(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153563
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】多結晶シリコンカーバイド基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20241022BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20241022BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20241022BHJP
C30B 25/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C30B29/36 A
H01L21/20
C23C16/42
C30B25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024054760
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】2350377-4
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】18/614,538
(32)【優先日】2024-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】312014443
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス インターナショナル エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】マグヌソン リンドグレン,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】エリソン,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】リーバ,カルロ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1、第2の多結晶SiC基板内で伝播する機械的欠陥の可能性を防止、軽減又は低減する多結晶シリコンカーバイド(SiC)基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】方法は、1つ以上の粉末状半導体材料を焼結することによって、焼結プロセスで第1の多結晶SiC基板を形成することを含む。第1の多結晶SiC基板は、焼結プロセスを利用して形成した後、化学気相堆積(CVD)プロセスで第2の多結晶SiC基板を形成するために利用され、第2の多結晶SiC基板を、CVDプロセスで第1の多結晶SiC基板の表面上にSiCを堆積させることによって形成する。第1の多結晶SiC基板及び第2の多結晶SiC基板は、同じ又は類似の半導体材料(例えば、SiC)で作製されているので、第1の多結晶SiC基板の第1の熱膨張係数(CTE)は、第2の多結晶SiC基板の第2のCTEと同じであるか又は類似している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
表面を有するキャリア多結晶シリコンカーバイド(SiC)基板を形成することであって、前記キャリア多結晶SiC基板を形成するために1つ以上の粉末状材料を焼結することを含む、キャリア多結晶SiC基板を形成することと、
前記キャリア多結晶SiC基板の前記表面上に多結晶SiC基板を形成することであって、化学気相堆積(CVD)プロセスを用いて前記キャリア多結晶SiC基板の前記表面上にSiCを堆積させることを含む、多結晶SiC基板を形成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記多結晶SiC基板及び前記キャリア多結晶SiC基板を冷却することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリア多結晶SiC基板が第1の熱膨張係数(CTE)を有し、前記多結晶SiC基板が第2のCTEを有し、前記第1のCTEが前記第2のCTEに実質的に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリア多結晶SiC基板の前記表面と反対側に面する前記多結晶SiC基板の表面を、5オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記キャリア多結晶SiC基板から前記多結晶SiC基板を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリア多結晶SiC基板から前記多結晶SiC基板を除去することが、前記キャリア多結晶SiC基板を研削することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリア多結晶SiC基板を研削することが、前記多結晶SiC基板の表面を露出させることを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記多結晶SiC基板の表面上に1つ以上の半導体層を形成することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の半導体層が、少なくとも1つの単結晶層を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの単結晶層が、単結晶SiC層である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
デバイスであって、
第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面とを含む第1の多結晶SiC基板であって、第1の立方晶構造を有する、第1の多結晶SiC基板と、
前記第1の多結晶SiC基板の前記第2の表面に結合された第2の多結晶SiC基板であって、第2の立方晶構造を有する、第2の多結晶SiC基板と
を備える、デバイス。
【請求項12】
前記第1の多結晶SiC基板が、第1の側壁を有し、
前記第2の多結晶SiC基板が、前記第1の側壁と実質的に同一平面上にある第2の側壁を有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の多結晶SiC基板が、第1の熱膨張係数(CTE)を有し、
前記第2の多結晶SiC基板が、第2のCTEを有し、
前記第1のCTEが、前記第2のCTEと実質的に等しい、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第2の多結晶SiC基板が、前記第1の表面と反対側に面する第3の表面を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第2の多結晶SiC基板は、前記第1の多結晶SiC基板と反対側に面する第3の表面を含み、前記第2の多結晶SiC基板の前記第3の表面は、5オングストローム(Å)以下の粗さを有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
方法であって、
第1の熱膨張係数を有する多結晶SiC基板を、前記第1の熱膨張係数に実質的に等しい第2の熱膨張係数を有する多結晶SiCキャリア基板の第1の表面上に形成することであって、前記キャリア多結晶SiC基板と反対側に面する前記多結晶SiC基板の第2の表面を形成することを含む、多結晶SiC基板を形成することと、
前記多結晶SiC基板を形成した後に、前記キャリア多結晶SiC基板から前記多結晶SiC基板を除去することと
を含む、方法。
【請求項17】
前記多結晶SiC基板の前記第2の表面を、20オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記多結晶SiC基板の前記第2の表面上に単結晶SiC層を形成することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記多結晶SiC基板が第1の密度を有し、前記単結晶SiC層が前記第1の密度と実質的に等しい第2の密度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多結晶SiC基板及び前記多結晶SiCキャリア基板が、立方晶構造を有することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多結晶シリコンカーバイド(SiC)基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
半導体産業は、特に電子デバイス又は構成要素(例えば、ダイオード、トランジスタ、又は他の類似の電力用途)の製造のために、シリコンカーバイド(SiC)にかなりの関心を示している。
【0003】
シリコンカーバイドベースの電子デバイスの開発及び製造は、シリコンカーバイドウェハを形成することによる電気的及び機械的特性などの要因によって制限される。少なくとも1つの問題は、ウェハを製造するときにウェハが受ける応力又は歪みの量である。この応力及び歪みは、キャリア上にウェハを形成するときに、キャリアとウェハが形成される材料との間の熱的不整合の結果である。この応力及び歪みは、亀裂、反り、チッピング、破損、又は他の類似若しくは同様の機械的欠陥などの機械的欠陥の伝播をもたらし得、その結果、製造されたウェハが選択された公差外となり、公差外の製造されたウェハが廃棄され、製造コスト及び廃棄コストが増加する可能性がある。更に、ウェハがキャリア上に形成された後、ウェハとキャリアとの間の熱的不整合は、半導体及び電子デバイスを製造するために更なる処理及び精製工程(例えば、研磨、薄化、加熱など)を実行するときに、ウェハ、キャリア、又はその両方がこれらの追加の処理及び精製工程中にさらされる温度の変化(すなわち、温度の上昇又は低下)に起因して、キャリア、ウェハ、又はその両方内に伝搬する機械的欠陥をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の製造方法の少なくとも1つの実施形態は、粉末状半導体材料(例えば、粉末状シリコン(Si)と粉末状炭素(C)との混合物、又は粉末状SiC)を焼結することによって、焼結プロセスで第1の多結晶シリコンカーバイド(SiC)基板を形成することを含む。第1の多結晶SiC基板が焼結プロセスを利用して形成された後、第1の多結晶シリコンカーバイドSiC基板は、化学気相堆積(CVD)プロセスで第2の多結晶SiC基板を形成するために利用される。第2の多結晶SiC基板は、CVDプロセスで第1の多結晶SiC基板の表面上にSiCを堆積させることによって、第1の多結晶SiC基板の表面上に形成される。第1及び第2の多結晶SiC基板は、同じ又は類似の半導体材料(例えば、SiC)で作製されているので、第1の多結晶SiC基板の第1の熱膨張係数(CTE)は、第2の多結晶SiC基板の第2のCTEと同じである、又は類似している。
【0005】
それぞれのキャリア(例えば、グラファイト又はグラフェンキャリア)と、それぞれのキャリアに形成されたそれぞれのウェハ(例えば、シリコンカーバイド(SiC)ウェハ)との間に、それぞれのキャリア、それぞれのウェハ、又はその両方の内部に伝播する機械的欠陥をもたらし得る熱的不整合が存在する場合とは異なり、それぞれの半導体及び電子デバイスを製造するために更なる処理及び精製工程(例えば、研磨、薄化、加熱など)を実行する際、本開示の製造方法の少なくとも1つの実施形態では、第1の多結晶SiC基板(例えば、キャリア)及び第2の多結晶SiC基板(例えば、ウェハ)のそれぞれの第1及び第2のCTEは、第1の多結晶SiC基板(例えば、キャリア)を利用して第2の多結晶SiC基板(例えば、ウェハ)を製造する際に第1及び第2の多結晶SiC基板内で伝播又は発生する機械的欠陥(例えば、亀裂、反り、チッピング、破損など)の伝播の可能性を防止、緩和又は低減するために、互いに実質的に同じである(例えば、等しい)又は類似している。例えば、第1の多結晶SiC基板及び第2の多結晶SiC基板のいずれかにおける熱の増加及び減少(すなわち、温度の上昇又は低下)にさらされることによって引き起こされる応力は、製造中の後の段階で起こり得る他の処理及び精製工程において更に軽減される。第2の多結晶SiC基板の製造方法の少なくとも一実施形態では、第2の多結晶SiC基板の表面が露出するように、第1の多結晶SiC基板が研削され得る。この研削プロセスは、第1及び第2の多結晶SiC基板の両方における温度の上昇をもたらし得る。しかしながら、第1及び第2のCTEが同じである、又は類似しているため、機械的欠陥のいかなる伝播も防止されるか、又は伝播の可能性が低減される。
【0006】
上記の議論を考慮して、本開示の実施形態は、第1の多結晶SiC基板を利用して第2の多結晶SiC基板を形成するときに、第1及び第2の多結晶SiC基板内で伝播する機械的欠陥の可能性を防止、軽減、又は低減する。また、上記の議論を考慮して、本開示の実施形態は、第1及び第2の多結晶SiC基板を更に精製又は処理するときに、第1及び第2の多結晶SiC基板内で伝播する機械的欠陥の可能性を防止又は軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】キャリア多結晶SiC基板を形成又は製造する方法、及びキャリア多結晶SiC基板を利用して多結晶SiC基板を形成又は製造する方法の一実施形態のフローチャートである。
【
図2A】キャリア多結晶SiC基板を形成する方法及びキャリア多結晶SiC基板を利用して多結晶SiC基板を形成する方法の実施形態中のそれぞれの中間構造の側面図である。
【
図2B】キャリア多結晶SiC基板を形成する方法及びキャリア多結晶SiC基板を利用して多結晶SiC基板を形成する方法の実施形態中のそれぞれの中間構造の側面図である。
【
図2C】キャリア多結晶SiC基板を形成する方法及びキャリア多結晶SiC基板を利用して多結晶SiC基板を形成する方法の実施形態中のそれぞれの中間構造の側面図である。
【
図3】多結晶SiC基板を形成するために利用されるキャリア多結晶SiC基板の一実施形態の斜視側面図である。
【
図4】
図3に示されたキャリア多結晶SiC基板の実施形態上の多結晶SiC基板の一実施形態の斜視側面図である。
【
図5】多結晶SiC基板の実施形態の斜視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の形成又は製造方法の少なくとも1つの実施形態は、粉末状半導体材料(例えば、粉末状シリコン(Si)と粉末状炭素(C)との混合物、又は粉末状SiC)を焼結することによって、焼結プロセスで第1の多結晶シリコンカーバイド(SiC)基板を形成することを含む。第1の多結晶SiC基板が焼結プロセスを利用して形成された後、第1の多結晶シリコンカーバイドSiC基板は、化学気相堆積(CVD)プロセスで第2の多結晶SiC基板を形成するために利用される。第2の多結晶SiC基板は、CVDプロセスで第1の多結晶SiC基板の表面上にSiCを堆積させることによって、第1の多結晶SiC基板の表面上に形成される。第1及び第2の多結晶SiC基板は、同じ又は類似の半導体材料(例えば、SiC)で作製されているので、第1の多結晶SiC基板の第1の熱膨張係数(CTE)は、第2の多結晶SiC基板の第2のCTEと同じである、又は類似している。これらの第1及び第2のCTEが同じである又は類似していることは、第1の多結晶SiC基板を利用して第2の多結晶SiC基板を製造するときに、第2の多結晶SiC基板内に存在する機械的欠陥(例えば、亀裂、反りなど)の伝播の可能性を防止又は低減する。
【0009】
第2の多結晶SiC基板を形成するためのCVDプロセス中、第1の多結晶SiC基板は、第1の多結晶SiC基板を熱膨張させる(すなわち、体積を増加させる)熱にさらされる。第1の多結晶SiC基板に第2の多結晶SiC基板を形成する際に、第1の多結晶SiC基板の表面上に堆積したSiCが熱にさらされることにより、第1の多結晶SiC基板の表面上に堆積したSiCが熱膨張する。第1の多結晶SiC基板がSiCで作製され、第2の多結晶SiC基板がSiCで形成されているため、第1の多結晶SiC基板と多結晶SiC基板を形成するために利用されるSiCとは、同じ又は類似の熱膨張係数(CTE)を有する。第1の多結晶SiC基板及び第2の多結晶SiC基板を形成するために利用されているSiCの両方における膨張は、熱にさらされたときに同じ又は類似の熱膨張を有するため、第1の多結晶SiC基板及び第2の多結晶SiC基板を形成するために利用されているSiCにおける応力及び歪みが緩和されて、第2の多結晶SiC基板を形成するときに第2の多結晶SiC基板内の機械的欠陥の伝播の可能性が防止又は低減される。
【0010】
この同じ又は類似のCTEは、第1の多結晶SiC基板及び第2の多結晶SiC基板を形成するために利用されるSiCが、熱にさらされたとき(すなわち、温度の上昇)に同じ又は類似の熱膨張を有すること、又は冷却されたとき(すなわち、温度の低下)に同じ又は類似の熱収縮を有することをもたらす。第1及び第2の多結晶SiC基板の熱膨張及び収縮の間のこの類似性は、第1の多結晶SiC基板を利用して第2の多結晶SiC基板を形成するときに、第2の多結晶SiC基板内の機械的欠陥の伝播の可能性を防止又は低減する。例えば、第1の多結晶SiC基板が、その上に第2の多結晶SiC基板が形成されたグラファイト又はグラフェン基板で置き換えられた場合、グラファイト又はグラフェン基板は、第2の多結晶SiC基板の第2のCTEとは異なる第3のCTEを有することになる。第2のCTEと第3のCTEとのこの差は、第2の多結晶SiC基板が第1の多結晶SiC基板を利用して形成される場合と比較して、グラファイト又はグラフェン基板と第2の多結晶SiC基板との熱膨張及び熱収縮により大きな差をもたらす。グラファイト又はグラフェン基板と第2の多結晶SiC基板との間の熱膨張のこのより大きな差は、グラファイト又はグラフェン基板と第2の多結晶SiC基板との間の熱膨張及び熱収縮のこれらの差の結果としての応力又は歪みの増加に起因して、第2の多結晶SiC基板を形成するときに第2の多結晶SiC基板内で伝播する機械的欠陥の可能性を上昇させる。この議論を考慮して、第2のCTEと同じであり得る又は類似し得る第1のCTEを有する第1の多結晶SiC基板上に第2のCTEを有する第2の多結晶SiC基板を形成することは、本開示の形成又は製造方法の少なくとも1つの実施形態を利用するときに、製造された第2の多結晶SiC基板内に存在する機械的欠陥(例えば、亀裂、反りなど)の伝播の可能性を防止又は低減する。
【0011】
第1の多結晶SiC基板の表面上に第2の多結晶SiC基板が形成されると、第1の多結晶SiC基板及び第2の多結晶SiC基板は冷却され、その結果、第1の多結晶SiC基板及び第2の多結晶SiC基板は熱収縮する(すなわち、体積が減少する)。第1及び第2の多結晶SiC基板は、互いに同じ又は類似の第1及び第2のCTEを有するので、第1及び第2の多結晶SiC基板が冷却されるとき、第1及び第2の多結晶SiC基板は、同じ又は類似の量だけ熱収縮する。第1及び第2の多結晶SiC基板の熱収縮の間のこの類似性は、第2の多結晶SiC基板を形成するときに第2の多結晶SiC基板内の機械的欠陥の伝播の可能性を防止又は低減する。例えば、第1の多結晶SiC基板が、その上に第2の多結晶SiC基板が形成されたグラファイト又はグラフェン基板で置き換えられた場合、グラファイト又はグラフェン基板は、第2の多結晶SiC基板の第2のCTEとは異なる第3のCTEを有することになる。第2のCTEと第3のCTEとのこの差は、第2の多結晶SiC基板が第1の多結晶SiC基板を利用して形成される場合と比較して、グラファイト又はグラフェン基板と第2の多結晶SiC基板との熱収縮の間により大きな差をもたらす。グラファイト又はグラフェン基板と第2の多結晶SiC基板との間の熱収縮のこの差は、グラファイト又はグラフェン基板と第2の多結晶SiC基板との間の熱収縮のこれらの差の結果としての応力又は歪みの増加に起因して、第2の多結晶SiC基板を形成するときに第2の多結晶SiC基板内で伝播する機械的欠陥の可能性を増加させる。この議論を考慮して、第2のCTEと同じ又は類似であり得る第1のCTEを有する第1の多結晶SiC基板上に第2のCTEを有する第2の多結晶SiC基板を形成することは、本開示の製造方法の少なくとも1つの実施形態を利用するときに、製造された第2の多結晶SiC基板内に存在する機械的欠陥(例えば、亀裂、反りなど)の伝播の可能性を防止又は低減する。
【0012】
本開示の方法の少なくとも1つの実施形態は、以下のように要約される。本方法は、表面を有するキャリア多結晶シリコンカーバイド(SiC)基板を形成することを含む。キャリア多結晶SiC基板を形成することは、キャリア多結晶SiC基板を形成するために1つ以上の粉末状材料を焼結することと、キャリア多結晶SiC基板の表面上に多結晶SiC基板を形成することとを含み、多結晶SiC基板を形成することは、化学気相堆積(CVD)プロセスを用いてキャリア多結晶SiC基板の表面上にSiCを堆積させることを含む。
【0013】
本開示のデバイスの少なくとも1つの実施形態は、以下のように要約される。本デバイスは、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を含む第1の多結晶SiC基板と、第1の多結晶SiC基板の第2の表面に結合された第2の多結晶SiC基板とを含む。
【0014】
本開示の方法の少なくとも1つの実施形態は、以下のように要約される。第1の熱膨張係数を有する多結晶SiC基板を、第1の熱膨張係数に実質的に等しい第2の熱膨張係数を有する多結晶SiCキャリア基板の第1の表面上に形成することであって、多結晶SiC基板を形成することが、キャリア多結晶SiC基板と反対側に面する多結晶SiC基板の第2の表面を形成することを含む、方法。多結晶SiC基板を形成した後、キャリア多結晶SiC基板から多結晶SiC基板を除去することとを含む。
【0015】
図1は、多結晶SiC基板114を製造するために、焼結プロセスを利用して形成されていてもよいキャリア多結晶SiC基板108を利用する多結晶SiC基板114の製造方法の一実施形態のフローチャート100である。
図1のフローチャート100に示すように、フローチャート100は、第1の工程102(すなわち、フローチャートの向きに基づく上側工程)、第2の工程104(すなわち、フローチャートの向きに基づく中間工程)、及び第3の工程106(すなわち、フローチャートの向きに基づく下側工程)を含む。
【0016】
第1の工程102において、キャリア多結晶SiC基板108が形成され、これは焼結プロセスを利用して形成され得る。キャリア多結晶SiC基板108は、支持基板、キャリア基板、支持ウェハ、キャリアウェハ、ダミーウェハ、又は何らかの他の類似のタイプのウェハ若しくは基板であり得る。少なくとも1つの実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108は、焼結プロセスによって形成される。キャリア多結晶SiC基板108を形成するためにこの焼結プロセスを利用することは、例えば、化学気相堆積(CVD)プロセス又は何らかの他の既知の基板製造技術などの別の方法でキャリア多結晶SiC基板108を形成することよりも安価であり得る。例えば、この焼結プロセスを利用してキャリア多結晶SiC基板108を形成する場合、焼結炉を利用して、キャリア多結晶SiC基板108を形成する粉末状ケイ素(Si)と粉末状炭素(C)の混合物を一緒に焼結する、又は炉を利用して、キャリア多結晶SiC基板108を形成する粉末状シリコンカーバイド(SiC)を一緒に焼結する。言い換えれば、キャリア多結晶SiC基板108は、シリコンカーバイド(SiC)基板製造産業内で知られている焼結プロセスを利用して形成され得る。キャリア多結晶SiC基板108は、本開示の
図2A、
図2B、
図3、及び
図4に見ることができ、本明細書において後で詳細に説明する。
【0017】
第1の工程でキャリア多結晶SiC基板108を形成した後、キャリア多結晶SiC基板108を冷却させて焼成炉から取り出す。キャリア多結晶SiC基板108が冷却され、焼結炉から取り出された後、キャリア多結晶SiC基板108は、化学気相堆積(CVD)ツールのチャンバ内に配置される。
【0018】
代替的な実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108は、上記の焼結プロセスを利用して予め形成された焼結体から形成され得る。焼結体が形成された後、キャリア多結晶SiC基板108は、キャリア多結晶SiC基板108を形成するために焼結体の全部又は一部を精製することによって形成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、焼結体が形成された後、焼結体の一部は、焼結体から分割又は切断され得、焼結体の一部は、研磨され、研削され、又は更なる加工及び精製工程若しくは加工及び精製工程の組み合わせを経て、キャリア多結晶SiC基板108に加工及び精製され得る。例えば、いくつかの代替的な実施形態では、焼結体が形成された後、焼結体は、研磨され、研削され、又は更なる処理及び精製工程若しくは処理及び精製工程の組み合わせを経て、キャリア多結晶SiC基板108に処理及び精製され得る。
【0019】
キャリア多結晶SiC基板108は、立方晶構造を有する。例えば、キャリア多結晶SiC基板108は、3C-SiC構造を有する。キャリア多結晶SiC基板108は、500mohm-cm以下、好ましくは25~250mohm-cmの範囲内、又はこの範囲の上限及び下限に等しい抵抗率を有し得る。
【0020】
キャリア多結晶SiC基板108がCVDツールのチャンバ内に配置された後、
図1に示されるフローチャート100の第2の工程104が実行され、ここで多結晶SiC基板114が、キャリア多結晶SiC基板108上に形成される。
図2Aに示すように、CVDプロセスは、SiCがキャリア多結晶SiC基板108の表面110上に形成されるように実行される。キャリア多結晶SiC基板108の表面110は、焼結表面である。キャリア多結晶SiC基板108のこの表面110は、
図2Aに示すようなキャリア多結晶SiC基板108の配向に基づいて、キャリア多結晶SiC基板108の上面である。
【0021】
いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板114がキャリア多結晶SiC基板108の表面110に形成される前に、キャリア多結晶SiC基板108の表面110が研磨されてもよい。いくつかの代替的な実施形態では、多結晶SiC基板114が、キャリア多結晶SiC基板108の表面110を研磨することなく、キャリア多結晶SiC基板108の表面110上に形成され、その結果、キャリア多結晶SiC基板108の表面110は、表面110が代わりに研磨される場合と比較して粗くなり得る。更にいくつかの他の代替的な実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108が焼結体の一部を切り取ることによって形成される場合(本明細書の先の説明を参照)、キャリア多結晶SiC基板108の表面110は、キャリア多結晶SiC基板108の表面110が切断面となるように、キャリア多結晶SiC基板108を形成するために焼結体から一部を切り取ることによって形成された表面であってもよい。言い換えれば、キャリア多結晶SiC基板114の表面110は、研磨面、表面110が研磨されたときと比較して粗い面、焼結面、切断面、又は多結晶SiC基板108が形成され得る何らかの他のタイプのそれぞれの表面であり得る。
【0022】
多結晶SiC基板114は、10mohm-cm以下、好ましくは1~5mohm-cmの範囲内、又はこの範囲の上限及び下限に等しい抵抗率を有し得る。
【0023】
キャリア多結晶SiC基板108上に多結晶SiC基板114を形成するための、キャリア多結晶SiC基板108の表面110上へのSiCの形成又は堆積は、
図2Aに示すように、それぞれの矢印112によって表される。例えば、キャリア多結晶SiC基板108上に多結晶SiC基板114を形成するこのCVDプロセスの少なくとも1つの実施形態では、シリコンカーバイド(SiC)又はケイ素(Si)及び炭素(C)粒子又は原子が、キャリア多結晶SiC基板108の表面110に導入される。時間とともに、これらの原子又は粒子は、キャリア多結晶SiC基板108の表面110に蓄積して、多結晶SiC基板110を形成する。
【0024】
キャリア多結晶SiC基板108に多結晶SiC基板114を形成するこのCVDプロセスは、キャリア多結晶SiC基板108上の多結晶SiC基板114の製造中にキャリア多結晶SiC基板108及びSiC又はSi及びC粒子が膨張するように、キャリア多結晶SiC基板108及びSiC又はSi及びC粒子及び原子を熱にさらす。しかしながら、キャリア多結晶SiC基板108と、キャリア多結晶SiC基板108の表面110上に形成されている多結晶SiC基板114とは、シリコンカーバイド材料で作製されているため、キャリア多結晶SiC基板108の第1の熱膨張係数(CTE)は、キャリア多結晶SiC基板108の表面110上に形成されている多結晶SiC基板114の第2のCTEと実質的に等しい、又は類似している。第1のCTEと第2のCTEとが互いに実質的に等しいため、キャリア多結晶SiC基板108と、キャリア多結晶SiC基板108の表面上に形成されている多結晶SiC基板114とは、このCVDプロセス中に熱にさらされたときに、互いに実質的に同じ又は類似の量だけ膨張する。
【0025】
キャリア多結晶SiC基板108上に多結晶SiC基板114を形成するときのキャリア多結晶SiC基板108と多結晶SiC基板114との間のこの同じ又は類似の膨張は、多結晶SiC基板114を形成するときに多結晶SiC基板114内で伝播する機械的欠陥の可能性を防止又は低減する。キャリア多結晶SiC基板108及び多結晶SiC基板114は、実質的に同じ又は同様の量だけ膨張するので、キャリア多結晶SiC基板108と多結晶SiC基板114との間の小さな熱膨張差に起因して生じる応力及び歪みは、比較的低い。例えば、代替として、第1の基板(例えば、黒鉛又はグラフェン基板)が、第1の基板上に形成されている第2の基板(例えば、シリコンカーバイド(SiC)基板)の第2のCTEと著しく異なる第1のCTEを有する場合、第2の基板を形成するときの第1の基板と第2の基板との間の熱膨張差は、熱不整合と呼ばれることがあり、第2の基板内に大量の応力及び歪みが生じる結果となる。第2の基板を形成する際に第1及び第2の基板における熱膨張の差に起因して第2の基板内に生じる応力及び歪みの増大又は高い応力及び歪みは、第2の基板を形成する際に第2の基板内に伝播する機械的欠陥(例えば、亀裂、反りなど)の可能性を上昇させる。この議論を考慮して、キャリア多結晶SiC基板108と、キャリア多結晶SiC基板108上に形成される多結晶SiC基板114とは、互いに実質的に等しいCTEを有するため、キャリア多結晶SiC基板108と多結晶SiC基板114との熱膨張は、実質的に同じであり、多結晶SiC基板114を形成するときに多結晶SiC基板114内伝播する機械的欠陥の可能性を防止又は低減する。多結晶SiC基板114を形成する際に多結晶SiC基板114内で伝播する機械的欠陥の可能性を防止又は低減することは、選択された公差外で形成される欠陥のある多結晶SiC基板114がより少なく製造されるので、廃棄コスト及び製造コストが低減され、よって、多結晶SiC基板114を製造するときの歩留まり数を増加させる。
【0026】
このCVDプロセスの結果は、多結晶SiC基板114がキャリア多結晶SiC基板108の表面110上に存在する
図2Bに見ることができる。少なくとも1つの実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108の第1の厚さT1は、多結晶SiC基板114の第2の厚さT2と実質的に等しいか又は同じであってもよい。いくつかの代替的な実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108の第1の厚さT1は、多結晶SiC基板114がキャリア多結晶SiC基板108よりも薄くなるように、多結晶SiC基板114の第2の厚さT2よりも大きくてもよい。
【0027】
第1の厚さT1は、200マイクロメートル(μm)~1500マイクロメートル(μm)の範囲内であってもよく、又はこの範囲の上端及び下端に等しくてもよい。いくつかの実施形態では、第2の厚さT2は、80マイクロメートル~180マイクロメートルの範囲内であってもよく、又はこの範囲の上端及び下端に等しくてもよい。いくつかの実施形態では、第2の厚さT2は、120マイクロメートル~180マイクロメートルの範囲内であってもよく、又はこの範囲の上端及び下端に等しくてもよい。第2の厚さT2は、300マイクロメートル以下であり得る。しかしながら、このプロセスは、多結晶SiC基板114が利用される使用及び用途に応じて、異なる様々な厚さを有する多結晶SiC基板114を形成するように適合され得ることが容易に理解されよう。
【0028】
図2Bに示されるように多結晶SiC基板114がキャリア多結晶SiC基板108の表面110上に形成された後、多結晶SiC基板114及びキャリア多結晶SiC基板108は、CVDプロセスの完了後に冷却される。キャリア多結晶SiC基板108の第1のCTEと多結晶SiC基板114の第2のCTEとが実質的に同じである又は等しいため、キャリア多結晶SiC基板108と多結晶SiC基板114とは実質的に同じ又は等しい量だけ熱収縮する。キャリア多結晶SiC基板108及び多結晶SiC基板114は、実質的に同じ又は同様の量だけ収縮するので、キャリア多結晶SiC基板108と多結晶SiC基板114との間の小さな熱収縮差に起因して生じる応力及び歪みは、比較的低い。例えば、代替として、第1の基板(例えば、黒鉛又はグラフェン基板)が、第1の基板上に形成されている第2の基板(例えば、シリコンカーバイド(SiC)基板)の第2のCTEと著しく異なる第1のCTEを有する場合、第2の基板を形成するときの第1の基板と第2の基板との間の熱収縮差は、熱不整合と呼ばれることがあり、第2の基板内に大量の応力及び歪みが生じる結果となる。第1及び第2の基板を冷却するときに第1及び第2の基板における熱収縮の差に起因して第2の基板内に生じるこの応力及び歪みの増大又は高い応力及び歪みは、第1及び第2の基板を冷却するときに第2の基板内に伝播する機械的欠陥(例えば、亀裂、反りなど)の可能性を上昇させる。この議論を考慮すると、キャリア多結晶SiC基板108と、キャリア多結晶SiC基板108上に形成されている多結晶SiC基板114とは、互いに実質的に等しいCTEを有するため、キャリア多結晶SiC基板108及び多結晶SiC基板114の熱収縮は、実質的に同じであり、多結晶SiC基板114及びキャリア多結晶SiC基板114を冷却するときに、機械的欠陥が多結晶SiC基板108内に伝播する可能性を防止又は低減する。多結晶SiC基板114を形成するときに多結晶SiC基板114内で伝播する機械的欠陥の可能性を防止又は低減することは、選択された公差外で形成される欠陥のある多結晶SiC基板114がより少なく製造されるので、廃棄コスト及び製造コストを低減し、よって、多結晶SiC基板114を製造するときの歩留まり数を増加させる。
【0029】
多結晶SiC基板114は、キャリア多結晶SiC基板108の立方晶構造と同じ又は類似の立方晶構造を有するように形成される。
【0030】
多結晶SiC基板114がCVDプロセス又は技術を利用してキャリア多結晶SiC基板108の表面110上に形成される第2の工程の後、
図1に示されるフローチャート100の第3の工程において、多結晶SiC基板114がキャリア多結晶SiC基板108から除去される。例えば、多結晶SiC基板108は、多結晶SiC基板114が形成されたキャリア多結晶SiC基板114の表面110に予め多結晶SiC基板114の表面116を露出させるために、キャリア多結晶SiC基板114を除去する(例えば、研削する)ことによって、キャリア多結晶SiC基板108から除去され得る。この除去工程の結果は、多結晶SiC基板114が残り、キャリア多結晶SiC基板108から除去されている
図2Cに見ることができる。言い換えれば、
図2Cは、キャリア多結晶SiC基板108から除去された後の多結晶SiC基板114の側面図である。多結晶SiC基板114を形成又は製造する方法のいくつかの代替的な実施形態では、多結晶SiC基板114は、例えば、分割技術、切断技術、又はキャリア多結晶SiC基板108から多結晶SiC基板114を除去するためのいくつかの他のタイプの技術などの別の技術によって、キャリア多結晶SiC基板108から除去され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板114は、150ミリメートル~300ミリメートルの範囲内の直径を有するか、又は直径は、この範囲の上端及び下端に等しくてもよい。いくつかの実施形態では、直径は、200ミリメートルに実質的に等しくてもよい。
【0032】
多結晶SiC基板114は、立方晶構造を有する。例えば、少なくとも1つの実施形態では、多結晶SiC基板114は、90%以上の3C-SiCで構成され、又は好ましい実施形態では、95%以上の3C-SiCで構成される。多結晶SiC基板の残りの部分は、存在(existing)又は存在する(present)場合、例えば、4H-SiC、6H-SiC、及び15R-SiCなどのポリタイプで構成され、15超の単位格子より大きいポリタイプは存在しない。
【0033】
多結晶SiC基板114を形成又は製造する方法の代替的な実施形態では、多結晶SiC基板114は、キャリア多結晶SiC基板108から分離される代わりに、キャリア多結晶SiC基板108に結合されたままであり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118は、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118が20オングストローム(Å)以下の粗さを有するように、化学機械研磨技術によって研磨され得る。いくつかの実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118は、5オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨され得る。いくつかの実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118に対向する多結晶SiC基板114の反対面116は、20オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨され得る。いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板108の反対面116は、5オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨され得る。
【0035】
多結晶SiC基板114は、多結晶SiC基板114の反対面116から多結晶SiC基板114の表面118まで延在する第2の厚さT2を有する。いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板114の第2の厚さT2は、150マイクロメートル(μm)以下である。いくつかの実施形態では、第2の厚さT2は、50マイクロメートル(μm)~150マイクロメートル(μm)の範囲内であってもよく、又はこの範囲の上端及び下端に等しくてもよい(すなわち、50マイクロメートル(μm)に等しいか、又は150マイクロメートル(μm)に等しい)。いくつかの実施形態では、第2の厚さT2は、100マイクロメートル(μm)~150マイクロメートル(μm)の範囲内であってもよく、又はこの範囲の上端及び下端に等しくてもよい(すなわち、100マイクロメートル(μm)に等しいか、又は150マイクロメートル(μm)に等しい)。いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板114の第2の厚さT2は、150マイクロメートル(μm)に等しくてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板114は、キャリア多結晶SiC基板108よりも高い密度を有するように形成される。いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板114は、後に多結晶SiC基板114上に形成され得る単結晶SiC基板と同じ又は類似の密度を有し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板114からキャリア多結晶SiC基板108を除去する前に、キャリア多結晶SiC基板108の表面110に以前に結合された多結晶SiC基板114の反対側の表面116は、研磨され得る。例えば、キャリア多結晶SiC基板108に予め結合されている多結晶SiC基板114の反対面116が研磨されるとき、キャリア多結晶SiC基板108に予め結合されている多結晶SiC基板114の反対面116は、20オングストローム(Å)以下の粗さを有し得る。いくつかの実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108に予め結合された多結晶SiC基板114の反対面116は、5オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨され得る。
【0038】
多結晶SiC基板114が形成された後、様々な電子デバイスを製造する際に、更なる半導体材料、誘電体材料、導電性材料、又は非導電性材料が多結晶SiC基板108上に形成され得る。例えば、これらの電子デバイスは、半導体ダイ、半導体パッケージ、又は何らかの他の類似のタイプの半導体デバイス若しくは電気デバイスを含み得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、更なる半導体材料は、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118上に形成される単結晶SiC基板又は層であってもよい。いくつかの実施形態では、単結晶SiC基板又は層は、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118に物理的かつ直接的に接合され得る。いくつかの実施形態では、接合層は、単結晶SiC基板単結晶SiC基板又は層と、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118との間に存在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、接合層は、接着剤であり得る、又は単結晶SiC基板又は層を多結晶SiC基板又は層114に接合又は結合する他の適切なタイプの接合層であり得る。
【0039】
例えば、いわゆる直接接合SiC基板では、単結晶SiC基板又は層は、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118に接合、結合、又はその上に形成され得る。いくつかの実施形態では、単結晶SiC基板又は層が単結晶SiC基板である場合、単結晶SiC基板は、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118に接合又は結合され得る。いくつかの実施形態では、単結晶SiC基板は、接合層によって、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118に結合されてもよく、接合層は、例えば、接着剤、又は単結晶SiC基板を多結晶SiC基板114の表面118に結合するためのいくつかの他の適切な種類の材料であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、多結晶SiC基板114の表面118に接合又は結合された単結晶SiC基板が、単結晶SiC基板が分割されたより厚い単結晶SiCベース基板の厚さ未満である1マイクロメートル(μm)以下の厚さを有するように、単結晶SiC基板は、より厚い単結晶SiCベース基板から予め分割され得る。換言すれば、より厚い単結晶SiCベース基板は、複数のより薄い単結晶SiC基板が形成され、次いで、それぞれのキャリア多結晶SiC基板108と反対側に面するそれぞれの多結晶SiC基板114のそれぞれの表面118の複数のそれぞれの表面に結合されるように、複数回(例えば、10~50回)分割され得る。
【0041】
電子デバイス及び半導体パッケージを形成する際に多結晶SiC基板114の少なくとも1つの実施形態を形成及び利用することによって、電子デバイス及び半導体デバイスの「オン」抵抗率(Ron)が低減される。多結晶SiC基板114が組み込まれて存在する電子デバイス及び半導体デバイス内で多結晶SiC基板114を通過する際に電気信号があまり妨害されないように、「オン」抵抗率(Ron)を低減することによって抵抗が低減される。
【0042】
上記の説明を考慮すると、キャリア多結晶SiC基板108の第1のCTEは、キャリア多結晶SiC基板108上に形成された多結晶SiC基板114の第2のCTEと実質的に同じであるか又は等しいため、キャリア基板が代わりに第1及び第2のCTEとは異なるCTEを有する異なる材料から作製される場合と比べて、多結晶SiC基板114をはるかに薄く形成することができる。
【0043】
図1に示すフローチャート100の方法を利用して、多結晶SiC基板114を製造する際にキャリア多結晶SiC基板108上に多結晶SiC基板114を形成することによって、多結晶SiC基板114、キャリア多結晶SiC基板108、又はその両方の反りが、75マイクロメートル(μm)以下に維持される。
【0044】
図3は、第1の表面110(すなわち、表面110)と、第1の表面110の反対側の第2の表面119とを含むキャリア多結晶SiC基板108の斜視図を示す。第1の表面110は、キャリア多結晶SiC基板108に多結晶SiC基板114が形成される表面110である。多結晶SiC基板114は、
図1に示すフローチャート100内に存在する方法を利用して、キャリア多結晶SiC基板108上に形成され得る。キャリア多結晶SiC基板108は、第1及び第2の表面110、119を横断し、第1の表面110から第2の表面119まで延在する第1の側壁120を含む。
図3に示される実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108は、円筒形プロファイルを有する。しかしながら、いくつかの代替的な実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108は、いくつかの他のタイプの3D多角形プロファイル又はいくつかの他のタイプの3Dプロファイルを有し得る。
【0045】
図4は、多結晶SiC基板114がキャリア多結晶SiC基板108の第1の表面110に結合されるように、キャリア多結晶SiC基板108の第1の表面110に多結晶SiC基板114が形成された積層多結晶SiCアセンブリの斜視図を示す。多結晶SiC基板114は、キャリア多結晶SiC基板108の第1の表面110に結合された第3の表面116(すなわち、反対面116)と、キャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する第4の表面118(すなわち、表面118)とを有する。第4の表面118は、上述のように研磨され得るキャリア多結晶SiC基板108と反対側に面する多結晶SiC基板114の表面118であってもよい。キャリア多結晶SiC基板108の第2の表面119は、多結晶SiC基板114と反対側に面する。
図4に示す実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108の第1の厚さT1は、多結晶SiC基板114の第2の厚さT2と実質的に等しい。いくつかの代替的な実施形態では、第1の厚さT1は第2の厚さT2よりも小さくても大きくてもよく、又は第1の厚さT1は第2の厚さT2よりも大きくてもよい。多結晶SiC基板114は、第3の表面116及び第4の表面118を横断する第2の側壁122を含み、第2の側壁122は、第3の表面116から第4の表面118まで延在する。多結晶SiC基板114の第2の側壁122は、キャリア多結晶SiC基板108の第1の側壁120と同一平面上にある。
【0046】
図5は、キャリア多結晶SiC基板108が多結晶SiC基板114の第3の表面116から除去された後の多結晶SiC基板114の一実施形態の斜視図である。キャリア多結晶SiC基板108が多結晶SiC基板114から除去された後、多結晶SiC基板114のそれぞれの表面116、118の様々なものは、20オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨され得る。いくつかの実施形態では、キャリア多結晶SiC基板108が多結晶SiC基板114から除去された後、多結晶SiC基板114のそれぞれの表面116、118の様々な表面は、5オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨され得る。
【0047】
本開示の方法の少なくとも1つの実施形態は、表面を有するキャリア多結晶シリコンカーバイド(SiC)基板を形成することであって、キャリア多結晶SiC基板を形成することが、キャリア多結晶SiC基板を形成するために1つ以上の粉末状材料を焼結することと、キャリア多結晶SiC基板の表面上に多結晶SiC基板を形成することであって、化学気相堆積(CVD)プロセスを用いてキャリア多結晶SiC基板の表面上にSiCを堆積させることを含む、こととを含むものとして要約され得る。
【0048】
本方法は、多結晶SiC基板及びキャリア多結晶SiC基板を冷却することを更に含み得る。
【0049】
キャリア多結晶SiC基板は第1の熱膨張係数(CTE)を有してもよく、多結晶SiC基板は第2のCTEを有してもよく、第1のCTEは第2のCTEと実質的に等しくてもよい。
【0050】
本方法は、キャリア多結晶SiC基板の表面と反対側に面する多結晶SiC基板の表面を、5オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨することを更に含み得る。
【0051】
本方法は、キャリア多結晶SiC基板から多結晶SiC基板を除去することを更に含み得る。
【0052】
キャリア多結晶SiC基板から多結晶SiC基板を除去することは、キャリア多結晶SiC基板を研削することを含み得る。
【0053】
キャリア多結晶SiC基板を研削することは、多結晶SiC基板の表面を露出させることを更に含み得る。
【0054】
本開示のデバイスの少なくとも1つの実施形態は、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を含む第1の多結晶SiC基板と、第1の多結晶SiC基板の第2の表面に結合された第2の多結晶SiC基板とを含むものとして要約され得る。
【0055】
第1の多結晶SiC基板は、第1の側壁を有してもよく、第2の多結晶SiC基板は、第1の側壁と実質的に同一平面上にある第2の側壁を有してもよい。
【0056】
第1の多結晶SiC基板は、第1の熱膨張係数(CTE)を有し得る。第2の多結晶SiC基板は第2のCTEを有し、第1のCTEは第2のCTEと実質的に等しくてもよい。
【0057】
第2の多結晶SiC基板は、第1の表面と反対側に面する第3の表面を含み得る。
【0058】
第2の多結晶SiC基板は、第1の多結晶SiC基板と反対側に面する第3の表面を含み得、第2の多結晶SiC基板の第3の表面は、5オングストローム(Å)以下の粗さを有し得る。
【0059】
本明細書の議論を考慮して、本開示は、形成され、次いで、別の多結晶SiC基板を多結晶SiCベース基板に直接的に接合するために、又は多結晶SiCベース基板上に別の多結晶SiC基板を形成するために使用又は利用される、多結晶SiCベース基板に関する。例えば、少なくとも1つの実施形態では、別の多結晶SiC基板は、多結晶SiC基板を多結晶SiCベース基板のそれぞれの表面に形成又は接合することによって、多結晶SiCベース基板に形成又は接合される。多結晶SiCベース基板のそれぞれの表面への別の多結晶SiC基板のこの直接的な接合又は形成は、SiCデバイス産業内で知られているSiC基板又は多結晶SiC基板の標準的な形成プロセスを置き換えるために利用され得る。
【0060】
本明細書における上記の議論を考慮して、半導体産業内で知られている多結晶SiC基板は、CVD(すなわち、化学気相堆積)成長又はPVT(すなわち、物理気相輸送)成長プロセス又は技術によって作製され得る。焼結基板は、半導体産業において知られており、半導体産業において知られている単結晶(monocrystalline)(例えば、単結晶(monocrystalline)シリコンカーバイド(SiC)基板と同じ又は類似の密度を有し得るCVD又はPVT製造された基板と比較してより低い密度を有し得る。CVD及びPVT基板を成長させるために、グラファイト基板が出発基板(例えば、キャリア又はベース基板)として使用される。本明細書で説明するように、これはいくつかの問題を引き起こし、主な問題は、グラファイトと成長したシリコンカーバイド(SiC)との異なる熱膨張によって引き起こされる応力及び歪みである。熱膨張のこの差は、大きな反り、亀裂、又は追加の複雑化(例えば、他のタイプの機械的欠陥)をもたらし、材料を処理するためのコストを増加させる(例えば、廃棄コスト及び歩留まりの低下)。グラファイトはまた、完全に除去する必要があり、多結晶シリコンカーバイド(SiC)基板の裏側に保持することができず、グラファイト基板上にかなり厚い層を常に製造する必要がある。この厚い層の製造要件は、多結晶SiC基板からグラファイト基板を除去するときに、グラファイト基板上に形成された多結晶SiC基板内に伝播する機械的欠陥を回避するためのプロセスに対するコストを増加させる。本開示の多結晶SiC基板114を形成することに関する本開示の実施形態は、これらの既知の形成プロセスを利用してそれぞれの多結晶SiC基板を形成することに関するこれらの問題に対処する。
【0061】
上記の開示は、CVDプロセスを利用してキャリア多結晶SiC基板108の表面110上に多結晶SiC基板114の少なくとも1つの実施形態を形成することを論じているが、キャリア多結晶SiC基板108の表面110上に多結晶SiC基板114を形成するために、PVT(すなわち、物理気相輸送)プロセス又は半導体産業内で知られている何らかの他の適切なプロセスなどの別のSiC基板形成技術を利用することが可能であり得る。
【0062】
半導体産業内で知られている形成プロセスによる多結晶SiC基板の形成は、歩留まりを低下させる機械的欠陥(例えば、反り、亀裂など)を生成する熱膨張不整合をもたらす可能性がある。半導体産業内で知られている形成プロセスは、電子デバイス又は半導体パッケージに組み込まれる前に多結晶SiC基板の裏面から出発基板を除去しなければならないなどの追加の処理工程を必要とする場合があり、製造コストを増加させる。半導体産業内で知られている形成プロセスは、出発基板が多結晶SiC基板から除去されるときに多結晶SiC基板への損傷の可能性が低減又は防止されるように、多結晶SiC基板を比較的厚く製造しなければならないために制限され得る。本開示の多結晶SiC基板114の実施形態は、半導体産業内で知られている多結晶SiC基板の形成プロセスに関するこれらの欠点及び問題に対処する。例えば、本明細書で論じられるような多結晶SiC基板114の実施形態は、半導体産業内で知られているものよりも薄くなるように製造され、多結晶SiC基板114の実施形態とキャリア又は出発基板(例えば、多結晶キャリアSiC基板108)との間の任意の熱的不整合を回避して形成され、低湾曲及び低反りで形成され得る。更に、多結晶SiC基板114の実施形態を製造することは、半導体産業内で知られているプロセスを利用するよりも安価である。
【0063】
本明細書で説明するように、少なくとも1つの実施形態では、本開示は、焼結多結晶シリコンカーバイド(SiC)の出発基板と、その上の高密度CVD成長多結晶シリコンカーバイド層又は基板(図示せず)とを有する積層構造を(例えば、すなわち、出発基板の焼結多結晶(SiC)の出発基板の配向に基づいて)形成することに関する。高密度CVD成長多結晶シリコンカーバイド層又は基板は、少なくとも50~100マイクロメートル(μm)、又は150マイクロメートル(μm)に等しい典型的な厚さを有し得る。次いで、CVD成長させた多結晶シリコンカーバイド層又は基板は研磨され得、単結晶SiCの薄層又は基板を、本開示のCVD成長させた多結晶シリコンカーバイド層又は基板に接合、結合、又はその上に形成し得る。次いで、積層された基板は、電子デバイス又は半導体デバイスの製造に使用され得る。いくつかの実施形態では、このプロセスは、焼結基板を裏面研削工程で除去することを含み得る。
【0064】
本開示は、焼結キャリアSiC基板(例えば、多結晶キャリアSiC基板108)を含み、その上にCVD成長SiC層又は基板(例えば、多結晶SiC基板114)が形成又は成長される積層構造の少なくとも1つの実施形態に関する。例えば、表面(例えば、多結晶SiC基板108の表面110)は、上面(例えば、焼結キャリアSiC基板の配向に基づいて)であり得、上面の上に、CVD成長SiC層又は基板が、CVD(すなわち、化学気相堆積)プロセス又は技術を利用して形成又は成長される。CVD成長SiC層又は基板は、CVD成長SiC層又は基板上に後に形成される単結晶SiC層又は基板の密度に等しい第1の密度を有し得る。焼結キャリアSiC基板は、CVD成長SiC層又は基板よりも低い密度を有し得る。CVD成長SiC層又は基板は、5オングストローム(Å)以下の粗さを有するように研磨された表面を有し得る。
【0065】
上で説明される様々な実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供することができる。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願、及び刊行物の概念を採用するように変更して、更なる実施形態を提供することができる。
【0066】
これらの変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されるものではない。
【外国語明細書】