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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153541
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20241022BHJP
   H01R 13/6463 20110101ALI20241022BHJP
【FI】
H01R4/02 C
H01R13/6463
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193000
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2023067014
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023147430
(32)【優先日】2023-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】中田 洋人
(72)【発明者】
【氏名】原 涼介
【テーマコード(参考)】
5E021
5E085
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB13
5E021FB20
5E021FC23
5E021FC29
5E021LA10
5E085BB03
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD04
5E085HH12
5E085JJ03
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】伝送性能を向上させるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、1つの電線100に含まれる第1芯線102a又は第2芯線102bのいずれかを接合する接合部12を各々有する2つのインナー端子10と、2つのインナー端子10を互いに同一姿勢で1つずつ収容する、2つの並列な貫通孔23を有するインナーハウジング20とを備える。接合部12は、第1芯線102a等の側部と接触して第1芯線102a等を接合させる接合面12dを有する板状の底壁部12aを少なくとも含む。底壁部12aの幅Wは、第1芯線102a等の中心C2から接合部12において第1芯線102a等から最も離れた最大離隔部12fまでの距離Dと貫通孔23の最大断面半径rとが同一値となる場合の幅Wの寸法値よりも大きく設定される。第1芯線102a等は、レーザ溶接又はレーザ半田により接合面12dに接合される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの電線に含まれる2つの配線ごとの芯線のいずれかを接合する接合部を各々有する2つの端子金具と、
2つの前記端子金具を互いに同一姿勢で1つずつ収容する、2つの並列な貫通孔を有する絶縁部材と、を備え、
前記接合部は、前記芯線の側部と接触して前記芯線を接合させる接合面を有する板状の底壁部を少なくとも含み、
前記端子金具の延伸方向に直交する幅方向での前記底壁部の幅は、前記芯線の中心から前記接合部において前記芯線から最も離れた最大離隔部までの距離と前記貫通孔の最大断面半径とが同一値となる場合の前記幅の寸法値よりも大きく設定され、
前記芯線は、レーザ溶接又はレーザ半田により前記接合面に接合される、コネクタ。
【請求項2】
前記底壁部は、平板部である、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記底壁部の前記幅は、前記接合部の前記貫通孔への収容が許容される範囲での最大値に設定される、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記接合部は、前記底壁部の前記幅方向での両端から前記接合面に垂直な高さ方向に各々突出する2つの平板状の側壁部を含む、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記高さ方向での前記接合部の最大高さは、前記接合部の前記貫通孔への収容が許容される範囲での最大値に設定される、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記端子金具の前記延伸方向では、前記側壁部の長さは、前記底壁部の長さと同一である、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記貫通孔において前記接合部が収容される部分の横断面形状は、
前記最大断面半径で規定される円形部と、
前記円形部から2つの前記貫通孔の並列方向に対して交差する1つの方向に拡張された拡張部と、を有する、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記接合部は、前記底壁部を基準として互いに対称で、かつ、互いに平行な、2つの平板状の側壁部を含み、
前記底壁部は、前記接合面での曲げ角度が鈍角となるように、前記延伸方向に沿う曲げ線を基準として対称に折り曲げられた、断面形状がV字形であるV形板部であり、
2つの前記側壁部は、それぞれ、前記底壁部の前記幅方向での両端から前記接合面が開放される側に突出する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記接合面は、前記曲げ線を含みつつ当該曲げ線を基準とした対称形状を有する曲面を含む、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記接合部は、前記底壁部を基準として互いに対称で、かつ、互いに平行な、2つの平板状の側壁部を含み、
前記底壁部は、前記接合面での曲げ角度が鈍角となるように、前記延伸方向に沿う曲げ線を基準として対称に折り曲げられた曲げ部であり、
2つの前記側壁部は、それぞれ、前記底壁部の前記幅方向での両端から折り返し部を介して前記接合面が開放される側に突出する、請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線に接続された端子金具をハウジング内に収容した通信用のコネクタがある。特許文献1は、端子金具としての圧着端子に着目して、圧着部の寸法に係るクリンプハイト(C/H)又はクリンプワイド(C/W)が圧着品質の良否に影響するものとした、圧着部の評価方法に関する技術を開示している。従来の通信用のコネクタでは、特許文献1において検討されているように、端子金具として圧着端子が採用される場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/150684号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ツイストペア線に接続され、現在又は将来の高速通信規格に対応し得るコネクタを想定すると、端子金具として圧着端子を採用した場合、伝送性能を確保することが難しくなることも考えられる。圧着端子は、芯線を加締めるワイヤバレルを有するが、ワイヤバレルに芯線を圧着させた部位である圧着部におけるクリンプハイト又はクリンプワイドには、伝送性能に関係した許容範囲がある。そのため、高速通信規格に対応し得る伝送性能を確保するために、圧着端子においてワイヤバレルの形状を改変するにも、実際には上記許容範囲に基づく制約を受けて容易ではない。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、伝送性能を向上させるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るコネクタは、1つの電線に含まれる2つの配線ごとの芯線のいずれかを接合する接合部を各々有する2つの端子金具と、2つの端子金具を互いに同一姿勢で1つずつ収容する、2つの並列な貫通孔を有する絶縁部材と、を備え、接合部は、芯線の側部と接触して芯線を接合させる接合面を有する板状の底壁部を少なくとも含み、端子金具の延伸方向に直交する幅方向での底壁部の幅は、芯線の中心から接合部において芯線から最も離れた最大離隔部までの距離と貫通孔の最大断面半径とが同一値となる場合の幅の寸法値よりも大きく設定され、芯線は、レーザ溶接又はレーザ半田により接合面に接合される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伝送性能を向上させるコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る、電線に接続された状態のコネクタの斜視図である。
図2】第1実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図3】アウターハウジングを取り付ける前のコネクタの斜視図である。
図4】第1実施形態におけるインナー端子への芯線の接合を説明する図である。
図5図3のV-V断面に対応したコネクタの断面図である。
図6】第2実施形態におけるインナー端子への芯線の接合を説明する図である。
図7】第2実施形態に係るコネクタの断面図である。
図8】第3実施形態に係るコネクタの断面図である。
図9A】第4実施形態におけるインナー端子の斜視図である。
図9B】第4実施形態におけるインナー端子の背面図である。
図10】第4実施形態に係るコネクタの断面図である。
図11A】第4実施形態における他のインナー端子の斜視図である。
図11B】第4実施形態における他のインナー端子の背面図である。
図12A】第5実施形態におけるインナー端子の斜視図である。
図12B】第5実施形態におけるインナー端子の背面図である。
図13】第5実施形態に係るコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて各実施形態に係るコネクタについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るコネクタ1の斜視図である。図1では、電線100に接続された状態のコネクタ1が示されている。図2は、コネクタ1の分解斜視図である。図3は、アウターハウジング40を取り付ける前のコネクタ1の斜視図である。
【0011】
以下、コネクタ1の構造等を説明するために参照する各方向を次のように定義する。X方向は、コネクタ1が外部の接続対象に接続されるときの接続方向に対応する。また、X方向は、コネクタ1の内部に収容される端子金具としてのインナー端子10に関する延伸方向及び長さ方向にも対応する。コネクタ1を構成する各要素及び電線100に関する各位置での横断面は、X方向に対して垂直で、かつ、互いに垂直なY方向とZ方向とで規定されるYZ平面で表される。Y方向は、インナー端子10に関する幅方向に対応する。Z方向は、インナー端子10に関する高さ方向に対応する。
【0012】
コネクタ1は、例えば車載用の電線に取り付けられ、現在又は将来の高速通信規格に対応して高速領域・高周波帯域での高速デジタル信号伝送を実現する。本実施形態では、コネクタ1が取り付けられる電線100は、差動配線として、第1配線101aと第2配線101bとの2つの配線を内部に含む。具体的には、電線100は、シールド付きツイストペア線(STP:Shielded Twisted Pair)、又は、シールド付き平行ペア線(SPP:Shielded Parallel Pair)であってもよい。第1配線101aは、導体である第1芯線102aと、第1芯線102aを覆う第1絶縁体103aとを含む。同様に、第2配線101bは、導体である第2芯線102bと、第2芯線102bを覆う第2絶縁体103bとを含む。また、電線100は、第1配線101aと第2配線101bとを一体的に巻き付ける押え巻104(図4参照)と、押え巻104の外周を覆う導電性のシールド105と、シールド105の外周を覆う絶縁性のシース106とを含む。
【0013】
また、コネクタ1は、2つのインナー端子10と、インナーハウジング20と、アウター端子30と、アウターハウジング40とを備える。
【0014】
図4は、インナー端子10への芯線の接合の一例として、第1端子10aの接合部12への第1芯線102aの接合を説明する図である。
【0015】
インナー端子10は、信号線用の導体として機能する端子金具である。コネクタ1は、第1端子10aと第2端子10bとの2つのインナー端子10を備える。第1端子10aは、第1配線101aの先端に取り付けられる。第2端子10bは、第2配線101bの先端に取り付けられる。第1端子10aと第2端子10bとの形状は、互いに同一である。インナー端子10は、接続部11と、接合部12と、連結部13とを有する。
【0016】
接続部11は、コネクタ1が外部の接続対象に接続されたときに、相手方の信号用の端子金具を挿入させる。接続部11は、軸方向が長さ方向に沿った筒状である。接続部11の開放端の一部は、一対の弾性接触片で構成される。
【0017】
接合部12は、第1芯線102a又は第2芯線102bを接合させる。第1端子10aの接合部12は、第1配線101aの第1芯線102aを接合させる。第2端子10bの接合部12は、第2配線101bの第2芯線102bを接合させる。本実施形態では、接合部12は、平板状の底壁部12aのみで構成される。底壁部12aは、長さ方向の寸法を長さLとし、幅方向の寸法を幅W(図5参照)とし、高さ方向の寸法を高さt(図5参照)として規定される。底壁部12aは、XY平面に沿った一方の主平面である接合面12dを有する。第1芯線102a及び第2芯線102bは、各々の芯線に対応した接合面12dに対して、接合対象である芯線の側部を接触させた状態で、レーザ溶接又はレーザ半田により接合される。図4では、一例として、レーザヘッド200から照射されるレーザ光Laを用いたレーザ溶接により、第1端子10aの接合面12dに対して第1芯線102aが接合される状態が示されている。なお、底壁部12aの各部の寸法に関する条件については、以下で詳説する。
【0018】
連結部13は、長さ方向に沿って接続部11と接合部12との間に位置し、接続部11と接合部12とを連結する。本実施形態では、筒状である接続部11の外径は、底壁部12aの幅Wよりも小さく設定されているため、連結部13の一部がテーパー状に形成されている。
【0019】
インナーハウジング20は、第1配線101aと第2配線101bとでインピーダンスを整合させるための絶縁部材である。インナーハウジング20の材質は、例えば合成樹脂である。インナーハウジング20は、2つのインナー端子10を互いに同一姿勢で1つずつ収容する、2つの並列な貫通孔23を有する。なお、ここでいう貫通孔23は、キャビティと呼称される場合もある。インナーハウジング20は、貫通孔23内にインナー端子10の全体を収容するために、長さ方向を長手方向とする。インナーハウジング20の横断面の形状は、2つの貫通孔23の各々に対して外周部分の肉厚が同等に確保されるように、おおよそ長円形である。
【0020】
各々の貫通孔23は、インナー端子10の形状に合わせて、接続部11を収容する先端孔23aと、接合部12及び連結部13を収容する根元孔23b(図5参照)とを同軸状に含む。先端孔23aは、インナーハウジング20の先端側の端面である第1端面21から外部に開放される。根元孔23bは、インナーハウジング20の根元側の端面である第2端面22から外部に開放される。コネクタ1の組み立て時、インナー端子10は、第2端面22側から貫通孔23に挿入される。ここで、先端孔23aは、接続部11を収容し得る程度の内径を有し、一方、根元孔23bは、接合部12を収容し得る程度の内径を有するので、根元孔23bの内径は、先端孔23aの内径よりも大きい。そのため、本実施形態では、貫通孔23の最大断面半径は、根元孔23bの断面半径r(図5参照)に相当する。
【0021】
アウター端子30は、シールド用の導体として機能する端子金具である。アウター端子30は、シールド接続部31と、シールドバレル部32とを有する。
【0022】
シールド接続部31は、コネクタ1が外部の接続対象に接続されたときに、相手方のシールド用の端子金具と係合する。シールド接続部31は、軸方向が長さ方向に沿い、横断面がインナーハウジング20の外形に合わせておおよそ長円状である筒状である。シールド接続部31は、内周面31bで囲まれた内部空間に、インナー端子10を貫通孔23に収容した状態にあるインナーハウジング20を収容する。シールド接続部31の接続口31aは、インナーハウジング20の第1端面21を外方へ開放する。
【0023】
シールドバレル部32は、電線導入口32aから電線100の先端が挿入されて、シールド接続部31がインナーハウジング20を収容した状態で、電線100のシールド105を係合させる。つまり、シールドバレル部32は、シールド接続部31に対して同軸状に連結された筒状である。
【0024】
アウターハウジング40は、コネクタ1の外装を成す絶縁部材である。アウターハウジング40の材質は、例えば合成樹脂である。アウターハウジング40は、軸方向が長さ方向に沿い、横断面がおおよそ矩形状である筒状である。アウターハウジング40は、先端面41と電線接続面42との間で軸方向に沿って貫通する収容部43を有する。収容部43は、図3に示すユニットとして準備されたインナー端子10、インナーハウジング20及びアウター端子30を収容する。なお、ここでいう収容部43も、キャビティと呼称される場合がある。完成状態にあるコネクタ1では、図1に示すように、収容部43の先端面41側の開口は、インナーハウジング20の第1端面21と、シールド接続部31の接続口31aとを外方へ開放する。また、アウターハウジング40は、その外壁面の一部に、コネクタ1が外部の接続対象に接続されたときに、当該接続対象に予め設けられている係止部と係合する係合部44を有してもよい。係合部44は、接続対象からのコネクタ1の脱落を抑止する、いわゆるロック機構として機能する。
【0025】
次に、インナー端子10における接合部12の取り得る形状について詳説する。
【0026】
図5は、図3のV-V断面に対応し、インナー端子10のいずれかの接合部12に接合されている第1芯線102a及び第2芯線102bが存在する横断面で切断された、コネクタ1の断面図である。
【0027】
インナー端子10の接合部12は、上記のとおり、平板状の底壁部12aである。底壁部12aの横断面は、幅Wと高さtとで規定される矩形である。なお、高さtは、底壁部12aにおける厚みに相当し得る。ここで、図5に示すような横断面において、一方の配線である第1配線101aを接合する底壁部12aに着目する。このとき、第1芯線102aの中心C2から、底壁部12aにおいて第1芯線102aから最も離れた最大離隔部12fまでの距離を、距離Dと定義する。なお、1つの底壁部12aには、最大離隔部12fが2つ存在する。一方、インナーハウジング20において、接合部12が収容される貫通孔23の最大断面半径は、上記のとおり、根元孔23bの断面半径rである。
【0028】
本実施形態では、底壁部12aの幅Wは、距離Dと根元孔23bの断面半径rとが同一値となる場合の幅Wの寸法値よりも大きく設定される。ここで、第1芯線102aの中心C2が貫通孔23の中心C1と一致するように、底壁部12aが根元孔23bに収容されたと仮定する。この場合、距離Dと断面半径rとが同一値であれば、2つの最大離隔部12fは、インナーハウジング20において根元孔23bを形成する内壁面と接触する。しかし、実際には、図5に例示されているとおり、第1芯線102aの中心C2は、必ずしも貫通孔23の中心C1と一致せず、貫通孔23の中心C1からのズレが許容される。そのため、幅Wが、距離Dと断面半径rとが同一値である場合の寸法値よりも大きく設定されたとしても、幅Wの最大設定寸法より大きくならない限り、底壁部12aが根元孔23bに収容され得ることになる。したがって、幅Wは、底壁部12aが根元孔23bに収容されるという前提の上で、大きく設定され得る。そして、幅Wの最大設定寸法は、底壁部12aの根元孔23bへの収容が許容される範囲での最大値である。
【0029】
一方、底壁部12aの高さtについては、幅Wの上記設定に加えて、第1芯線102aの径を考慮することで導出し得る。なお、ここでは第1配線101aを接合する底壁部12aに着目したが、他方の配線である第2配線101bを接合する底壁部12aに関しても、同様に設定される。
【0030】
次に、コネクタ1の効果について説明する。
【0031】
まず、コネクタ1は、1つの電線100に含まれる2つの配線ごとの芯線、すなわち、第1配線101aの第1芯線102a又は第2配線101bの第2芯線102bのいずれかを接合する接合部12を各々有する2つの端子金具を備える。また、コネクタ1は、2つの端子金具を互いに同一姿勢で1つずつ収容する、2つの並列な貫通孔23を有する絶縁部材を備える。接合部12は、芯線の側部と接触して芯線を接合させる接合面12dを有する板状の底壁部12aを少なくとも含む。端子金具の延伸方向に直交する幅方向での底壁部12aの幅Wは、距離Dと貫通孔23の最大断面半径とが同一値となる場合の幅Wの寸法値よりも大きく設定される。距離Dは、芯線の中心C2から接合部12において芯線から最も離れた最大離隔部12fまでの距離である。芯線は、レーザ溶接又はレーザ半田により接合面12dに接合される。
【0032】
また、コネクタ1では、底壁部12aは、平板部であってもよい。
【0033】
ここで、上記例示では、接合部12を有する端子金具は、インナー端子10に相当し、2つの端子金具は、第1端子10a及び第2端子10bに相当する。2つの並列な貫通孔23を有する絶縁部材は、上記例示でのインナーハウジング20に相当する。貫通孔23は端子金具を1つ収容する部位であるから、貫通孔の最大断面半径は、実際上、接合部12が収容される部分として上記例示されている根元孔23bの断面半径rに相当する。更に、端子金具の延伸方向は、上記例示でのX方向に相当し、端子金具の幅方向は、上記例示でのY方向に相当する。
【0034】
一般に、プリント配線板の外装配線としてのマイクロストリップラインに関するインピーダンスの計算式(以下「マイクロストリップライン式」という。)が知られている。マイクロストリップライン式は、具体的には、以下の式(1)及び(2)で表される。
【0035】
【数1】
【0036】
【数2】
【0037】
ただし、Zは、配線(導体)の特性インピーダンスである。εは、絶縁層(誘電体)の比誘電率である。hは、絶縁層の厚みである。Wは、配線幅である。tは、配線厚みである。Zdiffは、差動インピーダンスである。また、Sは、配線同士の間隔である。
【0038】
ここで、コネクタ1におけるインナーハウジング20の内部には、第1端子10aと第2端子10bとが、互いに同一姿勢で、かつ、並列に配置されている。また、2つの根元孔23bに収容される各々の接合部12は、平板状の底壁部12aである。そのため、図5に示すようなインナーハウジング20における2つの底壁部12aの各形状及び各配置は、次のような対応関係でマイクロストリップライン式に適用され得る。式(1)中のWには、底壁部12aの幅Wを適用し得る。式(1)中のεには、インナーハウジング20を形成する絶縁材料の比誘電率を適用し得る。式(1)及び式(2)中のhには、底壁部12aにおける接合面12dとは反対側の表面から、高さ方向に沿って、インナーハウジング20の直近の外面までの厚みhを適用し得る。式(1)中のtには、底壁部12aにおける厚みに相当する高さtを適用し得る。また、式(2)中のSには、底壁部12a同士の間隔Sを適用し得る。
【0039】
コネクタ1の構成が適用されたマイクロストリップライン式によれば、底壁部12aの幅Wがより大きく設定されるほど、式(1)で示される特性インピーダンスZの値がより小さくなる。また、特性インピーダンスZの値がより小さくなることで、式(2)で示される差動インピーダンスZdiffの値もより小さくなる。
【0040】
そして、コネクタ1では、底壁部12aの幅Wは、距離Dと根元孔23bの断面半径rとが同一値となる場合の幅Wの寸法値よりも大きく設定されるので、特性インピーダンスZの値、ひいては差動インピーダンスZdiffの値をより小さくすることができる。したがって、コネクタ1によれば、インピーダンスの上昇を抑制し、高速通信規格に対応し得る伝送性能を確保すべく、伝送性能を向上させることができる。
【0041】
なお、比較例として、ツイストペア線の各々の芯線が圧着端子に取り付けられているようなコネクタでは、クリンプハイト又はクリンプワイドに関する制約により、ワイヤバレルの形状を大きく改変することが難しい。つまり、ワイヤバレルの形状を改変することによってインピーダンスの上昇を抑えることも、実際上難しい。
【0042】
また、コネクタ1では、芯線がレーザ溶接又はレーザ半田により接合面12dに接合されるので、底壁部12aの形状が平板状であっても、インナー端子10に対する芯線の接合に際して差し支えはない。換言すれば、レーザ溶接又はレーザ半田により芯線を接合面12dに接合させることで、底壁部12aの形状を、幅Wをより大きく設定し得る平板状とすることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、伝送性能を向上させるコネクタ1を提供することができる。
【0044】
また、コネクタ1では、底壁部12aの幅Wは、接合部12の貫通孔23への収容が許容される範囲での最大値に設定されてもよい。
【0045】
このコネクタ1によれば、その構造上、底壁部12aの幅Wの値が、設定され得る中で最も大きく設定されることになるため、より高い伝送性能を得ることができる。
【0046】
(第2実施形態)
第1実施形態では、インナー端子10における接合部12が平板状の底壁部12aである場合を例示した。これに対して、第2実施形態に係るコネクタ1は、インナー端子10に代えて、接合部12の形状を改変したインナー端子50を採用する。
【0047】
図6は、第2実施形態におけるインナー端子50への芯線の接合の一例として、第1端子50aの接合部52への第1芯線102aの接合を説明する図である。図7は、インナー端子50のいずれかの接合部52に接合されている第1芯線102a及び第2芯線102bが存在する横断面で切断された、コネクタ1の断面図である。なお、図6は、第1実施形態に関する図4に対応して描画されている。図7は、第1実施形態に関する図5に対応して描画されている。また、第2実施形態において、第1実施形態に関する説明で用いられた各要素と同一要素については、同一の符号を付し、詳説を省略する。
【0048】
第1実施形態と同様に、本実施形態に係るコネクタ1では、第1端子50aと第2端子50bとの2つのインナー端子50が存在する。インナー端子50は、接続部51と、接合部52と、連結部53とを有する。インナー端子50では、接合部52の形状と、接合部52の形状に伴う連結部53の形状とが、第1実施形態における接合部12と連結部13との形状と相違する。接続部51の形状は、第1実施形態における接続部11の形状と同一である。
【0049】
接合部52は、底壁部52aと、第1側壁部52bと、第2側壁部52cとを有する。底壁部52aは、第1実施形態における底壁部12aに相当する。第1側壁部52bは、底壁部52aの幅方向での一方の端から接合面52dに垂直な高さ方向に突出する。第2側壁部52cは、底壁部52aの幅方向での他方の端から接合面52dに垂直な高さ方向に突出する。第1側壁部52bと第2側壁部52cとは、各々同一形状の平板状であり、幅方向で対向する。この場合、高さ方向での接合部52の高さは、底壁部52aから第1側壁部52b又は第2側壁部52cの先端部52gまでの最大高さtとみなし得る。なお、第1側壁部52b及び第2側壁部52cのそれぞれの幅方向での厚みは、例えば、底壁部52aの高さ方向の厚みと同等であってもよい。
【0050】
また、第1実施形態と同様に、例えば、第1芯線102aの中心C2から接合部52において第1芯線102aから最も離れた最大離隔部52fまでの距離を、距離Dと定義し得る。そして、底壁部52aの幅Wは、距離Dと根元孔23bの断面半径rとが同一値となる場合の幅Wの寸法値よりも大きく設定される。
【0051】
このように、第2実施形態に係るコネクタ1では、接合部52は、底壁部52aの幅方向での両端から接合面52dに垂直な高さ方向に各々突出する2つの平板状の側壁部を含んでもよい。
【0052】
ここで、接合部52に含まれる2つの側壁部は、上記例示での第1側壁部52b及び第2側壁部52cに相当する。
【0053】
このコネクタ1によれば、まず、接合部52における底壁部52aの幅Wが、第1実施形態と同様に設定されるので、伝送性能を向上させることができる。
【0054】
また、接合部52に2つの側壁部が設けられることで、接合部52の高さを最大高さtのように高く設定することができる。ここで、第1実施形態に関する説明と同様に、マイクロストリップライン式を参照すると、式(1)中のtには、第1側壁部52b又は第2側壁部52cの高さに相当する最大高さtを適用し得る。このとき、本実施形態に係るコネクタ1の構成が適用されたマイクロストリップライン式によれば、最大高さtがより大きく設定されるほど、式(1)で示される特性インピーダンスZの値がより小さくなる。また、特性インピーダンスZの値がより小さくなることで、式(2)で示される差動インピーダンスZdiffの値もより小さくなる。したがって、コネクタ1によれば、インピーダンスの上昇をより抑制し、伝送性能をより向上させることができる。
【0055】
更に、接合部52に2つの側壁部が設けられることで、接合面52dに接合される第1芯線102a等の芯線は、これらの2つの側壁部同士の間に挟まれるように接合面52d上に配置される。これに対して、コネクタ1では、芯線は、その他の接合方式を採用した場合と比較して、より狭い範囲を接合することができるレーザ溶接又はレーザ半田により接合面52dに接合される。したがって、芯線が2つの側壁部同士の間に挟まれるように接合面52d上に配置されても、インナー端子50に対する芯線の接合に際して差し支えはない。換言すれば、レーザ溶接又はレーザ半田により芯線を接合面52dに接合させることで、接合部52の形状を、2つの側壁部を有するような形状とすることができる。
【0056】
また、第2実施形態に係るコネクタ1では、高さ方向での接合部52の最大高さtは、接合部52の貫通孔23への収容が許容される範囲での最大値に設定されてもよい。
【0057】
このコネクタ1によれば、その構造上、接合部52の最大高さtの値が、設定され得る中で最も大きく設定されることになるため、より高い伝送性能を得ることができる。
【0058】
更に、第2実施形態に係るコネクタ1では、端子金具としてのインナー端子50の延伸方向では、側壁部の長さLは、底壁部52aの長さと同一であってもよい。
【0059】
このコネクタ1によれば、接合部52において側壁部をより大きく設定することができるとともに、端子金具の製造時に端子金具の形状を一定に維持しやすくなるため、製造された端子金具ごとにインピーダンスの値を安定させやすくなる点で有利となり得る。
【0060】
(第3実施形態)
上記の各実施形態では、インナーハウジング20において、接合部12又は接合部52を収容する根元孔23bの横断面形状が、最大断面半径rで規定される円形である場合を例示した。これに対して、第3実施形態に係るコネクタ1では、接合部52に第1側壁部52b及び第2側壁部52cが設けられているインナー端子50が採用される場合を想定し、貫通孔23における根元孔23bの形状を、横断面形状が円形である場合から改変する。
【0061】
図8は、インナー端子50のいずれかの接合部52に接合されている第1芯線102a及び第2芯線102bが存在する横断面で切断された、第3実施形態に係るコネクタ1の断面図である。なお、図8は、第2実施形態に関する図7に対応して描画されている。また、第3実施形態において、第2実施形態に関する説明で用いられた各要素に対応する要素については、同一の符号を付し、適宜詳説を省略する場合がある。
【0062】
本実施形態におけるインナーハウジング20では、貫通孔23の根元孔23bの横断面形状は、円形部G1と、拡張部G2とを有する。なお、貫通孔23に収容されているインナー端子50の延伸方向がX方向と想定されていることに準じて、貫通孔23の延伸方向も合わせてX方向に沿っていると想定する。この場合、貫通孔23の横断面は、X方向に対して垂直で、かつ、互いに垂直なY方向とZ方向とで規定されるYZ平面で表される。
【0063】
円形部G1は、最大断面半径rで規定される。最大断面半径rは、図5に例示されているように、第1実施形態において定義されたものと同様である。円形部G1は、貫通孔23の実際の一部を構成する半円部23cと、半円部23cとZ方向で対称となる仮想の半円部とを含む。なお、図8では、円形部G1を規定する仮想の半円部が二点鎖線で描画されている。円形部G1の大きさは、図8の例示のとおり、図5に例示されている根元孔23bの横断面の大きさよりも一回り大きく設定されてもよい。
【0064】
拡張部G2は、円形部G1から2つの貫通孔23の並列方向に対して交差する1つの方向に拡張された部分である。本実施形態では、2つの貫通孔23の並列方向は、Y方向である。また、貫通孔23の横断面がYZ平面であるので、2つの貫通孔23の並列方向に対して交差する1つの方向は、Y方向に対して直交するZ方向である。なお、拡張部G2が円形部G1から拡張される方向は、Y方向に対して直交する方向に限らず、Y方向に対して直交する方向からの若干の傾きを許容する。
【0065】
本実施形態では、拡張部G2は、2つの貫通孔23の並列方向で互いに対向する2つの側辺部23eと、並列方向に対して直交する方向で半円部23cと対向する上辺部23dとを含む。上辺部23dは、並列方向におおよそ沿う直線状の辺部である。2つの側辺部23eのうちの一方の側辺部23eは、半円部23cと上辺部23dとが対向する方向に沿って、半円部23cの一方の端部と上辺部23dの一方の端部とを連結する直線状の辺部である。同様に、2つの側辺部23eのうちの他方の側辺部23eは、半円部23cと上辺部23dとが対向する方向に沿って、半円部23cの他方の端部と上辺部23dの他方の端部とを連結する直線状の辺部である。なお、側辺部23e又は上辺部23dは、完全な直線で形成されるものに限らず、一部又は全部が若干の曲線で形成されるものであってもよいし、微小な段差を含むものであってもよい。
【0066】
つまり、貫通孔23の横断面形状が円形部G1及び拡張部G2を有することから、貫通孔23は、半円部23cで構成される内周壁と、側辺部23eごとに構成される2つの側壁部と、上辺部23dで構成される上壁部とで囲まれた貫通部であると言える。
【0067】
このように、第3実施形態に係るコネクタ1では、貫通孔23において接合部52が収容される部分の横断面形状は、最大断面半径rで規定される円形部G1と、拡張部G2とを有してもよい。拡張部G2は、円形部G1から2つの貫通孔23の並列方向に対して交差する1つの方向に拡張された部分であってもよい。
【0068】
ここで、上記例示では、2つの貫通孔23の並列方向は、Y方向に相当する。この場合、貫通孔23の横断面において、2つの貫通孔23の並列方向に対して交差する1つの方向は、Z方向に相当する。
【0069】
上記の第2実施形態では、接合部52を収容する貫通孔23の根元孔23bの横断面形状は、最大断面半径rで規定される円形である。そのため、接合部52に設けられている第1側壁部52b及び第2側壁部52cについても、根元孔23bの円形の横断面の範囲を超える大きさに設定されることはない。
【0070】
これに対して、本実施形態では、接合部52を収容する貫通孔23は、横断面形状が円形部G1として特定される領域のみならず、横断面形状が拡張部G2として特定される領域も含む。ここで、円形部G1に対して拡張部G2が連続している方向は、接合部52に設けられている第1側壁部52b及び第2側壁部52cが底壁部52aから突出する方向に沿っている。そのため、図8に示すように、第1側壁部52b及び第2側壁部52cの各々の先端部52gは、円形部G1で特定される領域を超えて、拡張部G2で特定される領域に位置することができる。すなわち、第2実施形態において規定された、底壁部52aから第1側壁部52b又は第2側壁部52cの先端部52gまでの最大高さtの値は、第2実施形態の場合よりも大きくなり得る。したがって、本実施形態に係るコネクタ1によれば、最大高さtの値をより大きく設定することで、インピーダンスの上昇をより抑制し、伝送性能をより向上させることができる。
【0071】
例えば、最大高さtの値は、図8に示すように、2つの貫通孔23の並列方向に対して直交する方向で、第1側壁部52b及び第2側壁部52cの各々の先端部52gが上辺部23dと対向しつつ近接するときの値に設定されてもよい。この場合、ある大きさで形成された貫通孔23において、最大高さtの値が、設定され得る中で最も大きく設定されることになるため、より高い伝送性能を得ることができる。
【0072】
(第4実施形態)
第2実施形態では、インナー端子50における接合部52が、底壁部52aに加えて第1側壁部52b及び第2側壁部52cを有する場合を例示した。この場合、底壁部52aの形状は、平板状である。これに対して、第4実施形態に係るコネクタ1では、接合部が第1側壁部52b等と同等の側壁部を有しつつ、底壁部52aの形状を改変したインナー端子60を採用する。
【0073】
図9A及び図9Bは、第4実施形態におけるインナー端子60を示す図である。図9Aは、インナー端子60の斜視図である。図9Bは、インナー端子60の延伸方向に沿って接合部62側を見たときのインナー端子60の背面図である。
【0074】
第2実施形態と同様に、本実施形態に係るコネクタ1では、互いに同一形状である第1端子60aと第2端子60bとの2つのインナー端子60が存在する。インナー端子60は、接続部61と、接合部62と、連結部63とを有する。インナー端子60では、接合部62の形状と、接合部62の形状に伴う連結部63の形状とが、第2実施形態における接合部52と連結部53との形状と相違する。接続部61の形状は、第2実施形態における接続部51の形状と同一である。
【0075】
接合部62は、底壁部62aと、第1側壁部62bと、第2側壁部62cとを有する。
【0076】
底壁部62aでは、接合面62dの側に、X方向に対応する延伸方向に沿う曲げ線62hが予め設定される。そして、底壁部62aは、曲げ線62hを基準として対称に折り曲げられた、断面形状がV字形であるV形板部である。接合面62dでの曲げ角度θは、鈍角であり、具体的には、例えば120°であってもよい。
【0077】
第1側壁部62b及び第2側壁部62cは、底壁部62aのY方向に対応する幅方向での両端から、接合面62dが開放される側に突出する。第1側壁部62b及び第2側壁部62cは、それぞれ、底壁部62aを基準として互いに対称で、かつ、互いに平行である。つまり、本実施形態においても、第1側壁部62b及び第2側壁部62cは、各々同一形状の平板状であり、幅方向で対向する。
【0078】
図10は、インナー端子60のいずれかの接合部62に接合されている第1芯線102a及び第2芯線102bが存在する横断面で切断された、第4実施形態に係るコネクタ1の断面図である。なお、図10は、第2実施形態に関する図7に対応して描画されている。また、第4実施形態において、第2実施形態に関する説明で用いられた各要素に対応する要素については、同一の符号を付し、適宜詳説を省略する場合がある。
【0079】
本実施形態では、高さ方向での接合部62の高さは、底壁部62aの下端から第1側壁部62b又は第2側壁部62cの先端部62gまでの最大高さtとみなし得る。なお、第1側壁部62b及び第2側壁部62cのそれぞれの幅方向での厚みは、例えば、底壁部62aの厚みと同等であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態と同様に、例えば、第1芯線102aの中心C2から接合部62において第1芯線102aから最も離れた最大離隔部までの距離を、距離Dと定義し得る。本実施形態では、最大隔離部は、先端部62gの一部である。そして、底壁部62aの幅Wは、距離Dと根元孔23bの断面半径rとが同一値となる場合の幅Wの寸法値よりも大きく設定される。
【0081】
このように、第4実施形態に係るコネクタ1では、接合部62は、底壁部62aを基準として互いに対称で、かつ、互いに平行な、2つの平板状の側壁部を含んでもよい。底壁部62aは、接合面62dでの曲げ角度θが鈍角となるように、延伸方向に沿う曲げ線62hを基準として対称に折り曲げられた、断面形状がV字形であるV形板部であってもよい。2つの側壁部は、それぞれ、底壁部62aの幅方向での両端から接合面62dが開放される側に突出してもよい。
【0082】
ここで、接合部62に含まれる2つの側壁部は、上記例示での第1側壁部62b及び第2側壁部62cに相当する。
【0083】
第4実施形態に係るコネクタ1によれば、インナー端子60の接合部62が底壁部62aに加えて第1側壁部62b及び第2側壁部62cを有するので、第2実施形態に係るコネクタ1と同様の効果を奏する。
【0084】
また、接合部62における底壁部62aがV形板部であるので、電線100に曲がり癖があったり、第1芯線102a等にほつれが生じていたりした場合でも、第1芯線102a等は、接合部62の接合面62dに載置される段階で適切に位置決めされる。そのため、例えば、第1芯線102aを接合する前に、第1芯線102aのほつれを修正する作業、カメラによる接合位置の検出作業、又は、接合対象側又は接合機側での位置補正などの各種工程が不要となる。したがって、第1芯線102a等の接合に係る作業時間又は作業コストの増加を抑えることで、作業性を向上させることができる。
【0085】
なお、本実施形態においても、高さ方向での接合部62の最大高さtは、接合部62の貫通孔23への収容が許容される範囲での最大値に設定されてもよい。
【0086】
このコネクタ1によれば、その構造上、接合部62の最大高さtの値が、設定され得る中で最も大きく設定されることになるため、より高い伝送性能を得ることができる。
【0087】
また、本実施形態においても、端子金具としてのインナー端子60の延伸方向では、側壁部の長さLは、底壁部62aの長さと同一であってもよい。
【0088】
このコネクタ1によれば、接合部62において側壁部をより大きく設定することができるとともに、端子金具の製造時に端子金具の形状を一定に維持しやすくなるため、製造された端子金具ごとにインピーダンスの値を安定させやすくなる点で有利となり得る。
【0089】
一方、インナー端子60は、以下のインナー端子70のように改変されてもよい。
【0090】
図11A及び図11Bは、第4実施形態における他のインナー端子の例としてのインナー端子70を示す図である。図11Aは、インナー端子70の斜視図である。図11Bは、インナー端子70の延伸方向に沿って接合部72側を見たときのインナー端子70の背面図である。
【0091】
この場合、本実施形態に係るコネクタ1では、互いに同一形状である第1端子70aと第2端子70bとの2つのインナー端子70が存在する。インナー端子70は、接続部71と、接合部72と、連結部73とを有する。インナー端子70では、接合部72の形状と、接合部72の形状に伴う連結部73の形状とが、インナー端子60における接合部62と連結部63との形状と相違する。接続部71の形状は、インナー端子60における接続部61の形状と同一である。
【0092】
接合部72は、底壁部72aと、第1側壁部72bと、第2側壁部72cとを有する。
【0093】
底壁部72aでは、接合面72dの側に、X方向に対応する延伸方向に沿う曲げ線72hが予め設定される。そして、底壁部72aは、曲げ線72hを基準として対称に折り曲げられた、断面形状がV字形であるV形板部である。接合面72dでの曲げ角度θは、鈍角であり、具体的には、例えば120°であってもよい。
【0094】
第1側壁部72b及び第2側壁部72cは、底壁部72aのY方向に対応する幅方向での両端から、接合面72dが開放される側に突出する。第1側壁部72b及び第2側壁部72cは、それぞれ、底壁部72aを基準として互いに対称で、かつ、互いに平行である。つまり、本実施形態においても、第1側壁部72b及び第2側壁部72cは、各々同一形状の平板状であり、幅方向で対向する。
【0095】
本実施形態では、高さ方向での接合部72の高さは、底壁部72aの下端から第1側壁部72b又は第2側壁部72cの先端部72gまでの最大高さtとみなし得る。なお、第1側壁部72b及び第2側壁部72cのそれぞれの幅方向での厚みは、例えば、底壁部72aの厚みと同等であってもよい。
【0096】
ここで、インナー端子70では、接合面72dは、曲げ線72hを含みつつ曲げ線72hを基準とした対称形状を有する曲面72iを含んでもよい。
【0097】
インナー端子70を採用したコネクタ1によれば、インナー端子60を採用したコネクタ1と同様の効果を奏する。また、インナー端子70を採用したコネクタ1によれば、例えば、第1芯線102aが接合部72の接合面72dに載置されたとき、第1芯線102aと曲面72iとで挟まれる隙間空間が狭くなる。そのため、第1芯線102aが溶接により接合部72に接合されるに際して、第1芯線102aと接合部72とのなじみを向上させ、結果として、せん断引張強度の低下を抑えることができる。
【0098】
(第5実施形態)
第3実施形態では、インナーハウジング20において貫通孔23の根元孔23bの横断面形状が拡張部G2を有することで、インナー端子50の接合部52において最大高さtの値をより大きく設定する場合を例示した。これに対して、第5実施形態に係るコネクタ1では、第3実施形態におけるインナーハウジング20の形状に対応し得るように、接合部52の底壁部52aの形状を更に改変したインナー端子80を採用する。
【0099】
図12A及び図12Bは、第5実施形態におけるインナー端子80を示す図である。図12Aは、インナー端子80の斜視図である。図12Bは、インナー端子80の延伸方向に沿って接合部82側を見たときのインナー端子80の背面図である。
【0100】
第3実施形態と同様に、本実施形態に係るコネクタ1では、互いに同一形状である第1端子80aと第2端子80bとの2つのインナー端子80が存在する。インナー端子80は、接続部81と、接合部82と、連結部83とを有する。インナー端子80では、接合部82の形状と、接合部82の形状に伴う連結部83の形状とが、第3実施形態における接合部52と連結部53との形状と相違する。接続部81の形状は、第3実施形態における接続部51の形状と同一である。
【0101】
接合部82は、底壁部82aと、第1側壁部82bと、第2側壁部82cとを有する。
【0102】
底壁部82aでは、接合面82dの側に、X方向に対応する延伸方向に沿う曲げ線82hが予め設定される。そして、底壁部82aは、曲げ線82hを基準として対称に折り曲げられた曲げ部である。接合面82dでの曲げ角度θは、鈍角であり、具体的には、例えば120°であってもよい。
【0103】
第1側壁部82b及び第2側壁部82cは、底壁部82aのY方向に対応する幅方向での両端から折り返し部82jを介して接合面82dが開放される側に突出する。折り返し部82jは、底壁部82aから当該底壁部82aの凸形状が向かう方向に折れ曲がった後、反対側に第1側壁部82b等を折り返す。ここで、底壁部82aの凸形状が向かう方向は、Z方向とは反対側に向かう方向である。一方、折り返し部82jによって折り返された第1側壁部82b等が向かう方向は、Z方向に沿う方向である。また、Z方向に対応する高さ方向では、折り返し部82jの下端は、底壁部82aの下端と同等の位置にあってもよい。第1側壁部82b及び第2側壁部82cは、それぞれ、底壁部82aを基準として互いに対称で、かつ、互いに平行である。つまり、本実施形態においても、第1側壁部82b及び第2側壁部82cは、各々同一形状の平板状であり、幅方向で対向する。
【0104】
図13は、インナー端子80のいずれかの接合部82に接合されている第1芯線102a及び第2芯線102bが存在する横断面で切断された、第5実施形態に係るコネクタ1の断面図である。なお、図13は、第3実施形態に関する図8に対応して描画されている。また、第5実施形態において、第3実施形態に関する説明で用いられた各要素に対応する要素については、同一の符号を付し、適宜詳説を省略する場合がある。
【0105】
本実施形態では、高さ方向での接合部82の高さは、底壁部82a又は折り返し部82jの下端から第1側壁部82b又は第2側壁部82cの先端部82gまでの最大高さtとみなし得る。なお、第1側壁部82b及び第2側壁部82cのそれぞれの幅方向での厚みは、例えば、底壁部82aの厚みと同等であってもよい。
【0106】
また、上記実施形態と同様に、例えば、第1芯線102aの中心C2から接合部82において第1芯線102aから最も離れた最大離隔部までの距離を、距離Dと定義し得る。本実施形態では、最大隔離部は、先端部82gの一部である。そして、底壁部82aの幅Wは、距離Dと根元孔23bの断面半径rとが同一値となる場合の幅Wの寸法値よりも大きく設定される。
【0107】
このように、第5実施形態に係るコネクタ1では、接合部82は、底壁部82aを基準として互いに対称で、かつ、互いに平行な、2つの平板状の側壁部を含んでもよい。底壁部82aは、接合面82dでの曲げ角度θが鈍角となるように、延伸方向に沿う曲げ線82hを基準として対称に折り曲げられた曲げ部であってもよい。2つの側壁部は、それぞれ、底壁部82aの幅方向での両端から折り返し部82jを介して接合面82dが開放される側に突出してもよい。
【0108】
ここで、接合部82に含まれる2つの側壁部は、上記例示での第1側壁部82b及び第2側壁部82cに相当する。
【0109】
第5実施形態に係るコネクタ1によれば、インナー端子80の接合部82が底壁部82aに加えて第1側壁部82b及び第2側壁部82cを有するので、第3実施形態に係るコネクタ1と同様の効果を奏する。
【0110】
また、接合部82における底壁部82aは、第4実施形態におけるインナー端子70の接合部72の底壁部72aにある曲面72iと同様の曲面を含む曲げ部であるので、インナー端子70を採用したコネクタ1と同等の効果を奏する。
【0111】
なお、本実施形態においても、高さ方向での接合部82の最大高さtは、接合部82の貫通孔23への収容が許容される範囲での最大値に設定されてもよい。
【0112】
このコネクタ1によれば、その構造上、接合部82の最大高さtの値が、設定され得る中で最も大きく設定されることになるため、より高い伝送性能を得ることができる。
【0113】
また、本実施形態においても、端子金具としてのインナー端子80の延伸方向では、側壁部の長さLは、底壁部82aの長さと同一であってもよい。
【0114】
このコネクタ1によれば、接合部82において側壁部をより大きく設定することができるとともに、端子金具の製造時に端子金具の形状を一定に維持しやすくなるため、製造された端子金具ごとにインピーダンスの値を安定させやすくなる点で有利となり得る。
【0115】
以上、各実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 コネクタ
10,50,60,70,80 インナー端子
10a,50a,60a,70a,80a 第1端子
10b,50b,60b,70b,80b 第2端子
12,52,62,72,82 接合部
12a,52a,62a,72a,82a 底壁部
12d,52d,62d,72d,82d 接合面
12f,52f 最大離隔部
20 インナーハウジング
23 貫通孔
23b 根元孔
52b,62b,72b,82b 第1側壁部
52c,62c,72c,82c 第2側壁部
62g,72g,82g 先端部
62h,72h,82h 曲げ線
82j 折り返し部
100 電線
101a 第1配線
101b 第2配線
102a 第1芯線
102b 第2芯線
C2 芯線の中心
D 芯線の中心から底壁部の最大離隔部までの距離
G1 円形部
G2 拡張部
L 第1側壁部及び第2側壁部の長さ
W 底壁部の幅
r 根元孔の断面半径
t 接合部の最大高さ
θ 曲げ角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13