(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153557
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】表示装置及びヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241022BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241022BHJP
G02B 17/08 20060101ALN20241022BHJP
G02B 25/00 20060101ALN20241022BHJP
G02B 5/30 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
G02B17/08
G02B25/00
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042575
(22)【出願日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】63/459,864
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】マティア シグノレット
(72)【発明者】
【氏名】デビッド モンゴメリー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジョン ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 奈留
(72)【発明者】
【氏名】大王 学
【テーマコード(参考)】
2H087
2H149
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H087KA14
2H087KA23
2H087LA11
2H087NA18
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA45
2H087RA46
2H087TA01
2H087TA04
2H149AA17
2H149BA02
2H149BA04
2H149BA05
2H149DA04
2H149DA12
2H149FA27W
2H149FC07
2H149FC09
2H149FC10
2H199CA25
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA47
2H199CA62
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA67
2H199CA85
2H199CA86
2H249AA04
2H249AA14
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA64
(57)【要約】
【課題】薄型であり、かつ、表示特性及び生産性の両方に優れた表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】表示パネルと、ハーフミラーと、レンズと、左円偏光及び右円偏光のうち、一方の円偏光が入射すると集光させ、他方の円偏光が入射すると発散させるパンチャラトナムベリーレンズと、円偏光選択反射素子と、を観察者側に向かって順に備え、上記レンズの上記円偏光選択反射素子側の面は平面状である表示装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
ハーフミラーと、
レンズと、
左円偏光及び右円偏光のうち、一方の円偏光が入射すると集光させ、他方の円偏光が入射すると発散させるパンチャラトナムベリーレンズと、
円偏光選択反射素子と、を観察者側に向かって順に備え、
前記レンズの前記円偏光選択反射素子側の面は平面状であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記レンズは、第一のレンズ部及び第二のレンズ部を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記レンズは第一のレンズであり、
前記円偏光選択反射素子は第一の円偏光選択反射素子であり、
更に、前記表示パネルと前記ハーフミラーとの間に、前記観察者側に向かって順に、
第二の円偏光選択反射素子と表示パネル側パンチャラトナムベリーレンズと第二のレンズと、を備え、
前記第二のレンズの前記第二の円偏光選択反射素子側の面は平面状であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
更に、前記円偏光選択反射素子と前記観察者との間に、観察者側パンチャラトナムベリーレンズを備えることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の表示装置と、前記観察者の頭部に装着する装着部と、を備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び上記表示装置を備えるヘッドマウントディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)は、観察者(ユーザ)の頭部に装着された状態で観察者が画像を見ることができるように画像を出力する表示装置である。HMDとしては、例えば、両眼を覆い、観察者の視野にはHMDの表示が見えるようにした没入型のHMDがある。没入型のHMDは、外光が遮蔽されて深い没入感が得られ、VR(Virtual Reality)デバイスとも呼ばれる。
【0003】
近年、メタバースと呼ばれるバーチャル空間に注目が集まっており、その世界へアクセスするためのツールとしてVR-HMDは市場の広がりが期待されている。一方で、VR-HMDでは、HMDの筐体が大きいことが指摘されており、VR-HMDを広く普及させるためにコンパクト化が求められている。
【0004】
コンパクト化の手段としては、偏光の特性を利用する折り返し光学系の開発が行われている(特許文献1及び2)。特許文献1及び2では、上記折り返し光学系において虚像を前後に動かす調整手法が開示されている。具体的には、特許文献1及び2では、レンズパワーを調整するためのレンズである可変焦点レンズ(Varifocal lens)が光学系の様々な場所に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/226867号
【特許文献2】国際公開第2020/112965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HMDのコンパクト化を実現する折り返し光学系の表示装置の断面模式図を
図24に示す。
図24は、比較形態の表示装置を模式的に示した分解断面図である。
図24に示すように、比較形態の表示装置100Rは、観察者U側に向かって順に、表示パネル10と、円偏光素子20と、ハーフミラー30と、レンズ40Rと、円偏光選択反射素子50と、を備える。円偏光素子20は、第一の直線偏光板21と第一の1/4波長板22とを含む。比較形態に示される折り返し光学系は、パンケーキレンズ光学系ともいう。
【0007】
表示パネル10が液晶パネルである場合、表示パネル10の円偏光素子20と反対側には、第二の直線偏光板が配置されていてもよい。比較形態の表示装置100Rにおいて、各機能層やレンズは接着してもよいし、空気を挟んでもよい。また、レンズは1つではなく、複数用いてもよい。
【0008】
ハーフミラー30は、入射した光の50%を反射し、残りの50%を透過する機能を有する。したがって、表示パネル10から出射されて円偏光素子20を透過した光のうち50%はハーフミラー30を透過して観察者U側へ出射され、残りの50%はハーフミラー30で反射されて表示パネル10側へ出射する。また、ハーフミラー30を透過して観察者U側へ出射された光は、円偏光選択反射素子50で反射され、レンズ40Rへ出射される。レンズ40Rを透過し、ハーフミラー30へ到達した光のうち50%はハーフミラー30で反射されて観察者U側へ出射され、残りの50%はハーフミラー30を透過して表示パネル10側へ出射される。すなわち、表示パネル10から出射される光のうち50%はハーフミラー30で表示パネル10側に反射するため観察者Uに視認されず光のロスとなり、かつ、表示パネル10から出射される光のうち25%はハーフミラー30で表示パネル10側に透過するため観察者Uに視認されず光のロスとなる。
【0009】
円偏光選択反射素子50としては、第二の1/4波長板と反射型の直線偏光板(例えば、3M社製の反射型偏光子(商品名APF))とを備える構成、または、コレステリック液晶フィルムを備える構成が挙げられる。
【0010】
円偏光選択反射素子50が第二の1/4波長板とAPFとを備える場合、円偏光選択反射素子50から直線偏光1Lが出射され、円偏光選択反射素子50がコレステリック液晶フィルムを備える場合、円偏光選択反射素子50から円偏光2Lが出射される。
【0011】
比較形態に係る折り返し光学系の表示装置100Rは、映像光を円偏光とし、ハーフミラー30と、レンズ40Rと、円偏光選択反射素子50(例えば、コレステリック液晶フィルム)とを備えることを最小限の構成とする。現在、HMDにおいて主流のディスプレイは液晶表示装置であるため、表示パネル10としての液晶パネル上に設けられた第一の直線偏光板21の上に第一の1/4波長板22を配置することで、円偏光出射を実現している。このような折り返し光学系の表示装置100Rにより、表示装置の薄型化を実現することができる。
【0012】
折り返し光学系の表示装置100Rでは、レンズ40Rのハーフミラー30側及び円偏光選択反射素子50側の面が急峻な球面であることが好ましい。このような態様とすることにより、レンズ40Rのレンズパワーを高めることが可能となり、表示装置100Rの表示特性を向上させることができる。ここで、レンズ40Rの円偏光選択反射素子50側の面が急峻な球面である状態で、レンズ40Rの急峻な球面に円偏光選択反射素子50を貼り付けるには、円偏光選択反射素子50も急峻な球面を有することが好ましい。しかしながら、円偏光選択反射素子は一般的にフィルムで供給されるため、急峻な球面を有する円偏光選択反射素子の製造は困難である。例えば、円偏光選択反射素子50は、フラットな形状、又は、緩やかな球面(概ね、曲率半径Rが150mm以上)を有する形状である。そのため、急峻な球面を有するレンズ40Rに円偏光選択反射素子50を貼り付けるのは、平面上に円偏光選択反射素子50を貼り付けるよりも困難であり、信頼性や歩留まりといった生産性に悪影響が出る可能性が高い。したがって、表示特性及び生産性の両方に優れた薄型の表示装置100Rを得ることは困難である。
【0013】
上記特許文献1及び2では、薄型であり、かつ、表示特性及び生産性の両方に優れた表示装置については検討されていない。
【0014】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、薄型であり、かつ、表示特性及び生産性の両方に優れた表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明の一実施形態は、表示パネルと、ハーフミラーと、レンズと、左円偏光及び右円偏光のうち、一方の円偏光が入射すると集光させ、他方の円偏光が入射すると発散させるパンチャラトナムベリーレンズと、円偏光選択反射素子と、を観察者側に向かって順に備え、上記レンズの上記円偏光選択反射素子側の面は平面状である、表示装置。
【0016】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記レンズは、第一のレンズ部及び第二のレンズ部を含む、表示装置。
【0017】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記レンズは第一のレンズであり、上記円偏光選択反射素子は第一の円偏光選択反射素子であり、更に、上記表示パネルと上記ハーフミラーとの間に、上記観察者側に向かって順に、第二の円偏光選択反射素子と表示パネル側パンチャラトナムベリーレンズと第二のレンズと、を備え、上記第二のレンズの上記第二の円偏光選択反射素子側の面は平面状である、表示装置。
【0018】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)又は上記(3)の構成に加え、更に、上記円偏光選択反射素子と上記観察者との間に、観察者側パンチャラトナムベリーレンズを備える、表示装置。
【0019】
(5)本発明の他の実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)又は上記(4)のいずれかに記載の表示装置と、上記観察者の頭部に装着する装着部と、を備える、ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薄型であり、かつ、表示特性及び生産性の両方に優れた表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
【
図3】PBレンズの集光及び発散の一例について説明する模式図である。
【
図4】実施形態1に係る表示装置の分解断面図の一例である。
【
図5】実施形態1に係る表示装置の分解断面図の一例である。
【
図8】実施形態1の表示装置が備えるPBレンズの断面模式図の一例である。
【
図9】実施形態1の変形例1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
【
図10】実施形態1の変形例2に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
【
図11】実施形態1に係る表示装置で発生し得るゴーストについて模式的に示した分解模式図である。
【
図12】実施形態2に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
【
図13】実施形態2の変形例1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
【
図14】実施形態2に係る表示装置で発生し得るゴーストについて模式的に示した分解模式図である。
【
図15】実施形態3に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
【
図17】実施形態4のヘッドマウントディスプレイの外観の一例を示す斜視模式図である。
【
図18】比較例1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図及びシミュレーション図である。
【
図20】比較例1に係る表示装置のシミュレーション結果の詳細を示す図である。
【
図21】実施例1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図及びシミュレーション図である。
【
図23】実施例1に係る表示装置のシミュレーション結果の詳細を示す図である。
【
図24】比較形態の表示装置を模式的に示した分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0023】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
図1に示すように、本実施形態の表示装置100は、表示パネル10と、ハーフミラー30と、レンズ40と、左円偏光及び右円偏光のうち、一方の円偏光が入射すると集光させ、他方の円偏光が入射すると発散させるパンチャラトナムベリーレンズ40PBと、円偏光選択反射素子50と、を観察者U側に向かって順に備え、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面は平面状である。
【0024】
このような態様とすることにより、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系を実現することが可能となるため、表示装置100を薄型にすることができる。また、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをパンチャラトナムベリーレンズ40PBに付与することが可能となるため、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。例えば、表示装置100の光学系の長さを短くしたり、レンズ性能の指標であるMTF(Modulation Transfer Function)性能をよくしたり、FOV(Field Of View)を広くしたりすることができる。更に、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、円偏光選択反射素子50を容易にレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0025】
上記比較形態1の表示装置100Rにおいて、光学系の長さを短くしたり、MTF性能(レンズ性能の指標)をよくしたり、FOV(視野)を広くするためには、上述の通りレンズ40Rの円偏光選択反射素子50側のレンズ面を球面にする必要がある。その場合、当該球面上に円偏光選択反射素子50を貼らなければならず、平面上に貼るときに比べて難しく、信頼性や歩留まりといった生産性が低下する可能性が高い。
【0026】
一方、本実施形態の表示装置100は、
図1に示すように、比較形態の表示装置100Rの構成に加えて、パンチャラトナムベリーレンズ40PBを備える。このような態様とすることにより、レンズ40の球面のレンズパワーの一部をパンチャラトナムベリーレンズ40PBが受け持つことが可能となる。その結果、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にすることが可能となり、円偏光選択反射素子50の貼り付けが容易となり、生産性を向上させることができる。
【0027】
上記特許文献1及び2では、光学系がPBレンズを備える態様について記載されているが、レンズ及びPBレンズの両者を備える場合のレンズの形状については開示されていない。
【0028】
また、上記特許文献1及び2は、虚像を動かすためのもの技術であり、光学系における画質向上等については検討されていない。一方、本実施形態の表示装置100は、画質を向上させることが可能である。具体的には、本実施形態の表示装置100により、画質最適化が可能であり、広FOVを実現することができる。したがって、本実施形態の表示装置100と上記特許文献1及び2の表示装置とでは、PBレンズを配置する目的が異なる。以下、本実施形態について詳細を説明する。以下では、パンチャラトナムベリー(Pancharatnam Berry)レンズを、PBレンズともいう。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の表示装置100は、表示パネル10と、円偏光素子20と、ハーフミラー30と、レンズ40と、PBレンズ40PBと、円偏光選択反射素子50と、を観察者U側に向かって順に備える。
【0030】
図1では、円偏光素子20が第一の直線偏光板21と第一の1/4波長板22との積層体を含む場合を例示した。本明細書中、分解断面図では、各部材間に間隔を設けて図示しているが、各部材は接着されていてもよいし、間隔を空けて配置されていてもよい。すなわち、各機能層やレンズは接着してもよいし、空気を挟んでもよい。また、レンズは1つではなく、複数用いてもよい。
【0031】
図1に示すように、表示パネル10は、観察者U側に光(表示光)を出射し、第一の直線偏光板21は、表示パネル10の表示光を直線偏光に変換する。第一の1/4波長板22を透過した上記直線偏光は円偏光に変換される(
図1の(i))。上記円偏光を右回りの円偏光とすると、右回りの円偏光はハーフミラー30を透過し(
図1の(ii))、回転方向を変えずレンズ40を透過する(
図1の(iii))。レンズ40から出射された右回りの円偏光は、PBレンズ40PBを透過して逆回転の左回りの円偏光に変換される(
図1の(iv))。
【0032】
PBレンズ40PBから出射された左回りの円偏光は、円偏光選択反射素子50で選択的に反射され(
図1の(v))、反射された上記左回りの円偏光は、再びPBレンズ40PBを通過して逆回転の右回りの円偏光に変換される(
図1の(vi))。PBレンズ40PBから出射された右回りの円偏光は、回転方向を変えずにレンズ40を透過し(
図1の(vii))、ハーフミラー30で反射されて左回りの円偏光に変換される(
図1の(viii))。
【0033】
ハーフミラー30から出射された左回りの円偏光は、回転方向を変えずにレンズ40を透過する(
図1の(ix))。レンズ40から出射された左回りの円偏光は、PBレンズ40PBを透過して逆回転の右回りの円偏光に変換される(
図1の(x))。PBレンズ40PBから出射された右回りの円偏光は、円偏光選択反射素子50を透過して観察者U側に出射される(
図1の(xi))。
【0034】
本実施形態の表示装置100は、ハーフミラー30と円偏光選択反射素子50との間で光が反射される折り返し光学系とすることで、表示パネル10から観察者U側に向かって出射された光(表示光)を折り畳んで観察者U側に出射するため、表示装置100の厚みを薄くしつつ、光路を長くとることができる。
【0035】
(表示パネル)
表示パネル10は、複数の画素を含むことが好ましい。上記画素は、画像表示を行うための表示単位であり、カラー表示を行う場合は、例えば、赤色、青色、緑色の画素を含む。
【0036】
表示パネル10は、複数の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が配置されたTFT基板を有してもよい。上記TFT基板は、支持基板上に、互いに平行に延設された複数のゲート線と、ゲート絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線とを備えてもよい。複数のゲート線及び複数のソース線は、平面視において格子状に形成されてもよく、複数のゲート線及び複数のソース線により区画された各領域が、画素に対応する。
【0037】
支持基板は、透明基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0038】
各ゲート線と各ソース線との交点には、画素毎にスイッチング素子としてのTFTが配置されていてもよい。TFTのゲート端子はゲート線に接続され、ソース端子はソース線に接続され、ドレイン端子は画素電極に接続されてもよい。表示パネル10は、上記画素電極とは別に、共通電極電圧が印加される共通電極を有してもよい。
【0039】
表示パネル10は、有機発光ダイオード(OLED:Organic light Emitting Diode)を含むOLEDパネルであってもよいし、量子ドット発光ダイオード(QD-LED:Quantum Dot‐Light Emitting Diode)を含むQD-LEDパネルであってもよい。本明細書中、OLED、QD-LEDを特に区別しない場合、発光ダイオード(LED)ともいう。
【0040】
発光ダイオードの構成は、特に限定されず、例えば、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極をこの順で積層されたものが挙げられる。
【0041】
陰極、陽極の材料は、特に限定されないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、ZnO等の透明導電材料、アルミニウム、銀又はこれらの合金等が挙げられる。
【0042】
トップエミッション型のLEDの場合、上記TFT基板の画素電極を陽極として用い、共通電極を陰極として用いてもよい。陽極としてアルミニウム、銀又はこれらの合金等の反射電極を用いてもよいし、陰極として上記透明導電材料を用いてもよい。
【0043】
正孔輸送層は、陽極から注入された正孔を発光層に輸送する層である。正孔輸送層の材料は特に限定されないが、例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジンおよびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられる。
【0044】
電子輸送層は、陰極から注入された電子を発光層に輸送する層である。電子輸送層の材料は特に限定されないが、例えば、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等のキノリン誘導体、アザインドリジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられる。
【0045】
陰極、電子輸送層との間に、電子注入層を有してもよい。また、陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよい。電子注入層の材料としては、無機絶縁材料を用いることができ、アルカリ金属の酸化物又はハロゲン化物、並びにアルカリ土類金属の酸化物又はハロゲン化物等が挙げられる。
【0046】
表示パネル10がOLEDである場合、上記発光層は、発光材料として蛍光材料、燐光材料等を含んでもよい。
【0047】
赤色の蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、テトラアリールジインデノペリレン誘導体等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体等が挙げられる。
【0048】
緑色の蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、アントラセン誘導体等が挙げられる。
【0049】
青色の蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、ジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン等が挙げられる。
【0050】
燐光材料としては、燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。上記金属錯体は、配位子の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。
【0051】
赤色の燐光材料としては、トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジネート-N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-12H,23H-ポルフィリン-白金(II)、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジネート-N,C3’]イリジウム、ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0052】
緑色の燐光材料としては、ファク-トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジネート-N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク-トリス[5-フルオロ-2-(5-トリフルオロメチル-2-ピリジン)フェニル-C,N]イリジウムが挙げられる。
【0053】
青色の燐光材料としては、ビス[4,6-ジフルオロフェニルピリジネート-N,C2’]-ピコリネート-イリジウム、トリス[2-(2,4-ジフルオロフェニル)ピリジネート-N,C2’]イリジウム、ビス[2-(3,5-トリフルオロメチル)ピリジネート-N,C2’]-ピコリネート-イリジウム、ビス(4,6-ジフルオロフェニルピリジネート-N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0054】
上記蛍光材料、燐光材料はドーパントともいい、発光層は、ドーパントに対して電荷輸送を行うホスト材料を含んでもよい。ホスト材料としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体等のアセン誘導体(アセン系化合物)、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニルカルバゾール、4,4’-N,N’-ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’-ビス(2,2’-ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、適宜、蛍光材料、燐光材料と組み合わせて用いることができる。
【0055】
表示パネル10がQD-LEDパネルである場合、上記発光層は、発光材料として量子ドットを含んでもよい。量子ドットは、量子力学に従う光学特性を持つナノスケール(例えば、平均粒子径が2~10nm)の半導体結晶であり、例えば、10~50個ほどの原子で構成されたコロイド粒子が挙げられる。
【0056】
上記量子ドットとしては、カドミウムセレン(CdSe)、カドミウムテルル(CdTe)、硫化カドミウム(CdS)、硫化鉛(PbS)、若しくは、リン化インジウム(InP)等の化合物、又は、CdSeS等の合金を含むものが挙げられる。
【0057】
上記量子ドットとしては、内部組成が均一な単一組成の半導体結晶から構成されたコア型量子ドット、複数種類の半導体の合金からから構成された合金型量子ドット、コア型量子ドット又は合金型量子ドットの表面を半導体化合物で被覆したコア・シェル型量子ドットが挙げられる。量子ドットの粒子径を調整することで、発光波長ピークを調整することができる。また、量子ドットの組成や内部構造を変えることで、光学的特性、電子的特性を調整することができる。
【0058】
画素毎に発光ダイオード(OLED又はQD-LED)が配置されてもよい。OLEDパネル又はQD-LEDパネルの場合、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素に、それぞれ、赤色の発光材料含む発光層を備えた赤色のLED(OLED又はQD-LED)、緑色の発光材料含む発光層を備えた緑色のLED、青色の発光材料を含む発光層を備えた青色のLEDを配置してもよい。
【0059】
上記蛍光又は燐光材料を組み合わせることで白色の蛍光又は燐光を発するOLEDを作製することもできる。OLEDパネルの場合、白色のOLEDに、赤色、緑色、青色の樹脂層を含むカラーフィルタを重ねて、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素としてもよい。
【0060】
QD-LEDパネルの場合、白色、青色等の単色の量子ドット層に、赤色のOLED、緑色のOLED、青色のOLEDを含むカラーOLED層又はカラーフィルタを重ねて、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素としてもよい。
【0061】
画素の配置は、特に限定されないが、緑色の画素数を、赤色の画素数、青色の画素数の2倍とするペンタイル配列としてもよいし、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素を1:1:1で配置するリアルRGB配列としてもよい。
【0062】
(円偏光素子)
円偏光素子20は、表示パネル10の表示光を円偏光に変換して透過させる。本実施形態の円偏光素子20は、第一の直線偏光板21と第一の1/4波長板22とを備える。第一の直線偏光板21は、表示光を直線偏光に変換し、第一の1/4波長板22は、上記直線偏光を円偏光に変換する。
【0063】
第一の直線偏光板21は、特定の振動方向をもつ直線偏光を透過させるものであれば特に限定されず、表示装置の分野で一般的な偏光板を用いることができる。直線偏光板は、吸収型であってもよいし、反射型であってもよい。
【0064】
吸収型偏光板とは、特定方向に振動する光を吸収し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有するものである。吸収型偏光板は、透過軸と、上記透過軸と直交する吸収軸とを有する。吸収型の直線偏光板としては、例えば、ヨウ素化合物分子を吸着させたポリビニルアルコールを一軸延伸したフィルムをトリアセチルセルロース(TAC)で挟持したもの等が挙げられる。
【0065】
反射型偏光板とは、特定方向に振動する光を反射し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有するものである。反射型偏光板は、透過軸と、上記透過軸と直交する反射軸とを有する。反射型の直線偏光板としては、二種類の樹脂からなる共押出しフィルムを1軸延伸して得られる反射型偏光板(例えば、日東電工社製のAPCFや3M社製のDBEF)、金属細線を並べたワイヤグリッド偏光板等が挙げられる。ワイヤグリッド偏光板としては、例えば、直径10μ~100μm程度の金属細線を、20μ~200μmのピッチで並べたものが挙げられる。
【0066】
第一の1/4波長板22は、入射光に対して1/4の位相差を与える位相差板であれば特に限定されない。第一の1/4波長板22は、例えば波長550nmの光に対して1/4波長(厳密には、137.5nm)の面内位相差を付与する位相差板をいい、120nm以上、150nm以下の面内位相差を付与するものであればよい。
【0067】
円偏光素子20は、コレステリック液晶素子であってもよい。円偏光素子20がコレステリック液晶素子である場合、コレステリック液晶素子は、表示パネル10から出射された表示光を円偏光に変換する。
【0068】
本明細書では、光の進行方向に対向して光を観察した場合に、光波の電気変位ベクトルの振動方向が、光波の進行とともに時計回りに回転するものを右回りの円偏光といい、光波の進行とともに反時計回りに回転するものを左回りの円偏光という。また、円偏光は、完全な円偏光(楕円率(短軸/長軸)=1.00)のみならず、楕円率が0.90以上、1.00未満の楕円偏光も含むものとする。
【0069】
コレステリック液晶素子としては、例えば一対の基板にコレステリック液晶を含むコレステリック液晶層が挟持されたものが挙げられる。基板に配向処理を施し、コレステリック液晶の配向方位を制御することで、右回り及び左回りの円偏光のいずれか一方向の円偏光を反射し、他方向の円偏光を透過するコレステリック液晶素子を作製することができる。コレステリック液晶層は、数μmの厚みで作製可能なため、表示パネル10とハーフミラー30との距離を近付けることができる。表示パネル10の観察者側の基板を支持基材として用い、表示パネル10の観察者側の基板の表面にコレステリック液晶層を形成してもよい。
【0070】
(ハーフミラー)
ハーフミラー30は、入射した光の一部を反射して残りの一部を透過する光学素子である。ハーフミラー30の反射率と透過率は限定されないが、ハーフミラー30は、例えば、入射した光の30%~70%を反射して残りを透過し、好ましくは、50%を反射して50%を透過する。ハーフミラー30は、例えば、金属膜や誘電体多層膜で構成することができ、その膜厚により、透過率および反射率を制御する。
【0071】
(レンズ)
レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面は平面状である。本明細書において平面状であるとは、曲率半径Rが150mm以上である形状をいう。また、本明細書において球面状であるとは、曲率半径Rが150mm未満である形状をいう。
【0072】
レンズ40は、表示パネル10の画像を拡大・縮小するものであれば特に限定されない。レンズ40とPBレンズ40PBとの組合せは、表示パネル10に表示される表示画像の拡大像(虚像)を視認させる。レンズ40とPBレンズ40PBとの組合せは、レンズ40とPBレンズ40PBとの組合せを透過した光を観察者Uの眼に集めるように設計された非球面レンズが好ましい。レンズ40としては、屈折型のレンズであってもよいし、回折型のレンズであってもよい。
【0073】
屈折型のレンズとしては、HMDの分野で通常用いるものを用いることができ、平凸レンズ、両凸レンズ、メニスカスレンズ等の曲面(凸面)を有する屈折レンズが挙げられる。また、フレネルレンズを併用しても良い。屈折型のレンズは、凸面が表示パネル10側となるように配置されることが好ましい。屈折型のレンズは、波長分散の異なる2つのレンズを貼り合せたアクロマティックレンズを用いたり、複数のレンズを組み合わせたりしてもよい。例えば、レンズパワーを適切に得るために2枚のレンズを用いた光学系が一般的に用いられているが、その2枚のうち、表示装置に近いレンズには両凸レンズ、観察者に近いレンズにはパネル側を凸のフレネルレンズとした凸平レンズ、を用いるようなことが考えられる。
【0074】
回折型のレンズとしては、透過型のホログラフィック光学素子等が挙げられる。回折型のレンズとして用いる透過型のホログラフィック光学素子は、上記光の回折現象を利用することで表示パネル10の画像を結像させることができる。ホログラムフィルムとしては、入射光と出射光に相当する光を用いて、干渉露光させることで所望の光学特性を持たせたものと用いることができる。また、ホログラムフィルムの製造方法としては、近年ではCGH(Computer Generated Hologram)と呼ばれる、小エリア毎に露光していくことで所望の光学特性を得る方法もある。
【0075】
(PBレンズ)
本実施形態の表示装置100は、レンズ40と円偏光選択反射素子50との間にPBレンズ40PBを備え、PBレンズ40PBは、左円偏光及び右円偏光のうち、一方の円偏光が入射すると集光させ、他方の円偏光が入射すると発散させる。このような態様とすることにより、折り返し光学系の表示装置100において、表示特性を向上させることができる。例えば、折り返し光学系において、より良い画質最適化が可能であり、特に、広いFOV(Field Of View)の光学系を実現することができる。PBレンズ40PBは、PBP(Pancharatnam Berry phase)レンズともいう。PBレンズ40PBは、回折型レンズである。
【0076】
本実施形態では、レンズの円偏光選択反射素子側の面を球面形状とする代わりに、平面で光を曲げることができる回折型レンズであるPBレンズ40PBを用いる。PBレンズ40PBは、左円偏光及び右円偏光のうち、一方の円偏光が入射すると、当該一方の円偏光を逆回転しながら集光し、他方の円偏光が入射すると、当該他方の円偏光を逆回転しながら発散する機能を有する。
【0077】
図2は、PBレンズの平面模式図である。本実施形態のPBレンズ40PBは、
図2に示すように、支持基板410と、支持基板410上に設けられ、かつ、周期的に配向した液晶分子420を含む。液晶分子420の周期的な配向により、回折が発生し、レンズ機能を得ることができる。
【0078】
図3は、PBレンズの集光及び発散の一例について説明する模式図である。
図3に示すように、例えば、PBレンズ40PBに左円偏光及び右円偏光のうち一方の円偏光が入射すると、PBレンズ40PBは、当該一方の円偏光を逆回転して他方の円偏光に変換しつつ集光し、PBレンズ40PBに他方の円偏光が入射すると、PBレンズ40PBは、当該他方の円偏光を逆回転して一方の円偏光に変換しつつ発散する。
【0079】
具体的には、
図3に示すように、PBレンズ40PBに入射した右円偏光(
図3の(i))は、逆回転して左円偏光に変換され、集光する(
図3の(ii))。また、PBレンズ40PBに入射した左円偏光(
図3の(iii))は、逆回転して右円偏光に変換され、発散する(
図3の(iv))。このように、PBレンズ40PBに入射する円偏光の回転方向を切り替えることにより、焦点fの発散及び集光を切り替えることができる。また、PBレンズ40PBから出射される円偏光の回転方向は、PBレンズ40PBに入射する円偏光の回転方向とは逆方向となる。なお、回折しない光は、円偏光の向きが変わらず、集光や発散をすることなく、そのまま抜けてくることになる(
図3の(v))。
【0080】
図4及び
図5は、それぞれ、実施形態1に係る表示装置の分解断面図の一例である。本実施形態の表示装置100としては、PBレンズ40PBの発散と集光の向きにより、
図4及び
図5に示す2種類が挙げられる。
図4は、表示パネル10から照射された光が、PBレンズ40PBにより2回発散、1回集光されて観察者U側に出射される態様について示している。
図5は、表示パネル10から照射された光が、PBレンズ40PBにより2回集光、1回発散されて観察者U側に出射される態様について示している。ここで、PBレンズの液晶分子の回転の向きは、PBレンズの表面から観察する場合と裏面から観察する場合とで異なる。例えば、PBレンズを表面から観察した場合に液晶分子が左回転で配列している場合、当該PBレンズを裏面から観察すると、液晶分子は右回転で配列していることになる。すなわち、PBレンズの表面から入射する右円偏光が発散するのであれば、PBレンズの裏面から入射する右円偏光は集光することになる。
【0081】
表示パネル10から照射された光は、PBレンズ40PBにより2回発散、1回集光されて観察者U側に出射されることが好ましい。このような態様とすることにより、表示特性を効果的に向上させることができる。
【0082】
図6及び
図7は、PBレンズの一例を示す平面図である。
図6及び
図7に示す平面図は、観察者U側から見た平面図である。PBレンズ40PBは、
図6に示すように、中心から外に向かうにつれ、液晶分子420の長軸420Xが左回転する構造と、
図7に示すように、中心から外に向かうにつれ、液晶分子420の長軸420Xが右回転する構造の2種類があり、偏光に対する作用が互いに異なる。
【0083】
図6に示すように、PBレンズ40PBは、支持基板410と、支持基板410上に設けられた液晶分子420を含み、液晶分子420の長軸420Xは、PBレンズ40PBを観察者U側から平面視した場合にPBレンズ40PBの中心から外に向かうにつれ左回転する構造を有し、表示パネル10からPBレンズ40PBへ右円偏光が入射することが好ましい。このような態様とすることにより、
図4に示すように、表示パネル10から照射された光は、PBレンズ40PBにより2回発散、1回集光されて観察者U側に出射される。
【0084】
また、
図7に示すように、PBレンズ40PBは、支持基板410と、支持基板410上に設けられた液晶分子420を含み、液晶分子420の長軸420Xは、PBレンズ40PBを観察者U側から平面視した場合にPBレンズ40PBの中心から外に向かうにつれ右回転する構造を有し、表示パネル10からPBレンズ40PBへ左円偏光が入射することも好ましい。このような態様とすることによっても、表示パネル10から照射された光は、PBレンズ40PBにより2回発散、1回集光されて観察者U側に出射される。
【0085】
図6に示すように、PBレンズ40PBは、支持基板410と、支持基板410上に設けられた液晶分子420を含み、液晶分子420の長軸420Xは、PBレンズ40PBを観察者U側から平面視した場合にPBレンズ40PBの中心から外に向かうにつれ左回転する構造を有し、表示パネル10からPBレンズ40PBへ左円偏光が入射してもよい。このような態様とすることにより、表示パネル10から照射された光は、PBレンズ40PBにより2回集光、1回発散されて観察者U側に出射される。
【0086】
また、
図7に示すように、PBレンズ40PBは、支持基板410と、支持基板410上に設けられた液晶分子420を含み、液晶分子420の長軸420Xは、PBレンズ40PBを観察者U側から平面視した場合にPBレンズ40PBの中心から外に向かうにつれ右回転する構造を有し、表示パネル10からPBレンズ40PBへ右円偏光が入射してもよい。このような態様とすることによっても、表示パネル10から照射された光は、PBレンズ40PBにより2回集光、1回発散されて観察者U側に出射される。
【0087】
ここで、PBレンズ40PBに入射する円偏光の回転方向は、第一の1/4波長板22の進相軸と遅相軸とを入れ替えることにより制御することができる。
【0088】
PBレンズ40PBは、例えば、国際公開第2019/189818号に記載の方法で作製することができる。
【0089】
図8は、実施形態1の表示装置が備えるPBレンズの断面模式図の一例である。PBレンズ40PBは、
図8に示すように、液晶分子420を含有する光学異方性層420Aを備える。PBレンズ40PBは、一例として、円偏光を対象として、入射光を所定の方向に回折して透過させる。なお、
図8では、入射光を左円偏光としている。
【0090】
図8に示すように、光学異方性層420Aは、
図8中左側から3つの領域R0、R1、R2を有し、各領域で1周期の長さΛが異なっている。具体的には、1周期の長さΛは、領域R0、R1、R2の順に短くなっている。また、領域R1及びR2は、光学軸が光学異方性層の厚さ方向で捩れて回転した構造(以下、捩れ構造ともいう)を有していてもよい。このようなねじれ構造を2層積層することで、広い波長域や入射角に対して回折効率を向上することが可能である。
【0091】
表示装置100において、左円偏光LC1が光学異方性層420Aの面内の領域R1に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に、すなわち、液晶分子420の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化している一方向に所定角度、回折されて透過する。同様に左円偏光LC2が光学異方性層420Aの面内の領域R2に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に所定角度、回折されて透過する。同様に左円偏光LC0が光学異方性層420Aの面内の領域R0に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に所定角度、回折されて透過する。
【0092】
光学異方性層420Aによる回折の角度は、領域R1の液晶配向パターンの1周期Λ
R1よりも、領域R2の液晶配向パターンの1周期Λ
R2が短いため、
図8に示すように、入射光に対する回折の角度は、領域R2の透過光の角度θ
R2の方が領域R1の透過光の角度θ
R1よりも大きくなる。また、領域R1の液晶配向パターンの1周期Λ
R1よりも、領域R0の液晶配向パターンの1周期Λ
R0が長いため、
図8に示すように、入射光に対する回折の角度は、領域R0の透過光の角度θ
R0の方が領域R1の透過光の角度θ
R1よりも小さくなる。
【0093】
ここで、面内で液晶分子の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する光学異方性層による光の回折では、回折角度が大きくなると回折効率が低下する、すなわち回折光の強度が弱くなるという問題がある。そのため、光学異方性層を、液晶分子の光学軸の向きが面内で180°回転する1周期の長さが異なる領域を有する構成とした場合には、光の入射位置によって回折角度が異なるため、面内の入射位置によって回折光の光量に差が生じる。すなわち、面内の入射位置によって、透過、回折した光が暗くなる領域が生じる。
【0094】
これに対して、本実施形態のPBレンズ40PBは、光学異方性層が厚さ方向で捩れて回転する領域を有しており、厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる領域を有する。
図8に示す例では、光学異方性層420Aの領域R2の厚さ方向の捩れ角φ
R2は領域R1の厚さ方向の捩れ角φ
R1よりも大きい。また、領域R0は厚さ方向の捩れ構造を有していない。これにより、回折された光の回折効率の低下を抑制することができる。
【0095】
図8に示す例では、回折角度が領域R0よりも大きい領域R1及びR2に捩れ構造を付与することで、領域R1、R2で回折された光の光量の低下を抑制することができる。また、領域R1よりも回折角度が大きい領域R2の捩れ構造の捩れ角を、領域R1よりも大きくすることで、領域R2で回折された光の光量の低下を抑制することができる。これによって、面内の入射位置によって、透過した光の光量が均一になるようにすることができる。
【0096】
このように、本実施形態のPBレンズ40PBでは、光学異方性層による回折が大きい面内の領域では、入射光は厚さ方向の捩れ角が大きい層内を透過し、回折される。これに対して、光学異方性層による回折が小さい面内の領域は、入射光は厚さ方向の捩れ角が小さい層内を透過して回折される。すなわち、PBレンズ40PBでは、光学異方性層による回折の大きさに応じて、面内における厚さ方向の捩れ角を設定することで、入射光に対する透過光を明るくすることができる。そのため、PBレンズ40PBによれば、面内における透過光量の回折角度依存性を小さくすることができる。
【0097】
光学異方性層420Aの面内における回折の光の角度は、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど大きい。また、光学異方性層420Aの面内における厚さ方向の捩れ角は、液晶配向パターンにおいて矢印X方向に沿って光軸の向きが180°回転する1周期Λの短い領域の方が1周期Λの大きい領域よりも、大きい。PBレンズ40PBでは、一例として、
図8にも示すように、光学異方性層420Aの領域R2における液晶配向パターンの1周期Λ
R2が、領域R1における液晶配向パターンの1周期Λ
R1よりも短く、厚さ方向に捩れ角φ
R2は厚さ方向に捩れ角φ
R1は大きい。すなわち、光入射側の光学異方性層420Aの領域R2方が、大きく光を回折させる。
【0098】
したがって、対象とする液晶配向パターンの1周期Λに対して、面内における厚さ方向の捩れ角φを設定することで、好適に、面内の異なる領域において異なる角度に回折した透過光を明るくすることができる。
【0099】
PBレンズ40PBにおいては、前述のように、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど回折の角度が大きいため、液晶配向パターンの1周期Λが短い領域ほど厚さ方向の捩れ角を大きくすることで透過光を明るくすることを可能にしている。そのため、PBレンズ40PBにおいては、液晶配向パターンの1周期の長さが異なる領域において、1周期の長さの順列と厚さ方向の捩れ角の大きさの順列が異なる領域を有することが好ましい。
【0100】
PBレンズ40PBは、液晶分子420を含む液晶組成物を用いて形成された光学異方性層420Aを備え、光学異方性層420Aは、上記液晶分子由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有し、かつ、上記光学軸が光学異方性層420Aの厚さ方向で捩れて回転する領域を有しており、厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる領域を有することが好ましい。
【0101】
PBレンズ40PBは、液晶分子420由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さが異なる領域を有することが好ましい。
【0102】
光学異方性層420Aは、上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さが異なる複数の領域が、上記1周期の長さの順に配列しており、かつ、上記厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる複数の領域が、上記厚さ方向の捩れ角の大きさの順に配列しており、上記1周期の長さの順列の方向と上記厚さ方向の捩れ角の大きさの順列の方向とが異なる領域を有することが好ましい。
【0103】
光学異方性層420Aは、上記厚さ方向の捩れ角の大きさが10°~360°である領域を有することが好ましい。
【0104】
光学異方性層420Aは、上記液晶配向パターンにおける上記液晶分子420由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する上記一方向に向かって、上記液晶配向パターンの上記1周期が、漸次、短くなることが好ましい。
【0105】
光学異方性層420Aの上記液晶配向パターンは、上記液晶分子420由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する上記一方向を、内側から外側に向かう同心円状のパターンであることが好ましい。
【0106】
図8に示すPBレンズ40PBは、捩れ角が面内で変化するPBレンズであり、回折角が大きい場合においても回折効率が高い素子であるが、PBレンズ40PBは、捩れ角が面内で変化しないPBレンズであってもよい。具体的には、PBレンズ40PBは、厚み方向の捩れがない、又は、面内で一定の捩れ角であるPBレンズであってもよく、例えば、特表2008-532085号公報に記載の偏光回折格子を用いることができる。
【0107】
PBレンズ40PBは、光学異方性層420Aを、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層420Aの厚さ方向で捩れ角の向きが互いに異なる光学異方性層420Aを有することが好ましい。
【0108】
PBレンズ40PBは、光学異方性層420Aを、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層420Aの厚さ方向で捩れ角の大きさが互いに異なる光学異方性層420Aを有することが好ましい。
【0109】
PBレンズ40PBは、光学異方性層420Aを、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層420Aは、上記液晶分子420由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転する方向が互いに同一である液晶配向パターンを有することが好ましい。
【0110】
上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さは、50μm以下であることが好ましい。
【0111】
(円偏光選択反射素子)
円偏光選択反射素子50は、PBレンズ40PBを透過した円偏光を選択的に反射する。円偏光選択反射素子50は、円偏光素子20を透過した円偏光と回転方向が同じである円偏光を透過し、円偏光素子20を透過した円偏光と回転方向が反対である円偏光を反射することが好ましい。例えば、円偏光素子20を透過した円偏光が右回りであった場合、円偏光選択反射素子50は、右回りの円偏光を透過し、左回りの円偏光を反射する。
【0112】
円偏光選択反射素子50は、反射型直線偏光板51と第二の1/4波長板52との積層体を含んでもよい。反射型直線偏光板51は、円偏光素子20として例示した上述の反射型の直線偏光板と同様のものを用いることができる。第二の1/4波長板52は、上述の第一の1/4波長板22と同様のものを用いることができる。上述の円偏光素子20が有する第一の1/4波長板22の遅相軸と、円偏光選択反射素子50が有する第二の1/4波長板52の遅相軸は、直交することが好ましい。
【0113】
円偏光選択反射素子50は、コレステリック液晶素子であってもよい。円偏光選択反射素子50がコレステリック液晶素子である場合、円偏光素子20として例示した上述のコレステリック液晶素子と同様のものを用いることができる。コレステリック液晶素子を透過した光は円偏光である。円偏光素子20及び円偏光選択反射素子50がともにコレステリック液晶素子である場合、円偏光素子20としてのコレステリック液晶素子と、円偏光選択反射素子50としてのコレステリック液晶素子とは、透過した円偏光の方向(右回り、左回り)が逆であることが好ましい。
【0114】
円偏光選択反射素子50は、平面状であることが好ましい。このような態様とすることにより、信頼性や歩留まりといった生産性をより向上させることができる。円偏光選択反射素子50は、PBレンズ40PB側の面が平面状であることがより好ましい。
【0115】
<実施形態1の変形例1>
本変形例では、本変形例に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
図9は、実施形態1の変形例1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
図9に示すように、本変形例の表示装置100が備えるレンズ40は、第一のレンズ部40A及び第二のレンズ部40Bを含む。このような態様によっても、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系を実現することが可能となるため、表示装置100を薄型にすることができる。また、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをパンチャラトナムベリーレンズ40PBに付与することが可能となるため、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。また、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、円偏光選択反射素子50を容易にレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができる。更に、レンズ40が第一のレンズ部40A及び第二のレンズ部40Bを含むことにより、表示装置100のレンズパワーを高めることが可能となり、表示装置100の表示特性をより向上させることができる。
【0116】
レンズ40は、第一のレンズ部40A及び第二のレンズ部40Bを備える。第一のレンズ部40A及び第二のレンズ部40Bは、それぞれ、表示パネル10の画像を拡大・縮小するものであれば特に限定されず、屈折型のレンズであってもよいし、回折型のレンズであってもよい。
【0117】
<実施形態1の変形例2>
本変形例では、本変形例に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
図10は、実施形態1の変形例2に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
図11は、実施形態1に係る表示装置で発生し得るゴーストについて模式的に示した分解模式図である。
図10に示すように、本変形例の表示装置100は、更に、円偏光選択反射素子50と観察者Uとの間に、観察者側PBレンズ41PBを備える。このような態様によっても、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系を実現することが可能となるため、表示装置100を薄型にすることができる。また、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをパンチャラトナムベリーレンズ40PBに付与することが可能となるため、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。また、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、円偏光選択反射素子50を容易にレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0118】
更に、次のような効果を得ることができる。PBレンズは回折レンズであるため、レーザーのような短波長、狭指向性の光源でも無い限り、回折効率を100%にすることが難しい。したがって、実施形態1の表示装置100においてPBレンズ40PBで回折しない光は、円偏光の向きが変わらず、集光や発散をすることなく、そのまま抜けてくることになる(
図11の(xii))。そのため、ゴーストが発生する可能性がある。
【0119】
一方、本変形例の表示装置100は、観察者側PBレンズ41PBを備えるため、回折しなかった光が観察者Uの目に焦点を結ばない(
図10の(xii))。そのため、ゴーストが視認されるのを抑えることができる。このように、PBレンズ40PBよりも観察者U側に観察者側PBレンズ41PBを配置することにより、意図通りに回折しなかった光はピント(焦点)をずらして観察者Uの目に視認されないようにすることができる。
【0120】
観察者側PBレンズ41PBは、PBレンズ40PBと集光する円偏光の向きは同様であるが、観察者側PBレンズ41PBの焦点距離は、PBレンズ40PBのレンズの焦点距離と同じでなくても良い。
【0121】
<実施形態2>
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
図12は、実施形態2に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
図12に示すように、上記実施形態1のレンズ40は第一のレンズ40であり、上記実施形態1の円偏光選択反射素子50は第一の円偏光選択反射素子50であり、本実施形態の表示装置100は、更に、表示パネル10とハーフミラー30との間に、観察者U側に向かって順に、第二の円偏光選択反射素子60と表示パネル側PBレンズ42PBと第二のレンズ41と、を備え、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面は平面状である。このような態様によっても、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系を実現することが可能となるため、表示装置100を薄型にすることができる。また、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをPBレンズ40PBに付与することが可能となるため、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。また、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、第一の円偏光選択反射素子50を容易に第一のレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0122】
更に、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーを表示パネル側PBレンズ42PBに付与することが可能となるため、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。また、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面が平面状であることにより、第二の円偏光選択反射素子60を容易に第二のレンズ41に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0123】
更に、実施形態1に示すパンケーキレンズ方式に相当する第一の経路RT1に加えて、第二の経路RT2の光を利用することが可能となり、光の利用効率を高めることができる。
【0124】
第一の経路RT1及び第二の経路RT2の像は重ならなければならないため、表示装置100は、基本的にはハーフミラー30を中心として対称的な構造であることが好ましい。
【0125】
本実施形態の表示装置100は、より具体的には、表示パネル10と、第一の直線偏光板21と、第二の円偏光選択反射素子60と、第一の1/4波長板22と、表示パネル側PBレンズ42PBと、第二のレンズ41と、ハーフミラー30と、第一のレンズ40と、PBレンズ40PBと、第二の1/4波長板23と、第一の円偏光選択反射素子50と、を観察者U側に向かって順に備える。
【0126】
第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面は平面状である。第二のレンズ41は、第二の円偏光選択反射素子60側の面が平面状であることを除いて、第一のレンズ40と同様である。
【0127】
表示パネル側PBレンズ42PBは、PBレンズ40PBと同様である。
【0128】
第二の円偏光選択反射素子60は、第一の円偏光選択反射素子50と同様である。第二の円偏光選択反射素子60は、第一の直線偏光板21と、第一の1/4波長板22との間に配置されることが好ましい。
【0129】
第二の1/4波長板23は、第一の1/4波長板22と同様である。第一の1/4波長板22の遅相軸と第二の1/4波長板23の遅相軸とは直交であることが好ましい。なお、本明細書中、2つの直線(軸、方向及び方位を含む)が直交するとは、両者のなす角度(絶対値)が90±3°の範囲内であることを指し、好ましくは90±1°の範囲内であり、より好ましくは90±0.5°の範囲内であり、特に好ましくは90°(完全に直交)である。また、本明細書中、2つの直線(軸、方向及び方位を含む)が平行であるとは、両者のなす角度(絶対値)が0±3°の範囲内であることを指し、好ましくは0±1°の範囲内であり、より好ましくは0±0.5°の範囲内であり、特に好ましくは0°(完全に平行)である。
【0130】
<実施形態2の変形例1>
本変形例では、本変形例に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態2と重複する内容については説明を省略する。
図13は、実施形態2の変形例1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図である。
図14は、実施形態2に係る表示装置で発生し得るゴーストについて模式的に示した分解模式図である。
図13に示すように、本変形例の表示装置100は、更に、第一の円偏光選択反射素子50と観察者Uとの間に、観察者側PBレンズ41PBを備える。このような態様によっても、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系を実現することが可能となるため、表示装置100を薄型にすることができる。また、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをPBレンズ40PBに付与することが可能となるため、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。また、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、第一の円偏光選択反射素子50を容易に第一のレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0131】
更に、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーを表示パネル側PBレンズ42PBに付与することが可能となるため、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。また、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面が平面状であることにより、第二の円偏光選択反射素子60を容易に第二のレンズ41に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0132】
更に、実施形態1に示すパンケーキレンズ方式に相当する第一の経路RT1に加えて、第二の経路RT2の光を利用することが可能となり、光の利用効率を高めることができる。
【0133】
更に、次のような効果を得ることができる。PBレンズは回折レンズであるため、レーザーのような短波長、狭指向性の光源でも無い限り、回折効率を100%にすることが難しい。したがって、実施形態2の表示装置100においてPBレンズ40PBで回折しない光は、円偏光の向きが変わらず、集光や発散をすることなく、そのまま抜けてくることになる(
図14の光3L)。そのため、ゴーストが発生する可能性がある。
【0134】
一方、本変形例の表示装置100は、観察者側PBレンズ41PBを備えるため、回折しなかった光が観察者Uの目に焦点を結ばない(
図13の光3L)。そのため、ゴーストが視認されるのを抑えることができる。このように、PBレンズ40PBよりも観察者U側に観察者側PBレンズ41PBを配置することにより、意図通りに回折しなかった光はピント(焦点)をずらして観察者Uの目に視認されないようにすることができる。
【0135】
<実施形態3>
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1及びその変形例、並びに、上記実施形態2及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態の表示装置は、表示パネルとして液晶パネルを用いる。本実施形態において、表示パネルは、一対の基板と上記一対の基板に挟持された液晶層とを含む液晶パネルであり、円偏光素子は、第一の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含み、表示パネルの円偏光素子と反対側に、更に第二の直線偏光板を備える。実施形態1と重複する構成については、説明を省略する。
【0136】
図15は、実施形態3に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
図15に示すように、本実施形態の表示装置100において、表示パネル(液晶パネル)70は、一対の基板71、72と上記一対の基板71、72に挟持された液晶層73とを含む。基板71はTFT基板71であってもよく、基板72は対向基板72であってもよい。
【0137】
TFT基板71は、実施形態1で例示したように、支持基板上に、互いに平行に延設された複数のゲート線と、ゲート絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線と、各ゲート線と各ソース線との交点に画素毎に配置された複数のTFTとを有するものが挙げられる。
【0138】
液晶パネルの表示モードは特に限定されず、対向電極がTFT基板71に設けられた水平配向(横電界)モードの液晶パネルであってもよいし、対向電極が液晶層73を挟んで対向基板72に設けられた垂直配向(縦電界)モードであってもよい。
【0139】
図16は、
図15に示した液晶パネルの平面模式図である。対向基板72は、支持基板と、支持基板上に形成されたブラックマトリクス及びCF層を備えるカラーフィルタ(CF)基板であってもよい。
【0140】
図16に示すように、CF基板は、例えば、カラーフィルタ74が面内に並べられ、ブラックマトリクス75で区画された構成を有してもよい。カラーフィルタ74は、赤色のカラーフィルタ74R、緑色のカラーフィルタ74G及び青色のカラーフィルタ74Bを含んでもよい。カラーフィルタ74の配置は、行方向に赤色、緑色、青色のカラーフィルタが繰り返し並べられ、列方向に同色のカラーフィルタ74R、74G、74Bが並べられたストライプ配列であってもよい。赤色、緑色及び青色のカラーフィルタ74R、74G、74Bと重畳する画素が、それぞれ赤色、青色、緑色の画素となる。
【0141】
ブラックマトリクス75としては、液晶パネルの分野で通常用いられるものを用いることができ、例えば黒色顔料を含む樹脂からなるものであってもよい。ブラックマトリクス75は、平面視において、ゲート線及び/又はソース線と重なるように格子状に設けられてもよい。
【0142】
液晶層73は、液晶分子を含む。共通電極と画素電極との間に電圧が印加されると、液晶層73中に電界が発生し、上記電界に応じて液晶分子の配向が変化することにより、光の透過量を制御することができる。電圧無印加時における液晶分子の配向方位は、配向膜の規制力によって制御される。上記電圧無印加時とは、液晶層73中に一対の電極間に電圧が印加されていないか、液晶分子の閾値未満の電圧が印加された場合をいう。
【0143】
上記液晶分子は、下記式で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。
Δε=(長軸方向の誘電率)-(短軸方向の誘電率)
【0144】
TFT基板71と液晶層73との間及び対向基板72と液晶層73との間には、それぞれ配向膜が設けられてもよい。液晶層73への電圧無印加時には、主に配向膜の働きによって液晶分子の配向が制御される。例えば、水平配向モードでは、電圧無印加時の液晶分子のチルト角(プレチルト角)が、0~5°であってもよく、好ましくは0~3°、より好ましくは0~1°である。液晶分子のチルト角は、液晶分子の長軸(光軸)がTFT基板71及び対向基板72の表面に対して傾斜する角度を意味する。
【0145】
第二の直線偏光板80は、液晶パネル70の円偏光素子20と反対側(液晶パネル70の観察者Uとは反対側)に配置される。第一の直線偏光板21の透過軸と第二の直線偏光板80の透過軸とは直交するようにクロスニコルに配置されることが好ましい。第二の直線偏光板80としては、第一の直線偏光板21と同様のものを用いることができる。
【0146】
ノーマリーブラックモードを例に挙げると、電圧無印加時には液晶分子の配向方位は平面視において、第一の直線偏光板21及び第二の直線偏光板80の透過軸のいずれか一方と略平行に配向している。液晶パネルの背面から入射された光は、第二の直線偏光板80を透過し、直線偏光となる。上記直線偏光は、液晶層73を透過するが、第一の直線偏光板21を透過しないため、液晶パネルは黒表示となる。一方で、液晶層73に電圧が印加されると、液晶分子の配向方位が初期配向方位から変化し、液晶分子の長軸方向が第一の直線偏光板21及び第二の直線偏光板80の透過軸と角度を成すことで、第一の直線偏光板21を光が透過し、液晶パネルは白表示となる。
【0147】
本実施形態では、第一の直線偏光板21を透過した直線偏光が1/4波長板22を透過することで円偏光となる。円偏光素子として上述のコレステリック液晶素子を用いた場合、コレステリック液晶素子により反射された光が迷光となり、映像が不鮮明に見える一因となるため、液晶パネルの表示品位を低下させるおそれがある。そのため、表示パネル10として液晶パネルを用いる本実施形態では、円偏光素子として、第一の直線偏光板21と1/4波長板22との積層体を用いることが好ましい。
【0148】
(バックライト)
本実施形態の表示装置100は、更に、第二の直線偏光板80の液晶パネル70と反対側に、光源を含むバックライトを備えてもよい。
【0149】
バックライトは、直下型であってもよいし、エッジライト型であってもよい。直下型のバックライトは、液晶パネルの背面に光源が配置されている。エッジライト型のバックライトは、液晶パネルの背面に配置された導光板と、上記導光板の側面に配置された光源とを有する。エッジライト型のバックライトは、光源から導光板の側面に光を入射し、導光板から液晶パネル側に光を出射する。導光板の背面に反射シートが配置されてもよく、導光板と表示装置100との間にプリズムシート、拡散シート等が配置されてもよい。
【0150】
上記バックライトは、上記光源から出射された光を、上記液晶パネルの厚み方向に沿った方向に集光させることが好ましい。上記バックライトの半値幅(全角)は、15°~30°であってもよい。上記半値幅は、IEC61747-30に準拠した方法で輝度視野角特性を測定し、最大輝度に対して半分以上の輝度となる角度範囲によって規定することができる。
【0151】
<実施形態4>
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
図17は、実施形態4のヘッドマウントディスプレイの外観の一例を示す斜視模式図である。
図17に示すように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ200は、表示装置100と、観察者Uの頭部に装着する装着部210と、を備える。本実施形態のヘッドマウントディスプレイ200は、装着時に観察者Uの眼が外光から遮蔽された空間内に配置される没入型のHMDであってもよいし、眼鏡型のHMDであってもよい。
【0152】
表示装置100は、観察者Uに対して映像(画像)を表示するための機能を有する。表示装置100は、映像表示信号を映像に変換するものである。
【0153】
ヘッドマウントディスプレイ200が眼鏡型のHMDである場合、
図17に示すように、眼鏡のレンズに相当する部分が表示装置100であり、装着部210は、観察者Uの耳に掛ける眼鏡のフレームであってもよい。
【0154】
ヘッドマウントディスプレイ200が没入型のHMDである場合、装着部210は、観察者Uが被ることにより頭部を一周し、ヘッドマウントディスプレイ200を観察者Uの頭部へ固定する装着バンドを含んでいてもよい。
【0155】
ヘッドマウントディスプレイ200の方式は、左右の眼に対して一つの表示パネルが配置される1ディスプレイ方式であってもよいし、左右の眼にそれぞれ表示パネルが配置される2ディスプレイ方式であってもよい。上記没入型のHMDは、例えば、1ディスプレイ方式及び2ディスプレイ方式に適用できる。眼鏡型のHMDは、例えば、2ディスプレイ方式に適用できる。
【0156】
ヘッドマウントディスプレイ200は、更に、表示装置100と観察者Uの顔との間に配置されたフェイスクッション220を備えてもよい。フェイスクッション220は、表示装置100と観察者Uの顔との間に配置された緩衝材であり、当該フェイスクッション220を配置することにより、ヘッドマウントディスプレイ200の使用中に観察者Uの視野に外光が入り込むことを抑えることができる。
【0157】
ヘッドマウントディスプレイ200は、更に、音声、音楽、効果音等の音響を発生させる機能を有する音響出力部を備えてもよい。
【0158】
音響出力部は、音響出力信号を音響に変換するものである。通常、ヘッドホンとして製品化されているものを用いることができる。また、音響出力部は、装着部210と共に、当該ヘッドマウントディスプレイ200を観察者Uの頭部に装着させる際の、耳への当接部として機能させてもよい。
【0159】
また、ヘッドマウントディスプレイ200は、映像表示信号及び音響出力信号を出力する駆動ユニットを備えていてもよい。駆動ユニットは、表示装置100及び音響出力部と有線又は無線で接続されている。無線通信の方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)が挙げられる。
【実施例0160】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0161】
<比較例1>
上記比較形態に対応する比較例1の表示装置100Rについて、光学設計ソフトを使用してシミュレーションを実施し、円偏光選択反射素子50を貼る面が平面になるかを検証した。
図18は、比較例1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図及びシミュレーション図である。
図19は、
図18において破線で囲まれた領域の拡大図である。
図20は、比較例1に係る表示装置のシミュレーション結果の詳細を示す図である。
図18~
図20では、目に入る角度Yが互いに異なる光1LR、光1LY、光1LG、及び、光1LBが示されている。光1LRは、目に入る角度Yが10°であり、光1LYは、目に入る角度Yが20°であり、光1LGは、目に入る角度Yが45°であり、光1LBは、目に入る角度Yが0°である。光1LR、光1LY、光1LG、及び、光1LBがどのような経路を辿るかをシミュレーションにより求めた。なお、目に入る角度Yは、観察者Uが表示装置100を正面視した際の水平方向を基準(0°)として求められる。すなわち、目に入る角度Yは、観察者Uが表示装置100を正面視した際の水平方向と目に入る光とのなす角度である。
【0162】
図18に示すように、比較例1の表示装置100Rが備えるレンズ40Rは、表示パネル10側に配置された第一のレンズ部40RA及び円偏光選択反射素子50側に配置された第二のレンズ部40RBを備えていた。ここで、第一のレンズ部40RA及び第二のレンズ部40RBは、それぞれ、第一のレンズ部40A及び第二のレンズ部40Bと同様であった。なお、基本的には、レンズ40Rが1つのレンズ部からなる構成についてシミュレーションを行うのが理想的であるが、レンズパワーをより高めるために、本比較例ではレンズ40Rが第一のレンズ部40RA及び第二のレンズ部40RBを含む構成についてシミュレーションを行った。
【0163】
比較例1の表示装置100Rが備える第一の直線偏光板21及び第一の1/4波長板22は表示パネル10に貼り付けられていたが、
図18の下側の図及び
図20では省略されている。また、レンズ40Rが備える2つのレンズ部(第一のレンズ部40RA及び第二のレンズ部40RB)のうち、左側(表示パネル10側)のレンズ部(第一のレンズ部40RA)の左面(表示パネル10側の面)にはハーフミラー30が貼り付けられていた。更に、2つのレンズ部(第一のレンズ部40RA及び第二のレンズ部40RB)のうち、右側(円偏光選択反射素子50側)のレンズ部(第二のレンズ40部RB)の右面(円偏光選択反射素子50側の面)には円偏光選択反射素子50が貼り付けられていた。
【0164】
シミュレーションの結果、
図20に示すように、表示パネル10の直径は45.1mmであった。第一のレンズ部40RAの中心と第二のレンズ部40RBの中心とのギャップは、1.0mmであった。第一のレンズ部40RAと表示パネル10の中心とのギャップは16.7mmであった。
【0165】
第一のレンズ部40RAの厚みは8.0mmであり、直径は49.9mmであった。第一のレンズ部40RAの表示パネル10側の中心付近の曲率半径は5000mmであり、第一のレンズ部40RAの円偏光選択反射素子50側の中心付近の曲率半径は67mmであった。
【0166】
第二のレンズ部40RBの厚みは4.4mmであり、直径は50.0mmであった。第二のレンズ部40RBの表示パネル10側の中心付近の曲率半径は122mmであり、第二のレンズ部40RBの円偏光選択反射素子50側の中心付近の曲率半径は140mmであった。すなわち、比較例1では、円偏光選択反射素子50が貼り付けられる面(具体的には、レンズ40Rの円偏光選択反射素子50側の面)は球面状である必要があった。
【0167】
以上のように、比較例1の表示装置100Rにおいて、円偏光選択反射素子50に最も近いレンズ面(第二のレンズ部40RBの円偏光選択反射素子50側のレンズ面)は、中心の曲率半径が140mmであり、球面状である必要があった。そのため、円偏光選択反射素子50をレンズ40Rへ貼り付けるのは困難であると考えられる。
【0168】
<実施例1>
上記実施形態1の変形例1に対応する実施例1の表示装置100について、比較例1と同様に光学設計ソフトを使用してシミュレーションを実施し、円偏光選択反射素子50を貼る面が平面になるかを検証した。
図21は、実施例1に係る表示装置を模式的に示した分解模式図及びシミュレーション図である。
図22は、
図21において破線で囲まれた領域の拡大図である。
図23は、実施例1に係る表示装置のシミュレーション結果の詳細を示す図である。
図21~
図23では、目に入る角度Yが互いに異なる光1LR、光1LY、光1LG、光1LB、光1LP、及び、光1LWが示されている。光1LRは、目に入る角度Yが10°であり、光1LYは、目に入る角度Yが35°であり、光1LGは、目に入る角度Yが5°であり、光1LBは、目に入る角度Yが0°であり、光1LPは、目に入る角度Yが45°であり、光1LWは、目に入る角度Yが20°である。光1LR、光1LY、光1LG、光1LB、光1LP、及び、光1LWがどのような経路を辿るかをシミュレーションにより求めた。
【0169】
図21に示すように、実施例1の表示装置100が備えるレンズ40は、表示パネル10側に配置された第一のレンズ部40A及び円偏光選択反射素子50側に配置された第二のレンズ部40Bを備えていた。なお、基本的には、レンズ40が1つのレンズ部からなる構成についてシミュレーションを行うのが理想的であるが、レンズパワーをより高めるために、本実施例ではレンズ40が第一のレンズ部40A及び第二のレンズ部40Bを含む構成についてシミュレーションを行った。
【0170】
実施例1の表示装置100が備える第一の直線偏光板21及び第一の1/4波長板22は表示パネル10に貼り付けられていたが、
図21の下側の図、
図22及び
図23では省略されている。また、レンズ40が備える2つのレンズ部(第一のレンズ部40A及び第二のレンズ部40B)のうち、左側(表示パネル10側)のレンズ部(第一のレンズ部40A)の左面(表示パネル10側の面)にはハーフミラー30が貼り付けられていた。更に、2つのレンズ部(第一のレンズ部40A及び第二のレンズ部40B)のうち、右側(円偏光選択反射素子50側)のレンズ部(第二のレンズ部40B)の右面(円偏光選択反射素子50側の面)には、円偏光選択反射素子50が貼り付けられていた。
【0171】
シミュレーションの結果、
図23に示すように、表示パネル10の直径は49.5mmであった。第一のレンズ部40Aの中心と第二のレンズ部40Bの中心とのギャップは、1.4mmであった。第一のレンズ部40Aと表示パネル10の中心とのギャップは1.7mmであった。
【0172】
第一のレンズ部40Aの厚みは8.0mmであり、直径は49.3mmであった。第一のレンズ部40Aの表示パネル10側の中心付近の曲率半径は5000mmであり、第一のレンズ部40Aの円偏光選択反射素子50側の中心付近の曲率半径は67mmであった。
【0173】
第二のレンズ部40Bの厚みは1.8mmであり、PBレンズ40PBの厚みは0.5mmであった。第二のレンズ部40B及びPBレンズ40PBからなるレンズ群の直径は48.4mmであった。上記レンズ群の表示パネル10側の中心付近の曲率半径は122mmであり、上記レンズ群の円偏光選択反射素子50側の中心付近の曲率半径は∞mmであった。すなわち、実施例1では、第二のレンズ部40B及びPBレンズ40PBからなるレンズ群の円偏光選択反射素子50側のレンズ形状が平面状であることが分かった。ここで、PBレンズ40PBの主面は平面状であるため、レンズ40(より具体的には、第二のレンズ部40B)の円偏光選択反射素子50側の面は平面状であると言える。このように、実施例1では、円偏光選択反射素子50が貼り付けられる面(具体的には、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面)が平面状であることが分かった。
【0174】
以上の通り、PBレンズ40PBを用いた実施例1では、比較例1と概ね同様の特性を得ながら、円偏光選択反射素子50に最も近いレンズ面(上記レンズ群の円偏光選択反射素子50側のレンズ面、より具体的には、レンズ40の円偏光選択反射素子50側のレンズ面)を平面状とすることが可能であった。すなわち、レンズ40と円偏光選択反射素子50との間にPBレンズ40PBを配置することにより、円偏光選択反射素子50を貼り付けるレンズ面を球面状ではなく平面状とすることができ、円偏光選択反射素子50を容易にレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができると考えられる。
【0175】
また、本実施例の表示装置100は、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系であり、表示装置100の薄型化を実現することができた。また、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをPBレンズ40PBに付与することが可能となるため、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができた。
【0176】
<実施例2>
本実施例の表示装置は、上記実施形態1の表示装置100に対応する。上記実施例1と同様に、本実施例の表示装置100は、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系であり、表示装置100の薄型化を実現することができる。また、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをPBレンズ40PBに付与することが可能となるため、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。更に、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、円偏光選択反射素子50を容易にレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができると考えられる。
【0177】
一方、本実施例の表示装置100では、ゴースト像が視認される場合がある。PBレンズ40PBは回折系のレンズであるため、全ての光(斜め入射光、全可視光波長域)に対して、回折効率100%を実現することが困難である。例えば、
図11の(xii)に示すように、回折しない光が集光も発散もせず、円偏光が逆円偏光になることもなく、そのまま抜けていくことがある。これがゴースト像の発生原因となると考えられる。
【0178】
<実施例3>
本実施例の表示装置は、上記実施形態1の変形例2の表示装置100に対応する。上記実施例1と同様に、本実施例の表示装置100は、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系であり、表示装置100の薄型化を実現することができる。また、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをPBレンズ40PBに付与することが可能となるため、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。更に、レンズ40の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、円偏光選択反射素子50を容易にレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができると考えられる。
【0179】
更に、本実施例では、ゴースト像が視認されるのを抑制することができる。ここで、PBレンズ40PBで回折しなかった光は、偏光状態が本来の意図とは異なるため、円偏光選択反射素子50を抜けてしまうことになる。しかしながら、本実施例の表示装置100では、円偏光選択反射素子50と観察者Uとの間に観察者側PBレンズ41PBを配置することにより、正しい経路で抜けてきた光は観察者Uの目に焦点を結び、ゴースト像の要因になる光は観察者Uの目に焦点を結ばないようになり、ゴースト像が視認されるのを抑制できると考えられる。
【0180】
<実施例4>
本実施例の表示装置は、上記実施形態2の表示装置100に対応する。上記実施例1と同様に、本実施例の表示装置100は、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系であり、表示装置100の薄型化を実現することができる。また、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをPBレンズ40PBに付与することが可能となるため、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。更に、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、第一の円偏光選択反射素子50を容易に第一のレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができると考えられる。
【0181】
更に、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーを表示パネル側PBレンズ42PBに付与することが可能となるため、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。また、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面が平面状であることにより、第二の円偏光選択反射素子60を容易に第二のレンズ41に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができると考えられる。
【0182】
更に、
図12に示すように、第一の経路RT1に加えて、第二の経路RT2の光を利用することが可能となり、光の利用効率を高めることができる。
【0183】
<実施例5>
本実施例の表示装置は、上記実施形態2の変形例1の表示装置100に対応する。上記実施例4と同様に、本実施例の表示装置100は、ハーフミラー30を用いた折り返し光学系であり、表示装置100の薄型化を実現することができる。また、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーをPBレンズ40PBに付与することが可能となるため、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。更に、第一のレンズ40の第一の円偏光選択反射素子50側の面が平面状であることにより、第一の円偏光選択反射素子50を容易に第一のレンズ40に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができると考えられる。
【0184】
更に、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面を球面とする場合に得られるレンズパワーを表示パネル側PBレンズ42PBに付与することが可能となるため、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面を平面状にしつつ表示装置100の表示特性を向上させることができる。また、第二のレンズ41の第二の円偏光選択反射素子60側の面が平面状であることにより、第二の円偏光選択反射素子60を容易に第二のレンズ41に貼り合わせることが可能となり、生産性を向上させることができると考えられる。
【0185】
更に、
図12に示すように、第一の経路RT1に加えて、第二の経路RT2の光を利用することが可能となり、光の利用効率を高めることができる。
【0186】
更に、本実施例では、ゴースト像が視認されるのを抑制することができる。ここで、PBレンズ40PBで回折しなかった光は、偏光状態が本来の意図とは異なるため、円偏光選択反射素子50を抜けてしまうことになる。しかしながら、本実施例の表示装置100では、円偏光選択反射素子50と観察者Uとの間に観察者側PBレンズ41PBを配置することにより、正しい経路で抜けてきた光は観察者Uの目に焦点を結び、ゴースト像の要因になる光は観察者Uの目に焦点を結ばないようになり、ゴースト像が視認されるのを抑制できると考えられる。