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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153512
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/18 20060101AFI20241022BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02G7/18
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067453
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115382
【氏名又は名称】ヨツギ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510255093
【氏名又は名称】大和発条株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】西口 昌利
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩一
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】千葉 博
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 忍
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AB05
5G352AC02
5G367MA02
5G367MA03
(57)【要約】
【課題】経時変化による劣化を抑制し、電線からの離脱を防止することができる、固定具、その固定方法、及び落下防止具の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明は、長尺部材に固定される固定具であって、支点部と、 前記支点部に連結され、弾性変形可能な第1支持体と、前記支点部に連結され、弾性変形可能な第2支持体と、を備え、前記第1支持体は、前記支点部から延びる線状の第1支持部と、前記第1支持部に設けられ、前記長尺部材に係合可能な第1係合部と、を備え、前記第2支持体は、前記支点部から延びる線状の第2支持部と、前記第2支持部に設けられ、前記長尺部材に係合可能な第2係合部と、を備え、前記第1支持体及び第2支持体の少なくとも一方は、前記長尺部材に沿って延びる延在部と、前記延在部に設けられ、前記長尺部材の外周面に係合可能な端係合部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材に固定される固定具であって、
支点部と、
前記支点部に連結され、弾性変形可能な第1支持体と、
前記支点部に連結され、弾性変形可能な第2支持体と、
を備え、
前記第1支持体は、
前記支点部から延びる線状の第1支持部と、
前記第1支持部に設けられ、前記長尺部材に係合可能な第1係合部と、
を備え、
前記第2支持体は、
前記支点部から延びる線状の第2支持部と、
前記第2支持部に設けられ、前記長尺部材に係合可能な第2係合部と、
を備え、
前記第1支持体及び第2支持体の少なくとも一方は、
前記長尺部材に沿って延びる延在部と、
前記延在部に設けられ、前記長尺部材の外周面に係合可能な端係合部と、
を備えている、固定具。
【請求項2】
長尺部材に固定される固定具であって、
支点部と、
前記支点部に連結され、弾性変形可能な第1支持体と、
前記支点部に連結され、弾性変形可能な第2支持体と、
を備え、
前記第1支持体は、
前記支点部から延びる線状の第1支持部と、
前記第1支持部の先端から延び、前記第2支持体側に凸となるように円弧状に形成され、前記長尺部材に係合可能な第1係合部と、
前記第1係合部の先端から、当該第1係合部の円弧によって形成される面にと直交するように延びる第1延在部と、
前記第1延在部に設けられ、前記長尺部材の外周面に係合可能な第1端係合部と、
を備え、
前記第2支持体は、
前記支点部から延びる線状の第2支持部と、
前記第2支持部の先端から延び、前記第1支持体側に凸となるように円弧状に形成され、前記長尺部材に係合可能な第2係合部と、
前記第2係合部の先端から、前記第1延在部とは反対側に延びる第2延在部と、
前記第2延在部に設けられ、前記長尺部材の外周面に係合可能な第2端係合部と、
を備えている、固定具。
【請求項3】
前記固定具が前記長尺部材に固定された固定状態では、
前記第1係合部及び前記第2係合部が、前記長尺部材の軸方向に並ぶように係合し、
前記第1延在部が前記第1係合部から前記第2係合部を乗り越えて、前記長尺部材に沿って延び、
前記第2延在部が前記第2係合部から前記第1係合部を乗り越えて、前記第1延在部とは反対側に前記長尺部材に沿って延び、
前記第1端係合部及び前記第2端係合部が、それぞれ、前記長尺部材に係合する、請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記第1延在部において、前記第1係合部と前記第1端係合部との間に設けられ、前記固定具が前記長尺部材に取り付けられた状態では、当該長尺部材の軸方向と交差する方向に延び、当該長尺部材と対向する第1規制部と、
前記第2延在部において、前記第2係合部と前記第2端係合部との間に設けられ、前記固定具が前記長尺部材に取り付けられた状態では、当該長尺部材の軸方向と交差する方向に延び、当該長尺部材と対向する第2規制部と、
をさらに備えている、請求項2に記載の固定具。
【請求項5】
前記固定状態において、前記第1規制部と前記長尺部材の間、及び前記第2規制部と前記長尺部材の間に、それぞれ隙間が形成されるように、前記第1規制部と前記第1端係合部との間、及び前記第2規制部と前記第2端係合部との間に屈曲部がそれぞれ形成されている、請求項4に記載の固定具。
【請求項6】
前記支点部、前記第1支持部の一部、及び前記第2支持部の一部により枠形が形成されるように、前記第1支持部及び前記第2支持部が交差するように伸びている、請求項2に記載の固定具。
【請求項7】
前記第1支持部は、前記長尺部材に係合可能な第3係合部を有し、前記第3係合部から前記第1係合部が延びるように形成され、
前記第2支持部は、前記長尺部材に係合可能な第4係合部を有し、前記第4係合部から前記第2係合部が延びるように形成され、
前記第3係合部と前記第4係合部とで、前記長尺部材を保持可能に構成されている、請求項2に記載の固定具。
【請求項8】
前記支点部、前記第1支持部の少なくとも一部、及び前記第2支持部の少なくとも一部によって枠形が形成され、
前記第1支持部及び前記第2支持部の少なくとも一方には、前記枠形の内部空間へ突出する突出部が形成され、
前記突出部を挟んで、前記枠形の内部空間に、前記支点部側の空間と、前記支点部から離れた空間とが規定され、
前記突出部により、前記内部空間において前記2つの空間を連通する箇所が狭められている、請求項2に記載の固定具。
【請求項9】
請求項2に記載の固定具の支持部を把持部材で把持し、記第1支持体と前記第2支持体との間に前記長尺部材を配置するステップと、
上方から見て前記第1延在部及び第2延在部が前記長尺部材に近づく方向に、前記把持部材を回転させ、前記第1係合部及び前記第2係合部を、前記長尺部材の軸方向に間隔をあけて係合させるステップと、
前記第1端係合部及び前記第2端係合部を、それぞれ、前記長尺部材に係合させるステップと、
を備えている、固定具の固定方法。
【請求項10】
固定具と連結具とを備えた、落下防止具の施工方法であって、
前記長尺部材が電線であり、
請求項9に記載の固定方法により、前記固定具を隣接する複数の電線に固定するステップと、
隣接する前記電線に固定された前記固定具同士を、前記連結具によって連結するステップと、
を備えている、落下防止具の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具、その固定方法、及び落下防止具の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害や劣化等によって電線が断線したとき、架空電線の途中から電線が落下することを防止するため、複数の並行する電線間を絶縁性のロープで連結する技術が知られている。例えば、特許文献1には、電線に樹脂製の電線把持具を取り付け、隣接する電線把持具をロープにより連結する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6581954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した電線把持具は、樹脂製であるため、経時変化によってクラックが生じたり、一部が破断して電線から離脱するおそれがある。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、経時変化による劣化を抑制し、電線からの離脱を防止することができる、固定具、その固定方法、及び落下防止具の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.長尺部材に固定される固定具であって、
支点部と、
前記支点部に連結され、弾性変形可能な第1支持体と、
前記支点部に連結され、弾性変形可能な第2支持体と、
を備え、
前記第1支持体は、
前記支点部から延びる線状の第1支持部と、
前記第1支持部に設けられ、前記長尺部材に係合可能な第1係合部と、
を備え、
前記第2支持体は、
前記支点部から延びる線状の第2支持部と、
前記第2支持部に設けられ、前記長尺部材に係合可能な第2係合部と、
を備え、
前記第1支持体及び第2支持体の少なくとも一方は、
前記長尺部材に沿って延びる延在部と、
前記延在部に設けられ、前記長尺部材の外周面に係合可能な端係合部と、
を備えている、固定具。
【0006】
項2.長尺部材に固定される固定具であって、
支点部と、
前記支点部に連結され、弾性変形可能な第1支持体と、
前記支点部に連結され、弾性変形可能な第2支持体と、
を備え、
前記第1支持体は、
前記支点部から延びる線状の第1支持部と、
前記第1支持部の先端から延び、前記第2支持体側に凸となるように円弧状に形成され、前記長尺部材に係合可能な第1係合部と、
前記第1係合部の先端から、当該第1係合部の円弧によって形成される面にと直交するように延びる第1延在部と、
前記第1延在部に設けられ、前記長尺部材の外周面に係合可能な第1端係合部と、
を備え、
前記第2支持体は、
前記支点部から延びる線状の第2支持部と、
前記第2支持部の先端から延び、前記第1支持体側に凸となるように円弧状に形成され、前記長尺部材に係合可能な第2係合部と、
前記第2係合部の先端から、前記第1延在部とは反対側に延びる第2延在部と、
前記第2延在部に設けられ、前記長尺部材の外周面に係合可能な第2端係合部と、
を備えている、固定具。
【0007】
項3.前記固定具が前記長尺部材に固定された固定状態では、
前記第1係合部及び前記第2係合部が、前記長尺部材の軸方向に並ぶように係合し、
前記第1延在部が前記第1係合部から前記第2係合部を乗り越えて、前記長尺部材に沿って延び、
前記第2延在部が前記第2係合部から前記第1係合部を乗り越えて、前記第1延在部とは反対側に前記長尺部材に沿って延び、
前記第1端係合部及び前記第2端係合部が、それぞれ、前記長尺部材に係合する、項2に記載の固定具。
【0008】
項4.前記第1延在部において、前記第1係合部と前記第1端係合部との間に設けられ、前記固定具が前記長尺部材に取り付けられた状態では、当該長尺部材の軸方向と交差する方向に延び、当該長尺部材と対向する第1規制部と、
前記第2延在部において、前記第2係合部と前記第2端係合部との間に設けられ、前記固定具が前記長尺部材に取り付けられた状態では、当該長尺部材の軸方向と交差する方向に延び、当該長尺部材と対向する第2規制部と、
をさらに備えている、項2に記載の固定具。
【0009】
項5.前記固定状態において、前記第1規制部と前記長尺部材の間、及び前記第2規制部と前記長尺部材の間に、それぞれ隙間が形成されるように、前記第1規制部と前記第1端係合部との間、及び前記第2規制部と前記第2端係合部との間に屈曲部がそれぞれ形成されている、項4に記載の固定具。
【0010】
項6.前記支点部、前記第1支持部の一部、及び前記第2支持部の一部により枠形が形成されるように、前記第1支持部及び前記第2支持部が交差するように伸びている、項2に記載の固定具。
【0011】
項7.前記第1支持部は、前記長尺部材に係合可能な第3係合部を有し、前記第3係合部から前記第1係合部が延びるように形成され、
前記第2支持部は、前記長尺部材に係合可能な第4係合部を有し、前記第4係合部から前記第2係合部が延びるように形成され、
前記第3係合部と前記第4係合部とで、前記長尺部材を保持可能に構成されている、項2に記載の固定具。
【0012】
項8.前記支点部、前記第1支持部の少なくとも一部、及び前記第2支持部の少なくとも一部によって枠形が形成され、
前記第1支持部及び前記第2支持部の少なくとも一方には、前記枠形の内部空間へ突出する突出部が形成され、
前記突出部を挟んで、前記枠形の内部空間に、前記支点部側の第1空間と、前記支点部から離れた第2空間とが規定され、
前記突出部により、前記内部空間において前記第1空間と前記第2空間とを連通する箇所が狭められている、項2に記載の固定具。
【0013】
項9.請求項2に記載の固定具の支持部を把持部材で把持し、記第1支持体と前記第2支持体との間に前記長尺部材を配置するステップと、
上方から見て前記第1延在部及び第2延在部が前記長尺部材に近づく方向に、前記把持部材を回転させ、前記第1係合部及び前記第2係合部を、前記長尺部材の軸方向に間隔をあけて係合させるステップと、
前記第1端係合部及び前記第2端係合部を、それぞれ、前記長尺部材に係合させるステップと、
を備えている、固定具の固定方法。
【0014】
項10.固定具と連結具とを備えた、落下防止具の施工方法であって、
前記長尺部材が電線であり、
請求項9に記載の固定方法により、前記固定具を隣接する複数の電線に固定するステップと、
隣接する前記電線に固定された前記固定具同士を、前記連結具によって連結するステップと、
を備えている、落下防止具の施工方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経時変化による劣化を抑制し、電線からの離脱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る固定具を下から見た斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3図1の正面図である。
図4図1の平面図である。
図5】固定具の電線への固定方法を示す側面図である。
図6】固定具の電線への固定方法を示す平面図である。
図7】固定具の電線への固定方法を示す斜視図である。
図8】固定具の電線への固定方法を示す平面図である。
図9】固定具の電線への固定方法を示す斜視図である。
図10】固定具の電線への固定方法を示す斜視図である。
図11】固定具の電線への固定方法を示す平面図である。
図12】固定具の電線への固定方法を示す正面図である。
図13】連結具の固定具への取付を示す斜視図である。
図14】固定具の電線への固定方法の他の例を示す平面図である。
図15】固定具の電線への固定方法の他の例を示す平面図である。
図16】固定具の電線への固定方法の他の例を示す平面図である。
図17】固定具の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る固定具及び連結具の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。固定具101及び連結具600は、電線500の落下防止具を構成する。固定具101は、電線500に取り付けられるものであり、連結具600は、隣接する電線500に取り付けられた固定具101同士を連結する。以下、固定具について説明した後、落下防止具の施工方法について説明する。
【0018】
<1.固定具の概略構造>
図1は固定具を下から見た斜視図、図2図1の側面図、図3図1の正面図、図4図1の平面図である。以下では、説明の便宜のため、図1図4に示す方向にしたがって説明を行う。但し、本発明は、これらの方向に限定して特定されるものではない。
【0019】
図1図4に示すように、この固定具101は、弾性変形可能な金属製の1本の線材を変形することで形成されたものであり、U字状の支点部10と、この支点部10の一方の端部に連結された第1支持体1と、支点部10の他方の端部に連結された第2支持体2と、を備え、これらが一体的に形成されている。固定具101を構成する金属は、特には限定されないが、例えば、ステンレスを用いることができる。また、線材の径は、特には限定されないが、例えば、1~5mmが好ましく、2~4mmがさらに好ましい。
【0020】
第1支持体1は、第1支持部11と、第1係合部12と、第1延在部13と、第1端係合部14と、第1終端部15と、を備えている。同様に、第2支持体2は、第2支持部21と、第2係合部22と、第2延在部23と、第2端係合部24と、第2終端部25とを備えている。以下、詳細に説明する。
【0021】
<2.第1支持部、第2支持部、第1係合部、及び第2係合部>
図2に示すように、第1支持部11は、支点部10からやや後側に斜め上方に延びる第1部位111と、第1部位111の上端から後側に屈曲する第2部位112と、第2部位112の上端からやや後側に斜め上方に延びる第3部位113と、を備えている。第1係合部12は、U字状に形成されており、一方の端部が第3部位113の上端に連結されている。そして、第1係合部12は、U字の底部が前側の斜め上方に位置し、U字の両端の隙間が後側の斜め下方に開放している。
【0022】
第2支持部21は、第1支持部11と前後方向に対称の形状となっている。より詳細には、第2支持部21は、支点部10からやや前側に斜め上方に延びる第1部位211と、第1部位211の上端から前側に屈曲する第2部位212と、第2部位212の上端からやや前側に斜め上方に延びる第3部位213と、を備えている。第2係合部22は、第1係合部12と前後方向に対称の形状となっている。すなわち、第2係合部22は、U字状に形成されており、一方の端部が第3部位213の上端に連結されている。また、第2係合部22は、U字の底部が後側の斜め上方に位置し、U字の両端の隙間が前側の斜め下方に開放している。
【0023】
以上のように構成された第1支持部11及び第2支持部21において、第1支持部11の第2部位112と、第2支持部21の第2部位212とは交差し、且つ接触している。これにより、支点部10と、第1支持部11の第1部位111及び第2部位112と、第2支持部21の第1部位211及び第2部位212と、で上下方向に延びる第1空間100が形成されている。
【0024】
第1係合部12のU字の底部と、第2係合部22のU字の底部とは近接している(接触していてもよい)。このため、第1支持部11の第3部位113と、第1係合部12と、第2支持部21の第3部位213と、第2係合部22とで、上方に延びる三角形状の第2空間200が形成されている。また、第1係合部12は、第3部位113の上端から前方に屈曲し(この屈曲部分が本発明の第3係合部に相当する)、第2係合部22は、第3部位213の上端から後方に屈曲している(この屈曲部分が本発明の第4係合部に相当する。このため、第2空間200は上端の前後方向の幅が広くなっている。
【0025】
<3.第1延在部、第2延在部>
図2図4に示すように、第1延在部13は、第1係合部12の他方の端部から右側に向かってやや下方に斜めに延びている。より詳細には、第1延在部13は、第1係合部12の他方の端部から右側に延びる第1部位131と、第1部位131の右端部からやや下方に延びる第2部位(第1規制部)132と、第2部位132の下端から右側に延びる第3部位133と、を備えている。
【0026】
第2延在部23は、第1延在部13と左右方向に対称の形状となっており、第1係合部12の他方の端部から左側に向かってやや下方に斜めに延びている。より詳細には、第2延在部23は、第2係合部22の他方の端部から左側に延びる第1部位231と、第2部位232の左端部からやや下方に延びる第2部位(第2規制部)232と、第2部位232の下端部から左側に延びる第3部位233と、を備えている。
【0027】
<4.第1端係合部、第2端係合部>
図2図4に示すように、第1端係合部14は、U字状に形成されており、一方の端部が第1延在部13の第3部位133の右端に連結されている。そして、第1端係合部14は、U字の底部が前側の斜め上方に位置し、U字の両端の隙間が後側の斜め下方に開放している。
【0028】
第2端係合部24は、第1端係合部14と前後方向に対称の形状となっている。すなわち、第2端係合部24は、U字状に形成されており、一方の端部が第2延在部23の第3部位233の左端に連結されている。そして、第2端係合部24は、U字の底部が後側の斜め上方に位置し、U字の両端の隙間が前側の斜め下方に開放している。
【0029】
図4に示すように、固定具101を左右方向から見たとき、第1端係合部14のU字の底部の内側の空間と、第2端係合部24のU字の底部の内側の空間と、が重なっている。
【0030】
<5.第1終端部、第2終端部>
図2及び図3に示すように、第1終端部15は、第1端係合部14の右端から直線状に延びている。一方、第2終端部25は、第2端係合部24の左端から直線状に延びている。
【0031】
<6.落下防止具の施工方法>
次に、落下防止具の施工方法について説明する。上記のように、本実施形態の落下防止具は、上記固定具と後述する連結具によって構成されている。まず、固定具の固定方法について説明する。
【0032】
<6-1.電線に対する固定具の固定方法>
次に、上記のように構成された固定具101の電線への固定方法について、図5図12を参照しつつ説明する。
【0033】
まず、図5に示すように、固定具101の支点部10をヤットコなどの施工器具で掴み、電線500に対して固定具101を下から押し付ける。これにより、第1係合部12と第2係合部22との隙間が押し広げられ、電線500が第2空間200に収容される。このとき、電線500は、第2空間200の上部、つまり、第1支持部11の第3部位113と、第2支持部21の第3部位213との間に挟まれ、保持される。
【0034】
次に、図6に示すように、図5の状態から、施工器具を回転し、第1延在部13、第1端係合部14、及び第1終端部15を、電線500の上方を跨ぐように、(上方から見たときに)反時計回りに回転する。これと同時に、第2延在部23、第2端係合部24、及び第2終端部25も、電線500の上方を跨ぐように、反時計回りに回転する。
【0035】
図7及び図8は、図6の状態から約90度回転した状態を示している。この状態では、第1係合部12と第2係合部22とが電線500を挟むように配置されている。
【0036】
図7及び図8の状態からさらに90度回転すると、図9の状態となる。この状態では、第1係合部12及び第2係合部22が、間隔をおいて、それぞれ電線500に係合する。また、U字状に形成された第1端係合部14及び第2端係合部24が、それぞれ電線に近接する。この状態において、図10図12に示すように、施工器具で、第1延在部13の第3部位133及び第2延在部23の第3部位233を掴み、第1端係合部14及び第2端係合部24を、それぞれ電線500の上側から係合させる。こうして、固定具101の電線500への取り付けが完了する。
【0037】
<6-2.連結具の固定方法>
次に、連結具の固定方法について説明する。図13に示すように、平行に配置された隣接する電線501、502のそれぞれについて、上記のように固定具101を固定する。この例では、各電線501,502に固定具101を3個ずつ、電線501,502に沿って取り付けているが、その個数は特には限定されない。次に、2つの電線において、隣接する固定具101同士を連結具600によって連結する。この例では、3つの連結具600を用いる。連結具600は、紐状の連結部材601と、その両端に固定された固定部材602とを有している。連結部材601は、樹脂材料、ゴムなどの変形可能な絶縁材料で形成されている。また、固定部材602は、各固定具101の支点部10、第1支持部11の第1部位111、第2支持部21の第1部位211のいずれかに着脱自在に取り付けられる。固定部材602の構成は特には限定されないが、例えば、貫通孔を有し、この貫通孔に支点部10、第1支持部11の第1部位111、第2支持部21の第1部位211が挿通されるように構成することができる。
【0038】
こうして、隣接する固定具101同士が連結具600によって連結されると、2つの電線501,502が固定具101及び連結具600を介して連結される。そのため、例えば、一方の電線501が切断したとしても、その電線501は、他方の電線502によって支持されるため、地上に落下するのを防止することができる。なお、連結具600の固定部材602の少なくとも一方を予め固定具101に取り付けた上で、上記の施工を行うこともできる。
【0039】
<7.特徴>
上記のように構成された固定具を用いると、以下のような効果を得ることができる。
【0040】
(1)本実施形態に係る固定具101は、金属製の線材を折り曲げて形成しているため、従来例のような樹脂製の電線把持具とは異なり、経時変化による劣化を抑制することができる。そのため、割れなどにより電線500から離脱するのを防止することができる。
【0041】
(2)固定具101は、1本の線材によって形成され、上記のように第1支持部11と第2支持部21との間に電線500を保持した後、反時計回りに約180度回転させた後、第1端係合部14及び第2端係合部24をそれぞれ電線500に係合させることで、電線500に固定することができる。したがって、施工が簡単である。
【0042】
(3)固定具101が電線500に固定された状態では、図10図11に示すように、第1係合部12と第2係合部22とが、間隔をおいて配置されている。また、第1係合部12から延びる第1延在部13は、第2係合部22を乗り越えて延び、第2係合部22から延びる第2延在部23は、第1係合部12を乗り越えて延びている。したがって、第1係合部12及び第2係合部22は、互いに近接する方向に力が作用した状態で電線500に係合しているため、電線500を締め付けることができる。したがって、固定具101を電線500に対して強固に固定することができる。
【0043】
(4)第1延在部13の第3部位133及び第2延在部23の第3部位233は、それぞれ、第1延在部13の第2部位132及び第2延在部23の第2部位232から上下方向にずれており、電線500との間に隙間を形成することができるため、施工器具で掴みやすくなっている。そのため、第1端係合部14及び第2端係合部24を、それぞれ電線500に対して係合させなくなっている。
【0044】
(5)第1延在部13及び第2延在部23は、それぞれ、第1係合部12及び第2係合部22から下方へ斜めに延びているため、上述した第3部位133,233を施工器具で掴みやすくなっている。
【0045】
(6)第1支持部11と第2支持部21は交差し、これによって第1空間100を形成しているため、連結具600の固定部材602が電線500側に移動するのを防止することができる。また、第1支持部11と第2支持部21は交差させることで、上記のように第1係合部12及び第2係合部22が電線500に係合したときに、両者により強い張力を作用させることができる。但し、第1支持部11と第2支持部21は必ずしも交差させなくてもよく、第1支持部11及び第2支持部21を支点部10から交差させることなく上方に延ばし、それぞれの先端に第1係合部12及び第2係合部22を接続してもよい。
【0046】
(7)第1係合部12は、第3部位113の上端から前方に屈曲し、第2係合部22は、第3部位213の上端から後方に屈曲しているため、この屈曲部分に電線500を保持することができる。
【0047】
(8)上記のように、固定具101は、図14に示すように、図6の状態から時計回りに回転させても、電線500に固定することはできる。しかし、この場合には、図15に示すように、第1係合部12から延びる第1延在部13は、第2係合部22を乗り越えずに延び、第2係合部22から延びる第2延在部23は、第1係合部12を乗り越えずに延びている。したがって、図10図12に示すように、固定具101を電線に強固に固定できない(但し、本発明者が確認したところ,実用レベルではある)。
【0048】
このような時計回りによる固定を防止するため、そのため、本実施形態では、第1延在部13及び第2延在部23に、それぞれ上下方向に延びる第2部位132、232を設けている。これにより、例えば、図16に示すように、固定具101を時計回りに回転させると、これら第2部位132、232が電線500に当たり、それ以上の回転が難しくなるように構成されている。これにより、作業者は回転方向が誤っていることを認識することができる。なお、図16の状態からでも無理に第1端係合部14及び第2端係合部24を、電線500に係合させ、図15のように固定することはできる。
【0049】
<8.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0050】
<8-1>
上記実施形態では、第1延在部13及び第2延在部23に、それぞれ、上下方向に延びる第2部位132,232を設けているが、これは必須ではなく、第1延在部13及び第2延在部23を直線状に形成することもできる。また、終端部15,25も必須ではない。
【0051】
<8-2>
上記実施形態では、第1係合部12が第3部位113の上端から前方に屈曲し、第2係合部22が第3部位213の上端から後方に屈曲しているが、屈曲させることなく、連結することもできる。
【0052】
<8-3>
上記のように、落下防止具の施工においては、連結具600の固定部材602の少なくとも一方を予め固定具101に取り付けた上で、固定具を電線に固定することもできる。しかし、このようにすると、固定部材602が重力で支点部に下がるため、これが邪魔になって、施工器具での支点部10を掴みにくくなるおそれがある。
【0053】
そのため、例えば、図17に示すように、第1支持部11に、第1空間100側に突出する突出部110を形成し、第1空間100を上下2つの空間に仕切る。これにより、上側の空間に連結具600の固定部材602を取り付ければ、固定部材602が支点部10まで下がらないため、固定部材602が邪魔になることなく、施工器具で支点部10を掴むことができる。なお、突出部110は固定部材602が下側の空間に移動しない程度に、第1空間100内に突出していればよい。また、第1支持部11及び第2支持部21の少なくとも一方に突出部を設けてもよい。
【0054】
<8-4>
上記実施形態では、固定具101を上方から見たときに反時計回りに回転させることで、時計回りに回転させるときよりも電線500に強固に固定できることを示した。しかしながら、固定具101の第1支持体1と第2支持体2との対称性を反対にした場合には、上方から見たときに固定具101を時計回りに回転させることで、反時計回りよりも強固に固定することができる。例えば、図1において、第1支持部11の上部が第2支持部21の上部よりも左側に位置するように交差させるとともに、第1支持体1の第1延在部13、第1端係合部14、及び第1終端部15が第1係合部12から左側に延びるようにし、第2支持体1の第2延在部23、第2端係合部24、及び第2終端部25が第2係合部22から右側に延びるようにする。このような形態で固定具101が構成された場合には、電線500に対して時計回りに回転させて固定することが好適である。
【0055】
<8-5>
上記実施形態では、第1支持体1及び第2支持体2のそれぞれに、延在部13,23、端係合部14,24、及び終端部15,25を設けているが、第1支持体1及び第2支持体2の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0056】
<8-6>
上記実施形態では、固定具101を1本の線材で形成しているが、複数の線材を連結して構成することもできる。
【0057】
<8-7>
上記実施形態では、固定具を電線に固定しているが、電線以外の長尺部材に固定することもできる。
【符号の説明】
【0058】
101 固定具
10 支点部
1 第1支持体
11 第1支持部
12 第1係合部
13 第1延在部
14 第1端係合部
2 第2支持体
21 第2支持部
22 第2係合部
23 第2延在部
24 第2端係合部
500 電線(長尺部材)
600 連結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17