(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153602
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】パルス工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20241022BHJP
F16H 33/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B25B21/02 H
F16H33/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066535
(22)【出願日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】2330164-1
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブ リンドストレーム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータが最も効率的に動作することができるパルス工具を提供する。
【解決手段】電動パルス工具は、フライホイールユニットに駆動連結された電気モータ(10)と、出力軸(30)とを備え、電動パルス工具は、フライホイールユニットを回転させるように作動し、フライホイールユニットは、出力軸にトルクパルスを供給するために、出力軸(30)に運動エネルギーを断続的に伝達するように配置され、フライホイールユニットの慣性モーメントは可変であり、トルクパルスは、フライホイールユニットの慣性モーメントの強制的な減少によって供給することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動パルス工具であって、
フライホイールユニット(20)に駆動連結された電気モータ(10)と、
出力軸(30)と、
を備え、
前記電動パルス工具は、前記フライホイールユニット(20)を回転させるように作動し、
前記フライホイールユニットは、前記出力軸にトルクパルスを供給するために、前記出力軸(30)に運動エネルギーを断続的に伝達するように配置され、
前記フライホイールユニットの慣性モーメントは可変であり、前記トルクパルスは、前記フライホイールユニットの慣性モーメントの強制的な減少によって供給することができる、電動パルス工具。
【請求項2】
前記出力軸及び前記フライホイールユニットを作動可能に連結し、前記フライホイールユニットの可変の前記慣性モーメントをもたらすように配置された手段をさらに備える、請求項1に記載の電動パルス工具。
【請求項3】
可変の前記慣性モーメントは、前記フライホイールユニットの可変の質量中心半径をもたらす前記手段によって達成される、請求項2に記載の電動パルス工具。
【請求項4】
前記フライホイールユニットは、半径方向に移動可能な少なくとも1つの質量要素を備え、可変の前記質量中心半径は、半径方向に移動可能な前記少なくとも1つの質量要素(40)の少なくとも一部の半径方向移動をもたらす前記手段によって提供される、請求項3に記載の電動パルス工具。
【請求項5】
半径方向に移動可能な前記少なくとも1つの質量要素は、前記出力軸に運動エネルギーを断続的に伝達するように配置されている、請求項4に記載の電動パルス工具。
【請求項6】
前記フライホイールユニットは、前記電気モータによって駆動される回転可能に配置された質量ホルダ(3,1)を備え、
半径方向に移動可能な前記少なくとも1つの質量要素は、前記質量ホルダ上に移動可能に配置され、
前記手段が、前記出力軸と共回転するように設けられた第1のカムプロファイルを備えるカム要素(50)を備え、
前記第1のカムプロファイルは、前記フライホイールユニットの慣性モーメントが変化するように、前記質量要素の移動をもたらすように配置される、請求項3から5のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項7】
前記第1のカムプロファイルは、前記フライホイールユニットの質量中心半径が減少するように、半径方向に移動可能な前記少なくとも1つの質量要素の半径方向内向きの移動をもたらすように配置され、それにより、前記トルクパルスを発生させる力が引き起こされる、請求項6に記載の電動パルス工具。
【請求項8】
前記手段は、第1の端部において前記少なくとも1つの質量要素に取り付けられ、第2の端部において前記第1のカムプロファイルに従動するように配置された少なくとも1つのカム従動アーム(60)をさらに備える、請求項6又は7に記載の電動パルス工具。
【請求項9】
前記質量ホルダは、前記電気モータによって駆動される質量ホルダブラケット(3)を備え、半径方向に移動可能な前記少なくとも1つの質量要素は、リンクアーム(41)によって前記質量ホルダブラケット上に移動可能に配置されている、請求項6から8のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項10】
前記カムプロファイルは、前記出力軸の外側に配置されている、請求項6から9のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項11】
前記カムプロファイルは、前記出力軸に結合されたリング状要素の内側に配置されている、請求項6から9のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項12】
第1及び第2の質量要素を備える、請求項3から11のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項13】
それぞれ第1及び第2のカムプロファイルを含む第1及び第2のカム要素をさらに備える、請求項12に記載の電動パルス工具。
【請求項14】
前記電気モータは、前記フライホイールを一定速度で駆動するようになっている、請求項1から13のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項15】
ロータの回転速度を測定するようになっているセンサをさらに備える、請求項1から14のいずれかに記載の電動パルス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ねじ付きファスナーを締め付けるための動力工具に関し、より詳細には、電動インパルス式動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
締め付け用の動力工具は、様々な産業で使用されていることが知られている。例えば、油圧パルスユニットを備えるインパルス式動力レンチは、連続的な大量生産(heavy production)に一般的に使用されている。このような工具では、トルクは、油圧パルス発生ユニットによって出力軸に断続的に供給される。パルス工具は、高速動作及び反力なしの出力などの利点があることで知られている。
【0003】
このような工具の油圧パルス発生ユニットはオイルで満たされている。このようなパルス工具では、トルクパルスは、流体室を低圧側と高圧側とに分割するパルス発生機構によって出力軸に供給することができ、動作時、流体は、低圧側と高圧側との間に流れる場合がある。しかしながら、このような流体の流れは、損失を伴うことが多いので、パルス工具の効率に大きな影響を及ぼす。
【0004】
さらに、パルス工具の固有の性質、すなわち、動きの早いモータが動きの遅いタップ(tap)に結合するという原理に基づいているため、エネルギー損失は避けられない。
【0005】
電動パルス工具の場合、損失は、パルス工具が速度を変化させることで慣性を蓄積するという事実に関連し、損失は、モータが様々な速度で動作する必要があり、最も効率的な速度にとどまることができないという事実にも起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、トルクがパルスで供給される動力工具の分野には、改善の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、より効率的なパルス工具を提供することが望まれる。詳細には、モータが最も効率的に動作する速度で動作することができるような改良されたパルス工具を提供することが望ましいであろう。これらの問題の1又は2以上によりよく対処するために、独立請求項による電動パルス工具が提供される。好ましい実施形態は従属請求項に規定される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、電動パルス工具が提供され、この工具は、フライホイールユニットと、出力軸に駆動連結された電気モータとを備え、電動パルス工具は、フライホイールユニットを回転させるように作動し、フライホイールユニットは、出力軸にトルクパルスを供給するために、出力軸に運動エネルギーを断続的に伝達するように配置され、フライホイールユニットの慣性モーメントは可変であり、トルクパルスは、フライホイールユニットの慣性モーメントの強制的な減少によって供給することができる。
【0009】
第1の態様によれば、インパルス工具(又はパルス工具、パワーレンチ、動力工具又は締め付け工具、これらの用語は、本明細書を通じて互換的に使用される)は、フライホイールユニットの速度を変化させる代わりに(及び/又はそれに加えて)、フライホイールユニットの慣性を変化させてパルスを達成する設計によって、上述の問題に対する発明的な解決策を提供する。
【0010】
より詳細には、本発明者は、フライホイールユニットの慣性を変化させることができる設計によって、パルスを供給しながら工具を(おおよそ)一定速度で動作させることができ、それによって、動きが早いモータを動きが遅いタップに断続的に結合する従来の方法に関連する損失を軽減あるいは回避することができることを認識している。また、電気モータは、電気モータが最大効率で動作する速度で連続的に動作することもでき、その結果、損失が低減され、電気モータの効率も向上する。
【0011】
高い平均速度で動作することと、停止しないので次のパルスのためのエネルギーを保持する能力との組み合わせにより、工具は非常に効率的で高速になる、すなわち高いパルス周波数を使用すること並びに高いトルクを供給することができる。従って、動力工具の効率は著しく向上する。
【0012】
言及されるパルス工具は、バッテリ式工具又は有線式工具とすることができる。パルス工具は、前端及び後端を有するハウジングをさらに備えることができ、出力軸は、ハウジングの前端に配置することができる。
【0013】
1つの実施形態によれば、電動パルス工具は、出力軸とフライホイールユニットとを結合又は連結又は作動可能に連結して、フライホイールユニットの可変の慣性モーメントをもたらすように配置された手段をさらに備える。これらの結合手段又は連結手段は、機械的組立体を含むことができる。結合又は連結することは、その間に動作可能な連結又は結合を提供することと理解することができる。1つの実施形態によれば、可変の慣性モーメントは、フライホイールユニットの可変の質量中心半径をもたらす手段によって達成される。
【0014】
1つの実施形態によれば、フライホイールユニットは、半径方向に移動可能な少なくとも1つの質量要素を備え、可変の質量中心半径は、半径方向に移動可能な少なくとも1つの質量要素の少なくとも一部の半径方向の移動をもたらす手段、又は組立体によって提供される。半径方向とは、出力軸に対する半径方向を意味する。半径方向に移動可能な質量要素、又はその一部、及び/又は半径方向に移動可能な質量要素の質量中心は、例えば、フライホイールユニットの1回転にわたって変化する半径を有する経路を辿るようにもたらすことができる。
【0015】
1つの実施形態によれば、半径方向に移動可能な少なくとも1つの質量要素は、運動エネルギーを出力軸に断続的に伝達するように配置されている。
【0016】
このエネルギー伝達は、半径方向に移動可能な質量要素が出力軸(又はその一部)に選択的に接触及び/又は衝突することによって達成することができる。この接触は、いくつかの実施形態では、出力軸に対する質量要素の回転によって周期的に達成することができる。
【0017】
1つの実施形態によれば、フライホイールユニットは、モータによって駆動される回転可能に配置された質量ホルダを備え、半径方向に移動可能な少なくとも1つの質量要素は、質量ホルダ上に、又は少なくとも質量ホルダに対して移動可能に配置され、手段(すなわち、フライホイールユニットの可変の質量中心半径に作用する手段)は、出力軸と共回転するように設けられた第1のカムプロファイルを含むカム要素を備え、第1のカムプロファイルは、フライホイールユニットの慣性モーメントが変化するように、質量要素の移動をもたらすように配置されている。
【0018】
1つの実施形態によれば、第1のカムプロファイルは、半径方向に移動可能な少なくとも1つの質量要素の半径方向内向きの移動をもたらすように配置され、フライホイールユニットの質量中心半径が減少し、それにより、パルス時にフライホイールユニットがより小さな半径に圧縮される際にトルクパルスを発生させる力を引き起こすようになっている。質量要素の正確な挙動、すなわち慣性を変化させるために質量中心半径が変化する方法は、カム形状によって決定され、従って所望の挙動に基づいて適合させることができる。
【0019】
1つの実施形態によれば、この手段は、第1の端部において少なくとも1つの質量要素に取り付けられ、第2の端部において第1のカム形状に従動するように配置された少なくとも1つのカム従動アーム又はレバーをさらに備える。これにより、可変の質量中心半径の経路は、カムプロファイルの設計、及びアームとプロファイルとの間の相互作用によって制御することができ、それによってトルクパルスを発生させる力の所望の挙動を作り出すことができる。
【0020】
1つの実施形態によれば、質量ホルダは、モータによって駆動される質量ホルダブラケットを備え、半径方向に移動可能な少なくとも1つの質量要素は、リンクアームによって質量ホルダブラケット上に又は少なくとも質量ホルダブラケットに対して移動可能に配置される。1つの実施形態では、リンクアームは、第1の端部で質量要素に剛性的に取り付けられ、第2の端部で質量ホルダブラケットに移動可能に取り付けられている。リンクアームは、例えば、質量ホルダブラケットに枢動自在に取り付けられ、質量要素にねじ止めすることができる。1つの実施形態では、質量要素は、2つのリンクアームによって質量ホルダブラケットに対して移動可能に配置されている。
【0021】
1つの実施形態によれば、カムプロファイルは出力軸の外側に配置されている。このような実施形態では、質量ホルダは、カムプロファイルを囲むように又は覆うように配置することができる。
【0022】
1つの実施形態によれば、カムプロファイルは、出力軸に結合されたリング状要素の内側に配置されている。
【0023】
1つの実施形態によれば、電動パルス工具は、第1及び第2の質量要素をさらに備える。1つの実施形態によれば、電動パルス工具は、それぞれ第1及び第2のカムプロファイルを含む第1及び第2のカム要素をさらに備える。いくつかの実施形態では、従って、第1及び第2の質量要素は、第1及び第2のカムプロファイルにそれぞれ従動するように配置されたそれぞれの第1及び第2のカム従動アームに取り付けることができる。いくつかの実施形態では、電動パルス工具は、n個の質量要素及びn個のカム要素を備えることができ、nは2より大きい整数である。
【0024】
1つの実施形態によれば、質量要素は、湾曲した外形を有し、中央開口を備える。いくつかの実施形態では、電動工具は、フライホイールユニット及び出力軸の少なくとも一部を覆うようになっている、場合によっては円筒形のパルスユニットハウジングをさらに備え、質量要素は、ハウジング内に収まるようになっている湾曲形状を有することができる。
【0025】
1つの実施形態によれば、電気モータは、制御された速度でフライホイールを駆動するようになっており、いくつかの実施形態では、電気モータは、一定速度でフライホイールを駆動するようになっている。1つの実施形態によれば、電動パルス工具は、ロータの回転速度を測定するようになっているセンサをさらに備える。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、電動パルス工具のためのパルスユニットが提供され、パルスユニットは、出力軸及びフライホイールユニットを備え、フライホイールユニットは、動力工具のモータによって駆動されるように構成され、出力軸にトルクパルスを供給するために運動エネルギーを出力軸に断続的に伝達し、フライホイールユニットの慣性モーメントは可変であり、トルクパルスは、フライホイールユニットの慣性モーメントの強制的な減少によって供給することができるようになっている。本発明の第2の態様の範囲内で考えられるユニットの目的、利点及び特徴は、本発明の第1の態様に言及した上記の説明によって容易に理解される。
【0027】
本発明のさらなる目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示、図面及び添付の特許請求の範囲を検討すれば明らかになるであろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明する以外の実施形態を作り出すことできることを理解する。
【0028】
本発明は、添付図面を参照して、例示的な実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】1つの実施形態による例示的な動力工具の側面図である。
【
図2】1つの実施形態によるパルス工具の構成要素の一部を示す概略図である。
【
図3】1つの実施形態によるパルス工具の構成要素の一部を示す概略図である。
【
図4】1つの実施形態による電動パルス工具の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
全ての図は概略的であり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、本発明を明瞭にするために必要な部分のみを示しており、他の部分は省略されるか又は単に示唆される場合がある。
【0031】
図1は、1つの実施形態による例示的なパルス工具1を示し、この場合、ピストル型工具は、前端100a及び後端100bを有するハウジング100を備え、その中にモータ10及びパルス発生ユニット又は機構が配置され、さらにハウジングの前端に延びる四角端出力軸30を有する。
【0032】
図2に概略的に示されているパルス発生機構は、電気モータ10に駆動連結されたフライホイールユニット20を備え、フライホイールユニット20は回転できるようになっている。フライホイールユニット20は、出力軸30に運動エネルギーを断続的に伝達するように、換言すれば出力軸30にトルクパルスを供給するように配置されている。
【0033】
トルクパルスを供給するために、フライホイールユニットの慣性モーメントは可変である。より詳細には、トルクパルスは、このフライホイールユニットの慣性モーメントの強制的な減少によって供給することができる。
【0034】
図示の実施形態では、慣性は、出力軸30とフライホイールユニット20とを作動可能に連結又は結合する手段を備える設計によって変更され、フライホイールユニット20は、可変の質量中心半径を可能にし、それによって可変の慣性モーメントをもたらす。この効果を達成するために、図示のフライホイールユニット20は、モータ10によって駆動される質量ホルダブラケット21上に移動可能に配置されるか又はそれに移動可能に連結される、半径方向に移動可能な質量要素40を備える。
【0035】
上述の手段は、出力軸30上に設けられた第1のカムプロファイル51を有するカム要素50を備える。カム従動アーム60は、第1の端部で質量要素に取り付けられ(図示の実施形態では剛性的に取り付けられ)、第2の端部で第1のカムプロファイル51に従動するように配置され、これにより、質量要素の移動がもたらされ質量中心半径が変化し、フライホイールユニットの慣性モーメントが変化するようになっている。
【0036】
フライホイールユニットは、一回転の間に以下の段階を経ることになる。
【0037】
最大半径にある場合、質量要素40は、全速力で動き、パルスを供給する準備が整う。質量要素が回転中心に向かって強制的に戻されると(出力軸30が回転軸を規定する)、質量要素は回転中心に向かって回転してカムに衝突し、カムに対するこの力がトルクを発生させる。次に、質量要素は、質量要素がモータ10によって加速される間にカムに沿って大きな半径に戻るように移動するので、次のパルスのためにこの速度を利用する。全回転中、モータ10の速度は実質的に一定である。
【0038】
図3は、上述と同様の効果を得ることができる第2の実施形態を概略的に示しているが、ここでは、カムプロファイル51、図示の実施形態では第1及び第2のカムプロファイル51a、51bは、代わりに、出力軸30に結合されたリング状又は円筒状の要素70の内側に設けられている。
【0039】
図3に示す実施形態は、第1及び第2のカム従動アーム60a、60bによって第1及び第2のカム要素51a、51b、従って第1及び第2のカムプロファイルにそれぞれ係合するように配置された第1及び第2の質量要素40a、40bをさらに備える。これにより、第1及び第2の質量要素は、
図2に示した実施形態について説明したものと同様に、実質的に一定の速度で回転しながら、出力軸にトルクパルスを供給するために半径方向内向きに押し進められることになる。
【0040】
図4は、特許請求の範囲に記載された原理によるパルス発生機構のさらに別の実施形態を断面で示す。
【0041】
図2及び3に示した実施形態と同様に、
図4のパルス発生機構は、フライホイールユニットの可変慣性によって出力軸30にトルクパルスを供給するように配置されたフライホイールユニット20を備える。
【0042】
図示の実施形態では、フライホイールユニット20の可変の質量中心半径は、モータ10によって駆動される質量ホルダブラケット21、22上に移動可能に配置された半径方向に移動可能な2つの質量要素40a、40bを組み込んだ設計によって実現されている。質量要素は、2つのそれぞれのリンクアーム41によってブラケット上に配置されている(すなわち、合計4つのリンクアームが設けられている)。リンクアームは、質量ホルダブラケットに枢動可能に取り付けられ、それぞれの質量要素にねじ止めされている。
【0043】
それぞれのカム従動アーム60a、60b(図示せず)は、第1の端部において各質量要素に取り付けられ、第2の端部において出力軸30の外周側に設けられた第1及び第2のカムプロファイル51a、51bに従動するように配置され、質量中心半径を変化させる質量要素の移動をもたらし、フライホイールユニットの慣性モーメントが変化するようになっている。図示の実施形態における第1及び第2のカムプロファイルは同じプロファイルを有し、出力軸上に鏡映様式で配置されているため、第1及び第2の質量要素は同期して移動し、その結果、出力軸30上にパルスを同時に供給する。
【0044】
図示の実施形態における質量要素は、円筒形の外側ハウジング80に収まるようにわずかに湾曲した外形を有し、出力軸の反対側に配置されている。反対側の質量要素のアームの移動を可能にするために、各質量要素は、カム従動アームがそこを通って動くことができる中央開口44a、44bを備える。
【0045】
図1の実施形態を参照して上述したように、作動時、モータが質量ホルダを回転させると、カム従動アーム41は、カム形状に沿って移動して、質量要素が、その最大半径での全速力から、回転中心に向かって回転してパルスを供給し、その後、カムの長い形状に沿って移動して大きな半径に戻るように制御するようになっている。
【0046】
本発明は、図面及び上記の説明で詳細に図示及び説明されているが、このような図示及び説明は、例証的又は例示的なものであって制限的なものではないと見なされ、本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者は、添付の特許請求の範囲に定義された範囲内で、多くの修正例、変形例及び変更例が考えられることを理解することができる。加えて、開示された実施形態に対する変形例は、請求項に係る発明を実施する際に、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、当業者によって理解され、実施することができる。特許請求の範囲において、用語「備える(comprising)」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲における何らかの参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0047】
10 電気モータ
20 フライホイールユニット
30 出力軸
40 半径方向に移動可能な質量要素
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動パルス工具であって、
フライホイールユニット(20)に駆動連結された電気モータ(10)と、
出力軸(30)と、
を備え、
前記電動パルス工具は、前記フライホイールユニット(20)を回転させるように作動し、
前記フライホイールユニットは、前記出力軸にトルクパルスを供給するために、前記出力軸(30)に運動エネルギーを断続的に伝達するように配置され、
前記フライホイールユニットの慣性モーメントは可変であり、前記トルクパルスは、前記フライホイールユニットの慣性モーメントの強制的な減少によって供給することができる、電動パルス工具。
【請求項2】
前記出力軸及び前記フライホイールユニットを作動可能に連結し、前記フライホイールユニットの可変の前記慣性モーメントをもたらすように配置された手段をさらに備える、請求項1に記載の電動パルス工具。
【請求項3】
可変の前記慣性モーメントは、前記フライホイールユニットの可変の質量中心半径をもたらす前記手段によって達成される、請求項2に記載の電動パルス工具。
【請求項4】
前記フライホイールユニットは、半径方向に移動可動な少なくとも1つの質量要素を備え、可変の前記質量中心半径は、半径方向に移動可動な前記少なくとも1つの質量要素(40)の少なくとも一部の半径方向移動をもたらす前記手段によって提供される、請求項3に記載の電動パルス工具。
【請求項5】
半径方向に移動可動な前記少なくとも1つの質量要素は、前記出力軸に運動エネルギーを断続的に伝達するように配置されている、請求項4に記載の電動パルス工具。
【請求項6】
前記フライホイールユニットは、前記電気モータによって駆動される回転可能に配置された質量ホルダを備え、
半径方向に移動可動な前記少なくとも1つの質量要素は、前記質量ホルダ上に移動可能に配置され、
前記手段が、前記出力軸と共回転するように設けられた第1のカムプロファイルを備えるカム要素(50)を備え、
前記第1のカムプロファイルは、前記フライホイールユニットの慣性モーメントが変化するように、前記質量要素の移動をもたらすように配置される、請求項3から5のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項7】
前記第1のカムプロファイルは、前記フライホイールユニットの質量中心半径が減少するように、半径方向に移動可動な前記少なくとも1つの質量要素の半径方向内向きの移動をもたらすように配置され、それにより、前記トルクパルスを発生させる力が引き起こされる、請求項6に記載の電動パルス工具。
【請求項8】
前記手段は、第1の端部において前記少なくとも1つの質量要素に取り付けられ、第2の端部において前記第1のカムプロファイルに従動するように配置された少なくとも1つのカム従動アーム(60)をさらに備える、請求項6に記載の電動パルス工具。
【請求項9】
前記質量ホルダは、前記電気モータによって駆動される質量ホルダブラケットを備え、半径方向に移動可動な前記少なくとも1つの質量要素は、リンクアーム(41)によって前記質量ホルダブラケット上に移動可能に配置されている、請求項6に記載の電動パルス工具。
【請求項10】
前記カムプロファイルは、前記出力軸の外側に配置されている、請求項6に記載の電動パルス工具。
【請求項11】
前記カムプロファイルは、前記出力軸に結合されたリング状要素の内側に配置されている、請求項6に記載の電動パルス工具。
【請求項12】
第1及び第2の質量要素を備える、請求項3から5のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項13】
それぞれ第1及び第2のカムプロファイルを含む第1及び第2のカム要素をさらに備える、請求項12に記載の電動パルス工具。
【請求項14】
前記電気モータは、前記フライホイールを一定速度で駆動するようになっている、請求項1から5のいずれかに記載の電動パルス工具。
【請求項15】
ロータの回転速度を測定するようになっているセンサをさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の電動パルス工具。