の治療時に生じる可能性のある誤差を考慮したマージンが加えられ、治療ビームBの照射野が決定される。この誤差としては、例えば被検体Pの位置決めにおける被検体Pの位置のずれなどがある。
【0024】
[情報処理装置]
被検体Pの腫瘍およびマーカーMKが肺や肝臓などの呼吸や心拍の動きによって移動してしまう場合、寝台11の位置が調整されても、照射対象である腫瘍の位置が移動する。このような場合には、照射対象の腫瘍の位置を特定して治療ビームBを照射する方法が利用される。このような照射方法には、腫瘍(またはマーカーMK)を追尾して移動中の腫瘍に対して治療ビームBを照射する追尾照射や、腫瘍(またはマーカーMK)が治療計画で設定された位置に来たときに治療ビームBを照射する待ち伏せ照射などがある。これらの照射方法は、呼吸同期照射方法などと呼ばれている。
【0025】
本実施形態の情報処理装置100は、例えば上記のような呼吸同期照射方法で利用される装置であり、放射線照射装置10から取得された画像IMに基づき、被検体P内のマーカーMKを追跡する装置である。情報処理装置100は、例えば、テンプレート取得部101と、画像取得部102と、入力表示部103と、テンプレート選択部104と、追跡部105と、表示処理部106と、記憶部107とを備える。
【0026】
これらの構成要素は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。記憶部107は、例えば、HDDやフラッシュメモリ、ROMなどである。
【0027】
図2は、情報処理装置100のハードウェア構成例を示す図である。情報処理装置100は、例えば、CPU100Aと、RAM(Random Access Memory)100Bと、不揮発性記憶装置100Cと、可搬型記憶媒体ドライブ装置100Dと、入出力装置100Eと、通信インターフェース100Fとを備える。情報処理装置100は、CPU100Aに代えて、GPUなどの任意のプロセッサを備えてもよい。また、図2に示した各構成要素のうち一部は、省略されてもよい。
【0028】
CPU100Aは、不揮発性記憶装置100Cに格納されたプログラム、または可搬型記憶媒体ドライブ装置100Dに装着された可搬型記憶媒体に格納されたプログラムをRAM100Bに展開して実行することで、以下に説明する種々の処理を行う。RAM100Bは、CPU100Aによってワーキングエリアとして使用される。不揮発性記憶装置100Cは、例えば、HDDやフラッシュメモリ、ROMなどである。可搬型記憶媒体ドライブ装置100Dには、DVDやCD(Compact Disc)、SD(登録商標)カードなどの可搬型記憶媒体が装着される。入出力装置100Eは、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、表示デバイスなどを含む。通信インターフェース100Fは、情報処理装置100が他装置と通信を行う場合のインターフェースとして機能する。
【0029】
図1に戻り説明すると、テンプレート取得部101は、被検体P内のマーカーMK(オブジェクト)に関する複数のテンプレート210を取得する。「テンプレート」とは、ある要素(本実施形態では被検体P内のマーカーMK)の典型的な形状を示すデータを意味する。本実施形態では、「テンプレート」とは、画像取得部102により取得される画像IM内に写り込むマーカーMKの像(以下、「マーカー像MKI」と称する)の外形形状を示すデータを意味する。「マーカー像MKI」とは、ある位置(例えば、放射線源12-1または12-2の位置)から見た、マーカーMKの投影像である。また、「テンプレートを取得する」とは、テンプレート取得部101がテンプレート210を生成する場合と、他の装置で生成されたテンプレート210を、テンプレート取得部101が受け取ることで取得する場合のいずれの場合も含む。テンプレート取得部101は、取得した複数のテンプレート210を、テンプレート選択部104、追跡部105、および表示処理部106に直接に出力してもよいし、記憶部107のテンプレート情報DB107aに格納してもよい。テンプレート情報DB107aに格納された複数のテンプレート210は、テンプレート選択部104、追跡部105、および表示処理部106が読み出し可能である。また本願では「テンプレートを取得する」とは、テンプレート情報DB107aに一度格納された情報をテンプレート情報DB107aから読み出す行為も該当する。
【0030】
上記のようなテンプレート210の種類としては、例えば、マーカーMKの2次元平面での姿勢が考慮されたテンプレート210と、マーカーMKの3次元空間での姿勢が考慮されたテンプレート210とがある。なお本実施形態では、マーカーMKが棒型のマーカーである例を取り上げて説明する。
【0031】
図3は、マーカーMKの2次元平面の姿勢が考慮されたテンプレート210の一例を示す図である。テンプレート210は、マーカー像MKIの外形形状(外形ライン)に対応する長方形MMを含む。すなわち、長方形MMの内側は、テンプレート210においてマーカー像MKIに対応する領域(第1領域Z1、マーカー対応領域)である。一方で、長方形MMの外側は、テンプレート210においてマーカー像MKIから外れた位置に対応する領域(第2領域Z2)である。図3中のLは、長方形MMの長辺の長さを示す。Lは、マーカー像MKIの長手方向の長さに対応する。図3中のTは、長方形MMの短辺の長さを示す。Tは、マーカー像MKIの太さに対応する。図3中のθは、基準線REFに対する長方形MMの傾きを示す。基準線REFは、テンプレート210に対して予め定められた特定の方向に延びた線分である。すなわち、θは、二次元平面におけるマーカーMKの向きを示す。四角形FWは、基準線REFに平行な四角形であって長方形MMに外接する四角形を示す。図3中のMは、四角形FWに対するマージンを示す。Mは、テンプレート210の大きさを定める量である。すなわち、四角形FWの各辺の長さに2Mを加えた長さがテンプレート210の大きさになり、テンプレート210の外形TPZが定まる。テンプレート取得部101は、例えば、上記θを様々に変えた複数のテンプレート210を生成することで、マーカーMKの様々な向きに対応した複数のテンプレート210を取得する。
【0032】
図4は、マーカーMKの3次元空間での姿勢が考慮されたテンプレート210を説明するための図である。図4は、図1に示した放射線照射装置10から、放射線源12-1、放射線検出器13-1および放射線r-1のみを抜粋して示し、さらに棒型のマーカーMKが3次元空間内に仮想的に配置された様子を示す。図4に示すように、テンプレート取得部101は、互いに直交する3つの軸C1、C2、C3周りの回転量であるθ、φ、ηを様々に変えた複数のテンプレート210を生成することで、マーカーMKの様々な向き(3次元空間での様々な姿勢)に対応した複数のテンプレート210を取得する。軸C1は、例えば、放射線r-1の経路方向に沿う軸である。テンプレート取得部101は、マーカーMKの3次元形状に基づき、複数のテンプレート210を生成する。なお、上述した長方形MM、第1領域Z1、第2領域Z2、長さL、幅T、大きさMなどの要素は、3次元空間での姿勢が考慮されたテンプレート210でも、上述した定義と同様の定義が用いられてよい。
【0033】
なお、上記2次元平面での姿勢が考慮されたテンプレート210と、上記3次元空間での姿勢が考慮されたテンプレート210とのいずれの場合であっても、複数の放射線源、放射線検出器がある場合には、複数の放射線検出器で構成された1組の放射線検出器で検出されたマーカー像MKIの組に対応するテンプレート210の組が用意されてもよい。
【0034】
また、テンプレート取得部101は、テンプレート選択部104によって選択または特定されたテンプレート210の内容に基づき、そのテンプレート210を規定する1つ以上のパラメータ(例えば、姿勢パラメータ(θ、φ、η))を微小に変更した1つ以上の類似テンプレート250を取得する。テンプレート取得部101は、取得した1つ以上の類似テンプレート250を示す情報を追跡部105に出力する。なお、この内容については詳しく後述する。
【0035】
図1に戻り説明すると、画像取得部102は、放射線検出器13-1、13-2から被検体Pの画像IMを受け取ることで、被検体Pの画像IMを取得する。被検体Pの画像IMとは、被検体Pの体内を示す画像であり、例えば被検体Pの透視画像である。被検体Pの画像IMには、マーカー像MKIが写り込む。ここで、マーカーMKは、金属製である。画像IMを撮影する際に用いられるX線は、金属に吸収されやすい。このため、被検体Pの画像IMにおいて、マーカー像MKIに対応する部分は、周囲に比べて暗く表示される。画像取得部102は、取得した被検体Pの画像IMを、追跡部105と表示処理部106とに出力する。
【0036】
入力表示部103は、例えば、入力受付部1031と、表示部1032とを備える。入力受付部1031は、例えば、タッチパネル、汎用キーボード、マウス、専用キー、ダイヤル、マイクなどの入力デバイスである。入力受付部1031は、ユーザーの入力操作を受け付ける。「ユーザーの入力操作」は、タッチパネルやキーボードを操作する操作に限らず、マイクに対する音声入力でもよい。本実施形態では、入力受付部1031は、複数のテンプレート210に含まれる1つ以上のテンプレート210を選択する(指定する)ユーザーの選択操作を受け付ける。本実施形態では、入力受付部1031は、表示部1032に表示された2つ以上のテンプレート210の中から1つ以上のテンプレート210を選択するユーザーの選択操作を受け付ける。
【0037】
表示部1032は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示デバイスである。表示部1032は、ユーザーが入力受付部1031に対する入力操作中に見ることができる表示画面を有する。なお、情報処理装置100には、ノート型パーソナルコンピュータやタブレット端末装置のようなユーザー端末装置が有線または無線によって通信可能に接続されてもよい。この場合、入力表示部103は、入力デバイスおよび表示デバイスを有しなくてもよい。この場合、入力受付部1031は、ユーザー端末装置に入力されたユーザーの入力操作の内容を、ユーザー端末装置から受信することで前記ユーザーの入力操作を受け付ける受信部である。
【0038】
テンプレート選択部104は、テンプレート取得部101により取得された複数のテンプレート210の中から、前記複数のテンプレート210の数よりも少ない、少なくとも1つのテンプレート210(以下、「選択テンプレート230」と称する)を選択または特定する。選択テンプレート230は、追跡部105によるマーカーMKの追跡に用いられるテンプレートである。例えば、テンプレート選択部104は、画像取得部102により取得された画像IMに基づいて、少なくとも1つの選択テンプレート230を選択する。なお、画像取得部102により取得された画像IMに基づいて選択テンプレート230が選択される例は、本実施形態の変形例の中で詳しく説明する。本実施形態では、テンプレート選択部104は、入力受付部1031により受け付けられたユーザーの入力操作に基づき、少なくとも1つの選択テンプレート230を特定する。例えば、テンプレート選択部104は、入力受付部1031により受け付けられた、1つ以上の選択テンプレート230を選択するユーザーの選択操作に基づき、少なくとも1つの選択テンプレート230を特定する。例えば、テンプレート選択部104は、入力受付部1031により受け付けられた1つ以上の選択テンプレート230を識別するための識別情報(例えば、各テンプレート210に対応して登録された識別ID)を入力受付部1031から取得し、複数のテンプレート210の中から前記識別情報に対応するテンプレート210を照合することで、ユーザーにより選択された選択テンプレート230を特定する。
【0039】
図5は、表示部1032に表示される操作画面Z110の一例を示す図である。図5に示すように、操作画面Z110は、テンプレート選択画像表示領域Z111と、画像表示領域Z112とを含む。少なくとも、テンプレート選択画像表示領域Z111と、画像表示領域Z112は、操作画面Z110において並べて配置されている。テンプレート選択画像表示領域Z111には、表示処理部106による制御に基づき、テンプレート選択画面Sが表示される。テンプレート選択画面Sに、テンプレート取得部101によって取得された複数のテンプレート210(以下、「候補テンプレート220」と称する)に含まれる2つ以上の候補テンプレート220が表示される。一方で、画像表示領域Z112には、表示処理部106による制御に基づき、画像取得部102により取得された画像IMが表示される。画像取得部102により取得された画像IMは、被検体P内のマーカー像MKIを含む。
【0040】
なお、操作画面Z110のレイアウトは、上記例に限定されない。例えば、テンプレート選択画像表示領域Z111と画像表示領域Z112の配置位置は、上記例に限定されない。また、上記の情報以外の情報が操作画面Z110内に表示されてもよい。例えば、CT画像、DRR、被検体Pに関する諸情報などが表示されてもよい。情報処理装置100は、テンプレート選択画面Sと画像IMとを操作画面Z110内に纏めて表示することに代えて、テンプレート選択画面Sと画像IMとが別々のウィンドウに表示されてもよい。また、表示部1032は、テンプレート選択画面Sを表示する第1モニタと、画像IMを表示する第2モニタとを別々に備えてもよい。
【0041】
図6は、テンプレート選択画面Sの内容の一例を示す図である。図6に示すように、テンプレート選択画面Sには、視覚的に互いに異なる複数の候補テンプレート220が表示される。例えば、複数の候補テンプレート220は、マーカー対応領域を示す長方形MMの長手方向の向きが互いに異なる。
【0042】
図6に示される複数の候補テンプレート220は、テンプレートの外形TPZ内の長方形MMの向きを順に変化させた複数のテンプレートである。例えば、各候補テンプレート220は、マーカーMKの姿勢を表すパラメータ(θ、φ、η)のうち少なくとも1つを所定の規則に従って変えて生成されたテンプレートである。パラメータ(θ、φ、η)の各々は、テンプレート210を規定するパラメータの一例である。候補テンプレート220の表示順序は、上記の所定の規則に従いパラメータ(θ、φ、η)を変化させた方向に従って並べてもよい。パラメータ(θ、φ、η)の変化は、略連続的でもよく、15度間隔など所定の間隔でもよい。
【0043】
本実施形態では、表示処理部106は、さらに、画像取得部102により取得された被検体P内のマーカー像MKIを含む画像IMを画像表示領域Z112に表示させる。そして、入力受付部1031は、表示処理部106により被検体P内のマーカー像MKIを含む画像IMが画像表示領域Z112に表示された状態で、テンプレート選択画面Sに表示された2つ以上の候補テンプレート220の中から1つ以上の選択テンプレート230を選択するユーザーの選択操作を受け付ける。すなわち、ユーザーは、画像IM内のマーカー像MKIを観察しながら、テンプレート選択画面S内に表示される候補テンプレート220の中で、マーカー像MKIに対する類似度が高い選択テンプレート230を選択する。その選択操作の方法は、ユーザーがマウスなどを用いて操作画面Z110上に表示されたボタンを押下して選択するようにしてもよい。あるいは、その選択操作の方法は、テンプレート選択画面Sに重なるタッチパネルが設けられる場合は、テンプレート選択画面Sの中で選択テンプレート230が表示された特定部分がタッチされることで、選択テンプレート230が選択されてもよい。
【0044】
これにより、テンプレート選択部104は、ユーザーの選択操作に基づき選択テンプレート230を特定する。テンプレート選択部104は、特定した選択テンプレート230を示す情報を、追跡部105に出力する。なお、「テンプレートを示す情報」とは、テンプレートそのものの画像データでもよいし、テンプレートを識別するための識別情報でもよい。
【0045】
追跡部105は、画像取得部102により取得された画像IMと、テンプレート選択部104によって選択または特定された少なくとも1つの選択テンプレート230とを用いて、マーカーMK(例えばマーカーMKの位置)を追跡する。本実施形態では、追跡部105は、選択テンプレート230を用いて、テンプレートマッチングの手法によって、画像IM内のマーカーMKの位置を追跡する。
【0046】
図7は、マーカーMKの位置の追跡処理を説明するための図である。追跡部105は、所定の間隔で画像取得部102により取得された画像IMに対して選択テンプレート230を重ねて(すなわち合成し)、所定の範囲(計算領域)に対して選択テンプレート230を走査させる。前記所定の範囲は、画像IM全域でもよく、画像IMの一部領域であってもよい。例えば、追跡部105は、過去の治療において求めたマーカーMKの位置に基づいて、マーカーMKの軌跡の近くを含むように前記所定の範囲を限定してもよい。
【0047】
上記計算領域は、画像IMにおいて選択テンプレート230と重なる領域と、選択テンプレート230との類似度を計算する範囲を意味する。例えば、追跡部105は、計算領域において画像IMと選択テンプレート230との類似度を計算して、類似度が閾値以上であり、且つ、類似度が最大となる位置を、画像IMにおけるマーカーMKの位置として特定する。追跡部105による類似度の計算方法は、画像IMと選択テンプレート230との画素ごとに相関を求めた正規化相互相関や相互情報量などに基づいてもよい。なお本実施形態では、追跡部105は、類似度の指標として以下に示す分離度を用いる。
【0048】
図8は、分離度の計算処理について説明するための図である。図8中の(a)は、選択テンプレート230の一例を示す。選択テンプレート230の外形TPZの内側領域は、長方形MMで囲まれた第1領域Z1とそれ以外の第2領域Z2とに分かれる。第1領域Z1は、マーカー像MKIに対応する領域である。第2領域Z2は、マーカー像MKIに対応しない領域である。
【0049】
図8中の(b)は、画像取得部102により取得された画像IMに対して、第1位置T1に配置された選択テンプレート230と、第2位置T2に配置された選択テンプレート230とを示す。第1位置T1は、選択テンプレート230とマーカー像MKIとが重ならない位置である。第2位置T2は、選択テンプレート230とマーカー像MKIとが重なる位置である。
【0050】
図8中の(c)は、第1位置T1に選択テンプレート230が配置された場合における、画像IMと選択テンプレート230とを合成した合成画像IMZ10の輝度分布(画素値)を示す。図8中の(c)に示すように、第1位置T1に選択テンプレート230が配置された場合、第1位置T1における第1領域Z1および第2領域Z2それぞれの画素値のヒストグラムは、互いに同じ傾向を示す。すなわち、第1領域Z1の画素値のヒストグラムHG11と第2領域2の画素値のヒストグラムHG12との差(例えば、頻度の最大値を示す画素値の大きさの差)は、予め設定された閾値未満である。
【0051】
図8中の(d)は、第2位置T2に選択テンプレート230が配置された場合における、画像IMと選択テンプレート230とを合成した合成画像IMZ20の輝度分布(画素値)を示す。図8中の(d)に示すように、第2位置T2に選択テンプレート230が配置された場合、第2位置T2における第1領域Z1および第2領域Z2それぞれの画素値のヒストグラムは、互いに異なる傾向を示す。すなわち、2つのヒストグラムが分離される。つまり、第1領域Z1の画素値のヒストグラムHG21と第2領域Z2の画素値のヒストグラムHG22との差(例えば、頻度の最大値を示す画素値の大きさの差)は、前記閾値以上となる。
【0052】
これは、第1領域Z1とマーカー像MKIとが重なった場合のヒストグラムHG21では、第1領域Z1では、第2領域Z2に比べて暗い画素の頻度が高くなるためである。一方で、第2領域Z2は、明るい画素の頻度が比較的高くなり、第1領域Z1に対する分離の傾向がより顕著になる。これに対し、第1領域Z1とマーカー像MKIとが重ならない場合のヒストグラムでは、第1領域Z1と第2領域Z2の頻度の分布の傾向に大きな違いは現れてない。このように、選択テンプレート230内の2つの領域Z1とZ2とについて、解析単位(画素)ごとの明るさの分布について解析することで選択テンプレート230の位置がマーカーMKの位置に対応した位置にあるか否かを判定することができる。
【0053】
例えば、追跡部105は、フィッシャーの判別基準の手法を用いて、ヒストグラムの分離性を数値化する。追跡部105による処理では、第1領域Z1と第2領域Z2のそれぞれの領域内の画素値(輝度)の分散の平均(クラス内分散)と、第1領域Z1と第2領域Z2との間の画素値(輝度)の分散(クラス間分散)との比を算出する。この比を分離度とする。
【0054】
以上の構成により、追跡部105は、選択テンプレート230を用いてマーカーMKの位置を検出し、マーカーMKの位置を追跡する。追跡部105は、追跡したマーカーMKの位置を示す情報を表示処理部106に出力する。
【0055】
表示処理部106は、表示部1032の表示を制御する制御部である。表示処理部106は、表示部1032に表示させる所望の内容を示す情報を生成し、生成した情報を表示部1032に出力することで前記所望の内容を表示部1032に表示させる。
【0056】
表示処理部106は、テンプレート210の選択段階において、被検体P内のマーカーMKに関する複数の候補テンプレート220に含まれる1つ以上の候補テンプレート220を表示部1032に表示させる。また、表示処理部106は、画像取得部102により取得された画像IMを表示部1032に表示させる。
【0057】
表示処理部106は、追跡部105によるマーカーMKの追跡段階において、追跡部105により追跡されたマーカーMKの位置を示す情報を表示部1032に表示させる。例えば、表示処理部106は、追跡部105により追跡されたマーカーMKの位置を、画像取得部102により取得された画像IMと関連付けて表示部1032に表示させる。「関連付けて表示」とは、例えば、追跡部105により追跡されたマーカーMKの位置を示す表示が画像IMと重ね合わされて表示されることを意味する。また、表示処理部106は、追跡部105によりマーカーMKの追跡中に、追跡に用いられているテンプレート210を表示してもよい。この場合、テンプレート210の位置は、画像IMに重ね合わせた位置でもよく、画像IMに並ぶように配置した位置であってもよい。
【0058】
記憶部107は、テンプレート情報DB107aを記憶する。図9は、テンプレート情報DB107aの内容の一例を示す図である。テンプレート情報DB107aには、テンプレート識別情報、テンプレート画像情報、特徴量、類似度、選択中であることを示す情報などのデータが格納される。テンプレート識別情報には、テンプレート210を一意に識別するための識別情報が格納される。テンプレート画像情報には、テンプレート210の画像データが格納される。特徴量には、テンプレート210の特徴を示すデータが格納される。特徴量には、例えば、長さL、幅T、角度θ、角度φ、角度η、大きさMなどのデータを含んでもよい。角度θと角度φと角度ηは、マーカーMKの姿勢を表す姿勢パラメータである。長さL、幅T、大きさMは、マーカーMKの姿勢以外の特徴を示すデータである。類似度は、例えば、そのテンプレート210と、少なくとも1つの別のテンプレート210との間の類似度を示すデータが格納される。選択中であることを示す情報には、そのテンプレート210が選択された状態にあることを示すデータが格納される。
【0059】
テンプレート識別情報の欄に示されるID_i、ID_j、ID_k、ID_lなどの各テンプレート210は、例えば、角度θを変化させたテンプレートの一例である。前述の図7は、上記の各テンプレート210が表示された場合の一例である。
【0060】
次に、本実施形態の治療システム1を用いた治療の流れの一例を説明する。この治療の流れは、治療計画作成段階、テンプレート選択段階、および治療段階に大きく分かれる。
【0061】
[治療計画作成段階]
治療計画は、治療が行われる日に対して前もって(例えば1週間程度前)に作成される。治療計画の作成では、CT撮影を行って被検体P内の腫瘍の位置や形状、大きさを含む被検体Pの体内の3次元情報が取得される。そして、前記3次元情報に基づき、被検体Pに対する治療ビームBの照射条件(照射位置や照射タイミングなど)が設定される。
【0062】
[テンプレート選択段階]
選択テンプレート230の選択は、例えば、治療ビームBを用いた治療の直前であって、放射線照射装置10に対する被検体Pの位置決め(被検体Pが横たわる寝台11の位置決め)が行われた後に行われる。ここで、被検体Pの位置決めは、例えば次の流れで行われる。まず、被検体Pを寝台11に寝かせた状態で放射線源12-1、12-2および放射線検出器13-1、13-2を用いて被検体Pの透視画像が取得される。そして、この透視画像に含まれる被検体P内の腫瘍や骨の位置を治療計画における被検体P内の腫瘍や骨の位置と合わせるために、前記透視画像と、治療計画作成段階で撮影された3次元のCT画像から仮想的に透視画像が再構成されたDRR(Digitally Reconstructed Radiograph)とが画像照合される。これにより、現時点での被検体Pの位置と、治療計画における被検体Pの位置との間のずれを求める。被検体Pの位置ずれは、前記透視画像に対して最も類似するDRRが再構成されるCT画像の位置が探索されることで求まる。そして、被検体Pの位置ずれを無くすように寝台11を移動させる。寝台11を移動させた後に、放射線源12-1、12-2および放射線検出器13-1、13-2を用いて被検体Pの透視画像が再取得される。そして、再取得された透視画像と、DRRとの画像照合を行い、被検体Pの位置ずれが閾値以内であれば、被検体Pの位置決めが完了する。
【0063】
本実施形態では、複数の候補テンプレート220から選択テンプレート230が選択される処理は、上記被検体Pの位置決めの後に行われる。すなわち、選択テンプレート230が選択される処理は、画像取得部102により取得される画像IMに基づく被検体Pの位置決めが行われた後に行われる。本実施形態では、選択テンプレート230が選択される処理は、画像取得部102により取得される画像IMに被検体P内のマーカー像MKIが含まれる位置に被検体Pが位置合わせされた後に行われる。別の観点でみると、画像取得部102により取得される画像IMに含まれるマーカー像MKIと、テンプレート210に含まれるマーカー対応領域(第1領域Z1)とが比較可能な位置に被検体Pが位置決めされた後に、選択テンプレート230が選択される処理が行われると言える。
【0064】
図10は、選択テンプレート230を選択するための処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、テンプレート取得部101は、複数の候補テンプレート220を取得する(S101)。このS101の処理は、被検体Pの位置決めや治療計画の作成の前に行われてもよい。テンプレート取得部101は、取得した複数の候補テンプレート220を、テンプレート選択部104や表示処理部106に直接に出力してもよく、記憶部107のテンプレート情報DB107aに格納してもよい。
【0065】
次に、表示処理部106は、テンプレート取得部101により取得された複数の候補テンプレート220に含まれる2つ以上の候補テンプレート220を、表示部1032のテンプレート選択画像表示領域Z111に表示させる(S102)。また、表示処理部106は、画像取得部102により取得された被検体P内のマーカー像MKIを含む画像IMを、表示部1032の画像表示領域Z112に表示させる(S103)。これにより、ユーザーは、被検体P内のマーカー像MKIを含む画像IMを見ながら、2つ以上の候補テンプレート220の中から選択する選択テンプレート230を検討することができる。なお、S103で表示部1032に表示されるマーカー像MKIを含む画像IMは、被検体Pの位置決め用に取得された画像IM(例えば、被検体Pの位置決めの最後の段階で、被検体Pの位置ずれが閾値以内であることを確認するために再取得された透視画像)でもよいし、被検体Pの位置決めが完了した後に改めて画像取得部102により取得された画像IMでもよいし、過去の治療時に撮影された画像IMでもよい。また、S102の処理とS103の処理は、同時に行われてもよく、どちらが先に行われてもよい。
【0066】
次に、入力受付部1031は、2つ以上の候補テンプレート220およびマーカー像MKIを含む画像IMが表示部1032に表示された状態で、1つ以上の選択テンプレート230を選択するユーザーの選択操作を受け付ける(S104)。次に、テンプレート選択部104は、ユーザーの選択操作に基づき、1つ以上の選択テンプレート230を特定する(S105)。テンプレート選択部104は、特定した選択テンプレート230を示す情報を、追跡部105およびテンプレート取得部101に出力する(S106)。
【0067】
次に、テンプレート取得部101は、テンプレート選択部104によって特定された選択テンプレート230の内容(例えば、選択テンプレート230を規定するパラメータ(例えば、姿勢パラメータ(θ、φ、η))に基づき、1つ以上の類似テンプレート250を取得する(S107)。
【0068】
図11は、類似テンプレート250を示す図である。図11に示すように、例えば、テンプレート取得部101は、テンプレート選択部104によって特定された選択テンプレート230を基準テンプレート240として、基準テンプレート240を規定する1つ以上のパラメータ(例えば姿勢パラメータ(θ、φ、η))を微小に変更することで、1つ以上の類似テンプレート250を取得する。「パラメータを微小に変更」とは、例えば、類似テンプレート250が、表示部1032に表示された2つ以上の候補テンプレート220の中で選択されなかった候補テンプレート220と比べて、選択された選択テンプレート230に類似する範囲でのパラメータの変更である。「パラメータを微小に変更」とは、例えば、被検体Pの生理現象や被検体Pの位置決め誤差によるマーカー像IMKの大きさや向きの誤差を吸収するための変更である。例えば、テンプレート取得部101は、テンプレート選択部104によって選択された選択テンプレート230を基準として、パラメータθを微小に変更した1つ以上の類似テンプレート250、パラメータφを微小に変更した1つ以上の類似テンプレート250、およびパラメータηを微小に変更した1つ以上の類似テンプレート250を取得する。なお、類似テンプレート250は、テンプレート取得部101により当初に取得される複数の候補テンプレート220に含まれるテンプレートでもよい。すなわち、類似テンプレート250は、選択テンプレート230が選択された後に生成されるテンプレートでなくてもよい。テンプレート取得部101は、これら類似テンプレート250を示す情報を、追跡部105に出力する(S108)。
【0069】
その後、追跡部105によりマーカーMKを追跡可能か否かの確認が行われる。すなわち、画像取得部102により所定の間隔で取得される画像IMと、選択テンプレート230および類似テンプレート250とを用いて、追跡部105がマーカーMKを追跡可能か否かが確認される。この確認は、例えば、被検体Pの数回の呼吸の時間長さに亘って行われる。追跡部105によりマーカーMKが追跡可能であることが確認された場合、テンプレート210の選択に関する一連の処理が終了する。
【0070】
[治療段階]
図12は、治療段階での処理の流れの一例を示すフローチャートである。図12に示すように、画像取得部102は、所定の間隔で、被検体P内のマーカーMKを含む画像IMを取得する(S201)。画像取得部102は、取得した画像IMを、追跡部105および表示処理部106に出力する。
【0071】
追跡部105は、テンプレート選択部104により特定された選択テンプレート230と、テンプレート取得部101により取得された類似テンプレート250とを用いて、被検体P内のマーカーMKの位置を追跡する(S202)。すなわち、追跡部105は、選択テンプレート230および類似テンプレート250を用いて画像IMを走査することで、被検体P内のマーカーMKの位置を追跡する。追跡部105は、追跡した被検体P内のマーカーMKの位置を、放射線照射装置10と、表示処理部106とに出力する。
【0072】
放射線照射装置10の制御部15は、追跡部105により追跡された被検体P内のマーカーMKの位置に基づき、治療ビームBを照射するように照射門14を制御する。制御部15は、例えば、追跡部105により追跡された被検体P内のマーカーMKが所定領域に入った場合に、照射門14を制御することで(例えば照射門14に制御信号を送ることで)、治療ビームBを照射する(S203)。前記所定領域は、治療計画で求められた腫瘍の位置とマーカーMKの位置との関係およびPTVなどに基づいて定められている。例えば、CT画像上のマーカーMKの位置を中心としてマージンを付加した3次元領域が前記所定領域に該当する。また、この領域を画像IM上に射影させた領域を前記所定領域としてもよい。その他に、治療直前の被検体Pの状態を考慮して、そのときに付加されたマージンに従って前記所定領域が定められてもよい。
【0073】
表示処理部106は、画像取得部102により所定の周期で取得される画像IMと、追跡部105により追跡されるマーカーMKの位置とを関連付ける情報を生成し、生成した情報を表示部1032に表示させる(S204)。なお、S203の処理とS204の処理は、同時に行われてもよく、どちらが先に行われてもよい。以上説明したS201からS204の処理は、治療が終了するまで繰り返し続けられる。
【0074】
以上のような実施形態によれば、情報処理装置100は、画像取得部102と、テンプレート選択部104と、追跡部105とを持つ。テンプレート選択部104は、マーカーMKに関する複数の候補テンプレート220の中から複数の候補テンプレート220の数よりも少ない、少なくとも1つの選択テンプレート230を、ユーザーの入力操作に基づいて特定する。追跡部105は、テンプレート選択部104によって特定された少なくとも1つの選択テンプレート230を用いて、画像取得部102により取得された画像IMに含まれるマーカーMKを追跡する。
【0075】
このような構成によれば、ユーザーの入力操作に基づき、複数の候補テンプレート220の中から絞り込まれた選択テンプレート230を用いてマーカーMKを追跡することができる。このため、全ての候補テンプレート220を用いてマーカーMKを走査する場合に比べて、情報処理装置100の計算負荷を低減することができる。これにより、マーカーMKの追跡のリアルタイム性をさらに高めることができる。このため、マーカーMKの追跡精度の向上を図ることができる。また別の観点で見ると、複数の候補テンプレート220の中から絞り込まれた選択テンプレート230を用いてマーカーMKを追跡することで、マーカー以外の部分と類似度が高いテンプレートが追跡に用いられることを避けることができる。このため、追跡における誤検出の可能性を下げることができる。このような観点でもマーカーMKの追跡精度の向上を図ることができる。
【0076】
本実施形態では、入力受付部1031は、ユーザーの入力操作として、その複数の候補テンプレート220に含まれる少なくとも1つの選択テンプレート230を選択する(指定する)ユーザーの選択操作(指定操作)を受け付ける。テンプレート選択部104は、入力受付部1031により受け付けられたユーザーの選択操作に基づいて少なくとも1つの選択テンプレート230を特定する。このような構成によれば、マーカー像MKIに対して類似度が高い選択テンプレート230を、ユーザーによって直接に指定してもらうことができる。これにより、マーカー像MKIに対してより類似した選択テンプレート230を用いて走査を行うことができ、マーカーMKの追跡精度のさらなる向上を図ることができる。
【0077】
本実施形態では、情報処理装置100は、複数の候補テンプレート220に含まれる2つ以上の候補テンプレート220を表示部1032に表示させる表示処理部106をさらに有する。入力受付部1031は、表示部1032に表示された2つ以上の候補テンプレート220の中から1つ以上の選択テンプレート230を選択するユーザーの選択操作を受け付ける。このような構成によれば、ユーザーは、表示部1032に表示された被検体P内のマーカー像MKIを参考にして、選択テンプレート230を選択することができる。これにより、マーカー像MKIに対してより類似した選択テンプレート230を、ユーザーによって選んでもらうことができる。これにより、マーカーMKの追跡精度のさらなる向上を図ることができる。
【0078】
本実施形態では、入力受付部1031は、表示処理部106により被検体P内のマーカー像MKIを含む画像IMが表示部1032に表示された状態で、ユーザーの選択操作を受け付ける。このような構成によれば、ユーザーは、表示部1032に表示された被検体P内のマーカー像MKIを観察しながら、選択テンプレート230を選択することができる。これにより、マーカー像MKIに対してより類似した選択テンプレート230を、ユーザーによって選んでもらうことができる。
【0079】
本実施形態では、入力受付部1031は、ユーザーの入力操作を受け付ける。テンプレート選択部104は、被検体内のマーカーMKの形状に関する複数のテンプレート210の中から少なくとも1つの選択テンプレート230を、入力受付部1031により受け付けられたユーザーの入力操作に基づいて特定する。追跡部105は、特定された少なくとも1つの選択テンプレート230を用いて、マーカーMKを含む画像内でマーカーMKを追跡する。これにより、マーカーMKの追跡精度のさらなる向上を図ることができる。
【0080】
ただし、実施形態は、上記例に限定されない。例えば、追跡部105によるマーカーMKの追跡方法は、上記例に限定されない。例えば、追跡部105は、テンプレート取得部101により取得された類似テンプレート250を用いずに、テンプレート選択部104により特定された選択テンプレート230のみを用いてマーカーMKを追跡してもよい。
【0081】
また、テンプレート取得部101は、テンプレート選択部104により特定された少なくとも1つの選択テンプレート230に類似する類似テンプレート250を示す情報を出力する。例えば、テンプレート取得部101は、テンプレート選択部104により特定された少なくとも1つの選択テンプレート230の内容に基づき、少なくとも1つの選択テンプレートを規定する1つ以上のパラメータが変更された1つ以上の類似テンプレート250を取得する。この場合、テンプレート選択部104により特定された少なくとも1つの選択テンプレート230よりも、類似テンプレート250の方が画像IM内のマーカーMKに類似する場合に類似テンプレート250を用いてマーカーMKを追跡する。その際、追跡部105は、テンプレート選択部104により特定された少なくとも1つの選択テンプレート230と、テンプレート取得部101により取得された1つ以上の類似テンプレート250とを用いてマーカーMKを追跡してもよい。このような構成によれば、体内の呼吸性移動や心拍の変動などに応じてマーカー像MKIの形状が変化する場合であっても、類似テンプレート250によりマーカーMKを精度良く追跡することができる。
【0082】
次に、第1の実施形態のいくつかの変形例を説明する。なお、各変形例の構成において、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0083】
(第1変形例)
図13は、第1変形例のテンプレート選択画面Sの内容の一例を示す図である。図13に示すように、本変形例の表示処理部106は、2つ以上の候補テンプレート220(図13では1つの候補テンプレート220のみを示す。)を、表示部1032に表示させる。例えば、表示処理部106は、1つ又は2つ以上の候補テンプレート220を、画像取得部102により取得された画像IMに重ね合わせた状態で、表示部1032のテンプレート選択画面Sに表示させる。この場合、表示処理部106は、画像取得部102により取得された治療前の画像IMの任意の位置を切り出した画像と2値化された候補テンプレート220の画像とをαブレンドなどの画像合成処理によって合成し、合成された画像をテンプレート選択画面Sに表示してもよい。αブレンドは、2つの画像を重ね合わせる画像合成処理の一手法であり、これにより背景にする画像の特定の位置に他の画像を重ねることができる。なお、表示処理部106は、2つ以上の候補テンプレート220のそれぞれを、画像IMに重ね合わせた状態で表示部1032に表示させてもよい。
【0084】
このような構成によれば、ユーザーは、画像取得部102により取得される実際の被検体Pの画像IMに含まれるマーカー像MKIと比較しやすい状態で、候補テンプレート220を見ることができる。これにより、マーカー像MKIに対してより類似した選択テンプレート230を、ユーザーによって選んでもらうことができる。これにより、マーカーMKの追跡精度のさらなる向上を図ることができる。
【0085】
(第2変形例)
図14は、第2変形例のテンプレート選択画面Sの内容の一例を示す。図14中の(a)に示すように、本変形例では、表示処理部106は、少なくとも複数の候補テンプレート220に含まれる(第1テンプレート(ID_i)および第2テンプレート(ID_j)を表示部1032に表示させる。例えば、テンプレート選択画面Sには、テンプレート210内の長方形MMの向きが互いに異なる2つの候補テンプレート220(第1テンプレート(ID_i)、第2テンプレート(ID_j))が並べて表示される。2つの候補テンプレート220は、テンプレート取得部101により取得された複数の候補テンプレート220に含まれるテンプレートである。そして、入力受付部1031は、テンプレート選択画面Sに表示された2つの候補テンプレート220からいずれか一方を選択するユーザーの選択操作を受け付ける。
【0086】
ユーザーが第1テンプレート(ID_i)を選択し、それに対する選択操作を入力受付部1031が検出した場合には、テンプレート選択部104は、テンプレート(ID_j)を特定せずにテンプレート(ID_i)を特定する。この場合、テンプレート選択部104は、テンプレート選択画面Sに次に表示させる候補テンプレート220として、複数の候補テンプレート220の中から選択されなかったテンプレート(ID_j)よりも選択されたテンプレート(ID_i)に類似する他の候補テンプレート220(第3テンプレート(ID_(i-1))、第4テンプレート(ID_(i+1))を選択する。ここれにより、表示処理部106は、複数の候補テンプレート220の中からテンプレート(ID_j)よりもテンプレート(ID_i)に類似する他の候補テンプレート220(テンプレート(ID_(i-1))、テンプレート(ID_(i+1))を表示部1032に表示することができる。なお、テンプレート(ID_(i-1))は、「第3テンプレート」の一例であり、テンプレート(ID_(i+1))は、「第4テンプレート」の一例である。
【0087】
図14中の(b)に示すように、次に、表示処理部106は、テンプレート選択画面Sを次の画面(遷移画面1)に遷移させる。この遷移画面1では、1つ前の選択動作で選択されなかったテンプレート(ID_j)よりも選択されたテンプレート(ID_i)に類似する2つの候補テンプレート220(テンプレート(ID_(i-1))、テンプレート(ID_(i+1))が表示される。そして、入力受付部1031は、遷移画面1において表示された2つの候補テンプレート220の中からいずれか一方を選択するユーザーの選択操作を受け付ける。また、入力受付部1031は、新たな候補テンプレート220を選択するか、1つ前の選択で選択した候補テンプレート220を選択するかの選択を示すユーザーの選択操作を受け付ける。
【0088】
なお上記の説明は、ユーザーが第1テンプレート(ID_i)を選択した例を示すが、ユーザーが第2テンプレート(ID_j)を選択した場合も同様である。この場合は、表示処理部106は、図4中の(c)に示すように、テンプレート選択画面Sを遷移画面1とは異なる遷移画面2に遷移させる。この遷移画面2では、1つ前の選択動作で選択されなかったテンプレート(ID_i)よりも選択された選択されたテンプレート(ID_j)に類似する2つの候補テンプレート220(テンプレート(ID_(j-1))、テンプレート(ID_(j+1))が表示される。そして、入力受付部1031は、遷移画面2において表示された2つの候補テンプレート220の中からいずれか一方を選択するユーザーの選択操作を受け付ける。また、入力受付部1031は、新たな候補テンプレート220を選択するか、1つ前の選択で選択した候補テンプレート220を選択するかを示すユーザーの選択操作を受け付ける。
【0089】
情報処理装置100は、上記のような選択を受け付ける処理を繰り返し、新たな候補テンプレート220の選択が不要とされた段階で、追跡に用いる選択テンプレート230を特定する。なお、上記の説明は二項対立型の2択方式に関するものであるが、一度に表示する候補テンプレート220の枚数を3枚以上に増やして、より多くの候補から1つの選択テンプレート230を指定する方式(多数択一方式)が実施されてもよい。
【0090】
このような構成によれば、テンプレート選択画面Sに一度に表示される候補テンプレート220の数が限定的であるため、ユーザーは、どの候補テンプレート220がマーカー像MKIに類似するか比較的容易に判断することができる。このため、ユーザーは、マーカー像MKIに対してより類似度が高い選択テンプレート230を容易に選択することができる。これにより、マーカーMKの追跡精度のさらなる向上を図ることができる。
【0091】
(第3変形例)
図15は、第3変形例のテンプレート選択画面Sの内容の一例を示す。図15に示すように、本変形例では、テンプレート選択画面Sには、視覚的に互いに異なる複数の候補テンプレート220が表示される。この図15に示す複数の候補テンプレート220は、ユーザーが選択するための候補テンプレートである。図6に示した図との差異は、2組の放射線源と放射線検出器、つまり放射線源12-1と放射線検出器13-1、および放射線源12-2と放射線検出器13-2がある場合に、それぞれの検出器で作成されたマーカー像MKIの組にそれぞれ対応する候補テンプレート220の複数の組が表示されることである。
【0092】
例えば、ID_Gi、ID_Gj、ID_Gj*、ID_Gk、ID_Gk*などは、
1組にした候補テンプレート220(テンプレート組)の識別情報(テンプレート組識別情報)である。ID_Giにより識別されるテンプレート組には、ID_i1とID_i2の2つの候補テンプレート220が含まれる。他の組についても同様である。
【0093】
上記のように1組にした候補テンプレート220は、例えば、図16に示すテンプレート情報DB107aを用いて管理される。図16は、本変形例のテンプレート情報DB107aを示す図である。この図16に示されるテンプレート情報DB107aには、テンプレート組識別情報、テンプレート識別情報、テンプレート画像情報、特徴量、類似度、選択中などのデータが格納される。テンプレート組識別情報には、複数のテンプレート識別情報により識別されるテンプレート組に関する情報が関連付けられている。
【0094】
本変形例によれば、撮影方向が互いに異なる複数の画像IMを組にして扱うことにより、3次元空間におけるマーカーMKの姿勢に類似する候補テンプレート220を容易に見つけることができる。
【0095】
(第4変形例)
図17および図18は、第4変形例の操作画面Z110の内容の一例を示す図である。図17および図18に示すように、本変形例では、入力表示部103の操作画面Z110に、画像表示領域Z112が割り付けられ、テンプレート選択画像表示領域Z111は割り付けられていない。操作画面Z110の表示は、画像IMのみが表示されてもよい。つまり、表示処理部106は、入力表示部103の操作画面Z110に、画像IMのみを表示し、候補テンプレート220を表示しなくてもよい。
【0096】
例えば、ユーザーは、選択テンプレート230を選択することに代えて、入力表示部103の操作画面Z110に表示された画像IM上のマーカー像MKIの近傍を触れることにより、画像IM上のマーカー像MKIの位置を指定する。例えば、図17に示すように、ユーザーは、画像IM上のマーカー像MKIに重なるまたはその近傍の1点を指定する。
【0097】
このように1点が指定された場合には、テンプレート選択部104は、その1点を含む所定の大きさの部分領域Z113を抽出する。所定の大きさは、たとえば被検体P内に留置されているマーカーMKの大きさに基づいて予め決定されてもよい。テンプレート選択部104は、このマーカー像MKIを含む部分領域Z113内の画像IMに対して、マーカー像MKIに最も類似する候補テンプレート220を、選択テンプレート230として複数の候補テンプレート220の中から選択する。画像IMに対する候補テンプレート220の類似度は、正規化相互相関や相互情報量、上述した分離度を用いる。
【0098】
なお、1点が指定される代わりに、画像IMの部分領域Z113の範囲が指定されてもよい。この場合には、例えば、図18に示すように、ユーザーは、マーカー像MKIを内部に含む領域の縁をなぞり、画像IMの部分領域Z113を範囲として指定する。テンプレート選択部104は、その範囲を所定の大きさの部分領域Z113に対応付ける。そして、テンプレート選択部104は、前記部分領域Z113内の画像IMに対して、マーカー像MKIに最も類似する候補テンプレート220を、選択テンプレート230として複数の候補テンプレート220の中から選択する。
【0099】
具体的には、テンプレート選択部104は、下記の処理を実施してもよい。例えば、テンプレート選択部104は、画像IM内の1点を含む部分領域Z113、または範囲を指定された場合の画像IMの部分領域Z113に対する複数のテンプレート210に含まれる1つ以上の候補テンプレート220の類似度に基づき、少なくとも1つの選択テンプレート230を選択する。
【0100】
例えば、テンプレート選択部104は、上記類似度の閾値に基づき、少なくとも1つの選択テンプレート230を選択してもよい。すなわち、テンプレート選択部104は、上記類似度が閾値以上の候補テンプレート220を選択テンプレート230として選択してもよい。これにより、テンプレート選択部104は、マーカー像MKIに対する類似度が高い選択テンプレート230を選択することができる。
【0101】
また、上記に代えて、テンプレート選択部104は、画像IM内の1点を含む部分領域Z113、または範囲を指定された場合の画像IMの部分領域Z113に対する2つ以上の候補テンプレート220それぞれの類似度を導出する。さらに、テンプレート選択部104は、その類似度が高い順に2つ以上の候補テンプレート220の中から少なくとも1つの選択テンプレート230を選択してもよい。これにより、テンプレート選択部104は、マーカー像MKIに対する類似度が高い選択テンプレート230を選択することができる。
【0102】
つまり、本変形例では、表示処理部106は、画像取得部102により取得された画像IMを表示部1032に表示させる。入力受付部1031は、ユーザーの入力操作として、表示部1032に表示された画像IM内の1点または画像IMの部分領域を指定する指定操作を受け付ける。テンプレート選択部104は、入力受付部1031により受け付けられたユーザーの指定操作に基づき、少なくとも1つの選択テンプレート230を選択する。これにより、ユーザーは、複数の候補テンプレート220の中から選択テンプレート230を選択する選択操作を行うことなく、情報処理装置100に選択テンプレート230を選択させることができる。これにより、ユーザーの利便性が向上する。
【0103】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態の情報処理装置100は、選択された選択テンプレート230のみを使用するのではなく、追跡時にテンプレート210を動的に切り替える点で第1の実施形態とは異なる。これにより、被検体P内に留置されたマーカーMKが、体内の呼吸性移動や心拍の変動などによりその姿勢が大きく変化する場合でも、マーカーMKの追跡を高い精度で可能にするものである。なお以下に説明する以外の構成は、上記第1の実施形態と同様である。
【0104】
図19を参照して、実施形態の情報処理装置100の機能構成について説明する。図19は、実施形態の治療システム1の構成例を示す図である。情報処理装置100は、テンプレート取得部101Aと、画像取得部102と、入力表示部103と、テンプレート選択部104と、追跡部105Aと、表示処理部106とを備える。前述した図1の情報処理装置100との違いは、テンプレート取得部101A、追跡部105Aであり、ここではそれらを中心に説明する。
【0105】
追跡部105Aは、まず、テンプレート選択部104により選択または特定された選択テンプレート230および1つ以上の類似テンプレート250を用いて、第1の実施形態の追跡部105と同様にマーカーMKを追跡する。そして、本変形例では、追跡部105Aは、追跡動作中にマーカー像MKIに対する選択テンプレート230および1つ以上の類似テンプレート250の類似度をそれぞれ評価する。そして、追跡部105Aは、選択テンプレート230および1つ以上の類似テンプレート250の中で、マーカー像MKIに対する類似度が所定の条件を満たす(例えば類似度が最大)となった選択テンプレート230または類似テンプレート250を特定テンプレートとして特定する。なお、選択テンプレート230および1つ以上の類似テンプレート250は、複数のテンプレートに含まれる2つ以上のテンプレートの一例である。そして、追跡部105Aは、特定テンプレートを規定するパラメータ(例えば姿勢パラメータ(θ、φ、η))をテンプレート取得部101Aに出力する。なおこれに代えて、追跡部105Aは、特定テンプレートを示す情報(例えば、特定テンプレートの識別情報)をテンプレート取得部101に出力してもよいし、選択テンプレート230および1つ以上の類似テンプレート250のそれぞれの上記類似度を示す情報をテンプレート取得部101Aに出力してもよい。
【0106】
テンプレート取得部101Aは、追跡部105AにおいてマーカーMKの追跡に使用されたテンプレート210の中で、マーカー像MKIに対する類似度が所定の条件を満たす(例えば類似度が最大)となったテンプレート(すなわち、上記特定テンプレート)を、新しい基準テンプレート240に設定し直す。そして、テンプレート取得部101Aは、新しい基準テンプレート240を規定する1つ以上のパラメータ(例えば姿勢パラメータ(θ、φ、η))を微小に変更することで、新しい1つ以上の類似テンプレート250を取得する。テンプレート取得部101Aは、新しい基準テンプレート240および取得した新しい1つ以上の類似テンプレート250を示す情報を追跡部105Aに出力する。
【0107】
そして、追跡部105Aは、テンプレート取得部101Aにより出力された情報に基づき、マーカーMKの追跡に用いる1つ以上のテンプレート210を切り換える。例えば、追跡部105Aは、テンプレート取得部101Aにより特定された新しい基準テンプレート240および取得された新しい1つ以上の類似テンプレート250に基づき、マーカーMKを追跡する。以降、上記処理を繰り返すことで、追跡部105Aは、テンプレート210を順次切り替えながら(更新しながら)、マーカーMKを追跡する。なお、類似テンプレート250は、テンプレート取得部101により当初に取得される複数の候補テンプレート220に含まれるテンプレートでもよい。すなわち、類似テンプレート250は、基準テンプレート240が新しく設定された後に生成されるテンプレートでなくてもよい。
【0108】
図20は、本実施形態の治療段階での処理の流れを示すフローチャートである。なお、図20中のS201からS204の処理は、第1の実施形態のS201からS204の処理と同様である。
【0109】
本実施形態では、追跡部105Aは、既に実施した追跡の結果として、例えば、追跡部105Aにより追跡に使用されたテンプレート210の中でマーカー像MKIに対する類似度が所定の条件を満たす特定テンプレートを規定するパラメータに関する情報、または特定テンプレートそのものを示す情報などを出力する(S205)。例えば、追跡部105Aから出力される情報には、特定テンプレートを規定するパラメータ(例えば姿勢パラメータ(θ、φ、η))が含まれている。
【0110】
そして、テンプレート取得部101Aは、上記特定テンプレートを新しい基準テンプレート240に設定し直す(S206)。そして、テンプレート取得部101Aは、新しい基準テンプレート240の内容に基づき、新しい1つ以上の類似テンプレート250を取得する(S207)。追跡部105Aは、テンプレート取得部101Aにより特定された新しい基準テンプレート240および取得した新しい1つ以上の類似テンプレート250に基づき、マーカーMKの追跡に用いるテンプレート210を切り換える(S208)。
【0111】
本実施形態によれば、当初に選択または特定されたテンプレート210のみが使用されるのではなく、追跡時にテンプレート210を動的に切り替えることが可能になる。これにより、被検体P内に留置されたマーカーMKが、体内の呼吸性移動や心拍の変動などによりその姿勢が大きく変化する場合でも、マーカーMKの位置を追跡することが可能になる。
【0112】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態の情報処理装置100は、マーカーMKの位置および腫瘍の位置をユーザーが確認できるように、画像IM上に追跡しているマーカーMKの位置およびマーカーMKの位置から推測した腫瘍の位置が表示される。
【0113】
前述の図1を参照して、実施形態の情報処理装置100の機能構成について説明する。情報処理装置100は、テンプレート取得部101と、画像取得部102と、入力表示部103と、テンプレート選択部104と、追跡部105と、表示処理部106Aと、記憶部107とを備える。前述した第1の実施形態との違いは、表示処理部106Aであり、ここでは表示処理部106Aを中心に説明する。
【0114】
表示処理部106Aは、画像取得部102から画像IMを取得し、追跡部105からマーカーMKの位置を取得する。表示処理部106Aは、画像IM上にマーカーMKの位置を示す表示H1を表示する。
【0115】
図21は、表示処理部106Aにより表示される画像IMの一例を示す図である。図21に示すように、例えば、表示処理部106Aは、画像IM上にマーカーMKの位置を示すテンプレート210の長方形MMを表示H1として表示する。このとき、表示処理部106Aは、マーカーMKを追跡するのに使用しているテンプレート210を示す情報を表示してもよい。
【0116】
本実施形態では、表示処理部106Aは、表示部1032に表示される画像IMマーカーMKの位置から推測した腫瘍の位置を表示する。マーカーMKの位置から腫瘍の位置を推定する方法について述べる。マーカーMKの位置xmから腫瘍位置yを、線形関係にあることを示す式(1)を用いて算出する。
【0117】
y=Axm+T ・・・(1)
【0118】
上記の式(1)におけるxm,yは、それぞれの位置を示すベクトルである。Aは、2x2行列である。Tは1x2のベクトルである。AおよびTは、治療前に得られた1つ以上のマーカーMKの位置と腫瘍の位置とから、線形回帰によって決定される。
【0119】
マーカーMKの位置と腫瘍の位置は、例えば、治療計画作成時に撮影されたCT画像に写り込んだ腫瘍の位置とマーカーMKの位置とが利用可能である。すなわち、1呼吸分の間に撮影される複数枚のCT画像(3次元画像)に基づいて、線形回帰によって上記式(1)のAとTを求めることによって、腫瘍の位置とマーカーMKの位置との関係を求めておくことができる。例えば、CT画像をDRR化したときに射影した腫瘍領域の重心と、マーカーMKに対応する領域の重心とから線形回帰によって、腫瘍の位置とマーカーの位置との関係を求めておく。
【0120】
表示処理部106Aは、追跡部105により追跡されたマーカーMKの位置と、上記式(1)とに基づき、腫瘍の位置を算出する。そして、表示処理部106Aは、画像IM上に、算出した腫瘍の位置を表示H2で表示する。
【0121】
本実施形態によれば、画像IM上にマーカーMKの位置から推測した腫瘍の位置が表示される。これにより、ユーザーは、腫瘍の位置を容易に確認しながら治療を続けることができる。
【0122】
以上、いくつかの実施形態および変形例について説明したが、実施形態は、上記例に限定されない。例えば、説明したが実施形態および変形例では、被検体P内に留置した棒型のマーカーMKを追跡する例について説明した。ただし、追跡対象のマーカーMKは、楔型やその他の形状でもよい。例えば、楔型のマーカーMKを追跡する場合は、テンプレート210のMMの形状が楔型になる。また、「オブジェクト」は、腫瘍やマーカーMKに限定されず、カテーテル手術におけるカテーテルでもよい。この場合、カテーテルの形状に対応するテンプレート210を用いることにより、術中に撮影される被検体Pの画像IMに写るカテーテル像を追跡することが可能になる。
【0123】
なお、追跡部105は、治療中に用いるテンプレート210を1つに固定してもよく、複数のテンプレート210を、被検体Pの状態に応じて切替えるようにしてもよい。例えば、被検体Pに内包されたマーカーMKの3次元空間中の姿勢が、被検体Pの呼吸により変化する。追跡部105は、呼吸による被検体Pの動き、又は、マーカーMKの姿勢の変化を、呼吸の1周期に対応させてモデル化した呼吸モデルで近似して、呼吸モデルの周期に基づいた位相に対応するテンプレート210を選択して、マーカーMKの追跡処理を実施してもよい。
【0124】
また上述したように、情報処理装置100は、複数の候補テンプレート220を表示部1032に表示してユーザーの選択操作を受け付ける場合に代えて、画像取得部102により取得された画像IMの1点または部分を指定するユーザーの指定操作を受け付け、その指定操作に基づき選択テンプレート230を選択してもよい。なおこれに代えて、テンプレート選択部104は、被検体Pの治療計画に関する情報を取得し、治療計画に含まれるマーカーMKのおおよその位置に基づいて画像取得部102により取得された画像IMに所定領域を設定し、その所定領域に対して全ての候補テンプレート220それぞれの類似度を求め、前記類似度が所定の条件を満たす(例えば類似度が最大となる)候補テンプレート220を、選択テンプレート230として選択してもよい。この場合は、ユーザーによる上記指定操作も不要になる。
【0125】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、情報処理装置100は、入力受付部と、テンプレート選択部と、追跡部とを持つ。入力受付部1031は、ユーザーの入力操作を受け付ける。テンプレート選択部104は、被検体内のマーカーMKの形状に関する複数のテンプレート210の中から少なくとも1つの選択テンプレート230を、入力受付部1031により受け付けられたユーザーの入力操作に基づいて特定する。追跡部105は、特定された少なくとも1つの選択テンプレート230を用いて、マーカーMKを含む画像内でマーカーMKを追跡する。このような構成によれば、被検体内のオブジェクトの追跡精度の向上を図ることができる。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0127】
1…治療システム(情報処理システム)、14…照射門(照射部)、15…制御部、100…情報処理装置、101…テンプレート取得部、102…画像取得部、1031…入力受付部、1032…表示部、104…テンプレート選択部、105…追跡部、106…表示処理部、210…テンプレート、220…候補テンプレート、230…選択テンプレート、240…基準テンプレート(特定テンプレート)、250…類似テンプレート、IM…画像(第1画像、第2画像)、P…被検体、MK…マーカー(オブジェクト)、MKI…マーカー像。
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