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特開2024-153504イグサ抽出物の製造方法及びイグサ抽出物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153504
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】イグサ抽出物の製造方法及びイグサ抽出物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/88 20060101AFI20241022BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20241022BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241022BHJP
   A23L 3/34 20060101ALI20241022BHJP
   A23L 3/3472 20060101ALI20241022BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20241022BHJP
【FI】
A61K36/88
A61K8/9794
A61Q19/00
A61Q13/00 101
A61P31/04
A23L3/34
A23L3/3472
A41D31/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067441
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】598094713
【氏名又は名称】株式会社王樹製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦義
(72)【発明者】
【氏名】島田 修
【テーマコード(参考)】
4B021
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B021MC01
4B021MC02
4B021MK05
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC01
4C083CC06
4C083DD23
4C083DD30
4C083EE11
4C083EE50
4C083FF01
4C083KK02
4C088AB71
4C088AC02
4C088BA10
4C088CA06
4C088MA02
4C088MA16
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZB35
(57)【要約】
【課題】 高い抗菌性を有するイグサ抽出物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 イグサを破砕する工程と、イグサを溶媒に加えて撹拌する工程と、攪拌されたイグサ溶液の抽出液を得る工程とを備え、前記溶媒がアルコールを含む溶媒であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグサを破砕する工程と、
イグサを溶媒に加えて、撹拌する工程と、
攪拌されたイグサ溶液の抽出液を得る工程と、を備え、
前記溶媒がアルコールを含む溶媒であることを特徴とする、
イグサ抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記イグサを破砕する工程より前に、イグサを根などの地下にあるイグサ地下部と、茎などの地上にあるイグサ地上部と、に分ける工程をさらに備え、
前記イグサを破砕する工程が、前記イグサ地上部を破砕する工程である、
請求項1記載のイグサ抽出物の製造方法。
【請求項3】
前記イグサを破砕する工程が、イグサの茎を破砕する工程であることを特徴とする、
請求項2記載のイグサ抽出物の製造方法。
【請求項4】
前記アルコールが、エタノールであることを特徴とする、
請求項1記載のイグサ抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記イグサを破砕する工程より前に、前記イグサを凍結乾燥する工程をさらに備え、
前記イグサを破砕する工程が、凍結乾燥したイグサを粉末にする工程である、
請求項1乃至4のいずれか1項記載のイグサ抽出物の製造方法。
【請求項6】
前記抽出液をろ紙で濾過する工程をさらに備える、
請求項5記載のイグサ抽出物の製造方法。
【請求項7】
前記抽出液または前記抽出液をろ紙で濾過した後の抽出液を凍結乾燥する工程をさらに備える、請求項5記載のイグサ抽出物の製造方法。
【請求項8】
前記撹拌が、所定時間の超音波処理により行う、
請求項1記載のイグサ抽出物の製造方法。
【請求項9】
前記イグサを破砕する工程より前に、イグサを水で洗浄し乾燥させる工程をさらに備える、請求項1記載のイグサ抽出物の製造方法。
【請求項10】
イグサからアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含むことを特徴とする、
イグサ抽出物。
【請求項11】
茎などの地上にあるイグサ地上部からアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含む、請求項10記載のイグサ抽出物。
【請求項12】
イグサの茎からアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含む、
請求項11記載のイグサ抽出物。
【請求項13】
前記アルコール溶媒が、エタノールを含む溶媒である、
請求項10乃至12のいずれか1項記載のイグサ抽出物。
【請求項14】
液体状または粉末状である、
請求項13記載のイグサ抽出物。
【請求項15】
請求項14記載のイグサ抽出物が含まれる、食品。
【請求項16】
請求項14記載のイグサ抽出物が含まれる、アロマオイル。
【請求項17】
請求項14記載のイグサ抽出物が含まれる、衣料品。
【請求項18】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする、
イグサ抽出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イグサ抽出物の製造方法及びイグサ抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イグサが腐敗細菌に対して抗菌機能・殺菌機能を有することは知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、そのような機能を利用するものとして、口腔用組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/011679号
【特許文献2】特開2014-210724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、イグサに抗菌活性があることが知られているほか、またイグサの成分を抽出した抽出物は、アロマオイルや、香水、化粧品、食品香料、ポプリなど、芳香を楽しむためにも利用されている。
しかしながら、イグサの抗菌活性について、詳細なことはわかっておらず、そのため抗菌活性を向上させることなどの改良が困難とされていた。
【0005】
本願の発明者は、イグサの抗菌活性等について鋭意研究を重ね、イグサの成分を抽出する溶媒にアルコールを含む溶媒、特にエタノールを含む溶媒を用いること、イグサの特に茎部分を用いることで、高い抗菌性が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、高い抗菌性を有し、アロマオイルや香水、化粧品、食品、ポプリ作り、芳香を楽しむためにも利用できるイグサ抽出物の製造方法及びイグサ抽出物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様に係るイグサ抽出物の製造方法は、イグサを破砕する工程と、イグサを溶媒に加えて撹拌する工程と、攪拌されたイグサ溶液の抽出液を得る工程とを備え、前記溶媒がアルコールを含む溶媒であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、イグサを、アルコールを含む溶媒で抽出することにより、例えば水のみなどアルコールを含まない溶媒による抽出と比較して、高い抗菌性を有するイグサ抽出物を得ることができる。
【0009】
また、このイグサ抽出物の製造方法は、前記イグサを破砕する工程より前に、イグサを根などの地下にあるイグサ地下部と、茎などの地上にあるイグサ地上部と、に分ける工程をさらに備え、前記イグサを破砕する工程が、前記イグサ地上部を破砕する工程であることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、イグサを根などの地下部と茎などの地上部とにわけ、イグサ地上部を、アルコールを含む溶媒で抽出することにより、より高い抗菌性を有するイグサ抽出物を得ることができる。
【0011】
このイグサ抽出物の製造方法は、前記イグサを破砕する工程が、イグサの茎を破砕する工程であることを特徴とする。
【0012】
イグサ地上部のうち、イグサの茎部分を、アルコールを含む溶媒で抽出することにより、さらに高い抗菌性を有するイグサ抽出物を得ることができる。
【0013】
このイグサ抽出物の製造方法は、前記アルコールが、エタノールであることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、イグサを抽出するアルコールをエタノールとすることで、さらに高い抗菌性を有するイグサ抽出物を得ることができる。
【0015】
このイグサ抽出物の製造方法は、前記イグサを破砕する工程より前に、前記イグサを凍結乾燥する工程をさらに備え、前記イグサを破砕する工程が、凍結乾燥したイグサを粉末にする工程である。
【0016】
この構成によれば、イグサを凍結乾燥し、イグサを破砕して粉末状にすることで、溶媒で抽出する際の表面積が増え、抽出を効果的に行うことができる。
【0017】
このイグサ抽出物の製造方法は、前記抽出液をろ紙で濾過する工程をさらに備える。
【0018】
この構成によれば、溶媒により抽出した抽出液を濾過することで、不純物の少ない抽出物とすることができる。
【0019】
このイグサ抽出物の製造方法は、前記抽出液または前記抽出液をろ紙で濾過した後の抽出液を凍結乾燥する工程をさらに備える。
【0020】
この構成によれば、凍結乾燥することで、固体状のイグサ抽出物とすることができる。
【0021】
このイグサ抽出物の製造方法は、前記撹拌が所定時間の超音波処理により行う。
【0022】
この構成によれば、溶媒で抽出する際、攪拌抽出をより効果的に行うことができる。ここで所定時間とは、例えば5分-60分が効果的であり、20分ー40分がより効果的である。
【0023】
このイグサ抽出物の製造方法は、前記イグサを破砕する工程より前に、イグサを水で洗浄し乾燥させる工程をさらに備える。
【0024】
この構成によれば、予めイグサを水で洗浄して乾燥させることで、不純物を抑えることができる。また、イグサの洗浄に水を用いることで、その水にイグサの抗菌性にかかる成分の漏出を防止することができるので、洗浄に水を用いることには意味がある。
【0025】
本発明の一の態様に係るイグサ抽出物は、イグサからアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含むことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、イグサからアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含むイグサ抽出物とすることで、高い抗菌性を有するイグサ抽出物とできる。
【0027】
このイグサ抽出物は、茎などの地上にあるイグサ地上部からアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含むことを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、茎などのイグサ地上部からアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含むイグサ抽出物とすることで、より高い抗菌性を有するイグサ抽出物とできる。
【0029】
このイグサ抽出物は、イグサの茎からアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含むことを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、イグサ地上部のうち、イグサの茎部分からアルコール溶媒によって抽出された抽出物を含むイグサ抽出物とすることで、さらに高い抗菌性を有するイグサ抽出物とできる。
【0031】
このイグサ抽出物は、前記アルコール溶媒が、エタノールを含む溶媒であることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、イグサからエタノールを含む溶媒によって抽出された抽出物を含むイグサ抽出物とすることで、さらに高い抗菌性を有するイグサ抽出物とできる。
【0033】
このイグサ抽出物は、液体状または粉末状である。
【0034】
この構成によれば、液体状の抽出液とすることができ、また例えば凍結乾燥により粉末状などの固形状にすることができる。
【0035】
また、上記したイグサ抽出物を、食品やアロマオイル、靴下などの衣料品に加えることで、これら食品やオイル、衣料品などに抗菌性を付与することができる。
【0036】
このイグサ抽出物は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、高い抗菌性を有するイグサ抽出物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係るイグサ抽出物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】黄色ブドウ球菌についての試験結果を示す図である。
図3】大腸菌についての試験結果を示す図である。
図4】白癬菌についての試験結果を示す図である。
図5】アクネ菌についての試験結果を示す図である。
図6】阻止円の測定方法を示し、(a)は円形の場合の説明図、(b)は楕円形の場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一実施形態にかかるイグサ抽出物の製造方法について詳細に説明するが、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0040】
<1.イグサ抽出物及びその製造方法>
本実施形態に係るイグサ抽出物は、一例として次の工程により製造する(図1参照)。
【0041】
1.まずイグサを収穫し、イグサを水で洗浄し、乾燥する。
【0042】
2.そして、根などのイグサ地下部と、茎などのイグサ地上部とにわけて、イグサ地上部からイグサの茎部分を集める。なお、茎のみでなくイグサ地上部をそのまま集めることもできる。
【0043】
3.次に、収穫したイグサの茎部分を凍結乾燥させた後、破砕機などを用いて、粉末状になるまで破砕する。なお、凍結せずそのまま乾燥して、一定程度パリパリになったイグサを破砕することもでき、粉末までいかない段階で留めておくこともできる。
【0044】
4.次に、粉末状のイグサを、予め用意しておいたエタノール溶媒に加え、超音波器等により、例えば30分間攪拌する。なお、超音波器を用いて全体に微振動を与えることで効率よく攪拌が可能であるが、超音波器を用いずに攪拌することもできる。
【0045】
5.次に、攪拌後、一定時間静置して、固形部分と液体部分とに分離させ、液体部分のみを抽出する。また、エタノール溶媒以外のアルコール溶媒を用いることもできるが、エタノールはイグサ成分の抽出度合いが高いことと、食品に用いることができるなど、エタノール溶媒が好適である。
【0046】
6.次に、抽出した抽出液を、ろ紙で濾過する。なお、濾過により固形部分や不純物などを取り除けるので、濾過工程を行うことが望ましいが、濾過は必須の工程ではない。
【0047】
7.最後に、濾過されたイグサ抽出液を回収して、イグサの茎部分から有効成分が抽出されたイグサ抽出液が完成する。
【0048】
8.なお、このイグサ抽出液を凍結乾燥して、固形状や粉末状のイグサ抽出物とすることもできる。
【0049】
以上の方法によって製造されたイグサ抽出物は、イグサの茎部分等からエタノール溶媒によって有効成分が効率よく抽出されているため、高い抗菌性をもつ。また、この液体状や固体状のイグサ抽出物を、例えばアロマオイルや香水、化粧品、食品などに加えることで、香りや抗菌性のあるものとすることができる。
【0050】
<2.効果試験>
続いて、このイグサ抽出物の抗菌性能などを確認するため、複数の菌種を用いて、イグサ抽出物の効果試験を行った。まず、効果試験を行うためのサンプルは、次の工程により製造したイグサ抽出物を用い、これらとイグサ抽出物を含まない対称(コントロール)と比較した。なお、コントロールには、水抽出物として滅菌水を用い、エタノール抽出物としてDMSO(ジメチルスルホキシド)を用いた。
【0051】
(サンプルの調製方法)
1.イグサを水で洗浄し、乾燥後、茎の部分(イグサの地上部分)と根の部分(イグサの地下部分)とに分け、それぞれを凍結乾燥させた。
2.凍結乾燥物を、粉砕機で粉末にした。
3.滅菌水とエタノール100mLに、茎の部分と根の部分の粉末100gをそれぞれ加えたものを、30分間超音波処理(撹拌)を行い抽出した。
4.各抽出液は、ろ紙でろ過した後、凍結乾燥し、茎の部分および根の部分のエタノール抽出物、水抽出物を得た。
5.茎の部分と根の部分の、エタノール抽出物と水抽出物を、それぞれ100mg/mLになるように滅菌水、DMSO(ジメチルスルホキシド)で調製し、試験に用いた。
【0052】
(ペーパーディスク法)
次に、試験方法については、抗菌活性の判定にペーパーディスク法を用いた。ペーパーディスク法は、寒天平板上に特定の細菌または真菌を塗り広げ、抗菌・抗真菌活性を示すかを、菌の生育阻止円で判断する方法である。
【0053】
菌を塗抹または添加した寒天平板培地上に、一定量のサンプルを浸みこませたペーパーディスク(厚手濾紙)をのせて培養すると、サンプルに含まれる成分がペーパーディスクから培地中あるいはシャーレ内の空気中に拡散する。
【0054】
その拡散する成分に抗菌活性がある場合には、ペーパーディスク周囲に菌が生育しない阻止円(生育阻止円)が形成される。この阻止円の直径を計測することによってサンプルの抗菌活性を比較した。
【0055】
(試験方法)
平板寒天培地に菌液を至適濃度に調製し、100μL塗抹した。滅菌したペーパーディスクに各サンプル(100mg/mL)を40μL滴下し、各菌の至適温度で一定期間培養し、阻止円の大きさによって抗菌活性を検討した。
【0056】
(試験結果)
1.黄色ブドウ球菌(10CFU/mL)培養条件:好気37℃ 1晩培養
結果は、図2に示す通りである。つまり、イグサ茎・エタノール抽出物が最も大きな阻止円を示した。イグサ根・エタノール抽出物においても、エタノール抽出物よりもかなり小さいが阻止円を示した。イグサ根・水抽出物はサンプル由来と思われる菌が検出されたため、正確な阻止円の判定はできなかった。また、イグサ抽出物を含まないコントロール(対称)は、水とエタノールともに、阻止円は示さなかった。
【0057】
2.大腸菌(10CFU/mL)培養条件:好気37℃ 1晩培養
結果は、図3に示す通りである。つまり、イグサ茎・エタノール抽出物が阻止円を示した。イグサ根・水抽出物はサンプル由来と思われる菌が検出されたため、正確な阻止円の判定はできなかった。また、イグサ抽出物を含まないコントロール(対称)は、水とエタノールともに、阻止円は示さなかった。
【0058】
3.白癬菌(3×10CFU/mL) 培養条件:好気25℃ 4日間培養
結果は、図4に示す通りである。つまり、イグサ茎・エタノール抽出物が最も大きな阻止円を示した。イグサ根・エタノール抽出物においても、エタノール抽出物よりもかなり小さいが阻止円を示した。一方、水抽出物、イグサ根・水抽出物は、サンプル由来の菌が検出されたため、正確な阻止円の判定はできなかった。また、イグサ抽出物を含まないコントロール(対称)は、水とエタノールともに、阻止円は示さなかった。
【0059】
4.アクネ菌(630nm=0.2を1/10000に希釈) 培養条件:嫌気37℃ 3日間培養
結果は、図5に示す通りである。つまり、イグサ茎・エタノール抽出物が最も大きな阻止円を示した。イグサ根・エタノール抽出物においても、エタノール抽出物よりもかなり小さいが阻止円を示した。一方、イグサ根・水抽出物はサンプル由来と思われる菌が検出されたため、正確な阻止円の判定はできなかった。また、イグサ抽出物を含まないコントロール(対称)は、水とエタノールともに、阻止円は示さなかった。
【0060】
なお、以上の試験結果による阻止円の大きさは、完全に菌の発育が阻止されている大きさをシャーレの裏側から定規で測定した。阻止円が円形の場合は、図6(a)に示すように、直径を、阻止円が楕円形の場合は、図6(b)に示すように、2か所の直径(長径と短径)を測定した。その大きさより抗菌活性を比較し判定し、その結果をまとめたものを、次の表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
以上の結果から、エタノール溶媒で抽出したイグサ抽出物では、抗菌効果が認められた一方、水で抽出したイグサ抽出物では、抗菌効果が認められなかった。
【0063】
また、イグサ地上部(茎)とイグサ地下部(根)とのエタノール溶媒の抽出物では、イグサ地上部が、イグサ地下部と比較して、高い抗菌効果があることが認められた。
【0064】
<3.その他の実施形態>
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。
【0065】
例えば、本実施形態の溶媒にエタノールを含む溶媒を用いたが、イグサ抽出物を食品に用いない場合などは、エタノール以外のアルコールを含む溶媒を用いることができる。
【0066】
また、イグサ抽出物としては、イグサの茎をエタノール抽出したイグサ茎・エタノール抽出物が望ましいが、抗菌効果は減少するが、それ単体だけでなくイグサの根をエタノール抽出したイグサ根・エタノール抽出物を混ぜることもできる。
【0067】
また、本実施形態のイグサ抽出物は、例えば、食品に加えたり、オイルなどに加えてアロマとしたり、靴下などの衣料品に加えるなどすることで、これら食品やオイル、衣料品などに抗菌性を付与することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6