(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153493
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】発電センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20241022BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241022BHJP
H01F 38/26 20060101ALI20241022BHJP
G01D 5/14 20060101ALI20241022BHJP
H01F 1/03 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
G01R33/02 C
H01F17/04 F
H01F38/26
G01D5/14 E
H01F1/03 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067425
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521251039
【氏名又は名称】小関 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寳田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】染谷 雅行
(72)【発明者】
【氏名】小関 栄男
【テーマコード(参考)】
2F077
2G017
5E040
5E070
5E081
【Fターム(参考)】
2F077JJ03
2F077JJ15
2F077JJ23
2G017AA02
2G017AC09
2G017AD29
2G017BA03
5E040CA20
5E070AA20
5E070AB01
5E070BB03
5E081AA20
5E081CC02
5E081DD05
(57)【要約】
【課題】磁性ワイヤに意図しない応力がかからず、かつ磁性ワイヤと集磁機能を有する軟磁性体部品との強い磁気的結合を形成する構造の発電センサを提供する。
【解決手段】発電センサ100は、磁界発生源400によって印加される交番磁界によって大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤ110と、磁性ワイヤに巻回されたコイル120と、磁性ワイヤの両端部にそれぞれ磁気的結合された一対の軟磁性体部品130,132と、を備える。軟磁性体を含有する樹脂からなる軟磁性樹脂140によって磁性ワイヤの両端部に一対の軟磁性体部品がそれぞれ接着固定されている。一つの実施形態では、一対の軟磁性体部品が、磁性ワイヤと磁界発生源との間に位置するように配置され、軟磁性樹脂によって磁性ワイヤの両端部と一対の軟磁性体部品の磁界発生源と対向しない面とが接着固定されている。
【選択図】
図1A-1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界発生源によって印加される交番磁界によって大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、
前記磁性ワイヤに巻回されたコイルと、
前記磁性ワイヤの両端部にそれぞれ磁気的結合された一対の軟磁性体部品と、を備え、
軟磁性体を含有する樹脂からなる軟磁性樹脂によって前記磁性ワイヤの両端部に前記一対の軟磁性体部品がそれぞれ接着固定されている、発電センサ。
【請求項2】
前記一対の軟磁性体部品が、前記磁性ワイヤと前記磁界発生源との間に位置するように配置され、
前記軟磁性樹脂によって前記磁性ワイヤの両端部と前記一対の軟磁性体部品の前記磁界発生源と対向しない面とが接着固定されている、請求項1に記載の発電センサ。
【請求項3】
前記軟磁性樹脂の硬度がデュロメータA90以下である、請求項1に記載の発電センサ。
【請求項4】
前記一対の軟磁性体部品は、保磁力が前記磁性ワイヤの保磁力以下であり、かつ比透磁率が500以上の軟磁性体材料からなり、
前記軟磁性樹脂は、保磁力が前記磁性ワイヤの保磁力以下であり、かつ比透磁率が500以上の軟磁性体材料からなる軟磁性体粉を混合した樹脂である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発電センサ。
【請求項5】
前記軟磁性樹脂中の前記軟磁性体粉の混合比が50wt%以上90wt%以下である、請求項4に記載の発電センサ。
【請求項6】
前記一対の軟磁性体部品は直方体部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の発電センサ。
【請求項7】
前記一対の軟磁性体部品は、前記磁界発生源と前記コイルとの間で、前記磁性ワイヤの軸方向に延びる軸平行部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の発電センサ。
【請求項8】
前記一対の軟磁性体部品が、前記磁性ワイヤと前記磁界発生源との間に位置するように配置され、前記磁性ワイヤの軸方向から見るときに、前記磁性ワイヤの中心から前記磁界発生源に対向する方向に引いた直線上に前記一対の軟磁性体部品の中心が位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の発電センサ。
【請求項9】
前記一対の軟磁性体部品が、前記磁性ワイヤと前記磁界発生源との間に位置するように配置され、
前記軟磁性樹脂によって前記磁性ワイヤの両端部と前記一対の軟磁性体部品の前記磁界発生源と対向しない面とが接着固定されており、
前記一対の軟磁性体部品は、前記磁界発生源と対向しない面に前記磁性ワイヤの軸方向に延びる溝または突条を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の発電センサ。
【請求項10】
前記磁界発生源に臨むように前記一対の軟磁性体部品にそれぞれ設けられた面実装用の一対の外部端子電極をさらに含み、
前記一対の軟磁性体部品および前記軟磁性樹脂のうちの少なくとも一方が絶縁体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発電センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁界の変化に応答して電力を発生する発電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果(大バルクハウゼンジャンプ)を有する磁性ワイヤは、ウィーガンドワイヤまたはパルスワイヤの名で知られている。この磁性ワイヤは、芯部とその芯部を取り囲むように設けられた表皮部とを備えている。芯部および表皮部の一方は弱い磁界でも磁化方向の反転が起きるソフト(軟磁性)層であり、芯部および表皮部の他方は強い磁界を与えないと磁化方向が反転しないハード(硬磁性)層である。このような磁性ワイヤにコイルを巻回することにより、発電センサを構成することができる。
【0003】
ハード層とソフト層とがワイヤの軸方向に沿って同じ向きに磁化されているときに、その磁化方向とは反対方向の外部磁界強度が増加して或る磁界強度に達すると、ソフト層の磁化方向が反転する。この磁化方向の反転は、磁性ワイヤの或る部分を開始位置としてワイヤ全体に伝播し、ソフト層の磁化方向が一斉に反転する。このとき、大バルクハウゼン効果が発現し、磁性ワイヤに巻かれたコイルにパルス信号が誘発される。上述の外部磁界強度がさらに増加し、或る磁界強度に達すると、ハード層の磁化方向が反転する。
【0004】
大バルクハウゼン効果が発現するためには、ハード層およびソフト層の磁化方向が一致している状態から、ソフト層のみの磁化方向が反転することが必要である。ハード層およびソフト層の磁化方向が不一致の状態で、ソフト層のみの磁化方向が反転したとしても、パルス信号は生じないか、あるいは生じたとしても非常に小さい。
【0005】
また、得られる電力を最大化するためには、磁性ワイヤ全体の磁化方向が揃っている状態から、ソフト層の磁化反転が磁性ワイヤ全体に及ぶことが重要である。磁性ワイヤの磁化方向が部分的に揃っていない場合には、非常に小さいパルス信号が得られるに過ぎない。そのため、磁性ワイヤの全体に一様な磁界がかかることが好ましい。
【0006】
上記のような磁性ワイヤの磁気特性は、伸線、熱処理、捩じり等の加工でワイヤに応力を与え、その応力が残留することにより形成される。よって、後の工程において、別の応力が加わると、磁性ワイヤの内部に不確実で予期せぬ歪が生じることにより、磁気特性に変化が生じ、パルス信号が安定しない。
【0007】
発電センサの技術は、特許文献1~3に記載されている。
【0008】
特許文献1は、磁性ワイヤに不確実な予期せぬ歪が生じないようにボビンを備える。このボビンによって外力や温度変化、振動から磁性ワイヤを保護する。しかし、磁性ワイヤの両端に生じる反磁界を抑制することはできず、また、磁性ワイヤの全体に一様な磁界を印加することもできない。
【0009】
特許文献2は、磁性ワイヤをガラスチューブ内に保持して磁性ワイヤの歪みを防止し、ガラスチューブの両端部を軟磁性体からなるガイド部材の円筒形のへこみ部に支持する構成の磁気センサを開示している。この構成により、磁性ワイヤに発生する反磁界を抑制し、パルス信号出力を安定化できることが説明されている。しかし、ガラスチューブの厚さに応じて、磁性ワイヤとガイド部材との間に隙間が生じるので、ガイド部材と磁性ワイヤとの磁気的結合が弱まり、ガイド部材で集磁された磁束の磁性ワイヤへの誘導効率が低く、磁性ワイヤの素性が有する大バルクハウゼン効果を十分に引き起こすことはできない。
【0010】
特許文献3は、磁性ワイヤの両端部に、2つの軟磁性体の構造部を設け、それらの軟磁性体で磁性ワイヤを押圧する構成の発電素子を開示している。この構成により、磁性ワイヤに発生する反磁界を抑制し、パルス信号出力を安定化できることが説明されている。この構成は、軟磁性体と磁性ワイヤとの磁気的結合を強めることができるが、その一方で、2つの軟磁性体の構造部で磁性ワイヤに圧力をかけることによって磁性ワイヤに応力が加わる。そのため、磁性ワイヤの内部に不確実で予期せぬ歪が生じ、磁気特性に変化が生じるので、パルス信号が安定しない。また、磁性ワイヤと軟磁性体との間に圧力をかけて接触させても、部分的な接触となり、隙間は残るので十分な磁気的結合が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第7021839号公報
【特許文献2】特許第2598453号公報
【特許文献3】国際公開第2021/200361号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
磁性ワイヤ全体に軸方向に平行な磁界を均一な強度で印加するには、発電センサを単に配置するだけでは足りず、磁性ワイヤの両端に反磁界抑制機能と磁界発生源からの磁界を集磁する機能とを有する軟磁性体を配置する必要がある。そして、それらの機能を効率的に向上させるためには、磁性ワイヤと軟磁性体部品との間に強い磁気的結合が必要とされる。その場合に、磁性ワイヤの内部に不確実な予期せぬ歪が生じないような構造が必要である。
【0013】
特許文献2の構成では、ガラスチューブによって磁性ワイヤへの意図しない応力を回避しているが、磁気結合が弱くなる課題がある。特許文献3は、磁気結合を強められる構成を開示しているが、磁性ワイヤに意図しない応力が加わる課題がある。
【0014】
そこで、本発明の一実施形態は、磁性ワイヤに意図しない応力がかからず、かつ磁性ワイヤと集磁機能を有する軟磁性体部品との強い磁気的結合を形成する構造の発電センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の一実施形態は、次に例示的に列記する特徴を有する発電センサを提供する。
【0016】
1.磁界発生源によって印加される交番磁界によって大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、
前記磁性ワイヤに巻回されたコイルと、
前記磁性ワイヤの両端部にそれぞれ磁気的結合された一対の軟磁性体部品と、を備え、
軟磁性体を含有する樹脂からなる軟磁性樹脂によって前記磁性ワイヤの両端部に前記一対の軟磁性体部品がそれぞれ接着固定されている、発電センサ。
【0017】
この構成によれば、磁界発生源の磁界は、一対の軟磁性体部品によって磁性ワイヤの両端部に導かれる。磁性ワイヤの両端部は軟磁性樹脂(軟磁性体を含有する樹脂)によって接着されて固定されている。磁性ワイヤの両端部は軟磁性樹脂を介して軟磁性体部品と繋がるので、軟磁性樹脂がそれらの間の磁気的結合を強める。よって、磁性ワイヤ両端部の反磁界を抑制し、磁性ワイヤの軸方向の広い範囲にわたってその軸方向の磁界を印加することができる。
【0018】
また、適切な硬度を持つ(適切な柔軟性を有する)軟磁性樹脂を用いることで、磁性ワイヤには応力が掛からない設計とすることができる。したがって、大バルクハウゼン効果を十分に引き起こすことができ、高出力の信号を得ることができる発電センサを実現できる。加えて、磁性ワイヤと軟磁性体部品との間に柔軟性を有する樹脂が介在することにより、振動や温度変化に強い、優れた耐久性を併せて実現できる。
【0019】
2.前記一対の軟磁性体部品が、前記磁性ワイヤと前記磁界発生源との間に位置するように配置され、
前記軟磁性樹脂によって前記磁性ワイヤの両端部と前記一対の軟磁性体部品の前記磁界発生源と対向しない面とが接着固定されている、項1に記載の発電センサ。
【0020】
この構成によれば、一対の軟磁性体部品は、磁性ワイヤに対して磁界発生源とは反対側には構造部を有さず、磁界発生源と対向しない側に開放された面を有し、この面に磁性ワイヤの両端部が軟磁性樹脂によって接着固定されている。したがって、発電センサの組立の際に、磁性ワイヤを軟磁性体部品の開口部に挿入する作業を必要としない。また、軟磁性樹脂を用いる接着固定によって磁性ワイヤと軟磁性体部品とを結合できるので、磁性ワイヤを軟磁性体部品に押し付けて接触させるための別部品も必要としない。よって、磁性ワイヤに意図しない歪みを与えることなく、磁性ワイヤと軟磁性体部品との機械的結合および良好な磁気的結合を達成できるうえに、組立性に優れた発電センサを提供できる。
【0021】
磁性体部品が磁性ワイヤに対して磁界発生源とは反対側に構造部を有している場合、このような構造部は、集磁機能には寄与せず、磁性ワイヤとの磁気的結合を強化する機能を有する。しかし、軟磁性樹脂によって磁性ワイヤと磁性体部品との磁気的結合が強化される上記の実施形態の構成によれば、磁界発生源と反対側の構造部は必要ではない。
【0022】
3.前記軟磁性樹脂の硬度がデュロメータA90(JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで90ポイント)以下である、項1または2に記載の発電センサ。
【0023】
この構成により、軟磁性樹脂は弾力性に富むゴム状であるので、磁性ワイヤに意図しない歪みが生じることを回避できる。加えて、磁性ワイヤおよび軟磁性体部品との界面での剥離を抑制できるので、耐久性に優れた発電センサを実現できる。
【0024】
4.前記一対の軟磁性体部品は、保磁力が前記磁性ワイヤの保磁力以下であり、かつ比透磁率が500以上の軟磁性体材料からなり、
前記軟磁性樹脂は、保磁力が前記磁性ワイヤの保磁力以下であり、かつ比透磁率が500以上の軟磁性体材料からなる軟磁性体粉を混合した樹脂である、項1~3のいずれか一項に記載の発電センサ。
【0025】
上記のような軟磁性体材料は、低磁気抵抗、低ヒステリシス、低自己誘電等の特性を有する。それにより、磁界発生源が高速に移動したときに生じる高周波の交番磁界が印加されたときでも、発電センサの出力特性に対する影響が少ない。具体的には、前記軟磁性体材料は、Ni系フェライトまたはMn系フェライトの材料からなることが好ましい。軟磁性体部品の軟磁性体材料と軟磁性体粉の軟磁性体材料は、同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0026】
5.前記軟磁性樹脂中の前記軟磁性体粉の混合比が50wt%以上90wt%以下(範囲の下限は55wt%が好ましく、60wt%がより好ましい。範囲の上限は85wt%が好ましく、80wt%がより好ましい。)である、項4に記載の発電センサ。
【0027】
この構成によれば、軟磁性樹脂は、粘度、硬度、硬化等の樹脂特性や、透磁率、保磁力、磁束密度等の軟磁性体粉の特性を損なうことなく、弾力性に富むゴム状を有し、かつ確実に磁性ワイヤと軟磁性体部品との間の磁気的結合を強化できる。
【0028】
6.前記一対の軟磁性体部品は直方体部を有する(すなわち、一部または全部が直方体である)、項1~5のいずれか一項に記載の発電センサ。
【0029】
このような構成により、磁界発生源が磁石の場合、その磁石の多様な磁化方向に対応できる利点がある。
【0030】
各軟磁性体部品は、全体が直方体形状であってもよく、一部が直方体形状であってもよい。また、複数の直方体形状部の組み合わせによって軟磁性体部品が構成されていてもよい。
【0031】
7.前記一対の軟磁性体部品は、前記磁界発生源と前記コイルとの間で、前記磁性ワイヤの軸方向に延びる軸平行部を有する、項1~6のいずれか一項に記載の発電センサ。
【0032】
このような構成により、軸平行部は、磁性ワイヤの軸方向途中部に向かう磁束を遮蔽する磁気遮蔽機能を有することができる。したがって、たとえば、磁界発生源が多極磁石の場合、その着磁ピッチを磁性ワイヤの長さより狭くできる利点がある。
【0033】
8.前記一対の軟磁性体部品が、前記磁性ワイヤと前記磁界発生源との間に位置するように配置され、前記磁性ワイヤの軸方向から見るときに、前記磁性ワイヤの中心から前記磁界発生源に対向する方向に引いた直線上に前記一対の軟磁性体部品の中心が位置する、項1~7のいずれか一項に記載の発電センサ。
【0034】
換言すれば、前記磁性ワイヤの中心軸線を通り、前記磁性ワイヤが前記磁界発生源と対向する方向に平行な平面を想定すると、この平面内に前記一対の軟磁性体部品の中心が配置される。
【0035】
この構成により、軟磁性体部品によって集磁された磁界発生源の交番磁界が均等に磁性ワイヤに誘導される。
【0036】
9.前記一対の軟磁性体部品が、前記磁性ワイヤと前記磁界発生源との間に位置するように配置され、
前記軟磁性樹脂によって前記磁性ワイヤの両端部と前記一対の軟磁性体部品の前記磁界発生源と対向しない面とが接着固定されており、
前記一対の軟磁性体部品は、前記磁界発生源と対向しない面に前記磁性ワイヤの軸方向に延びる溝または突条を有する、項1~8のいずれか一項に記載の発電センサ。
【0037】
このような構成により、前記磁性ワイヤを容易に位置決めして、一対の軟磁性体部品に接着固定できる。よって、組立性のよい発電センサを実現できる。
【0038】
10.前記磁界発生源に臨むように前記一対の軟磁性体部品にそれぞれ設けられた面実装用の一対の外部端子電極をさらに含み、
前記一対の軟磁性体部品および前記軟磁性樹脂のうちの少なくとも一方が絶縁体である、項1~9のいずれか一項に記載の発電センサ。
【0039】
この構成により、発電センサの構成部品点数を少なくすることができ、構造が簡単で小型な面実装型の発電センサを提供できる。一対の軟磁性体部品および/または軟磁性樹脂が絶縁体であることにより、一対の外部端子電極が磁性ワイヤを介して短絡することを回避できる。
【0040】
典型的には、一対の外部端子電極に、コイルの両端がそれぞれ接続される。
【発明の効果】
【0041】
この発明によれば、磁性ワイヤに意図しない応力がかからず、かつ磁性ワイヤと集磁機能を有する軟磁性体部品との強い磁気的結合を形成する構造の発電センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1A-1C】
図1Aは、第1実施形態に基づく発電センサの斜視図であり、
図1Bはその正面図であり、
図1Cはその断面図である。
【
図1D】
図1Dは、軟磁性樹脂の配置に関する変形を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の変形例1を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の変形例2を示す斜視図である。
【
図4A-4B】
図4Aは、第1実施形態の変形例3を示す斜視図であり、
図4Bはその断面図である。
【
図7A-7C】
図7Aは、第2実施形態に基づく発電センサの斜視図であり、
図7Bはその正面図であり、
図7Cはその断面図である。
【
図8A-8C】
図8Aは、第2実施形態の変形例1を示す斜視図であり、
図8Bはその正面図であり、
図8Cはその断面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る発電センサの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0044】
[第1実施形態]
図1Aは、第1実施形態に基づく発電センサ100の斜視図であり、
図1Bは
図1AのX方向に見た正面図であり、
図1Cは
図1AのY方向からみた面116での断面図である。
【0045】
発電センサ100は、磁界発生源400との相対運動によって印加される交番磁界によって大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤ110と、磁性ワイヤ110に巻回されたコイル120と、一対の軟磁性体部品130,132とを含む。コイル120は、磁性ワイヤ110の第1端部111と第2端部112とを同じ長さで露出するように、磁性ワイヤ110に巻回されている。この実施形態では、コイル120は、一対の軟磁性体部品130,132の間で磁性ワイヤ110に巻回されている。一対の軟磁性体部品130,132には、磁性ワイヤ110の外径より大きな円状の開口部131,133が形成されている。その開口部131、133に、磁性ワイヤ110の第1端部111および第2端部112がそれぞれ挿入されている。開口部131,133内には、軟磁性樹脂140(明瞭化のために斜線を付す。他の図面においても同じ。)が配置されている。この軟磁性樹脂140によって磁性ワイヤ110の第1端部111と軟磁性体部品130の開口部131の内周面とが接着されており、磁性ワイヤ110の第2端部112と軟磁性体部品132の開口部133の内周面とが接着されている。
【0046】
X方向は、磁性ワイヤ110の中心軸線が延びる方向であり、以下では、「軸方向X」という。また、軸方向Xに直交し、磁性ワイヤ110が磁界発生源400に対向する方向を「軸直交方向Z」という。Y方向は、軸方向Xおよび軸直交方向Zの両方に直交する方向であり、発電センサ100の幅方向に相当するので、以下では「幅方向Y」という。
【0047】
一対の軟磁性体部品130,132は、筒状(この例では円筒状)の同じ構成を有し、磁性ワイヤ110の軸方向Xの中心において軸方向Xに直交する対称面115(幾何学的配置を説明するための仮想的な平面)に対して互いに対称に構成されている。
【0048】
図1のように、軟磁性樹脂140は、磁性ワイヤ110の端部111,112の全周に亘って接し、かつ軟磁性体部品130,132の開口部131,133の内周面の全体に接している。その開口部131,133は、この例では円状であるが、四角状等の他の形状であってもよい。
【0049】
軟磁性樹脂140は、軟磁性体粉(軟磁性体材料の粉末)と、例えばシリコン、ウレタン、エポキシ等の樹脂とを混合して作製されたものである。軟磁性樹脂140は、開口部131,133と磁性ワイヤ110の端部111,112との間の隙間に配置されるまでは流動性を有し、たとえば液状(軟磁性体粉と樹脂との混合液)である。軟磁性樹脂140は、開口部131,133と磁性ワイヤ110の端部111,112との隙間を埋めるように配置された後に硬化される。それによって、軟磁性樹脂140は、磁性ワイヤ110の各端部111,112と軟磁性体部品130,132の各開口部131,133の隙間を埋めて、それらを接着する。軟磁性樹脂140に含まれる樹脂は、溶媒の揮発によって硬化する樹脂であってもよいし、紫外線照射によって硬化する樹脂(紫外線硬化型樹脂)であってもよいし、加熱によって硬化する樹脂(熱硬化型樹脂)であってもよい。また、主剤および硬化剤を塗布配置して硬化させる二液型接着剤を用いてもよい。
【0050】
軟磁性樹脂140は、硬化後の樹脂特性として、ゴム状の弾性特性を有すること、とりわけ硬度がデュロメータA90(JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで90ポイント)以下の柔軟な弾性特性を有することが好ましい。このゴム状の弾性特性を有することによって、磁性ワイヤ110に軟磁性体部品130,132を組み付けても、磁性ワイヤ110に応力がかからない。また、軟磁性樹脂140に含まれる樹脂に起因する弾力性があるため、温度変化、外力、振動等の影響下においても、軟磁性樹脂140が磁性ワイヤ110および軟磁性体部品130,132との界面で剥離することがなく、したがって、組立体である発電センサ100は、高い耐久性を維持する。
【0051】
軟磁性体部品130,132は、保磁力が磁性ワイヤ110の保磁力以下であり、かつ比透磁率が500以上の軟磁性体材料からなる。軟磁性樹脂140に含まれる軟磁性体粉も同様の軟磁性体材料からなる。このような材料は、低磁気抵抗、低ヒステリシス、低自己誘電等の特性を有する。それにより、磁界発生源400が高速に移動したときに生じる高周波の交番磁界が印加されたときでも、発電センサ100の出力特性に対する影響が少ない。具体的には、軟磁性体部品130,132および軟磁性体粉は、Ni系フェライトまたはMn系フェライトの材料からなることが好ましい。
【0052】
軟磁性樹脂140中の軟磁性体粉の混合比が50wt%以上90wt%以下であることが好ましい。この混合比の範囲とすれば、樹脂特性である粘度、硬度、硬化等と、軟磁性体粉の特性である透磁率、保磁力、磁束密度等は、硬化後にも各々の特性を維持する。上記範囲の下限は55wt%がより好ましく、60wt%がさらに好ましい。上記範囲の上限は85wt%がより好ましく、80wt%がさらに好ましい。
【0053】
軟磁性樹脂140が、磁性ワイヤ110と軟磁性体部品130,132との間に介在していることで、それらの間の磁気的結合が強まる。それにより、磁性ワイヤ110の両端部の反磁界を抑制し、軟磁性体部品130,132によって集磁された磁界は、磁性ワイヤ110の軸方向Xの広い範囲にわたってその軸方向Xに誘導することができる。
【0054】
一対の軟磁性体部品130,132と磁性ワイヤ110の両端部111,112との位置関係について説明する。一対の軟磁性体部品130,132は、磁性ワイヤ110と磁界発生源400との間に位置するように配置されており、磁性ワイヤの軸方向Xから見るときに(
図1B参照)、磁性ワイヤ110の中心から磁界発生源400に対向する方向である軸直交方向Z方向に引いた直線(面116)上に一対の軟磁性体部品130,132の中心が位置している。より詳細には、磁界発生源400と対向する方向である軸直交方向Z(磁性ワイヤ110の軸方向Xに直交する方向)に平行で磁性ワイヤ110の径方向の中心を通る(磁性ワイヤ110の中心軸線を含む)面116(幾何学的配置を説明するための仮想的な平面)を考える。磁性ワイヤ110の両端部111,112は面116に配置されている。この面116が、一対の軟磁性体部品130,132の中心を通るように、磁性ワイヤ110と軟磁性体部品130,132との相対配置が設定されている。具体的には、軸方向Xに見た
図1Bにおいて、磁性ワイヤ110は、軟磁性体部品130,132の幅寸法w(幅方向Yの寸法)の1/2の位置にある。この位置に磁性ワイヤ110の両端部111,112を配置することで、磁界発生源400から集磁された磁束が磁性ワイヤ110に均等に誘導される。各軟磁性体部品130,132の中心とは、各軟磁性体部品130,132が均質であると仮定(この仮定は一般に妥当する)した場合の重心であってもよい。
【0055】
なお、図示の例では、磁性ワイヤ110の端部111,112は、軟磁性体部品130,132より露出しているが、端部111、112は、軟磁性体部品130,132から露出しなくてもよい。また、図示の例では、軟磁性樹脂140が軟磁性体部品130,132の軸方向Xの寸法Lの全長範囲にいき亘っているが、軸方向寸法Lの一部の範囲の開口部内に軟磁性樹脂140が配置されていてもよい。さらに、
図1Dに示すように、軟磁性樹脂140が磁性ワイヤ110の端部111,112を覆い、開口部131,133の一部を埋める構成であってもよい。以下で説明する変形例においても同様である。
【0056】
[第1実施形態の変形例1]
第1実施形態の変形例1を
図2に示す。第1実施形態の軟磁性体部品130,132は円筒状であるが、
図2に示す発電センサ100aのように、軟磁性体部品130a,132aは直方体で構成してもよい。軟磁性体部品130a,132aには、第1実施形態と同様に、磁性ワイヤ110の外径より大きな円状の開口部131a,133aが形成され、その開口部131a,133aに磁性ワイヤの第1端部111および第2端部112がそれぞれ挿入されている。開口部131a,133a内には、軟磁性樹脂140が配置されており、この軟磁性樹脂140によって磁性ワイヤ110の第1端部111と軟磁性体部品130aの開口部131aとが接着され、磁性ワイヤ110の第2端部112と軟磁性体部品132aの開口部133aとが接着されている。それにより、磁性ワイヤ110の両端部111,112と一対の軟磁性体部品130a,132aとが接着固定されている。
【0057】
第1実施形態と同様に、磁性ワイヤ110は、軟磁性体部品130a,132aの幅寸法w(幅方向Yの寸法)の1/2の位置にある。すなわち、磁性ワイヤ110の中心軸を通り、軸直交方向Zに平行な面(
図1の面116を参照)は、軟磁性体部品130a,132aの中心(典型的には重心)を通る。
【0058】
軟磁性体部品130a,132aの直方体形状は、磁界発生源400に対向する方向である軸直交方向Zの寸法hより、磁界発生源400の磁極面と平行でかつ磁性ワイヤ110の軸方向Xに垂直である幅方向Yの寸法wを長くした形態である。
【0059】
[第1実施形態の変形例2]
第1実施形態の変形例2を
図3に示す。変形例1の発電センサ100aとは、軟磁性体部品の形状が異なる。より具体的には、この変形例2では、軟磁性体部品130b,132bは、磁界発生源400に対向する方向である軸直交方向Zの寸法hが、磁界発生源400の磁極面と平行でかつ磁性ワイヤ110の軸方向Xに垂直である幅方向Yの寸法wよりも長い直方体である。第1実施形態(
図1A~
図1D)および変形例1(
図2)と同様に、磁性ワイヤ110は、軟磁性体部品130b,132bの幅寸法wの1/2の位置にある。すなわち、磁性ワイヤ110の中心軸を通り、軸直交方向Zに平行な面(
図1の面116を参照)は、軟磁性体部品130b,132bの中心(典型的には重心)を通る。一方、軟磁性体部品130b,132bの開口部131b、133bの軸直交方向Zの位置は、寸法hの中心よりも、磁界発生源400の反対側にオフセットされている。
【0060】
[第1実施形態の変形例3]
第1実施形態の変形例3を
図4Aおよび
図4Bに示す。変形例3に示す発電センサ100cの軟磁性体部品130c,132cは、変形例2の発電センサ100b(
図3)の軟磁性体部品130b,132bに相当する軸直交部134と、磁界発生源400側でかつコイル120の外径の外側にて、磁性ワイヤ110の軸方向Xに延びる軸平行部135とを有する。この例では、直方体形状の軸直交部134の磁界発生源400側の先端に直方体形状の軸平行部135が連設されており、L字形状の軟磁性体部品130c,132cが構成されている。軸直交部134は軸方向Xに寸法Lを有する。一対の軟磁性体部品130c,132cの軸平行部135は、軸直交部134から寸法L′だけ、軸方向Xに沿って互いに向かって延びている。軸平行部135の近接端同士の間には、軸方向Xの中心位置で、寸法L″の隙間が形成されている。軸平行部135は、磁界発生源400からの磁界が磁性ワイヤ110の軸方向Xの中間部に進入することを防ぐ磁気遮蔽機能と、磁界発生源400からの磁界を集める集磁機能と、集磁された磁界を軸直交部134を介して磁性ワイヤ110の端部111,112に導く磁気誘導機能とを有する。
【0061】
図5A、
図5Bおよび
図5Cは、変形例1,2,3の発電センサ100a,100b,100cをそれぞれ使用した装置の例を示す。これらの装置は、磁界発生源400を磁石410,420,430として、その磁石410,420,430が発電センサ100a,100b,100cの磁性ワイヤ110の軸方向Xに相対移動(この例では直線移動)するエンコーダ装置を構成している。
【0062】
図5Aは変形例1の発電センサ100aを用いたエンコーダ装置の斜視図である。磁界発生源400である磁石410は幅方向Yに着磁された多極磁石である。発電センサ100aの一対の軟磁性体部品130a,132aは幅方向Yに長く延びているため、幅方向Yに着磁された磁石410に対して、軟磁性体部品130a,132aの集磁効果が高まる。よって、装置自体が軸直交方向Zに関して薄く小型になるという利点がある。なお、各軟磁性体部品130a,132aが磁石410のN極およびS極に同時に対向しないように、幅方向Yに関して、磁石410に対して発電センサ100aをオフセットして配置する必要がある。
【0063】
図5Bは変形例2の発電センサ100bを用いたエンコーダ装置の斜視図である。磁界発生源400である磁石420は軸直交方向Zに着磁された多極磁石である。発電センサ100bの一対の軟磁性体部品130b,132bは軸直交方向Zに長く延びているため、その方向に着磁された磁石420に対して、集磁効果が高まる。よって、装置自体が幅方向Yに関して小型になるという利点がある。
【0064】
図5Cは変形例3の発電センサ100cを用いたエンコーダ装置の斜視図である。磁界発生源400である磁石430は軸直交方向Zに着磁された多極磁石である。発電センサ100cの一対の軟磁性体部品130c,132cは軸直交方向Zで磁石430に対向する側に軸平行部135を有するL字形状をなす。軟磁性体部品130c,132cは、軸直交方向Zに着磁された磁石430に対して、集磁効果が高まる。よって、装置自体が幅方向Yに関して小型になるという利点がある。
【0065】
さらに発電センサ100bとは異なり、軟磁性体部品130c,132cがL字形状を成しているため、磁石430に対向する軟磁性体部品130c,132cの面積が大きいため、集磁機能以外にシールド機能が働く。よって、
図5Bに示すように、発電センサ100bでは磁石420の着磁ピッチλ(NS極の中心間)が磁性ワイヤ110の長さLw以上を必要とするが、発電センサ100cの場合、
図5Cに示すように、磁石430の着磁ピッチλは、一対の軟磁性体部品130c,132cの隙間の寸法L″以上あれば、磁性ワイヤ110の長さLw以下でも設計可能となる。よって、発電センサ100b,100cに対して磁石420,430が同じ距離の相対移動する場合に、
図5Bのエンコーダ装置の発電センサ100bが出力するパルス信号数より、
図5Cのエンコーダ装置の発電センサ100cが出力するパルス信号数の方が多い。すなわち、分解能の高い位置検出が可能になる。
【0066】
[モデル]
次に説明する第2実施形態の理解を容易にするため、
図6Aおよび
図6Bのモデル構造(比較例)を説明する。発電センサ200は、磁界発生源400との相対運動によって印加される磁界によって大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤ110と、磁性ワイヤ110に巻回されたコイル120と、一対の直方体の軟磁性体部品230,233とを含む。コイル120は、磁性ワイヤ110の第1端部111と第2端部112とを同じ長さで露出するように、磁性ワイヤ110に巻回されている。このモデルでは、コイル120は、一対の軟磁性体部品230,233の間で磁性ワイヤ110に巻回されている。一対の軟磁性体部品230,233は、磁性ワイヤ110の外径と同じ円状の開口部が形成され、その開口部に磁性ワイヤの第1端部111および第2端部112がそれぞれ挿入されている。
【0067】
磁性ワイヤ110の中心軸線を含んで幅方向Yに延びる仮想面で一対の軟磁性体部品230,233を分割すると、軟磁性体部品230,233は、磁界発生源400に対向する側の部位22,25と、磁界発生源400に対向しない側の部位21,24に分割される。その場合、磁界発生源400に対向しない側の部位21,24は、磁界発生源400からの磁界を集磁する機能はないが、軟磁性体部品230,233と磁性ワイヤ110との間の磁気結合に寄与する。磁界発生源400に対向しない側の部位21,24が無い場合には、磁界発生源400に対向する側の部位22,25と磁性ワイヤ110とが接触する部分が狭く小さいため、それらの間の磁気的結合が弱く、大バルクハウゼン効果によるパルス信号が安定しないおそれがある。
【0068】
[第2実施形態]
図7Aは第2実施形態に基づく発電センサ200aの斜視図であり、
図7Bは軸方向Xに見た正面図であり、
図7Cは
図7Aの面116における切断面を幅Yからみた断面図である。
【0069】
発電センサ200aは、磁界発生源400との相対運動によって印加される磁界によって大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤ110と、磁性ワイヤ110に巻回されたコイル120と、一対の軟磁性体部品232,235とを含む。コイル120は、磁性ワイヤ110の第1端部111と第2端部112とを同じ長さで露出するように、磁性ワイヤ110に巻回されている。この実施形態では、コイル120は、一対の軟磁性体部品232,235の間で磁性ワイヤ110に巻回されている。一対の軟磁性体部品232,235は、磁性ワイヤ110と磁界発生源400との間に位置している。磁性ワイヤ110の第1端部111および第2端部112は一対の軟磁性体部品232,235の磁界発生源400に対向しないそれぞれの面238,239に置かれ、軟磁性樹脂140によって一対の軟磁性体部品232,235にそれぞれ接着固定されている。
【0070】
一対の軟磁性体部品232,235は、直方体の同じ構造を有し、磁性ワイヤ110の軸方向Xの中心において軸方向Xに直交する対称面115(幾何学的配置を説明するための仮想的な平面)に対して互いに対称に構成されている。磁界発生源400と対向する方向である軸直交方向Zに平行で磁性ワイヤ110の径方向の中心を通る(磁性ワイヤ110の中心軸線を含む)面116(幾何学的配置を説明するための仮想的な平面)を考えると、一対の軟磁性体部品232、235の中心(典型的には重心)は、面116上に配置される。具体的には、
図7Bにおいて磁性ワイヤ110は、軟磁性体部品232,235の幅寸法w(幅方向Yの寸法)の1/2の位置である。
【0071】
軟磁性樹脂140の厚みを持った被膜が、一対の軟磁性体部品232,235の磁界発生源400に対向しないそれぞれの面238,239の一部または全部に亘り、かつ面238,239と磁性ワイヤ110の端部111,112との隙間を埋めて磁性ワイヤ110の端部111,112を全周に亘って覆う。
【0072】
軟磁性樹脂140の厚みを持った被膜が、磁性ワイヤ110と軟磁性体部品232,235との間に介在していることで、それらの間の磁気的結合が強まる。それに応じて磁性ワイヤ110の両端部の反磁界を抑制し、軟磁性体部品232,235によって集磁された磁束は、磁性ワイヤ110の軸方向Xの広い範囲にわたってその軸方向Xに磁界を誘導することができる。また、軟磁性樹脂140に弾力性があるため、磁性ワイヤ110に軟磁性体部品232,235を組み付けても磁性ワイヤ110に意図しない応力が掛からない。加えて、温度変化、外力、振動等の環境下においても、軟磁性樹脂140が磁性ワイヤ110および軟磁性体部品232,235との界面で剥離することがなく、したがって、組立体である発電センサ200aは、高い耐久性を維持する。
【0073】
第2実施形態の一つの利点はその組立工程にある。組立工程の一例は、磁性ワイヤ110をコイル120に挿入する工程、磁性ワイヤ110の両端部111,112を一対の軟磁性体部品232,235の面238,239の所定の位置に配置する工程、および、その後、磁性ワイヤ110の両端部111,112上に軟磁性樹脂140をポッティング、印刷、転写等で塗布する工程を含む。
【0074】
一方、第1実施形態の発電センサ100の組立工程の一例は、磁性ワイヤ110をコイル120に挿入する工程、軟磁性体部品130,132の開口部131,133に磁性ワイヤ110を挿入する工程、およびその前もしくはその後に軟磁性樹脂140を開口部131,133に注入する工程を含む。
【0075】
第2実施形態の軟磁性体部品232,235は、
図6のモデルとは異なり、磁界発生源400に対向しない側の部位21,24に相当する構造部がなく、磁界発生源400に対向しない側に開放された構成となっている。そのため、第2実施形態では、磁性ワイヤ110を開口部に挿入する必要がない。また、磁性ワイヤ110を軟磁性体部品に押し付けて接触させるための別部品も必要ではないため、組立が容易になる。それに応じて、製造コストを低減できる発電センサを提供できる。
【0076】
【0077】
この変形例1は、第2実施形態とは組立工程が異なり、それに応じて、構造に相違が現れる。この変形例1では、先に一対の軟磁性体部品232,235の面238,239に軟磁性樹脂140をポッティング、印刷、転写等で塗布する。その後、磁性ワイヤ110の両端部111,112を軟磁性樹脂140上に設置する。軟磁性樹脂140の厚みを持った被膜が、磁性ワイヤ110の端部111,112の外周の約半周以下の領域に接し、かつ一対の軟磁性体部品232,235の磁界発生源400に対向しないそれぞれの面238,239の一部または全部に亘って接している。このように、磁性ワイヤ110の端部111,112の一部が軟磁性樹脂140から露出してもよい。軟磁性樹脂140は、磁性ワイヤ110の端部111,112の軸方向寸法Lの大部分(好ましくは全部)に渡り、この領域を有効に磁気的結合に利用しているため、磁気的結合機能および応力抑制機能を有効に発揮できる。この構成では、先に軟磁性樹脂140が配置されるので、組立が一層容易になる。
【0078】
【0079】
図9Aに斜視図および
図9Bに軸方向Xに見た正面図をそれぞれ示す発電センサ200bは、第2実施形態の一対の軟磁性体部品232,235に代えて、磁界発生源400と対向しない面238,239に磁性ワイヤ110の軸方向Xに延びる断面半円状(U字状)の溝236b,237bを設けた一対の軟磁性体部品232b,235bが用いられている。磁界発生源400と対向する方向である軸直交方向Zに平行で磁性ワイヤ110の径方向の中心を通る(中心軸線を含む)面116(幾何学的配置を説明するための仮想的な平面)が、一対の軟磁性体部品232b,235bの中心(典型的には重心)を通るように、磁性ワイヤ110と軟磁性体部品232b,235bとの相対配置が設定されている。それに応じて、磁性ワイヤ110の軸方向Xに延びる断面半円状の溝236b,237bは、面116上に配置されている。具体的には、
図9Bにおいて溝236b,237bは、軟磁性体部品232b,235bの幅寸法w(幅方向Yの寸法)の1/2の位置である。
【0080】
この溝は
図9Cに示す断面三角状(V字状)の溝236c,237cや、
図9Dに示す断面四角状(U字状)の溝236d,237dであってもよい。
【0081】
さらに、
図9Eに示すように、面238,239から軸直交方向Zに突出して軸方向Xに延びる一対の突条261を幅方向Yに間隔を空けて平行に設けて、それらの間に溝236e,237eを形成してもよい。
【0082】
図9B~
図9Eで示す溝236b,237b;236c,237c;236d,237d;236e,237eのそれぞれの開口部幅寸法g(幅方向Yの寸法)は磁性ワイヤ110の外径以上である。これらの構成は、磁性ワイヤ110の両端部111,112の位置決めが容易になる利点がある。溝236b,237b;236c,237c;236d,237d;236e,237eの深さ寸法t(軸直交方向Zの寸法)は、位置決め機能を損なわない範囲であれば、特に限定されない。
【0083】
図9Eの構成において、突条261を一本のみとしてもよく、磁性ワイヤ110の位置決めの目的は達せられる。ただし、突条261を2本とする構成は、軟磁性体部品232b,235bと磁性ワイヤ110との磁気結合を強められる利点がある。
【0084】
図9Fのように、軟磁性樹脂140の厚い被膜が磁性ワイヤ110の端部111,112の外周を全周に亘って覆い、かつ一対の軟磁性体部品232bの溝236bの内部に亘っていてもよい。あるいは
図9Gのように、軟磁性樹脂140の厚みを持った被膜が、磁性ワイヤ110の端部111,112の外周の約半周以下の領域と、一対の軟磁性体部品232b,235bの溝236bの内面との間に配置されてもよい。どちらの構成でも、軟磁性樹脂140は、磁気的結合機能と応力抑制機能とを発揮できる。
【0085】
[第2実施形態の変形例3]
第2実施形態でも第1実施形態の変形例と同様の構成が可能である。第2実施形態の変形例3の一つの発電センサ200cを
図10Aに、第2実施形態の変形例3のもう一つの発電センサ200dを
図10Bに示す。
【0086】
図10Aの発電センサ200cの一対の軟磁性体部品240,241は、磁界発生源400に対向する方向である軸直交方向Zの寸法hを、磁界発生源400の磁極面と平行でかつ磁性ワイヤ110の軸方向Xに垂直である幅方向Yの寸法wより長くした直方体である。
【0087】
図10Bの発電センサ200dの軟磁性体部品250,251は、磁性ワイヤ110の両端部に結合した軸直交部254と、磁界発生源400側で、かつコイル120の外径の外側にて、磁性ワイヤ110の軸方向Xに延びる軸平行部255とを有する。この例では、直方体形状の軸直交部254の磁界発生源400側の先端に直方体形状の軸平行部255が連設されており、L字形状の軟磁性体部品250,251が構成されている。軸直交部254は軸方向Xに寸法Lを有する。一対の軟磁性体部品130c,132cの軸平行部255は、軸直交部254から寸法L′だけ、軸方向Xに沿って互いに向かって延びている。軸平行部255の近接端同士の間には、軸方向Xの中心位置で、寸法L″の隙間が形成されている。
【0088】
これらの二つの発電センサ200c,200dをエンコーダ装置に使用したときに第1実施形態の変形例と同じ利点が得られる(
図5Bおよび
図5C参照)。
【0089】
第2実施形態および変形例の説明図では、磁性ワイヤ110の端部111,112は、軟磁性体部品232,235;232b,235b;240,241;250,251より露出しているが、端部111,112は、軟磁性体部品232,235;232b,235b;240,241;250,251から露出しなくてもよい。
【0090】
[第3実施形態]
発電センサの一対の軟磁性体部品が直方体やL字形の場合、磁界発生源に対向する側に平坦面を有しているので、この平面を面実装エリアとして利用することができる。
【0091】
図11は、第3実施形態に係る発電センサ300の構成を説明するための斜視図である。第3実施形態の説明においての構成部品は、前述の第2実施形態の変形例3(
図10B参照)の構成部分に対応する参照符号を用いる。
【0092】
この第3実施形態の発電センサ300においては、面実装が可能な外部端子電極を軟磁性体部品250,251に直接設けている。外部端子電極はリードフレーム310,311で構成されている。リードフレーム310,311は、軟磁性体部品250,251の形状に合うようにフォーミングされている。
【0093】
より具体的には、リードフレーム310,311は、磁性ワイヤ110の軸方向Xの中心において軸方向Xに直交する対称面115(幾何学的配置を説明するための仮想的な平面)に対して実質的に対称に構成されている。リードフレーム310,311は、軟磁性体部品250,251の外側面に沿って軸方向Xに直交する側面部312と、側面部312の一縁から磁性ワイヤ110が配置された面238,239に沿って軸方向Xに内方へと延びた平坦な天面部313と、磁界発生源に対向する側の面256,257に沿って軸方向Xに内方へと延びた平坦な底面部314とを備え、横向きU字形の構成を有している。
【0094】
リードフレーム310,311は、ポッティング、印刷、転写等による塗布によって配置される軟磁性樹脂140の塗布領域を避ける構造となっており、それにより、軟磁性体部品250,251と磁性ワイヤ110とを磁気的に結合する軟磁性樹脂140の機能が損なわれない構造となっている。磁性ワイヤ110が配置された軟磁性体部品250,251の面238,239において、リードフレーム310,311の天面部313の露出面上で、コイル120の端末線121,122が半田や抵抗溶接等でリードフレーム310,311に結線される。
【0095】
よって、リードフレーム310,311の磁界発生源に対向する側の平坦な底面部314をプリント基板等へ接合することによって、発電センサ300を面実装できる。このように、軟磁性体部品250,251に直接接触するリードフレーム310,311で外部端子電極を構成することで、発電センサ300を構成する部品点数が減り、構造が簡単で小型な面実装可能な発電センサ300を提供できる。
【0096】
外部端子電極をリードフレーム310,311で構成する例を示したが、メッキ層、導電ペースト層、半田層などで外部端子電極を構成してもよい。磁性ワイヤ110が導体の場合は、外部端子電極が軟磁性体部品に直接接触するため、軟磁性体部品および/または軟磁性樹脂は絶縁体である。具体的には、軟磁性体部品および/または軟磁性樹脂中の軟磁性体粉の軟磁性体材料は、Ni系フェライトが好ましい。
【0097】
図11の構成では、軟磁性樹脂140がリードフレーム310,311に接しているので、軟磁性体部品250,251および軟磁性樹脂140の両方を絶縁体とすべきである。しかし、軟磁性樹脂140がリードフレーム310,311に接しない場合には、軟磁性体部品250,251および軟磁性樹脂140のうちの少なくとも一方が絶縁体であれば、リードフレーム310,311と磁性ワイヤ110とが絶縁される。メッキ層等の導電層で外部端子電極を構成する場合も同様である。
【0098】
前述の説明では、発電センサが使用されるエンコーダ装置の例として直動型のエンコーダ装置について説明したが、磁石の回転運動を検出する回転型のエンコーダ装置にも本発明の発電センサが適用できる。
【0099】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0100】
100,100a,100b,100c :発電センサ
110 :磁性ワイヤ
111 :第1端部
112 :第2端部
116 :面
120 :コイル
130,130a,130b,130c :軟磁性体部品
131,131a,131b :開口部
132,132a,132b,132c :軟磁性体部品
133,133a,133b :開口部
134 :軸直交部
135 :軸平行部
140 :軟磁性樹脂
200,200a,200b,200c,200d :発電センサ
230,232,232b,233,235,235b :軟磁性体部品
236b,236c,236d,236e,237b,237c,237d,237e :溝
238,239 :面
240,241,250,251 :軟磁性体部品
254 :軸直交部
255 :軸平行部
261 :突条
300 :発電センサ
310,311 :リードフレーム
400 :磁界発生源
410,420,430 :磁石
X :軸方向
Y :幅方向
Z :軸直交方向