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特開2024-153555接合ラインの強度検証のための可変プラズマパルス発生器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153555
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】接合ラインの強度検証のための可変プラズマパルス発生器
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/34 20060101AFI20241022BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G01N29/34
G01N29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024039591
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】18/301,391
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(74)【代理人】
【識別番号】100228706
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 皓太
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ サファイ
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB07
2G047CA00
2G047GF06
(57)【要約】
【課題】
レーザを用いずに接合部を評価するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】
接合部(193)を評価するためのシステム及び方法は、調節式の液中プラズマプローブ(181、182)を用いて、液体を入れた第1容器(110)内に圧縮波を発生させる。当該システムは、第1容器(110)を検査対象の接合構造体(190)に当てて保持するために内部に真空が引かれる第2容器(140)をさらに含む。圧縮波は、液体から接合構造体(190)内に伝播するように指向され、検査対象の接合部(193)に既知の力を加える。調節式液中プラズマプローブ(181、182)によれば、接合構造体(190)において圧縮波の強度を増減することが可能である。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部を評価するためのシステムであって、
1つ又は複数の側壁と端壁とを含む第1容器であって、前記第1容器に液体を充填するための供給源に接続するように構成された液体ポートと、検査対象の接合構造体に当てて配置するように構成された開口部とを含む第1容器と、
前記第1容器の前記開口部を囲む第2容器であって、前記第1容器の前記開口部と前記第2容器の開口部とが検査対象の前記接合構造体に隣接している際に前記第1容器の外面と前記第2容器の内面との間の空間に真空を引くために真空システムに接続するように構成された真空ポートを含む第2容器と、
第1調節式マウントに配置された第1電極及び第2電極と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記第1容器内に配置されており、
前記第1電極と前記第2電極とは、ギャップ長を隔てて離間しており、
前記第1調節式マウントは、前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長を変更するように構成されており、
前記システムは、前記第1電極及び前記第2電極に接続された電源を備え、前記電源は、圧縮波を発生させるために、前記第1電極と前記第2電極との間にプラズマを生成すべく、電気パルスを供給するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記第1調節式マウントは、前記ギャップ長を2mm~20mmの範囲で変更する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1調節式マウントが配置された第2調節式マウントをさらに備え、前記第2調節式マウントは、前記第1容器の前記開口部の端部と前記第1及び第2電極との間の距離を変更するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2調節式マウントは、前記第1容器の前記開口部と前記第1及び第2電極との間の前記距離を、2cm~10cmの範囲で変更し、前記ギャップ長、及び、前記第1容器の前記開口部と前記第1及び第2電極との間の前記距離は、100ns~300nsのパルス幅と5ジュール~40ジュールのエネルギーとを有する圧縮波を発生させる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであり、前記電源によって供給される前記電気パルスは、前記プラズマを発生させるために、前記アノードと前記カソードとの間の前記ギャップ長間の液体を橋絡する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電源は、前記第1及び第2電極に40kV~60kVを供給する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ギャップ長を手動で又は電子的に変更するコントローラをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1容器の開口部の前記端部と前記第1及び第2電極との間の前記距離を、手動で又は電子的に変更するコントローラをさらに備え、前記コントローラは、電子コントローラであり、前記第1容器及び前記第2容器の外部に配置されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
接合部の評価方法であって、
第1電極と第2電極との間のギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の接合構造体との間の距離、又は前記ギャップ長と前記距離との両方を調節し、
第1容器の開口部を検査対象の前記接合構造体に当てて配置し、
前記第1容器の外面と、前記第1容器を囲む第2容器の内面との間に真空を引き、前記真空を引くことにより、前記第1容器を前記接合構造体に対して密閉し、
前記第1容器に液体を充填し、前記液体は、前記開口部で検査対象の前記接合構造体と接触し、
前記液体内に圧縮波を発生させるためにプラズマを形成すべく、前記液体内で前記第1電極と前記第2電極との間に火花放電を起こし、前記圧縮波は、前記液体から前記開口部を通って前記接合構造体内に伝播して、前記接合構造体内の接合部に力を加え、
前記接合構造体の前記接合部を検査する、方法。
【請求項10】
前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の前記接合構造体との間の前記距離、又は前記ギャップ長と前記距離との両方を調節することにより、前記接合構造体内の前記接合部に加わる前記力を閾値レベルに調節し、前記閾値レベルは、公称故障率50%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記液体内で火花放電を起こすことは、前記第1及び第2電極に、40kV~60kVを供給することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長は、前記液体内に100ns~300nsの範囲のパルス幅を有する圧縮波を発生させるように調節され、且つ/又は、前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の前記接合構造体との間の前記距離、又は前記ギャップ長と前記距離との両方を調節することにより、前記接合部を破壊するのに必要な力の30%~70%の力を前記接合部に加える圧縮波を発生させる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の前記接合構造体との間の前記距離、又は前記ギャップ長と前記距離との両方を調節することは、前記第1容器を前記接合構造体に対して密閉すべく、前記第1容器の外面と前記第1容器を囲む第2容器の内面との間に真空を引いた後に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の前記接合構造体との間の前記距離、又は前記ギャップ長と前記距離との両方を調節することは、前記接合構造体内の前記接合部を検査した後に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記接合構造体は、金属と複合材との接着接合部、又は、複合材と複合材との接着接合部を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
接合部を評価するためのシステムであって、
検査対象の接合構造体に当てて配置するように構成された開口部を含む第1容器と、
前記第1容器の前記開口部を囲む第2容器と、
第1調節式マウントに配置された第1電極及び第2電極と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記第1容器内に配置されており、
前記第1電極と前記第2電極とは、ギャップ長を隔てて離間しており、
前記第1調節式マウントは、前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長を変更するように構成されており、
前記システムは、前記第1調節式マウントが配置された第2調節式マウントを備え、前記第2調節式マウントは、前記第1容器の前記開口部の端部と前記第1及び第2電極との間の距離を変更するように構成されており、
前記システムは、前記第1電極及び前記第2電極に接続された電源を備え、前記電源は、圧縮波を発生させるために、前記第1電極と前記第2電極との間にプラズマを生成すべく、電気パルスを供給するように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合構造体内の接合部を評価するためのシステム及び方法に関する。具体的には、本開示は、圧縮波を発生させる調節式液中プラズマプローブを用いて、接合構造体内の接合部を評価するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ接合検査(LBI:laser bond inspection)は、構造体内の接着接合部(adhesive bonds)の品質の評価に用いることができる検査方法である。レーザ接合検査の際は、レーザーパルスを用いて犠牲層をアブレーションしてプラズマを生成し、構造物に圧縮波を発生させる。構造体は、例えば、CFRP(炭素繊維強化ポリマー)とCFRPとの接合部又はCFRPと金属との接合部を含む複合構造体とすることができる。圧縮波は、機械的に接着接合部への応力負荷を生み出す。この負荷にさらされた際に、弱い接合部は壊れるが、強い接合部は壊れない。このようにして、弱い接合部のある構造体を特定し、修理するか、廃棄する。しかしながら、現在のLBIシステムは、大型で高価なレーザと電源とが必要である。従って、レーザを使用しない、改良された接合部評価システム及び評価方法が望まれている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示のように、接合部を評価するためのシステムは、1つ又は複数の側壁と端壁とを含む第1容器であって、前記第1容器に液体を充填するための供給源に接続するように構成された液体ポートと、検査対象の接合構造体に当てて配置するように構成された開口部とを含む第1容器と、前記第1容器の前記開口部を囲む第2容器であって、前記第1容器の前記開口部と前記第2容器の開口部とが検査対象の前記接合構造体に隣接している際に前記第1容器の外面と前記第2容器の内面との間の空間に真空を引くために真空システムに接続するように構成された真空ポートを含む第2容器とを備える。当該システムは、第1調節式マウントに配置された第1電極及び第2電極をさらに備え、前記第1電極及び前記第2電極は、前記第1容器内に配置されており、前記第1電極と前記第2電極とは、ギャップ長を隔てて離間しており、前記第1調節式マウントは、前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長を変更するように構成されている。前記システムは、前記第1電極及び前記第2電極に接続された電源をさらに備え、前記電源は、圧縮波を発生させるために、前記第1電極と前記第2電極との間にプラズマを生成すべく、電気パルスを供給するように構成されている。
【0004】
本明細書に開示のように、接合部の評価方法は、第1電極と第2電極との間のギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の接合構造体との間の距離、又はこれらの両方を調節し、第1容器の開口部を検査対象の前記接合構造体に当てて配置し、前記第1容器の外面と、前記第1容器を囲む第2容器の内面との間に真空を引き、前記真空を引くことにより、前記第1容器を前記接合構造体に対して密閉する。当該方法は、さらに、前記第1容器に液体を充填し、前記液体は、前記開口部で検査対象の前記接合構造体と接触し、前記液体内に圧縮波を発生させるためにプラズマを形成すべく、前記液体内で前記第1電極と前記第2電極との間に火花放電を起こし、前記圧縮波は、前記液体から前記開口部を通って前記接合構造体内に伝播して、前記接合構造体内の接合部に力を加え、前記接合構造体の前記接合部を検査する。
【0005】
本明細書に開示のように、接合部を評価するための他のシステムは、検査対象の接合構造体に当てて配置するように構成された開口部を含む第1容器と、前記第1容器の前記開口部を囲む第2容器とを備える。当該システムは、第1調節式マウントに配置された第1電極及び第2電極をさらに備え、前記第1電極及び前記第2電極は、前記第1容器内に配置されており、前記第1電極と前記第2電極とは、ギャップ長を隔てて離間しており、前記第1調節式マウントは、前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長を変更するように構成されている。当該システムは、前記第1調節式マウントが配置された第2調節式マウントも備え、前記第2調節式マウントは、前記第1容器の前記開口部の端部と前記第1及び第2電極との間の距離を変更するように構成されており、前記第1電極及び前記第2電極に接続された電源も備え、前記電源は、圧縮波を発生させるために、前記第1電極と前記第2電極との間にプラズマを生成すべく、電気パルスを供給するように構成されている。
【0006】
なお、上述の概括的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも例示的且つ説明的なものに過ぎず、請求の範囲に記載している本開示を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するものであり、本開示の態様を例示するとともに、記載と併せて本開示の原理を説明する役割を果たす。なお、図の一部は簡略化させており、厳密な構造の正確性、詳細、スケールを維持することではなく、理解を容易にすることを目的として描いている。
【0008】
図1A】一実施態様による、調節式液中プラズマプローブを用いて接合構造体内の接合部を評価するためのシステムの概略断面図である。
図1B】別の実施態様による、調節式液中プラズマプローブを用いて接合構造体内の接合部を評価するためのシステムの概略端面図である。
図1C】別の実施態様による、調節式液中プラズマプローブを用いて湾曲表面を有する接合構造体内の接合部を評価するためのシステムの概略側面図である。
図1D】別の実施態様による、接合構造体内の接合部を評価するためのシステムの一部を示す概略図であり、調節式液中プラズマプローブに注目した図である。
図1E】一実施態様による、調節式液中プラズマプローブを用いて接合構造体内の接着接合部を評価するためのシステムの機能ブロック図である。
図2】別の実施態様による、調節式液中プラズマプローブを用いて接合構造体内の接着接合部を評価するためのシステムの概略断面図である。
図3】一実施態様による、調節式液中プラズマプローブを用いて構造体内の接合部を評価する方法のフローチャートである。
図4】一実施態様による、調節式液中プラズマプローブを用いて接合構造体内の接合部を評価するためのシステムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本開示を詳しく説明する。本開示の実施例は、添付図面に示している。図面では、同一の要素は、全体を通して同様の参照数字で示している。以下の記載では、その一部を構成する添付図面を参照する。添付図面には、本開示を実施するための具体的な実施例を、例示として示している。従って、以下の記載は、単に例示的なものである。
【0010】
本開示は、調節式のプラズマプローブを用いて圧縮波を発生させ、構造体内の隣接する2つの層の間の接合強度パラメータを評価する検査システム及び検査方法に関する。圧縮波は、応力波又は縦波としても知られており、本明細書でもそのように称する場合がある。当該検査システムは、液体を入れる第1容器を含み、液体内のプラズマが、圧縮波を発生させる。以下に詳述するように、この圧縮波は、液体から構造体内に伝播し、接合部に機械的に応力を加える。この接合部は、例えば、複合材内における、金属と複合材料といった2つの異なる材料間、あるいは同じ複合材料の2つの層間の接合部とすることができる。圧縮波は、LBIと同じように接合部に応力を加えるが、プラズマを用いる本開示の検査システム及び検査方法は、LBIで必要な高価なレーザとその電源を必要とせず、従って、接合検査用の装置のサイズとコストを低減することができる。さらに、このような小型化によって携帯性が向上することで、例えば、ASTM規格D5868-繊維強化プラスチック(FRP)接合のラップせん断接着、ASTM規格D1002-シングルラップジョイント接着接合の見かけせん断強さ、ASTM規格D3167-接着剤のフローティングローラー剥離抵抗の標準試験方法に比べて、より広範囲の形状とサイズの接合構造体を、より簡単且つ効率的に検査することが可能になる。調節式の液中プラズマプローブによって圧縮波のパルス幅とパルス強度を制御し変更できることにより、様々な種類、厚み、材料の接合部に、同じ検査チャンバを用いることが可能になる。
【0011】
図1図1Eは、一実施態様による、調節式液中プラズマプローブ187を用いて接合構造体内の接合部を評価するためのシステム100の概略図を示している。図1Aの断面概略図に示すように、システム100は、端壁112と、1つ又は複数の側壁114と、端壁112の反対側の開口部130とを有する第1容器110を含む。開口部130は、端壁112の反対側の壁(例えば端壁)の全体、又は端壁112の反対側の壁の一部とすることができる。第1容器110は、液体ポート120をさらに含み、これを液体供給源に接続すると、第1容器に液体を充填することができる。以下に詳述するように、第1容器110は、液体を収容する役割を行い、開口部130があることで、開口部130の端部で検査対象の接合構造体に液体が接触することが可能になる。図1Aに示した接合構造体は、例えば、以下に詳述するように、接合部によって互いに接合された第1構成部材(例えば第1の層)と第2構成部材(例えば第2の層)とで形成された構造体とすることができる。
【0012】
システム100は、1つ又は複数の側壁144と、端壁142と、開口部150と、真空システムに接続可能な真空ポート170とを有する第2容器140も含む。図1Aに示すように、第2容器140は、第1容器110の開口部130を囲んでおり、例えば、第1容器を完全に取り囲んでいる。これにより、検査対象の接合構造体190にシステム100を接触させて位置させた際に、第1容器110の外面と第2容器140の内面との間の空間160に真空を引くことが可能となる。
【0013】
図1Bは、システム100の端面図を示しており、具体的には、検査対象の接合構造体と接する開口部を含む端部を示す図である。検査の際には、接合構造体を、第1容器110の開口部130の開口部端部131と、第2容器140の開口部150とにかぶせて位置させる。第1容器110には、液体ポート120を介して液体が充填され、空間160内には、真空ポート170を介して真空が引かれる。第1容器110内の液体の漏出を防止するとともに、空間160内の真空引きを容易にするために、任意の構成として、第1容器110の開口部130に隣接する側壁114の端部にシール材119を設けることもできる。同様に、任意の構成として、第2容器140の開口部150に隣接する側壁144の端部に、封止材149を設けることもできる。なお、円筒形として示しているが、他の形状を採用することもでき、特に、検査対象の構造体に圧縮波を集中させる形状を採用することができることは、当業者なら理解するであろう。
【0014】
開口部130における側壁114の端部は、平らなものとして描いており、これによれば、表面が平坦な接合構造体190内の接合部の検査が可能となる。第1容器110及び第2容器140の側壁の端部を、検査対象の構造体の表面の形状又は曲率と一致する形状又は曲率を有するように適合させることによって、湾曲形状又はその他の特定形状の表面を有する検査対象構造体も、検査することができる。図1Cに示すように、接合部193を有する接合構造体196は、特定形状又は湾曲形状の表面197を有することができ、第2容器140の側壁144の端部は、この接合構造体196の表面197の形状又は曲率と一致する形状又は曲率を有するものとすることができる。同様に、第1容器110の側壁114の端部も、この検査対象の接合構造体196の表面197の形状又は曲率と一致する形状又は曲率を有するものとすることができる。側壁の端部が検査対象構造体の表面の形状又は曲率と一致することによって、漏出しないように第1容器110に液体を充填することが可能となるとともに、第1容器110と第2容器140との間の空間160に真空を引くことが可能となる。任意の構成として、検査対象構造体の表面の形状又は曲率に一致する形状及び/又は曲率を有するシール材119及び149によって、これを実現することもできる。なお、特定形状又は湾曲形状の表面197は、第1容器110内の液体から接合構造体196への圧縮波の伝播に影響を及ぼす場合があり、圧縮波のパルス振幅及び/又はパルス幅の調節が必要になる場合があることは、当業者なら理解するであろう。
【0015】
システム100は、調節式の液中プラズマプローブ187をさらに含み、当該プローブは、第1容器110内に配置され且つ電源185に接続された第1電極181及び第2電極182を有する。ここで、第1電極181と第2電極182とは、一対の電極であり、例えば、ギャップ長(gap length)を隔てて離間したアノードとカソードである。第1電極181及び第2電極182は、液体中で発生した圧縮波が検査対象の構造体に向かって伝播するように配置される。例えば、第1電極181及び第2電極182は、圧縮波が開口部130を通って検査対象の接合構造体190内に伝播するように、第1容器110の開口部130の正面に位置させることができる。システム100は、第1電極181と第2電極182との間のギャップ長、検査対象構造体190と第1電極181及び第2電極182との間の距離、又はこれらの両方を調節するためのコントローラ186も含む。
【0016】
電源185は、第1電極181と第2電極182との間に火花放電を引き起こすために電気パルスを供給する。この電気パルスは、接合部検査のための大きな振幅と短いパルス幅を有する圧縮波を発生させ、例えば、LBIシステムが発生させる圧縮波に匹敵する大きな振幅と短いパルス幅を有する圧縮波を発生させる。電源185は、第1電極181及び第2電極182に、約40kV~約60kVを供給することができ、例えば、一群又は複数群のコンデンサとすることができる。この一群又は複数群のコンデンサは、時間遅延機能を備えた可変コンデンサとすることができる。電源185は、一対の電極180に所望の電圧でアークを発生させるために、変圧器を介して電圧(及び例えば電気パルス)を供給することもできる。変圧器の例としては、発振変圧器(oscillator transformer)及びフライバックコンバータ(flyback transformer)があるが、これらに限定されない。電源185は、ヴァン・デ・グラーフ・ベルト式高電圧静電気発生装置(Van de Graaff belt high voltage electrostatic generator)又はその他の電気パルス供給源とすることができる。
【0017】
図1Dは、調節式液中プラズマプローブ187をさらに詳しく説明するために、システム100の一部を示した図である。調節式液中プラズマプローブ187は、第1電極181、第2電極182、第1調節式マウント188、第2調節式マウント189、及び、コントローラ186を含む。
【0018】
調節式液中プラズマプローブ187は、第1容器110内に配置された第1調節式マウント188を含み、このマウントは、第2調節式マウント189に接続されている。図1Dに示すように、第1調節式マウント188は、第1電極181と第2電極182との間のギャップ長Lを調節する。ギャップ長Lを調節することによって、圧縮波のパルス幅を制御することができる。ギャップ長Lを短くすることによって、圧縮波のパルス幅を狭くすることができる。また、ギャップ長Lを長くすることによって、圧縮波のパルス幅を広くすることができる。ギャップ長は、約2mm~約20mmの範囲で調節可能である。第1調節式マウントの例としては、PI L.P.(マサチューセッツ州オーバーン)のリニア移動ステージ及びx-y電動又はスクリュー駆動ステージ、Thompson(バージニア州ラドフォード)のリニアアクチュエータ及びリニアモーションシステム、Queensgate Instruments(英国ケンブリッジ)のピエゾアクチュエータ及びトランスレータがあるが、これらに限定されない。
【0019】
第2調節式マウント189は、図1Aに示すように、第1容器110の端壁112及び第2容器140の端壁142を貫通して、第1調節式マウント188、第1電極181、及び第2電極182を第1容器110内に位置させている。第2調節式マウント189は、手動制御あるいは電子制御によって伸縮する、直線伸張型の位置決め装置とすることができる。第2調節式マウント189は、伸長又は収縮して、接合構造体190から約2cm~約10cmの距離に、第1電極181及び第2電極182を位置させることができる。第2調節式マウントの例としては、Thompson(バージニア州ラドフォード)のネストポスト、リニアモーションシステム、及びリフティングコラム、PI L.P.(マサチューセッツ州オーバーン)の垂直リフトステージ及び多軸ポジショナーがあるが、これらに限定されない。
【0020】
図1Dに示すように、第2調節式マウント189は、第1電極181及び第2電極182を、開口部131の端部から距離Dの位置に位置させる。換言すれば、Dは、接合部193を有する接合構造体190から第1電極181及び第2電極182まで延びている。Dは、約2cm~約10cmとすることができる。第2調節式マウント189を伸長又は収縮させることにより、Dを増大又は減少させて、接合構造体190での圧縮波の強度を制御することができる。例えば、Dを大きくすると、第1電極181及び第2電極182が、接合構造体190からより遠くに移動し、その結果、接合構造体190での圧縮波の強度が低下する。距離Dを小さくすると、第1電極181及び第2電極182が、接合構造体190のより近くに移動し、その結果、接合構造体190での圧縮波の強度が増す。
【0021】
コントローラ186によって、第1調節式マウント188及び第2調節式マウント189の手動制御又は電子制御が可能となる。手動制御のコントローラ186の例としては、第2調節式マウント189に設ける手動ねじ、第1調節式マウント188の支柱に設けるクランプがあるが、これらに限定されない。電子制御のコントローラ186の例としては、リニア移動ステージに接続された電動ドライブを動かすように構成された電子コントローラ、マイクロステージキャリパーとナノメーターアクチュエータ、ピエゾアクチュエータとトランスレータがあるが、これらに限定されない。
【0022】
ギャップ長L及びDを変更することによって、調節式液中プラズマプローブ187によって発生する衝撃波の接合構造体190での強度を制御することができる。これにより、様々な厚みの接合構造体や、様々な材料で形成された接合構造体を、システム100を用いて検査することが可能になる。例えば、より厚みの大きい接合構造体内の接合部を検査するには、ギャップ長Lを大きくし、且つ/又は距離Dを小さくして、より強度が高くパルス幅の広い圧縮波を発生させることができる。また、より厚みの小さい接合構造体を検査するには、ギャップ長Lを小さくし、且つ/又は距離Dを大きくして、より強度が低くパルス幅の狭い圧縮波を発生させることができる。ギャップ長L及び/又は距離Dをさらに変更して圧縮波の強度を制御することで、様々な材料で形成された接合構造体を検査することができ、例えば、このような材料としては、ポリマー、金属、セラミック、炭素繊維強化ポリマーなどの強化複合材料があるが、これらに限定されない。
【0023】
図1Eは、液体内の火花放電を用いて接合構造体内の接合部を評価するためのシステム100の機能ブロック図である。システム100は、接合構造体190に隣接して配置される。真空システム178は、真空ポート170を介して、第2容器140内の空間160に真空を引くことができる。この真空によって、接合構造体190の表面にシステム100が固定され、また、封止材147によって、空間160から真空が失われることが防止される。液体供給源128は、液体ポート120を介して、第1容器110に液体を充填することができる。封止材147は、第1容器110に空隙/空気ポケットが存在し、これが接合構造体190内への圧縮波の伝播に影響を与える事態を回避するために、第1容器110からの液体の漏出を防止することできる。電源185は、第1電極181と第2電極182との間にプラズマを発生させる火花放電をもたらす電気パルスを、調節式液中プラズマプローブ187に供給することができる。この火花放電が、液体から接合構造体190に伝播して、接合部に力を加える圧縮波を発生させる。コントローラ186は、検査対象の接合部の種類、厚み、及び材料に応じて、接合構造体190での圧縮波の強度及び/又はパルス幅を、手動で、又は電子的に変化させることができる。接合部に力を加えた後は、液体供給源128は、第1容器110から液体を除去することができ、真空システム178は、接合構造体190からシステムを外すために、第2容器140から真空を除去することができる。
【0024】
図2は、別の実施態様による接合構造体内の接合部を評価するためのシステム200の断面図を示しており、当該システムでは、第1容器と第2容器とが、共通の側壁及び/又は共通の端壁を有している。システム200は、1つ又は複数の側壁244と、端壁242と、端壁242の反対側の開口部250とを有する第2容器240を含む。第2容器240は、真空システムに接続することで空間260内に真空を引くことができる真空ポート270も含む。システム200は、端壁242と、1つ又は複数の側壁214、244と、端壁242の反対側の開口部230とを有する第1容器210も含む。第1容器210は、液体供給源に接続することで第1容器に液体を充填することができる液体ポート220をさらに含む。第1容器210は、第1容器210に液体を充填した際に、例えば気泡状態などの空気を除去するための空気抜き223を、任意で含むことができる。
【0025】
図2に示すように、第2容器240と第1容器210とは、端壁242を共有している。第2容器240は、側壁244の一部も、第1容器210と共有している。換言すれば、端壁242は、第1容器210と第2容器240の両方の端壁として機能している。同様に、側壁244は、第2容器240の側壁として機能し、側壁244の一部は、第1容器210の側壁としても機能する。
【0026】
検査の際は、接合構造体を、第1容器210の開口部230及び第2容器240の開口部250にかぶせて位置させる。第1容器210には、液体ポート220を介して液体が充填され、空間260内には、真空ポート270を介して真空が引かれる。接合構造体に接触する側壁の端部に任意で配置される封止材は、第1容器210内の液体が流出するのを防止するとともに、空間260内での真空の形成を容易にすることができる。検査対象の接合構造体に応じて、第1電極181と第2電極182との間のギャップ長をコントローラ186で調節して、圧縮波のパルス幅を制御することができる。また、検査対象の接合構造体と第1電極181及び第2電極182との間の距離を、コントローラ186で調節して、圧縮波の強度を制御することもできる。
【0027】
液体に浸漬された第1電極181及び第2電極182に、電源285から電気パルスが供給される。第1電極181と第2電極182との間に形成される電気アークが、液体内にプラズマを発生させ、このプラズマが、第1容器210の開口部230を通って接合構造体に向かう圧縮波を発生させる。
【0028】
図3は、一実施態様による、構造体内の接合部を評価する方法300を示すフローチャートである。
【0029】
方法300の工程305において、圧縮波のパルス幅を制御するために、第1電極と第2電極との間のギャップ長を、任意で調節することができる。また、圧縮波の強度を制御するために、検査対象の構造体と第1及び第2電極との間の距離も、任意で調節することができる。このような任意の調節は、手動で、又は電子的に行うことができる。本開示によれば、圧縮波によって接合部に閾値レベルの力が加わるように、第1電極と第2電極との間のギャップ長を調節することができ、且つ/又は、検査対象の構造体と第1及び第2電極との間の距離を調節するこことができる。例えば、この閾値レベルは、事前に決定しルックアップテーブルに記録された公称故障率(nominal failure rate)50パーセントとすることができる。結合部の公称故障率は、一般的に、破壊検査によって事前に決定される。例えば、一般的に、特定の厚みと材料とを有する同種のCFRP結合部の複数の剥離試験を行うことで、公称故障率が決定され、これがルックアップテーブルに記録される。このルックアップテーブルには、厚み及び/又は材料の異なる様々な種類の接合部の公称故障率を含めることができる。方法300の工程305では、検査対象である特定の接合部の公称故障率を、ルックアップテーブルを参照することで把握することができ、閾値レベルを、当該公称故障率の50%に設定することができる。換言すれば、ギャップ長及び/又は検査対象構造体と第1及び第2電極との間の距離は、この特定の検査対象接合部の公称故障率の50%の力を圧縮波が加えるように、調節することができる。
【0030】
方法300の工程310において、本明細書に開示の接合部を評価するためのシステムを、検査対象構造体に押し当てて配置することができる。図4は、本明細書に記載のシステムの動作を概略的に示しているが、同図を参照すると、接合部を評価するためのシステム400は、検査対象の構造体490に押し当てて配置することができる。構造体490は、例えば、接合部493で接着接合された第1部材492と第2部材494とで形成された構造体とすることができる。第1部材492及び第2部材494は、例えば、複合構造体内の層とすることができる。なお、より多くの部材が接合されていてもよいが、簡潔化のために2つの部材のみを示している。いくつかの例では、第1部材492及び第2部材494は、少なくとも一部がCFRPで形成されている。他の例では、第1部材492は、少なくとも一部がCFRPで形成され、第2部材494は、少なくとも一部が金属で形成されている。接合部493は、樹脂、接着材、又はエポキシ(例えばボロンエポキシ又はカーボンエポキシ)などの接合材料を含むものとすることができる。
【0031】
システム400は、第1容器410と第2容器440の開口部が構造体490でふさがれるように、構造体490に押し当てて配置される。換言すれば、構造体490は、液体を第1容器410に充填し且つ構造体490の表面に液体を接触させることができるように、第1容器410の開口部をふさぐ。構造体490はまた、第2容器440内に、例えば、第2容器440の側壁の内側と第1容器410の側壁の外側との間の空間460に真空を引くことができるように、第2容器440の開口部も塞ぐ。
【0032】
方法300の工程320において、第2容器440内に真空を引く。図4を参照すると、真空システムに接続された真空ポート470を介して、第2容器440の空間460に真空を引く。この真空により、第1容器410及び第2容器440が構造体490に当たって保持されて、第1容器410内に水密チャンバが形成されるとともに、検査中に、例えば、圧縮波が発生している際に、システム400が動くことが防止される。また、この真空により、システム400を様々な配向に配置することが可能になり、例えば構造体490が垂直あるいは傾斜した検査対象面を含む場合に、この真空によってシステム400を構造体に押し当てて保持することができる。真空引きを補助するとともに、この真空を維持し、且つ/又は液体の漏出を防止するために、開口部に隣接する側壁の端部と構造体490との間に、封止材、シーリング剤、又はガスケットを配置することができる。さらに、この真空により、第1容器410の開口部を様々な配向にした状態でシステム400を位置させることができ、例えば、開口部を、図1A及び図2に示すような上向き、図4に示すような下向き、又は任意の角度をなす横向きにすることができる。
【0033】
方法300の工程330において、第1容器に液体を充填する。図4を参照すると、液体供給源に接続された液体ポート420を介して、第1容器410に液体425が充填される。液体425は、例えば脱イオン水(deionized water)などの水、又は、鉱油もしくは非導電性油などの油とすることができる。液体425は、液体425内の火花放電によって発生する圧縮波を発生させ、伝播させる媒体として機能する。第1容器410には、任意で、最大約100psi、例えば約5~約90psi、又は約10~約75psiの圧力まで液体を充填することができる。第1容器410内の圧力は、方法300における後述の工程340で発生する圧縮波の振幅を増大させることができる。システム400はまた、容器410の液体充填と液体排出の速度を上げるために、且つ/又は、プラズマによる液体の分解による液体供給源の汚染を防止するために、例えば第2液体ポート421などの追加の液体ポートを任意で含むこともできる。システム400はまた、例えば気泡などの空気を容器410から除去できるように構成された空気抜き423を、任意で含むことができる。システム400によって発生する応力波に耐えられるバルブを用いることで、空気抜き423、液体ポート420、412、及び/又は真空ポート470において、システムを閉止することができる。好適なバルブの例としては、差動弁や機械式バルブがあるが、これらに限定されない。
【0034】
方法300の工程340において、火花放電を引き起こすために、第1容器内の液体に浸漬された一対の電極に電気パルスを送る。図4を参照すると、調節式液中プラズマプローブ487は、第1電極481及び第2電極482を含む。第1電極481及び第2電極482は、これらの電極間のギャップ長を増減可能な第1マウント488に配置されている。第1マウント488は、検査対象の接合構造体490との間の距離を増減可能な第2調節式マウント189に配置されている。第1電極481及び第2電極482は、第1容器410内で液体425に浸漬されている。
【0035】
電気パルスは、電源485によって供給され、例えば、一群のコンデンサ、電圧誘導源、又は電圧スイッチング電源が、液体でプラズマを形成可能な電圧を供給し、このプラズマが、接合部検査用の高振幅、短波長の圧縮波を発生させる。この高振幅、短波長の圧縮波は、約100ns~約300nsのパルス幅と、約5ジュール~約40ジュールのエネルギーを有するものとすることができる。この高振幅、短波長の圧縮波は、さらに、LBI検査の際に発生させる圧縮波に匹敵するものとすることができる。電源485は、一対の第1電極481及び第2電極482に約40kV~約60kVを供給することで、液体中にプラズマを発生させ、これにより、約100ns~約300nsの持続時間又はパルス幅と約5ジュール~約40ジュールのエネルギーとを有する圧縮波を発生させることができる。
【0036】
特定の理論に縛られることは望まないが、電気パルスが一対の電極に伝達されると、液体内の一対の電極間のギャップ長を橋絡する高強度の電界が発生すると考えられている。その結果、液体分子がイオン化し、ガス状のプラズマが形成される。プラズマによって生成され、液体によって対抗される高温と高圧により、圧縮波などの音波が発生し、これが、液体の密度を変化させるのに十分な振幅で、外方に伝播する。
【0037】
プラズマによって液体425内に発生する圧縮波は、液体を通って構造体490の第1部材492内に伝播する。圧縮波は、第1部材492を通って伝播し、接合部493に力を加える。種々の実施態様において、満足のいく品質/合格品質の結合部に損傷を与えるか、又はこれを破壊するのに必要な力は、本開示の方法を実行する前に把握しておくことができる。これにより、上記の力を、所定の力とすることができ、LBI又は層剥離(peel ply)による接着接合部試験と同様に、例えば、接合部493を破壊するのに必要な力の約30%~約70%(例えば約50%)とすることができる。圧縮波によって加えられる当該所定の力は、例えば、電極間のギャップ長、電気パルスのサイズ及び幅、第1容器のサイズ及び形状、及び/又は、容器内の液体によって制御される。この圧縮波が第1部材492の表面、第2部材494の表面、及び/又は接合部493によって反射された後に、反射圧縮波によって、接合部493にさらに力が加わることもあり得る。上記所定の力は、例えば、レーザ接合検査において所定の力を設定するのと同様の方法で、層剥離検査に基づいて決定することができる。
【0038】
方法300の工程340で発生した圧縮波によっては、圧縮波の強度を変更することが望ましい場合がある。方法300の工程345では、圧縮波の強度を増減するために、第1電極と第2電極との間のギャップ長を任意で調節することができ、且つ/又は、構造体490と第1及び第2電極との間の距離を調節することができる。このような任意の調節は、コントローラ486によって、手動で、又は電子的に行うことができる。
【0039】
方法300の工程350において、接合部を検査することができる。例えば、接合部493は、非破壊検査(NDI)システムで検査することができ、非破壊検査システムの例としては、超音波イメージングシステム又は超音波検査システムがあるが、これらに限定されない。この検査では、圧縮波及び/又は構造体の背面で反射された反射圧縮波に反応して起こる接合部の不具合及び/又は損傷を検出する。この検査によって、接合部493が破損又は破壊されていることが判明した場合、この接合部の品質は不良であると判定される。(すなわち、接合部は検査を通過しない。)この検査によって、接合部493(例えば接合部を形成する材料)が破損又は破壊されていないことが判明した場合、この接合部の品質は良好であると判定される。(すなわち、接合部は検査を通過する。)接合部のこのような検査は、LBI及びASTM D5528-13-一方向繊維強化ポリマーマトリックス複合材料のモード1層間破壊靭性の標準試験方法による検査に匹敵する。代替の工程又は追加の工程を行ってもよい。
【0040】
本開示のシステム及び方法は、機械的に加える応力を用いて接合部を引き離す層剥離試験のような破壊検査に取って代わることができる。本開示のシステム及び方法はまた、高価且つ大型のレーザ/電源を用いるとともに、圧縮波を発生させるのにアブレーション用の犠牲材料がさらに必要なLBI試験に取って代わることもできる。
【0041】
さらに、本開示は、以下の付記による実施例を含む。
【0042】
付記1. 接合部を評価するためのシステムであって、1つ又は複数の側壁と端壁とを含む第1容器であって、前記第1容器に液体を充填するための供給源に接続するように構成された液体ポートと、検査対象の接合構造体に当てて配置するように構成された開口部とを含む第1容器と、前記第1容器の前記開口部を囲む第2容器であって、前記第1容器の前記開口部と前記第2容器の開口部とが検査対象の前記接合構造体に隣接している際に前記第1容器の外面と前記第2容器の内面との間の空間に真空を引くために真空システムに接続するように構成された真空ポートを含む第2容器と、第1調節式マウントに配置された第1電極及び第2電極と、を備え、前記第1電極及び前記第2電極は、前記第1容器内に配置されており、前記第1電極と前記第2電極とは、ギャップ長を隔てて離間しており、前記第1調節式マウントは、前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長を変更するように構成されており、前記システムは、前記第1電極及び前記第2電極に接続された電源を備え、前記電源は、圧縮波を発生させるために、前記第1電極と前記第2電極との間にプラズマを生成すべく、電気パルスを供給するように構成されている、システム。
【0043】
付記2. 前記第1調節式マウントは、前記ギャップ長を約2mm~約20mmの範囲で変更する、付記1に記載のシステム。
【0044】
付記3. 前記第1調節式マウントが配置された第2調節式マウントをさらに含み、前記第2調節式マウントは、前記第1容器の前記開口部の端部と前記第1及び第2電極との間の距離を変更するように構成されている、付記1又は2に記載のシステム。
【0045】
付記4. 前記第2調節式マウントは、前記第1容器の前記開口部と前記第1及び第2電極との間の前記距離を、約2cm~約10cmの範囲で変更する、付記1~3のいずれか1つに記載のシステム。
【0046】
付記5. 前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであり、前記電源によって供給される前記電気パルスは、前記プラズマを発生させるために、前記アノードと前記カソードとの間の前記ギャップ長間の液体を橋絡する、付記1~4のいずれか1つに記載のシステム。
【0047】
付記6. 前記電源は、前記第1及び第2電極に約40kV~約60kVを供給する、付記1~5のいずれか1つに記載のシステム。
【0048】
付記7. 前記ギャップ長を手動で又は電子的に変更するコントローラをさらに含む、付記1~6のいずれか1つに記載のシステム。
【0049】
付記8. 前記第1容器の開口部の前記端部と前記第1及び第2電極との間の前記距離を、手動で又は電子的に変更するコントローラをさらに含む、付記1~7のいずれか1つに記載のシステム。
【0050】
付記9. 前記コントローラは、電子コントローラであり、前記第1容器及び前記第2容器の外部に配置されている、付記1~8のいずれか1つに記載のシステム。
【0051】
付記10. 前記ギャップ長、及び、前記第1容器の前記開口部と前記第1及び第2電極との間の前記距離は、約100ns~約300nsのパルス幅と約5ジュール~約40ジュールのエネルギーとを有する圧縮波を発生させる、付記1~9のいずれか1つに記載のシステム。
【0052】
付記11. 接合部の評価方法であって、第1電極と第2電極との間のギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の接合構造体との間の距離、又はこれらの両方を調節し、第1容器の開口部を検査対象の前記接合構造体に当てて配置し、前記第1容器の外面と、前記第1容器を囲む第2容器の内面との間に真空を引き、前記真空を引くことにより、前記第1容器を前記接合構造体に対して密閉し、前記第1容器に液体を充填し、前記液体は、前記開口部で検査対象の前記接合構造体と接触し、前記液体内に圧縮波を発生させるためにプラズマを形成すべく、前記液体内で前記第1電極と前記第2電極との間に火花放電を起こし、前記圧縮波は前記液体から前記開口部を通って前記接合構造体内に伝播して前記接合構造体内の接合部に力を加え、前記接合構造体の前記接合部を検査する、方法。
【0053】
付記12. 前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の前記接合構造体との間の前記距離、又はこれらの両方を調節することにより、前記接合構造体内の前記接合部に加わる前記力を閾値レベルに調節する、付記11に記載の方法。
【0054】
付記13. 前記閾値レベルは、公称故障率50%である、付記11又は12に記載の方法。
【0055】
付記14. 前記液体内で火花放電を起こすことは、前記第1及び第2電極に、約40kV~約60kVを供給することを含む、付記11~13のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
付記15. 前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長は、前記液体内に約100ns~約300nsの範囲のパルス幅を有する圧縮波を発生させるように調節される、付記11~14のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
付記16. 前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の前記接合構造体との間の前記距離、又はこれらの両方を調節することにより、前記接合部を破壊するのに必要な力の約30%~約70%の力を前記接合部に加える圧縮波を発生させる、付記11~15のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
付記17. 前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の前記接合構造体との間の前記距離、又はこれらの両方を調節することは、前記第1容器を前記接合構造体に対して密閉すべく、前記第1容器の外面と前記第1容器を囲む第2容器の内面との間に真空を引いた後に行われる、付記11~16のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
付記18. 前記第1電極と前記第2電極との間の前記ギャップ長、前記第1及び第2電極と検査対象の前記接合構造体との間の前記距離、又はこれらの両方を調節することは、前記接合構造体内の前記接合部を検査した後に行われる、付記11~17のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
付記19. 前記接合構造体は、金属と複合材との接着接合部、又は、複合材と複合材との接着接合部を含む、付記11~18のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
本開示の広範な範囲を規定する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、具体的な実施例で示している数値は、可能な限り正確に述べている。ただし、あらゆる数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含んでいる。さらに、本明細書で開示されるすべての範囲は、そこに包含されるあらゆる下位範囲を包含するものと理解されるできである。
【0062】
本開示は、1つ又は複数の実施態様に関して例示しているが、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、例示した実施例を代替及び/又は変更することが可能である。さらに、本開示のある特定の特徴は、いくつかの実施態様のうちの1つのみに関して開示されている場合があるが、そのような特徴は、任意の特定の機能にとって望ましく有利である場合には、他の実施態様の1つ又は複数の他の特徴と組み合わせてもよい。本明細書において、「a」、「an」及び「the」という用語は、1つ又は複数の要素又は要素の一部を指す場合がある。また、本明細書において、「第一」および「第二」という用語は、2つの異なる要素又は要素の一部を指す場合がある。本明細書において、例えば「A及びB」のような項目のリストに関して「A及びBの少なくとも一方」という際は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBを意味する。これらの変形形態や他の変形形態が可能であることは、当業者なら理解するであろう。さらに、「含み」、「含んでおり」、「有し」、「有しており」、「具備する」という用語やその変形形態が詳細な説明と請求の範囲のいずれかに用いられている場合、それらの用語は「備える(comprising)」という用語と同様に、包括的であることを意図している。さらに、本明細書における説明及び特許請求の範囲において、「約」という用語は、本明細書に記載の意図した目的に対してプロセス又は構造上の不適合をもたらさない限り、記載の値を多少変更してもよいことを示す。最後に、「例示的」とは、その記載を例として用いていることを示しており、それが理想的であることを意味しているわけではない。
【0063】
なお、上述したものやその他の特徴や機能の変形例、又はその代替例を、他の多くの様々なシステムや用途に組み込むことができる。現在予見されていない、あるいは予期されていない様々な代替、変更、変形、又は改良が、後に当業者によってなされるかもしれないが、これらもまた、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
【外国語明細書】