(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153492
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】モータ、モータの製造方法、モータを備えるドローン
(51)【国際特許分類】
H02K 5/08 20060101AFI20241022BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02K5/08 Z
H02K1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067424
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】501489971
【氏名又は名称】豊実精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】道山 秀昭
【テーマコード(参考)】
5H601
5H605
【Fターム(参考)】
5H601CC01
5H601DD01
5H601DD11
5H601GC02
5H601GC12
5H601JJ04
5H601KK22
5H605BB05
5H605CC01
5H605FF06
(57)【要約】
【課題】ハウジングを構成する周壁部に対する固定子コアの位置ずれを抑制できるモータ、モータの製造方法、及びモータを備えるドローンを提供する。
【解決手段】モータ20は、回転子30と、回転子30の径方向外側に配置された円筒状の固定子コア41と、回転子30及び固定子コア41を収容するハウジング50とを備える。ハウジング50は、固定子コア41の径方向外側に配置された円筒状の周壁部60を有する。固定子コア41の外周部には、径方向に凹む溝部47が周方向において等間隔に形成されている。モータ20は、周壁部60の内周面に当接するとともに各溝部47に設けられた弾性を有する支持部材100を備える。周壁部60の熱膨張率は固定子コア41の熱膨張率よりも大きく、支持部材100の熱膨張率は周壁部60の熱膨張率よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸方向を中心に回転可能な回転子(30)及び固定子(40)を収容するハウジング(50)を備えるモータ(20)において、
前記ハウジングは、円筒状の周壁部(60)を有し、
前記固定子は、前記周壁部の内周面に沿って設けられた固定子コア(41)を有し、
前記固定子コアの外周部には、前記軸方向と直交する径方向に凹む溝部(47)が、前記軸方向を中心として円周状に延びる周方向において等間隔に形成されており、
前記周壁部の内周面に当接するとともに前記各溝部に設けられた弾性を有する支持部材(100)を備え、
前記周壁部の熱膨張率は、前記固定子コアの熱膨張率よりも大きく、
前記支持部材の熱膨張率は、前記周壁部の熱膨張率よりも大きい、モータ。
【請求項2】
前記各溝部は、前記軸方向に延びて形成されており、
前記支持部材は、前記溝部に沿って延びる形状をなしている、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記溝部は、偶数個形成されている、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記固定子コアは、円環状の鋼板が積層されて構成されており、
前記固定子コアの外周部のうち前記各溝部以外の部分には、前記各鋼板を一体化するための溶接部分であって、径方向に凹む凹部(44)が形成されており、
前記溝部における前記径方向の凹み寸法(L1)は、前記凹部における前記径方向の凹み寸法(L2)よりも大きい、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項5】
前記ハウジングは、
前記周壁部における前記軸方向の第1端側の開口部を塞ぐ第1閉塞部(70)と、
前記周壁部における前記軸方向の第2端側の開口部を塞ぐ第2閉塞部(80)と、
を有し、
前記第1閉塞部のうち前記径方向の中央部には、前記回転子のシャフト(33)が挿通される貫通孔(71)が形成されており、
前記第1閉塞部のうち前記貫通孔の前記径方向の外側部分には、前記軸方向において前記第2閉塞部の側に向かって延びる円環状の第1設置部(72)が形成されており、
前記第2閉塞部のうち前記径方向の中央部には、前記軸方向において前記第1閉塞部の側に向かって延びる円環状の第2設置部(82)が形成されており、
前記第1設置部における前記径方向の内側部分に設けられ、前記シャフトの第1端側を回転可能に支持する円環状の第1軸受(91)と、
前記第2設置部における前記径方向の内側部分に設けられ、前記シャフトの第2端側を回転可能に支持する円環状の第2軸受(92)と、
前記第1設置部の外周部に当接した状態で設けられた円環状の第1リング部材(111)と、
前記第2設置部の外周部に当接した状態で設けられた円環状の第2リング部材(112)と、
を備え、
前記第1設置部及び前記第2設置部の熱膨張率は、前記第1軸受及び前記第2軸受の熱膨張率よりも大きく、
前記第1リング部材及び前記第2リング部材の熱膨張率は、前記第1設置部及び前記第2設置部の熱膨張率よりも小さい、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項6】
所定の軸方向を中心に回転可能な回転子(30)を収容するハウジング(50)を備えるモータ(20)において、
前記ハウジングは、
円筒状の周壁部(60)と、
前記周壁部における前記軸方向の第1端側の開口部を塞ぐ第1閉塞部(70)と、
前記周壁部における前記軸方向の第2端側の開口部を塞ぐ第2閉塞部(80)と、
を有し、
前記第1閉塞部のうち前記軸方向と直交する径方向の中央部には、前記回転子のシャフト(33)が挿通される貫通孔(71)が形成されており、
前記第1閉塞部のうち前記貫通孔の前記径方向の外側部分には、前記軸方向において前記第2閉塞部の側に向かって延びる円環状の第1設置部(72)が形成されており、
前記第2閉塞部のうち前記径方向の中央部には、前記軸方向において前記第1閉塞部の側に向かって延びる円環状の第2設置部(82)が形成されており、
前記第1設置部における前記径方向の内側部分に設けられ、前記シャフトの第1端側を回転可能に支持する円環状の第1軸受(91)と、
前記第2設置部における前記径方向の内側部分に設けられ、前記シャフトの第2端側を回転可能に支持する円環状の第2軸受(92)と、
前記第1設置部の外周部に当接した状態で設けられた円環状の第1リング部材(111)と、
前記第2設置部の外周部に当接した状態で設けられた円環状の第2リング部材(112)と、
を備え、
前記第1設置部及び前記第2設置部の熱膨張率は、前記第1軸受及び前記第2軸受の熱膨張率よりも大きく、
前記第1リング部材及び前記第2リング部材の熱膨張率は、前記第1設置部及び前記第2設置部の熱膨張率よりも小さい、モータ。
【請求項7】
前記支持部材は、融点が300℃以上のフッ素樹脂で構成されている、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項8】
前記支持部材は、PTFEで構成されている、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ハウジングは、融点が300℃以上の合成樹脂で構成されている、請求項1,2,6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項10】
前記ハウジングは、PEEKで構成されている、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
請求項1,2,6のいずれか1項に記載のモータと、
スクリュー(12)と、
前記モータを収容する本体部(11)と、
を備え、
前記回転子のシャフト(33)の回転動力によって前記スクリューを回転させることにより、液体ナトリウム中を移動するドローン(10)。
【請求項12】
所定の軸方向を中心に回転可能な回転子(30)及び固定子(40)を収容するハウジング(50)を備えるモータ(20)の製造方法において、
前記ハウジングは、円筒状の周壁部(60)を有し、
前記固定子は、前記周壁部の内周面に沿って設けられた固定子コア(41)を有し、
前記固定子コアの外周部には、前記軸方向と直交する径方向に凹む溝部(47)が、前記軸方向を中心として円周状に延びる周方向において等間隔に形成されており、
前記モータは、弾性を有するとともに長尺状をなす支持部材(100)を備え、
前記周壁部の熱膨張率は、前記固定子コアの熱膨張率よりも大きく、
前記支持部材の熱膨張率は、前記周壁部の熱膨張率よりも大きく、
前記各溝部は、前記軸方向に延びており、
常温環境下において、前記径方向の寸法が前記溝部における前記径方向の凹み寸法よりも大きい前記支持部材を前記各溝部に配置する配置工程と、
常温環境下において、前記各溝部に前記支持部材が配置された状態の前記固定子コアを、前記周壁部における前記径方向の内側部分に挿入することにより、前記各溝部に配置された前記支持部材を前記周壁部の内周面に当接させる挿入工程と、
を備える、モータの製造方法。
【請求項13】
前記各溝部は、前記軸方向において前記固定子コアの外周部の端から該外周部の途中部分まで延びており、
前記固定子コアの外周部のうち、前記軸方向において前記溝部に隣接する部分が、前記溝部の底部に対して前記径方向の外側に突出するストッパ部(48)とされており、
前記挿入工程は、常温環境下において、前記各溝部に前記支持部材が配置された状態の前記固定子コアを、前記固定子コアのうち前記軸方向において前記ストッパ部とは反対側から前記周壁部における前記径方向の内側部分に挿入する工程である、請求項12に記載のモータの製造方法。
【請求項14】
前記溝部に前記支持部材が配置された状態において、前記支持部材のうち前記軸方向において前記ストッパ部の側とは反対側の端部であって前記径方向の外側部分は、前記径方向の内側に傾斜する傾斜部(101)とされている、請求項13に記載のモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ、モータの製造方法、及びモータを備えるドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のモータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温環境下においてモータの動作が不安定になり得る。このため、高温環境下においてモータを安定動作させる技術については、改善の余地がある。
【0005】
本開示は、高温環境下においてモータを安定動作させることができるモータ、モータの製造方法、及びモータを備えるドローンを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の開示は、所定の軸方向を中心に回転可能な回転子及び固定子を収容するハウジングを備えるモータにおいて、
前記ハウジングは、円筒状の周壁部を有し、
前記固定子は、前記周壁部の内周面に沿って設けられた固定子コアを有し、
前記固定子コアの外周部には、前記軸方向と直交する径方向に凹む溝部が、前記軸方向を中心として円周状に延びる周方向において等間隔に形成されており、
前記周壁部の内周面に当接するとともに前記各溝部に設けられた弾性を有する支持部材を備え、
前記周壁部の熱膨張率は、前記固定子コアの熱膨張率よりも大きく、
前記支持部材の熱膨張率は、前記周壁部の熱膨張率よりも大きい。
【0007】
モータの温度が高くなると、ハウジングを構成する周壁部の内径寸法が増加するとともに、固定子コアの外径寸法が増加する。周壁部の熱膨張率が、固定子コアの熱膨張率よりも大きい場合、単位温度上昇量あたりの周壁部の内径寸法増加量が、単位温度上昇量あたりの固定子コアの外径寸法増加量よりも大きくなる。これにより、例えばモータの温度が常温の場合において周壁部の内周面と固定子コアの外周面とが当接した状態で固定子コアが周壁部に支持されていたとしても、高温環境下において固定子コアと周壁部との間に隙間ができてしまう。その結果、周壁部に対する固定子コアの位置が適切な位置からずれてしまう。これにより、高温環境下においてモータの動作が不安定になり得る。具体的には例えば、回転子と固定子コアとの間にラジアルギャップを確保する必要があるにもかかわらず、回転子が固定子コアに接触し得る。
【0008】
そこで、第1の開示において、固定子コアの外周部には、径方向に凹む溝部が周方向に並んで複数形成されており、各溝部には、周壁部の内周面に当接する弾性を有する支持部材が設けられている。支持部材の熱膨張率は、周壁部の熱膨張率よりも大きい。このため、単位温度上昇量あたりの周壁部の内径寸法増加量よりも、単位温度上昇量あたりの支持部材の径方向寸法増加量の方が大きくなる。これにより、温度上昇に伴う周壁部の内径寸法増加量が、温度上昇に伴う固定子コアの外径寸法増加量よりも大きかったとしても、高温環境下において周壁部の内周面と固定子コアの溝部とに対する各支持部材の当接状態が維持される。これにより、高温環境下において周壁部に対する固定子コアの位置ずれを抑制でき、モータを安定動作させることができる。
【0009】
また、周方向に等間隔に形成された溝部に支持部材が設けられているため、周壁部に対する固定子コアの位置ずれ抑制効果を高めることができる。
【0010】
第2の開示は、所定の軸方向を中心に回転可能な回転子を収容するハウジングを備えるモータにおいて、
前記ハウジングは、
円筒状の周壁部と、
前記周壁部における前記軸方向の第1端側の開口部を塞ぐ第1閉塞部と、
前記周壁部における前記軸方向の第2端側の開口部を塞ぐ第2閉塞部と、
を有し、
前記第1閉塞部のうち前記軸方向と直交する径方向の中央部には、前記回転子のシャフトが挿通される貫通孔が形成されており、
前記第1閉塞部のうち前記貫通孔の前記径方向の外側部分には、前記軸方向において前記第2閉塞部の側に向かって延びる円環状の第1設置部が形成されており、
前記第2閉塞部のうち前記径方向の中央部には、前記軸方向において前記第1閉塞部の側に向かって延びる円環状の第2設置部が形成されており、
前記第1設置部における前記径方向の内側部分に設けられ、前記シャフトの第1端側を回転可能に支持する円環状の第1軸受と、
前記第2設置部における前記径方向の内側部分に設けられ、前記シャフトの第2端側を回転可能に支持する円環状の第2軸受と、
前記第1設置部の外周部に当接した状態で設けられた円環状の第1リング部材と、
前記第2設置部の外周部に当接した状態で設けられた円環状の第2リング部材と、
を備え、
前記第1設置部及び前記第2設置部の熱膨張率は、前記第1軸受及び前記第2軸受の熱膨張率よりも大きく、
前記第1リング部材及び前記第2リング部材の熱膨張率は、前記第1設置部及び前記第2設置部の熱膨張率よりも小さい。
【0011】
ハウジングを構成する第1,第2設置部の熱膨張率が、第1,第2軸受の熱膨張率よりも大きい場合、単位温度上昇量あたりの第1,第2設置部の内径寸法増加量が、単位温度上昇量あたりの第1,第2軸受の外径寸法増加量よりも大きくなる。これにより、例えばモータの温度が常温の場合において第1,第2設置部の内周面と第1,第2軸受の外周面とが当接した状態で第1,第2軸受が第1,第2設置部に設けられていたとしても、高温環境下において第1,第2設置部と第1,第2軸受との間に隙間ができてしまう。その結果、第1,第2軸受に支持されたシャフトが傾き、モータの動作が不安定になり得る。
【0012】
そこで、第2の開示において、第1設置部の外周部には、この外周部に当接した状態で円環状の第1リング部材が設けられている。また、第2設置部の外周部には、この外周部に当接した状態で円環状の第2リング部材が設けられている。第1,第2リング部材の熱膨張率は、第1,第2設置部の熱膨張率よりも小さいため、第1,第2リング部材によって第1,第2設置部の径方向の熱膨張を抑制することができる。これにより、高温環境下において第1,第2設置部と第1,第2軸受との間における隙間の発生を抑制し、モータを安定動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図8】モータの製造工程のうち、固定子コアを周壁部に挿入する工程を示す図。
【
図9】モータの製造工程のうち、底蓋部を周壁部に取り付ける工程を示す図。
【
図10】モータの製造工程のうち、ロータアッシーの取り付け工程を示す図。
【
図11】モータの製造工程のうち、天蓋部を周壁部に取り付ける工程を示す図。
【
図13】その他の実施形態に係る固定子コアを構成する鋼板の平面図。
【
図14】その他の実施形態に係る固定子コアを構成する鋼板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係るモータを具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のモータは、高温の液体中を移動可能なドローンに備えられ、ドローンを移動させる動力源となる。ドローンは、高温(例えば200℃)の液体ナトリウム中を移動し、より具体的には、原子炉(例えば、高速中性子による核分裂を利用する高速増殖炉)の冷却系配管を流れる液体ナトリウム中を移動する。ドローンは、例えば、冷却系配管内における所定の検査位置まで検査装置を運搬するために用いられる。
【0015】
図1に示すように、ドローン10は、モータ20と、モータ20を収容する本体部11と、スクリュー12とを備えている。モータ20のシャフト33には、スクリュー12が機械的に接続されている。モータ20のシャフト33が回転することによりスクリュー12が回転する。これにより、ドローン10に推進力が付与される。なお、本体部11は、防水構造とされていることにより、液体ナトリウムが透過しない不透過性を有している。また、スクリュー12は、ドローン10に1つ以上備えられていればよい。スクリュー12が複数備えられている場合、例えば、各スクリュー12に対応したモータ20がドローン10に備えられていてもよい。
【0016】
続いて、
図2~
図7を用いて、モータ20について説明する。以下では、モータ20において、回転子30(具体的にはシャフト33)の回転中心軸線の延びる方向を軸方向とし、回転中心軸線の中心から放射状に延びる方向であって軸方向と直交する方向を径方向とし、回転中心軸線を中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0017】
モータ20は、ラジアルギャップ型かつインナロータ型のブラシレスモータである。モータ20は、主な構成として、回転子30と、固定子40と、回転子30及び固定子40を収容するハウジング50とを備えている。
【0018】
回転子30は、円筒状の回転子コア31と、回転子コア31の外周面に固定された複数の磁石32とを備えている。回転子コア31は、磁性材料で構成されている。各磁石32は、回転子コア31の外周面に例えば接着剤で固定されている。
【0019】
各磁石32は、回転子30の周方向に沿って極性が交互に変わるように並べられている。これにより、回転子30には、周方向に複数(例えば8極)の磁極が形成されている。本実施形態の磁石32は、サマリウムコバルト磁石である。サマリウムコバルト磁石が用いられているのは、ドローン10が高温の液体ナトリウム中を移動することから、高温でも磁力低下が少ない磁石を用いる必要があるためである。
【0020】
なお、回転子30において、磁石32の径方向外側表面は、合成樹脂のコーティング層で覆われている。コーティング層は、例えば、ガラス繊維と、耐熱性(例えば、耐熱温度が260℃)を有するエポキシ樹脂とからなる。コーティング層で覆われているのは、脆いサマリウムコバルト磁石を外部の衝撃から保護するためである。
【0021】
回転子コア31の径方向中央部には、軸方向に貫通する貫通孔31aが形成されている。貫通孔31aには、シャフト33が挿通されている。シャフト33が貫通孔31aに挿通された状態で、シャフト33が回転子コア31に固定されている。シャフト33には、回転子コア31に対するシャフト33の相対回転を防止するための突出部33aが形成されている。
【0022】
回転子30を収容するハウジング50は、軸方向に延びる円筒状の周壁部60と、周壁部60の軸方向一端側の開口部を塞ぐ天蓋部70(「第1閉塞部」に相当)と、周壁部60の軸方向他端側の開口部を塞ぐ底蓋部80(「第2閉塞部」に相当)とを備えている。
【0023】
天蓋部70の径方向中央部には、軸方向に貫通するとともにシャフト33が挿通される貫通孔71が形成されている。天蓋部70のうち貫通孔71の径方向外側の部分には、貫通孔71を囲む第1設置部72が形成されている。第1設置部72は、回転中心軸線を中心とする円環状をなしている。第1設置部72は、天蓋部70の内面から軸方向において底蓋部80側に向かって延びている。第1設置部72の内周側には、シャフト33の天蓋部70側の部分を回転可能に支持する第1軸受91が設けられている。第1軸受91は、転がり軸受であり、内輪部材91aと、外輪部材91bと、外輪部材91b及び内輪部材91aの間に設けられた複数の転動体91c(例えば玉)とを備えている。内輪部材91aには、シャフト33の天蓋部70側の部分が固定されている。外輪部材91bは、その外周面を第1設置部72の内周面に当接させた状態で第1設置部72の内周側に固定されている。
【0024】
底蓋部80のうち径方向中央部には、回転中心軸線を中心とする円環状をなす第2設置部82が形成されている。第2設置部82は、底蓋部80の内面から軸方向において天蓋部70側に向かって延びている。第2設置部82の内周側には、シャフト33の底蓋部80側の部分を回転可能に支持する第2軸受92が設けられている。第2軸受92は、転がり軸受であり、内輪部材92aと、外輪部材92bと、外輪部材92b及び内輪部材92aの間に設けられた複数の転動体92c(例えば玉)とを備えている。内輪部材92aには、シャフト33の底蓋部80側の部分が固定されている。外輪部材92bは、その外周面を第2設置部82の内周面に当接させた状態で第2設置部82の内周側に固定されている。なお、第1軸受91の径方向寸法は、第2軸受92の径方向寸法よりも大きい。このため、第1軸受91が設けられる第1設置部72の径方向寸法は、第2軸受92が設けられる第2設置部82の径方向寸法よりも大きい。
【0025】
固定子コア41を含むモータ20の内部部品は、周壁部60の軸方向両端の開口部のうち、シャフト33が挿通される天蓋部70側の開口部から組付けられる。
【0026】
周壁部60のうち軸方向において天蓋部70側(換言すれば、シャフト33挿通側)の端部には、雌ネジ孔61が周方向に並んで複数(6つを例示)形成されている。天蓋部70のうち周壁部60と当接する部分には、ボルト挿通孔73が形成されている。ボルト93の軸部の雄ネジが雌ネジ孔61にねじ込まれることにより、周壁部60に天蓋部70が固定されている。周壁部60のうち軸方向において底蓋部80側の端部には、雌ネジ孔62が周方向に並んで複数(6つを例示)形成されている。底蓋部80のうち周壁部60と当接する部分には、ボルト挿通孔83が形成されている。ボルト94の軸部の雄ネジが雌ネジ孔62にねじ込まれることにより、周壁部60に底蓋部80が固定されている。
【0027】
固定子40は、回転子30の径方向外側に配置された円筒状の固定子コア41を備えている。固定子コア41は、
図6及び
図7に示すように、複数の鋼板(例えば電磁鋼板)が軸方向に積層されて構成されている。固定子コア41は、円環状のバックヨーク部42と、バックヨーク部42から径方向内側に延びる複数のティース部43とを備えている。バックヨーク部42及びティース部43を含む固定子コア41と、磁石32と、回転子コア31とは、磁気回路を形成する磁気部品である。なお、
図5の固定子コア41は、便宜上、ティース部43を省略する等、簡略化して図示されている。
【0028】
各鋼板の外周部には、径方向内側に凹む凹部44が周方向に等間隔で複数(120°間隔で3つを例示)形成されている。各凹部44は、各鋼板を一体化するための溶接部分となる。複数の鋼板が積層された状態で、各鋼板の凹部44は軸方向に並ぶ。つまり、固定子コア41の外周部において、凹部44は軸方向に延びている。凹部44が溶接されることにより、軸方向に延びる溶接ビード45が形成され、各鋼板が一体化される。
【0029】
なお、モータ20には、周壁部60に対する固定子コア41の相対回転を防止するための構成が備えられている。詳しくは、
図7に示すように、周壁部60には径方向に貫通する貫通孔63が形成されており、固定子コア41の側面部には、径方向に延びるピン挿通孔46が形成されている。貫通孔63及びピン挿通孔46には、回り止めピン51が挿通されている。
【0030】
図2に示すように、固定子コア41のうち軸方向において底蓋部80側の端部は、周壁部60に形成された段差部64に当接している。段差部64は、周壁部60において、内径寸法が相対的に大きい拡径部65aと、内径寸法が相対的に小さい縮径部65bとの境界部分である。段差部64は、円環状の平坦面を有している。この平坦面に、固定子コア41のうち軸方向において底蓋部80側の端部が当接している。
【0031】
固定子40は、3相分の図示しない固定子巻線を備えており、固定子巻線は、ティース部43に巻回されている。固定子巻線は、ドローン10の外部に設けられるコントローラにケーブルを介して電気的に接続される。コントローラは、コントローラ外部の電源から供給された直流電力を交流電力に変換して固定子巻線に供給するためのインバータと、インバータの上,下アームスイッチのスイッチング制御を行うためのドライブ回路とを備えている。
【0032】
本実施形態のドローン10は、水冷機構を備えていないものとなっているため、モータ20にも水冷機構が備えられていない。水冷機構が備えられていないのは、水冷機構から水漏れが発生して本体部11の外に漏れ出した場合、液体ナトリウムと水とが激しく反応するおそれがあるためである。そこで、本実施形態のモータ20は、水冷機構を含む冷却機構を備えることなく、モータ20の内部温度も液体ナトリウムの温度と同じ状態で長時間(例えば8時間)連続稼働が可能な構成になっている。以下、この構成について説明する。
【0033】
耐熱性を高めるために、ハウジング50は、融点が300℃以上の耐熱性合成樹脂で構成されており、具体的にはPEEK(Poly Ether Ether Ketone)で構成されている。PEEKは、ドローン10周囲の液体ナトリウムの温度よりも融点(例えば340℃)が高く、連続使用上限温度が240~250℃と高い。また、PEEKは、鉄と比較して密度が約1/3であるため、ハウジング50の軽量化を図ることができる。また、PEEKは、高温水蒸気下で加水分解を起こさず、放射線による劣化が発生しにくい。
【0034】
なお、耐熱性を高めるために、第1軸受91及び第2軸受92として耐熱性が高い軸受が用いられている。各軸受91,92は、例えば、内輪部材91a,92aと外輪部材91b,92bとの間を塞ぐシールドを備えている。シールドは、例えば外輪部材91b,92bに固定されている。
【0035】
ところで、ドローン10が液体ナトリウム中にいる高温時においては、モータ20の温度が高くなる。モータ20の温度が高くなると、ハウジング50を構成する周壁部60の内径寸法が増加するとともに、固定子コア41の外径寸法が増加する。本実施形態において、ハウジング50を構成するPEEKの熱膨張率(例えば、5×10^(-5)[1/K])は、固定子コア41を構成する鉄の熱膨張率よりも大きい。具体的には例えば、ハウジング50の熱膨張率は、固定子コア41の熱膨張率の約4.5倍である。このため、単位温度上昇量あたりの周壁部60の内径寸法増加量が、単位温度上昇量あたりの固定子コア41の外径寸法増加量よりも大きくなる。これにより、モータ20の温度が常温の場合において周壁部60の内周面と固定子コア41の外周面とが当接していたとしても、高温時において固定子コア41と周壁部60との間に隙間ができてしまう。その結果、周壁部60に対する固定子コア41の位置が適切な位置からずれるおそれがある。
【0036】
また、ハウジング50の熱膨張率は、第1,第2軸受91,92の熱膨張率よりも大きい。このため、単位温度上昇量あたりの第1,第2設置部72,82の内径寸法増加量が、単位温度上昇量あたりの第1,第2軸受91,92の外径寸法増加量よりも大きくなる。これにより、例えばモータ20の温度が常温の場合において第1,第2設置部72,82の内周面と第1,第2軸受91,92の外周面とが当接した状態で第1,第2軸受91,92が第1,第2設置部72,82に設けられていたとしても、第1,第2設置部72,82と第1,第2軸受91,92との間に隙間ができてしまう。その結果、シャフト33が傾くおそれがある。
【0037】
周壁部60に対する固定子コア41の位置が適切な位置からずれたり、シャフト33が傾いたりする場合、シャフト33の円滑な回転が妨げられたり、モータ20の出力が低下したりするおそれがある。固定子コア41の位置ずれ量が大きかったり、シャフト33の傾き量が大きかったりする場合、回転子30が固定子コア41に接触してしまうおそれがある。
【0038】
そこで、本実施形態のモータ20には、以下2つの工夫が施されている。
【0039】
1つ目の工夫は、高温時において固定子コア41と周壁部60との間に隙間ができてしまうことに対処するための工夫である。
図2及び
図5~
図7に示すように、固定子コア41の外周部には、径方向に凹む溝部47が周方向において等間隔に形成されている。本実施形態では、溝部47が60°間隔で6つ形成されている。溝部47は、周方向において凹部44及び溶接ビード45から離れた位置に形成されている。溝部47は、固定子コア41の外周部のうち、軸方向における底蓋部80側の端を起点として、軸方向において天蓋部70側に向かって固定子コア41の外周部の途中位置まで延びている。溝部47のうち軸方向において底蓋部80側の端は開口している。本実施形態では、切削加工により溝部47が形成されている。溝部47の径方向の凹み寸法L1は、例えば、固定子コア41を構成するバックヨーク部42の径方向寸法の50~90%、60~85%、又は70~80%の寸法とすることができ、具体的には例えば80%とすることができる。溝部47の軸方向の長さ寸法は、固定子コア41の軸方向の長さ寸法の50%を超える寸法とすることができ、具体的には例えば、固定子コア41の軸方向の長さ寸法の60~95%の寸法とすることができる。
【0040】
固定子コア41の外周部のうち、溝部47に対して軸方向において天蓋部70側に隣接する部分は、溝部47の底面に対して径方向外側に突出するストッパ部48とされている。溝部47のうち軸方向において天蓋部70側の端は、ストッパ部48により塞がれている。
【0041】
各溝部47には、弾性を有する支持部材100が設けられている。支持部材100は、周壁部60の内周面と溝部47の底面とに当接している。支持部材100は、支持部材100に外力が作用していない自然状態において周壁部60の内周面と溝部47の底面との間隔よりも寸法が大きくなっており、周壁部60の内周面と溝部47の底面との間で圧縮状態とされている。
【0042】
本実施形態の支持部材100は、横断面が円形状をなしている。支持部材100の径方向寸法は、例えば、周壁部60(拡径部65a)の内周面と溝部47の底面との間隔の1.11~1.66倍、又は1.17~1.42倍の寸法とすることができ、具体的には例えば1.25倍の寸法とすることができる。支持部材100の熱膨張率は、ハウジング50の熱膨張率よりも大きい。本実施形態において、支持部材100は、融点が300℃以上のフッ素樹脂で構成されており、具体的にはPTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)で構成されている。PTFEは、ドローン10周囲の液体ナトリウムの温度よりも融点(例えば327℃)が高く、連続使用上限温度が260℃と高い。PTFEの熱膨張率(例えば、10×10^(-5)[1/K])は、ハウジング50を構成するPEEKの熱膨張率よりも大きい。具体的には例えば、支持部材100の熱膨張率は、鉄の熱膨張率の約9倍である。
【0043】
1つ目の工夫の構成において、単位温度上昇量あたりの周壁部60の内径寸法増加量よりも、単位温度上昇量あたりの支持部材100の径方向寸法増加量の方が大きくなる。これにより、温度上昇に伴う周壁部60の内径寸法増加量が、温度上昇に伴う固定子コア41の外径寸法増加量よりも大きかったとしても、周壁部60の内周面と固定子コア41の溝部47とに対する各支持部材100の当接状態が維持される(
図12参照)。これにより、周壁部60に対する固定子コア41の位置ずれを抑制できる。また、各溝部47は周方向に等間隔に形成されている。これにより、周壁部60に対する固定子コア41の位置ずれ抑制効果を高めることができる。
【0044】
各溝部47に設けられる支持部材100は、溝部47に沿って延びる長尺状をなしている。これにより、軸方向にわたって広範囲に固定子コア41及び周壁部60に支持部材100を当接させることができる。その結果、固定子コア41の傾きを抑制した支持部材100による安定支持を実現でき、周壁部60に対する固定子コア41の位置ずれ抑制効果を高めることができる。特に本実施形態では、支持部材100及び溝部47の軸方向の長さ寸法が、固定子コア41の軸方向の長さ寸法の50%を超える寸法とされている。これにより、支持部材100によって固定子コア41をより安定して支持することができ、周壁部60に対する固定子コア41の位置ずれ抑制効果をより高めることができる。
【0045】
溝部47は、固定子コア41の周方向において等間隔に形成されている。これにより、支持部材100によって固定子コア41を安定して支持することができ、周壁部60に対する固定子コア41の位置ずれ抑制効果を高めることができる。特に本実施形態において、溝部47は偶数個形成されている。これにより、固定子コア41を挟んで径方向において支持部材100を対向配置させることができる。このため、支持部材100によって固定子コア41をより安定して支持することができ、周壁部60に対する固定子コア41の位置ずれ抑制効果をより高めることができる。
【0046】
図6及び
図7等に示すように、本実施形態において、溝部47が軸方向に延びているのは、凹部44の径方向の凹み寸法L2よりも、溝部47の径方向の凹み寸法L1の方が大きいためである。溝部47を周方向に延びるように形成させると、切削加工時に溶接ビード45も切削してしまうこととなり、固定子コア41を構成する各鋼板の積層状態を適正に維持できなくなるおそれがある。
【0047】
なお、固定子コア41と周壁部60との間において固定子コア41の外周面全域にわたり、厚さ寸法が均一なシート状の支持部材を設けることも考えられる。しかしながら、固定子コア41と周壁部60との間の隙間の大きさが周方向において均一ではないため、この方法では、周壁部60に対する固定子コア41の位置ずれ抑制効果が低下してしまう。
【0048】
2つ目の工夫は、高温時において第1,第2設置部72,82と第1,第2軸受91,92との間に隙間ができてしまうことに対処するための工夫である。第1設置部72の外周部には、この外周部に当接した状態で円環状の第1リング部材111が設けられている。第1リング部材111は、第1設置部72の軸方向全域にわたって当接している。第2設置部82の外周部には、この外周部に当接した状態で円環状の第2リング部材112が設けられている。第2リング部材112は、第2設置部82の軸方向全域にわたって当接している。第1,第2リング部材111,112の熱膨張率は、ハウジング50の熱膨張率よりも小さい。本実施形態の第1,第2リング部材111,112はステンレスで構成されている。これは、熱ストレスに起因した錆の発生を抑制するためである。
【0049】
第1,第2リング部材111,112によれば、第1,第2設置部72,82の径方向の熱膨張を抑制することができる。これにより、高温時において第1,第2設置部72,82と第1,第2軸受91,92との間に隙間ができてしまうことを防止できる。特に本実施形態では、第1,第2リング部材111,112は、第1,第2設置部72,82の軸方向全域にわたって当接している。これにより、第1,第2設置部72,82の熱膨張の抑制効果を高めることができ、第1,第2設置部72,82と第1,第2軸受91,92との間に隙間ができてしまうことを的確に防止できる。
【0050】
なお、温度上昇に伴う第1,第2設置部72,82の内径寸法増加量を小さくする上では、第1,第2設置部72,82の径方向厚さ寸法を小さくすることが望ましい。しかしながら、この場合、第1,第2軸受91,92を保持するために必要な第1,第2設置部72,82の強度が不足する懸念がある。第1,第2設置部72,82を径方向外側から覆う第1,第2リング部材111,112によれば、第1,第2設置部72,82を補強することもできる。
【0051】
続いて、モータ20の製造工程について説明する。以下に説明する工程は、常温環境下で実施される。常温とは、例えば、5~50℃、15~40℃、又は20~25℃である。
【0052】
まず、
図8に示すように、固定子コア41の各溝部47に支持部材100が配置される。この際、支持部材100の端部がストッパ部48に当接した状態とされる。各溝部47に支持部材100が配置された状態の固定子コア41を周壁部60に挿入する場合において、支持部材100が周壁部60内にスムーズに案内されるように、支持部材100の先端部には傾斜部101が形成されている。本実施形態の傾斜部101は、面取り形状とされているが、面取り形状に代えて、例えば曲面形状(R形状)とされていてもよい。
【0053】
支持部材100の傾斜部101を径方向外側に向けた状態で、各溝部47に支持部材100が配置される。また、軸方向において傾斜部101をストッパ部48の側とは反対側に向けた状態で、各溝部47に支持部材100が配置される。
【0054】
続いて、各溝部47に支持部材100が配置された状態の固定子コア41が、固定子コア41のうち軸方向においてストッパ部48とは反対側から、周壁部60の天蓋部70側の開口部に挿入される。そして、
図9に示すように、固定子コア41の外周部のうち軸方向においてストッパ部48側とは反対側の端部が段差部64に当接するまで挿入される。これにより、支持部材100は、周壁部60と固定子コア41とにより押しつぶされ、圧縮された状態となる。
【0055】
傾斜部101を径方向外側に向けるとともに、軸方向において傾斜部101をストッパ部48の側とは反対側に向けた状態で固定子コア41が周壁部60に挿入されるため、支持部材100が周壁部60内にスムーズに案内される。これにより、周壁部60に対する固定子コア41の挿入荷重を低減することができ、周壁部60に対する固定子コア41の組付性が向上する。
【0056】
周壁部60に対する固定子コア41の挿入により、常温において圧縮状態で支持部材100が設けられることとなる。支持部材100の熱膨張率がハウジング50の熱膨張率よりも大きいため、常温において圧縮状態とされた支持部材100は、高温時においても圧縮状態を的確に維持できる。
【0057】
その後、周壁部60に底蓋部80を当接させた状態で、雌ネジ孔62及びボルト挿通孔83にボルト94が挿通され、雌ネジ孔62にボルト94の雄ネジがねじ込まれる。これにより、
図10に示すように、底蓋部80が周壁部60に固定される。なお、底蓋部80が周壁部60に固定された後、固定子コア41が周壁部60に挿入されてもよい。
【0058】
その後、ロータアッシー34を周壁部60に挿入する。ロータアッシー34は、シャフト33に各軸受91,92、回転子コア31及び磁石32が組付けられたものである。
図11に示すように、第2軸受92が第2設置部82に固定される。
【0059】
その後、周壁部60に天蓋部70を当接させた状態で、雌ネジ孔61及びボルト挿通孔73にボルト93が挿通され、雌ネジ孔61にボルト93の雄ネジがねじ込まれる。これにより、
図2に示すように、天蓋部70が周壁部60に固定される。
【0060】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0061】
・固定子コア41の構成としては、
図6等に示した構成に限らない。例えば、
図13に示す第1鋼板120と、
図14に示す第2鋼板130とを積層することにより固定子コアが構成されていてもよい。第1鋼板120の外周部には、支持部材100を挿通するための挿通凹部121が等間隔に複数(60°間隔で6つを例示)形成されている。挿通凹部121のうち径方向外側部分は、周方向において互いに近づく方向に突出する一対の保持部122とされている。保持部122があることにより、挿通凹部121に挿入した支持部材100が径方向外側に脱落することを防止できる。
【0062】
第2鋼板130には、挿通凹部121が形成されていない。複数の第1鋼板120の積層体に第2鋼板130を積層した状態で、凹部44において溶接することにより各鋼板120,130を一体化して固定子コアを製造する。この場合、第2鋼板130のうち、軸方向において挿通凹部121と対向する部分がストッパ部の役割を果たす。第1鋼板120及び第2鋼板130は、打ち抜き加工により製造されればよい。
【0063】
・ハウジング50の構成材料としては、「支持部材100の熱膨張率>ハウジング50の熱膨張率>固定子コア41の熱膨張率」の関係を満たすのであれば、PEEKに限らず、例えば、ベークライト、エポキシ樹脂、又はカーボンファイバーラバー(CFR)であってもよい。
【0064】
・ハウジング50の構成材料としては、合成樹脂に限らず、「支持部材100の熱膨張率>ハウジング50の熱膨張率>固定子コア41の熱膨張率」の関係を満たすのであれば、アルミニウム等の金属材料であってもよい。
【0065】
・支持部材100の構成材料としては、「支持部材100の熱膨張率>ハウジング50の熱膨張率>固定子コア41の熱膨張率」の関係を満たすのであれば、PTFEに限らず、例えば、PFA又はバイトン(登録商標)であってもよい。
【0066】
・溝部47は、偶数個ではなく奇数個形成されていてもよい。
【0067】
・溝部47は、固定子コア41の外周部において軸方向一端から延びるものに限らず、固定子コア41の外周部のうち軸方向における途中部分にのみ形成されるものであってもよい。
【0068】
・底蓋部80と周壁部60とが継ぎ目なく一体的に成形されていてもよい。
【0069】
・モータは、ラジアルギャップ型のモータに限らず、アキシャルギャップ型のモータであってもよい。また、モータが搭載される機器は、ドローンに限らない。
【符号の説明】
【0070】
10…ドローン、20…モータ、30…回転子、41…固定子コア、47…溝部、50…ハウジング、60…周壁部、70…天蓋部、80…底蓋部、91,92…第1,第2軸受、100…支持部材。