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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153528
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 512
H01G4/30 201K
H01G4/30 201D
H01G4/30 201C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127368
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2023-0050241
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒョン スン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、イン ホ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ビュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミ ヤン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC10
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE05
5E082EE18
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信頼性が向上し、高温・高圧加速寿命のMTTFが向上し、静電容量が向上した積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体と、本体上に配置される外部電極とを含む。誘電体層111は、希土類元素、希土類元素の二次相141及び誘電体結晶粒を含み、誘電体層111の平均厚さをtd、希土類元素の二次相141の誘電体層の厚さ方向の最大距離をDと定義するとき、誘電体層111は、D/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相141を2つ以上含み、誘電体結晶粒は、コア部及び上記コア部の少なくとも一部上に配置されたシェル部を含むコア-シェル構造の第1誘電体結晶粒を含み、酸素元素を除く全ての元素の総モル数に対する上記希土類元素のモル数に関する比率をREと定義するとき、第1誘電体結晶粒のシェル部は1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、希土類元素、希土類元素の二次相及び誘電体結晶粒を含み、
前記誘電体層の平均厚さをtd、前記希土類元素の二次相の前記誘電体層の厚さ方向の最大距離をDと定義するとき、前記誘電体層はD/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含み、
前記誘電体結晶粒は、コア部及び前記コア部の少なくとも一部上に配置されたシェル部を含むコア-シェル構造の第1誘電体結晶粒を含み、酸素元素を除く全ての元素の総モル数に対する前記希土類元素のモル数に関する比率をREと定義するとき、前記第1誘電体結晶粒のシェル部は1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層は、tdμm×tdμmの領域内に前記D/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含む領域を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1誘電体結晶粒の中心を通る直線Lを基準に、前記第1誘電体結晶粒の長さをG、前記第1誘電体結晶粒のシェル部のうち1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域の長さをdと定義するとき、
2.5%≦d/G≦47.0%を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記dは10nm以上80nm以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記誘電体層は、1μm×1μmの領域内に前記第1誘電体結晶粒を3つ以上含む領域を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記希土類元素の二次相は、酸素元素を除く全ての元素の総モル数に対する希土類元素のモル数に関する比率が30%以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層はTiを含む主成分、及び副成分を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記副成分は、原子価可変アクセプタ元素を含む第1副成分を含み、
前記原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Co及びZnのうち少なくとも一つを含み、
前記第1副成分の含量は、前記Ti100モルに対して0.2モル以上1.4モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記副成分はMgを含む第2副成分を含み、
前記第2副成分の含量は、前記Ti100モルに対して2.0モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記副成分は、希土類元素を含む第3副成分を含み、
前記希土類元素は、Y、Dy、Tb、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tm、La及びYbのうち少なくとも一つを含み、
前記第3副成分の含量は、前記Ti100モルに対して2.5モル以上8.0モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記副成分は、Ba及びCaのうち少なくとも一つの元素を含む第4副成分を含み、
前記第4副成分の含量は、前記Ti100モルに対して4.8モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記副成分はSiを含む第5副成分を含み、
前記第5副成分の含量は、前記Ti100モルに対して1.0モル以上4.0モル未満である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記副成分はSiを含む第5副成分を含み、前記第5副成分の含量は、前記Ti100モルに対して1.0モル以上4.0モル未満であり、
前記Ti100モルを基準に、前記第5副成分の含量に対する前記第4副成分の含量に関する比率は1.60以下である、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記誘電体層は複数の誘電体層を含み、
前記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの平均厚さは3.0μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記内部電極は複数の内部電極を含み、
前記複数の内部電極のうち少なくとも一つの平均厚さは1.0μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記誘電体層は複数の誘電体層を含み、前記内部電極は複数の内部電極を含み、
前記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの平均厚さをtd1、前記複数の内部電極のうち少なくとも一つの平均厚さをte1と定義するとき、
te1×2<td1を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記誘電体層は、Tiを含む主成分、及び第1~第6副成分を含み、
前記第1副成分は、Mn、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Co及びZnのうち少なくとも一つを含む原子価可変アクセプタ元素を含み、前記第1副成分の含量は、前記Ti100モルに対して0.2モル以上1.4モル以下であり、
前記第2副成分はMgを含み、前記第2副成分の含量は、前記Ti100モルに対して2.0モル以下であり、
前記第3副成分は、Y、Dy、Tb、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tm、La及びYbのうち少なくとも一つを含む希土類元素を含み、前記第3副成分の含量は、前記Ti100モルに対して2.5モル以上8.0モル以下であり、
前記第4副成分は、Ba及びCaのうち少なくとも一つの元素を含み、前記第4副成分の含量は、前記Ti100モルに対して4.8モル以下であり、
前記第5副成分はSiを含み、前記第5副成分の含量は、前記Ti100モルに対して1.0モル以上4.0モル未満である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記誘電体層は、Tiを含む主成分、及び第1~第6副成分を含み、
前記第1副成分は、Mn、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Co及びZnのうち少なくとも一つを含む原子価可変アクセプタ元素を含み、前記第1副成分の含量は、前記Ti100モルに対して0.2モル以上1.4モル以下であり、
前記第2副成分はMgを含み、前記第2副成分の含量は、前記Ti100モルに対して2.0モル以下であり、
前記第3副成分は、Y、Dy、Tb、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tm、La及びYbのうち少なくとも一つを含む希土類元素を含み、前記第3副成分の含量は、前記Ti100モルに対して2.5モル以上8.0モル以下であり、
前記第4副成分は、Ba及びCaのうち少なくとも一つの元素を含み、前記第4副成分の含量は、前記Ti100モルに対して4.8モル以下であり、
前記第5副成分はSiを含み、前記第5副成分の含量は、前記Ti100モルに対して1.0モル以上4.0モル未満である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)等の映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話等の様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器等、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
IT用MLCCだけでなく、電装用MLCCの市場が拡大するにつれて、同一容量帯で定格電圧が高く信頼性に優れた製品の需要が増加している。一般に、結晶粒のサイズが小さく粒界が多いほど、誘電体の信頼性が向上することが知られている。MLCC誘電体組成の添加剤元素の中で、原子価固定アクセプタ、原子価可変アクセプタである遷移金属元素、及び希土類元素が信頼性に与える影響は既知であり、一般にこれらを含む誘電体添加元素の組成比の最適化により良好な信頼性を有する条件を選定する。BME(Base Metal Electrode)MLCCが産業化されてから30年以上が経過する間に、信頼性を向上させるための組成の最適化作業が継続的に進められており、そのような事例が多くの特許として既に報告されている。最近、同じ誘電体組成であっても、微細構造、添加剤元素の分布と固溶の程度、そして工程条件によって信頼性に大きな差があることが報告されており、これに対する研究が活発に進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本公開特許公報第2001-006966号
【特許文献2】日本公開特許公報第2011-162401号
【特許文献3】韓国公開特許公報第10-2015-0121569号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、X7R又はX7S特性を満たす積層型電子部品を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、高温・高圧加速寿命のMTTFが向上した積層型電子部品を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、静電容量が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0010】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、希土類元素、希土類元素の二次相及び誘電体結晶粒を含み、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記希土類元素の二次相の上記誘電体層の厚さ方向の最大距離をDと定義するとき、上記誘電体層は、D/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含み、上記誘電体結晶粒は、コア部及び上記コア部の少なくとも一部上に配置されたシェル部を含むコア-シェル構造の第1誘電体結晶粒を含み、酸素元素を除く全ての元素の総モル数に対する上記希土類元素のモル数に関する比率をREと定義するとき、上記第1誘電体結晶粒のシェル部は1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品の信頼性を向上させることである。
【0013】
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品のX7R又はX7S特性を満たすことである。
【0014】
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品の高温・高圧加速寿命のMTTFを向上させることである。
【0015】
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品の静電容量を向上させることである。
【0016】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものである。
図2】内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものである。
図3図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
図4図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
図5図3のP領域の拡大図を概略的に示すものである。
図6】コア-シェル構造の第1誘電体結晶粒の構造とそれに含まれる領域別希土類元素の原子百分率を概略的に示すものである。
図7】本発明の一実施形態の容量形成部を撮影してマッピング(mapping)したSTEM/EDSイメージである。
図8】(a)は、本発明の一実施形態であるコア-シェル構造の第1誘電体結晶粒を撮影したSTEMイメージであり、(b)は、同じ第1誘電体結晶粒に表記されたAB直線にラインプロファイルを施したREの含量を示すグラフである。
図9】(a)は、本発明の一実施形態であるコア-シェル構造の第1誘電体結晶粒を撮影したSTEMイメージであり、(b)は、同じ第1誘電体結晶粒に表記されたCD直線にラインプロファイルを施してREの含量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0019】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成のサイズ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されるものではない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0020】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0021】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、図2は、内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものであり、図3は、図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、図4は、図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、図5は、図3のP領域の拡大図を概略的に示すものであり、図6は、コア-シェル構造の第1誘電体結晶粒の構造とそれに含まれる領域別希土類元素の原子百分率を概略的に示すものである。
【0022】
以下、図1図6を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0023】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は、希土類元素、希土類元素の二次相141及び誘電体結晶粒を含み、上記誘電体層111の平均厚さをtd、上記希土類元素の二次相141の上記誘電体層の厚さ方向の最大距離をDと定義するとき、上記誘電体層111は、D/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相141を2つ以上含み、上記誘電体結晶粒は、コア部11及び上記コア部11の少なくとも一部上に配置されたシェル部分12を含むコア-シェル構造の第1誘電体結晶粒10を含み、酸素元素を除く全ての元素の総モル数に対する上記希土類元素のモル数に関する比率をREと定義するとき、上記第1誘電体結晶粒のシェル部12は1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含むことができる。
【0024】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていてもよい。
【0025】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0026】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0027】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0028】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0029】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り限定されない。一般に、ペロブスカイト(ABO)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料としては、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)などが挙げられる。
【0030】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などと副成分が添加されることができる。
【0031】
誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。
【0032】
但し、積層型電子部品の高容量化を達成するために、誘電体層の厚さtdは5.0μm以下、好ましくは4.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下であってもよい。また、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層の厚さtdは1.0μm以下であってもよく、好ましくは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0033】
ここで、誘電体層の厚さtdは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層の厚さtdを意味することができる。
【0034】
一方、誘電体層の厚さtdは、誘電体層111の第1方向の距離を意味することができる。なお、誘電体層の厚さtdは、誘電体層の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均距離を意味することができる。
【0035】
誘電体層111の第1方向の平均距離は、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の第1方向の平均距離は、一つの誘電体層111において、第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向の距離を測定して計算した平均値を意味することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均距離をさらに一般化することができる。
【0036】
一方、積層型電子部品は、IT用MLCCだけでなく、電装用MLCCの市場が拡大するにつれて、同一容量帯で定格電圧が高く信頼性に優れた製品の需要が増加している。一般に、結晶粒のサイズが小さく粒界が多いほど、誘電体の信頼性が向上することが知られている。MLCC誘電体組成の添加剤元素の中で、原子価固定アクセプタ、原子価可変アクセプタである遷移金属元素、及び希土類元素が信頼性に与える影響は既知であり、一般にこれらを含む誘電体添加元素の組成比の最適化により良好な信頼性を有する条件を選定する。BME MLCCが産業化されてから30年以上経過している間、信頼性を向上させるための組成の最適化作業が継続的に進められており、そのような事例が多くの特許として既に報告されている。最近、同じ誘電体組成であっても、微細構造、添加剤元素の分布と固溶の程度、そして工程条件によって信頼性に大きな差があることが報告されており、これに対する研究が活発に進められている。
【0037】
現在のX5R、X7R、X8R、Y5Vなどの高容量BME MLCCの誘電体は、BaTiO母材、あるいはCa、Zrなどが一部固溶して修正された(Ba1-xCa)(Ti1-yCa)O、(Ba1-xCa)(Ti1- yZr)O、Ba(Ti1-yZr)Oなどの母材に、Mg、Alなどのような原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)元素と、Y、Dy、Ho、Erなどのようなドナー(donor)としての役割を果たす希土類元素とを共にドーピング(co-doping)し、Mn、V、Crのような原子価可変アクセプタ(variable valence acceptor)元素、及び余分なBa、並びにSiO又はこれを含む焼結助剤などをさらに添加して焼結された材料に基づいている。還元雰囲気で焼成する場合に高容量MLCCの正常な容量及び絶縁特性を実現するためには、粒成長の抑制及び耐還元性を実現しなければならず、Mgのような原子価固定アクセプタを適正量添加することにより、この2つの効果を実現できると知られている。しかし、Mgのような原子価固定アクセプタのみが添加された場合には、誘電体の耐電圧特性と信頼性が悪く、Mn及びVのような原子価可変アクセプタである遷移金属元素と希土類元素とを共に添加することで、耐電圧及び信頼性の向上効果が得られるようになる。これらの元素のほとんどは共にドーピング(co-doping)されており、BaTiO母材結晶粒のシェル(shell)領域に固溶してコア-シェル(core-shell)構造を形成し、MLCCの温度による安定した容量特性及び信頼性を実現する。
【0038】
ここで、希土類元素は加速寿命あるいは信頼性を向上させる役割を果たすことが知られており、これら元素がBaTiO格子内に多く固溶するほど、その特性は向上することが観察されている。しかし、希土類元素の添加量が多すぎる場合には、パイロクロア(Pyrochlore、例えば、ReTi、ここでReは、Y、Dy、Ho、Yb、etc.)やRESiのように、希土類元素の含量が高い巨大な二次相が生成され、加速寿命が顕著に悪くなるおそれがある。
【0039】
しかし、本発明によれば、希土類元素の含量が高い二次相のサイズが誘電体層の厚さに比べて特定サイズ以下に小さく均一に分布し、同時に、主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO)誘電体結晶粒のシェル部位に含まれる希土類元素の含量が特定の分布を有する場合、X7R-TCC温度特性を満たすことができ、誘電容量及び信頼性を向上できる効果がある。
【0040】
具体的に、誘電率≧2000、温度150℃で電界43V/μmを印加する加速試験条件で平均故障寿命(MTTF:Mean Time to Failure)が150時間以上、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC特性が-15%以上+15%以下である特性のうち少なくとも一つの特性を満たすことを目標特性とすることができ、好ましくは、全ての特性を満たす場合を目標特性とすることができる。
【0041】
誘電体層111は、希土類元素及び希土類元素の二次相141を含むことができ、このとき、誘電体層111の平均厚さをtd、希土類元素の二次相141の上記誘電体層111の厚さ方向の距離をDと定義するとき、上記誘電体層は、D/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含むことができる。
【0042】
ここで、希土類元素の二次相141は、酸素元素を除く全ての元素のモル数に対する希土類元素のモル数に関する比率又は百分率(%)は30%以上であることができる。
【0043】
このとき、誘電体層111は、tdμm×tdμmの領域内に上記D/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含むことができる。
【0044】
tdμm×tdμmの領域内にD/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相の個数の上限値は特に制限されるものではなく、誘電体層の厚さtdが5μm以下の場合には7つ以下が好ましく、誘電体層の厚さtdが5μmを超える場合には7つを超えて含むことができる。
【0045】
ここで、tdμm×tdμmの領域は、誘電体層の厚さ方向への距離が誘電体層の平均厚さであるtdμmと同じ距離であることができ、誘電体層の厚さ方向に垂直な方向のサイズが誘電体層の平均厚さであるtdμmと同じサイズであることができ、誘電体層の厚さ方向への距離tdμmと誘電体層の厚さ方向に垂直な方向への距離tdμmを乗じた面積を有する四角形領域を意味することができる。例えば、誘電体層111の第1及び第2方向の断面(cross-section)を基準に、第1方向の距離がtdμmであり、第2方向の距離がtdμmである四角形領域を意味することができる。
【0046】
また、Dは希土類元素の二次相141の誘電体層の厚さ方向への最大距離を意味することができる。例えば、SEM、TEM及びSTEMを介して誘電体層111の第1及び第2方向の断面(cross-section)で観察される希土類元素の二次相141の領域のうち、第1方向の両終点を含むように任意の二つの直線を第2方向にそれぞれ描いた後、二つの直線の間の第1方向の距離を測定した値を意味することができる。
【0047】
そして、希土類元素の二次相141に含まれた元素の種類及び含量も、SEM、TEM及びSTEMのEDS分析モードを通じて希土類元素の二次相141内部の領域又は地点(points)の平均値を計算して測定することができる。
【0048】
一方、誘電体層のtdμm×tdμmの領域内に上記D/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含むとは、誘電体層のうちtdμm×tdμmの領域内にD/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含む領域を少なくとも一領域だけでも含めばよく、全ての誘電体層において上記条件を満たすことを意味するものではない。但し、誘電体層のうちD/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含むtdμm×tdμmの領域を複数領域として含むことが好ましく、誘電体層111の全てのtdμm×tdμmの領域内でD/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含むことがより好ましい。
【0049】
誘電体層111がD/td≦0.2を満たす希土類元素の二次相を2つ以上含むことにより、誘電率≧2000、温度150℃で電界43V/μmを印加する加速試験条件で平均故障寿命が150時間以上、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC特性が-15%以上+15%以下である特性のうち、少なくとも一つの特性を満たすことができる。
【0050】
誘電体層111は誘電体結晶粒を含むことができ、誘電体結晶粒は内側のコア部11、及び上記コア部11の少なくとも一部上に配置されたシェル部12を含むコア-シェル構造の第1誘電体結晶粒10を含むことができる。但し、特にこれに限定されず、コア-シェル構造を有さない第2誘電体結晶粒を含むことができる。
【0051】
このとき、酸素元素を除く全ての元素の総モル数に対する希土類元素のモル数に関する比率をREと定義するとき、第1誘電体結晶粒のシェル部12は、1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含むことができる。ここで、酸素元素を除いた全元素とは、希土類元素を含むことを意味する場合がある。
【0052】
シェル部12に含まれた各元素の含量を測定するより具体的な方法の一例として、破壊工法の場合、TEM-EDS又はSTEM-EDSを用いてチップの中央部で誘電体結晶粒内部の成分を分析することができる。まず、焼結が完了した本体の断面のうち、誘電体層を含む領域において集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装備を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料をArイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去し、その後、(S)TEM-EDSを用いて得られたイメージで各成分をマッピング(mapping)して定性/定量分析を行う。この場合、各成分の定性/定量分析グラフは、各元素の質量分率(wt%)、原子百分率(at%)、又はモル分率(mol%)に換算して表すこともできる。
【0053】
さらに他の方法としては、チップを粉砕して内部電極を除去した後、誘電体層部分を選別し、このように選別された誘電体層を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体層の成分を分析することができる。
【0054】
例えば、REは、以下のような方法で測定することができる。まず、STEM装備を用いて加速電圧200kV、HAADFモード、50,000倍の倍率で誘電体層111の任意の2.5μm×2.5μmの領域を撮影した後、再度任意の1μm×1μmの領域にEDSマッピング分析を行う。この時の解像度は、512×512ピクセルに各ピクセル当たり30msの間シグナルを受けてイメージを形成した。その後、上記1μm×1μmの領域に含まれた任意の一誘電体結晶粒を選定した後、中心を通るようにラインプロファイルを行う。一つのラインから200ポイントのデータを得ることができ、各ポイントでの intensityは、10秒間5回繰り返して得られたシグナルに該当する。ラインプロファイルで測定された元素のうち、酸素元素(O)を除く全ての元素の総モル数に対する希土類元素の総モル数に関する比率又は百分率(%)を計算してREを取得することができる。
【0055】
酸素元素を除く全ての元素の総モル数に対する希土類元素のモル数に関する比率又は百分率(%)は、実質的に原子百分率(at%)と同じ意味であることができ、酸素元素を除く全ての元素には希土類元素も含まれることができる。より詳細な例を挙げると、[希土類元素]/([Ba]+[Ti]+[希土類元素]+[Mg]+[Mn]+[V]+[Si]+[Ca]+[Zr]+・・・)の百分率(%)値を意味することができる。ここで、角括弧([ ])は、 測定された各元素の原子百分率(at%)を意味することができる。
【0056】
そして、シェル部12が1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含むというのは、シェル部12の全ての領域が1.5%≦RE≦3.0%を満たすべきものではなく、1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含めばよいことを意味することができる。
【0057】
一方、第1誘電体結晶粒10の中心を通る直線Lを基準に、第1誘電体結晶粒10の長さをG、第1誘電体結晶粒のシェル部12のうち1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域の長さをdと定義するとき、2.5%≦d/G≦47.0%を満たすことができる。
【0058】
ここで、図6を参照して説明すると、前述したように、シェル部12はコア部11の少なくとも一部を囲んでいてもよいため、第1誘電体結晶粒141の中心を通る直線Lを基準に、1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域は二つ以上の領域であってもよく、二つの領域の長さはd1、d2などと定義することができる。このとき、各領域が2.5%≦d1/G≦47.0%及び2.5%≦d2/G≦47.0%を満たすことができる。
【0059】
d/Gが2.5%未満の場合、信頼性が低下するおそれがあり、d/Gが47.0%を超える場合は、誘電特性が低下するおそれがある。
【0060】
ここで、d又はGを測定する方法は、SEM、TEM、STEM装備などを介して測定することができるが、特に限定されるものではない。例えば、STEM装備を介して測定しようとする第1誘電体結晶粒10を選定し、その中心を通るように直線を描いた後、プログラムによって計算することができる。ここで、中心を通る直線は、前述のラインプロファイルを意味することができる。
【0061】
誘電体結晶粒10の長さGは、170nm以上400nm以下であってもよく、第1誘電体結晶粒のシェル部12のうち、1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域の長さdは、10nm以上80nm以下であってもよい。
【0062】
Gが170nm未満の場合、目標とする誘電特性を満たしにくく、400nmを超える場合、誘電体層の薄層化の達成が難しくなる可能性がある。
【0063】
dが10nm未満の場合、シェル部の領域が相対的に少なく信頼性が低下するおそれがあり、dが80nmを超える場合、シェル部の領域が相対的に多く誘電特性が低下するおそれがある。
【0064】
また、本発明の一実施形態によれば、誘電体層111は、1μm×1μmの領域内に1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含むシェル部12を有する第1誘電体結晶粒10を3つ以上含むことができる。
【0065】
ここで、1μm×1μmの領域とは、誘電体層の厚さ方向へのサイズが1μmであることができ、誘電体層の厚さ方向に垂直な方向へのサイズが1μmである四角形領域を意味することができる。例えば、第1及び第2方向の断面(cross-section)を基準に、第1方向の距離が1μmであり、第2方向の距離が1μmである四角形領域を意味することができる。
【0066】
誘電体層111の1μm×1μmの領域内に1.5%≦RE≦3.0%を満たす領域を含むシェル部12を有する第1誘電体結晶粒10を3つ以上含むことにより、誘電率≧2000、温度150℃で電界43V/μmを印加する加速試験条件で平均故障寿命が150時間以上、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC特性が-15%以上+15%以下である特性のうち少なくとも一つの特性を満たすことができる。
【0067】
本発明の一実施形態において、誘電体層111は、Tiを含む主成分及び副成分を含むことができ、Tiは主成分(例えば、BaTiO)に由来するものであってもよく、副成分は添加剤に由来するものであってもよい。
【0068】
本発明において誘電体組成物は、焼成前の誘電体の主成分及び副成分を含むことを基準として説明し、誘電体結晶粒は、焼成後の誘電体の主成分及び副成分の含量を含むことを基準として説明するが、誘電体の主成分及び副成分において説明する各元素の含量は焼成前後において大きな誤差なく残存することができる。
【0069】
本発明において「主成分」とは、他の成分に比べて相対的に多くの比率を占める成分を意味することができ、全組成物又は全誘電体層の含量を基準に50at%以上の成分を意味することができる。
【0070】
なお、本発明において「副成分」とは、主成分に比べて相対的に少ない比率を占める成分を意味することができ、全組成物又は全誘電体層の含量を基準として50at%未満の成分を意味することができる。
【0071】
以下では、誘電体層111に含まれ得る副成分について具体的に説明する。本発明で説明する副成分は、元素のモル数を基準として説明し、焼成前の添加剤の酸化物又は炭酸塩の投入含量に換算して計算することができる。前述のように焼成前後において元素の含量は、特別な事情がない限り、大きな誤差値を有さない可能性があり、前述したように焼成後のチップ(chip)状態でSEM-EDS、TEM-EDS及びSTEM-EDSなど、様々な測定方法で誘電体層111に含まれた元素の種類及び含量を測定することができる。
【0072】
誘電体層111に含まれた各元素の含量を測定するより具体的な方法の一例として、破壊工法の場合、TEM-EDS又はSTEM-EDSを用いてチップの中央部で誘電体結晶粒内部の成分を分析することができる。まず、焼結が完了した本体の断面のうち、誘電体層を含む領域で集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装備を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料をArイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去し、その後、(S)TEM-EDSを用いて得られたイメージで各成分をマッピング(mapping)して定性/定量分析を行う。この場合、各成分の定性/定量分析グラフは、各元素の質量分率(wt%)、原子百分率(at%)、又はモル分率(mol%)に換算して表すこともできる。
【0073】
さらに他の方法としては、チップを粉砕して内部電極を除去した後、誘電体層部分を選別し、このように選別された誘電体層を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体層の成分を分析することができる。
【0074】
a)第1副成分
本発明の一実施形態によれば、上記副成分は原子価可変アクセプタ元素を含む第1副成分を含むことができ、上記原子価可変アクセプタ元素はMn、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Co及びZnのうち一つ以上を含むことができ、上記第1副成分の含量は、上記Ti100モルに対して0.2モル以上1.4モル以下であることができる。
【0075】
第1副成分は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物あるいは炭酸塩のうち一つ以上を添加したものであってもよく、複数個の第1副成分元素が添加された場合、これらを合わせた総含量を第1副成分の含量と定義することができる。
【0076】
第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタ元素は、誘電体組成物が適用された積層型電子部品の焼成温度の低下、誘電特性及び高温加速寿命特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0077】
第1副成分の含量がTi100モルに対して0.2モル未満の場合には高温加速寿命が劣るおそれがあり、Ti100モルに対して1.4モルを超える場合には誘電率が劣るおそれがある。
【0078】
b)第2副成分
本発明の一実施形態によれば、上記副成分はMgを含む第2副成分を含むことができ、上記第2副成分の含量は上記Ti100モルに対して2.0モル以下であることができる。
【0079】
第2副成分は、Mgの酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を添加したものであってもよい。
【0080】
第2副成分のMgは耐還元性を付与し、RC値を高める役割を果たすことができる。
【0081】
ここで、第2副成分は必須成分ではなく、添加されない場合でも他の成分の適正投入含量によって目標とする特性を満たすことができる。
【0082】
但し、第2副成分の含量がTi100モルに対して2.0モルを超える場合、TCCがX7R特性を満たさないおそれがある。
【0083】
c)第3副成分
本発明の一実施形態によれば、上記副成分は希土類元素を含む第3副成分を含むことができ、上記希土類元素はY、Dy、Tb、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tm、La及びYbのうち少なくとも一つを含むことができ、上記第3副成分の含量は、上記Ti100モルに対して2.5モル以上8.0モル以下であることができる。
【0084】
第3副成分は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を添加したものであってもよい。
【0085】
第3副成分に含まれた希土類元素は、目標とする高温加速寿命を向上させる役割を果たすことができる。
【0086】
第3副成分の含量がTi100モルに対して2.5モル未満又は8.0モル超過の場合、常温誘電率又は絶縁抵抗特性が劣るおそれがある。
【0087】
d)第4副成分
本発明の一実施形態によれば、上記副成分はBa及びCaのうち少なくとも一つの元素を含む第4副成分を含むことができ、上記第4副成分の含量は、上記Ti100モルに対して4.8モル以下であることができる。
【0088】
第4副成分は、Ba及びCaのうち少なくとも一つの元素の酸化物及び炭酸塩のうち少なくとも一つを添加したものであってもよい。
【0089】
一方、Ba及びCaは、母材主成分として使用できるBaTiO、(Ba、Ca)TiO等により、誘電体層から検出できる副成分の含量が不正確であることがあり、焼成前の誘電体組成物の投入含量を基準として説明する。
【0090】
ここで、第4副成分は必須成分ではなく、添加されない場合でも他の成分の適正投入含量によって目標とする特性を満たすことができる。
【0091】
第4副成分の含量がTi100モルに対して4.8モルを超える場合は、常温誘電率と高温耐電圧が低下するおそれがある。
【0092】
e)第5副成分
本発明の一実施形態によれば、上記副成分はSiを含む第5副成分を含むことができる。上記第5副成分の含量は、上記Ti100モルに対して1.0モル以上4.0モル未満であってもよく、好ましい下限値は1.5モル以上、より好ましい下限値は1.65モル以上であってもよく、好ましい上限値は3.5モル以下、より好ましい上限値は3.0モル以下であってもよい。
【0093】
第5副成分は、Siの酸化物、Siの炭酸塩及びSiを含むガラスのうち少なくとも一つを添加したものであってもよい。
【0094】
第5副成分の含量がTi100モルに対して1.0モル未満の場合は、焼成緻密度が低く、高温寿命特性が低下するおそれがあり、4.0モル以上の場合には、二次相が過剰に生成され、常温誘電率と高温寿命特性が低下するおそれがある。
【0095】
また、第4副成分及び第5副成分が同時に添加される場合に、Ti100モルを基準に、第5副成分の含量に対する第4副成分の含量に関する比率は1.60以下であることができる。
【0096】
第5副成分の含量に対する第4副成分の含量に関する比率が1.60を超える場合には、常温誘電率と高温耐電圧が低下するおそれがある。
【0097】
次に、内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されてもよい。
【0098】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0099】
より具体的に、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。
【0100】
このとき、本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0101】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結されることができる。
【0102】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0103】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0104】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0106】
但し、積層型電子部品の高容量化を達成するために内部電極の厚さteは1.0μm以下であってもよく、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために内部電極の厚さteは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0107】
ここで、内部電極の厚さteは、内部電極121、122の第1方向の距離を意味することができる。なお、内部電極の厚さteは、内部電極の平均厚さteを意味し、内部電極121、122の第1方向の平均距離を意味することができる。
【0108】
内部電極121、122の第1方向の平均距離は、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極の第1方向の平均距離は、一つの内部電極のうち、第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向の距離を測定して計算した平均値であることができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の第1方向の平均距離をさらに一般化することができる。
【0109】
一方、本発明の一実施形態において、複数の誘電体層111のうち少なくとも一つの平均厚さtd1と、複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの平均厚さte1は、te1<td1を満たすことができ、より好ましくはte1×2<td1を満たすことができる。
【0110】
言い換えれば、一つの誘電体層の平均厚さtd1は、第1及び第2内部電極121、122のうちいずれか一つの平均厚さte1よりも大きくてもよく、好ましくは、一つの誘電体層の平均厚さtd1は、第1及び第2内部電極121、122のうちいずれか一つの平均厚さte1の2倍よりも大きくてもよい。
【0111】
一般に、高電圧電装用電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧(BDV:Breakdown Voltage)の低下による信頼性の問題が主なイシューである。
【0112】
したがって、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下を防止するために、誘電体層111の平均厚さtdを内部電極121、122の平均厚さteよりも大きくすることにより、内部電極間の距離である誘電体層の厚さを増加させることができ、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0113】
誘電体層111の平均厚さtdが内部電極121、122の平均厚さte以下である場合には、内部電極間の距離である誘電体層の平均厚さが薄いため、絶縁破壊電圧が低下することがあり、内部電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0114】
高電圧電子部品において、内部電極の平均厚さteは1μm以下であってもよく、誘電体層の平均厚さtdは3.0μm以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0115】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されたカバー部112、113を含むことができる。
【0116】
より具体的に、容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0117】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0118】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0119】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0120】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するためにカバー部の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0121】
ここで、カバー部の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向の距離を意味することができる。なお、カバー部の厚さtcは、カバー部の平均厚さtcを意味し、カバー部112、113の第1方向の平均距離を意味することができる。
【0122】
カバー部112、113の第1方向の平均距離は、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのカバー部をスキャンしたイメージにおいて、第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向の距離を測定して計算した平均値を意味することができる。
【0123】
また、上述した方法で測定したカバー部の第1方向の平均距離は、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準としたカバー部の第1方向の平均距離と実質的に同じサイズを有することができる。
【0124】
一方、積層型電子部品100は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上に配置されるサイドマージン部114、115を含むことができる。
【0125】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114及び本体110の第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。
【0126】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準に、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端面(end-surface)と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0127】
サイドマージン部114、115は、容量形成部Acに適用されるセラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される箇所を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)上に第3方向に積層して形成することもできる。
【0128】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0129】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0130】
一方、第1及び第2サイドマージン部114、115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0131】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するためにサイドマージン部の幅wmは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0132】
ここで、サイドマージン部の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向の距離を意味することができる。なお、サイドマージン部の幅wmは、サイドマージン部の平均幅wmを意味し、サイドマージン部114、115の第3方向の平均距離を意味することができる。
【0133】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均距離は、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのサイドマージン部をスキャンしたイメージにおいて、第1方向に等間隔である10個の地点で第3方向の距離を測定して計算した平均値を意味することができる。
【0134】
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0135】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0136】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は、本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は、本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0137】
一方、外部電極131、132は、金属などのように、電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0138】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a、131b、132b及び電極層131a、132a、131b、132b上に配置されるめっき層131c、132cを含むことができる。
【0139】
電極層131a、132a、131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132a、131b、132bは、第1導電性金属及びガラスを含む焼成電極である第1電極層131a、132aを含むことができ、第2導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極である第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0140】
ここで、第1導電性金属は第1電極層131a、132aに含まれた導電性金属を意味することができ、第2導電性金属は第2電極層131b、132bに含まれた導電性金属を意味することができる。このとき、第1導電性金属及び第2導電性金属は同一又は異なってもよく、同じ金属物質を含んでもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0141】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であってもよい。
【0142】
なお、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0143】
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる導電性金属として電気伝導性に優れた材料を使用することができ、例えば、導電性金属はニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれに限定されない。
【0144】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層の構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a及び上記第1電極層131a、132a上に配置され、導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0145】
第1電極層131a、132aはガラスを含むことにより本体110との接合性を向上させる役割を果たすことができ、第2電極層131b、132bは樹脂を含むことにより曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0146】
第1電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば、特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。第1電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0147】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結させる役割を果たすことができる。
【0148】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結できる材質であれば特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0149】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1以上を含むことができる。すなわち、導電性金属はフレーク状粒子のみからなってもよく、球状粒子のみからなってもよく、フレーク状粒子と球状粒子とが混合された形態であってもよい。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子とは、平たいかつ細長い形態を有する粒子を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、セラミック電子部品の第3方向の中央部で切断した第1及び第2方向の断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0150】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性及び衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作製できるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0151】
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物及び樹脂を含むことができる。上記金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0152】
このとき、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲む。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0153】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により湿らせ、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAgSn、NiSn、CuSn、CuSnなどの金属間化合物を形成する。反応に関与しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残る。
【0154】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、AgSn、NiSn、CuSn及びCuSnのうち一つ以上を含むことができる。
【0155】
めっき層131c、132cは、実装特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0156】
めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0157】
めっき層131c、132cに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131c、132cはNiめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a、131b、132b上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0158】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0159】
高容量化を達成するために、3216(長さ×幅:3.2mm×1.6mm)以下のサイズであってもよい。また、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有してもよい。
【0160】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明するが、これは、本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0161】
(実施例)
主成分の母材としては、平均粒子サイズが150nmであるBaTiO粒子を使用した。ジルコニアビーズ(beads)を混合/分散媒介体(media)として用い、表1、3、及び5に明示された組成に該当する副成分がまれた原料粉末と主成分BaTiO粒子をエタノール/トルエン溶媒、そして分散剤と共に混合して10時間ミリング(milling)し、バインダー(binder)を混合した後、5時間追加ミリング(milling)した。このようにして製造されたスラリーは、シート(sheet)製造用成形機を用いて7.0μmと10μmの厚さで成形シートを製造した。成形シートにニッケル(Ni)内部電極印刷を行った。上下部のカバー部は、カバー部用シート(10μm以上13μm以下の厚さ)を25層でそれぞれ積層して作製し、21層の印刷されたシートを加圧した後、積層してバー(bar)を作製した。圧着バーは、切断機を用いて3216(長さ×幅:3.2mm×1.6mm)サイズのチップ(chip)に切断した。作製が完了した3216サイズのMLCCチップは、か焼を行った後、還元雰囲気0.1%H/99.9%N~0.5%H/99.5%N(HO/H/N雰囲気)で1240~1280℃の温度で保持時間2時間の条件で焼成した後、1000℃のN 雰囲気で3時間の間、再酸化を行った。ここで、0.1%の水素濃度は酸素分圧測定器において850℃の測定環境で起電力670mV、そして0.5%の水素濃度は起電力760mVの条件に該当する。焼成されたチップに対して銅(Cu)ペースト(paste)でターミネーション(termination)工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。これにより、焼成後に誘電体層の厚さが約2.0μmであり、誘電体層の数が20層である3216サイズのMLCCチップを作製した。
【0162】
MLCCチップの常温静電容量及び誘電損失は、LCR meterを用いて1kHz、AC0.5V/μmの条件で容量を測定した。静電容量とMLCCチップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数からMLCCチップ誘電体の誘電率を計算した。常温絶縁抵抗は10個ずつサンプルを取り、DC10V/μmを印加した状態で60秒が経過した後に測定した。温度による静電容量の変化は、-55℃~145℃の温度範囲で測定された。加速寿命の評価(HALT:Highly Accelerated Life Time Test)は、各種類当たり40個のサンプルに対して、150℃で電界43V/μmに該当する電圧を印加し、故障が発生する時間を測定して平均時間を(MTTF:Mean Time to Failure)計算した。表2、4及び6は、表1、3及び5に明示された実施例に該当するプロトタイプチップ(Proto-type chip)の特性を示す。
【0163】
図7は、誘電体層の厚さをT、希土類元素のモル数を30%(酸素元素を除く)以上含む希土類元素の二次相の誘電体層の厚さ方向へのサイズをDと定義するとき、任意の全てのtdμm×tdμmの領域において希土類元素の二次相の個数が2つ以上かつD/td≦0.2の条件を満たすことを確認し、加速寿命の高い誘電体材料をSTEM/EDS分析したNi及びDy成分をマッピング(mapping)した微細構造の例を示す。
【0164】
誘電体層内の希土類元素の二次相は、STEM/EDS分析で希土類元素の二次相の成分を確認し、希土類元素の分率(%)は、酸素元素を除く全ての元素の総モル数に対する希土類元素(rare earth elements)であるY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、Gdのうち一つ以上の元素のモル数に関する比率[希土類元素]/([Ba]+[Ti]+[希土類元素]+[Mg]+[Mn]+[V]+[Si]+[Ca]+[Zr]等)が30%以上であると限定した。
【0165】
図8(a)、図8(b)及び図9(a)、図9(b)は、誘電体層内の任意の1μm×1μmの領域を選定し、その領域のうち、コア-シェル(core-shell)構造からなる主成分BaTiO誘電体結晶粒のシェル(shell)部位において、希土類元素の含量が酸素元素を除く全元素に対する希土類元素Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、Gdのうち一つ以上の元素の合計比率が1.5%~3.0%の範囲で存在する領域の厚さが10nm~80nmの範囲を有する結晶粒を検出して測定したものである。
【0166】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、ニッケル(Ni)内部電極を適用できる還元雰囲気の焼成条件でX7R又はX7S容量-温度(TCC)特性、及び高い高温信頼性など、これら全ての特性を実現することができる誘電体及びこれを適用したMLCCの作製を目標とした。このための特性判定の基準として、誘電率≧2000、温度150℃で電界43V/μmを印加する加速試験条件で平均故障寿命が150時間以上、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC特性が-15%以上+15%以下の特性であるこれらの全ての特性が実現可能な実施例を好ましい目標特性とし、これを達成した実施例について以下で説明する。
【0167】
添加される副成分の種類又は含量に応じて、上記特性のうち少なくとも一つを満たすことができ、列挙した特性を全て満たす場合、特性評価において「O」と表記し、特性のうち一つでも満たさない場合は「X」と表記した。すなわち、「X」と表記しても、複数の特性のうち目標とする特性を少なくとも一つ満たす場合があり得る。
【0168】
各副成分の添加含量は、添加剤を基準にモル(mol)と表記し、BaTiO母材100モル(又はTi100モル)に対する添加含量のモル数を意味する。例えば、実施例1-1において、第1副成分であるMnOは0.2mol、Vは0.1mol添加したが、これはBaTiO100molに対してMnOを0.2mol、BaTiO100molに対してVを0.1mol添加したことを意味し、元素のモル数を基準として換算する場合、それぞれMnは0.2mol、Vは0.2molと計算することができる。以下、REまたはREリッチ相のREは、希土類元素(RE)を意味する場合があり、本発明において再定義する必要はない。当業者であれば、REと、本発明において再定義される希土類元素(RE)とを区別することができるであろう。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
表1の実施例1-1~実施例1-7は、主成分150nmのBaTiO 母材100molに対して、第1副成分の原子価可変元素(Mn、V)の合計が0.3mol、第2副成分Mgの含量が1.0mol、第3副成分の希土類REの含量が2.5mol(Dy元素基準で5.0mol)、第4副成分のBa又はCaの含量が1.0mol、第5副成分のSiOの含量が1.25molであるとき、第3副成分の希土類元素の種類による実施例を示し、表2の実施例1-1~実施例1-7は、これらの実施例に該当するプロトタイプMLCCサンプルの特性を示す。第3副成分がLa及びYbの場合には(実施例1-1~実施例1-2)、D/tdが0.2以上となり、MTTFが150時間未満の低い特性を示す。一方、第3副成分がY、Dy、Tb、Ho、Gdの場合には、当該焼成条件で任意の誘電体厚さtdμm×tdμmの領域においてD/tdが0.2以下かつRE-rich二次相(RE-rich相、RE-rich二次相は、希土類元素の二次相を意味し、以下同じ)の個数が2つ以上の微細構造が実現され、このとき、MTTFが150時間以上に大きく向上し、本発明の目標特性である誘電率2000以上、MTTFが150時間以上、RC値1000ΩF以上、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC特性が-15%以上+15%以下である本発明の全ての目標特性が実現されることが確認できる。
【0172】
RE-rich二次相のサイズと分布は、希土類元素の種類や焼成条件によって変わり得るが、第3副成分の希土類元素がYである場合、焼成雰囲気の水素濃度が0.1%と低く850℃のEMF値が670mVと低い条件であるか、又は焼成温度が1280℃と高い場合には(実施例2-1、実施例2-2)D/tdが0.2以上となり、MTTFが100時間未満と非常に低くなる。一方、第3副成分の希土類元素がDyの場合には(実施例2-3、実施例2-4)第3副成分がYであったとき、D/tdが0.2以上となる焼成条件でも、任意の誘電体層tdμm×tdμmの領域でD/tdが0.2以下かつRE-rich二次相の個数が2つ以上の微細構造が実現され、このとき、MTTFが150時間以上に大きく向上しながら、本発明の全ての目標特性が実現される。したがって、第3副成分の種類にかかわらず、誘電体層tdμm×tdμmの領域においてD/tdが0.2以下かつRE-rich二次相の個数が2つ以上の微細構造が実現されると、MTTFが150時間以上に大きく向上することが確認できる。
【0173】
上記実施例1-1~実施例2-4において、本発明の全ての目標特性が実現されるサンプルから、誘電体層の任意の1μm×1μmの領域内でコア-シェル構造からなる主成分BaTiO結晶粒のシェル部位で希土類元素の含量を確認してみると、酸素元素を除く全元素に対する希土類元素Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、Gdのうち1種又は2種以上の合計比率が1.5at%~3.0at%を満たす領域の長さが10nm~80nmの範囲を有する結晶粒が存在し、その個数が常に3つ以上であることが確認できた。これは、本発明の目標特性を得るための主結晶粒の満足条件と言える。
【0174】
表1の実施例2-5は、実施例2-4と同じ組成と焼成条件を適用しており、バッチミリング時間を1/4に減らして添加剤の分散状態が良くない条件の実施例を示し、表2の実施例2-5はその電気的特性を示す。この場合には、誘電体層のtdμm×tdμmの領域においてD/tdが0.2以下かつRE-rich二次相の個数が2つ以上の微細構造が実現されたが、主結晶粒における希土類元素の含量及び分布が上記主結晶粒の満足条件に該当せず、MTTFが150時間未満となり、目標特性が実現されない。また、実施例1-2のように、主結晶粒における希土類元素の含量及び分布が上記主結晶粒の満足条件に該当しても、誘電体層tdμm×tdμmの領域においてD/tdが0.2以下かつRE-rich二次相の個数が2つ以上の微細構造が実現されないと、本発明の目標特性を実現することができなくなる。
【0175】
したがって、本発明の目標特性を実現するためには、二次相の条件である希土類元素Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、Gdのうち1種又は2種以上の合計が30at%以上である二次相の誘電体の厚さ方向へのサイズ(長さ)をDとするとき、任意のtdμm×tdμmの領域内で、この二次相の個数が常に2つ以上かつD/td≦0.2である条件を満たし、さらに、主結晶粒の条件である誘電体層の任意の1μm×1μmの領域内でコア-シェル構造からなる主成分BaTiO結晶粒のシェル部位における希土類元素の含量が酸素元素を除く全元素に対して希土類元素Y、Dy、Ho、 Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、Gdのうち1種又は2種以上の合計比率が1.5%~3.0%の範囲を満たす領域の長さが10nm~80nmの範囲を有する結晶粒が存在し、その個数が3つ以上である誘電体が同時に実現されたとき、本発明の目標特性が実現されることが分かる。
【0176】
【表3】
【0177】
【表4】
【0178】
表3の実施例3-1~実施例5-6は、主成分150nmのBaTiO母材100molについて、第3副成分、第2副成分、及び第1副成分の含量変化による実施例を示し、表4はこれらの実施例に該当する試料の特性を示す。第3副成分であるDyの含量が1.0molあるいは元素比で2.0at%と相対的に少ない場合には(実施例3-1~実施例3-2)、本発明の主結晶粒の満足条件に該当しないか、主結晶粒の満足条件には該当しても、RE-rich二次相が存在せず、高温TCC(125℃)特性が規格から外れたり、MTTF特性が本発明の目標値である150時間未満と低いため、目標特性が実現されない。また、Dyの含量が4.5molあるいは元素比で9.0at%と相対的に多い場合には(実施例3-8~実施例3-9)、主結晶粒のシェル領域の希土類含量が3.0at%を超えて、本発明の主結晶粒の満足条件に該当せず、誘電率が2000未満と低くなったり、RE-rich二次相のサイズが過度に大きくなり、任意の誘電体層tdμm×tdμmの領域でD/tdが0.2以上となり、MTTF特性が150時間未満であり、本発明の目標特性が実現されない。Dyの含量が1.25mol~4.0molあるいはDy元素比で2.5at%~8.00at%の範囲に属する場合(実施例3-3~実施例3-7)、本発明の主結晶粒の満足条件と二次相条件をいずれも満たし、このとき、誘電率≧2000、150℃、DC43V/μmでのHALT MTTF≧150時間、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC特性が-15%以上+15%以下である全ての特性を満たすことができることを確認できる。
【0179】
実施例4-1~実施例4-4において、第2副成分であるMgが添加されると、RC値を高める効果があるが、過剰な量である3.0molあるいは3.0at%の場合には、MTTF特性が本発明の目標値である100時間より未満となり、特性が実現されない。第2副成分のMgCOの含量が0mol(未添加)~2.0molあるいはMg元素比で0at%(未添加)~2.0at%の範囲に属するとき(実施例4-1~実施例4-3)、本発明の全ての特性が実現可能である。実施例5-1~実施例5-6において、遷移金属であるMn及びVの含量の合計が元素比0.1at%と少なすぎる場合には(実施例5-1)、MTTF特性が本発明の目標値である100時間未満となり、特性が実現されず、また、遷移金属であるMn及びVの含量の合計が元素比2.0at%と過剰である場合には(実施例5-4)、RC値が1000未満、MTTFが150時間未満となり、本発明の目標特性を満たすことができない。実施例5-5~実施例5-6は、Mn単独あるいはV単独で元素比率で0.5at%が添加された場合であるが、いずれの場合も本発明の目標特性が実現できる。したがって、本発明の目標特性を実現するための第1副成分の含量は、元素比率で0.2at%~1.4at%と言える。
【0180】
【表5】
【0181】
【表6】
【0182】
表5は、主成分150nmのBaTiO母材100molに対して第4副成分及び第5副成分の含量変化による実施例を示し、表6は、これらの実施例に該当する試料の特性を示す。第5副成分SiOの含量が0.5molと少ない場合には(実施例6-1~実施例6-3)、第4副成分の含量にかかわらず、焼成緻密度が低く、常温誘電率及びMTTFが低いという問題がある。それぞれのSiOの含量において第4副成分であるBaが適正量添加され(Ba+Ca)/Siの比率が0.48となる条件では(実施例7-2、実施例8-3、実施例9-2)、その比率が0である条件に比べて(実施例7-1、実施例8-1、実施例9-1)本発明の全ての特性を満たしながらも常温誘電率が上昇する効果が確認できる。しかし、SiOが過剰に添加され(Ba+Ca)/Siの比率が1.88となる条件では(実施例7-4、実施例8-5、実施例9-4)、常温誘電率が2000未満、又はMTTFが100時間未満となり、本発明の目標特性を満たすことができない。実施例6-1~実施例9-4から、第4副成分及び第5副成分の比率(Ba+Ca)/Siが1.60以下の範囲に属するとき、本発明の目標特性が実現されることが確認できる。実施例10-1~実施例10-2は、第5副成分SiOの含量が4.0molあるいは元素比で4.0at%と過剰である場合、BaCOの含量変化による実施例を示すが、この場合には、第4副成分及び第5副成分の比率(Ba+Ca)/Siが1.60以下の範囲に属するとしても、常温誘電率とMTTFが本発明の目標値より低く、目標特性の実現が不可能であることが確認できる。したがって、第4副成分及び第5副成分の変化実施例を要約すると、第4副成分の含量が4.8mol又は元素比で4.8at%以下の範囲であり、第5副成分であるSiOの含量が0.8mol~3.0mol又は元素比で0.8at%~3.0at%の範囲でありながら、第4副成分と第5副成分の比率(Ba+Ca)/Siが1.60以下の範囲に属するとき、本発明の目標特性が実現可能である。
【0183】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0184】
また、本明細書で使用される「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態に説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0185】
本明細書で使用される用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0186】
10:第1誘電体結晶粒
11:コア部
12:シェル部
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
141:希土類元素の二次相
図1
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図9