(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153515
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067484
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA32
2H033BA11
2H033BA25
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB12
2H033BB17
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB39
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】 シート不良を抑制しつつ省エネ性を向上させること。
【解決手段】 定着装置は、加圧ローラと、無端の定着ベルトと、定着ベルトの内側でかつ加圧ローラに対向して設けられたパッド部材63と、を備え、パッド部材63は、定着ベルトと加圧ローラとが接触するニップ部Nを形成する押圧部73と、加圧ローラの回転軸に平行な長手方向における両端にそれぞれ設けられ、長手方向から見た側面視で押圧部73から定着ベルトの進行方向上流側に延びる一対のガイド部71と、を有し、一対のガイド部71の間に、パッド部材63が定着ベルト57と接触しない空間が形成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ローラと、
無端の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内側でかつ前記加圧ローラに対向して設けられたパッド部材と、を備え、
前記パッド部材は、前記定着ベルトと前記加圧ローラとが接触するニップ部を形成する押圧部と、
前記加圧ローラの回転軸に平行な長手方向における両端にそれぞれ設けられ、前記長手方向から見た側面視で前記押圧部から前記定着ベルトの進行方向上流側に延びる一対のガイド部と、
前記一対のガイド部の間に、前記パッド部材が前記定着ベルトと接触しない空間が形成される、定着装置。
【請求項2】
前記パッド部材は、前記一対のガイド部の間に前記押圧部から前記定着ベルトの進行方向上流側に延びる誘導部を、さらに有し、
前記誘導部は、前記定着ベルトの前記一対のガイド部それぞれと接触する部分よりも前記定着ベルトの内側に位置し、前記押圧部に繋がる誘導面を有する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記長手方向において、前記定着ベルトの長さは、前記一対のガイド部の間の距離より長く、前記パッド部材の長さより短い、請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記長手方向において、前記一対のガイド部の間の距離は、前記ニップ部を通過するシートに形成される画像の最大長よりも長い、請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記長手方向において、前記定着ベルトの長さは、前記加圧ローラの長さよりも長い、請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記一対のガイド部それぞれは、側面視で前記定着ベルトと接触する側に凸の円弧形状の接触面を有する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の定着装置を備えた、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着装置に関し、特に、記録媒体を加圧および加熱することによりトナーを記録媒体に定着させる定着装置、その定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリ装置等の画像形成装置は、トナーで構成されるトナー像が形成された用紙を加圧および加熱することにより用紙にトナーを定着させる定着装置が設けられている。
【0003】
例えば、特開2017-90885号公報には、回転可能な無端状の定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材の外周面に当接される加圧部材と、前記定着部材内部に配置され前記定着部材を介して前記加圧部材に当接して定着ニップを形成するニップ形成部材と、前記定着部材と前記ニップ形成部材との間に設けられ潤滑剤が塗布又は含浸される低摩擦部材とを備える定着装置において、前記ニップ形成部材の前記定着ニップ面側で、前記定着部材移動方向上流側の端部又は端部付近に溝が設けられていることを特徴とする定着装置が記載されている。
【0004】
特開2017-90885号公報に記載の定着装置は、定着部材(定着ベルト)が溝以外の部分でニップ形成部材と接触するので、定着部材移動方向と垂直な方向において、ニップ形成部材と接触する部分と接触しない部分とが存在することになる。このため、ニップ形成部材と接触する部分で、定着部材の熱がニップ形成部材に移動するので、より定着ベルトを加熱する必要がある。また、定着部材の溝以外の部分を削除してしまうと、用紙等のシートが定着部材に当接する部分で用紙が定着部材に90°以上の角度で接触する場合があり、シートが折れ曲がって、シートにしわが発生したり、シートが定着部材と加圧部材との間に詰まったりするシート不良が発生するといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的の1つは、シート不良を抑制しつつ省エネ性を向上させた定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面によれば、定着装置は、加圧ローラと、無端の定着ベルトと、定着ベルトの内側でかつ加圧ローラに対向して設けられたパッド部材と、を備え、パッド部材は、定着ベルトと加圧ローラとが接触するニップ部を形成する押圧部と、加圧ローラの回転軸に平行な長手方向における両端にそれぞれ設けられ、長手方向から見た側面視で押圧部から定着ベルトの進行方向上流側に延びる一対のガイド部と、を有し、一対のガイド部の間に、パッド部材が定着ベルトと接触しない空間が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるプリンターの外観を示す第1の斜視図である。
【
図2】プリンターの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10】定着装置に進入する用紙との相対位置を示す図である。
【
図11】第1の変形例における誘導部の一例を示す図である。
【
図12】第2の変形例における誘導部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるプリンターの外観を示す第1の斜視図である。
図2は、プリンターの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。以下、説明のため、
図2の左右の方向を左右方向といい、表裏の方向を奥行方向という。左右方向で左から右に向かう方向を右側面方向といい、右から左に向かう方向を左側面方向という。奥行方向の表から裏に向かう方向を正面方向といい、裏から表に向かう方向を背面方向という。
【0011】
図1および
図2を参照して、プリンター100は、画像形成装置の一例であり、画像データに基づいてシートに画像を形成するための画像形成部140と、画像形成部140に用紙を供給するための給紙部150と、含む。シートは、紙などの用紙、OHP(Over Head Projector)シートを含む記録媒体である。ここでは、シートの一例として用紙を用いる場合を例に説明する。
【0012】
画像形成部140は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックそれぞれの画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを備える。ここで、“Y”、“M”、“C”および“K”は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを表す。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kには、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの印字用データがそれぞれ入力される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kは、取扱うトナーの色彩が異なるのみなので、ここでは、イエローの画像を形成するための画像形成ユニット20Yについて説明する。
【0013】
画像形成ユニット20Yは、イエローの印字用データが入力される露光装置21Yと、像担持体である感光体ドラム23Yと、感光体ドラム23Yの表面を一様に帯電するための帯電ローラ22Yと、現像器24Yと、感光体ドラム23Y上に形成されたトナー像を電界力の作用で像担持体である中間転写ベルト30上に転写するための1次転写ローラ25Yと、感光体ドラム23Y上の転写残トナーを除去するためのドラム清掃ブレード27Yと、トナーボトル41Yと、トナーホッパー42Yと、を備える。
【0014】
トナーボトル41Yは、イエローのトナーを収容する。トナーボトル41Yは、トナーボトルモーターを駆動源として回転し、トナーを外部に排出する。トナーボトル41Yから排出されたトナーは、トナーホッパー42Yに供給される。トナーホッパー42Yは、現像器24Yに収容されたトナーの残量が予め定められた下限値以下になることに応じて現像器24Yにトナーを供給する。
【0015】
感光体ドラム23Yの周辺に、帯電ローラ22Y、露光装置21Y、現像器24Y、1次転写ローラ25Y、ドラム清掃ブレード27Yが、感光体ドラム23Yの回転方向に沿って順に配置される。
【0016】
感光体ドラム23Yは、帯電ローラ22Yによって帯電された後、露光装置21Yが発光するレーザー光が照射される。露光装置21Yは、感光体ドラム23Yの表面の画像対応部を露光して静電潜像を形成する。これにより、感光体ドラム23Yに静電潜像が形成される。続いて、現像器24Yが、感光体ドラム23Yに形成された静電潜像を帯電したトナーで現像する。具体的には、感光体ドラム23Yに形成された静電潜像上に電界力の作用でトナーが載せられることにより、トナー像が感光体ドラム23Yに形成される。感光体ドラム23Y上に形成されたトナー像は、像担持体である中間転写ベルト30上に1次転写ローラ25Yにより電界力の作用で転写される。感光体ドラム23Y上で転写されずに残ったトナーは、ドラム清掃ブレード27Yにより感光体ドラム23Yから除去される。
【0017】
一方、中間転写ベルト30は、駆動ローラ33と従動ローラ34とにより弛まないように懸架されている。駆動ローラ33が
図2中で反時計回りに回転すると、中間転写ベルト30が所定の速度で図中反時計回りに回転する。中間転写ベルト30の回転に伴って、従動ローラ34が、反時計回りに回転する。
【0018】
これにより、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが、順に中間転写ベルト30上にトナー像を転写する。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kそれぞれが、中間転写ベルト30上にトナー像を転写するタイミングは、中間転写ベルト30に付された基準マークを検出することにより、調整される。これにより、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト30上に重畳される。
【0019】
中間転写ベルト30に形成されたトナー像は、転写部材である2次転写ローラ26によって電界力の作用で用紙に転写される。タイミングローラ31により搬送される用紙は、中間転写ベルト30と2次転写ローラ26とが接するニップ部に搬送される。トナー像が転写された用紙は、定着装置50に搬送され、加熱および加圧される。これにより、トナーが溶かされて用紙に定着する。その後、用紙は排紙トレイ39に排出される。
【0020】
中間転写ベルト30の画像形成ユニット20Yの上流に、ベルト清掃ブレード28が設けられている。ベルト清掃ブレード28は、中間転写ベルト30上で用紙に転写されずに残ったトナーを除去する。
【0021】
画像形成部140は、フルカラーの画像を形成する場合、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのすべてを駆動するが、モノクロの画像を形成する場合、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのいずれか1つを駆動する。また、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの2以上を組み合わせて画像を形成することもできる。なお、ここでは、プリンター100は、用紙に4色のトナーそれぞれを形成する画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを備えたタンデム方式を採用する例について説明するが、1つの感光体ドラムで4色のトナーを順に用紙に転写する4サイクル方式を採用してもよい。
【0022】
給紙部150は、給紙カセット35を含む。給紙カセット35には、複数枚の用紙がセットされている。給紙カセット35に収容された用紙は、給紙カセット35に取付けられている取出ローラ36により、1枚ずつ順に搬送経路45へ供給され、給紙ローラ37によりタイミングローラ31へ送られる。また、手差カセット35Aに、1枚以上の用紙がセットされる場合、手差カセット35Aにセットされた1枚以上の用紙は、手差カセット35Aに取付けられている取出ローラ36Aにより、1枚ずつ順に搬送経路45へ供給され、給紙ローラ37によりタイミングローラ31へ送られる。
【0023】
図3は、定着装置の平面図である。
図4は、定着装置の側面図である。
図4は、左側面方向から見た図であり、加圧ローラ59を点線で示している。また、定着ベルト57を裏側が透けて見える状態で示し、ハッチングが付されている。
図5は、パッド部材の側面図である。
図6は、
図5のC-C線断面図である。
図7は、
図5のA-A線断面図である。
図8は、
図5のB-B線断面図である。
図9は、
図5のD-D線断面図である。
【0024】
図3~
図9を参照して、定着装置50は、加熱部51と、加圧ローラ59と、を含む。加圧ローラ59は、芯金、中間層、表層から構成されている。本実施の形態では、加圧ローラ59の外径は30mmである。芯金は、アルミまたは鉄製であり、芯金の厚さは、2~3mmである。中間層は、弾性層であり、シリコーンゴムやシリコーンスポンジなどの耐熱性および弾性を有する材料から形成される。中間層は、厚さ2~5mm程度が好ましい。表層は、フッ素チューブなどの離型性を有する材料から形成され、表層離型層の厚さは、20~80μm程度が好ましい。
【0025】
加熱部51は、加熱ローラ53と、パッド部材63と、グリス塗布部65と、無端状の定着ベルト57と、を含む。定着ベルト57は、基層と弾性層から構成されている。基層は、内径40mm、幅340mm、厚さ70μmのポリイミドフィルムで構成されている、弾性層は、シリコーンゴムを用い厚さ100~150μm程度が好ましい、また、表層は、離型性を有するPFAまたはPTFEなどで構成され、厚さ30μm程度の被覆である。表層は、弾性層にフッ素樹脂をコーティングすることにより形成される。
【0026】
加熱ローラ53は、中空円筒形状の部材であり、回転軸が本体ケースに軸支されている。加熱ローラ53は、内部に熱源61を内蔵する。加熱ローラ53の内径は、熱源61が接触しないサイズに設定されている。加熱ローラ53はステンレス製である。加熱ローラ53がステンレス製なので、強度が確保されるとともに加工が容易である。この場合、加熱ローラ53の厚みは、0.1mm~0.2mm前後にできる。なお、加熱ローラ53はアルミニウム製であってもよい。この場合、ベンディングや局部的な変形に対する強度を確保するために、加熱ローラ53の厚みは0.25mm以上にすることが好ましい。また、加熱ローラ53は、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)等の鉄系金属製であってもよい。
【0027】
熱源61は、例えば、ハロゲンヒーターである。本実施の形態においては、熱源61として、発光長の異なる2本のハロゲンヒーターが用いられる。なお、熱源61はハロゲンヒーターに限定されず、抵抗発熱体またはIH(Induction Heating)が用いられてもよい。
【0028】
熱源61が発熱することにより、加熱ローラ53が加熱され、加熱ローラ53の温度が上昇する。サーミスター91によって、加熱ローラ53の温度が検出される。このサーミスター91が検出した温度に応じて、熱源61がオン/オフに制御され、加熱ローラ53が所定の温度になるように制御される。加熱ローラ53を薄肉化することで、加熱ローラ53の熱容量が小さくなる。このため、加熱ローラ53の昇温速度が速くなるので、加熱ローラ53が所定の温度に達するまでのウォームアップ時間を短くすることができる。また、熱源61の消費電力量を低減することができる。
【0029】
グリス塗布部65およびパッド部材63は、共通の支持部55により支持される。支持部55は、その両端で本体フレームに固定される。グリス塗布部65は、潤滑剤であるグリスを蓄積しており、定着ベルト57と接触する部分で、定着ベルト57にグリスを塗布する。パッド部材63は、耐熱性を有した樹脂部材で形成される。
【0030】
定着ベルト57の内側に加熱ローラ53、パッド部材63およびグリス塗布部65が配置される。定着ベルト57は、加熱ローラ53、パッド部材63およびグリス塗布部65により弛まないように懸架される。このため、定着ベルト57の周回軌道は、加熱ローラ53、パッド部材63およびグリス塗布部65により定められる。
【0031】
パッド部材63が加圧ローラ59に対向して設けられ、パッド部材63は加圧ローラ59との間でニップ部Nを形成する押圧部73を有する。加圧ローラ59は、押圧部73に向かって所定の押圧力で付勢される。ニップ部Nは、押圧部73と加圧ローラ59との間で、定着ベルト57が加圧ローラ59と接触する部分である。ここで、加圧ローラ59の回転軸と平行な方向を長手方向と言う。
【0032】
図5に示されるように、パッド部材63は、押圧部73の両端それぞれの外側に両端ガイド部75を有する。
図5~
図8に示されるように、パッド部材63は、押圧部73の両端から所定の距離の部分および両端ガイド部75から定着ベルト57の進行方向上流側に延びる一対のガイド部71を有する。ガイド部71は、定着ベルト57と接触する側に凸の円弧形状の接触面72を有する。なお、ガイド部71は、パッド部材63は、押圧部73の両端から所定の距離の部分から定着ベルト57の進行方向上流側に延びる必要はなく、両端ガイド部75の少なくとも一部から定着ベルト57の進行方向上流側に延びればよい。
【0033】
図4に示されるように、パッド部材63の長手方向の長さL4は、定着ベルト57の長手方向の長さL3よりも長い。このため、
図7に示されるように、パッド部材63は、定着ベルト57の周回軌道の一部を定めることができる。また、一対のガイド部71間の距離L1は、定着ベルト57の長手方向の長さL3よりも短い。このため、
図7および
図8に示されるように、定着ベルト57を一対のガイド部71と接触させることができるので、定着ベルト57の周回軌道を一対のガイド部71により定めることができる。
【0034】
また、一対のガイド部71間の距離L1は、ニップ部Nを通過する用紙Paに形成される画像の最大長よりも長い。このため、用紙Paに形成される画像の全てを加熱および加圧することができる。また、一対のガイド部71の間に定着ベルト57が接触する部材が存在する部分と定着ベルト57と接触しない部分とが混在すると、定着ベルト57の長手方向で温度の異なる部分が発生する。一対のガイド部71の間に定着ベルト57と接触しない空間が形成されるので、一対のガイド部71の間の定着ベルト57の温度分布を均一にでき、光沢ムラなどの画像ノイズが発生を抑制することができる。
【0035】
図4に示されるように、加圧ローラ59の長手方向の長さL2は、押圧部73の長手方向の長さL2と同じであり、定着ベルト57の長手方向の長さL3より短い。このため、加圧ローラ59を、定着ベルト57とのみ接触させることができ、加圧ローラ59がパッド部材63と接触しないようにできる。その結果、加圧ローラ59がパッド部材63と接触することにより発生する摩擦力による損傷を防止することができる。
【0036】
図8および
図9に示されるように、加圧ローラ59は、駆動モーター59Bにより回転される。加圧ローラ59の回転に伴って、定着ベルト57が加圧ローラ59と接触する部分で加圧ローラ59から受ける摩擦力により回転する。定着ベルト57は、加熱ローラ53、パッド部材63およびグリス塗布部65の周りを周回する。加熱ローラ53は、定着ベルト57の回転に伴って定着ベルト57と接触する部分で定着ベルト57から受ける摩擦力により回転する。なお、加熱ローラ53を回転しないようにして、定着ベルト57が加熱ローラ53の表面を摺動するようにしてもよい。定着ベルト57が加熱ローラ53、パッド部材63およびグリス塗布部65の周りを周回する。定着ベルト57は、加熱ローラ53と接触する間に加熱ローラ53から伝達される熱により所定の温度まで熱せられる。
【0037】
定着ベルト57は、グリス塗布部65を通過する間に、定着ベルト57とグリス塗布部65との摩擦によって、定着ベルト57の内側の面にグリスが塗布される。これにより、定着ベルト57がパッド部材63を通過する間にパッド部材63から受ける摩擦抵抗を、グリスが塗布されていない場合に比較して小さくできる。
【0038】
図5および
図9に示されるように、パッド部材63は、一対のガイド部71の間に押圧部73から定着ベルト57の進行方向上流側に延びる誘導部77を、さらに有する。誘導部77は、定着ベルト57が一対のガイド部71それぞれと接触する部分よりも定着ベルト57の内側に位置する。このため、パッド部材63の一対のガイド部71の間に、パッド部材63が定着ベルト57と接触しない空間が形成される。誘導部77は、押圧部73に繋がる誘導面78を有する。この誘導面78は、定着ベルト57との間の距離が押圧部73に近づくにつれて短くなる傾斜面である。このため、定着ベルト57の内周面に塗布されたグリスが定着ベルト57と押圧部73との間に侵入しやすくなる。
【0039】
パッド部材63の押圧部73は、加圧ローラ59の曲率に近似する形状を有する。このため、加圧ローラ59の弾性変形量を小さくしつつ、ニップ部Nの面積をできるだけ大きくすることができる。ニップ部Nの面積を大きくできるので、用紙を加圧および加熱する時間を長くすることができる。また、加圧ローラ59の外径を所定の値以下にできるので、定着装置50を小型化することができる。また、加圧ローラ59の弾性変形量を小さくできるので、加圧ローラ59を加圧する押圧力を小さくすることができる。このため、加圧ローラ59の強度を所定の値以下にすることができるので、加圧ローラ59の肉厚を小さくして、熱容量を小さくすることができる。さらに、加圧ローラ59の熱容量を小さくできるので、電力の消費量が小さくなる。
【0040】
パッド部材63の押圧部73に、摺動シート79が固定されている。摺動シート79は、材料は耐熱性を有するガラスクロスにフッ素樹脂をコーティングしたものであり、耐熱性、耐摩耗性、摺動性を備えている。定着ベルト57は摺動シートと接触する。このため、押圧部73の表面の摺動性が高くなるので、定着ベルト57が摩擦により消耗する度合いをできるだけ小さくできる。
【0041】
トナー像Toをその表面に担持する用紙Paが定着装置50の下方から上方に向かって搬送され、用紙Paがニップ部Nを通過する。用紙Paがニップ部Nを通過する間に用紙Paが加圧ローラ59と加熱部51とにより加熱および加圧され、トナー像Toが用紙Paに定着する。
【0042】
図10は、定着装置に進入する用紙との相対位置を示す図である。
図10を参照して、一対のガイド部71それぞれは、定着ベルト57と接触する側に凸の円弧形状の接触面72を有する。用紙Paは、ガイド部材93により定着装置50に進入する方向がある程度定められる。このため、用紙Paの先端が定着ベルト57に当接する位置は、所定の範囲に制限される。このため、定着ベルト57に用紙Paの先端が当接する位置と用紙Paと定着ベルト57とがなす角度とを予測可能である。用紙Paが定着ベルト57に当接位置における角度が90度よりも小さくなるように、定着ベルト57の位置およびガイド部71の形状が定められる。これにより、定着ベルト57に当接した用紙Paがニップ部Nに進入するように用紙Paを誘導することができる。その結果、用紙Paが折り曲げられたり、用紙Paが定着装置50で詰まったりする不良が発生する確率を小さくできる。
【0043】
<誘導部の変形例>
図11は、第1の変形例における誘導部の一例を示す図である。
図11は、
図5のD-D線断面で切断した断面を示す。
図11を参照して、誘導部77Aは、断面が円形の誘導面78Aを有する。誘導面78Aは、定着ベルト57との間の距離が押圧部73に近づくにつれて短くなる。誘導面78Aと定着ベルト57との間の距離の押圧部73に近づく単位距離当たりの減少量を少なくできる。
【0044】
図12は、第2の変形例における誘導部の一例を示す図である。
図12は、
図5のD-D線断面で切断した断面を示す。
図12を参照して、誘導部77Aは、断面が三角形の誘導面78Bを有する。誘導面78Bは平面である。誘導面78Bは、定着ベルト57との間の距離が押圧部73に近づくにつれて短くなる。誘導面78Bと定着ベルト57との間の距離の押圧部73に近づく単位距離当たりの減少量が徐々に大きくなる。
【0045】
<その他の変形例>
(1)本実施の形態においては、定着ベルト57を加熱するために、加熱ローラ53の熱が伝導により伝達される例を示すが、加熱ローラ53から放射される輻射熱を利用して定着ベルト57を加熱してもよい。この場合、定着ベルト57と加熱ローラ53とは接触する必要がない。したがって、定着ベルト57は、加熱ローラ53、パッド部材63およびグリス塗布部65により懸架される必要はない。具体的には、定着ベルト57は、パッド部材63と加圧ローラ59との間で加圧され、パッド部材63と加圧ローラ59とによって支持される。また、定着ベルト57は、加圧ローラ59の回転に伴ってパッド部材63に対して摺動する。これにより、定着ベルト57がパッド部材63の周りを回転する。
【0046】
(2)また、加熱ローラ53は、定着ベルト57の外側に配置されてもよい。この場合、定着ベルト57がパッド部材63の周りを回転する。また、加熱ローラ53は、円柱形状である必要はなく、熱源として機能する誘導加熱装置やセラミックヒーターを用いることができる。
【0047】
(3)一対のガイド部71は、押圧部73の両端から所定の距離の部分から定着ベルト57の進行方向上流側に延びる部分を有しなくてもよい。この場合、一対のガイド部71は、両端ガイド部75から定着ベルト57の進行方向上流側に延びる。この場合であっても、定着ベルト57の周回軌道が一対のガイド部71により定められるので、用紙Paをニップ部Nに適切に進入させることができる。
【0048】
(4)本実施の形態においては、加圧ローラ59がパッド部材63に押圧されるが、パッド部材63が加圧ローラ59に押圧されてもよい。
【0049】
(5)本実施の形態においては、加圧ローラ59を駆動し、定着ベルト57が従動回転する場合を例に説明したが、加圧ローラ59が従動回転してもよい。この場合、駆動モーター59Bに代えて、加熱ローラ53を回転させるモーターが配置される。
【0050】
(6)本実施の形態においては、加圧ローラ59が定着ベルト57に押圧される例を示したが、定着装置50が駆動していない間は、加圧ローラ59は定着ベルト57から離間してもよい。好ましくは、加圧ローラ59は、少なくとも用紙がニップ部Nを通過する間に加熱部51に押圧される。これにより、加圧ローラ59が弾性変形する期間を記録媒体が通過する間に制限することができる。
【0051】
(7)本実施の形態においては、画像形成装置の一例としてプリンター100が例に説明されたが、画像形成装置は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ装置、これらを組み合わせた複合機(Multi Function Peripheral)などあってもよい。
【0052】
(8)本実施の形態では、画像形成装置の一例として、タンデム型のカラーの画像を形成するプリンター100が説明されたが、これに限られるものではなく、モノクロの画像を形成する画像形成装置であってもよい。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20K、露光装置21Y,21M,21C,21K、帯電ローラ22Y,22M,22C,22K、感光体ドラム23Y,23M,23C,23K、現像器24Y,24M,24C,24K、1次転写ローラ25Y,25M,25C,25K、2次転写ローラ26、定着装置50の構成や配置は、本実施の形態に限定されず、他の構成や配置であっても良い。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態におけるプリンター100は、定着装置50を備え、その定着装置50は、加圧ローラ59と、定着ベルト57と、定着ベルト57の内側でかつ加圧ローラ59に対向して設けられたパッド部材63と、を備え、パッド部材63は、定着ベルト57と加圧ローラ59とが接触するニップ部Nを形成する押圧部73と、長手方向における両端にそれぞれ設けられ、長手方向から見た側面視で押圧部73から定着ベルト57の進行方向上流側に延びる一対のガイド部71と、を有し、一対のガイド部71の間に、パッド部材63と定着ベルト57とが接触しない空間が形成される。一対のガイド部71の間に定着ベルト57が接触する部材が存在する場合に比較して、定着ベルト57の熱の移動を減らすことができ、省エネ性を向上させることができる。また、定着ベルト57の長手方向の両端部で一対のガイド部71によって定着ベルト57の周方向の形状が規定されるので、押圧部73よりも定着ベルト57の進行方向上流側における定着ベルト57の周方向の形状をガイド部71の形状に近い形状になる。このため、用紙Paをニップ部Nに容易に進入させることができる。
【0054】
また、パッド部材63は、一対のガイド部71の間に押圧部73から定着ベルト57の進行方向上流側に延びる誘導部77を有し、誘導部77は、定着ベルト57の一対のガイド部71それぞれと接触する部分よりも定着ベルト57の内側に位置し、押圧部73に繋がる誘導面78を有する。このため、定着ベルト57と誘導面78との間の距離を定着ベルト57の進行方向に進むにつれて短くできる。ニップ部Nにおける定着ベルト57と押圧部73との間の摺動抵抗を小さくするために、定着ベルト57の内周面に潤滑剤が塗布される場合に、潤滑剤が押圧部73と定着ベルト57との間に進入し易くなる。このため、定着ベルト57と押圧部73との間の摺動抵抗が小さい状態を維持できる。
【0055】
また、長手方向において、定着ベルト57の長さL3は、一対のガイド部71の間の距離L1より長い。このため、定着ベルト57の両端が一対のガイド部71を通過するようにできる。
【0056】
また、一対のガイド部71間の距離L1は、ニップ部Nを通過する用紙Paに形成される画像の最大長よりも長い。このため、用紙Paに形成される画像の全てを加熱および加圧することができる。また、一対のガイド部71の間に定着ベルトが接触する部材が存在する部分と定着ベルト57と接触しない部分とが混在すると、定着ベルト57の長手方向で温度の異なる部分が発生する。一対のガイド部71の間にパッド部材63が定着ベルト57と接触しない空間が形成されるので、一対のガイド部71の間の定着ベルト57の温度分布を均一にできる。その結果、光沢ムラなどの画像ノイズが発生を抑制することができる。
【0057】
また、長手方向において、定着ベルト57の長さは、加圧ローラ59の長さよりも長い。このため、加圧ローラ59がパッド部材63に直接接触しないようにでき、加圧ローラ59の損傷を抑制できる。
【0058】
また、一対のガイド部71それぞれは、定着ベルト57と接触する側に凸の円弧形状の接触面72を有する。このため、用紙Paの先端を定着ベルト57に鋭角に当接させることができ、用紙Paがシート先端からニップ部Nに進入するので用紙Paにしわの発生や詰まりを抑制できる。
【0059】
<実施の形態の総括>
(項1) 加圧ローラと、
無端の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内側でかつ前記加圧ローラに対向して設けられたパッド部材と、を備え、
前記パッド部材は、前記定着ベルトと前記加圧ローラとが接触するニップ部を形成する押圧部と、
前記加圧ローラの回転軸に平行な長手方向における両端にそれぞれ設けられ、前記長手方向から見た側面視で前記押圧部から前記定着ベルトの進行方向上流側に延びる一対のガイド部と、を有し、
前記一対のガイド部との間に、前記パッド部材が前記定着ベルトと接触しない空間が形成される、定着装置。
【0060】
この局面に従えば、パッド部材が、定着ベルトと加圧ローラとが接触するニップ部を形成する押圧部と、長手方向における両端にそれぞれ設けられた一対のガイド部と、を有し、ガイド部材は、押圧部から定着ベルトの進行方向上流側に延び、一対のガイド部の間にパッド部材が定着ベルトと接触しない空間が形成される。一対のガイド部の間に定着ベルトが接触する部材が存在する場合に比較して、定着ベルトの熱の移動を減らすことができ、省エネ性を向上させることができる。また、定着ベルトの長手方向の両端部でガイド部材によって定着ベルトの周方向の形状が規定されるので、押圧部よりも定着ベルトの進行方向上流側における定着ベルトの周方向の形状がガイド部材の形状に近い形状になる。このため、シートをニップ部に容易に進入させることができる。その結果、シート不良を抑制しつつ省エネ性を向上させた定着装置を提供することができる。
【0061】
(項2) 前記パッド部材は、前記一対のガイド部の間に前記押圧部から前記定着ベルトの進行方向上流側に延びる誘導部を、さらに有し、
前記誘導部は、前記定着ベルトの前記一対のガイド部それぞれと接触する部分よりも前記定着ベルトの内側に位置し、前記押圧部に繋がる誘導面を有する、項1に記載の定着装置。
【0062】
この局面に従えば、一対のガイド部の間に押圧部から定着ベルトの進行方向上流側に延びる誘導部が設けられ、誘導部は、定着ベルトの一対のガイド部それぞれと接触する部分よりも定着ベルトの内側に位置し、押圧部に繋がる誘導面を有する。このため、定着ベルトと誘導面との間の距離を定着ベルトの進行方向に進むにつれて短くできる。ニップ部における定着ベルトと押圧部との間の摺動抵抗を小さくするために、定着ベルトの内周面に潤滑剤が塗布される場合に、潤滑剤が押圧部と定着ベルトとの間に進入し易くなる。このため、定着ベルトと押圧部との間の摺動抵抗が小さい状態を維持できる。
【0063】
(項3) 前記長手方向において、前記定着ベルトの長さは、前記一対のガイド部の間の距離より長い、項1または2に記載の定着装置。
【0064】
この局面に従えば、定着ベルトの長さが一対のガイド部の間の距離より長いので、定着ベルトの両端が一対のガイド部を通過するようにできる。
【0065】
(項4) 前記長手方向において、前記一対のガイド部の間の距離は、前記ニップ部を通過するシートに形成される画像の最大長よりも長い、項1~3のいずれかに記載の定着装置。
【0066】
この局面に従えば、一対のガイド部の間の距離は、ニップ部を通過するシートに形成される画像の最大長よりも長いので、シートに形成される画像の全てを加熱および加圧することができる。また、一対のガイド部の間に定着ベルトが接触する部材が存在する部分と定着ベルトと接触しない部分とが混在すると、定着ベルトの長手方向で温度の異なる部分が発生する。一対のガイド部の間に定着ベルトと接触しない空間が形成されるので、一対のガイド部の間の定着ベルトの温度分布が均一になる。その結果、光沢ムラなどの画像ノイズが発生を抑制することができる。
【0067】
(項5) 前記長手方向において、前記定着ベルトの長さは、前記加圧ローラの長さよりも長い、項1~4のいずれかに記載の定着装置。
【0068】
この局面に従えば、定着ベルトの長さは加圧ローラの長さよりも長いので、加圧ローラが直接パッド部材に接触しないようにでき、加圧ローラの損傷を抑制できる。
【0069】
(項6) 前記一対のガイド部それぞれは、側面視で前記定着ベルトと接触する側に凸の円弧形状の接触面を有する、項1~5のいずれかに記載の定着装置。
【0070】
この局面に従えば、シートの先端が定着ベルトに鋭角に当接させることができ、シートがシート先端からニップ部に進入するのでシートにしわの発生や詰まりを抑制できる。
【0071】
(項7) 項1~6のいずれかに記載の定着装置を備えた、画像形成装置。
【0072】
この局面に従えば、シート不良を抑制しつつ省エネ性を向上させた画像形成装置を提供することができる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
100 プリンター、140 画像形成部、150 給紙部、50 定着装置、51 加熱部、53 加熱ローラ、55 支持部、57 定着ベルト、59 加圧ローラ、59B 駆動モーター、61 熱源、63 パッド部材、65 グリス塗布部、71 ガイド部、73 押圧部、75 両端ガイド部、77,77A 誘導部、78,78A,78B 誘導面、79 摺動シート、91 サーミスター、100 プリンター、140 画像形成部、150 給紙部、N ニップ部、Pa 用紙、To トナー像。